(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工業的に、加熱しながら一対の挟圧部材で積層体を挟圧する処理としては、複数の積層体をまとめて一度に処理する多段式積層プレスなどのバッチ処理が考えられる。すなわち、一対の挟圧部材の間に、複数の積層体を一度にまとめて配置する。この時、一方の挟圧部材から他方の挟圧部材に向けて、複数の積層体を重ねて配置する。そして、挟圧部材の間で一方向に重ねられた積層体群を、加熱しながら、一対の挟圧部材でまとめて所定時間挟圧し、当該挟圧状態を所定時間保持後、複数の積層体をまとめて挟圧部材から取出す。当該バッチ処理は、複数の積層体に対してまとめて処理ができるので、量産処理に優れているといえる。
【0006】
しかし、本発明者は、上述のようなバッチ処理の場合、以下のような課題が生じることを見出した。
【0007】
第1に、複数の積層体を一方向に重ねた積層体群を、当該一方向の両側から挟圧する場合、積層体群内における位置に応じて、各積層体に対する挟圧の具合がばらつく恐れがある。
【0008】
例えば、積層体群内で端に位置する積層体は、一対の挟圧部材の内の第1の挟圧部材に最近接するとともに、他方の第2の挟圧部材からは最も離れた状態で挟圧される。すなわち、当該積層体と第1の挟圧部材との間には他の積層体が存在せず、かつ、当該積層体と第2の挟圧部材の間に複数の他の積層体が存在する状態で挟圧される。これに対し、積層体群内における略中央に位置する積層体は、第1の挟圧部材及び第2の挟圧部材からの距離がほぼ等しい状態で挟圧される。すなわち、当該積層体と第1の挟圧部材との間、及び、当該積層体と第2の挟圧部材の間にほぼ同数の他の積層体が存在する状態で挟圧される。例えばこのような積層体群内における位置に応じた挟圧条件の相違に起因して、各積層体に対する挟圧の具合がばらつき得る。
【0009】
第2に、複数の積層体を重ねた積層体群内における位置に応じて、加熱の程度がばらつく恐れがある。加熱の程度は周囲の環境に応じて異なり得るが、バッチ処理の場合、上述の通り、積層体群内における位置に応じて、周囲の環境は異なる。
【0010】
第3に、連続プロセスに向いていない。バッチ処理の場合、加熱・挟圧処理前に、まとめて処理する所定数の積層体を準備する必要があるため、当該加熱・挟圧処理の前に、所定数の積層体が揃うまでの待ち時間が発生してしまう場合がある。
【0011】
なお、特許文献1に記載の技術は加熱炉に関する技術であり、対象物を挟圧する構成を備えないため、上記課題のすべてを解決することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、
加熱しながら一対の挟圧部材で積層体を挟圧する工程を含む積層体の製造方法であって、
各々が所定数の前記積層体を含むM個の挿入ユニットを、前記一対の挟圧部材の間で一列に整列させた状態で加熱しながら前記一対の挟圧部材で挟圧する挟圧工程と、
前記挟圧工程の後、前記挟圧部材による挟圧を開放し、前記M個の挿入ユニットが整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)の前記挿入ユニットを当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の前記挿入ユニットを挿入する差替工程とを有し、
前記挟圧工程と前記差替工程とを繰り返すことで、所定の挟圧がなされた前記挿入ユニットを、前記差替工程を経るたびにN個ずつ順次取出すようになっており、
前記列に含まれる前記挿入ユニットは、前記差替工程を経るたびに、挟圧時における前記一対の挟圧部材から見た相対的な位置が、一方の前記挟圧部材から他方の前記挟圧部材に向かって移動
し、
前記挟圧工程は、各挿入ユニット間に加熱部材を挿入した状態で、前記M個の挿入ユニットを挟圧する積層体の製造方法が実現される。
さらに、本発明によれば、
加熱しながら一対の挟圧部材で積層体を挟圧する工程を含む積層体の製造方法であって、
各々が所定数の前記積層体を含むM個の挿入ユニットを、前記一対の挟圧部材の間で一列に整列させた状態で加熱しながら前記一対の挟圧部材で挟圧する挟圧工程と、
