(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重量平均分子量が500g/mol以上3000g/mol以下、水酸基価が20mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のロジン多価アルコールエステル樹脂。
バインダー樹脂とロジン多価アルコールエステル樹脂との合計100質量部に対し、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロジン多価アルコールエステル樹脂を0.2〜10質量部含有することを特徴とするオフセット印刷用インキ組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用される樹脂は、ロジン類(A)と多価アルコール類(B)とを重縮合して得られるロジン多価アルコールエステル樹脂であって、
多価アルコール類(B)として下記式1に示す化合物(B1)を用い、かつ、
多価アルコール類(B)における下記式1に示す化合物(B1)の割合が、10〜100質量%であり、かつ、
ロジン類(A)と多価アルコール類(B)との反応比が、(A)の酸基1モルに対し、多価アルコール類(B)の水酸基が2モル以上6モル以下
であることを特徴とするロジン多価アルコールエステル樹脂である。
(式1) H−(CHOH)
n−H n=4以上の整数
【0010】
本発明のロジン類(A)としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等のロジン、及び水添ロジン、重合ロジン、不均化ロジン等が挙げられる。また、必要に応じてそれらを無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸類にて強化したものでもよい。
【0011】
前記の重合ロジンとはロジンを硫酸等の触媒により重合したロジンであり、二量体のほか単量体、三量体以上の多量体も含む混合物である。
【0012】
前記の水添ロジンとはロジンを水素添加により、不飽和結合を飽和させたものである。
不均化ロジンとはロジンを加熱等により分子間で水素を移動させ、一方の分子の不飽和結合を飽和させると同時にもう一方の飽和結合を不飽和化したものである。
【0013】
本発明の多価アルコール類(B)とは、一分子中に水酸基を少なくとも2個有する化合物であり、多価アルコール(B)は式1に示す多価アルコール(B1)を含む。
(式1) 化合物(B1)
H−(CHOH)
n−H n=4以上の整数
【0014】
多価アルコール類(B1)としては、炭素数が4以上(式(1)におけるn=4以上の整数)のポリヒドロキシアルカンであればよく、好ましくは、炭素数4〜10(式(1)におけるn=4〜10の整数)、更に好ましくは、炭素数4〜6(式(1)におけるn=4〜6の整数)であり、具体的には、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールおよびこれらの光学異性体等が挙げられ、これらは1種又は2種類以上用いることができる。
【0015】
本発明においてロジン多価アルコールエステル樹脂中に水酸基を残存させることが乳化適性向上効果のために必須である。そのため、多価アルコール類一分子中に水酸基が4個以上あることが好ましく、かつ、水酸基を酸に対して過剰量投入して製造可能であることが求められる。(B)として(B1)のみを使用する場合、ロジン類の酸基1モルに対し、(B1)の水酸基が6モル以下の範囲では製造上支障がある程の昇華が発生せず、目的とするロジン多価アルコールエステル樹脂を得ることが可能である。本目的のためには多価アルコール類一分子中の水酸基が多い方が好ましい。たとえば、ソルビトール、キシリトールが挙げられ、中でも安価に入手出来るため工業的に有利であるソルビトールが好ましい。
【0016】
多価アルコール類(B)としては、多価アルコール類(B1)以外に、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール類等が挙げられる。
【0017】
多価アルコール類(B1)以外に多価アルコール類(B)を使用する場合は、上記の効果を阻害しないことが要求される。結晶性が低い多価アルコールは昇華による悪影響がないうえに(B1)とロジン類との反応を促進するため好ましい。この場合(B1)は、(B)全体の10質量%以上が好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。このような、(B1)に含まれない(B)としてはグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等が挙げられる。工業的にはグリセリンが特に好ましい。一方結晶性の高い多価アルコールの使用量が多いと反応を完遂することが困難となる。ロジン類の酸基1モルに対し(B)の水酸基が2モル以上6モル未満の条件において、結晶性の高い多価アルコールは(B)全体の50質量%以下とすべきである。そのようなものとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチルールプロパン等が挙げられる。工業的には入手が容易であるペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0018】
