特許第6040823号(P6040823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040823
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】樹脂成形品の補強構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   B60N2/68
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-62054(P2013-62054)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-184901(P2014-184901A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西浦 武史
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/011852(WO,A1)
【文献】 実開昭48−073912(JP,U)
【文献】 特開2010−166942(JP,A)
【文献】 特開平11−208694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の成形品本体と、この成形品本体の少なくとも一側面に対し互いに交差して配設され、前記成形品本体を補強する第1、第2の帯状部材とを備えた樹脂成形品の補強構造であって、
前記第1、第2の帯状部材は、その交差部が相対的に移動可能に配置されており、
前記交差部以外の部分が前記成形品本体に一体に接着されて配設されていることを特徴とする樹脂成形品の補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂成形品の補強構造であって、
前記第1、第2の帯状部材は、強化繊維テープによって形成されていることを特徴とする樹脂成形品の補強構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂成形品の補強構造であって、
前記成形品本体は、乗物用シートの樹脂製のフレーム本体であることを特徴とする樹脂成形品の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は樹脂成形品の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の成形品本体は、金属製のものと比較して、軽量化を図ることができる反面、所望とする強度を確保することが困難となる場合がある。
このため、樹脂製の成形品本体の少なくとも一側面に対し、補強用の第1、第2の帯状部材を互いに交差して配設することで、樹脂製の成形品本体を補強してなる樹脂成形品の補強構造が同一出願人によって提案されている。
また、特許文献1に開示されているように、乗物用シートの樹脂製フレームのサイドフレーム部の前側に対し、繊維を含浸したポリマ材料を含む強化複合層が配設されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−500198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、樹脂製の成形品本体の少なくとも一側面に対し、補強用の第1、第2の帯状部材を互いに交差して配設した樹脂成形品において、第1、第2の帯状部材の交差部を相互に接合して一体化した場合、樹脂成形品に対し曲げ荷重が負荷され、これによって樹脂成形品が撓み変形したときには、第1、第2の帯状部材がその交差部で相互の動きが規制される。
このため、第1、第2の帯状部材が互いに変位したい方向へ動きづらくなり、交差部近傍で応力が集中し、当該部分で破損される恐れがある。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、成形品本体を補強する第1、第2の帯状部材の交差部近傍に応力が集中することを抑制することができ、補強効率を高めることができる樹脂成形品の補強構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係る樹脂成形品の補強構造は、樹脂製の成形品本体と、この成形品本体の少なくとも一側面に対し互いに交差して配設され、前記成形品本体を補強する第1、第2の帯状部材とを備えた樹脂成形品の補強構造であって、
前記第1、第2の帯状部材は、その交差部が相対的に移動可能に配置されており、前記交差部以外の部分が前記成形品本体に一体に接着されて配設されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、樹脂製の成形品本体と、第1、第2の帯状部材とを備えた樹脂成形品に対し、曲げ荷重が負荷されて樹脂成形品が撓み変形したときには、第1、第2の帯状部材がその交差部で相互の動きが規制されることなく、樹脂成形品の撓み変形に対応して互いに変位したい方向へ相対的に移動する。すなわち、樹脂成形品の撓み方向へ曲がって応力を受けもつ。
このため、第1、第2の帯状部材の交差部近傍に応力が集中することを抑制することができ、交差部近傍での破損を防止することができる。
【0008】
請求項2に係る樹脂成形品の補強構造は、請求項1に記載の樹脂成形品の補強構造であって、
前記第1、第2の帯状部材は、強化繊維テープによって形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、帯状部材が強化繊維テープによって形成されることで、樹脂製の成形品本体の強度をより一層高めることができる。
【0010】
請求項3に係る樹脂成形品の補強構造は、請求項1又は2に記載の樹脂成形品の補強構造であって、
前記成形品本体は、乗物用シートの樹脂製のフレーム本体であることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、樹脂成形品の補強構造を乗物用シートのシートフレームに採用することで、軽量で強度的にも優れるシートフレームを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施例1に係る樹脂成形品の補強構造としての乗物用シートのシートフレームを示す斜視図である。
