特許第6040847号(P6040847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040847
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】車両用消費電力制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20161128BHJP
   B60R 19/52 20060101ALI20161128BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20161128BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B60K11/04 C
   B60R19/52 MZHV
   B60H1/22 671
   B60L15/00 H
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-81277(P2013-81277)
(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公開番号】特開2014-201278(P2014-201278A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 隆哉
(72)【発明者】
【氏名】稲田 英二
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−031842(JP,A)
【文献】 特開2011−143913(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0036991(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
B60H 1/22
B60L 15/00
B60R 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを走行駆動源とし、
前記車両の前端部のグリル開口部に配置された熱交換器を含む空気調和装置と、
前記グリル開口部を開閉し、前記グリル開口部を開いた状態で前記熱交換器を通過する空気を導入し、前記グリル開口部を閉じた状態で車両の空気抵抗を減少させるグリル装置と、
前記モータを冷却するモータ冷却装置と、を備えた車両において、
当該車両にて消費される電力を制御する車両用消費電力制御装置であって、
前記グリル開口部の閉塞に起因する前記車両の空気抵抗の変動によるモータ消費電力の変化量と、前記グリル開口部の閉塞に起因する前記モータのモータ効率の変動によるモータ消費電力の変化量と、前記グリル開口部の閉塞に起因する前記第1熱交換器の冷却能力の変動による前記空気調和装置の消費電力の変化量と、の総和に基づいて、前記グリル装置による前記グリル開口部の開閉を制御する制御手段を備える車両用消費電力制御装置。
【請求項2】
前記空気調和装置は、ヒートポンプサイクルによる暖房機能と、前記モータが配置されたモータルームの温度を検出するモータルーム内温度センサとを有する請求項1に記載の車両用消費電力制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、少なくとも、前記総和が正の値の場合に前記グリル開口部を閉塞し、前記総和が負の値の場合に前記グリル開口部を開放する請求項1又は2に記載の車両用消費電力制御装置。
【請求項4】
前記車両の走行速度を検出する車速センサを有し、
前記制御手段は、前記グリル開口部の閉塞に起因する、前記車両の空気抵抗の変動によるモータ消費電力の変化量を、前記車速センサにより検出した走行速度に基づいて演算する請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用消費電力制御装置。
【請求項5】
前記車両の外気温度を検出する外気温センサを有し、
前記制御手段は、前記外気温度センサにより検出した外気温度に基づいて空気密度を演算し、当該空気密度に基づいて前記車両の空気抵抗を演算する請求項4に記載の車両用消費電力制御装置。
【請求項6】
前記モータの温度を直接または間接的に検出するモータ温度センサを有し、
前記制御手段は、前記グリル開口部の閉塞に起因する、前記モータのモータ効率の変動によるモータ消費電力の変化量を、前記モータ温度センサにより検出した前記モータの温度に基づいて演算する請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用消費電力制御装置。
