(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、眼科用レーザ治療装置の光学系及び制御系を示す概略構成図である。本実施形態の眼科用レーザ治療装置は、患者眼の眼底に治療レーザ光を照射し、組織を凝固させる光凝固装置となっている。
【0009】
眼科用レーザ治療装置100は、レーザ光源ユニット10、レーザ照射光学系(ユニット)40、観察光学系(ユニット)30、照明光学系(ユニット)60、制御部70、操作ユニット80、を備えている。観察光学系30、照明光学系60は、スリットランプ(細隙灯顕微鏡)である。レーザ照射光学系40は、スリットランプに取り付けられる。
レーザ光源ユニット10は、治療レーザ光源11、エイミング光源12、ビームコンバイナ13、集光レンズ14、シャッタ15、シャッタ16、を備える。
【0010】
治療レーザ光源11は、治療に適した波長のレーザ光を出射する。本実施形態では、光源11は、眼底にレーザ光のエネルギを吸収させるために可視域の波長、例えば、532nm(緑色)、577nm(黄色)、等のレーザ光を出射する構成とする。エイミング光源12は、治療レーザ光の照射位置(スポット)を術者に認識させるためのエイミング光(照準光)を出射する。本実施形態では、エイミング光は、術者が肉眼で視認できるように可視域の波長とする。ここでは、エイミング光は、治療レーザ光と異なる波長、例えば、波長640nm(赤色)とする。これにより、観察光学系30に治療レーザ光を減衰させる術者保護フィルタがあっても、術者が治療レーザ光の照射位置を確認しやすくなる。エイミング光源12としては、例えば、赤色のレーザ光を出射するレーザダイオード(LD)が用いられるが、これに限定されない。
【0011】
ビームコンバイナ13は、治療レーザ光とエイミング光とを合波させる(同軸とする)役割を持つ。ビームコンバイナ13は、例えば、治療レーザ光の大部分を反射しエイミング光を透過する。従って、本実施形態のビームコンバイナ13は、ダイクロイックミラーとなっている。ビームコンバイナ13で合波されたレーザ光は、集光レンズ14により集光され、レーザ照射光学系40へと導光する光ファイバ20に入射される。
シャッタ15は、治療レーザ光源11とビームコンバイナ13との間に設けられている。シャッタ15は、治療レーザ光を遮断する。シャッタ15は、遮蔽板と、遮蔽板の駆動機構とを有し、指令信号に基づいて遮蔽板を光路に対して挿脱する構成となっている。シャッタ16は、ビームコンバイナ13の下流で、ビームコンバイナ13と集光レンズ14の間に配置される。シャッタ16は、シャッタ15と同様の構成であり、エイミング光、治療レーザ光を遮断する。シャッタ16は、装置の異常時に閉じられる安全シャッタであるが、エイミング光が走査されるときに、エイミング光の照射と遮断を行うために使用してもよい。シャッタ15も、治療レーザ光の照射と遮断を行うために使用しても良い。なお、各シャッタは、光路を切換える(偏向する)機能を有するガルバノミラー、音響光学素子に置き換えてもよい。
【0012】
レーザ照射光学系(レーザデリバリ)40は、リレーレンズ41、ズームレンズ42
ミラー43、コリメータレンズ44、光スキャナ(走査部)50、対物レンズ45、反射ミラー(最終ミラー)46、を備えている。レーザ照射光学系40の上流には、ファイバ20の出射端が置かれる。ファイバ20は、レーザ光源ユニット10からのレーザ光をレーザ照射光学系40に導光している。ズームレンズ(群)42は、光軸に沿って移動する複数のレンズを有し、レーザ光の眼底上でのスポットサイズを変更する役割を持つ。反射ミラー46は、観察光学系30の光路と、レーザ光の光軸を合わせるための合波部材である。反射ミラー46は、観察光学系30の左右眼の光路の間に置かれる。
光スキャナ50は、レーザ光(治療レーザ光とエイミング光)を眼底上で2次元的に走査(移動)させる機能を持つ。言い換える。光スキャナ50は、治療レーザ光等の光軸(光路)を偏向する機能を持つ。光スキャナ50によって、レーザ光の照射方向(照射位置)が調整される。
【0013】
また、本実施形態では、光スキャナ50は、治療レーザ光の照射位置、エイミング光の照射位置を眼底上で移動させる移動手段(移動光学系)として兼用される。言い換えると、光スキャナ50は、後述する照射パターンに対応して照射されるエイミング光のスポットが並べられたパターン(エイミングパターン)を移動させる。
光スキャナ50は、レーザ光をX方向(患者眼に対して左右方向)に走査する第1の走査ユニットと、レーザ光をY方向(患者眼に対して上下方向)に走査する第2の走査ユニットを有する。本実施形態の第1及び第2の走査ユニットは、それぞれガルバノミラーユニットとなっている。ここでは、2つのガルバノミラーユニットのミラーの回転軸が互いに直交するように配置されている。なお、光スキャナとしては、レーザ光(の光軸)を眼底上で2次元的(XY方向)に走査(移動)させる構成でればよく、X方向の走査をポリゴンミラーとし、Y方向の走査をガルバノミラーとしてもよい。また、X方向、Y方向の走査を2つのレゾナントミラーで行う構成としてもよい。
【0014】
ズームレンズ42は図示を略すレンズカムに保持されており、術者の操作によりレンズカムが回転されることで、各ズームレンズ42が光軸に沿って移動される。ズームレンズ42の移動により、レーザ光のスポットサイズ(眼底上でのスポット径)が、50〜500μmの間で連続的に変化される。スポットサイズは、ファイバ20の出射端面の拡大倍率であり、本実施形態では、1〜10倍の拡大率となる。ズームレンズ42の位置は、レンズカムに取り付けられたエンコーダ42aにより検出される。制御部70は、各レンズの位置情報(検出信号)をエンコーダ42aより受け取り、レーザ光のスポットサイズを得る。
