(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通知部は、少なくとも前記交通規制の開始時刻から終了時刻の期間、前記規制速度を通知し続けることを特徴とする請求項6または7に記載の速度規制支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
【0021】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る速度規制支援システム10の概略を示す図である。
図1に示した本発明の実施形態に係る速度規制支援システム10は、高速道路などの道路9において交通規制が行われている場合、その道路9の利用者が乗る車両にとって最適な走行速度を利用者に通知し、利用者が渋滞に巻き込まれる要因を減少させる。その結果、その道路9に発生する渋滞を解消・緩和する。
【0022】
なお、交通規制情報とは、道路9において行われている規制情報の総称であり、例えば、車線規制情報・速度規制情報・通行止めなどが含まれる。交通規制情報に含まれる車線規制情報には、走行車線規制・追越車線規制・登坂車線規制・路肩車線規制・島状車線規制などが含まれるものとする。ただし、本発明の実施形態に係る交通規制とは、上述の規制情報に限定されず、道路9を走行する車両の走行速度を何らかの形態で規制するものであれば、本発明の実施形態に係る交通規制の範囲に含まれる。
【0023】
図1の速度規制支援システム10は、速度規制支援装置1と、交通量計測装置2と、車線規制入力装置3と、車両検知装置4と、速度規制通知装置5と、を備えている。
【0024】
速度規制支援システム10は、道路9において車線規制などの交通規制が行われている場合、交通規制区間に到達する前に、道路9を走行する車両の利用者に対して走行速度を変化させることを促す。これによって、交通規制区間で発生する恐れがある渋滞を解消・緩和させるシステムである。
【0025】
なお、走行速度の変化に関しては、交通規制区間に到達するまでに減少させることを前提とするが、利用者が交通規制区間に到達する前に交通規制が解除された場合には、通常の法定速度で走行することを利用者に対して通知してもよい。また、車両が交通規制区間を抜けた後は、通常の走行速度に移行することを促すために、徐々に速度を上げるような通知を行ってもよい。
【0026】
図2は、本発明の実施形態に係る速度規制支援システム10を道路9上の装置を含む形で示した図である。
図2の可変式速度規制標識7(7−1〜7−N)及び車両検知器8(8−1〜8−N)は、それぞれ
図1の速度規制通知装置5及び車両検知装置4に対応する。
図2の速度規制支援装置1、交通量計測装置2及び車線規制入力装置3は、それぞれ
図1の構成と同様であるため、
図1と同じ名称・符号を用いる。
【0027】
工事・事故処理・路肩の整備などといった一時的な交通規制に対応するために、
図2に示した可変式速度規制標識7及び車両検知器8は、可動式のものであることが好ましい。ただし、日常的に行われる交通規制に対応するために道路9に据付されたものであってもよい。
【0028】
図2において、各可変式速度規制支援システム7(7−1〜7−N)及び各車両検知器8(8−1〜8−N)は、それぞれ互いに信号線で接続されている。また、可変式速度規制支援システム7(7−1〜7−N)は、速度規制支援装置1と接続されている。
【0029】
車両検知器8(8−1〜8−N)は、交通量計測装置2と接続されている。車両検知器8(8−1〜8−N)は、車線境界線91で分割されるそれぞれ車線の交通量を計測できるように設置されていることが好ましい。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係る速度規制支援システム10の詳細を示す図である。
【0031】
速度規制支援装置1は、車線規制入力装置3及び交通量計測装置2より受信したデータを基に、速度規制通知装置5の制御を行う。
【0032】
速度規制支援装置1は、
図3に示した通り、記憶部11と、処理部13と、決定部15と、制御部17と、を備えている。
【0033】
記憶部11には、
図4に示すような情報テーブル40が格納されている。なお、