前記挟圧工程の後、前記挟圧部材による挟圧を開放し、前記M個の挿入ユニットが整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)の前記挿入ユニットを当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の前記挿入ユニットを挿入する差替工程とを有し、
前記挟圧工程と前記差替工程とを繰り返すことで、所定の挟圧がなされた前記挿入ユニットを、前記差替工程を経るたびにN個ずつ順次取出すようになっており、
前記列に含まれる前記挿入ユニットは、前記差替工程を経るたびに、挟圧時における前記一対の挟圧部材から見た相対的な位置が、一方の前記挟圧部材から他方の前記挟圧部材に向かって移動し、
挟圧すべき挿入ユニットがM個に満たない場合、
前記挿入ユニット、及び、ダミー挿入部材からなるM個の挟圧対象を、前記一対の挟圧部材の間で一列に整列させた状態で加熱しながら前記一対の挟圧部材で挟圧する第1調整工程と、
前記第1調整工程の後、前記挟圧部材による挟圧を開放し、前記M個の挟圧対象が整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)の前記挟圧対象を当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の前記挟圧対象を挿入する第2調整工程と、
を繰り返す積層体の製造方法が実現される。
さらに、本発明によれば、
加熱しながら一対の挟圧部材で積層体を挟圧する工程を含む積層体の製造方法であって、
各々が所定数の前記積層体を含むM個の挿入ユニットを、前記一対の挟圧部材の間で一列に整列させた状態で加熱しながら前記一対の挟圧部材で挟圧する挟圧工程と、
前記挟圧工程の後、前記挟圧部材による挟圧を開放し、前記M個の挿入ユニットが整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)の前記挿入ユニットを当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の前記挿入ユニットを挿入する差替工程とを有し、
前記挟圧工程と前記差替工程とを繰り返すことで、所定の挟圧がなされた前記挿入ユニットを、前記差替工程を経るたびにN個ずつ順次取出すようになっており、
前記列に含まれる前記挿入ユニットは、前記差替工程を経るたびに、挟圧時における前記一対の挟圧部材から見た相対的な位置が、一方の前記挟圧部材から他方の前記挟圧部材に向かって移動し、
前記積層体は、金属箔付きプリプレグである積層体の製造方法が実現される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の積層体に対する挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきを抑制し、かつ、連続プロセスに向いている積層体の製造方法が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の積層体の製造方法の実施形態について図面を用いて説明する。なお、図はあくまで発明の構成を説明するための概略図であり、各部材の大きさ、形状、数、異なる部材の大きさの比率などは図示するものに限定されない。
【0016】
<第1の実施形態>
本実施形態の積層体の製造方法は、挟圧工程及び差替工程を繰り返すことで、加熱しながら一対の挟圧部材で積層体を挟圧する。
【0017】
挟圧工程では、各々が所定数の積層体を含むM個の挿入ユニットを、一対の挟圧部材の間で一列に整列させた状態で加熱しながら一対の挟圧部材で挟圧する。そして、挟圧工程の後に行われる差替工程では、挟圧部材による挟圧を開放し、M個の挿入ユニットが整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)の挿入ユニットを当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の挿入ユニットを挿入する。その後、再び挟圧工程が行われ、差替工程後のM個の挿入ユニットを、一対の挟圧部材の間で一列に整列させた状態で加熱しながら一対の挟圧部材で挟圧する。