【0015】
レーザ光(スポット)がターゲット面で2次元のパターンとして形成されるように、光スキャナ50は制御部70からの指令信号に基づいて制御される。また、図示は略すが、反射ミラー46は、術者の操作により、レーザ光の光軸を2次元的に傾斜(偏向)させる機構(手動マニュピュレータ)が接続されてもよい。
【0016】
患者眼Eの角膜には、コンタクトレンズCLが当接される。コンタクトレンズCLは、患者眼Eの角膜、水晶体の屈折力をキャンセルさせる役割を持つ。コンタクトレンズCLによって、コンタクトレンズCLのとミラー46との間に患者眼Eの眼底の共役面が形成される。
【0017】
光ファイバ20を出射したレーザ光は、リレーレンズ41、ズームレンズ42、ミラー43、コリメータレンズ44を介した後、光スキャナ50に入射する。レーザ光は、光スキャナ50によって偏向され、対物レンズ45から出射される。レーザ光はミラー46によって患者眼Eの方向に折り曲げられ、コンタクトレンズCLを介して眼底(ターゲット面)へと導光される。
【0018】
観察光学系30は、対物レンズ、変倍光学系、術者保護フィルタ、正立プリズム群、視野絞り、接眼レンズ、を備える。術者保護フィルタは、フィルタと、フィルタを観察光路に挿脱する挿脱機構と、を備える。フィルタは、少なくとも治療レーザ光が照射されている間、観察光路内に挿入される構成となっている。
照明光学系60は、照明光源、コンデンサーレンズ、スリット板、投影レンズ、を備える。スリット板には、投影する照明光をスリット状にするための開口が形成されている。スリット板には、開口の幅を偏向する機構が形成されている。また、スリット板は、水平回転可能(照明光軸を軸として回転可能)となっている。スリット板の操作におり、眼底に投影されるスリット光の幅、角度を調整できる。術者は、照明光学系60によりスリット照明された眼底を観察光学系30で観察し、レーザ照射を行う。
【0019】
装置100を統轄、制御する制御部70には、治療レーザ光源11、エイミング光源12、シャッタ15及び16、エンコーダ42a、光スキャナ50、メモリ71、操作ユニット80、が接続されている。制御部70には、中央演算処理装置(Central Processing Unit)が用いられる。記憶手段であるメモリ71には、照射パターン、エイミングルール、手術条件、装置の制御プログラム、等が記憶されている。
【0020】
操作ユニット80は、治療レーザ光の照射をトリガする信号を入力するトリガ入力手段であるフットスイッチ81と、レーザ照射条件等の設定、表示を行うためのディスプレイ82を備える。ディスプレイ82は、タッチパネル式であり、表示手段と設定(入力)手段を兼ねる。
【0021】
ディスプレイ82には、各種設定部と、設定を行う(設定信号を入力する)ためのパネルスイッチが設けられている。ディスプレイ82は、グラフィカル・ユーザ・インターフェースの機能を有し、ユーザが視覚的にレーザ照射条件等の確認、設定を行うことができる構成となっている。ディスプレイ82では、以下の照射条件の項目を設定・表示可能となっている。
【0022】
ディスプレイ82は、出力設定部83、照射時間設定部84、移動モード設定部85、パターン設定部86、移動方向設定部87、詳細設定スイッチ88、メニュースイッチ82a、を備える。パターン設定部86は、スイッチ86a、スポット間隔設定部86bを備える。ディスプレイ82上の各項目をタッチすることにより数値等を設定できる。設定された数値等の条件は、メモリ71に記憶される。
【0023】
出力設定部83では、治療レーザ光の出力(パワー)を設定できる。照射時間設定部84では、治療レーザ光の照射時間(パルス幅)を設定できる。移動モード設定部85では、エイミング光の照射位置の移動モードを設定できる。移動モード設定部85では、2つのモードが設定可能となっている。パターン設定部86では、治療レーザ光の照射パターンが設定できる。スイッチ86aがタッチされるとプルダウンメニューが表示され、設定可能な候補が表示される。パターン設定部86内のタッチ操作等により、スポットの数値を増減させることができる。スポット間隔設定部86bでは、照射パターンのスポット間隔を設定できる。移動方向設定部87では、一連の治療レーザ光の照射の後の、エイミング光の照射位置(エイミング光のスポットが並べられたパターン全体)の移動方向を設定できる。詳細設定スイッチ88では、詳細な条件が設定できる。メニュースイッチ82aは、その他の設定部等を呼び出すためのスイッチとなっている。
【0024】
スポット間隔設定部86bは、照射パターンにおけるスポット間の間隔を設定するためのスイッチであり、制御部70にスポット間隔を入力するスポット間隔入力手段として機能する。ここでいうスポット間隔は、隣合するスポットの縁の最短距離としている。スポット間隔としては、1つのスポット分の間隔を1.0として、0.5から2.0まで、25ステップの間隔が用意されている。本実施形態では、スポット間隔1.0が設定されているものとする。
【0025】
移動方向設定部87では、上下方向(Y方向)に沿った上から下への移動方向と、左右方向(X方向)に沿った左から右への移動方向の2種類が切替設定可能となっている。ここでは、移動方向は、スリット光(スリット照明光)の長手方向に沿うものとする。移動方向設定部87は、制御部70にエイミング光の照射位置の移動方向を入力する移動方向入力手段として機能する。ここでは、上下方向が設定されているものとする。
【0026】
