(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040849
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/44 20060101AFI20161128BHJP
B60N 2/02 20060101ALI20161128BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
B60N2/44
B60N2/02
A47C7/46
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-86608(P2013-86608)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-210455(P2014-210455A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 孝明
(72)【発明者】
【氏名】遠山 正之
【審査官】
永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−061156(JP,U)
【文献】
実開昭57−050254(JP,U)
【文献】
実開平04−027861(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
A47C 7/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の着座時に着座者を支持する幅方向で見て中央部位置の天板部位と、該天板部位の両側において着座者の側部を支持可能に着座者の側部位置方向に突出して配設されるサイドサポート部位とを備える乗物用シートであって、
前記サイドサポート部位には、該両側のサポート部位間の幅間隔を広狭調整可能とするサイドサポート位置調整機構が備えられており、
前記天板部位には、着座者の着座時における着座荷重方向の支持位置を可変可能とする支持位置調整機構が備えられており、
前記サイドサポート位置調整機構には当該機構の作動部材としてサポートパネルを有し、
前記支持位置調整機構には当該機構の作動部材として可撓性の構成体部位を有し、
前記サポートパネルと前記可撓性の構成体部位の作動基端は共に同じ回転支持軸に取付けられており、
前記回転支持軸の回動により前記サイドサポート位置調整機構と支持位置調整機構とは連動して作動する構成とされていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
前記支持位置調整機構の作動部材として可撓性の構成体部位は面状体部位であり、前記天板部位に備えられる支持位置調整機構は、着座者を支持する面状体部位のバネ力を変更する機構であることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の乗物用シートであって、
前記サイドサポート位置調整機構と支持位置調整機構との連動は、前記サイドサポート部位間の幅間隔を広くするとき、前記支持位置調整機構における面状体部位のバネ力を弱める方向となっていることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。詳しくは、シートクッションやシートバックの天板部位の両側にサイドサポート部位を備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シート等乗物用シートは、一般に着座者の座部となるシートクッションと、着座者の背部を支持するシートバックとから成っている。そして、シートバックやシートクッションの幅方向の中央位置は着座者の着座荷重を支持する天板部位となっており、その両側位置には車両の旋回時における保持(ホールド性向上)のために着座者の側部位置方向にサイドサポート部位が突出形成されている。
ところで着座者の体格には相違がある。このため着座者の体格に合わせて、天板部位の両側に配設するサイドサポート部位の幅方向の幅間隔を調整可能とするサイドサポート調整機構が備えられている。
また、天板部位には、着座者の体格に応じて着座者の着座荷重方向の支持位置を調整可能とする支持位置調整機構が備えられている。
このサイドサポート調整機構及び支持位置調整機構により着座者の体格に応じたシートへの着座姿勢とすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−165735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述したサイドサポート調整機構及び支持位置調整機構は、着座者の体格に応じて、各機構ごとに別個に調整するものであり、その調整作業が煩わしいという問題があった。
【0005】
而して、本発明は、上記問題に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、シートに備えるサイドサポート調整機構と支持位置調整機構とを連動作動させることにより調整作業の容易化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる乗物用シートは次の手段をとる。
本発明に係る乗物用シートの基本となる発明の前提構成は、着座者の着座時に着座者を支持する幅方向で見て中央部位置の天板部位と、該天板部位の両側において着座者の側部を支持可能に着座者の側部位置方向に突出して配設されるサイドサポート部位とを備える構成である。
かかる構成において、本発明は、前記サイドサポート部位には、該両側のサポート部位間の幅間隔を広狭調整可能とするサイドサポート位置調整機構が備えられており、前記天板部位には、着座者の着座時における着座荷重方向の支持位置を可変可能とする支持位置調整機構が備えられており、前記サイドサポート位置調整機構と支持位置調整機構とは連動して作動する構成とされていることを特徴とする。