【0018】
このように、挟圧工程と差替工程を繰り返し、差替工程のたびに、M個の挿入ユニットが整列した列の先頭からN個の挿入ユニットを当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の挿入ユニットを挿入する本実施形態の積層体の製造方法によれば、当該列に挿入された挿入ユニットは、M/N回の挟圧工程を経た後、当該列から取出される事となる。本実施形態では、M/N回の挟圧工程により、積層体に対する所定の加熱・挟圧処理がなされるよう、挟圧工程の処理条件(加熱温度、圧力、挟圧状態保持時間等)が設定される。
【0019】
すなわち、本実施形態によれば、所定の加熱・挟圧処理がなされた挿入ユニットを、差替工程を経るたびにN個ずつ順次取出すことができる。このため、本実施形態は、連続プロセスに適している。
【0020】
また、本実施形態の差替工程では、M個の挿入ユニットが整列した列の先頭からN個の挿入ユニットを当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の挿入ユニットを挿入するので、当該列に含まれる挿入ユニットはいずれも、差替工程を経るたびに、列の最後尾から先頭に向けて挿入ユニットN個分ずつ移動する。そして、複数の挿入ユニットはいずれも、このような移動後の各位置で、挟圧がなされる。
【0021】
このように、本実施形態では、M個の挿入ユニットをまとめて挟圧するが、各挿入ユニットは、M/N回の挟圧工程の間に、M個の挿入ユニットが整列した列内の位置を規則的に変更し、変更後の各位置で、加熱・挟圧処理をなされる。
【0022】
このような本実施形態の積層体の製造方法によれば、複数の積層体に対する挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきを抑制することができる。
【0023】
なお、積層体は、例えば、繊維基材が埋設された樹脂層の両面又は一方の面にキャリア(金属箔又は樹脂フィルム)を積層したキャリア付きプリプレグ、複数の上記樹脂層を積層した積層物の両面又は一方の面にキャリアを積層したキャリア付きプリプレグ、繊維基材の両面にキャリア付き樹脂層を繊維基材と樹脂層が対峙するように積層したキャリア付きプリプレグ、繊維基材が埋設された樹脂層の一方の面にキャリアを付した2つの積層物を互いの樹脂層が対峙するように積層したキャリア付きプリプレグ等が考えられるが、これに限定されない。
【0024】
次に、
図1を用いて、本実施形態の積層体の製造方法の処理の流れの一例を説明する。なお、以下で説明する処理はあくまで一例であり、その他の処理で、上述した本実施形態の積層体の製造方法を実現してもよい。
【0025】
まず、
図1(B)に示すように、M個(設計的事項)の挿入ユニット20を、一対の挟圧部材10A及び10Bの間で一列に整列させた状態で加熱しながら、一対の挟圧部材10A及び10Bで挟圧する(挟圧工程)。
【0026】
各挿入ユニット20は、所定数(設計的事項)の積層体を含む。例えば、挿入ユニット20は、1個の積層体からなってもよい。または、挿入ユニット20は複数の積層体を含み、当該複数の積層体が、互いの間に離型フィルム等の離型材を挟んで積層されたものであってもよい。
【0027】
なお、複数の積層体に対する挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきを抑制する観点からは、1つの挿入ユニット20に含まれる積層体の数は少なくするのが好ましく、1個とするのがより好ましい。
【0028】
加熱手段は特段制限されないが、例えば、
図1(B)に示すように、プレートヒーター等の加熱部材30を各挿入ユニット20間に挿入することで実現してもよい。かかる場合、各挿入ユニット20間に加熱部材30を挿入した状態で、M個の挿入ユニット20を挟圧することとなる。プレートヒーターは、赤外線、高周波加熱(誘電加熱)、誘導加熱、ヒートパイプ、または、熱媒油を用いたもの等とすることができる。また、電気式プレートヒーターの場合、窒化アルミヒーター、シリコンラバーヒーター、マイカヒーター、ポリイミドヒーターなどが考えられる。