次に、照射パターンとエイミング光の照射について説明する。
図2は、照射パターンを示す図である。ここで、照射パターンは、治療レーザ光の照射スポット位置が並べられたパターンである。本実施形態の照射パターンは、スポットが離間して並べられたパターンとなっている。エイミング光は、治療レーザ光の照射スポット位置を術者に視認させるために、照射パターンに対応付けられたスポット位置に照射され、照射パターンをシンボル的に示す。本実施形態では、治療レーザ光の照射位置(照射予定位置)と同じスポット位置にエイミング光を照射する構成とする。
【0027】
照射パターンでは、規則(例えば、幾何学的図形)に基づいてスポットが配列される。照射パターンとしては、例えば、スポットが、2×2、3×3、4×4、等の正方行列状に並べられたパターン(正方パターン:
図2(a)参照)、正方パターンで偶数行のスポット列がずれ,千鳥模様状となったパターン(千鳥パターン:
図2(b)参照)、スポットが円弧状に並べられたパターン(円弧パターン)、円弧パターンが外径方向や内径方向に並べられ扇形となるパターン(扇形パターン)、スポットが円状に並べられたパターン(円パターン)、円パターンが分割されたパターン(円分割パターン)、スポットが直線状に並べられたパターン(直線パターン)、等が挙げられる。これらの照射パターンは、装置メーカによって用意され、メモリ71に記憶されている。
【0028】
本実施形態のエイミング(動作)では、以下に説明するエイミングルールに基づいて行われる。エイミングでは、治療レーザ光未照射の状態(位置合わせ状態)において、エイミング光のスポットが適宜点滅し、スポットの下の状態を術者が確認し易い構成となっている。具体的には、照射パターンの
スポットを複数のグループに分割し、複数のグループ間でスポットが所要の時間間隔で点滅するようにエイミング光を照射する構成とする。グループの分割において、グループ間で一部のスポットが重複してもよい。本実施形態での所要の時間間隔とは、異なるグループ間で、術者にスポットが消灯して見えるような時間であり、言い換えると、スポットの下の状態を術者
が認識できる程度の時間である。照射パターンを分割した各グループと、各グループ毎の点灯(消灯)時間が、エイミングルールとなる。エイミングルールは、エイミング用制御プログラムとしてメモリ71に記憶される。制御部70は、エイミングルールに基づいてエイミング光を照射する。このようなエイミングは、特開2011−224345公報に開示されている。エイミングの例として上記公報を参照されたい。
【0029】
なお、エイミングルールは、治療レーザ光の照射位置を術者が認識できればよい。このため、様々なエイミングルールが利用できる。
【0030】
例えば、エイミングルールとして、照射パターンの全スポットを常時点灯する構成としてもよい。また、全スポットを点滅させる構成としてもよい。
また、治療レーザ光のスポット位置に必ずしもエイミング光を照射しなくてもよい。例えば、照射パターンの最外周のスポット位置だけにエイミング光を照射する構成としてもよい。また、照射パターンの輪郭、領域を示すような構成としてもよい。例えば、正方パターンであれば、正方形の輪郭(枠)をエイミング光の連続的なスキャン照射によって示す構成、正方パターンの領域を示す十字を示すエイミング光の照射、が挙げられる。
図2に基づいて照射パターンにおけるスポットの配列規則を説明する。ここでは、正方パターン、千鳥パターンを例に挙げる。
図2(a)は、スポットが3×3の正方パターンを示している。
図2(b)は、スポットが3×3の千鳥パターンを示している。
【0031】
図2(a)に示すように、点線で示された格子Ra頂点に各スポットの中心が位置するよう、スポットが規則的に配列されている。格子Raは、3×3の正方格子である。従って、照射パターン(エイミング光の照射も同様)は、正方パターンとなる。格子Raによって、治療レーザ光、エイミング光のスポットの配列規則が規定される。格子Raの格子間隔は、隣接するスポット間(ここでは、上下左右方向)の間隔が所定の距離(長さ)となるように定められる。ここでは、スポット間隔Daは、隣合うスポットの間がスポット1つ分となるように、格子Raの間隔(格子間隔)をスポット1つ分として定めたものである。正方パターンの上下左右方向において、スポット間隔は、いずれのスポット間でも同じとなっている。このため、正方パターンのように治療レーザ光が照射されると、スポット周辺での熱の拡散が均質化され、スポット及びスポット間の凝固が均質化されるようになる。これにより、治療レーザ光が照射される領域(ここでは、3×3の正方行列状の領域)が概ね均質(均一)に治療される。
【0032】
治療時には、照射パターンで定められたスポット位置に連続的に治療レーザ光が照射される。3×3の正方パターンの場合、フットスイッチ81でのトリガ信号により、
照射パターン(ここでは、正方パターン)に対応付けて定められた第n番目のスポット位置から第m番目のスポット位置まで治療レーザ光が連続的に照射される。ここで、nは、自然数(n=1、2、…、N)とし、mは、nより大きい自然数(m>n、m=2、3、…、M)とする。このため、トリガによって、少なくとも2つのスポットに治療レーザ光が照射される。本実施形態では、術者によるトリガ入力によって、n番目からm番目まで連続的な一連の治療レーザ光の照射が行われる。nとmは、照射パターンに対応付けらて予め設定される。対応付けは、治療レーザ光の照射制御プログラムとしてメモリ71に記憶されている。n番目とm番目は、一連の治療レーザ光の照射の間に眼球等が動いてしまわない時間に収まるように設定されることが好ましい。
【0033】
