(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結用弾性部材(26)および前記駆動側回転体(21)は、双方に設けられた貫通穴を貫通するボルト(28a)および前記ボルト(28a)に締め付けられるナット(28b)によって連結されており、
前記調整用部材は、前記駆動側回転体(21)と前記連結用弾性部材(26)との間に配置されて前記ボルト(28a)を貫通させる貫通穴が形成されたシム(29)で構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の動力伝達装置。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源から出力された回転駆動力を駆動対象装置へ伝達する動力伝達装置が知られている。この種の動力伝達装置には、駆動対象装置が焼き付き等によって固着(ロック)した場合に駆動源側に過大な負荷がかかってしまうことを防止するために、速やかに回転駆動力の伝達を遮断する機能が必要とされる。
【0003】
例えば、特許文献1には、駆動源である車両走行用のエンジンから出力された回転駆動力を駆動対象装置である車両用冷凍サイクルの圧縮機へ伝達する動力伝達装置として、エンジンから圧縮機へ伝達されるトルクが予め定めた所定トルクを超えたときに破断して回転駆動力の伝達を遮断するトルクリミッタを有するものが開示されている。
【0004】
より具体的には、特許文献1の動力伝達装置は、エンジンから出力される回転駆動力によって回転するプーリ、圧縮機の回転軸に連結されたインナーハブ、および弾性部材であるゴムにて形成されてプーリとインナーハブとを連結させる連結用弾性部材としてのダンパを備えており、インナーハブの一部に破断部を設けることによってトルクリミッタを構成している。
【0005】
そして、エンジンから圧縮機へ伝達されるトルクが予め定めた所定トルクを超えたときに破断部を破断させ、インナーハブの一部を圧縮機の回転軸から切り離すことによって、エンジンから出力された回転駆動力が圧縮機へ伝達されることを遮断している。
【0006】
また、ダンパは、破断部が破断していないときには、インナーハブに対して圧縮機の回転軸から離れる方向に荷重をかけており、破断部が破断した後には、インナーハブのうち圧縮機の回転軸から切り離された部位を圧縮機の回転軸から離れる側に変位させる。これにより、破断部が破断した後に、インナーハブのうち圧縮機の回転軸から切り離された部位が、圧縮機の回転軸に接触して異音を生じさせてしまうことを抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この種の動力伝達装置の製造コストを低減させる手段として、ゴムにて形成されたダンパに代えて、板状に形成された金属製の板バネを連結用弾性部材として採用することが検討されている。
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたもので、請求項1に記載の発明では、駆動源から出力される回転駆動力を駆動対象装置(10)に伝達する動力伝達装置であって、
回転駆動力によって回転する駆動側回転体(21)と、駆動対象装置(10)の回転軸(11)とともに回転する従動側回転体(22、24、25)と、回転軸(11)に対して垂直方向に広がる板状に形成されて回転軸(11)の軸方向に弾性変形するとともに、従動側回転体(22…25)と駆動側回転体(21)とを連結する連結用弾性部材(26)とを備え、
従動側回転体(22…25)には、駆動源から駆動対象装置(10)の回転軸(11)へ伝達されるトルクが予め定めた基準トルク以上となったときに破断する破断部(25d)が形成されており、連結用弾性部材(26)は、従動側回転体(22…25)のうち破断部(25d)が破断したときに回転軸(11)から切り離される部位と駆動側回転体(21)とを連結しており、
さらに、連結用弾性部材(26)のうち駆動側回転体(21)に取り付けられる駆動側取付部(26b)と連結用弾性部材(26)のうち駆動側回転体(21)に取り付けられる従動側取付部(26a)との間の回転軸(11)方向の軸方向距離(δ)を、予め定めた基準範囲内となるように調整する調整用部材(29)を備え
、