図2】同じく要部を拡大して示す斜視図である。
図3】同じく図2のIII−III線に沿う第1、第2の強化繊維テープの交差部を示す断面図である。
図4】第1、第2の強化繊維テープの交差部に滑り性に富む離型紙等が貼り付けられた実施態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0014】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、乗物用シートのシートバック、例えば、リアシートのシートバック骨格部をなすシートフレーム20(樹脂成形品)は、フレーム本体21と、このフレーム本体21を補強する第1、第2の帯状部材41、42とを備えている。
【0015】
この実施例1において、フレーム本体21は、強化繊維が混入された樹脂材料によって形成されている。そして、フレーム本体21は、正面形状でほぼ四角形の平板状をなす板状部分21aと、この板状部分21a一側面(前面)の周縁部に沿って環状に突出された周縁リブ22と、板状部分21a一側面(前面)において、周縁リブ22と同じ高さでほぼX字状に交差して突出され、各端部が周縁リブ22と一体に連結された凸条部23、24と、凸条部23、24及び周縁リブ22の間の領域内で周縁リブ22と同じ高さで斜め格子状に突出された格子リブ25とを一体に備えている。
【0016】
フレーム本体21の凸条部23、24の頂面には、長尺帯状の第1、第2の帯状部材41、42がX字状に交差して配設されている。
この実施例1において、第1、第2の帯状部材41、42は、第1、第2の強化繊維テープ51、52によって形成されている。
第1、第2の強化繊維テープ51、52は、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、等の強化繊維テープ、例えば、UDテープとも呼ばれることがある一方向性強化繊維(炭素繊維)テープによって形成され、その繊維の方向は長手方向に沿う(平行する)。
【0017】
また、第1、第2の強化繊維テープ51、52は、その交差部55が相対的に移動可能に配置されている。例えば、図2図3に示すように、第1、第2の強化繊維テープ51、52の交差部55において、凸条部24の長手方向に配設される下側の第2の強化繊維テープ52の上側に対し第1の強化繊維テープ51が交差して重なると共に、その交差部55においては、第1の強化繊維テープ51と、第2の強化繊維テープ52とが接着されることなく相対的に移動可能に重ねられたり、あるいは、図4に示すように、一方のテープに滑り性に富む離型紙60等が貼り付けられて相対的に移動可能に重ねられる。
【0018】
また、この実施例1において、フレーム本体21を強化繊維混合の熱可塑性樹脂材料(例えば、PP、PA等)で成形すると同時に、フレーム本体21の凸状部23、24の頂面に対し、長尺帯状の第1、第2の強化繊維テープ51、52がX字状に交差して一体に接着して配設され、その交差部55が互いに接着されることな相対的に移動可能に重ねられる。
なお、凸状部24及び第2の強化繊維テープ52の上端部近傍には、シートベルト30が引き出し可能に巻き取られるリトラクタ31が、ビス、クリップ等の適宜の装着手段によって装着される(図1の二点鎖線参照)。
【0019】
この実施例1に係る樹脂成形品としてのシートフレームの補強構造は上述したように構成される。
したがって、樹脂製のフレーム本体21と、第1、第2の強化繊維テープ51、52とを備えた樹脂成形品としてのシートフレーム20に対し、曲げ荷重が負荷されてシートフレーム20が撓み変形したときには、第1、第2の強化繊維テープ51、52は、その交差部55で相互の動きが規制されることなく、シートフレーム20の撓み変形に対応して互いに変位したい方向へ相対的に移動する。すなわち、第1、第2の強化繊維テープ51、52は、シートフレーム20の撓み方向へ曲がって応力をそれぞれ受けもつ。
このため、第1、第2の強化繊維テープ51、52の交差部55近傍に応力が集中することを抑制することができ、交差部55近傍での破損を防止することができる。
【0020】
また、第1、第2の強化繊維テープ51、52は、カーボン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、等の強化繊維テープ、例えば、UDテープとも呼ばれることがある一方向性強化繊維(炭素繊維)テープによって形成されることで、樹脂製のフレーム本体21の強度を効率よく高めることができ、軽量で強度的にも優れるシートフレーム20を構成することが可能となる。
【0021】
また、フレーム本体21を強化繊維混合の熱可塑性樹脂材料(例えば、PP、PA等)で成形すると同時に、フレーム本体21の凸条部23、24の頂面に対し、長尺帯状の第1、第2の強化繊維テープ51、52がX字状に交差して一体に配設され、これによって、シートフレーム20を構成することができる。この場合には、フレーム本体21を成形してから、フレーム本体21の凸条部23、24の頂面に対し、第1、第2の強化繊維テープ51、52を一体化する手間を省くことができ、コスト低減に効果が大きい。
【0022】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、乗物用シート(リアシート)のシートバックの骨格部をなすシートフレーム20である場合を例示したが、乗物用シートのシートクッションの骨格部をなすシートフレームであってもよい。
また、前記実施例1においては、長尺の第1、第2の帯状部材41、42が、第1、第2の強化繊維テープ51、52である場合を例示したが、強化繊維テープ以外の帯状部材であってもよい。
また、前記実施例1においては、乗物用シートのシートフレーム20の補強構造である場合を例示したが、シートフレーム20以外の樹脂成形品の補強構造としても採用することができる。
【符号の説明】
【0023】
20 シートフレーム(樹脂成形品)
21 樹脂製のフレーム本体
41 第1の帯状部材
42 第2の帯状部材
51 第1の強化繊維テープ
52 第2の強化繊維テープ
55 交差部
図1
図2
図3
図4