例えば、n番目とm番目は、以下のように設定される。3×3の正方パターンに対応付けら
れたn番目のスポットは、最初のスポット(第1番目のスポット)
とする。m番目のスポットは、最後のスポット(第9番目のスポット)とする。従って、治療レーザ光の一連の照射で、照射パターンの全スポットに治療レーザ光を照射することとなる。
正方パターンにおける1番目のスポット位置となるスポットSa1から、9番目のスポット位置となるスポットSa9に向かって順番に治療レーザ光が照射される。一連のスポットの走査は、例えば、「2」を描くように隣接するスポット間で行われる。本実施形態では、治療レーザ光の照射の間に患者眼が動いてしまう影響を小さくするために、一連の治療レーザ光の照射を短くしている。具体的には、スポットSa1の照射が終わったら、スポットSa1の隣(図では、右隣)のスポットに治療レーザ光を照射する。また、1つのスポットにおける治療レーザ光の照射時間を、5〜50ms程度とし、例えば、20msとする。これにより、一連の治療レーザ光の照射は、0.2秒以下となる。一連の治療レーザ光の照射時間は、1秒以下が好ましい。このような手続き(流れ)を繰り返し、スポットSa1からスポットSa9まで、1つのスポットに1回ずつ治療レーザ光を連続的に照射する。このようにして、照射パターン(正方パターン)に対応する組織上の(スポット)位置が、治療レーザ光の一連の照射位置となる。
【0034】
このような正方パターンは、眼底の広い範囲を治療する際に有効と考えられる。正方パターンは、治療領域を概ね四角形(正方形とできるため、ある面積(領域)を複数の正方パターンによって概ね隙間無く敷き詰めることができる。
【0035】
なお、以上の説明では、n番目(ここでは、最初)のスポットからm番目(ここでは、最後)のスポットまで、治療レーザ光等を順次照射する構成としているが、これに限る
ものではない。n番目、m番目は、スポットの位置を規定するものであり、照射の順番を規定するものではない。
【0036】
次に、
図2(b)の千鳥パターンについて説明する。図中の点線で示された格子Rbの頂点に各スポットの中心が位置するように、スポットが規則的に配列されている。格子Rbは、3×3の三角格子(六方格子、六角格子)となっている。この三角格子の三角形は、正三角形となっている。このため、格子Rbの頂点間の距離は、いずれの方向も同じとなっている。従って、千鳥パターンでは、スポット間隔Dbが、上下、斜め(60度と240度、120度と300度)方向で一定となる。スポット間隔Dbは、スポット間隔Daと同じとする。格子Rbによって規定される千鳥パターンでは、あるスポットに隣接するすべてのスポットが同じ間隔となっているため、正方パターンよりも熱凝固の均質化が望める。千鳥パターンに基づく照射では、正方パターンの場合と同様に、最初のスポット位置に対応するスポットSb1から最後のスポット位置に対応するスポットSb9まで治療レーザ光が連続的に照射される。
【0037】
なお、本実施形態の千鳥パターンでは、千鳥パターンを隙間無く並べる(すべてのスポットが同じスポット間隔で並べる)ことができるように、すべての列のスポット数(ここでは縦の列)を同じとする。また、予め定められた列の位置を特定の方向にずらしている。例えば、偶数列(2列目)を奇数列(1、3列)よりも上方向にずらして配置している。これにより、
図2(b)に示す千鳥パターンは、上に凸で、下に凹となる。従って、千鳥パターンを複数並べたときに、隣合うパターンで凹凸が嵌合するように配列され、千鳥パターンを敷き詰めるように並べることができる。
【0038】
なお、千鳥パターンにおけるエイミング光、治療レーザ光の照射は、正方パターンの場合と同様である。
【0039】
なお、前述の正方パターンと千鳥パターンは、回転した状態(例えば、中央のスポットを中心とした回転)で用いられてもよい。スポット間の関係が、前述の格子に基づいて配列されていればよい。
【0040】
次に、光凝固治療について説明する。
図3は、眼底の広い範囲を示した図である。眼底Fには、上下方向(Y方向)に向いた(延びた)スリット光(縦スリット)SLと、治療レーザ光が照射された位置を模式的に示す照射済みスポット列TLSが示されている。眼底の広い範囲に亘って治療レーザ光を多数照射する治療方法として、例えば、汎網膜光凝固治療(PRT)が挙げられる。PRTでは、眼底Fの黄斑を除いた広い範囲に亘って凝固が行われる。PRTでは、数百から数千発(スポット)の治療レーザ光が照射される。治療レーザ光の照射では、照射部位を確認するために眼底Fは拡大される。拡大された(狭い)視野VF内でレーザ照射が進められる。照明光学系60によって、スリット光SLを眼底Fに投光し、観察光学系30で視野VFの範囲内を観察する。このときの視野VFは、スリット光SLの横幅の十数倍〜数十倍程度となっている(
図3では説明の簡便のため模式化している)。
【0041】
眼底F全体に治療レーザ光を照射するためには、視野VF内でのレーザ照射作業が終わった後に、次の治療レーザ光の照射領域を変更する必要がある。さらには、視野VF内全体で治療レーザ光の照射作業が終われば、観察領域を変えて作業を進める。治療レーザ光の照射位置を確認するためには、スリット光SLで照明された領域に沿って治療レーザ光を照射する必要がある(ここでは、下方)。
図3では、スリット光SL内に複数の治療レーザ光のスポットが照射されたスポット列TLSが示されている。
【0042】
