(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂凸部形成方法によって前記凸部が形成された前記基材に対し、前記凸部が形成されていない部分に配線を形成し配線板を製造する配線板製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1A〜
図1Hには、第1実施形態の配線板製造方法により、プリント基板12を製造する工程が順に示されている。プリント基板12は配線板の一例である。配線盤製造方法は、その工程の一部に、樹脂凸部形成方法を含んでいる。
【0011】
図1Aに示すように、第1実施形態の配線板製造方法では、最初に、絶縁性を有し、未硬化状態の熱硬化性樹脂16を、基材14に対し所定の厚みで貼着あるいは塗布し、絶縁層18を形成する。なお、基材14は、絶縁性を有する硬化状態の樹脂(一例としてフェノール系樹脂、エポキシ系樹脂)等によって、板状あるいは膜状に形成されている。これに対し、熱硬化性樹脂16としては、エポキシ系の熱硬化性樹脂等を用いることが可能である。
【0012】
未硬化状態の絶縁層18に対し、
図1Bに示すように、所定の温度とされた成形型20を基材14の反対側から押し当て、複数の凸部24を有する所定の絶縁パターンを形成する。成形型20には、凸部24のそれぞれに対応する位置に凹部22が形成されている。第1実施形態では、凸部24のそれぞれが、基材14と垂直な側面24Bと、基材14の反対側に位置する頂面24Aと、を有しており、断面形状が長方形になっている。これらの凸部24は、後述するように、プリント基板12において配線の間の絶縁部となる部分である(
図1H参照)。凸部24の断面形状は長方形に限定されず、正方形や台形であってもよい。
【0013】
なお、基材14上に所定パターンの複数の凸部24を形成する方法は上記に限定されず、たとえば、マスキングを施した上で不要部分をエッチング等によって除去してもよい。
図1Bに示した上記方法(「インプリント」と称されることがある)では成形型20を絶縁層18に押し当てる動作で、複数の凸部24を形成できる。また、凸部24の幅が狭い場合でも、対応する凹部22の内寸の幅を小さくすればよく、微小な凹部22の形成が容易である。
【0014】
図2には、熱硬化性樹脂16の温度と粘度の関係が定性的に示されている。熱硬化性樹脂16は、室温T1において所定の粘度P1を有しているが、温度上昇に伴い粘度が低下し、温度T2では粘度が極小(粘度P2)となる。そして、温度T2を超えてさらに温度が上昇すると、粘度も上昇する。成形型20によって複数の凸部24を形成する際は、たとえば、温度T2付近まで熱硬化性樹脂16の温度を上げ、粘度を低下させた状態で形成する。
【0015】
次に、複数の凸部24が形成された熱硬化性樹脂16に対し、
図1Cに示すように、表面を粗面化すると共に、凸部24間の配線面14A上に残った膜状の樹脂16Fを除去する処理を必要に応じて行う。この処理の具体例としては、熱硬化性樹脂16の種類に応じた所定のエッチングガスに熱硬化性樹脂16を曝す処理を挙げることができる。エッチングガスの例としては、たとえば、熱硬化性樹脂16としてエポキシ系熱硬化性樹脂を用いた場合は、四フッ化炭素CF
4とアルゴンArの混合ガスを用いることが可能である。
【0016】
そして、
図1Dに示すように、凸部24の側面24B、頂面24A及び凸部24間の配線面14Aを連続して覆うように、これらの表面に鍍金ベース30を成形する。鍍金ベース30は、基材14の配線面14A側に鍍金32を施す際に下地となる層(鍍金下地層)である。本実施形態では、鍍金工程において電解鍍金を行うが、鍍金ベース30は鍍金32を施す際に凸部24及び基材14の表面に導電性を付与するための金属薄膜となる。
【0017】
鍍金ベース30を形成する方法としては、たとえば、真空蒸着やスパッタリングを挙げることができる。真空蒸着やスパッタリングは、真空中あるいは気体中で鍍金ベース30の材料を基材14及び凸部24に付着させる方法(いわゆるドライプロセス)である。このため、溶液中で鍍金ベース30の材料を付着させる方法(いわゆるウェットプロセス)と異なり、熱硬化性樹脂16の浸食が少ない。
【0018】
