特許第6040705号(P6040705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040705
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】積層セラミックス基板の分断方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20161128BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B28D5/00 Z
   H05K3/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-235849(P2012-235849)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-83808(P2014-83808A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084364
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 宜喜
(72)【発明者】
【氏名】武田 真和
(72)【発明者】
【氏名】村上 健二
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−210931(JP,A)
【文献】 特開2005−147837(JP,A)
【文献】 特開2012−142483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1,第2,第3のセラミックス基板が積層され、少なくとも前記第2のセラミックス基板と前記第1,第3のセラミックス基板の材料の種類が異なる積層セラミックス基板の分断方法であって、
前記第1のセラミックス基板に分断予定ラインに沿って垂直クラックを伴う第1のスクライブラインを形成し、
前記積層セラミックス基板の裏面のセラミックス基板に前記第1のスクライブラインに対応するラインに沿って垂直クラックを伴う第2のスクライブラインを形成し、
前記第1,第2のスクライブラインに沿って前記少なくとも一方のセラミックス基板をブレイクすることによって、スクライブラインに沿ってセラミックス基板を分断する積層セラミックス基板の分断方法。
【請求項2】
前記積層セラミックス基板は、前記第1〜第3のセラミックス基板が順に積層されたものであり、中間の前記第2のセラミックス基板は、前記第1,第3のセラミックス基板よりも薄い基板である請求項1記載の積層セラミックス基板の分断方法。
【請求項3】
前記積層セラミックス基板は、前記第1〜第3のセラミックス基板が順に積層されたものであり、中間の前記第2のセラミックス基板は、前記第1,第3のセラミックス基板よりも硬度が低い基板である請求項1記載の積層セラミックス基板の分断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異種材料のセラミックス基板を積層した積層セラミックス基板の分断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来セラミックス基板に金属層を積層した積層セラミックス基板を分断する場合には、ダイシングソー等を用いて分断することが多かった。又特許文献1にはセラミックス基板をスクライブした後に金属層を接合し、エッチングによりスクライブラインの金属層を除去した後ブレイクするセラミックス接合基板の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−252971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1ではセラミックス基板に金属層を積層する前にスクライブする必要があり、既に積層された積層セラミックス基板を分断するものではないという問題点があった。
【0005】
異なった種類のセラミックス基板を積層した積層セラミックス基板については開発が進められつつあるが、その分断方法については確立されていない。積層セラミックス基板の分断方法としては、通常の脆性材料基板の分断方法であるダイシングソーによる分断に加えて、積層セラミックス基板をスクライビングホイールを用いてスクライブし、ブレイクすることが考えられる。異種材料の積層セラミックス基板を分断するために、図1(a)に示すように互いに異種材料のセラミックス基板101,102,103を順に積層した積層基板100をスクライブしてブレイクする場合について説明する。まず図1(b)に示すようにセラミックス基板101の面にスクライビングホイール104でスクライブし、図1(c)に示すように積層基板100を支持部材106,107上に保持し、セラミックス基板103側からブレイクバー105で押圧してブレイクする。この場合には積層基板100を分断しようとしても、セラミックス基板102、セラミックス基板103には垂直クラックが生じていない。そのためブレイクすることは難しく、分離できなかったり、図1(d)に示すようにスクライブライン通り分離されないという問題点があった。
【0006】