スリット光SLに沿って治療レーザ光を照射する場合、例えば、正方パターン又は千鳥パターンを照射した後に、治療レーザ光の照射位置を上下方向に沿って移動させる必要がある。具体的には、観察光学系30、照明光学系60及びレーザ照射光学系40(スリットランプ全体)を、ジョイスティック等を操作して、上下動させる(ここでは、下方)。治療レーザ光の一連の照射の都度、術者は、観察光学系30等の操作をしなければならず、手間となる。
【0043】
次に、正方パターンに基づく治療レーザ光とエイミング光の照射について説明する。
図4及び
図5は、治療レーザ光照射後のエイミング光の照射位置の移動について説明する図である。
図6は、治療レーザ光とエイミング光の照射のタイミングチャートである。
【0044】
図4及び
図5では、上下方向に延びたスリット光SLで照明された部位に、3×3の正方パターンに基づいて治療レーザ光を照射する。ここでは、スリット光SLで照明された上部から下方に向かって正方パターンに対応して治療レーザ光を照射する。
【0045】
図4及び
図5で示すエイミングの状態はエイミングルールの一例に基づくものであり、治療レーザ光のスポット位置にエイミング光を照射する例としている。
【0046】
移動モード設定部85は、一連の治療レーザ光の照射後に、エイミング光の照射位置の移動モードを設定する移動モード設定手段となる。移動モード設定部85では、一連の治療レーザ光の照射の後にエイミング光の照射位置を治療レーザ光照射済みのスポットとは異なる位置に移動させるオートモード(第1移動モード)と、一連の照射レーザ光の照射の後にエイミング光の照射位置を移動させないマニュアルモード(第2移動モード)とを切り替えて設定できる構成となっている。
【0047】
図4は、マニュアルモードの例を示している。
図5は、オートモードの例を示している。
図4及び
図5では、エイミング光の照射スポットを斜線で示し、治療レーザ光の照射スポット(照射済みスポット)を黒の塗り潰しで示し、凝固斑(熱により変化した斑)を白抜きで示している。
図4及び
図5において、(a)は、エイミングの状態(照準状態)を示し、(b)は、治療エーザ光照射時の状態を示し、(c)は、治療レーザ光照射後のエイミングの状態を示している。
【0048】
はじめに、マニュアルモードについて説明する。3×3の正方パターンに対応付けられたエイミング光の照射位置を示す領域Aa1に、エイミング光が照射されている。予め設定された正方パターンに対応したエイミングルールに基づいてエイミング光が連続的に照射される。パターン設定部86で正方パターンが設定されると、設定信号は制御部70へと設定信号が送られる。制御部70は、設定信号と、メモリ71に記憶された制御プログラム(エイミングルール)に基づき、エイミング光源12、光スキャナ50等を制御して正方パターンのスポット位置にエイミング光を照射する。これにより、領域Aa1にエイミング光が照射される(
図4(a)参照)。
【0049】
図4(a)の状態で、フットスイッチ81が踏まれると、治療レーザ光が照射され、
図4(b)の状態に移行(遷移)する。制御部70は、フットスイッチ81からのトリガ信号に基づき、治療レーザ光源11、光スキャナ50を制御して領域A1の3×3のスポット位置に連続的に治療レーザ光を照射する。これにより、領域TLaに3×3の治療レーザ光照射済みのスポットが形成される。
【0050】
一連の治療レーザ光の照射が終わると、
図4(c)の状態に移行する。制御部70は、再び、エイミング光の照射を行う。このとき、制御部70は、治療レーザ光の照射済みの領域と同じ領域となる領域Aa2にエイミング光を照射する。制御部70は、エイミング光を領域Aa2に照射し続ける。
【0051】
マニュアルモードでは、照射パターンに対応したエイミング光のスポット位置に治療レーザ光を照射するだけのモードである。このため、エイミング光の照射位置は、光学系が移動しない限り移動することはない。一連の治療レーザ光の照射が終わっても、元の状態、すなわち、治療レーザ光の照射済みのスポット位置にエイミング光を照射する構成となっている。従って、マニュアルモードでは、前述したように、一連の治療レーザ光の照射が終わる度に、
術者がジョイスティックを操作して照射光学系40を下方に移動(操作)する必要がある。
【0052】
次に、オートモードを説明する。
図5(a)の状態では、3×3の正方パターン(エイミング光のスポットのパターン)が領域(第1の領域)A1に照射されている。予め設定された正方状の照射パターンに対応したエイミングルールに基づいてエイミング光が照射される。パターン設定部86で正方パターンが設定されると、制御部70へと設定信号が送られる。制御部70は、設定信号と、メモリ71に記憶された制御プログラム(エイミングルール)に基づき、エイミング光源12、光スキャナ50等を制御し、エイミング光を照射する。このとき、制御部70には、スポット間隔設定部86bで設定されたスポット間隔D、エンコーダ42aからのスポットサイズを示す信号に基づき、エイミング光のスポット間隔をDとする。
【0053】
図5(a)の状態で、フットスイッチ81が踏まれると、治療レーザ光が照射され、
図5(b)の状態に移行する。制御部70は、フットスイッチ81からのトリガ信号に基づき、治療レーザ光源11、光スキャナ50を制御して領域A1の3×3のスポット位置に連続的に治療レーザ光を照射する。これにより、領域TLに3×3の治療レーザ光照射済み(照射)のスポットが形成される。
【0054】
一連の治療レーザ光の照射が終わると、
図5(c)の状態に移行する。制御部70は、移動方向設定部87で設定された移動方向(上から下)とスポット間隔とに基づき、エイミング光源12、光スキャナ50等を制御して、凝固斑が形成された領域M1の下方(上下方向における)の領域(第2領域)A2のスポット位置にエイミング光を照射する。制御部70は、治療レーザ光照射済みのスポット位置とは異なるスポット位置にエイミング光を照射して、術者に次の治療レーザ光の照射を促す。なお、