鍍金ベース30の構造としては、鍍金に用いる金属(一例として銅Cu)と同じものを用いて、主成分層30Aのみを有する単層構造としてもよい。さらに、
図3に詳細に示すように、主成分層30Aに加えて、主成分層30Aと基材14又は熱硬化性樹脂16との間に密着層30Bを有する2層構造としてもよい。密着層30Bを設けることで、基材14及び凸部24と主成分層30Aとの密着性を高めることが可能である。密着層30Bの材料としては、たとえばチタンTiを挙げることができる。鍍金ベース30の厚みは、たとえば1μm以下とする。
【0019】
いずれにしても、鍍金ベース30は、凸部24の少なくとも側面24Bに接触しているそして、後述する仮硬化時に凸部24の熱硬化性樹脂16の粘度が低下しても、凸部24を側面24B側から保持しており、保持材の一例となっている。
【0020】
このようにして鍍金ベース30が形成された状態で、
図1Eに示すように、熱硬化性樹脂16を所定の温度に加熱し、仮硬化させる。「仮硬化」とは、熱硬化性樹脂16が完全に硬化してはいないが、未硬化状態と比較すると、耐熱性や耐薬品性が向上している。後述するように、鍍金や平坦化処理(特にエッチング)等を行う場合に、仮硬化状態では未硬化状態よりも、耐水性や耐薬品性が向上されており、凸部24の形状を安定的に維持できる。
【0021】
本実施形態では、基材14における配線面14Aの反対側からホットプレート34により熱硬化性樹脂16を加熱している。仮硬化時の加熱手段は特に限定されず、ホットプレート34に代えて、オーブン等を用いてもよいし、ホットプレート34とオーブンとを併用してもよい。
【0022】
図2のグラフから分かるように、熱硬化性樹脂16の仮硬化を行うには、粘度が室温状態よりも高くなる程度、たとえば仮硬化温度T3まで熱硬化性樹脂16の温度を上昇させる。温度の上昇途中では粘度が低下し、溶融状態となる温度域(T2付近)を通過する。このように、熱硬化性樹脂16を溶融温度域以上に加熱することで、熱硬化性樹脂16の粘度が大きく低下する。
【0023】
本実施形態では、鍍金ベース30が凸部24の側面24B及び頂面24Aに接触しており、凸部24を鍍金ベース30が保持している。したがって、凸部24の熱硬化性樹脂16の粘度が低下しても、横方向に流動して凸部24が変形する(崩れる)ことが抑制される。特に、鍍金ベース30において凸部24の側面24Bに接触している部分は、熱硬化性樹脂16の流動を堰として食い止めており、凸部24の変形を効果的に抑制できる。
【0024】
熱硬化性樹脂16の仮硬化は、具体的には、たとえば、最初に90℃で30分程度加熱し、さらに180℃で30分程度で加熱するような、2段階のプロセスで行えばよい。
【0025】
熱硬化性樹脂16(凸部24)を仮硬化した後、
図1Fに示すように、基材14の配線面14A側から、基材14及び凸部24を覆うように鍍金32を形成する。この鍍金32において凸部24の間の部分はプリント基板12の配線となる。このため、本実施形態では鍍金32の材料として銅Cuを用いている。鍍金32の厚みT4(配線面14Aからの高さ)は、少なくとも、凸部24における鍍金ベース30を覆う程度とされる。
【0026】
そして、
図1Gに示すように、鍍金32における基材14と反対側(
図1Gにおける上側)を平坦化する平坦化処理を行う。この平坦化処理では、平坦化された部分に、凸部24が露出する程度に、鍍金32の厚みT4を薄くする。平坦化処理の具体的方法としては、研磨やエッチングを挙げることができる。平坦化処理により、
図1Gに示す断面で見たとき、凸部24の間に位置する銅Cuが互いに絶縁されて、所定の配線パターンが配線面14Aに形成される。
【0027】
さらに、
図1Hに示すように、凸部24の熱硬化性樹脂16を所定の温度に加熱し、本硬化を行う。「本硬化」とは、上記した「仮硬化」よりも熱硬化性樹脂16をさらに硬化させることをいい、仮硬化時よりも高温あるいは長時間の加熱により実現可能である。たとえば、本実施形態では熱硬化性樹脂16としてエポキシ系熱硬化性樹脂を用いているので、本硬化のためには、180℃で60分程度加熱すればよい。本硬化時の加熱手段としても、ホットプレート34やオーブン等を単独で用いてもよいし、これらを併用してもよい。
【0028】