図4の情報テーブル40には具体的な数値は示していないが、初期情報部分には事前に数値が登録されているものとする。
【0034】
ここで、初期情報には、路線情報、ブロック番号、ブロックの方向情報、交通規制が行われるブロックの範囲(kp)、ブロック内の法定速度、ブロック内の車線数、ブロック内の飽和交通密度がそれぞれ記載される。なお、ブロックとは、道路9を幅方向に沿って分割することによって形成された道路上の区間を示すこととする。
【0035】
ここで、路線情報は、いずれの道路の情報であるかを示し、例えば高速道路であるならばどの路線であるのかを示す。ブロック番号は、路線上の速度規制標識装置を制御可能な単位区間で分けた際に、分割した区間に対して付した番号である。また、方向情報は、そのブロックが路線の上り、下り、内回り、外回りなのかを示す情報である。同じ路線でも方向によって独立しており、上りで車線規制があっても下りは制御しない。
【0036】
これらの初期情報に含まれるパラメータは、交通規制を伴う工事などの作業を行う管理者によって設定されるものとする。なお、交通規制を行う主体と道路を管理する主体とが一致しない場合には、いずれかの主体に交通規制管理の権限を設定することが好ましい。
【0037】
処理部13は、情報テーブル40の車線規制時間に記載があるブロック、すなわち車線規制を行うブロックについて、記憶部11の情報テーブル40に格納された占有率O
Lと平均車長lを参照して速度規制後の想定車両速度V
sを算出する。なお、占有率O
Lと平均車長lについては、後述する。また、処理部13は、記憶部11が格納する情報テーブル40に想定平均速度V
sを記録する。
【0038】
決定部15は、情報テーブル40の想定平均速度V
sを参照し、各速度規制ブロックの規制速度V
rを決定し、規制速度V
rを記憶部11に格納する。
【0039】
制御部17は、交通規制時間の前に、各ブロックに設置された速度規制通知装置5によって、記憶部11に格納された規制速度V
rを表示するように制御する。また、規制速度V
rが変更された場合は、変更された規制速度V
rを表示するように制御する。さらに、車線規制終了時には速度規制通知装置5の表示を消滅させたり、通常の走行速度を表示させたりするように制御する。
【0040】
交通量計測装置2は、道路9上に設置された車両検知器8とデータの授受を行うインタフェース21(21−1〜21−N)と、収集データの平均化等を行う処理部22を有する。
【0041】
交通量計測装置2は、後述する各車線の占有率O
Lと平均車長lを計測し、それらの計測値を速度規制支援装置1へ送信する。占有率O
Lと平均車長lは、速度規制支援装置1の記憶部11に格納される。なお、交通量計測装置2自体が車両検知装置4の機能を有していてもよく、その場合は、後述する検知部41を内蔵する構成としてもよい。
【0042】
車線規制入力装置3は、例えば、道路9の交通管制を行う施設に設置される。なお、車線規制入力装置3の有する機能は、道路9の脇に設置した非常用の操作機器など(図示しない)に負わせてもよい。
【0043】
車線規制入力装置3は、
図4に示す情報テーブル40の各項目を入力するためのキーボードなどの入力装置31とともに、必要な情報を表示・出力するディスプレイ装置や印刷装置等の出力装置32を含む構成とする(
図3)。
【0044】
道路9の管理者は、出力装置32を通じて道路9の現状を把握し、情報テーブル40に登録するためのデータを入力装置31によって入力することができる。入力データは、速度規制支援装置1に送信され、速度規制支援装置1の記憶部11に格納される。
【0045】
車両検知装置4は、複数の検知部41(41−1〜41−N)を有しており、例えば、
図2の車両検知器8のように道路9上に設置される。複数の車両検知器8(8−1〜8−N)には、それぞれ検知部41(41−1〜41−N)が設けられている。それぞれの検知部41(41−1〜41−N)は、対応するインタフェース21(21−1〜21−N)を介して処理部22と接続されている。なお、車両検知装置4は交通量計測装置2に内蔵されていてもよいし、全ての検知部41が処理部22と直接接続される構成としてインタフェース21を省略してもよい。また、
