特許第6040807号(P6040807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6040807-真空排気装置へのダスト付着防止方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040807
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】真空排気装置へのダスト付着防止方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/10 20060101AFI20161128BHJP
   F27D 25/00 20100101ALI20161128BHJP
【FI】
   C21C7/10 P
   C21C7/10 B
   F27D25/00
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-45462(P2013-45462)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-173114(P2014-173114A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】菅野 浩至
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−007207(JP,A)
【文献】 実開昭54−121908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/00− 7/10
F27D 17/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼の減圧脱炭精錬における真空排気装置へのダスト付着を防止する方法であって、
前記真空排気装置稼動中に、該真空排気装置を構成するブースターに設けられている1箇所以上のベンド部の内面の一部もしくは全部、及び/又は、前記ブースターに設けられている1箇所以上のスロート部の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水を噴射し、前記ベンド部に噴射する洗浄水の量W[ton/hr]を該ベンド部の内径D[m]で除して規準化した規準化洗浄水量W/D[ton/(m・hr)]と、前記スロート部に噴射する洗浄水の量W[ton/hr]を該スロート部の内径D[m]で除して規準化した規準化洗浄水量W/D[ton/(m・hr)]との総和が600[ton/(m・hr)]以下であることを特徴とする真空排気装置へのダスト付着防止方法。
【請求項2】
請求項1記載の真空排気装置へのダスト付着防止方法において、前記溶鋼が含Cr溶鋼であることを特徴とする真空排気装置へのダスト付着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の減圧脱炭精錬に使用される真空排気装置の内部にダストが付着しないようにする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶鋼の二次精錬では、取鍋の底部から不活性ガスを吹き込み、取鍋内の溶鋼を撹拌しながら、処理容器内を真空排気装置で減圧してCOガスを発生させ脱炭処理を行う減圧脱炭精錬が従来より行われている。溶鋼の脱炭時には、一般に溶鋼表面のCOガスが破泡してスプラッシュが発生し、地金(溶鋼)が飛散する。この地金が二次バーストを起こして細粒化する。細粒化した地金は、ダストとして排気ガスと共に真空排気装置内に随伴され、真空排気装置の内部に付着する。特に、吹酸脱炭では、溶鋼表面及び溶鋼内部からのCOガス生成量が多いため、真空排気装置内へのダスト随伴量も多くなる。
真空排気装置内では、エジェクターもしくはブースターから水蒸気が噴射されている。この水蒸気の一部が凝縮して水となり、真空排気装置内に付着したダストと混合する。水分を含んだダストは、脱炭処理中に、200℃程度の高温排気ガスによって焼結され、真空排気装置内に固着する。脱炭処理を重ねるにつれて固着ダストが徐々に堆積していき、真空排気装置ダクトの閉塞による抽気能力の低下や真空到達度の悪化(Torr数の上昇)、真空引き時間の延長等が発生する。そのため、真空排気装置内部に固着したダストを取り除く清掃作業を頻繁に行わなければならず、稼動率の低下を招いている。
【0003】