【0029】
加熱手段は、その他、熱風加熱、熱風+IR加熱、放射伝熱などの方式とすることもできる。このようにした場合、整列したM個の挿入ユニット20に対する加熱の程度を、列内の位置に応じて変えることができる。例えば、列の最後尾に位置する挿入ユニット20に最も高い温度で加熱し、列の先頭に向かうほど加熱温度を低くし、列の先頭に位置する挿入ユニット20に最も低い温度で加熱するように構成することもできる。このようにした場合、列内に挿入された挿入ユニット20は、最初に最も高い温度で加熱される。そして、差替工程を経て、列の最後尾から先頭に向けて挿入ユニットN個分ずつ移動する度に、加熱される温度が低くなっていく。なお、加熱温度プロファイルをどのようにするかは設計的事項であり、上記例はあくまで一例である。
【0030】
一対の挟圧部材10A及び10Bの構成は、M個の挿入ユニット20を挟圧できるものであれば特段制限されず、従来技術に準じたあらゆる構成とすることができる。よって、ここでの説明は省略する。
【0031】
図1(B)において、M個の挿入ユニット20は、挟圧部材10Aから挟圧部材10Bに向かって一列に整列している。そして、M個の挿入ユニット20は、列の両端から挟み込まれるように、挟圧部材10A及び10Bによって挟圧されている。
【0032】
挟圧工程では、所定の処理条件(加熱温度、圧力、挟圧状態保持時間等)で加熱・挟圧がなされる。なお、処理条件は、M/N回の挟圧工程により、積層体に対する所定の加熱・挟圧処理がなされるよう設定されている。
【0033】
挟圧工程(
図1(B))の後、
図1(C)に示すように、挟圧部材10A及び10BでM個の挿入ユニット20を保持した状態で、整列したM個の挿入ユニット20を保持可能に構成された保持部材40を図中丸1→丸2→丸3の順に移動させる。なお、
図1(B)に示す状態において、挿入ユニット20の列の最後尾に新たに挿入された挿入ユニット20(図中、列の一番下に位置する挿入ユニット20)は、保持部材40で保持されていない。すなわち、当該状態において、保持部材40はM個の挿入ユニット20のすべてを保持していない。図中丸1→丸2→丸3の順に保持部材40を駆動させることで、保持部材40はM個の挿入ユニット20のすべてを保持することができる。
【0034】
まず、保持部材40をM個の挿入ユニット20から引き離し(丸1)、その後、M個の挿入ユニット20の列の先頭から最後尾の方向(以下、「整列方向」)に向けて移動させる(丸2)。次いで、整列方向におけるM個の挿入ユニット20と保持部材40の相対的な位置関係を維持したまま、保持部材40をM個の挿入ユニット20に近づけ、再び、保持部材40でM個の挿入ユニット20を保持する(丸3)。
【0035】
保持部材40でM個の挿入ユニット20を保持すると、当該状態を維持したまま、
図1(D)に示すように、挟圧部材10A及び10BによるM個の挿入ユニット20に対する挟圧を開放する。
【0036】
その後、
図1(E)に示すように、M個の挿入ユニット20の列の先頭(図中、列の一番上)からN個の挿入ユニットを当該列から取出す。なお、複数の積層体に対する挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきを抑制する観点からは、Nは小さくするのが好ましく、1とするのがより好ましい。各挿入ユニット20間に加熱部材30が挿入されている場合、あわせて、N個の加熱部材30を取出す。
【0037】
次いで、
図1(A)に示すように、(M−N)個の挿入ユニット20の列の最後尾に新たなN個の挿入ユニット20を挿入する。なお、
図1(E)を用いて説明した取出処理と、
図1(A)を用いて説明した挿入処理は、順番が入れ替わってもよいし、同時に処理されてもよい。
【0038】
図1(A)、(C)−(E)を用いて説明した処理により、差替工程が完了する。その後、再び、
図1(B)に示すように、挟圧工程がなされ、上述の処理が繰り返される。