図2においては、車両検知器8が路面上に設置されているように描いたが、道路9の脇に直立させてもよく、必ずしも路面上に設置しなくてもよい。
【0046】
車両検知装置4には、例えば、検知部41に組み込まれた音波センサ、超音波センサ、圧力センサなどが感知した情報を基に、車両が通過したことを検知する装置を適用することができる。また、赤外線などの発光源、マイクロ波やミリ波などの電磁波発生源などを有し、発光・受光部(発信・受信部)を持つ構成とし、発光部と受光部の間を通過した車両を検知する装置を適用することもできる。さらには、光学カメラによる画像情報を用いてもよい。このように、車両検知装置4の検知部41に組み込むセンサとしては、最低限車両の通過を検出さえできればよい。さらには、各車両の長さを検出することによって、交通規制帯を有するブロックに向けて進行中の車両の平均車長lを算出するためのデータが取得できることが好ましい。
【0047】
車両の検知情報は、交通量計測装置2によってデータ加工された後に、管理者の速度規制入力装置3に送られる。管理者は、車両検知装置4から送られたデータを車線規制入力装置3の出力装置32で読み取り、状況に応じて車線規制入力装置3の入力装置31に情報や指示を入力することができる。なお、交通量計測装置2でデータ加工される前のデータが速度規制入力装置3に送信されてもよい。
【0048】
速度規制通知装置5は、例えば
図2の可変式速度規制表示装置7のように、道路9の利用者が通行しているブロックにおける最適な走行速度である速度規制情報を道路9の利用者に通知する。なお、速度規制情報の提供は可変式速度規制表示装置7のような設備だけでなく、情報板設備やハイウェイラジオ設備などであってもよい。また、各車両に速度規制受信装置(図示しない)を設け、各車両に設けられた画像表示部や音声通知部(図示しない)を通じて、利用者に速度規制情報を通知する構成としてもよい。
【0049】
速度規制通知装置5は、複数の通知部51を有し、それぞれに異なる速度規制情報を表示できるものとする。ただし、速度規制情報は、全ての通知部51において互いに異なる必要はなく、状況によっては同じ速度規制情報であってもよい。また、
図3においては、通知部51と検知部41の数を同じN個として記載しているが、それぞれが同じ数である必要はなく、異なっていてもよい。また、速度規制通知装置5は、前述のブロックごとに設置されていることが好ましい。
【0050】
速度規制通知装置5は、少なくとも交通規制が開始する時刻から終了する時刻までの期間、規制速度を表示する。また、交通規制が開始される前に規制速度を表示し始めることが好ましい。
【0051】
以上が、本発明の実施形態に係る速度規制支援システムの構成についての説明である。なお、本発明の速度規制支援システムの範囲には、上述の記載に限定されず、上述の記載に対して種々の変更・追加を加えたものも含まれる。
【0052】
(想定車両速度)
図5〜7を用いて、想定車両速度V
sの算出について説明する。なお、想定車両速度V
sとは、交通規制区間に向かって走行する車両が車両交通規制区間を走行する際の速度を想定したものである。以下の想定車両速度V
sは、現在の道路9上の走行車両情報に基づいて算出される。
【0053】
図5は、道路9上の交通規制帯90の一例を示す図である。
【0054】
以下の想定車両速度の算出は、
図3に示した速度規制支援装置1内部の処理部13において実行される。
【0055】
図5においては、2車線の道路9のうち1車線(車線9−1)のみが交通規制帯90となる場合、すなわち、規制車線数Lは1となる場合について説明する。なお、中央車線から遠い車線から順に車線1(車線9−1)、車線2(車線9−2)、・・・というように名付けるものとする。
【0056】
車線規制が行われる時間Tは、規制開始時間T
s(YY/MM/DD HH:MM)と規制終了時間T
e(YY/MM/DD HH:MM)から式1を用いて求められる。
【0057】
T=T
e−T
s・・・(1)
車線規制が行われる交通規制区間の長さとなる距離Dは、規制始点a(kp)と規制終点b(kp)を用いて式2によって求められる。
【0058】
D=|a−b|・・・(2)
ここで、道路9において、規制始点aと規制終点bの間の区間を交通規制区間92とよぶ。
【0059】