そこで、真空排気装置の稼動率低下を改善する方法として、例えば特許文献1には、真空脱ガス処理終了後に系内圧力を大気圧まで復圧した後、ブースター、エジェクター、コンデンサーの各機器内部に高圧洗浄水を噴射し、各機器に付着したダストを除去する方法が開示されている。
また、特許文献2には、非脱ガス処理中に、洗浄水ノズルから洗浄水を噴出させて多段ブースター内に堆積したダストを押し流すと共に、脱ガス処理中に、コンデンサーの入口側及び出口側の横断面に水膜を形成して排気ガスに含まれているダストを捕捉する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−254042号公報
【特許文献2】実開昭63−50865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の方法では、脱ガス処理中に真空排気装置内に堆積したダストを、脱ガス処理後の自動洗浄により除去することで稼働率の向上を図っている。この方法の場合、真空排気装置内に付着したダストであれば、高圧洗浄水の噴射により洗い流すことは可能であるが、一度固着したダストを高圧洗浄水で除去する場合は、ダストの焼結度合、ダスト固着層の厚みや表面形状により、固着ダストを除去するのに適した洗浄水噴射角度あるいは噴射圧力が大きく変動する。しかし、特許文献1には、高圧洗浄水の噴射箇所に関する詳細な記載が無く、特許文献1記載の方法では一度固着したダストの完全除去は不可能であると共に、脱炭処理を重ねるにつれてダスト固着層が徐々に厚くなるという問題があることを本発明者等は発見した。
特に、含Cr溶鋼等のように吹酸脱炭処理を必要とする溶鋼を脱ガス処理する設備の場合、吹酸脱炭中の排気ガス量は非吹酸時に比べて約5倍となるため、ダスト発生量も多く、上記問題は、より深刻なものとなる。
【0006】
一方、特許文献2記載の方法は、脱ガス処理中に多段ブースター内に堆積したダストを、非脱ガス処理中に洗浄水で押し流すことを特徴の一つとしている。しかし、この方法は、特許文献1記載の方法と同様、多段ブースター内に固着したダストに対して有効ではない。また、特許文献2記載の方法は、脱ガス処理中にコンデンサーの入口側及び出口側に水膜を形成することで、排気ガスに含まれているダストを捕捉することを他の特徴としている。しかし、この方法は、コンデンサーより上流に配置されているブースターへのダスト固着に対して有効でなく、また水膜を通過したダストが、コンデンサーより下流に配置されているエジェクター等に付着するという問題がある。
【0007】
特許文献1及び2記載の方法は、脱ガス処理中に真空排気装置内に付着したダストを、脱ガス処理後に除去する点で効果をあげているが、脱ガス処理中に真空排気装置内にダストが付着しないようにすることはできない。また、特許文献2記載の方法は、コンデンサーより下流に配置されているエジェクター等にダストが付着するのを未然に防止する点において、ある程度効果をあげているが、コンデンサーより上流に配置されているブースターにダストが付着するのを未然に防止することはできない。
このように、コンデンサーより上流に配置されているブースターへのダスト付着を未然に防止する技術は未だ開発されていない状況にある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、脱ガス処理中における真空排気装置内部、特にブースターへのダスト付着を未然に防止する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、溶鋼の減圧脱炭精錬における真空排気装置へのダスト付着を防止する方法であって、
前記真空排気装置稼動中に、該真空排気装置を構成するブースターに設けられている1箇所以上のベンド部の内面の一部もしくは全部、及び/又は、前記ブースターに設けられている1箇所以上のスロート部の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水を噴射し、前記ベンド部に噴射する洗浄水の量W[ton/hr]を該ベンド部の内径D[m]で除して規準化した規準化洗浄水量W/D[ton/(m・hr)]と、前記スロート部に噴射する洗浄水の量W[ton/hr]を該スロート部の内径D[m]で除して規準化した規準化洗浄水量W/D[ton/(m・hr)]との総和が600[ton/(m・hr)]以下であることを特徴としている。
【0010】
ここで、「ブースター」とは、溶鋼の脱炭処理に伴って発生する排気ガスを吸引する装置であって、ダクトの縮径部とその前後(上流、下流)のダクト部から概略構成されている。但し、コンデンサーより下流のダクト及びコンデンサー、エジェクター等の装置はブースターに含まない。