【0039】
なお、
図1に示す例では、
図2に示すように、M個の挿入ユニット20は、挟圧部材10Aから挟圧部材10Bに向かって直線的に一列に整列しているが、例えば
図3及び
図4に示すような変形例とすることができる。
図2乃至4何れにおいても、M個の挿入ユニット20が一列に整列した列の先頭及び最後部を示している。また、差替工程を経るたびに当該列内を移動する挿入ユニット20の軌跡を、点線矢印で示している。
【0040】
例えば、
図3に示すように、M個の挿入ユニット20は、U字状に一列に整列してもよい。かかる場合、列の先頭及び最後尾はいずれも一方の挟圧部材10Bに最近接し、列の中間地点が他方の挟圧部材10Aに最近接することとなる。また、
図4に示すように、一対の挟圧部材10A及び10Bの間に、直線的に一列に整列した列を2つ以上位置させ、これら複数の列をまとめて挟圧してもよい。複数の列はいずれも、M個の挿入ユニット20が整列している。
図4に示す例の場合、差替工程を経るごとに、2N個の挿入ユニット20が一対の挟圧部材10A及び10B間に挿入されるとともに、2N個の挿入ユニット20が一対の挟圧部材10A及び10B間から取り出される。なお、複数の挟圧工程間で挿入ユニットの行き来が生じても良い。
【0041】
<実施例>
積層体が金属箔付きプリプレグである場合、加熱・挟圧処理を経た後の状態において、表面の良好な平坦度が要求される。なお、その他の積層体においても、同様の性能を要求される場合がある。
【0042】
そこで、本発明者は、挟圧・開放を繰り返し行い、所定の加熱・挟圧処理を実現する本実施形態と、途中で開放することなく挟圧状態を維持し続けて、所定の加熱・挟圧処理を実現する比較例とにおける、積層体の表面平坦度の違いを確認した。
【0043】
(積層体の作製)
まず、500mm×530mmのガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸・乾燥して得られた500mm×530mmのプリプレグの両面に、560mm×580mmの銅箔を貼り合わせた積層体を用意した。プリプレグと銅箔の貼り合せは、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 加圧式真空ラミネータ、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネータ、大成ラミネーター(株)製 真空プレス式ラミネータ、(株)日立プラントテクノロジー製 真空プレス式ドライコータ、等の市販の真空ラミネータを用いることによって行うことができるが、ここでは2ステージビルドアップラミネータ(CVP、ニチゴー・モートン(株)社製)を用いて行った。
【0044】
(加熱・狭圧試験)
そして、
図5に示すように、用意した1つの積層体21を、加熱しながら、一対の挟圧部材10A及び10Bで挟圧した。なお、加熱・挟圧条件は以下の通りである。
【0045】
[実施例1]
挟圧部材10A及び10Bによる狭圧時の圧力:5kg/cm
2
挟圧工程及び差替工程からなる1サイクルの時間:30秒(内、11.8秒が挟圧工程、18.2秒が差替工程)
加熱温度:165℃
トータルプレス時間:30分
トータルプレス終了後の冷却時間:30秒
【0046】
[比較例1]
挟圧部材10A及び10Bによる圧力:5kg/cm
2
加熱温度:165℃
トータルプレス時間:30分
トータルプレス終了後の冷却時間:30秒
【0047】
なお、実施例1及び比較例1いずれにおいても、上記加熱・挟圧処理を終了後、アフターキュア(加熱)を行い、樹脂を完全に硬化させた。アフターキュアの条件は以下の通りである。
加熱温度:225℃
昇温速度:5℃/min
加熱温度に到達してからの保持時間:30分
加熱後の冷却:自然冷却
【0048】
(表面平坦度Rzの測定)
本発明における、表面平坦度はJIS B0601で定義されている10点平均粗さ(Rz)として評価した。積層板表面の10点平均粗さ(Rz)の測定は、JIS B0601に準じて行うことができ、例えば、光干渉型表面形状粗さ測定装置(WYKO NT1100、Veeco Instruments社製)を用いて測定することができる。