なお、規制始点及び規制終点の単位として示したkpは、キロポストという単位であり、道路9上の特定の起点からの距離を示す。一般に、ポスト(p)はメートル(m)に対応する。式2において、規制始点aと規制終点bの値は道路9上の特定の起点に対して一義に決まる。規制始点aと規制終点bは、特定の起点に対して相対的に決まるため、距離Dを正の値とするためには式2のように絶対値を求める。
【0060】
次に、
図6を用いて交通規制区間92における各車線の占有率O
Lについて説明する。Lは車線番号である。
図6は、道路9の通行帯における交通規制帯90の割合を示す占有率を説明するための図である。
【0061】
占有率O
Lは、交通規制区間92において、各車線を車両が占有する割合となる。占有率には、計測方法によって時間占有率と空間占有率がある。時間占有率はある道路断面において車両が占有した時間の計測時間に対する百分率、空間占有率はある瞬間に一定長の道路区間上に存在する車両の長さの総和が区間長に占める割合の百分率を示す。
【0062】
車線1においては、
図6の車線1の太線で囲った部分(92−1)が占有箇所になる。
図6の車線1の太線で囲った部分(92−1)は、交通規制帯90と一致する。車線2においては、
図6の車線2の太線で囲った部分(92−2)が占有箇所となる。なお、
図6においては、車線境界線91を占有箇所から除外したように図示したが、車線境界線91の中心で分割したり、車線境界線91上の箇所をいずれかの占有箇所として割り振ったりしてもよい。
【0063】
ここで、各車線の占有率O
Lは、規制始点aと規制終点bとの範囲において、車線1ではO
1(%)、車線2ではO
2(%)であるとする。なお、占有率O
Lは車両検知装置4の観測値から交通量計測装置2で算出される。ここで、占有率O
Lは時間占有率でも空間占有率でもどちらでもよく、交通量計測装置2から周期的に値が送られてくるデータである。
【0064】
さらに、規制後の交通規制区間92における想定交通密度k
Sを用いて、交通規制区間92における想定車両速度V
Sを算出する。交通密度とは、ある瞬間における道路の単位区間上に存在する車の台数のことである。交通密度を実際に計測することは難しいため、占有率を用いて交通密度を算出することになる。
【0065】
なお、想定車両速度V
Sの算出にあたっては、ある瞬間における道路の単位区間上に存在し得る車両台数を示す飽和交通密度k
j(台/km)、法定速度V
f(km/hour)、平均車長l(m)は固定値とする。
【0066】
まず、車線Lの交通密度k
Lは、式3から求められる。
【0067】
k
L=O
L/(100×l)・・・(3)
すなわち、車線1及び2の交通密度k
1及びk
2はそれぞれ式4、5から求められる。
【0068】
k
1=O
1/(100×l)・・・(4)
k
2=O
2/(100×l)・・・(5)
よって、車線規制後の想定交通密度k
Sは、式6から求められる。
【0069】
k
S=k
1+k
2=(O
1+O
2)/(100×l)・・・(6)
規制後の交通規制区間92の想定車両速度V
Sは、規制後の想定交通密度k
Sを用いると、下記の式7の観測式(Greenshieldsの式)から求められる(参考文献:河上省吾、松井寛、「交通工学(第二版)」、森北出版、2004年、p.105−106)。
【0070】
V
S=V
f×(1−k
S/k
j)・・・(7)
なお、自由速度は法定速度V
fとした。
【0071】
以上のように、想定車両速度V
Sが求められる。算出された想定車両速度V
Sは、記憶部11に格納される。なお、式7については、検証する道路の種類に応じて種々の補正係数などを導入した式を代用してもよい。また、想定車両速度V
Sを求める際には、Greenshieldsの式の代わりに、Greenbergの式、Underwoodの式、Drakeの式、Drewの式などを用いてもよい。
【0072】
(規制速度の決定)
次に、速度規制支援装置1の決定部15において、算出した想定車両速度V
Sを用いて、各速度規制ブロックの規制速度V
rを決定する。
【0073】
規制速度V
rは、例えば、
図7に示した各ブロックにおいて下記のように決定される。