また、「ベンド部」は、ブースターに使用されるダクトで、曲がっている部位を指す。ベンド部の曲げ角度は、一般に135度以下である。「スロート部」は、ブースターに使用されるダクトの縮径部を指す。
【0011】
ダストの発生箇所から近く高温排気ガスが通過するブースターのベンド部とスロート部の各内面には、他の部位に比べてダストが大量に付着する。本発明では、真空排気装置稼動中、即ち脱ガス処理中に、ブースターのベンド部及び/又はスロート部の内面に対して洗浄水を噴射して、ベンド部及び/又はスロート部の内面にダストが付着しないようにすることで、ダスト固着層の形成を防止する。
【0013】
ここで、「ベンド部の内径D[m]」は、ベンド部に接続されているダクトの内径を指す。但し、ベンド部の一方に接続されているダクトの内径と該ベンド部の他方に接続されているダクトの内径が異なる場合は、最小のダクト内径をベンド部の内径とする。また、「スロート部の内径D[m]」は、縮径部のダクト内径を指す。
【0014】
規準化洗浄水量の総和が600[ton/(m・hr)]を超えると、真空排気装置へのダスト付着防止効果は発揮されるものの、真空排気装置内で多量の洗浄水が蒸発することによって多量の水蒸気が発生する。そのため、脱ガス処理に必要な高真空度である3Torr(400Pa)以下となるまでに長時間を要し、真空引き時間の延長を招く。
【0015】
また、本発明に係る真空排気装置へのダスト付着防止方法では、前記溶鋼が含Cr溶鋼であってもよい。
Crを含有する溶鋼は吹酸脱炭処理を必要とするので、ダスト発生量は非吹酸時に比べて格段に増加する。そのため、本発明の効果がより顕著となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る真空排気装置へのダスト付着防止方法では、真空排気装置稼動中に、ブースターのベンド部及び/又はスロート部の内面に対して洗浄水を噴射するので、真空排気装置へのダスト付着を未然に防止することができる。その結果、真空排気装置の洗浄作業が不要となり、稼働率の低下を来すことがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る真空排気装置へのダスト付着防止方法が適用される真空脱ガス装置の模式図である。
図2】規準化洗浄水量の総和と真空引き時間との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係る真空排気装置へのダスト付着防止方法が適用される真空脱ガス装置を示したものである。本実施の形態では、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)方式を例に採り、含Cr溶鋼の脱炭処理(減圧脱炭精錬)について説明するが、RH法、DH法、REDA法等でもよいことは言うまでもない。
【0020】
本実施の形態における真空脱ガス装置は、取鍋12が収容される真空容器15と、ダクト16を介して真空容器15と接続され、真空容器15から排出される排気ガスを冷却するガスクーラー11と、ダクト17を介してガスクーラー11と接続され、排気ガスを吸引して真空容器15内を減圧する真空排気装置10とから大略構成されている。
【0021】
真空容器15はピット14内に設置されており、真空容器15の蓋15aには、取鍋12内の溶鋼に酸素含有ガスを吹き込むための吹酸ランス13が装着されている。吹酸ランス13は昇降装置(図示省略)を備えており、吹酸時には下降し、吹酸時以外は上昇して待機している。
真空排気装置10は、上流側(排気ガスの吸入側)から下流側(排気ガスの吐出側)に向けて、ブースター25、第1のコンデンサー22、ダクト18、3基の第2のコンデンサー23及び第2のコンデンサー23間に配設された一対のエジェクター24を備えている。
【0022】
ブースター25は、第1のスチームエジェクター19、第2のスチームエジェクター20、及び第3のスチームエジェクター21、並びに各スチームエジェクター19、20、21を連結するベンド部33、34、35、36、37から構成されている。
【0023】
第1のスチームエジェクター19は、排気ガスを吸入する吸入室41と、吸入室41内に設置された水蒸気ノズル(図示省略)と、吸入室41と連結されたディフューザー40とから構成されている。ディフューザー40は、中央部の縮径部からなるスロート部30と、スロート部30の前後に設けられたテーパ部38、39とから構成されている。第1のスチームエジェクター19は、水蒸気ノズルから水蒸気を噴射して吸入室41の排気ガスを吸引混合し、ディフューザー40の出口から放出する。