連結用弾性部材は、板状に形成された板バネを構成するプレート(26)であり、駆動側回転体(21)は、プレート(26)に対向するように配置された端面部(21c)を有し、端面部(21c)とプレート(26)との間に調整用部材(29)が配置されていることによって、端面部(21c)とプレート(26)との間に隙間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
従って、インナーハブに対して圧縮機の回転軸から離れる方向に適切な荷重をかけるように板バネを組み付けるためには、ゴムにて形成されたダンパを組み付ける際よりも高い組付精度が要求される。その結果、ダンパに代えて板バネを採用しても充分な製造コスト低減効果を得られなくなってしまう。
【0011】
上記点に鑑み、本発明では、板状に形成された連結用弾性部材を備える動力伝達装置において、連結用弾性部材の組付作業性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたもので、請求項1に記載の発明では、駆動源から出力される回転駆動力を駆動対象装置(10)に伝達する動力伝達装置であって、
回転駆動力によって回転する駆動側回転体(21)と、駆動対象装置(10)の回転軸(11)とともに回転する従動側回転体(22、24、25)と、回転軸(11)に対して垂直方向に広がる板状に形成されて回転軸(11)の軸方向に弾性変形するとともに、従動側回転体(22…25)と駆動側回転体(21)とを連結する連結用弾性部材(26)とを備え、
従動側回転体(22…25)には、駆動源から駆動対象装置(10)の回転軸(11)へ伝達されるトルクが予め定めた基準トルク以上となったときに破断する破断部(25d)が形成されており、連結用弾性部材(26)は、従動側回転体(22…25)のうち破断部(25d)が破断したときに回転軸(11)から切り離される部位と駆動側回転体(21)とを連結しており、
さらに、連結用弾性部材(26)のうち駆動側回転体(21)に取り付けられる駆動側取付部(26b)と連結用弾性部材(26)のうち駆動側回転体(21)に取り付けられる従動側取付部(26a)との間の回転軸(11)方向の軸方向距離(δ)を、予め定めた基準範囲内となるように調整する調整用部材(29)を備えることを特徴とする。
【0013】
これによれば、調整用部材(29)を備えているので、駆動側取付部(26b)と従動側取付部(26a)との間の軸方向距離(δ)を予め定めた基準範囲内の値に調整することができる。従って、連結用弾性部材(26)が軸方向に弾性変形して従動側回転体(22…25)に作用させる荷重を、容易に適切な値に調整することができる。その結果、連結用弾性部材(26)を組み付ける際の組付作業性を向上させることができる。
【0014】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1〜
図4により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態の動力伝達装置20は、車両走行用のエンジンから出力される回転駆動力を車両用冷凍サイクルの圧縮機10へ伝達するために適用されている。従って、本実施形態では、エンジンが駆動源となり、圧縮機10が駆動対象装置となる。また、本実施形態の車両用冷凍サイクルは、車両用空調装置に適用されて、車室内送風空気を冷却する機能を果たす。
【0017】
さらに、この車両用冷凍サイクルでは、冷媒を圧縮する圧縮機10として斜板式の可変容量型圧縮機を採用している。このような可変容量型圧縮機では、吐出容量を略0%に減少させることで、圧縮機10を実質的に冷媒吐出能力を発揮しない作動停止状態とすることができる。従って、本実施形態では、動力伝達装置20として、エンジンと圧縮機とを常時連結するクラッチレスの構成のものを採用している。
【0018】
動力伝達装置20は、
図1、
図2に示すように、エンジンから出力された回転駆動力によって回転する駆動側回転体を構成するプーリ21、圧縮機10の回転軸11とともに回転するインナーハブ22、およびプーリ21とインナーハブ22とを連結するプレート26を備えている。なお、
図1は、動力伝達装置20の軸方向一部断面図であり、具体的には、
図2のI−I断面図である。
【0019】
