【実施例1】
【0014】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、乗物用シートのシートバック、例えば、リアシートのシートバック骨格部をなすシートフレーム20(樹脂成形品)は、フレーム本体21と、このフレーム本体21を補強する第1、第2の帯状部材41、42とを備えている。
【0015】
この実施例1において、フレーム本体21は、強化繊維が混入された樹脂材料によって形成されている。そして、フレーム本体21は、正面形状でほぼ四角形の平板状をなす板状部分21aと、この板状部分21a一側面(前面)の周縁部に沿って環状に突出された周縁リブ22と、板状部分21a一側面(前面)において、周縁リブ22と同じ高さでほぼX字状に交差して突出され、各端部が周縁リブ22と一体に連結された凸条部23、24と、凸条部23、24及び周縁リブ22の間の領域内で周縁リブ22と同じ高さで斜め格子状に突出された格子リブ25とを一体に備えている。
【0016】
フレーム本体21の凸条部23、24の頂面には、長尺帯状の第1、第2の帯状部材41、42がX字状に交差して配設されている。
この実施例1において、第1、第2の帯状部材41、42は、第1、第2の強化繊維テープ51、52によって形成されている。
第1、第2の強化繊維テープ51、52は、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、等の強化繊維テープ、例えば、UDテープとも呼ばれることがある一方向性強化繊維(炭素繊維)テープによって形成され、その繊維の方向は長手方向に沿う(平行する)。
【0017】
また、第1、第2の強化繊維テープ51、52は、その交差部55が相対的に移動可能に配置されている。例えば、
図2と
図3に示すように、第1、第2の強化繊維テープ51、52の交差部55において、凸条部24の長手方向に配設される下側の第2の強化繊維テープ52の上側に対し第1の強化繊維テープ51が交差して重なると共に、その交差部55においては、第1の強化繊維テープ51と、第2の強化繊維テープ52とが接着されることなく相対的に移動可能に重ねられたり、あるいは、
図4に示すように、一方のテープに滑り性に富む離型紙60等が貼り付けられて相対的に移動可能に重ねられる。
【0018】
また、この実施例1において、フレーム本体21を強化繊維混合の熱可塑性樹脂材料(例えば、PP、PA等)で成形すると同時に、フレーム本体21の凸状部23、24の頂面に対し、長尺帯状の第1、第2の強化繊維テープ51、52がX字状に交差して一体に接着して配設され、その交差部55が互いに接着されることな
く相対的に移動可能に重ねられる。
なお、凸状部24及び第2の強化繊維テープ52の上端部近傍には、シートベルト30が引き出し可能に巻き取られるリトラクタ31が、ビス、クリップ等の適宜の装着手段によって装着される(
図1の二点鎖線参照)。
【0019】
この実施例1に係る樹脂成形品としてのシートフレームの補強構造は上述したように構成される。
したがって、樹脂製のフレーム本体21と、第1、第2の強化繊維テープ51、52とを備えた樹脂成形品としてのシートフレーム20に対し、曲げ荷重が負荷されてシートフレーム20が撓み変形したときには、第1、第2の強化繊維テープ51、52は、その交差部55で相互の動きが規制されることなく、シートフレーム20の撓み変形に対応して互いに変位したい方向へ相対的に移動する。すなわち、第1、第2の強化繊維テープ51、52は、シートフレーム20の撓み方向へ曲がって応力をそれぞれ受けもつ。
このため、第1、第2の強化繊維テープ51、52の交差部55近傍に応力が集中することを抑制することができ、交差部55近傍での破損を防止することができる。
【0020】
また、第1、第2の強化繊維テープ51、52は、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、等の強化繊維テープ、例えば、UDテープとも呼ばれることがある一方向性強化繊維(炭素繊維)テープによって形成されることで、樹脂製のフレーム本体21の強度を効率よく高めることができ、軽量で強度的にも優れるシートフレーム20を構成することが可能となる。
【0021】
また、フレーム本体21を強化繊維混合の熱可塑性樹脂材料(例えば、PP、PA等)で成形すると同時に、フレーム本体21の凸条部23、24の頂面に対し、長尺帯状の第1、第2の強化繊維テープ51、52がX字状に交差して一体に配設され、これによって、シートフレーム20を構成することができる。この場合には、フレーム本体21を成形してから、フレーム本体21の凸条部23、24の頂面に対し、第1、第2の強化繊維テープ51、52を一体化する手間を省くことができ、コスト低減に効果が大きい。
【0022】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、乗物用シート(リアシート)のシートバックの骨格部をなすシートフレーム20である場合を例示したが、乗物用シートのシートクッションの骨格部をなすシートフレームであってもよい。
また、前記実施例1においては、長尺の第1、第2の帯状部材41、42が、第1、第2の強化繊維テープ51、52である場合を例示したが、強化繊維テープ以外の帯状部材であってもよい。
また、前記実施例1においては、乗物用シートのシートフレーム20の補強構造である場合を例示したが、シートフレーム20以外の樹脂成形品の補強構造としても採用することができる。