本発明の多価アルコール類(B)の使用量は、使用するロジン類(A)の酸基1モルに対して水酸基が2モル以上6モル以下である。2モル以上6モル以下であると乳化適性向上効果に優れるため好ましい。
【0019】
本発明のロジン多価アルコールエステル樹脂は、上記成分を通常のエステル化反応条件で反応させることにより得ることができる。
【0020】
また、本発明の樹脂として効果を損なわない範囲であれば、前記したロジン多価アルコールエステル樹脂に対し、更にその他の成分を反応させても構わない。その他の成分としてはレゾール類等が挙げられる。反応に供されるレゾール類の量としては、ロジン類1モルに対しレゾール類中のアルキルフェノール類が0.5モル以下が好ましく、0.25モル以下がさらに好ましい。
【0021】
前記レゾール類としては、例えば、アルキルフェノール類とアルデヒド類を予め塩基性触媒存在下で反応させて製造したレゾール及び/又はアルキルフェノールとアルデヒドを予め酸性触媒存在下で反応後さらにアルデヒドと塩基性触媒存在下で反応させて製造したノボラックレゾールが挙げられる。
【0022】
前記のレゾールまたはノボラックレゾールに使用する塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属触媒類、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。また、ノボラックレゾールに使用される酸性触媒としてはパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0023】
前記のアルキルフェノール類としてはクレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、パラブチルフェノール、パラオクチルフェノール、ノニルフェノール、パラドデシルフェノール、ジブチルフェノール、ジメチルフェノール等が使用できる。これらは単独で用いても良いし併用してもよい。市場価格、入手の容易性、性能の観点からパラブチルフェノール、パラオクチルフェノール、ノニルフェノールが特に好ましい。
【0024】
前記のアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等が使用できる。中でも反応性等の観点からホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0025】
本発明のロジン多価アルコールエステル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定におけるポリスチレン換算値として、500g/mol以上5000g/mol以下が好ましく、500g/mol以上3000g/mol以下がさらに好ましく、500g/mol以上2000g/mol以下が特に好ましい。5000g/molを超えると乳化適性向上効果が低下する。500g/mol未満では反応の進行が不十分で効果を発揮できないことがある。
【0026】
本発明の樹脂の水酸基価は20mgKOH/g以上400mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以上300mgKOH/g以下がさらに好ましく、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が特に好ましい。400mgKOH/g以下でエステル化反応が十分進行し、20mgKOH/g以上で乳化適性向上効果に優れる。
【0027】
本発明の樹脂は、エステル化反応後冷却して取り出してもよいし、インキ溶剤や植物油に溶解後ワニスとして取り出してもよい。また、本発明の樹脂をより取り扱いやすくするために石油樹脂等のバインダー樹脂と混合後取り出してもよい。
【0028】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物は、本発明のロジン多価アルコールエステル樹脂の他、バインダー樹脂、顔料、植物油、溶剤、ドライヤーや乾燥抑制剤等からなる。通常はバインダー樹脂を溶剤や植物油に溶解したワニスを製造するか、溶剤や植物油中でバインダー樹脂の反応を行ってワニスを製造し、それをインキの製造に供する。
【0029】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物に用いることができるバインダー樹脂としては、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂、および、それらの油変性樹脂が挙げられる。
【0030】
前記のロジン変性フェノール樹脂とは、ロジン類に、多価アルコール、アルキルフェノール、アルデヒド、必要に応じて石油樹脂を重縮合したものである。
【0031】
ロジン変性フェノール樹脂の原料であるロジン類としては、前記したロジン多価アルコールエステル樹脂に用いることができるロジン類を用いることができる。