プーリ21は、圧縮機10の回転軸11に対して同軸上に配置された円筒状の外側円筒部21a、この外側円筒部21aの内周側に配置されるとともに、回転軸11に対して同軸上に配置された円筒状の内側円筒部21b、並びに、外側円筒部21aおよび内側円筒部21bの圧縮機10と反対側の端部同士を結ぶように広がる端面部21cを有している。従って、プーリ21は、
図1に示すように、径方向断面が略コの字に形成されている。
【0020】
外側円筒部21aの外周側には、エンジンから出力される回転駆動力を伝達するVベルトが掛けられるV溝(具体的には、ポリV溝)が形成されている。内側円筒部21bの内周側には、ボールベアリング23の外周側が固定され、ボールベアリング23の内周側には、圧縮機10の外殻を形成するハウジングから動力伝達装置20側へ突出した円筒状のボス部12が固定されている。これにより、プーリ21は、圧縮機10のハウジングに対して、回転軸11と同軸上に回転自在に固定されている。
【0021】
インナーハブ22は、中央部にその表裏を貫通する円形状の貫通穴が形成された円板状部22aと、回転軸11に対して同軸上に延びる円筒状部22bを有している。この円筒状部22bの内径は、円板状部22aの中央に形成された貫通穴の径と略同等の寸法に形成されている。インナーハブ22の円筒状部22bの軸方向端部のうち、圧縮機10側の端部には、円環状のワッシャ(座)24がスポット溶接あるいはかしめ等の手段によって接合されている。
【0022】
ワッシャ24は、鉄系金属で形成されており、ワッシャ24の内周側には、圧縮機10の回転軸11が挿入されている。一方、ワッシャ24の回転軸11方向の圧縮機10側の端面は、回転軸11に形成された段差部11aに当接している。この段差部11aにより、インナーハブ22およびワッシャ24は、回転軸11に沿って圧縮機10へ近づく方向へ変位することが規制されている。
【0023】
一方、インナーハブ22の円筒状部22bの軸方向端部のうち、圧縮機10側の反対側の端部には、鉄系金属で形成されたリミッタ(動力遮断部材)25がスポット溶接等あるいはかしめ等の手段によって接合されている。
【0024】
リミッタ25は、回転軸11の雄ネジ部11bに螺合される雌ネジ部25aが形成された円筒状部25b、および円筒状部25bが回転軸11の回転方向に締め付けられた際に生じる荷重をワッシャ24とともに受ける受圧部25cを有している。さらに、リミッタ25の円筒状部25bと受圧部25cとを連結する部位には、受圧部25cが受けるトルクが予め定めた基準トルク以上となったときに破断する破断部25dが形成されている。
【0025】
リミッタ25の円筒状部25bは、インナーハブ22の円筒状部22bの内周側に、圧縮機10の回転軸と同軸上に配置されている。この円筒状部25bの外径は、インナーハブ22の円筒状部22bの内径よりも小さく形成されているので、リミッタ25の円筒状部25bの外周面がインナーハブ22の円筒状部22bの内周面に接触してしまうことはない。
【0026】
また、受圧部25cは、その回転中心部に軸方向に貫通する貫通穴が設けられた円板状部材であり、径外周側に広がっている。そして、受圧部25cの圧縮機10側の面の外周側に、インナーハブ22の円筒状部22bの軸方向端部が接合されている。
【0027】
破断部25dは、円筒状部25bの外径よりも径の小さい部位として形成されている。つまり、破断部25dの外径は、円筒状部25bの外径および受圧部25cの外径よりも小さく形成されている。換言すると、破断部25dは、リミッタ25に設けられた薄肉部によって構成されている。
【0028】
プレート26は、圧縮機10の回転軸11に対して垂直方向に広がる略円板状の金属で形成され、圧縮機10の回転軸11の軸方向に弾性変形する弾性部材(板バネ)である。具体的には、本実施形態では、プレート26として、ばね鋼(具体的には、S60CM)にて形成されたものを採用している。また、プレート26の内周側には、インナーハブ22が取り付けられるハブ側取付部26a、およびプーリ21が取り付けられるプーリ側取付部26bが設けられている。
【0029】
具体的には、ハブ側取付部26aは、圧縮機10の回転軸11方向から見たときに、インナーハブ22の円板状部22aと重合する位置に設けられた複数(本実施形態では3つ)の貫通穴によって形成されている。また、圧縮機10の回転軸11方向から見たときに、インナーハブ22のハブ側取付部26aに対応する箇所には、インナーハブ22の円板状部22aの表裏を貫通するインナーハブ側貫通穴が形成されている。