【請求項7】
前記車両は、前記モータの出力軸に接続された減速機と、前記減速機に潤滑オイルを供給する電動アクチュエータと、前記潤滑オイルの温度を直接または間接的に検出するオイル温度センサとを備え、
前記制御手段は、
前記オイル温度センサにより検出されたオイル温度に基づいて前記減速機の消費電力の変化量を演算し、
前記グリル開口部の閉塞に起因する前記車両の空気抵抗の変動によるモータ消費電力の変化量と、前記グリル開口部の閉塞に起因する前記モータのモータ効率の変動によるモータ消費電力の変化量と、前記グリル開口部の閉塞に起因する前記第1熱交換器の冷却能力の変動による前記空気調和装置の消費電力の変化量に、前記減速機の消費電力の変化量を加えた総和に基づいて、前記グリル装置による前記グリル開口部の開閉を制御する請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用消費電力制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記グリル装置に対し、前記グリル開口部の開口率を0〜100%に設定する制御信号を出力する請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用消費電力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル装置と空気調和装置を備えたモータを走行動力源とする車両の消費電力を制御する車両用消費電力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両先端部に形成されたグリル開口部を閉じた状態での熱交換器へ導入される空気量が減少することによる消費動力の増加量と、グリル開口部を閉じた状態での空気抵抗の低減による車速に応じた消費動力の減少量とに基づいて、グリル開口部を閉じたときの消費動力の増加が許容範囲内となる動作車速を求め、この動作車速と実際の車速とに基づいてグリル開口部の開閉を制御する車両用グリル装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−31842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、熱交換器へ導入される空気量の減少による消費動力の増加量と、空気抵抗の低減による消費動力の減少量のみを考慮するだけであるため、モータを走行動力源とする電気自動車やハイブリッド車両に対しては、最適な消費電力となるグリル開閉状態ではないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、グリル装置と空気調和装置を備えたモータを走行動力源とする車両に対し、最適な消費電力に制御できる車両用消費電力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、グリル開口部の閉塞に起因する、車両の空気抵抗の変動によるモータ消費電力の変化量と、モータ効率の変動によるモータ消費電力の変化量と、冷媒冷却能力の変動によるエアコンの消費電力の変化量とを検出し、これらの総和が正の値の場合にグリル開口部を閉塞することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
グリル開口部を閉塞すると車両の空気抵抗が小さくなりモータ消費電力は減少する。またグリル開口部を閉塞してモータ温度が低下するとモータ効率が向上してモータ消費電力は減少する。一方において、グリル開口部を閉塞すると冷媒の冷却能力が小さくなり、エアコンのコンプレッサの消費電力が増加するが、本発明によれば、これらの総和が正の値になる場合にグリル開口部を閉塞するので、トータルの電力消費量を最適な値にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る車両用消費電力制御装置を適用した電気自動車の要部を示すブロック図である。
図2図1の電気自動車の制御装置の一例を示すブロック図である。
図3図2の制御装置の主たる動作を示すフローチャートである。
図4図1のヒートポンプにおける、室外熱交換器の通過空気の温度とコンプレッサの消費電力との関係を示すグラフである。
図5】グリル開口部を全閉した状態における、車速とモータの消費電力減少量との関係を示すグラフである。