【0032】
前記のロジン変性フェノール樹脂の原料である多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上のアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし併用しても良い。これらの中でも樹脂の分子量、融点等を適正に調整する目的としてはグリセリン及び/又はペンタエリスリトールが好ましい。多価アルコール類の使用量は、使用するロジンの酸基1モルに対して水酸基が0.5モルから2.0モルとなる量が好ましい。0.5モル未満では十分に重合を進めることが困難であり、2.0モルを越えると、製造した樹脂の親水性が高くなりすぎることがある。
【0033】
前記のロジン変性フェノール樹脂の原料であるアルキルフェノールとしては、クレゾール、アミルフェノール、ビスフェノールA、パラブチルフェノール、パラオクチルフェノール、ノニルフェノール、パラドデシルフェノール、ジブチルフェノール、ジメチルフェノール等が使用できる。これらは単独で用いても良いし併用してもよい。市場価格、入手の容易性、バインダー樹脂の性能の観点からパラブチルフェノール、パラオクチルフェノール、ノニルフェノールが特に好ましい。
【0034】
前記のロジン変性フェノール樹脂の原料であるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等が使用できる。中でも反応性等の観点からホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0035】
重縮合は必要に応じて段階を追って行うことができる。例えば、アルキルフェノールとアルデヒドを予め塩基性触媒存在下で反応させて製造したレゾール及び/又はアルキルフェノールとアルデヒドを予め酸性触媒存在下で反応後さらにアルデヒドと塩基性触媒存在下で反応させて製造したノボラックレゾールをロジンと反応させ、次いで多価アルコールと反応させて製造することもできる。また、ロジンと多価アルコールとを反応させたロジンエステルを予め製造し、アルキルフェノールとアルデヒドを塩基性触媒存在下で反応させたレゾール及び/又はアルキルフェノールとアルデヒドを予め酸性触媒存在下で反応後さらにアルデヒドと塩基性触媒下で反応させて製造したノボラックレゾールをロジンエステルと反応させて製造することもできる。ロジンとアルキルフェノールとアルデヒドを混合して反応させ、次いで多価アルコールと反応させることもできる。
【0036】
前記の予め製造するレゾールまたはノボラックレゾールに使用する塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属触媒類、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。また、ノボラックレゾールに使用される酸性触媒としてはパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0037】
ロジン変性フェノール樹脂におけるレゾール及び/又はノボラックレゾールの使用比率は、15質量%以上60質量%以下が好ましく、25質量%以上50質量%以下が特に好ましい。15質量%未満では樹脂の分子量が低くなり、バインダー樹脂として使用した際に粘性が不足したり印刷時のミスチングを誘発したりすることがある。60質量%を越えるとバインダー樹脂と溶剤との親和性が著しく上昇し、印刷時の乾燥が遅くなりすぎることがある。
【0038】
ロジン変性フェノール樹脂に必要に応じて使用させる石油樹脂は30質量%以下が好ましい。
【0039】
ロジン変性フェノール樹脂に必要に応じて使用させる石油樹脂とはナフサクラッカーから生成するC5留分、C9留分やシクロペンタジエン類及びそのダイマー等が原料の重合物である。原料は必要な性状を得るために適宜混合して使用される。重合方法は熱重合とカチオン重合がよく知られているが、いずれの重合方法で製造した石油樹脂でも構わない。ロジン変性フェノール樹脂の原料として使用する石油樹脂は二重結合を含むものが好ましい。二重結合を含む石油樹脂としてはC5留分及び/又はシクロペンタジエン類及び/又はそのダイマーを原料の一部として使用したものが挙げられる。この場合C5留分及び/又はシクロペンタジエン類及び/又はそのダイマーは合計で10質量%以上含有することが好ましい。10質量%未満の場合には反応性が悪いことがある。ロジン変性フェノール樹脂の原料として使用せず、バインダー樹脂として使用する場合には、必ずしも二重結合を含む必要は無い。したがってC5留分及び/またはシクロペンタジエン類及び/またはそのダイマーは10質量%未満でも構わないし、石油樹脂を水添し二重結合、芳香族を飽和させた水添石油樹脂も好適に使用できる。これらの二重結合をもたない石油樹脂をロジン変性フェノール樹脂の製造時に混合してもよい。
【0040】
ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定におけるポリスチレン換算値として、10000g/mol以上が好ましく、15000g/mol以上がさらに好ましく、30000g/mol以上150000g/mol以下が特に好ましい。10000g/mol以下ではインキに必要な粘度が得られにくいことがあり、150000g/molを超えると溶解してワニス化するのが困難になることがある。
【0041】
石油樹脂変性フェノール樹脂とは、アルキルフェノールとアルデヒドを予め塩基性触媒存在下で反応させて製造したレゾール及び/又はアルキルフェノールとアルデヒドを予め酸性触媒存在下で反応後さらにアルデヒドと塩基性触媒存在下で反応させて製造したノボラックレゾールと石油樹脂、必要に応じてロジン及び/又はロジンエステルとを反応させたものである。
【0042】
石油樹脂変性フェノール樹脂においてレゾール及び/又はノボラックレゾールの使用比率は10質量%以上70質量%以下が好ましく、15質量%以上60質量%以下が特に好ましい。10質量%未満では樹脂の分子量が低くなり、バインダー樹脂として使用した際に、粘性が不足したり印刷時のミスチングを誘発したりすることがある。70質量%を越えるとバインダー樹脂と溶剤の親和性が著しく上昇し、印刷時の乾燥が遅くなりすぎることがある。
【0043】
石油樹脂変性フェノール樹脂に使用する石油樹脂とはナフサクラッカーから生成するC5留分、C9留分やシクロペンタジエン類及びそのダイマー等が原料の重合物である。原料は必要な性状を得るために適宜混合して使用される。重合方法は熱重合とカチオン重合がよく知られているが、いずれの重合方法で製造した石油樹脂でも構わない。石油樹脂変性フェノール樹脂の原料として使用する石油樹脂は二重結合を含むものが好ましい。二重結合を含む石油樹脂としてはC5留分及び/又はシクロペンタジエン類及び/又はそのダイマーを原料の一部として使用したものが挙げられる。この場合C5留分及び/又はシクロペンタジエン類及び/又はそのダイマーは合計で10質量%以上含有することが好ましい。10質量%未満の場合には反応性が悪いことがある。
【0044】
ロジン変性フェノール樹脂や石油樹脂変性フェノール樹脂の製造は無溶剤下で行ってもよいし、必要に応じてオフセット印刷用インキに用いられる植物油類や溶剤類を反応溶剤として使用してもよい。反応溶剤中で行うと、溶剤を使用しなければ溶融粘度が高くなりすぎて製造できない組成の樹脂を製造することが可能である。この場合、植物油類や溶剤類の樹脂溶液、即ちワニスとして得られ、溶解工程を経ることなくオフセット印刷用インキの調製に供することができる。
【0045】
アルキッド樹脂とは、動植物油などの油脂、多価アルコール、多塩基酸等を反応させた樹脂である。必要に応じて、モノエステル、樹脂酸、石油樹脂等を併用したものもある。バインダー樹脂として好適に用いることのできるアルキッド樹脂であればいずれのアルキッド樹脂を含有しても構わない。
【0046】
前記の植物油としてはアマニ油、桐油、大豆油、サフラワー油、綿実油、脱水ひまし油、カノーラ油、再生植物油の植物油及びそれら植物油脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等の植物油脂肪酸モノエステル等が挙げられる。
【0047】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物に含まれる溶剤としては、n−パラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族系溶剤、オレフィン系溶剤等の石油系溶剤、軽油、スピンドル油、マシン油、シリンダー油、テレピン油、ミネラルスピリット等が挙げられる。
【0048】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物に含まれるバインダー樹脂は、一度植物油及び/又は溶剤に溶解し、必要に応じて2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤を添加したり、植物油及び/又は溶剤で希釈したり、アルミキレート等のゲル化剤で粘度調整したワニスとしてオフセット印刷用インキ製造に供される。前述の通り、樹脂を植物油及び/又は溶剤中で製造し、ワニスを得る方法で製造した場合はそのまま、あるいは、粘弾性調整の後にオフセット印刷用インキ製造に供することができる。ワニス中の樹脂類の比率は、30質量%以上65質量%以下が好ましく、35質量%以上55質量%以下が特に好ましい。30質量%未満ではワニス粘度が低くなりすぎるため顔料分散に使用する際に分散しにくくなることがあり、65質量%を越えるとワニス粘度が高くなりすぎ、取り扱いが困難となることがある。
【0049】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物に含まれるバインダー樹脂のオフセット印刷用インキ中の含有率は、10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下が更に好ましい。10質量%未満ではインキの粘性が十分でないと同時に顔料分散を安定化できず凝集させてしまうなどの問題が発生する。50質量%を越えるとインキ粘度が高くなりすぎることがある。