【0007】
上記した本発明によれば、サイドサポート位置調整機構と支持位置調整機構とは連動して作動する構成とされている。これにより両機構は着座者の体格に応じて連動させて同時に調整することができて、その調整作業が容易となる。
【0008】
なお、上記本発明は、次のような形態をとるのが好ましい。
すなわち、前記天板部位に備えられる支持位置調整機構は、着座者を支持する面状体部位のバネ力を変更する機構であるのが好ましい。
かかる場合には、ランバーサポート位置調整機構を比較的簡易な構成とすることが可能となる。
【0009】
また、前記サイドサポート位置調整機構と支持位置調整機構との連動は、前記サイドサポート部位間の幅間隔を広くするとき、前記支持位置調整機構における面状体部位のバネ力を弱める方向となっているのが好ましい。
一般的にサイドサポート部位間の幅間隔を広くするのは、着座者の体格が大きい場合である。着座者の体格が大きい場合には支持位置調整機構による着座者の背部の支持位置は相対的に後方位置となるのが望ましい。このため支持位置調整機構における面状体部位のバネ力を弱めることにより支持位置を相対的に後方位置とすることができて、両機構の連動調整を着座者の体格に応じた好ましい調整とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述した手段とすることにより、シートに備えるサイドサポート調整機構と支持位置調整機構とを連動作動させることにより、着座者の体格に応じた調整作業の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の自動車用シートを示す斜視図である。
【
図2】本実施形態のシートバックの内部に備えるサイドサポート調整機構と支持位置調整機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。この実施形態では、乗物用シートの代表例として自動車用シートの場合を例にして説明する。自動車用シートにあっては、サイドサポート部位が備えられるシートは、運転席シート、助手席シート等、いわゆるセパレートタイプのシートに設定されることが多い。そして、本実施形態では、シートバックにサイドサポート部位が形成された場合を例にして説明する。なお、以後の説明における方向の表示は、着座者がシートに着座した場合における着座者から見た場合の方向を示している。また、符号の後尾に付するR又はLは、左右両側に存在する部品を区別して指称する場合に用いているものであり、Rは右側位置の部品を指し、Lは左側位置の部品を指している。
【0013】
図1は本実施形態の自動車用シートの全体構成を示す。自動車用シート(以下、単にシートと称することもある)10は、基本構成として、着座者の座部となるシートクッション12と、背もたれとなるシートバック14と、頭部を支持するヘッドレスト16とから構成されている。シートバック14はシートクッション12の後部位置にリクライニング機構(不図示)により連結されて配置されており、リクライニング機構により、前後方向にリクライニング傾動可能とされている。ヘッドレスト16はシートバック14の上部位置に配置されている。
シートバック14の幅方向の略中央部位置は略平らな面とされた天板部位18として形成されており、着座者の背部を支持するようになっている。天板部位の左右両側位置にはサイドサポート部位20が前方に向けて突出形成されており、着座者の側部を支持可能とされている。したがって、サイドサポート部位20は天板部位18の両側位置から着座者の側部位置方向に向けて突出形成されるが、着座を容易とするために両者の幅間隔が前方にむけて多少広がる形態として形成されている。
【0014】
図2はシートバック14の内部構造を示す。シートバック14の内部にはシートバック14の骨格を形成する部材としてのバックフレーム22が配設されている。バックフレーム22は、上部位置に門型に配置されるパイプ形状のアッパフレーム24と、アッパフレーム24の両側下部に配される板形状のサイドフレーム26と、左右のサイドフレーム26R、26Lの下部位置間を連結する棒形状のロアパイプ28とから成っている。
左右両側のサイドフレーム26の上下位置にはそれぞれブラケット30,32が固定されて取り付けられており、このブラケット30,32に回転支持軸34が回動可能に支持されて配設されている。回転支持軸34はサイドフレーム26の内側において上下方向に配されている。回転支持軸34の上端部にはモータ36が取り付けられており、モータ36により回転支持軸34は回転させられるようになっている。モータ36は左右両側に配置されるが、右側と左側のモータ36R,36Lは逆回転に制御されるようになっている。すなわち、右側配置のモータ36Rが時計廻り回転の時には、左側配置のモータ36Lは反時計廻り回転となるように制御される。
【0015】
回転支持軸34の軸部には、サポートパネル38と面状体部位46が取付けられている。その取付け構成の詳細が
図3に示されている。
図3は
図1に示すシートバック14の右側半分箇所の断面図である。
図3に示すように右側配置のサポートパネル38Rは右側のサイドサポート部位20Rの内部に配置されている。サイドサポート部位20は内部のウレタンパッド42が表皮等のシートカバー44に被覆されて形成されている。サポートパネル38は樹脂製の板状の剛性部材で形成されており、ウレタンパッド42の背部を支持するように配置されている。そして、
図3で見て、サポートパネル38の一端の基端部は回転支持軸34に一体成形により固定されて取付けられている。これにより回転支持軸34によりサポートパネル38は該回転支持軸34を中心として左右に揺動回動し、これに伴ってサイドサポート部位20全体も揺動する。左右両側のサイドサポート部位20R,20Lが互いに逆方向に揺動することにより左右両側のサイドサポート部位20R,20L間の幅間隔を広くしたり狭くしたり調整が可能となる。以上説明した本実施形態における左右両側のサイドサポート部位20R,20L間の幅間隔を広くしたり狭くしたり調整するための機構が本発明で言うサイドサポート位置調整機構である。なお、サポートパネル38の先端が湾曲して形成されているのは、着座者の着座時における異物感を緩和させることを意図したものである。