第2及び第3のスチームエジェクター20、21も、第1のスチームエジェクター19と同様の構成及び機能を有している。
【0024】
なお、ダクト17と第1のスチームエジェクター19とはベンド部33を介して連結され、第1のスチームエジェクター19と第2のスチームエジェクター20とはベンド部34、35を介して連結され、第2のスチームエジェクター20と第3のスチームエジェクター21とはベンド部36、37を介して連結されている。
【0025】
エジェクター24もスチームエジェクター19、20、21と同様の構成及び機能を有している。
また、コンデンサー22、23は、排気ガスに含まれているダストの捕捉及び水蒸気の冷却を行う。
【0026】
上記真空脱ガス装置では、ブースター25及びエジェクター24をそれぞれ稼動し、真空容器15内を減圧して取鍋12内の溶鋼の脱炭が行われる。ブースター25及びエジェクター24に供給される水蒸気の量及び圧力は、ブースター25及びエジェクター24に設けられた水蒸気調節弁(図示省略)により調節され、真空度の制御が行われる。ブースター25及びエジェクター24によって吸引された排気ガスは、最下流部に設置されたコンデンサー23を通過した後、放散塔から排出される。
【0027】
以下、真空脱ガス装置による吹酸脱炭処理について詳細に説明する。
先ず、取鍋12内に、例えばCrを2質量%以上含有する100〜360ton、ここでは110〜180tonの含Cr溶鋼を受湯する。この取鍋12を真空容器15内に収容し、蓋15aをして真空容器15を密閉する。そして、真空容器15内を以下に説明するように排気して減圧し、脱炭処理を行う。脱炭処理中は、取鍋12底部のポーラスプラグ(図示省略)より、不活性ガス、例えばアルゴンガス0.6〜15.0NL/(min・溶鋼トン)を供給し溶鋼撹拌を行う。併せて、真空容器15の蓋15aに取り付けた吹酸ランス13より、酸素含有ガス、例えば酸素2〜40Nm/(hr・溶鋼トン)を溶鋼上方から吹き付けて吹酸脱炭を行う。
【0028】
吹酸脱炭の末期、例えば真空容器15内の真空度が13kPa(100Torr)になるまではエジェクター24のみを稼動させて真空度制御を行う。4つのエジェクター24は能力が異なっており、所望する真空度に応じてこれらを組み合わせて用いる。吹酸開始後の脱炭中には、真空容器15内の真空度が13kPa(100Torr)〜40kPa(300Torr)となるように、真空度を制御する。吹酸脱炭終了後は、さらなる脱炭のため、ブースター25を稼動させ、13kPa(100Torr)未満の高真空となるように真空度制御を行う。
【0029】
次に、上記真空脱ガス装置における真空排気装置10へのダスト付着防止方法について説明する。
ブースター25の内部には、ベンド部33、36の内面の一部もしくは全部、及びスロート部30、31、32の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水B1、B2、S1、S2、S3を噴射するための洗浄水ノズル(図示省略)が設けられている。具体的には、ベンド部33の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水B1が、スロート部30の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水S1が、スロート部31の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水S2が、ベンド部36の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水B2が、スロート部32の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水S3が、それぞれ噴射できるようになっている(図1参照)。
【0030】
吹酸脱炭開始と同時に、ブースター25のベンド部33、36の内面の一部もしくは全部、及び/又はスロート部30、31、32の内面の一部もしくは全部に対して洗浄水B1、B2、S1、S2、S3の噴射を開始する。噴射する洗浄水の総量W[ton/hr]については、ベンド部33、36に噴射する洗浄水B1、B2の量W[ton/hr]をそれぞれベンド部33、36の内径D[m]で除して規準化した規準化洗浄水量W/D[ton/(m・hr)]の合計と、スロート部30、31、32に噴射する洗浄水S1、S2、S3の量W[ton/hr]をそれぞれスロート部30、31、32の内径D[m]で除して規準化した規準化洗浄水量W/D[ton/(m・hr)]の合計の総和が600[ton/(m・hr)]以下となるようにするのが好ましい。