【0030】
そして、インナーハブ22およびプレート26は、インナーハブ22の円板状部22aの圧縮機10側の面とプレート26の圧縮機10と反対側の面が接触するように配置された状態で、プレート26のハブ側取付部26aとして形成された貫通穴およびインナーハブ22の円板状部22aに形成されたインナーハブ側貫通穴を同時に貫通するリベット27によって固定されている。
【0031】
一方、プーリ側取付部26bは、圧縮機10の回転軸11方向から見たときに、プーリ21の端面部21cと重合する位置に設けられた複数(本実施形態では3つ)の貫通穴によって形成されている。また、圧縮機10の回転軸11方向から見たときに、プーリ21のプーリ側取付部26bに対応する箇所には、プーリ21の端面部21cの表裏を貫通するプーリ側貫通穴が形成されている。
【0032】
そして、プーリ21およびプレート26は、プーリ21の端面部21cの圧縮機10と反対側の面とプレート26の圧縮機10側の面が対向するように配置された状態で、プレート26のプーリ側取付部26bとして形成された貫通穴およびプーリ21の端面部21cに形成されたプーリ側貫通穴を同時に貫通するボルト28aとナット28bとを締め付けることによって固定されている。
【0033】
さらに、本実施形態では、プーリ21の端面部21cの圧縮機10と反対側の面とプレート26の圧縮機10側の面との間に、前述のボルト28aを貫通させる貫通穴が形成された円板状のシム29が挟み込まれている。
【0034】
そして、このシム29の厚みによって、リミッタ25の円筒状部25bが圧縮機10の回転軸11に螺合され、さらに、プーリ21とプレート26が固定された際に、プーリ側取付部26bとハブ側取付部26aとの圧縮機10の回転軸11方向の距離δが予め定めた基準範囲内(例えば、0mm<δ≦1.5mm)となるように調整される。
【0035】
換言すると、シム29の厚みによって、プレート26が圧縮機10の回転軸11方向へ弾性変形する変形量が調整される。本実施形態では、このようにプレート26を弾性変形させることによって、プレート26がインナーハブ22に対して圧縮機10の回転軸11から離れる方向の荷重をかけている。
【0036】
より詳細には、シム29は、
図3に示すように、ナット28bの内周側に設けられて圧縮機10と離れる側に突出する突出部に圧入固定されている。そして、プーリ21およびプレート26は、
図4に示すように、ボルト28aが、プレート26のプーリ側取付部26bおよびシム29を貫通した状態で、ナット28bに締め付けられることによって固定されている。
【0037】
上記の如く、プレート26によって、プーリ21とインナーハブ22が連結されると、プーリ21の回転に伴って、インナーハブ22、ワッシャ24、およびリミッタ25が一体となって回転する。つまり、本実施形態では、これらのインナーハブ22、ワッシャ24、およびリミッタ25によって特許請求の範囲に記載された従動側回転体が構成されている。
【0038】
また、プレート26によって連結用弾性部材が構成され、プレート26に形成されたプーリ側取付部26bによって駆動側取付部が構成され、ハブ側取付部26aによって従動側取付部が構成されている。さらに、シム29によって、駆動側取付部と従動側取付部との間の軸方向距離δを予め定めた基準範囲内となるように調整する調整用部材が構成されている。
【0039】
次に、本実施形態の動力伝達装置20を圧縮機10へ取り付ける際の取付方法を説明する。まず、ナット28bの内周側に設けられた突出部にシム29を圧入固定することによって、プーリ21、ナット28bおよびシム29を一体化しておく(駆動側回転体準備工程)。この際、シム29としては、プーリ側取付部26bとハブ側取付部26aとの間の軸方向距離δが基準範囲内となるように選択されたものが一体化される。
【0040】
また、インナーハブ22にワッシャ24およびリミッタ25を固定して形成される従動側回転体22…25にプレート26をリベット27で固定しておく(従動側回転体準備工程)。
【0041】