図6図1のモータユニット4の温度と磁束との関係を示すグラフである。
図7図3のステップS9における制御マップの一例を示す図である。
図8図3のステップS9における制御マップの他例を示す図である。
図9】外気温度と空気密度との関係を示すグラフである。
図10】グリル開口部を全閉した状態及び半閉した状態における、車速とモータの消費電力減少量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の車両用消費電力制御装置を適用した電気自動車のブロック図であり、本例の電気自動車は、車室内を空調する空気調和装置1と、走行駆動源であるモータユニット4を冷却するモータ冷却装置2と、車体前端部に形成されたグリル開口部302を開閉するグリルシャッタ301を有するグリル装置3と、を備える。
【0010】
図1に示す空気調和装置1は、コンプレッサ101、室内熱交換器102、第1膨張弁103、室外熱交換器(凝縮器)104、冷房機能と暖房機能を切り替えるための切換弁105、冷房として使用する場合に用いる第2膨張弁106、エバポレータ(蒸発器)107、アキュムレータ108が、この順序で冷媒配管109により接続されてなるヒートポンプサイクルを備える。コンプレッサ101は図示しないモータにより駆動するため、本例の消費電力制御装置の制御対象となる。
【0011】
車室内には空調ユニットケース110が、たとえばダッシュパネルの左右方向に沿って設けられ、空調ユニットケース110内に、ファンモータ111Mにより回転する送風機111と、エバポレータ107と、室内熱交換器102が設けられている。送風機111の空気の吸込み口には、室外の空気と室内の空気とを切り換えるインテークドア112が回動自在に設けられ、内気導入と外気導入のモードが切り換えられる。
【0012】
空調ユニットケース110の送風機111の下流にはエバポレータ107が設けられ、送風機111により導入された外気又は内気は全てエバポレータ107を通過する。ただし、後述するように本例の空気調和装置1を暖房装置として使用する場合にはエバポレータ107には冷媒が循環しないので、吸引された空気は熱交換されることなくそのまま通過することになる。
【0013】
空調ユニットケース110のエバポレータ107の下流には室内熱交換器102が設けられ、その前面には温調用ドア113が回動自在に設けられている。また、室内熱交換器102の側部には、流下した空気が当該室内熱交換器102を迂回する迂回路114が設けられ、温調用ドア113の開度を調節することで、室内熱交換器102を通過する空気量と迂回路114を通過する空気量との比率が調節され、これにより車室内へ供給する調和空気の温度が調節される。
【0014】
一方、コンプレッサ101、第1膨張弁103、室外熱交換器104、切換弁105、第2膨張弁106、アキュムレータ108及び冷媒配管109の主要部は、車両前方のモータルーム内に配置されている。このうち、室外熱交換器104は、後述するグリル装置3のグリルシャッタ301の後部に配置され、さらにその後部には後述するモータ冷却装置2のラジエータ203が配置されている。
【0015】
本例の空気調和装置1を暖房装置として使用する場合は、切換弁105を開き、室外熱交換器104からの冷媒を、エバポレータ107を迂回させてアキュムレータ108に導く。アキュムレータ108は、余剰冷媒の貯留と気液分離を行いガス冷媒のみをコンプレッサ101へ戻すので、コンプレッサ101の回転駆動により圧縮されて高温高圧となったガス冷媒は、室内熱交換器102へ送られる。
【0016】
室内熱交換器102では、この高温高圧のガス冷媒と、送風機111によって室内熱交換器102に導入された空気との間で熱交換が行われ、車室内を空調する空調風が生成される。これと同時にガス冷媒が冷却されて液化する。この液化した冷媒は、第1膨張弁103によって急激に減圧されて低圧霧状冷媒となって室外熱交換器104へ送られ、室外熱交換器104で走行風等と熱交換することで気化されたのち、アキュムレータ108を介してガス冷媒のみが再びコンプレッサ108に戻される。図1に、暖房装置として使用する場合の冷媒の流れを黒矢印で示す。
【0017】
また、本例の空気調和装置1を冷房装置として使用する場合は、切換弁105を閉じ、室外熱交換器104からの冷媒をエバポレータ107に導く。そして、コンプレッサ101の回転駆動により圧縮されて高温高圧となったガス冷媒は、室内熱交換器102、第1膨張弁103を通過して室外熱交換器104へ送られる。ただし、温調用ドア113を閉じることにより送風機111による吸入空気を迂回路114へ導くなどして、低温の目標温度となるよう調節する。