【0049】
表1に、実施例及び比較例各々の表面平坦度を測定した結果を示す。表中「硬化前」は、上記加熱・挟圧処理終了後、かつ、アフターキュア(加熱)前の状態の積層体の表面平坦度を示す。表中「硬化後」は、上記アフターキュア(加熱)後の状態の積層体の表面平坦度を示す。
【0050】
表中カッコを付さずに示す数値が表面平坦度(単位:μm)を示し、カッコ内の数値は標準偏差を示す。
【0051】
表1に示す結果より、実施例1は比較例1と同等の表面平坦度を実現していることが分かる。すなわち、本実施形態によれば、バッチ処理と同等の積層体の表面平坦度および性状を実現しつつ、複数の積層体に対する挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきを抑制し、かつ、連続プロセスに向いている積層体の製造方法が実現される。
【0053】
<第2の実施形態>
第1の実施形態で説明した積層体の製造方法の場合、M個の挿入ユニットを狭圧し(狭圧工程)、その後、M個の挿入ユニットからN個の挿入ユニットを取出すとともに、新たにN個の挿入ユニットを挿入する(差替工程)処理を繰り返し行っている間は、狭圧する挿入ユニットの数をM個に維持し続けることができる。しかし、このような繰り返し処理を開始した直後や、このような繰り返し処理を終了させる直前において、狭圧する挿入ユニットの数がM個に満たなくなる場合がある。本実施形態は、このように、挿入ユニットの数がM個に満たない場合に行うことができる加熱・狭圧処理をさらに有する。
【0054】
図6に示すように、本実施形態の積層体の製造方法は、初期調整工程S10と、狭圧工程S20と、差替工程S30と、終了前調整工程S50とを有する。狭圧工程S20及び差替工程S30は、第1の実施形態で説明したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0055】
狭圧する挿入ユニットの数がM個存在する場合、処理を継続する限り(S40のYes)、狭圧工程S20及び差替工程S30を繰り返し行うことで、狭圧する挿入ユニットの数はM個に維持される。しかし、処理を開始した直後は、狭圧する挿入ユニットの数がM個に満たない。かかる場合、初期調整工程S10が行われる。初期工程S10では、第1調整工程と第2調整工程を繰返す。
【0056】
第1調整工程では、挿入ユニット20、及び、ダミー挿入部材からなるM個の挟圧対象を、一対の挟圧部材10A及び10Bの間で一列に整列させた状態で加熱しながら、一対の挟圧部材10A及び10Bで挟圧する。なお、第1調整工程における加熱・狭圧の処理条件(加熱温度、圧力、挟圧状態保持時間等)は、狭圧工程S20における加熱・狭圧の処理条件と同じにすることができる。
【0057】
狭圧する挿入ユニットの数がM個に満たない場合に、ダミー挿入部材を列内に混ぜて加熱・狭圧することで、狭圧する挿入ユニット20の数がM個存在する場合と同様の加熱・狭圧環境を作り出すことができる。結果、狭圧する挿入ユニットの数がM個に満たない条件下で加熱・狭圧処理された挿入ユニット20と、狭圧する挿入ユニット20の数がM個存在する条件下で加熱・狭圧処理された挿入ユニット20との間における挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきを抑制することができる。
【0058】
ダミー挿入部材の構成は、このような機能を実現できれば特段されない。以下一例を示すが、これらに限定されない。
【0059】
例えば、所定数の積層体を含む挿入ユニットを、ダミー挿入部材として準備し、使用してもよい。なお、ダミー挿入部材は、所定の加熱・狭圧処理がなされる前に列から取出されることとなるので、ダミー挿入部材と挿入ユニット間には、挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきが存在する。このため、所定数の積層体を含む挿入ユニットをダミー挿入部材として使用する場合、通常の挿入ユニットと、ダミー挿入部材である挿入ユニットを区別して扱う必要がある。