図7は、交通規制区間92を有する道路を複数のブロックに分割し、各ブロックにおける規制速度V
rを設定することを説明するための図である。なお、以下の説明においては、交通規制区間92に近づくにつれて10km/hourずつ速度を低下させているが、この速度の低減率については、交通密度や車線数を考慮して設定すればよい。
【0074】
まず、交通規制帯90を含むブロック(ブロック1〜3)では、想定車両速度V
Sを規制速度V
rとする。
【0075】
交通規制区間92の直前のブロック4においても、想定車両速度V
Sを規制速度V
rとする。
【0076】
それ以降のブロックにおいては、10km/hour単位で規制速度V
rを上げていく。ここでは、ブロック5ではV
S+10km/hour、ブロック6ではV
S+20km/hour、ブロック7ではV
S+30km/hourとする。なお、図示しないブロック8以降においては、法定速度V
fを超えない限り、同様に速度を大きくしていけばよい。
【0077】
つまり、車両が交通規制帯90を含む交通規制区間92に近づくにつれて車両速度を段階的に小さく設定することになる。なお、交通規制区間92において規制速度V
rが0となったり、渋滞に相当する速度となったりした場合は、速度の変化量を10kmではない速度に指定しなおしてもよい。例えば、交通規制区間92に近いブロックでは変化率を小さくし、交通規制区間92に遠いブロックでは変化量を大きくするなどすることができる。また、交通規制区間92の手前の数ブロックで交通規制区間92の規制速度V
rとし、交通規制区間92直前で規制速度V
rを落とさないようにすることもできる。
【0078】
このように決定された規制速度V
rは、制御部17によって速度規制通知装置5の所定の速度規制ブロックに属する通知部51に送信される。
【0079】
送信された規制速度V
rは、通知部51によって道路9の利用者に通知される。例えば、通知部51は規制速度V
rを表示できる表示装置であってもよく、音声で通知する装置であってもよい。また、速度規制通知装置5を車両に搭載し、車両に設けられた通知部51によって、利用者に規制速度V
rを通知するようにしてもよい。
【0080】
道路9の利用者は、その通知された規制速度V
rに応じて車両速度を設定すればよい。
【0081】
なお、車両速度の設定に関しては、道路9の利用者が乗る車両の運転手が調整することも可能であるが、自動制御することもできる。例えば、車両速度のみを自動制御し、ハンドル操作を運転手が行うことが可能となれば、各車両に設けた図示しない表示装置に規制速度V
rを通知し、渋滞が解消・緩和される車両速度に制御することができる。車両のアクセルの開閉状況を自動制御すれば、所定の規制速度V
rに制御することが可能である。このような自動制御システムが道路9を走行する全ての車両に組み込まれていれば、運転手の判断によって生じる誤差を小さくすることができ、より渋滞を解消・緩和することが可能となる。
【0082】
なお、車両が交通規制帯92を抜けた後は、車両の利用者の判断によって通常の法定速度で運転すればよい。ただし、渋滞を抜けた後も低速運転を継続することは必ずしも安全とは言えないため、状況に応じて、車両が交通規制区間を抜けた後も、法定速度に復帰するために規制速度を通知し続けてもよい。その場合は、交通規制帯92から離れるにつれて規制速度を段階的に大きくするように決定すればよい。
【0083】
以上のように、本発明の実施形態に係る速度規制支援システムによれば、車線規制開始時間より事前に想定される速度になるように、速度規制区間に対して上流に位置する区間から車両速度を徐々に落とす制御をする。そのため、本発明の実施形態に係る速度規制支援システムによれば、工事等による計画的な車線規制情報を登録するだけで、速度規制標識装置を動的に制御し、渋滞原因のひとつである急なブレーキ操作を低減させることが可能となる。
【0084】
本発明の実施形態の速度規制支援システムによれば、車線規制情報と交通量の関係から速度規制を行うことが可能となる。なお、速度規制情報の提供は可変式速度規制表示装置のような設備だけでなく、情報板設備やハイウェイラジオ設備などを速度規制支援装置と接続することで可能とすることができる。
【0085】