【0018】
室外熱交換器104では、第1膨張弁103を通過した低圧霧状冷媒と、室外熱交換器104に導入される空気(走行風又はファン204による吸引空気)との間で熱交換が行われることにより、霧状冷媒が冷却されて液化される。この液化した冷媒は、第2膨張弁112によって急激に減圧されて低温低圧霧状冷媒となってエバポレータ107へ送られ、このエバポレータ107を通過する低温低圧霧状冷媒と、送風機111によってエバポレータ107に導入された空気との間で熱交換が行われ、エバポレータ107を通過する空気が冷却及び除湿される。なお、エバポレータ107を通過した低温低圧霧状冷媒は、一部または全部が気化されてガス冷媒となり、アキュムレータ108に戻される。図1に、冷房装置として使用する場合の冷媒の流れを白抜き矢印で示す。
【0019】
一方、本例のモータ冷却装置2は、車両の走行駆動源として使用されるモータ及び当該モータに電力を供給するインバータ(これらをモータユニット4と称する)を冷却するものであり、モータユニット4の発熱部に接触するウォータジャケット201、当該ウォータジャケット201に冷却水を循環させるポンプ202、冷却水を冷却するラジエータ203が冷却水配管205により接続された冷却サイクルを備える。また、当該冷却サイクルは、ラジエータ203の熱交換を促進させるファン204をさらに備える。ポンプ202及びファン204は図示しないモータによりそれぞれ駆動する。
【0020】
本例のモータ冷却装置2では、ラジエータ203により冷却された冷却水をモータ及びインバータを収容したモータユニット4の発熱部に接触するウォータジャケット201に循環させることで、モータ及びインバータを含むモータユニット4を冷却するが、モータユニット4で発生した熱と熱交換することにより温められた冷却水は、ポンプ202によってラジエータ203に送り、走行風及び/又はファン204によってラジエータ203を通過する空気との間で熱交換を行うことで冷却水を冷却し、冷却された冷却水を再びモータユニット4のウォータジャケット201に戻す。
【0021】
車両用グリル装置3は、車体前端のグリル開口部302に設けられたグリルシャッタ301を有し、車体の左右方向に延在する平板状のフィンが車体の上下方向に配置され、モータアクチュエータなどで構成されるグリルシャッタ駆動部303(図2参照)を駆動することにより、図1の上図に示す全開位置と、下図に示す全閉位置との間の所定開度に駆動する。
【0022】
グリルシャッタ301を開いた状態では、走行風又はファン204の駆動による吸引空気によって、グリル開口部302から車体後方に空気が流れ、室外熱交換器104及びラジエータ203を通過する。これにより、空気調和装置1(ヒートポンプサイクル)の冷媒及びモータ冷却装置2(冷却サイクル)の冷却水が冷却されるが、グリルシャッタ301を閉じるとこの冷却作用が減少する。その代わりに、グリルシャッタ301を閉じた分だけ車両走行時の空気抵抗が小さくなり、モータユニット4の電費(電力消費率)が向上する。
【0023】
図2は、本例の電気自動車の制御装置の要部を示すブロック図である。本例の電気自動車は、車両の走行状態を制御する車両コントローラ5と、空気調和装置1による室内の空調状態を制御するエアコンコントローラ115とを備え、これら車両コントローラ5とエアコンコントローラ115は相互に通信を行い、一方で計算および読み込んだ値はもう一方にも通信される。
【0024】
車両コントローラ5は、電気自動車の車速を検出する車速センサ501と、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ502を備え、実際の車速及びアクセル開度に応じた目標負荷が入力される。また、アクセル開度に応じた目標負荷に対するモータユニット4の予測動力を演算する予測動力演算部503と、モータユニット4の実際の動力を演算する動力演算部504と、これら予測動力演算部503と動力演算部504の演算結果に基づいて、モータユニット4とグリル装置3を制御する動作制御部505と、を備える。動作制御部505の演算結果は、モータユニット4のモータコントローラ506と、グリル装置3のグリルシャッタ駆動部303に出力される。
【0025】