その後、ナット28bおよびシム29が一体化されたプーリ21およびボールベアリング23を、圧縮機10のボス部12に取り付ける(駆動側回転体取付工程)。さらに、プレート26が一体化された従動側回転体22…25のうちリミッタ25の円筒状部25bの雌ネジ部25aを、圧縮機10の回転軸11の雄ネジ部11bへ締め付けることによって、従動側回転体22…25を圧縮機10へ取り付ける(従動側回転体取付工程)。
【0042】
さらに、プレート26のプーリ側取付部26bとして形成された貫通穴およびプーリ21の端面部21cに形成されたプーリ側貫通穴を同時に貫通するように配置されたボルト28aと前述のナット28bとを締め付けることによって、駆動側回転体であるプーリ21と従動側回転体22…25とを連結する(駆動側従動側連結工程)。これにより、動力伝達装置20が圧縮機10へ取り付けられる。
【0043】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。上記の如く、本実施形態の動力伝達装置20は、クラッチレスの構成となっているので、エンジンが始動すると、エンジンから出力された回転駆動力によって、駆動側回転体を構成するプーリ21、連結用弾性部材を構成するプレート26、従動側回転体を構成するインナーハブ22、ワッシャ24、およびリミッタ25が一体となって回転する。
【0044】
この際、圧縮機10にロックが生じていなければ、従動側回転体22…25に連結された圧縮機10の回転軸11が、従動側回転体22…25とともに回転する。つまり、エンジンから出力された回転駆動力が圧縮機10に伝達されて車両用冷凍サイクルを作動させることができる。
【0045】
一方、圧縮機10にロックが生じて回転軸11が回転できない場合には、リミッタ25が回転することによって、円筒状部25bの雌ネジ部25aが回転軸11の雄ネジ部11bに締め付けられる。そして、この締め付けによって発生する荷重、すなわち締め付けによって生じる軸力を、リミッタ25の受圧部25cおよびワッシャ24で受ける。
【0046】
これにより、受圧部25cと円筒状部25bとを連結する破断部25dに引っ張り応力がかかる。そして、受圧部25cが受ける荷重が予め定めた所定値以上となると、破断部25dが破断して、円筒状部25bが受圧部25cから切り離される。
【0047】
従って、従動側回転体22…25のうち圧縮機10の回転軸11に連結される部位は、円筒状部25bのみとなり、従動側回転体22…25のうちインナーハブ22、ワッシャ24、およびリミッタ25の受圧部25cが圧縮機10の回転軸11から切り離される。その結果、エンジンから圧縮機10への回転駆動力の伝達が遮断される。
【0048】
以上の如く、本実施形態の動力伝達装置によれば、圧縮機10にロックが生じた際に、リミッタ25の破断部25dを破断させるという簡素な構成で、回転駆動力の伝達を遮断することができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、連結用弾性部材であるプレート26が、破断部25dが破断していないときに、インナーハブ22に対して、圧縮機10の回転軸11から離れる方向の荷重をかけている。従って、破断部25dが破断した際に、従動側回転体22…25のうち円筒状部25bを除いた圧縮機10の回転軸11から切り離される部位を、圧縮機10の回転軸11から離れる側に変位させることができる。
【0050】
これにより、破断部25dが破断した後に、従動側回転体22…25のうち圧縮機10の回転軸11から切り離された部位が、圧縮機10の回転軸11に接触して異音を生じさせてしまうことを抑制できる。
【0051】
また、本実施形態の動力伝達装置20では、調整用部材であるシム29を備えているので、プーリ側取付部26bとハブ側取付部26aとの間の軸方向距離δを予め定めた基準範囲内の値に調整することができる。
【0052】
従って、破断部25dが破断していないときにプレート26が軸方向に弾性変形して従動側回転体22…25に作用させる荷重を、容易に適切な値に調整することができる。その結果、プレート26を不必要に弾性変形させてしまうことを抑制できるとともに、プレート26をプーリ21に組み付ける際の組付作業性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の動力伝達装置20では、調整用部材であるシム29をナット28bの内周側に設けられた突出部に圧入固定しているので、プレート26をプーリ21に組み付ける際にシム29が脱落してしまうことを抑制して、より一層、プレート26を組み付ける際の組付作業性を向上させることができる。