図5(c)では、治療レーザ光の照射済みのスポット位置には、治療レーザ光によって熱凝固された凝固斑のスポットが形成されている。
【0055】
詳細は後述するが、このとき、制御部70は、少なくとも、領域A2のスポット位置が術者に認識できる時間は、エイミング光の照射を行う。本実施形態では、トリガ信号の入力を待ち、少なくともその間はエイミング光の照射を続ける。
【0056】
領域M1(領域A1と一致)と領域A2の間隔はスポット間隔Dだけあいている。具体的には、領域TLの最下段のスポットと、領域A2の最上段のスポットに着目すると、上下方向(移動方向)に隣接するスポットの間隔がスポット間隔Dとなるように領域A2の照射位置が移動される。すなわち、エイミング光のスポットが、スポット間隔Dに対応した正方パターンの格子状(規則)に並べられるように、光スキャナ50等が制御される。
図5(c)の状態で、フットスイッチが踏まれると、領域A2に治療レーザ光が照射される。そして、治療レーザ光の照射済みの領域の下方にエイミング光の照射位置が移動される。言い換えると、エイミング光のスポットのパターン全体が移動される。
【0057】
ここで、エイミング光と治療レーザ光のタイミングを説明する。
図6には、エイミング光の照射の有無と、治療レーザ光の照射の有無と、トリガ信号の入力の有無とが示されている。エイミング光の照射において、斜線で示す領域は、エイミング光が連続的に照射されているものとする。
【0058】
トリガ信号の入力前の状態では、制御部70によりエイミング光が照射され続けている。従って、術者は、
図5(a)の状態が認識されている。この状態では、治療部位の確認、位置合わせが行われる。
【0059】
第1のエイミング光の照射領域(のエイミング時)にてトリガ信号が入力されると、制御部70は、エイミング光の照射領域に関して、治療レーザ光の照射を開始する。スポット9個分の治療レーザ光が連続的に照射される(
図5(b)の状態)。治療レーザ光の全体の照射時間T1は、1発20msとすると、概ね0.2秒となる。制御部70は、治療レーザ光の照射時間中には、エイミング光が照射しない。なお、治療レーザ光の照射中にエイミング光を照射する構成としてもよい。
【0060】
一連の治療レーザ光の照射が終わると、制御部70は再びエイミング光の照射を開始する。このとき、エイミング光の照射位置は、
図5(c)に示すように移動されている。エイミング光は、少なくとも照射時間T2の間、照射される。照射時間T2は、術者がエイミング光のスポット位置(ここでは、パターン全体)を認識できる時間となっている。本実施形態では、次のトリガ信号の入力は術者が行うため、照射時間T2は術者によって確保される時間となっている。従って、制御部70は、エイミング光の照射の再開からトリガ信号の入力を待つ。好ましくは、制御部70は、照射時間T2の間、トリガ信号の入力を受け付けない構成とする。これにより、エイミング光の照射位置を術者が確認しやすくなる。なお、照射時間T2を術者が設定する構成としてもよい。例えば、数百ミリ秒から十数秒の範囲で設定する。例えば、0.1〜10秒、好ましくは、0.3〜2秒とする。
【0061】
その後、第2のエイミング光の照射領域にて、トリガ信号が入力されると、制御部70は、エイミング光の照射領域に関して、治療レーザ光を連続的に照射する。第2のエイミング光の照射領域は、第1のエイミング光の照射領域全体に対して眼底上の照射領域が異なる。
【0062】
このようにして、第1領域(A1)への治療レーザ光の照射が終わった後に、第1領域(TL,M1)とは異なる第2領域(A2)にエイミング光が照射される(エイミング光の照射位置が移動される)。一連の治療レーザ光の照射後に、照射済みの領域TLの下方にエイミング光の照射位置(エイミング光のスポットのパターン)が移動されることで、術者は、一連の治療レーザ光の照射が終わる度、検者が観察光学系30等を移動させる手間を省ける。また、エイミング光の照射位置が、治療レーザ光の照射済みの位置に対してスポット間隔Dに対応して移動することで、次の治療部位への照準作業(位置合わせ)の精度が向上する。
【0063】
また、一連の治療レーザ光の照射の後に、治療レーザ光照射済みの位置とは異なる位置にエイミング光が照射されることで、治療レーザ光が照射された位置の状態が確認しやすくなる。
【0064】
また、照射パターンがある方向に沿って移動される構成とすることで、一連の治療レーザ光の照射の度、術者が照射位置を確認でき、広範囲に亘って治療レーザ光の照射がしやすくなる。さらに、広範囲に亘って一度に治療レーザ光を照射する構成と比べ、本実施形態の構成では治療レーザ光の照射位置を術者が適宜確認でき、術中の様々な対応がしやすくなる。
【0065】
なお、エイミング光の照射位置の移動の範囲(領域A2の移動の限界)は、照射光学系40の設計に依存する。ここでは、反射ミラー46で、レーザ光等がケラレない(口径食とならない)範囲であり、上限値として概ね2mm程度となっている。本実施形態では、エイミング光のスポットの移動範囲が上限値を超える(照射パターンのスポットの一部が上限値を超える)ような場合、制御部70は、エイミング光の照射位置を領域TL(最初の治療レーザ光照射領域)に移動させてもよい(照射位置のリセット)。なお、エイミング光の照射位置が上限値を超える場合に、制御部70が、上限値内にエイミング光のスポットが収まるようにスポット数を減らす構成としてもよい。この場合、スポット間隔は維持されることが好ましい。