【0050】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物に含まれる植物油及び/又は溶剤のオフセット印刷用インキ中の含有率は、その他の組成物を除いた全量である。植物油と溶剤の使用比率は目的に応じて変えてよい。例えば、溶剤を含まないことを特長とするノンVOCインキの場合は溶剤を含有せず植物油のみを使用する。例えば、熱風乾燥を行うオフセット輪転印刷用インキの場合は、植物油類の使用量を減らし溶剤類を多く使用する。昨今、環境対応型インキとして大豆油インキが脚光を浴びており、オフセット輪転印刷用インキにおいても大豆油等を含有するものが好ましい。
【0051】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物に含まれる顔料としては、有機又は無機顔料が使用できる。例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸性カーボンブラック、中性カーボンブラック、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料などが挙げられる。オフセットインキ組成物に含まれる顔料の含有率は10〜30質量%が好ましい。10質量%未満では着色が不十分となることがあり、30質量%を越えると顔料の凝集を抑制することが困難となる結果、インキ流動性が不十分となることがある。また、必要に応じ炭酸カルシウム等の体質顔料を使用することもできる。体質顔料の含有率は15質量%未満が好ましい。15質量%以上ではインキ流動性、粘弾性等に悪影響を与えることがある。
【0052】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物に必要に応じて含まれる乾燥促進剤(ドライヤー)としては、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛等の金属とオクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸等のカルボン酸との塩である金属石鹸類等が使用可能である。
【0053】
本発明のオフセット印刷用インキ組成物に必要に応じて含まれる乾燥抑制剤としては、ハイドロキノン、メトキノン、tert−ブチルハイドロキノンなどが使用可能である。
【0054】
本発明のロジン多価アルコールエステル樹脂は、バインダー樹脂とロジン多価アルコールエステル樹脂の合計100質量部に対し0.2〜10質量部含有していることが好ましく、0.4〜5質量部がさらに好ましく、0.4〜3質量部が特に好ましい。0.2質量部より少なかったり10質量部より多かったりすると乳化適性向上効果が得られないことがある。
【0055】
本発明の樹脂は、インキに均一に混合できればインキ製造においてどの段階で添加しても構わない。バインダー樹脂と共に溶剤等に溶解して使用に供してもよいし、バインダー樹脂とは別に溶剤等に溶解して添加してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を提示して本発明をさらに具体的に説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。なお、製造例、実施例及び比較例で示す「部」及び「%」は、質量部及び質量%を意味する。
【0057】
製造例1
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、ガムロジン1000部、酸化亜鉛0.6部、ソルビトールを179部仕込んで加熱溶解後、275℃まで4時間かけて昇温した。適時サンプリングして酸価を測定し、41mgKOH/gに達した時点で20hPaで1時間減圧して樹脂aを979部得た。
【0058】
製造例2〜12
原材料と減圧開始酸価を表1に記載した通りに変更したほかは樹脂aと同様に樹脂b,d〜h,ra,rcを製造した。尚、樹脂rh〜rjについても同様の方法での製造を試みたが保温中、減圧時に昇華が激しく樹脂製造を断念した。
【0059】
製造例13
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、ガムロジン1000部を仕込んで溶解、160℃まで昇温後、無水マレイン酸30部を仕込んで、無水マレイン酸強化ロジンを得た。次いで220℃まで昇温後、酸化亜鉛0.6部、ソルビトール 432部を仕込んだ。次いで275℃まで4時間かけて昇温し、適時サンプリングして酸価を測定し、30mgKOH/gに達した時点で20hPaで1時間減圧して樹脂cを1173部得た。
【0060】
製造例14、15
原材料と減圧開始酸価を表1に記載した通りに変更した以外は樹脂cと同様に樹脂j,rbを製造した。
【0061】
製造例16
攪拌機、ジムロート冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、ノニルフェノール1000部、パラホルム(ホルムアルデヒド分92%)298部、トルエン425部を仕込み75℃まで昇温後、水酸化ナトリウム水溶液(48%)20部を仕込み発熱を制御しながら90℃に昇温した。90℃で3時間保温後、トルエン257部を投入し、次いで塩酸25部、水91部の混合物を投入して混合し、分液ロートで下層を除去しレゾール溶液Iを得た。