【0016】
図2及び
図3に示すように、シートバック14の天板部位18には、布製の面状体部位46が左右の回転支持軸34R,34Lに掛け渡された状態として配設されている。天板部位18は、前述のサイドサポート部位20と同様に、内部のウレタンパッド42が表皮等のシートカバー44で被覆された形態として形成されている。布製の面状体部位46はウレタンパッド42の背部に配設されており、着座者がシート10に着座した際に天板部位18で受ける着座者の背部の支持荷重を支持する持部材となっている。
本実施形態の布製の面状体部位46はバネ弾性変形可能な構成体のものとなっている。この面状体部位46の回転支持軸34への取付けは、前述のサポートパネル38を回転支持軸34に一体成形により取付ける際に一緒に一体成形により取り付けられている。これにより左右の回転支持軸34R、34Lを互いに異なる方向に回転させることにより左右の回転支持軸34R、34L間に掛け渡された布製の面状体部位46は緊張した状態或いは緩められた状態とされて、面状体部位46による着座者の前後方向(着座荷重作用方向)の支持位置が変わり、支持位置を調整することができる。
例えば、
図3で見て、右側の回転支持軸34Rを時計廻り回転方向に回転させ、図示外の左側の回転支持軸34Lを反時計廻り回転方向に回転させると、面状体部位46は緩められた状態となり、その前後方向の支持位置が相対的に後側位置となる。逆に、左右の回転支持軸34R、46Lを逆方向に回転させると、面状体部位46は緊張した状態となり、その前後方向の支持位置は相対的に前側位置となる。
以上説明した本実施形態における布製の面状体部位46による着座者の前後方向の支持位置を調整するための機構が本発明で言う支持位置調整機構である。なお、面状体部位46及び前述のサポートパネル38の回転支持軸34への取付けは、一体成形によることなく、個々に接着等の固着手段により別個に取付けるものであっても良い。
【0017】
上記の実施形態によれば、支持位置調整機構を構成する面状体部位46及びサイドサポート位置調整機構を構成するサポートパネル38が共に同じ回転支持軸34に取付けられていることから、回転支持軸34の回動により連動して一緒に作動する構成となっている。そして、その連動は、
図3で見て、右側の回転支持軸34Rが時計廻り回転方向の時には、サイドサポート部位30はサイドサポート部位間の幅間隔を広くする作動となり、面状体部位46は緩められた状態となりその支持位置を相対的に後側位置とする作動関係となっている。なお、その際における左側の回転支持軸34Rは、逆に反時計廻り回転方向に回転するように左右のモータ36R,36Lは連動制御されている。
【0018】
なお、
図3において、48はバックパネルであり、シートバック14の後面全体を覆い見栄えの向上を図っている。また、50は引っ掛けバネ紐であり、サイドサポート部位20の外端部とサイドフレーム26とに引っ掛けて、サイドサポート部位20の位置決めを行なうものである。
【0019】
次に、作用について説明する。
今、比較的大きな体格の着座者の場合には、右側のモータ36Rを時計廻り回転方向に回転させ、左側のモータ36Lを反時計廻り回転方向に回転させる。これにより左右のサポートパネル38R,38Lはその幅間隔を広くする方向に作動して、左右のサイドサポート部位20R,20Lの幅間隔を体格に合わせた広い状態とすることができる。また、面状体部位46は緩められた状態となり、着座者の支持位置を相対的に後方位置として、大きな体格の着座者をシートバック14の天板部位18に比較的沈み込ませた状態とすることができる。
次に、比較的小さな体格の着座者の場合には、逆に、右側のモータ36Rを反時計廻り回転方向に回転させ、左側のモータ36Lを時計廻り回転方向に回転させる。これにより左右のサポートパネル38R,38Lはその幅間隔を狭くする方向に作動して、左右のサイドサポート部位20R,20Lの幅間隔を体格に合わせた狭い状態とすることができる。また、面状体部位46は緊張した状態となり、着座者の支持位置を相対的に前方位置として、小さな体格の着座者をシートバック14の天板部位18に沈み込ませることなく比較的前方位置で支持することができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態のほか各種の形態で実施することができるものである。
例えば、上記実施形態ではシートバックがサイドサポート部位を備えた場合について説明したがシートクッションにサイドサポート部位を備えている場合には適用可能なものである。
また、上記実施形態では、面状体部位は布製のバネ弾性変形可能な構成体のものであったが、バネ弾性変形可能でなくとも可撓性の構成体のものであれば良い。
また、上記実施形態では、面状体部位はシートバックの一部箇所に配設される例であったが、シートバックやシートクッションの全面に配設して構成することもできる。
また、サイドサポート位置調整機構と支持位置調整機構との連動構成の仕方も各種の形態が考えられるものである。
【符号の説明】
【0021】
10 自動車用シート(乗物用シート)
12 シートクッション
14 シートバック
16 ヘッドレスト
18 天板部位
20 サイドサポート部位
22 バックフレーム
24 アッパフレーム
26 サイドフレーム
28 ロアパイプ
30 ブラケット
32 ブラケット
34 回転支持軸
36 モータ
38 サポートパネル
42 ウレタンパッド
44 シートカバー
46 面状体部位
48 バックパネル
50 引っ掛けばね紐