【0066】
なお、以上の説明では、エイミング光の照射位置の移動の範囲を、光スキャナ50の原点位置に対応する位置(観察光軸と一致)を開始位置としたが、これに限るものではない。照射光学系40の上限(限界)を有効に利用するために、最初のエイミング光の照射位置を光学系の上限の位置までシフトさせる構成としてもよい。例えば、オートモードにおいて、制御部70が、最初のエイミング光の照射位置(領域A1に対応)を、光学系の上限位置までシフトさせる構成とする。これにより、上下方向において、できるだけ多くエイミング光の照射位置を移動でき、多くの治療レーザ光の照射を行える。例えば、前述の光学系であれば、上下方向で、概ね4mmの範囲を確保できる。
【0067】
以上のような構成を備える装置において、治療レーザ光の照射による治療動作を説明する。術者は、治療に先立ち、以下の項目を設定する。
【0068】
出力設定部83による治療レーザ光の出力の設定(例えば、600mW)、照射時間設定部84によるパルス幅20msの設定、移動モード設定部85によるオートモードの設定、パターン設定部86による3×3の正方パターンとスポット間隔Dの設定、移動方向設定部87による上下方向の設定、ズームレンズ42によるスポットサイズの設定(例えば、200μm)、等が設定される。
【0069】
術者は、コンタクトレンズCLを患者眼Eに当接させる。そして、照明光学系60からの照明光によってスリット照明された眼底を観察光学系30により観察する。術者が図示無きエイミングスイッチを操作すると、制御部70は、エイミング光の照射を開始する。術者は、正方パターンで示されたエイミング光のスポットを観察しながら、位置合わせを行う。術者がフットスイッチ81を踏むと、制御部70はトリガ信号に基づいて治療レーザ光を照射する。一連の治療レーザ光の照射が終わったら、制御部70は、治療レーザ光の照射済みスポット位置とは異なる下方の位置(領域)で、スポット間隔D離れた位置にエイミング光を照射する(エイミング光の照射位置の移動)。
【0070】
この状態で、制御部70は、フットスイッチ81が踏まれると、制御部70は、エイミング光が照射されていたスポット位置に治療レーザ光を照射する。そして、制御部70は、治療レーザ光照射済みの位置の下方に再びエイミング光を照射する。術者はこのような作業を繰り返し、スリット光で照明された上下方向の凝固を行う。エイミング光の照射位置が範囲の上限値を超えると、制御部70は、エイミング光は、上下方向において最初に治療レーザ光を照射した位置にエイミング光の照射位置を移動させる。
【0071】
その後、術者は、照射中のエイミング光のスポット位置が左右方向(X方向)に移動するように、観察光学系30等を移動させ、前述の動作を繰り返す。これらの作業によって、眼底の広い範囲に亘って治療レーザ光が照射される。
【0072】
なお、以上の説明では、治療レーザ光の照射を術者のトリガによる構成としたが、これに限るものではない。一連の治療レーザ光の照射後に、エイミング光の照射位置が移動され、次以降の治療レーザ光の照射が行われる構成であればよい。例えば、治療レーザ光のトリガを制御部70が行う構成とし、術者は、制御部70による治療レーザの照射を停止する構成としてもよい。
【0073】
具体的には、照射停止信号を信号入力手段としてのフットスイッチ81によって入力する構成とする。また、一連の治療レーザ光の照射が終わった後に、エイミング光の照射位置を移動された後、制御部70が照射時間T2だけ、治療レーザ光の照射を待ち、照射停止信号の入力を待つ構成とする。照射時間T2は、エイミング光の照射位置を術者に認識させる時間であり、照射猶予時間となる。照射時間T2としては、0.1〜3秒、好ましくは、0.3〜1.5秒、さらに好ましくは、0.3〜1.0秒であり、ここでは、0.5秒とする。
【0074】
また、前述の構成を2つのモードに分けて、術者がモード設定する構成としてもよい。例えば、ディスプレイ82に照射モード設定部を設ける。照射モードとしては、エイミング光の照射位置の移動後にフットスイッチ81からの照射信号を待つ第1照射モード(セミオートモード)と、エイミング光の照射位置の移動後にフットスイッチ81からの照射停止信号を待つ第2照射モード(オートショットモード)と、とする。
【0075】
なお、以上の説明では、治療レーザ光を、n番目のスポットからm番目のスポットまで照射した後に、エイミング光の照射位置を移動させる構成、ここでは、3×3の正方パターンにおいて、最初のスポットから最後のスポットまで治療レーザ光を照射した後にエイミング光を移動させているが、この構成に限るものではない。
【0076】
照射パターンに基づく治療レーザ光の照射において、複数のスポットへの治療レーザ光の照射の後に、治療レーザ光の照射済みとは異なるスポット(未照射スポット)の位置を、エイミング光の照射によって術者に確認させる構成であればよい。
【0077】
例えば、照射パターンにおけるn番目のスポット位置と、m番目のスポット位置は、照射パターンの全スポットを網羅しなくてもよい。n番目からm番目までのスポットで、照射パターンの途中のスポット(部分的領域)に治療レーザ光を照射し、その後にエイミング光を移動させる構成としてもよい。
【0078】
9×3の正方パターンを例に挙げる。制御部は、9×3の正方パターンにおいて、1番目から9番目のスポット(1行1列目のスポットから3行3列目のスポット)のスポット、10番目から18番目までのスポット、19番目から27番目までのスポット、に順次治療レーザ光を照射する構成とする。制御部は、9×3の正方パターンの設定に基づいて、はじめに9×3の正方パターンのエイミング光の照射を行う。そして、制御部70は、1番目から9番目までのスポット位置にエイミング光を照射し、術者に治療を促す。