このようにして、プリント基板12が得られる。プリント基板12の配線面14Aには、所定の配線パターンが形成されている。
【0029】
ここで、
図4A〜
図4Cには、比較例の配線板製造方法の一部の工程が示されている。比較例の配線板製造方法では、成形型20(
図1B参照)によって基材14上に凸部24が形成された所定の熱硬化性樹脂16に対し、
図4Aに示すように、鍍金ベースを形成する前に、ホットプレート34やオーブン等により仮硬化を行う。その後、
図4Bに示すように、熱硬化性樹脂16の表面の粗面化及び凸部24間の膜状の樹脂16Fを除去する処理を行う。さらにその後、
図4Cに示すように、凸部24の側面24B、頂面24A及び凸部24間の配線面14Aを連続して覆う鍍金ベース30を成形する。すなわち、比較例の配線板製造方法では、鍍金ベース30を形成する前に、熱硬化性樹脂16の仮硬化を行っている。そして、その後に、鍍金32の形成(
図1F参照)、鍍金32の平坦化(
図1G参照)、及び凸部24の本硬化(
図1H参照)を行う。要するに、第1実施形態の配線板製造方法では、熱硬化性樹脂16の仮硬化前に鍍金ベース30を形成しているのに対し、比較例の配線板製造方法では、熱硬化性樹脂16の仮硬化後に鍍金ベース30を形成している。
【0030】
比較例の場合は、仮硬化前と比べて、仮硬化後に凸部24(絶縁パターン)の形状が変化することがある。
【0031】
これに対し、第1実施形態の場合は、仮硬化前と比べて、仮硬化後の凸部24(絶縁パターン)の形状変化が小さい。これは、第1実施形態において、仮硬化前に鍍金ベース30を形成しており、鍍金ベース30が凸部24の側面24B及び頂面24A(特に側面24B)で、凸部24(粘度低下状態の熱硬化性樹脂16)の変形を抑制しているためであると考えられる。
【0032】
すなわち、第1実施形態の配線板製造方法では、凸部24の仮硬化時の形状変化が抑制されたプリント基板12を製造できる。
【0033】
次に、第2実施形態の配線板製造方法について説明する。
図5A〜
図5Fには、第2実施形態の配線板製造方法の工程の一部が示されている。第2実施形態において、第1実施形態と略同一の工程に関しては、適宜図示を省略もしくは、第1実施形態の図面を援用する。
【0034】
第2実施形態の配線板製造方法では、第1実施形態の配線板製造方法と同様に、絶縁性を有し、未硬化状態の熱硬化性樹脂16を、基材14に対し所定の厚みで貼着あるいは塗布し、絶縁層18を形成する(
図1A参照)。
【0035】
次に、成形型40を基材14の反対側から押し当て、複数の凸部44を有する所定の絶縁パターンを形成する。ここで、第2実施形態の配線板製造方法では、成形型40の凹部42の底面に、複数の微小凹部42Mが形成されている。したがって、この成形型40を用いて形成された凸部44の頂面には、微小凹部42Mに対応した複数の微小凸部44Mが形成される。微小凸部44Mは突出部の一例である。
【0036】
第2実施形態では、微小凸部44Mは凸部44よりも微小になるように、凸部
44の突出方向(矢印M1方向)と同方向に突出されている。特に、図示の例では、微小凸部44Mのそれぞれを先端に向かって細くなる先細り形状(たとえば円錐形状)とし、幅方向(矢印W1方向)及び奥行き方向(矢印M1と矢印W1の双方に直交する方向)に所定間隔で並ぶように配置している。ただし、突出部としては、凸部44よりも微小である必要はない。
【0037】
このように、熱硬化性樹脂16は、凸部44の頂面24Aに微小凸部44Mが形成されている。この熱硬化性樹脂16に対し、第1実施形態の配線板製造方法と同様に、
図5Bに示すように、表面を粗面化すると共に、凸部24間の配線面14A上に残った膜状の樹脂16Fを除去する処理を必要に応じて行う。
【0038】
そして、
図5Cに示すように、凸部44の側面24B、頂面24A(微小凸部44Mを含む)及び、凸部44の間の配線面14Aを連続して覆うように、これらの表面に鍍金ベース30を成形する。
【0039】
次に、第2実施形態の配線板製造方法では、
図5D及び
図6に示すように、微小凸部44Mの先端部分の鍍金ベース30を選択的に除去し、鍍金ベース30を厚み方向に貫通する貫通孔46を形成する。貫通孔46を形成することにより、熱硬化性樹脂16が微小凸部44Mの先端部分において露出する。