特許文献1のシステムでは、ある区間の交通量を増大することを目的としている。しかしながら、ある区間の交通量を最大化するという観点のみでは、ジャンクションやインターチェンジなどのように、再び合流が必要となる状況においては、必ずしも渋滞を解消することはできない。
【0086】
それに対し、本発明の実施形態に係る速度規制支援システムによれば、交通容量の変化に伴って発生する速度差を原因とするブレーキ回数を減らすことによって渋滞緩和を実現することを目的としている。そのため、ジャンクションやインターチェンジなど渋滞を解消する手段としても適用することができる。
【0087】
また、特許文献1のシステムによると、交通規制区間に向けて速度を上げるようなメッセージを出すこともありうる。しかしながら、本発明の実施形態に係るシステムでは、少なくとも交通規制区間に向けて進行している場合には、速度を上げるメッセージは通知しないこととする。高速道路においては、渋滞よりも安全を第一に考えるため、危険な区間に向かう際には、ドライバーに対して速度を上げることを促すメッセージは安全面から適切でない場合が多いためである。なお、交通規制区間を抜けた場合は、後続の車両との車間距離を開けたり、通常の法定速度に戻す必要があったりするため、必要に応じて速度を上げる表示を出せてもよい。
【0088】
本発明の実施形態に係る速度規制支援システムの車線規制情報としては、情報板やハイウェイラジオなどでの情報提供のために用いられる一般的な情報のみを必要としている。そのため、本発明の実施形態に係るシステムは、既存の交通管制システムとの連携のしやすさをもつことになる。特許文献1における「望ましい走行速度」は、どの区間にとって望ましいかを考慮する必要があるために求めることが困難である。それに対し、本発明の実施形態のシステムで算出する「想定速度」は、交通量データおよび規制車線数により簡単に算出することができる。
【0089】
(実施例1)
本発明の実施形態に係る実施例について説明する。
【0090】
図8には、実施例1の情報テーブル40−1を示した。情報テーブル40−1は、記憶部11に格納される。
【0091】
実施例1では、2車線の道路Aを1車線に規制する例を示した。なお、実施例1では、ブロック0003及びブロック0004を規制区間とする。また、情報テーブル40−1には、規制車線数を追加してある。また、飽和交通密度k
jは100台/kmとする。
【0092】
まず、
図3の車線規制入力装置3の入力装置31から入力された車線規制に関する情報が、記憶部11に格納された情報テーブル40−1に記録される。
【0093】
車両検知装置4の検知部41−1〜Nによって取得された車両の検知情報は、交通量計測装置2の処理部22によって平均化などの処理を加えられる。
【0094】
処理部22において各車線の交通密度を計算する。計算結果は、記憶部11に格納された情報テーブル40−1に記録される。
【0095】
速度規制支援装置1の処理部13は、記憶部11に格納された情報テーブル40−1を参照し、規制後の規制区間における想定車両速度V
sを算出する。算出された想定車両速度V
sは、記憶部11に格納された情報テーブル40−1に記録される。
【0096】
次に、決定部15は、記憶部11に格納された情報テーブル40−1を参照し、規制区間における規制速度V
rを決定する。実施例1においては、想定車両速度V
sの下一桁を四捨五入した速度である60kmを規制速度V
rに設定する。規制区間に隣接するブロックでは、規制区間に進入する際の速度変化をなくすため、規制区間の規制速度V
sと同一としている。
【0097】
また、決定部15は、規制区間に近づくにつれて速度を落とすため、規制区間に近づくにつれて10kmずつ規制速度を減速する。実施例1では、ブロック0009からブロックごとに10km/hourずつ減速され、ブロック0003−0005で規制速度Vrが60km/hourになるように設定される。なお、
図8の情報テーブル40−1の規制速度V
rにおいて数値が記入されていない箇所は、法定速度の100km/hourを規制速度V
rとする。
【0098】
制御部17は、記憶部11から各ブロックの規制速度V
rを取得し、それらの規制速度Vrを対応する通知部51(通知部51−1〜N)に送信する。
【0099】