【0060】
その他、
図1に示す例のように、各挿入ユニット20間に加熱部材30を挿入する構成の場合、加熱部材30をダミー挿入部材として用いてもよい。すなわち、M個の加熱部材30と、M個に満たない挿入ユニット20とを整列した列に対して、加熱・狭圧処理を行ってもよい。なお、加熱部材30は、各挿入ユニット20間に1つずつ挿入されるとともに、過剰分の加熱部材30は挿入ユニットを挟むことなく連続的に配列される。かかる場合、M個の加熱部材30と、M個の挿入ユニット20とを整列した列に対して加熱・狭圧処理を行う場合に比べて、多少、挟圧の具合、及び、加熱の程度が異なり得るが、加熱部材30の存在により相違の程度を軽減できる。
【0061】
第2調整工程は、第1調整工程の後に行われる。第2調整工程では、挟圧部材による挟圧を開放し、挿入ユニット20及びダミー挿入部材からなるM個の挟圧対象が整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)のダミー挿入部材を当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の挿入ユニット20を挿入する。
【0062】
第1調整工程は、狭圧工程S20に準じて実現することができる。第2調整工程は、差替工程S30に準じて実現することができる。すなわち、初期調整工程S10は、狭圧工程S20及び差替工程S30を実現する装置と同じ装置を用いて行うことができる。
【0063】
初期調整工程S10は、上記第1調整工程と第2調整工程を、狭圧する挿入ユニットの数がM個になるまで繰り返す。そして、狭圧する挿入ユニットの数がM個になると、その後は、狭圧工程S20及び差替工程S30が繰り返し行われる。
【0064】
狭圧工程S20及び差替工程S30を繰り返し行っている間、狭圧する挿入ユニットの数はM個に維持される。しかし、この繰り返し処理を終了する直前には、挿入ユニット20の列に挿入する挿入ユニット20がなくなる一方、所定の加熱・狭圧処理がなされた挿入ユニット20が当該列から取出されていく。結果、狭圧する挿入ユニットの数がM個に満たなくなる。かかる場合、終了前調整工程S50が行われる。終了前調整工程S50では、初期調整工程S10と同様、第1調整工程と第2調整工程を繰返す。
【0065】
第1調整工程では、挿入ユニット20、及び、ダミー挿入部材からなるM個の挟圧対象を、一対の挟圧部材10A及び10Bの間で一列に整列させた状態で加熱しながら、一対の挟圧部材10A及び10Bで挟圧する。なお、第1調整工程における加熱・狭圧の処理条件(加熱温度、圧力、挟圧状態保持時間等)は、狭圧工程S20における加熱・狭圧の処理条件と同じにすることができる。
【0066】
狭圧する挿入ユニットの数がM個に満たない場合に、ダミー挿入部材を列内に混ぜて加熱・狭圧することで、狭圧する挿入ユニット20の数がM個存在する場合と同様の加熱・狭圧環境を作り出す。結果、狭圧する挿入ユニットの数がM個に満たない条件下で加熱・狭圧処理された挿入ユニット20と、狭圧する挿入ユニット20の数がM個存在する条件下で加熱・狭圧処理された挿入ユニット20との間における挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきを抑制することができる。
【0067】
ダミー挿入部材の構成は、このような機能を実現できれば特段されず、例えば、上記例示したものを採用してもよい。
【0068】
第2調整工程は、第1調整工程の後に行われる。第2調整工程では、挟圧部材による挟圧を開放し、挿入ユニット20及びダミー挿入部材からなるM個の挟圧対象が整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)の挿入ユニット20を当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個のダミー挿入部材を挿入する。
【0069】