【0040】
なお、このように鍍金ベース30を部分的に除去する方法としては、エッチングを用いることができる。微小凸部44Mは先細り形状なので、微小凸部44Mの先端部分に位置する鍍金ベース30が、エッチングにより局所的に除去されやすい。
【0041】
鍍金ベース30に貫通孔46が形成された状態で、
図5Eに示すように、熱硬化性樹脂16を所定の温度に加熱し、仮硬化させる。第2実施形態の配線板製造方法では、鍍金ベース30に貫通孔46が形成されている。仮硬化時に熱硬化性樹脂16から発生した気体成分が、矢印A1で示すように貫通孔46を通過して熱硬化性樹脂16の外部に放出されるので、気体成分の発生に起因する鍍金ベース30や凸部44の変形を抑制できる。
【0042】
なお、第2実施形態の配線板製造方法においても、第1実施形態の配線板製造方法と同様に、仮硬化には、基材14における配線面14Aの反対側からホットプレート34を接触させる方法や、オーブン等を用いる方法を採ることが可能である。特に、熱硬化性樹脂16から発生した気体成分の放出を促進する観点からは、貫通孔46が形成された位置と反対側(配線面14Aの反対面)にホットプレート34を接触させて徐々に加熱することが好ましい。
【0043】
そして、第2実施形態においても、凸部44の側面24B及び頂面24A(特に側面24B)に鍍金ベース30が接触しており、熱硬化性樹脂16の流動を堰として食い止めるため、凸部
44の変形を抑制する効果が高い。
【0044】
熱硬化性樹脂16(凸部24)を仮硬化した後、
図5Fに示すように、基材14の配線面14A側から、基材14及び凸部44を覆うように鍍金を施し鍍金32を形成する。鍍金32の厚みT4は、少なくとも、凸部
44の鍍金ベース30(貫通孔46の形成部分)を覆う程度とされる。
【0045】
そして、第1実施形態の配線板製造方法と同様に、鍍金32における基材14と反対側を平坦化する平坦化処理を行う(
図1G参照)。この平坦化処理では、平坦化された部分に、凸部
44が露出する程度に、鍍金32の厚みT4を薄くする。第2実施形態では、実質的に、微小凸部44Mが除去される。平坦化処理により、凸部
44の間に位置する銅Cuが互いに絶縁されて、所定の配線パターンが配線面14Aに形成される。
【0046】
さらに、第1実施形態の配線板製造方法と同様に、凸部
44の熱硬化性樹脂16を所定の温度に加熱し、本硬化を行う(
図1H参照)。
【0047】
このようにして、第2実施形態の配線板製造方法においても、配線面14Aには、所定の配線パターンが形成されたプリント基板12(
図1H参照)が得られる。
【0048】
特に第2実施形態の配線板製造方法では、鍍金ベース30に形成された貫通孔46により、仮硬化時に熱硬化性樹脂16から発生する気体成分を放出することが可能である。このため、気体成分の放出による鍍金ベース30の変形や凸部
44の変形を抑制する効果が高い。
【0049】
第2実施形態の配線板製造方法において、鍍金ベース30に形成される貫通孔46は「通過部」の一例であるが、通過部の構造は貫通孔46に限定されない。たとえば、第1実施形態のように、凸部
44に微小凸部44Mがない構造であっても、凸部
44の頂面24Aに接触する部分の一部に鍍金ベース30が除去された部分を設ければ、熱硬化性樹脂16の仮硬化時に生じた気体成分が、この除去部分から放出される。
【0050】
第2実施形態の配線板製造方法では、エッチングにより貫通孔46を形成しており、通過部の形成が容易である。
【0051】
しかも、凸部44に、この凸部44より微小
な微小凸部44Mを形成しているので、微小凸部44Mの先端部分の鍍金ベース30をエッチングにより選択的に除去でき、効率的な貫通孔46の形成が可能である。
【0052】
特に、微小凸部44Mを先細り状に形成することで、微小凸部44Mの先端部分に位置する鍍金ベース30にエッチングの効果が及びやすくなる。このため、貫通孔46の形成が短時間で可能になる。微小凸部44Mを先細り状にする具体的形状は、上記した円錐状に限定されず、角錐状であってもよい。さらに円錐台状や角錐台状であってもよい。また、上記の例では、微小凸部44Mを幅方向(矢印W1方向)及び奥行き方向(矢印M1と矢印W1の双方に直交する方向)に所定間隔で並ぶように配置しているので、貫通孔46が頂面24Aで偏在することなく分散配置される。