【0079】
術者のトリガ入力を受けると、制御部70は、1番目から9番目まで一連の治療レーザ光照射を行う。その後、制御部は、10番目から18番目までのスポット位置にエイミング光を照射する(エイミング光の照射位置の移動)。制御部は、トリガに基づいて10番目から18番目まで一連の治療レーザ光の照射を行う。その後、制御部は、19番目から27番目までのスポット位置にエイミング光を照射する。この場合のエイミングルールは、n番目からm番目のスポットに対応つけられて設定される。これにより、スポット数が多い(照射範囲が広い)照射パターンを用いる場合でも、部分的にエイミング光を照射することによって、術者がエイミング光のスポットを確認しやすくなる。
【0080】
なお、以上の説明では、エイミング光の照射位置の移動方向は、上下方向と左右方向としたが、これに限るものではない。移動方向は、任意の角度とする構成としてもよい。また、進行方向はどのようでもよい。また、移動方向には複数のパターンを含ませてもよい。例えば、上下方向に沿ってエイミング光の照射位置を移動させる際に、範囲の上限値を超える場合には、左右方向に移動させる構成としてもよい。この場合、制御部は、上から下に向かってエイミング光(と治療レーザ光)の照射位置を移動させ、下限に到ったら右方向にエイミング光の照射位置を移動させる。そして、エイミング光を下から上へ向かって移動させる。このようにして、エイミング光の照射位置をジグザグに移動させる構成とする。なお、横方向の移動幅は、スリット光の幅に対応していることが好ましい。
【0081】
なお、以上の説明では、エイミング光の移動位置は、治療レーザ光の照射済みのスポットに移動後のエイミング光のスポットがスポット間隔だけ離れた隣接する構成としたが、これに限るものではない。必ずしも隣接する必要はない。スポット間隔に対応した格子状にスポットが並べられるようにエイミング光が移動される構成であればよい。具体的には、
図5(b)を例に挙げると、領域TLへの治療レーザ光の照射後に、領域A2よりも下方にエイミング光の照射位置を移動させる構成とする。これにより、照射パターンに対応する領域がスキップされることとなる。これにより、治療レーザ光の照射位置の熱の影響が分散されることが期待できる。
【0082】
なお、以上の説明では、一連の治療レーザ光の照射後に、エイミングの照射位置を所定の方向で、スポット間隔に対応した格子状にスポットが並ぶように、移動させる構成としたが、これに限るものではない。一連の治療レーザ光の照射後に、エイミング光のスポット位置を移動させる構成であればよい。エイミング光のスポット位置は予め定められた位置に移動する構成であってもよい。
【0083】
なお、以上の説明では、千鳥パターンを行と列で同じスポット数としたが、これに限るおのではない。スポットの上下方向、斜め方向のスポット間隔が同じとなるスポット配列であればよい。例えば、千鳥パターンの輪郭が、六角形となるようなスポット配列でもよい。このような千鳥パターンを隙間無く敷き詰めるためには、上下左右方向だけでなく、斜め方向の移動が必要となる。
【0084】
なお、以上の説明では、移動手段として光スキャナ50を兼用する構成としたが、これに限るものではない。治療レーザ光、エイミング光の照射位置を移動できる構成であればよい。例えば、反射ミラー46をXY方向に傾斜(回転)させる構成としてもよい。また、照射光学系40に移動手段としての別の光スキャナ、レンズ移動ユニット等を設けてもよい。また、スリットランプ(観察光学系30等)を移動させる構成として
もよい。
【0085】
なお、以上の説明において、移動モード設定部85、移動方向設定部87、パターン設定部86、スポット間隔設定部86b、は必ずしも必要ではない。装置100の設定は、メーカー側で予め設定されていてもよい。
【0086】
なお、以上の説明では、治療レーザ光、エイミング光の照射の有無を光源のオン・オフによって制御する構成としたが、これに限るものではない。スポット位置への治療エーザ光等の照射、非照射を制御できればよい。シャッタ等の遮断手段を用いてもよい。光スキャナ等の光路偏向手段を用いてもよい。
【0087】
なお、以上の説明では、あるスポット位置に1回だけ治療レーザ光を照射する構成としたが、これに限るものではない。眼底の光凝固治療が行える構成であればよい。例えば、短いパルス幅の治療レーザ光を、所定の休止時間を挟んで、同じスポット位置い複数回照射する構成としてもよい。このような場合、低侵襲の光凝固治療が期待できる。このような場合、隣合うスポットは必ずしも離間してなくてもよい。
【0088】
なお、以上の説明では、治療レーザ光を眼底に照射し、光凝固治療を行う構成としたが、これに限るものではない。患者眼の組織に治療レーザ光を照射して治療を行う構成
であればよい。例えば、選択的繊維柱帯形成術(SLT)に適用してもよい。この場合、患者眼の隅角に沿って、エイミング光の照射位置が移動される構成とする。
【0089】
なお、以上の説明では、照射パターンに基づき複数の治療レーザ光のスポットを連続的に照射する構成としたが、この構成に限るものではない。治療レーザ光のスポットを術者等が1発ずつ指定して照射するモード(シングルモード)を備える構成としてもよい。
【0090】
なお、以上の説明は、あくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の技術思想を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。