【0062】
製造例17
樹脂bと同様の方法を実施後、取り出さずに220℃まで冷却後、レゾール溶液Iを84部添加して1時間保温の後、20hPaで1時間減圧して樹脂iを1064部得た。
【0063】
製造例18
樹脂rbと同様の方法を実施後、取り出さずに200℃まで冷却後、レゾール溶液Iを260部添加して1時間保温の後、20hPaで1時間減圧して樹脂rdを1040部得た。
【0064】
製造例19
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、トール油ロジン1000部を仕込んで溶解、150℃まで昇温後、アクリル酸124部を仕込んで、アクリル酸強化ロジンを得た。次いでセバシン酸30部、ペンタエリスリトール136部を仕込み、245℃まで昇温後酸化マグネシウム1部を投入し、酸価 25mgKOH/gで1時間減圧して樹脂reを1110部得た。
【0065】
製造例20
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、ガムロジン1000部、イソフタル酸174部、ペンタエリスリトール194部、酸化亜鉛13.3部を仕込み、260℃まで昇温した。酸価 18mgKOH/gで1時間減圧して樹脂rfを1170部得た。
【0066】
製造例21
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、ガムロジン1000部を仕込んで溶解、140℃まで昇温後、アクリル酸150部を仕込んで、アクリル酸強化ロジンを得た。その後、トリメチロールプロパン230部を仕込み、255℃まで昇温した。酸価 33mgKOH/gで1時間減圧して樹脂rgを1170部得た。
【0067】
製造例22
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、ガムロジン1000部を仕込み200℃まで昇温した。次いで、レゾール溶液I 1310部を投入して昇温し、220℃でペンタエリスリトール 60部、グリセリン 20部を投入後250℃まで昇温し、次いでパラトルエンスルホン酸 4部を投入した。適時サンプリングして酸価を測定し、20mgKOH/gとなった時点で20hPaで1時間減圧して樹脂α(バインダー樹脂)を1500部得た。
【0068】
製造例23
攪拌機、ジムロート冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、パラオクチルフェノール 1000部、パラホルム(ホルムアルデヒド分92%)300部、トルエン360部を仕込み60℃まで昇温後、水酸化ナトリウム水溶液(48%)1部を仕込み発熱を制御しながら70℃に昇温した。70℃で10時間保温後、トルエン360部を投入し、次いで塩酸 2部、水 97部の混合物を投入して混合し、分液ロートで下層を除去し、レゾール溶液IIを得た。
【0069】
製造例24
攪拌機、リービッヒ冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、ガムロジン1000部、レゾール溶液II 1200部、酸化亜鉛 6部を仕込み220℃まで昇温後、グリセリン100部を投入し、次いで260℃まで昇温した。260℃で保温しながら、適時サンプリングして酸価を測定し、25mgKOH/gとなった時点で20hPaで1時間減圧して樹脂β(バインダー樹脂)を1550部得た。
【0070】
製造例25
攪拌機、ジムロート冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、樹脂α 42部、大豆油20部、AFソルベント7号(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)38部を仕込み、200℃まで2時間かけて昇温し、200℃で2時間保温した。130℃まで冷却後、ALCH(川研ファインケミカル株式会社製)の溶液(AFソルベント7号に濃度50%で溶解)を2部添加し、170℃で1時間保温し、ワニスαを得た。
【0071】
製造例26
攪拌機、ジムロート冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、樹脂β 35部、大豆油20部、AFソルベント7号 45部を仕込み、240℃まで2時間かけて昇温し、240℃で1時間保温した。130℃まで冷却後、ALCHの溶液(AFソルベント7号に濃度50%で溶解)を1.5部添加し、180℃で1時間保温し、ワニスβを得た。
【0072】
製造例27
攪拌機、ジムロート冷却器、温度計付きセパラブルフラスコに、樹脂a 42部、大豆油20部、AFソルベント7号 38部を仕込み、185℃まで1時間かけて昇温し、185℃で1時間保温し、ワニスaを得た。
【0073】
製造例28〜41
樹脂aを樹脂b,d〜j,ra〜rd,rf,rgに変更した以外はワニスaと同様の方法でワニスb,d〜j,ra〜rd,rf,rgを得た。樹脂rh〜rjは製造不能であったため、ワニスも製造しなかった。