【0053】
次に、第3実施形態の配線板製造方法について説明する。
図7A〜
図7Eには、第3実施形態の配線板製造方法の工程の一部が示されている。第3実施形態において、第1実施形態と略同一の工程に関しては、適宜図示を省略もしくは、第1実施形態の図面を援用する。
【0054】
第3実施形態の配線板製造方法では、第1実施形態の配線板製造方法と同様に、絶縁性を有し、未硬化状態の熱硬化性樹脂16を、基材14に対し所定の厚みで貼着あるいは塗布し、絶縁層18を形成する(
図1A参照)。
【0055】
そして、未硬化状態の絶縁層18に対し、所定温度の成形型20を基材14の反対側から押し当て、複数の凸部24を有する所定の絶縁パターンを形成する(
図1B参照)。
【0056】
さらに、所定のパターン形状とされた熱硬化性樹脂16に対し、表面を粗面化すると共に、凸部24間の配線面14A上に残った膜状の樹脂16Fを除去する処理を必要に応じて行う(
図1C参照)。以上は、第1実施形態の配線板製造方法と実質的に同一の工程である。
【0057】
次に、第3実施形態の配線板製造方法では、
図7Aに示すように、凸部24の側面24B、頂面24A及び凸部24間の配線面14Aを覆うように、未硬化の感光性熱硬化樹脂62による保持樹脂層60を形成する。保持樹脂層60の厚みT5(基材14の配線面14Aからの高さ)は、凸部24の高さ以上とされ、保持樹脂層60は、凸部24の側面24B及び頂面24Aに接触している。すなわち、第3実施形態の配線板製造方法では、保持樹脂層60が保持材の例である。
【0058】
感光性熱硬化樹脂62は、露光により硬化されるが、露光時の露光条件を調整することで、半硬化状態とすることが可能な樹脂である。そして、半硬化状態となった感光性熱硬化樹脂62は、凸部24の熱硬化性樹脂16の仮硬化温度では変形しない程度に耐熱性が向上している。さらに、半硬化状態の感光性熱硬化樹脂62に対し、気体成分が透過可能になっている。また、半硬化状態の感光性熱硬化樹脂62は、所定の除去剤を用いることで、基材14及び凸部24(熱硬化性樹脂16)から除去可能である。
【0059】
このような感光性熱硬化樹脂62の保持樹脂層60に対し、
図7Bに矢印L1で示すように露光を行い、感光性熱硬化樹脂62を半硬化状態とする。すなわち、半硬化状態で耐熱性が向上した感光性熱硬化樹脂62が、凸部24の側面24B及び頂面24Aに接触して保持した状態となる。
【0060】
なお、保持樹脂層60の形成には、たとえば、感光性熱硬化樹脂62をあらかじめ薄膜状に形成しておき、基材14及び凸部24に貼着(ラミネート)することにより可能である。熱硬化性樹脂16の変形温度よりも低い温度でラミネート可能な材料を用いれば、ラミネート時に凸部24が変形することを抑制できる。また、熱硬化性樹脂16の仮硬化温度では熱硬化しない程度に、硬化温度が高い感光性熱硬化樹脂62を用いると、後述する仮硬化時に、感光性熱硬化樹脂62の熱硬化を抑制できる。
【0061】
そして、このようにして感光性熱硬化樹脂62の保持樹脂層60が形成された状態で、
図7Cに示すように、熱硬化性樹脂16を所定の温度に加熱し、仮硬化させる。仮硬化時の温度は、感光性熱硬化樹脂62の硬化温度よりも低くする。これにより、感光性熱硬化樹脂62の硬化を抑制できる。
【0062】
第3実施形態の配線板製造方法では、凸部24の側面24B及び頂面24A(特に側面24B)に感光性熱硬化樹脂62が接触しており、熱硬化性樹脂16の流動を堰として食い止めるため、凸部24の変形を抑制できる。
【0063】
半硬化状態の感光性熱硬化樹脂62に対しては、気体成分が透過可能である。すなわち、仮硬化時に熱硬化性樹脂16から生じた気体成分が、矢印A2で示すように、感光性熱硬化樹脂62(保持樹脂層60)を透過する。
【0064】
熱硬化性樹脂16の仮硬化後には、所定の除去剤を用い、
図7Dに示すように保持樹脂層60の感光性熱硬化樹脂62を除去する。
【0065】
そして、
図7Eに示すように、凸部24の側面24B、頂面24A及び凸部24間の配線面14Aを連続して覆うように、これらの表面に鍍金ベース30を成形する。