各通知部51−1〜Nは、それらの規制速度V
rを可変式速度規制表示装置7−1〜Nに表示させる。
【0100】
実際に、情報テーブル40−1に従ってシミュレーションを行ったところ、2時間経過した段階でも規制区間を先頭とする渋滞の発生はみられなかった。それに対し、本実施例のような速度制御を行なわなかったところ、規制開始から30分経過した段階で渋滞が発生し、規制終了まで渋滞は解消されなかった。
【0101】
(実施例2)
図9には、実施例2の情報テーブル40−2を示した。以下の説明において、実施例1と同様の箇所は省略する。
【0102】
実施例2では、3車線の道路Bを2車線に規制する例を示した。なお、実施例2では、ブロック0003及びブロック0004を規制区間とする。
【0103】
入力装置31から車線規制に関する情報を入力する処理から決定部15における規制速度V
rの決定までの処理までは、実施例1と同様なので説明は省略する。
【0104】
実施例2では、ブロック0009からブロックごとに10km/hourずつ減速され、ブロック0003−0005で規制速度Vrが50km/hourになるように設定される。
【0105】
実施例1と同様に、決定された規制速度V
rは、可変式速度規制表示装置7−1〜Nに表示される。
【0106】
実際に、情報テーブル40−2に従ってシミュレーションを行ったところ、2時間経過した段階でも規制区間を先頭とする渋滞の発生はみられなかった。それに対し、本実施例のような速度制御を行なわなかったところ、規制開始から60分経過した段階で渋滞が発生し、規制終了まで渋滞は解消されなかった。
【0107】
(実施例3)
図10には、実施例3の情報テーブル40−3を示した。以下の説明において、実施例1と同様の箇所は省略する。
【0108】
実施例3では、3車線の道路Bを1車線に規制する例を示した。なお、実施例3では、ブロック0003及びブロック0004を規制区間とする。
【0109】
入力装置31から車線規制に関する情報を入力する処理から決定部15における規制速度V
rの決定までの処理までは、実施例1と同様なので説明は省略する。
【0110】
実施例3では、ブロック0009からブロックごとに10km/hourずつ減速され、ブロック0003−0004で規制速度Vrが40km/hourになるように設定される。なお、規制区間における規制速度Vrは40km/hourと低速になるため、ブロック0005と規制区間の規制速度V
rを同一とはしなかった。
【0111】
実施例1と同様に、決定された規制速度V
rは、可変式速度規制表示装置7−1〜Nに表示される。
【0112】
実際に、情報テーブル40−3に従ってシミュレーションを行ったところ、2時間経過した段階でも規制区間を先頭とする渋滞の発生はみられなかった。それに対し、本実施例のような速度制御を行なわなかったところ、規制開始から20分経過した段階で渋滞が発生し、規制終了まで渋滞は解消されなかった。
【0113】
以上のように、本発明の実施形態に係る実施例によれば、車線規制区間に向けて段階的に速度を低下させることを自動で行うため、車線規制区間において渋滞が発生しないことが確認できた。
【0114】
一般に、可変式速度規制表示装置に表示させる規制速度を設定することによって、車線規制区間などの交通規制区間に向けて速度を段階的に下げることはできる。しかしながら、交通規制区間における規制速度は、あらかじめ固定値を設定しておくか、交通量などに応じて人手で設定する必要があった。
【0115】
本発明の速度規制支援システムによれば、リアルタイムで取得した交通情報を利用して規制区間の想定交通速度を算出し、その想定交通速度を基に規制速度が自動的で決定される。そのため、車線規制に関する初期情報さえ設定されれば、交通量に応じて交通規制を実行することが可能となる。
【0116】
本実施形態においては車線規制について説明したが、例えば交通規制区間において車両速度を低下させる必要がある場合などにも適用することができる。また、高速道路などの自動車専用道路のみならず、一般道路における交通規制にも対応可能である。