【0074】
製造例42
樹脂α 42部を樹脂α 41.2部,樹脂c 0.84部に変更したほかはワニスαと同様にしてワニスcを得た。
【0075】
製造例43
樹脂cを樹脂reに変更した以外はワニスcと同様にしてワニスreを得た。
【0076】
酸価および水酸基価は、JIS K0070に準拠して測定した。ただしベンゼンの代わりにトルエンを使用した。
重量平均分子量は東ソー株式会社のHLC−8120GPCを使用し、分析カラムとしてTSKgel SuperHM−Hを2本直列に配置し、ガードカラムとしてTSKgel guardcolumn SuperH−H、リファレンスカラムとしてTSKgel SuperH−RCを2本直列に配置して、THFを溶媒とし、サンプル流量0.6ml/min.、リファレンス流量0.3ml/min.の条件で測定した。重量平均分子量はポリスチレン換算で求めた。
【0077】
水への溶解性試験方法
ハンマー粉砕した樹脂1部を水100部に投入し、25℃で1時間撹拌後、濾紙でろ過し乾燥物の重量を測定した。いずれの樹脂も0.95部以上回収出来、水に対し難溶解と判断した。尚同様の試験を、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド縮合物のエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物に対して実施したところ、いずれも完全混合され濾紙残さは得られなかった。
【0078】
インキの調製
ワニスと顔料(カーボンブラックMA−7,三菱化学株式会社製)と溶剤(AFソルベント7号)を表2の質量割合で配合し、配合物を三本ロールミルで練肉して印刷インキを得た。得られた印刷インキを用いて乳化適性試験を行った結果を表2に示す。
【0079】
印刷インキの乳化適性試験
印刷インキの乳化適性試験はリソトロニック乳化試験機(novocontrol社製)を使用し、下記の条件で行った。
インキ量 25g
温度 40℃
水の添加速度 2ml/分
撹拌速度 1200rpm
水添加開始前のコンディショニング 5分
撹拌翼とカップのギャップ 1mm
リソロトニック乳化試験機は、一定量のインキを測定用のカップに入れて、同装置の撹拌翼で撹拌しながら、一定速度で水を加えていったときの撹拌翼にかかるトルクを経時的に測定する装置である。
カップに入れたインキに水を添加していくと、添加開始直後はトルクが低下する現象がみられる。このときのトルクの最小値をTminとする。その後、水の添加量が増えるに従ってトルクも上昇していく。トルクが単調に増加して最大値に至り一気に低下する場合と、トルクが極大値をもちその後徐々に低下していく場合があるが、いずれの場合も添加した水がインキに混合されなくなりトルクが低下したり不安定となったりした時点の乳化率を最大乳化率とする。最大乳化率は下式で示す。
最大乳化率(%)=水の添加量/インキ量×100
このときトルクの最大値または極大値をTmaxとする。水を添加することによるトルク変化が小さいものが、印刷機における変化が小さいことを示すため好ましい。以下の式で示されるトルク比をこの変化の目安とする。
トルク比=Tmax/Tmin
このとき、最大乳化率は20%以上100%以下が好ましく、30%以上80%以下がよりこのましい。最大乳化率が100%を超えると過乳化状態となり、20%未満では版上に過剰に湿し水が残ったり、汚れが発生することがある。また、トルク比は2以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.7以下が特に好ましい。2を超えると湿し水量の調整に伴いインキ粘度が大きく変化し安定した印刷が出来ないことがある。
【0080】
【表1】
【0081】
表1中、無水マレイン酸強化ロジンの量はガムロジン1000部に対して無水マレイン酸30部を製造例13のように反応したもの(樹脂c、樹脂rb、樹脂rdに用いた無水マレイン酸強化ロジン)を1030と表示し、ガムロジン1000部に対して無水マレイン酸100部を製造例13のように反応したもの(樹脂jに用いた無水マレイン酸強化ロジン)を1100と表示している。同様に、アクリル酸強化ロジンの量はトール油ロジン1000部に対してアクリル酸124部を製造例19のように反応したもの(樹脂reに用いたアクリル酸強化ロジン)を1124と表示し、ガムロジン1000部に対してアクリル酸150部を製造例21の様に反応したもの(樹脂rgに用いたアクリル酸強化ロジン)を1150と表示している。
【0082】
【表2】
表2に示す結果から明らかなように、本発明のロジン多価アルコールエステル樹脂を含む印刷インキ(実施例)は、乳化率変化に対するトルク比が2以下と小さいため、印刷機上でのインキ粘度の変化が小さくなり、かつ、最大乳化率も20%以上100%以下の適正な領域にあり良好な乳化適性を示しているので、汚れの発生の懸念が少ない。しかし、本発明のロジン多価アルコールエステル樹脂を含まない印刷インキは、乳化率変化に対するトルク比が2以上と大きく、かつ、最大乳化率が100%以上と高すぎる結果であった。