一方、エアコンコントローラ115は、車両の外部(室外及びモータルーム外)の温度を検出する外気温センサ116と、モータルーム内の温度を検出するモータルーム内温度センサ117と、室内のインストルメントパネルなどに設けられた操作スイッチ118と、を備え、外気温度、モータルーム内の温度および目標室内温度などの動作指令が入力される。エアコンコントローラ115は、これらの入力信号にしたがって所定の演算を実行し、その演算結果をコンプレッサ101、ファンモータ111M、第1膨張弁103、第2膨張弁106及びファン204の駆動部205へ出力する。
【0026】
次に、図3のフローチャートを参照して、本例の制御動作を説明する。
ステップS1では、車両が走行可能状態であり、グリルシャッタ301が閉じているものとする。
【0027】
ステップS2では、外気温センサ116により外気温Toを検出し、エアコンコントローラ115へ出力する。ステップS3では、モータルーム内温度センサ117によりモータルーム内温度Tmrを検出し、エアコンコントローラ115へ出力する。ステップS4では、車速センサ501により車速Vを検出するとともに、アクセル開度センサ502によりアクセル開度を検出し、車両コントローラ5へ出力する。
【0028】
ステップS5では、予測動力演算部503が、車両コントローラ501に読み込まれた車速Vおよびアクセル開度から要求モータトルクTmを演算し、この要求モータトルクTmの指令信号をモータコントローラ506に出力する。また、モータコントローラ506にて検出された実際のモータ回転数Nmを車両コントローラ5に出力する。
【0029】
ステップS6では、エアコンコントローラ115は、空気調和装置1の操作スイッチ118の入力操作によって設定温度などの運転条件が設定されて空調運転の開始が指示されると、室温、外気温Toなどの環境条件を検出し、検出した環境条件と運転条件とに基づいて空調運転を行う。エアコンコントローラ115は、車室内を設定温度に維持するための空調風の目標吹出し温度を演算し、演算した目標吹出し温度及び運転条件の設定等に基づいて車室内を空調する。
【0030】
空気調和装置1が暖房装置として運転する場合に、室外熱交換器104を通過する空気温度と、コンプレッサ101を駆動するコンプレッサモータの消費電力(エアコン消費電力)との間に図4に示す関係がある。すなわち、空気温度が高いほどコンプレッサ101を駆動するコンプレッサモータの消費電力が小さくなり、空気温度が低いほどコンプレッサの消費電力が大きくなる。したがって、エアコンコントローラ115に読み込まれた外気温Toに対応するエアコン消費電力Waoと、同じくエアコンコントローラ115に読み込まれたモータルーム内温度Tmrに対応するエアコン消費電力Wamrを図4に示す制御マップを用いて算出する。そして、これらの差、すなわちグリルシャッタ301を閉じたことによるエアコン消費電力の増加量ΔWa=Wamr−Waoを算出する。外気温度がモータルーム内温度よりも高い場合には、ΔWaが正の値、すなわち消費電力が増加し、外気温度がモータルーム内温度よりも低い場合には、ΔWaが負の値、すなわち消費電力が減少することになる。
【0031】
ステップS7では、グリルシャッタ301を閉じることによる、モータユニット4の消費電力の減少電力ΔWgを算出する。ここで、車両の空気抵抗力Faは車速Vによって変化し、空気密度ρ、空気抵抗係数Cd、車両前面の投影面積Aとした場合に、下記式(1)によって表される。
[数1]
空気抵抗力Fa=(1/2)・ρ・Cd・A・V…(1)
【0032】
グリルシャッタ301を閉じることにより、空気抵抗係数CdがCd’(Cd’<Cd)となり、車速とグリルシャッタ301を閉じることによるモータユニット4の減少電力との関係は図5のようになる。すなわち、グリルシャッタ301を閉じるほど車両の空気抵抗が小さくなり、モータユニット4の消費電力が小さくなるが、車速Vが大きくなればなるほどモータユニット4の消費電力の減少量が大きくなる。したがって、図5を参照し、車速Vで走行している車両において、上記のようにグリルシャッタ301を閉じることによる消費電力の減少量ΔWgを算出する。なお、上記式(1)の空気密度ρは、図9に示されるように外気温によって変化するので、外気温センサ116により検出した外気温度を図9に代入して空気密度を求め、この外気温度による変化量を加味して計算してもよい。
【0033】