【0066】
その後、基材14の配線面14A側への鍍金32の形成(
図1F参照)、鍍金32における基材14と反対側の平坦化処理(
図1G参照)及び、凸部24(熱硬化性樹脂16)の本硬化(
図1H参照)を行う。これにより、第3実施形態の配線板製造方法においても、配線面14Aには、所定の配線パターンが形成されたプリント基板12(
図1H参照)が得られる。
【0067】
第3実施形態の配線板製造方法では、保持材として形成した保持樹脂層60を除去する必要がある。これに対し、第1実施形態及び第2実施形態の配線板製造方法では、鍍金32を形成する際に用いる鍍金ベース30を保持材として用いており、保持材(鍍金ベース30)を除去する必要がないので、簡易な製造方法となる。
【0068】
上記各実施形態において、保持材(鍍金ベース30又は保持樹脂層60)は、少なくとも凸部24の側面24Bに接触配置されていれば、仮硬化時に凸部24の変形を抑制する効果を奏する。
【0069】
保持材が、側面24Bの他に頂面24Aにも接触配置されていれば、仮硬化時に凸部24の熱硬化性樹脂16が頂面24A側へ変形することも抑制できる。
【0070】
上記では、熱硬化性樹脂16(凸部24、44)に対し、2回の硬化(仮硬化と本硬化)を行う方法を挙げているが、1回の硬化で足りる場合は、2回の硬化を行う必要はない。また、3回以上の硬化を行ってもよい。
【0071】
また、上記では、樹脂凸部形成方法を一部に含んだ配線板製造方法を挙げたが、樹脂凸部形成方法は、配線板(プリント基板12)の製造方法に限定して用いられるものではない。すなわち、基材上に、熱硬化性樹脂によって凸部を形成する際の、熱硬化性樹脂の熱硬化時の変形を抑制する場合に、樹脂凸部形成方法を適用できる。たとえば、各種ディスプレイのグリッド構造物等、より具体的には、ワイヤグリッド偏光板、回折格子、反射防止フィルム等を製造する製造方法の一部として、樹脂凸部形成方法を用いることが可能である。これらの成形品では、鍍金ベースが不要なものもある。第1実施形態及び第2実施形態では、たとえば凸部24の仮硬化後の適切な時期に、鍍金ベース30を除去すればよい。第3実施形態では、保持樹脂層60を除去した後、鍍金ベースを形成することなく、次工程を行えばよい。
【0072】
配線板としても、プリント基板12に限定されず、たとえば、フレキシブル配線基板であってもよい。
【0073】
以上、本願の開示する技術の実施形態について説明したが、本願の開示する技術は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0074】
本明細書は、以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
基材上に未硬化状態の熱硬化性樹脂層を形成し、
成形型を前記熱硬化性樹脂層に押し当てることにより、凸部を形成し、
前記凸部の少なくとも側面を保持する保持材を形成し、
前記凸部及び前記保持材を形成した前記基材を加熱することを特徴とする樹脂凸部形成方法。
(付記2)
前記保持材が、前記凸部及び前記基材への鍍金の下地となる鍍金下地層であることを特徴とする付記1に記載の樹脂凸部形成方法。
(付記3)
前記保持材は、前記未硬化状態の前記凸部を覆うように形成するとともに、
形成された前記保持材に、貫通孔を形成することを特徴とする付記2に記載の樹脂凸部形成方法。
(付記4)
前記凸部の形成は、複数の微小凹部が形成された前記成形型を押し当てる事によって、複数の突出部が形成された凸部を形成し、
前記加熱前に、前記突出部上の前記鍍金下地層を研磨し、前記貫通孔を形成することを特徴とする付記3に記載の樹脂凸部形成方法。
(付記5)
前記突出部は、先端に向かって細い先細り状であることを特徴とする付記4に記載の樹脂凸部形成方法。
(付記6)
前記保持材が、感光性熱硬化樹脂であり、前記硬化の工程前に前記感光性熱硬化樹脂を露光し硬化させることを特徴とする付記1記載の樹脂凸部形成方法
(付記7)
付記1〜付記6のいずれか1つに記載の樹脂凸部形成方法によって前記凸部が形成された前記基材に対し、前記凸部が形成されていない部分に配線を形成し配線板を製造する配線板製造方法。