第1調整工程は、狭圧工程S20に準じて実現することができる。第2調整工程は、差替工程S30に準じて実現することができる。すなわち、終了前調整工程S50は、狭圧工程S20及び差替工程S30を実現する装置と同じ装置を用いて行うことができる。
【0070】
終了前調整工程S50は、上記第1調整工程と第2調整工程を、狭圧する挿入ユニット20の数が0個になるまで繰り返す。そして、狭圧する挿入ユニット20の数が0個になると、処理を終了する。
【0071】
以上説明した本実施形態の積層体の製造方法によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を実現することができる。また、狭圧する挿入ユニット20の数がM個に満たない場合であっても、ダミー挿入部材を列内に混ぜて加熱・狭圧することで、狭圧する挿入ユニット20の数がM個存在する場合と同様の加熱・狭圧環境を作り出し、狭圧する挿入ユニット20の数がM個に満たない条件下で加熱・狭圧処理された挿入ユニット20と、狭圧する挿入ユニット20の数がM個存在する条件下で加熱・狭圧処理された挿入ユニット20との間における挟圧の具合のばらつき、及び、加熱の程度のばらつきを抑制することができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.加熱しながら一対の挟圧部材で積層体を挟圧する工程を含む積層体の製造方法であって、
各々が所定数の前記積層体を含むM個の挿入ユニットを、前記一対の挟圧部材の間で一列に整列させた状態で加熱しながら前記一対の挟圧部材で挟圧する挟圧工程と、
前記挟圧工程の後、前記挟圧部材による挟圧を開放し、前記M個の挿入ユニットが整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)の前記挿入ユニットを当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の前記挿入ユニットを挿入する差替工程とを有し、
前記挟圧工程と前記差替工程とを繰り返すことで、所定の挟圧がなされた前記挿入ユニットを、前記差替工程を経るたびにN個ずつ順次取出すようになっており、
前記列に含まれる前記挿入ユニットは、前記差替工程を経るたびに、挟圧時における前記一対の挟圧部材から見た相対的な位置が、一方の前記挟圧部材から他方の前記挟圧部材に向かって移動する積層体の製造方法。
2.1.に記載の積層体の製造方法において、
前記挟圧工程は、各挿入ユニット間に加熱部材を挿入した状態で、前記M個の挿入ユニットを挟圧する積層体の製造方法。
3.1.または2.に記載の積層体の製造方法において、
挟圧すべき挿入ユニットがM個に満たない場合、
前記挿入ユニット、及び、ダミー挿入部材からなるM個の挟圧対象を、前記一対の挟圧部材の間で一列に整列させた状態で加熱しながら前記一対の挟圧部材で挟圧する第1調整工程と、
前記第1調整工程の後、前記挟圧部材による挟圧を開放し、前記M個の挟圧対象が整列した列の先頭からN個(M>Nであって、MはNの倍数)の前記挟圧対象を当該列から取出すとともに、当該列の最後尾に新たなN個の前記挟圧対象を挿入する第2調整工程と、
を繰り返す積層体の製造方法。
4.3.に記載の積層体の製造方法において、
前記第2調整工程では、前記M個の挟圧対象が整列した列の最後尾に新たなN個の前記挿入ユニットを挿入し、
挟圧すべき挿入ユニットがM個になるまで、前記第1調整工程と前記第2調整工程を繰り返す積層体の製造方法。
5.3.に記載の積層体の製造方法において、
前記第2調整工程では、前記M個の挟圧対象が整列した列の最後尾に新たなN個の前記ダミー挿入部材を挿入し、
挟圧すべき挿入ユニットが0個になるまで、前記第1調整工程と前記第2調整工程を繰り返す積層体の製造方法。
6.1.から5.のいずれか1つに記載の積層体の製造方法において、
前記Nは1である積層体の製造方法。
7.1.から6.のいずれか1つに記載の積層体の製造方法において、
前記挟圧工程における圧力及び挟圧保持時間は、M/N回の挟圧により所定の挟圧がなされるよう設定される積層体の製造方法。
8.1.から7.のいずれか1つに記載の積層体の製造方法において、
前記積層体は、金属箔付きプリプレグである積層体の製造方法。