ステップS8では、モータ効率の変化による損失仕事量ΔWmを算出する。モータに使用されている磁石には図6に示されるような温度特性がある。すなわち、モータユニット4(本例の場合はモータルーム内温度に相関する)が低いほど磁束Ψmが大きくなる。また、モータトルクTmと磁束Ψmには、極対数Pn、電機子電流のd軸及びq軸成分id,iq、d軸及びq軸のインダクタンスLd,Lqとした場合に、次の式(2)の関係がある。
[数2]
Tm=Pn・Ψm・iq+Pn(Ld−Lq)id・iq…(2)
【0034】
上記式(2)において、極対数Pn,インダクタンスLd、Lqはモータにより定数となるから、式(2)と図6から、モータユニット4の温度が低いほど磁束Ψmが大きくなり、磁束Ψmが大きくなれば、同じモータトルクTmが要求された場合に、電流id,iqを小さくすることができる。そして、モータ消費電力Wmは、モータトルクTm、モータ回転数Nmとした場合に、下記式(3)の関係があるから、同じトルク、同じ回転数が要求された場合に、モータユニット4の温度が低いほどモータ消費電力Wmを下げることができることになる。
[数3]
Wm=Tm・Nm・(2π/60)…(3)
【0035】
このため、外気温Toとモータルーム内温度Tmrに温度差が生じた場合には、ラジエータ203における熱交換量の変化によるモータ消費電力が変化するので、このモータ効率変化による損失仕事量ΔWmを算出する。なお、モータユニット4の温度はモータルーム内温度センサ117により検出されるが、モータユニット4内に温度センサを設け、この温度センサから読み込んでもよい。
【0036】
ステップS9では、ステップS6,S7,S8にて算出されたエアコン消費電力の増加量ΔWa、グリルシャッタ301によるモータユニット4の消費電力の減少量ΔWg、モータ効率変化による損失仕事量ΔWmの関係において、以下の式(4)で判定を行う。
[数4]
ΔWg+ΔWm−ΔWa>0…(4)
【0037】
式(4)の左辺が0であれば、2つの減少量ΔWg,ΔWmの和が1つの増加量ΔWaと等しくなるので、車両全体として消費電力を下げることができる。基本的には0でよいが、状況に応じて変えることもできる。ステップS9において、ΔWg+ΔWm−ΔWa>0の場合はステップS10へ進み、ΔWg+ΔWm−ΔWa≦0の場合はステップS11へ進む。
【0038】
図7は、横軸をモータ回転数Nm、縦軸をモータトルクTmとして、外気温とモータルーム内温度に温度差が生じ、モータルーム内温度が外気温よりある温度を下回った場合(この場合、To=5℃、Tmr=−5℃)に、To,Tmr,Tm,Nmからモータ効率変化による損失仕事量ΔWmを算出し、車速によってグリルシャッタ301による空気抵抗減少による消費電力の減少量ΔWgを加算した全体の減少量を濃淡表示したグラフであり、グラフの右側及び上側ほどΔWm+ΔWgの値が大きくなる。一方、外気温度Toとモータルーム内温度Tmrとの差によるエアコン消費電力の増加量ΔWaは、同図のA線にて示すことができるので、両者を比較してグリルシャッタ301の開閉を判定する。すなわち、エアコン消費電力の増加量ΔWaを示すA線より右上側の領域ではΔWg+ΔWm>ΔWaとなるため、グリルシャッタ301を閉じる方が全体の電力消費量が減少する一方で、A線より左下側の領域ではΔWg+ΔWm<ΔWaとなるため、グリルシャッタ301を開く方が全体の電力消費量が減少することになる。
【0039】
ステップS10では、ステップS9によってΔWg+ΔWm−ΔWa>0となったので、グリルシャッタ301を閉じるように車両コントローラ5の動作制御部505からグリルシャッタ駆動部303へ指令信号を出力する。これに対して、ステップS11では、ステップS9によってΔWg+ΔWm−ΔWa≦0となったので、グリルシャッタ301を開くように車両コントローラ5の動作制御部505からグリルシャッタ駆動部303へ指令信号を出力する。
【0040】
本発明の電気自動車において、走行駆動源であるモータと駆動輪との間に減速機(動力伝達装置)を有する場合に、減速機の消費電力をも考慮してもよい。減速機には潤滑オイルが循環し、このオイルの循環アクチュエータに電力が消費されるが、潤滑オイルは温度の低下により粘度が上昇するので、温度が低下すると循環アクチュエータの消費電力が増加する。
【0041】
図8は、減速機内の温度が低下することによって、減速機に供給されるオイルの粘度が上昇し、減速機の消費電力の増加量ΔWfgを図7のΔWaに加算したものである。B線は、ΔWa+ΔWfgとなり、図7に示すA線(ΔWaのみ)よりも消費電力の増加量が増加するので、グリルシャッタ301を開閉制御する閾値が右上にシフトした場合である。そして、図3のステップS9において、この線Bと消費電力の減少量の和ΔWm+ΔWgを比較して、すなわち、ΔWg+ΔWm−ΔWa−ΔWfg>0の式によりグリルシャッタ301の開閉を判定してもよい。