【0117】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明してきたが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0118】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
道路の交通情報を取得して前記道路を通行する車両の車長及び占有率を計測する交通量計測装置と、
前記車両が通行する区間に応じて設定された規制速度を通知する制御を行なう速度規制支援装置と、を備え、
前記速度規制支援装置は、
前記交通量計測装置から取得した前記車長及び前記占有率を基に算出した想定交通密度を用いて交通規制後の交通規制区間における想定車両速度を算出し、
前記想定車両速度を基に、前記交通規制区間を含む前記道路において前記交通規制区間の前後で段階的に変化する前記規制速度を決定することを特徴とする速度規制支援システム。
(付記2)
前記規制速度は、前記交通規制区間に近づくにつれて段階的に小さくなるように決定されることを特徴とする付記1に記載の速度規制支援システム。
(付記3)
前記車両が通行する前記区間は、前記交通規制区間を含む前記道路を幅方向に沿って分割するように設定され、
前記規制速度は、前記交通規制区間に近い前記区間ほど小さくなるように決定されることを特徴とする付記1または2に記載の速度規制支援システム。
(付記4)
前記規制速度は、隣接する前記区間ごとに特定の速度だけ変化するように決定されることを特徴とする付記3に記載の速度規制支援システム。
(付記5)
前記速度規制支援装置は、
前記交通規制情報を記録する情報テーブルを格納する記憶部と、
前記交通規制情報及び前記占有率を基に算出した前記想定交通密度を用いて前記交通規制後の前記交通規制区間における前記想定車両速度を算出する処理部と、
前記想定車両速度を基に前記交通規制後の前記道路における前記規制速度を決定する決定部と、
前記道路を通行する車両に前記規制速度を通知する制御を行なう制御部と、を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか一項に記載の速度規制支援システム。
(付記6)
さらに、前記交通情報を取得する検知部を有する車両検知装置を備え、
前記交通量計測装置は、
前記検知部によって取得された前記交通情報を基に前記道路を通行する車両の前記車長及び前記占有率を平均化し、平均化したデータを前記速度規制支援装置に送信することを特徴とする付記5に記載の速度規制支援システム。
(付記7)
さらに、前記制御部によって通知された前記規制速度を通知する通知部を有する速度規制通知装置を備え、
前記制御部は、前記規制速度を通知するように前記通知部を制御することを特徴とする付記6に記載の速度規制支援システム。
(付記8)
前記通知部は、前記道路に特定の間隔で設置された速度規制表示装置であり、
前記速度規制表示装置は、前記制御部の制御に応じて前記規制速度を表示することを特徴とする付記7に記載の速度規制支援システム。
(付記9)
前記通知部は、前記車両に搭載され、画像情報もしくは音声情報によって前記規制速度を通知することを特徴とする付記7に記載の速度規制支援システム。
(付記10)
前記通知部は、少なくとも前記交通規制の開始時刻から終了時刻の期間、前記規制速度を通知し続けることを特徴とする付記7乃至9のいずれか一項に記載の速度規制支援システム。
(付記11)
前記速度規制表示装置は、前記交通規制が開始される以前から前記規制速度を通知し始めることを特徴とする付記10に記載の速度規制支援システム。
(付記12)
さらに、車線規制情報を入力する入力装置を有する車線規制入力装置を備え、
前記車線規制入力装置は、前記速度規制支援装置に対して前記車線規制情報を送信することを特徴とする付記1乃至11のいずれか一項に記載の速度規制支援システム。
(付記13)
道路の交通情報を取得して前記道路を通行する車両の車長及び占有率を計測し、
前記車長及び前記占有率を基に算出した想定交通密度を用いて交通規制後の交通規制区間における想定車両速度を算出し、
前記想定車両速度を基に、前記交通規制区間を含む前記道路において前記交通規制区間の前後で段階的に変化する前記規制速度を決定し
前記車両が通行する区間に応じて設定された前記規制速度を通知する制御を行なうことを特徴とする速度規制支援方法。