又他の方法として図2(a),(b)に示すように、積層セラミックス基板100のうち、他の面のセラミックス基板103にスクライビングホイール104を用いてスクライブを施す。次いで図2(c)に示すようにブレイクバー105を用いて積層基板100を分断する。この場合には積層基板100を分断しようとしても、セラミックス基板101、セラミックス基板102には垂直クラックが生じていない。そのためブレイクすることは難しく、分離できなかったり、図2(d)に示すようにスクライブライン通り分離されないという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、3種以上の異種材料のセラミックス基板を積層した積層セラミックス基板を完全に分断し個別化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の積層セラミックス基板の分断方法は、少なくとも第1,第2,第3のセラミックス基板が積層され、少なくとも前記第2のセラミックス基板と前記第1,第3のセラミックス基板の材料の種類が異なる積層セラミックス基板の分断方法であって、前記第1のセラミックス基板に分断予定ラインに沿って垂直クラックを伴う第1のスクライブラインを形成し、前記積層セラミックス基板の裏面のセラミックス基板に前記第1のスクライブラインに対応するラインに沿って垂直クラックを伴う第2のスクライブラインを形成し、前記第1,第2のスクライブラインに沿って前記少なくとも一方のセラミックス基板をブレイクすることによって、スクライブラインに沿ってセラミックス基板を分断するものである。
【0009】
ここで前記積層セラミックス基板は、前記第1〜第3のセラミックス基板が順に積層されたものであり、中間の前記第2のセラミックス基板は、前記第1,第3のセラミックス基板よりも薄い基板としてもよい。
【0010】
ここで前記積層セラミックス基板は、前記第1〜第3のセラミックス基板が順に積層されたものであり、中間の前記第2のセラミックス基板は、前記第1,第3のセラミックス基板よりも硬度が低い基板としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する本発明によれば、異種材料のセラミックス基板を積層した積層セラミックス基板を両側からスクライブし、少なくとも一方の面からブレイクしている。このため所望の形状に完全に分断し個別化することができ、端面精度を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は積層セラミックス基板の一方のセラミックス基板側よりスクライブ及びブレイクする場合の分断処理を示す図である。
図2図2は積層セラミックス基板の他方のセラミックス基板側よりスクライブしブレイクする際の状態を示す図である。
図3図3は本発明の実施の形態による積層セラミックス基板の分断処理を示す図である。
図4図4は本発明の実施の形態による積層セラミックス基板の分断処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図3(a)は種類の異なる第1〜第3のセラミックス基板11,12,13を順に積層した本発明の実施の形態による分断の対象となる積層セラミックス基板(以下、単に積層基板という)10を示す図である。ここでセラミックス基板11,12,13については、LTCC基板、アルミナ(HTCC)、窒化アルミ、チタン酸バリウム、フェライト、窒化珪素等のセラミックス基板、いわゆるファインセラミックスのセラミックス基板であってもよい。セラミックス基板11,12,13の板厚は例えば0.2〜0.4mmとする。又第2のセラミックス基板12の材料は第1,第3のセラミックス基板11,13と異なっていればよく、セラミックス基板11,13の材料は同一でも異なっていてもよい。各セラミックス基板の板厚は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。ここで中間の第2のセラミックス基板12はブレイクによって分断できるようするため、両側のセラミックス基板11,13よりも相対的に薄い基板、例えば厚さが0.3mm以下の基板であることが好ましい。又これと同時に、若しくはこれに代えて、第2のセラミックス基板の硬度は第1,第3のセラミックス基板の硬度より相対的に低いことが好ましく、例えばピッカース固さHVが800以下であってもよい。ここでは第1のセラミックス基板11をLTCC基板、第2のセラミックス基板12をフェライト、第3のセラミックス基板をLTCC基板とする。
【0014】
そしてこの積層基板10を所定のパターンで分断する場合に、まず図3(b)に示すようにセラミックス基板11側より分断を予定するラインに沿って、図示しないスクライブ装置によってスクライビングホイール14を押圧し転動させてスクライブを形成する。こうして形成したスクライブラインを第1のスクライブラインS1とする。このスクライブに用いるスクライビングホイールは、高浸透のスクライブが可能なものを用いてもよく、ノーマルのスクライビングホイールであってもよい。ここでは高浸透のスクライビングホイールで刃先角度110°のものを用いる。例えば日本国特許文献3074143号には、円周面に所定間隔を隔てて多数の溝を形成し、その間を突起として高浸透を可能としたスクライビングホイールが提案されている。