【0042】
上述した実施形態では、グリルシャッタ301を全閉状態にした場合の消費電力の増減量を判定したが、本発明では必ずしもグリルシャッタ301によりグリル開口部302を全閉にしなくてもよい。すなわち、図10に示すように、グリルシャッタ301がわずかに開いている状態でも空気抵抗は小さくなり、これによりモータユニット4の消費電力は減少する。さらに、モータルーム内に外気が導入されることによりモータルーム内温度Tmrを外気温Toに近づけることができる。そして、たとえば全閉時のモータ消費電力の減少量ΔWgに、開口率Xに対する空気抵抗減少代k(X)(ただし0<x<1)を乗算することで、グリル開口部302による消費電力の減少量ΔWg’を下記式(5)により算出することができる。
[数5]
ΔWg’=ΔWg×k(x)…(5)
【0043】
(1)以上のとおり、本例の車両用消費電力制御装置によれば、グリル開口部302の閉塞に起因する車両の空気抵抗Faの変動によるモータ消費電力の変化量ΔWgと、グリル開口部302の閉塞に起因するモータのモータ効率の変動によるモータ消費電力の変化量ΔWmと、グリル開口部302の閉塞に起因する室外熱交換器104の冷却能力の変動による空気調和装置1の消費電力の変化量ΔWaと、の総和ΔWg+ΔWm−ΔWaを求め、この値が正の値になる場合にはグリル開口部302を閉塞し、0又は負の値になる場合にはグリル開口部302を開放する。したがって、モータユニット4の温度変化にともなうモータ効率の変動をも考慮した最適な消費電力に設定することができ、バッテリが延命し航続距離を延ばすことができる。
【0044】
(2)また本例の車両用消費電力制御装置によれば、外気温度センサによって外気温度を検出し、当該温度に応じた空気密度から車両の空気抵抗を求めるので、グリル開口部302の閉塞に起因する車両の空気抵抗の変動によるモータ消費電力の変化量ΔWgをより正確に求めることができる。
【0045】
(3)また本例の車両用消費電力制御装置によれば、車両の空気抵抗Faの変動によるモータ消費電力の変化量ΔWgと、モータのモータ効率の変動によるモータ消費電力の変化量ΔWmと、室外熱交換器104の冷却能力の変動による空気調和装置1の消費電力の変化量ΔWaに、減速機の消費電力の変化量ΔWfgを加えた総和ΔWg+ΔWm−ΔWa−ΔWfgを演算し、この値が正の値になる場合にはグリル開口部302を閉塞し、0又は負の値になる場合にはグリル開口部302を開放する。したがって、モータユニット4の温度変化にともなうモータ効率の変動に減速機の潤滑オイルの粘度の変動を加えた、より最適な消費電力に設定することができ、バッテリが延命し航続距離を延ばすことができる。
【0046】
(4)また本例の車両用消費電力制御装置によれば、グリル装置に対して全閉又は全開以外にも開口率が0〜100%となる制御信号を出力するので、最適な消費電力となるように、よりきめ細かい制御を実行することができる。
【0047】
上記室外熱交換器104は本発明に係る熱交換器に相当し、上記車両コントローラ5は本発明に係る制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0048】
1…空気調和装置
101…コンプレッサ
102…室内熱交換器
103…第1膨張弁
104…室外熱交換器
105…切換弁
106…第2膨張弁
107…エバポレータ
108…アキュムレータ
109…冷媒配管
110…空調ユニットケース
111…送風機
111M…ファンモータ
112…インテークドア
113…温調用ドア
114…迂回路
115…エアコンコントローラ
116…外気温センサ
117…モータルーム内温度センサ
118…操作スイッチ
2…モータ冷却装置
201…ウォータジャケット
202…ポンプ
203…ラジエータ
204…ファン
205…ファン駆動部
3…グリル装置
301…グリルシャッタ
302…グリル開口部
303…グリルシャッタ駆動部
4…モータユニット
5…車両コントローラ
501…車速センサ
502…アクセル開度センサ
503…予測動力演算部
504…動力演算部
505…動作制御部
506…モータコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図9
図10
図7
図8