また、噴射する洗浄水の水圧は1.5MPa〜3.0MPa程度が好ましい。
【0031】
なお、ベンド部33、36の一方に接続されているダクトの内径とベンド部33、36の他方に接続されているダクトの内径が異なる場合は、最小のダクト内径をベンド部33、36の内径とする。例えば、ベンド部36の場合、一方に接続されているダクトの内径D1と他方に接続されているダクトの内径D2を比べた場合、D1のほうが小さいので、ベンド部36の内径はD1となる。
【0032】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、ブースターのベンド部のうち2箇所のみに洗浄水を噴射するようにしたが、他のベンド部あるいは全てのベンド部に対して洗浄水を噴射するようにしてもよい。また、上記実施の形態におけるブースターはベンド部を備えているが、複数のスチームエジェクターを直列配置としてベンド部が無い構成としてもよい。
【実施例】
【0033】
本発明の効果を検証するために実施した検証試験について説明する。
検証試験には、上述した真空脱ガス装置と同じ構成のものを使用した。
転炉より取鍋中に、Crを5質量%以上含有する130tonの含Cr溶鋼を受鋼し、この取鍋を真空容器に収容して密閉し、減圧を行った。減圧開始後、真空容器の蓋に取り付けた吹酸ランスより酸素ガスを3000Nm/hrの速度で吹き付けることにより吹酸脱炭を実施した。
【0034】
試験ケースを表1に、規準化洗浄水量の総和と真空引き時間との関係を図2に示す。なお、真空引き時間は、51チャージ目において、真空容器内の真空度を100Torrから3Torrにするまでに要した時間である。また、表1の洗浄水噴射箇所は、ベンド部1箇所の場合はベンド部33の内面全部、ベンド部2箇所の場合はベンド部33、36の各内面全部、スロート部1箇所の場合はスロート部30の内面全部、スロート部3箇所の場合はスロート部30、31、32の各内面全部とした。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1では、洗浄水噴射をブースターのベンド部1箇所だけに限定し、実施例2、3及び参考例では、洗浄水噴射をブースターのベンド部2箇所とスロート部3箇所として洗浄水噴射を実施した。また、実施例では、洗浄水噴射をブースターのスロート部1箇所だけに限定して洗浄水噴射を実施した。なお、噴射する洗浄水の水圧は1.5MPa〜3.0MPaとした。
一方、従来例では、ブースターに対する洗浄水噴射を行わなかった。
【0037】
実施例1では、規準化洗浄水量の総和を30ton/(m・hr)としたところ、真空引き時間が20分となった。
参考例では、規準化洗浄水量の総和を600ton/(m・hr)を超える620ton/(m・hr)としたところ、真空引き時間が25分となり、実施例1に比べて真空引き時間が長くなった。
実施例では、規準化洗浄水量の総和を370ton/(m・hr)としたところ、真空引き時間が2.3分と大幅に短縮された。
実施例では、規準化洗浄水量の総和を600ton/(m・hr)としたところ、実施例1と同様、真空引き時間が20分となった。
実施例では、規準化洗浄水量の総和を40ton/(m・hr)としたところ、真空引き時間が10分となり、実施例1に比べて真空引き時間が1/2になった。
【0038】
一方、従来例では、50チャージ処理後において、真空排気装置内のダスト固着が著しく、120分以上、真空引きを行っても所定の真空度に達しなかった。そのため、途中で真空排気装置を停止したが、真空度の時間変化から真空引き時間を推定したところ、600分であった。
【符号の説明】
【0039】
10:真空排気装置、11:ガスクーラー、12:取鍋、13:吹酸ランス、14:ピット、15:真空容器、15a:蓋、16、17、18:ダクト、19:第1のスチームエジェクター、20:第2のスチームエジェクター、21:第3のスチームエジェクター、22:第1のコンデンサー、23:第2のコンデンサー、24:エジェクター、25:ブースター、30、31、32:スロート部、33、34、35、36、37:ベンド部、38、39:テーパ部、40:ディフューザー、41:吸入室、S1、S2、S3、B1、B2:洗浄水、D1、D2:内径
図1
図2