【0015】
更に積層基板10を反転させ、図3(c)に示すように第3のセラミックス基板13の面よりスクライブラインS1の真上から図示しないスクライブ装置によってスクライブを形成する。こうして形成したスクライブラインを第2のスクライブラインS2とする。この場合にも高浸透のスクライブが可能なものを用いてもよく、ノーマルのスクライビングホイールであってもよい。ここでは高浸透のスクライブが可能なスクライビングホイール15を用いる。このときの刃先角度を110°とする。スクライビングホイールの種類はセラミックス基板11,13の材質や厚さ、硬度等によって適宜選択するものとする。
【0016】
次いで図3(d)に示すように、ブレイク装置を用いて一対の支持部材16,17の上面にテープ18を配置し、支持部材16,17の中間にスクライブラインS1,S2が位置するように積層基板10を配置する。そしてその上部より第2のスクライブラインS2に沿ってブレイクバー19を押し下げブレイクを行う。これによってセラミックス基板11をブレイクすることができる。このときセラミックス基板12もブレイクされることがある。
【0017】
更に図4(e)に示すように積層基板10を反転し、支持部材16,17の上面にテープ20を配置し、支持部材16,17の中間にスクライブラインS1,S2が位置するように積層基板10を配置する。そしてその上部より第1のスクライブラインS1に沿ってブレイクバー19を押し下げてブレイクする。こうすれば図4(f)に示すように、セラミックス基板13がブレイクされ、更に中間のセラミックス基板12を貫通してスクライブラインS1,S2に沿って分断し個別化することができる。このように分断することにより端面精度を向上させることができる。この積層セラミックス基板の分断を格子状に行うことによって個別の積層基板チップを形成することができる。
【0018】
尚、前述した実施の形態では、図3(b),(c)に示すようにセラミックス基板11をスクライブし、次いでセラミックス基板13をスクライブするようにしているが、順序を逆にしてスクライブしてもよい。
【0019】
又前述した例では図3(d)及び図4(e)に示すように、両側のセラミックス基板からブレイク装置でブレイクするようにしているが、セラミックス基板の種類や厚み又はスクライブラインの浸透度によっては、一方のブレイクを行うことで分断が可能となる。例えばセラミックス基板13にスクライブラインS2に沿って十分深くスクライブが浸透している場合や、セラミックス基板11〜13が十分薄い場合は、いずれか一方の面からブレイクすることにより分断し個別化することができる。
【0020】
ここでは第1,第3のセラミックス基板のスクライブのときに同一のスクライビングホイールを用いているが、異なったものであってもよい。スクライビングホイールの種類はセラミックス基板11〜13の材質や厚さ、硬度等に応じて適宜選択するものとする。スクライビングホイールの刃先の角度やクライビング荷重等についても適宜セラミックス基板に合わせて選択する。一般的にはフェライトでは浅いスクライブでよく、LTCCについては焼結する温度や添加物等によって性質が大きく異なるため、その基板に合った刃先角度と種類のスクライビングホイールとスクライブ荷重を用いる。
【0021】
尚この実施の形態では、図3(b),(c)の工程でスクライブ装置を用いてスクライビングホイールを転動させてスクライブを実行しているが、レーザスクライブ装置によってスクライブを行うようにしてもよい。このレーザスクライブではレーザによって加熱し、その直後に冷却してスクライブを浸透させるようにしたレーザスクライブ装置であってもよく、レーザ自体の出力を上げて基板を溶融してスクライブするものであってもよい。又断続的にレーザを照射して照射位置を異ならせてスクライブを行うレーザスクライブ装置であってもよい。又図4(e)の工程でブレイク装置を用いてブレイクしているが、これに代えて分断する小片の形状が比較的大きい場合には、作業者が直接手で分断するようにしてもよい。この場合にはテープ20は不要となる。
【0022】
尚この実施の形態では第1,第3のセラミックス基板を同一種類の材料とし、中間の第2のセラミックス基板の材料が異なるものとしているが、第1〜第3のいずれのセラミックス基板の材料も互いに異なるものであってもよい。
【0023】
又この実施の形態では第1から第3のセラミックス基板を積層した積層セラミックス基板について説明しているが、本発明は更に多数の異種のセラミックス基板を積層した積層セラミックス基板についても適用することができる。この場合は第2のスクライブラインS2は積層セラミックス基板の第1のセラミックス基板とは反対の面のセラミックス基板に対してスクライブラインS1と同一位置に形成するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は異種材料の積層セラミックス基板にスクライブ装置とブレイク装置を用いて容易に分断することができ、微小な積層基板の製造に有効である。
【符号の説明】
【0025】
10 積層セラミックス基板
11,12,13 セラミックス基板
14,15 スクライビングホイール
16,17 支持部材
18,20 テープ
19 ブレイクバー
図1
図2
図3
図4