【0054】
(第2実施形態)
第1実施形態では、ナット28bの突出部にシム29を圧入固定した例を説明したが、本実施形態では、
図5に示すように、ボルト28aにシム29を圧入固定した例を説明する。具体的には、本実施形態のボルト28aは、プーリ21の端面部21cのうち圧縮機10側の面からプーリ側貫通穴に挿入されており、シム29は、ボルト28aの螺子部に圧入固定されている。
【0055】
そして、プーリ21およびプレート26は、
図6に示すように、プレート26のプーリ側取付部26bを貫通した状態のボルト28aに対してナット28bが締め付けられることによって固定されている。
【0056】
なお、
図5、
図6は、それぞれ第1実施形態の
図3、
図4に対応する図面である。その他の構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のようにシム29を配置しても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第3実施形態)
第1実施形態では、ナット28bにシム29を圧入固定した例を説明したが、本実施形態では、
図7に示すように、プーリ21の端面部21cのうち圧縮機10と反対側の面にザグリ穴21dを形成し、このザグリ穴21dにシム29の外周側を圧入固定している。
【0058】
そして、プーリ21およびプレート26は、
図8に示すように、ボルト28aが、プレート26のプーリ側取付部26bおよびシム29を貫通した状態で、ナット28bに締め付けられることによって固定されている。
【0059】
なお、
図7、
図8は、それぞれ第1実施形態の
図3、
図4に対応する図面である。その他の構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のようにシム29を配置しても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0061】
(1)上述の実施形態では、調整用部材としてシム29を採用したが、調整用部材はシム29に限定されない。つまり、調整用部材は、プーリ側取付部26bとハブ側取付部26aとの間の軸方向距離δを基準範囲内の値に調整可能な部材であれば、例えば、プレート26とプーリ21の端面部21cとの間に挟み込まれる板状部材を採用してもよいし、インナーハブ22の円板状部22aとプレート26との間に挟み込まれる板状部材を採用してもよい。
【0062】
(2)上述の実施形態では、プレート26としてばね鋼をプレス加工することによって形成されたものを採用しているが、プレート26はこれに限定されない。例えば、ステンレス合金(SUS303、SUS304)にて形成されたものを採用してもよいし、一般的なゴム材料(例えば、EPDM)等よりも剛性の高い材料にて形成されたものを採用してもよい。
【0063】
(3)上述の実施形態では、圧入固定によってシム29をプーリ21側に固定した例を説明したが、シム29をプーリ21に固定しなくてもよい。また、シム29をプレート26あるいはインナーハブ22に固定してもよい。さらに、シム29をプーリ21等に固定する際には、圧入固定に限定されることなく、プーリ側取付部26bとハブ側取付部26aとの間の軸方向距離δを基準範囲内の値に調整可能であれば、接着、溶接、はんだ付け等の接合手段で固定してもよい。
【0064】
(4)上述の実施形態では、破断部25dをリミッタ25に設けた例を説明したが、破断部25dはこれに限定されない。例えば、インナーハブ22を径方向に2つの部材(例えば、インナーハブとアウターハブ)に分割し、この2つの部材を連結させるブリッジ部によって破断部を構成してもよい。
【0065】
(5)上述の各実施形態では、動力伝達装置20をエンジンから圧縮機10への回転駆動力の断続に適用した例を説明したが、本発明の動力伝達装置20の適用はこれに限定されない。エンジンあるいは電動モータ等の駆動源と回転駆動力によって作動する発電機との動力伝達の断続等に幅広く適用可能である。