(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040862
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】入退室管理システム
(51)【国際特許分類】
G07C 9/00 20060101AFI20161128BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
G07C9/00 Z
E05B49/00 J
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-103243(P2013-103243)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-225087(P2014-225087A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】中林 智
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−019423(JP,A)
【文献】
特開2007−170022(JP,A)
【文献】
特開2000−276619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07C 9/00
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が所持する情報記録媒体に記録された識別情報を無線通信により取得する第1の通信手段を有する認証端末装置と、
前記第1の通信手段により取得された識別情報に基づいて、当該識別情報の利用者の認証を行う認証手段を有する入退室管理装置と、
前記第1の通信手段と無線通信可能な第2の通信手段を有する携帯端末装置と、を備え、
前記入退室管理装置は、前記第1の通信手段が前記情報記録媒体との通信待ち状態である場合に、前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との通信を許可する制御手段を備えたことを特徴とする入退室管理システム。
【請求項2】
前記制御手段は、予め定められた保守通信許可条件が成立した場合に、前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との通信を許可することを特徴とする請求項1に記載の入退室管理システム。
【請求項3】
前記保守通信許可条件は、前記認証手段により利用者が保守作業権限を有することが認証されることであることを特徴とする請求項2に記載の入退室管理システム。
【請求項4】
前記入退室管理装置は、それぞれの識別情報に対応付けて当該識別情報の利用者の権限に関する情報を認証情報として予め記憶する第1の記憶手段を備え、
前記認証手段は、前記第1の通信手段により取得された識別情報を前記第1の記憶手段に記憶された認証情報と照合することにより認証を行い、
前記携帯端末装置は、第2の記憶手段を備え、
前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との通信により、前記第1の記憶手段に記憶された保守情報を前記第2の記憶手段へと複製及び/又は移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の入退室管理システム。
【請求項5】
前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との通信により、前記第1の記憶手段に記憶されたアプリケーションソフトウェアを、前記第2の記憶手段に記憶されたものに更新可能であることを特徴とする請求項4に記載の入退室管理システム。
【請求項6】
前記第1の通信手段と前記情報記録媒体との通信、及び、前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との通信は、いずれも近接場型非接触式の通信であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の入退室管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入退室管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における入退室管理システムにおいては、出入口を通行する通行者を特定するID情報が入力されるカードリーダと、カードリーダに入力されたID情報に基づいて電気錠を変位させるIDコントローラとを備え、保守点検を行う際に用いられる携帯型端末装置とIDコントローラとの間の通信を可能にする通信装置をさらに備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−207479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示された従来における入退室管理システムにおいては、IDコントローラ内に蓄積されている保守情報等を外部へと取り出す等の保守作業の際に、専用ツールを内蔵した保守用端末装置が必要となる。また、保守用端末装置との保守通信を可能にするための専用の通信装置をIDコントローラに備える必要がある。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、専用の通信装置を必要とすることなく簡潔な構成で入退室管理装置の保守情報の取得等を目的とする保守通信を行うことができる入退室管理システムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る入退室管理システムにおいては、利用者が所持する情報記録媒体に記録された識別情報を無線通信により取得する第1の通信手段を有する認証端末装置と、前記第1の通信手段により取得された識別情報に基づいて、当該識別情報の利用者の認証を行う認証手段を有する入退室管理装置と、前記第1の通信手段と無線通信可能な第2の通信手段を有する携帯端末装置と、を備え、前記入退室管理装置は、前記第1の通信手段が前記情報記録媒体との通信待ち状態である場合に、前記第1の通信手段と前記第2の通信手段との通信を許可する制御手段を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る入退室管理システムにおいては、専用の通信装置を必要とすることなく簡潔な構成で入退室管理装置の保守情報の取得等を目的とする保守通信を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る入退室管理システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係る入退室管理システムの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1及び
図2は、この発明の実施の形態1に係るもので、
図1は入退室管理システムの全体構成を模式的に示すブロック図、
図2は入退室管理システムの動作を示すフロー図である。
【0010】
図1に示すこの発明の入退室管理システムが適用される施設又は建物等の内部は仕切られて区画が設けられている。各区画の出入口には図示しない扉が開閉自在に設けられている。区画に出入りする利用者は、それぞれICカード1を所持している。各ICカード1には、複数の利用者の各々を一意に識別可能な識別情報が予め記録されている。
【0011】
入退室管理システムが適用される施設等の所定の位置(具体的には、区画の扉の近傍等)には、認証端末装置10が設置されている。認証端末装置10は、第1の通信部11を備えている。第1の通信部11は、ICカード1に記録された識別情報を無線通信により取得するためのものである。
【0012】
ここで、ICカード1は、いわゆるパッシブ型のRFID(Radio Frequency IDentification)タグである。第1の通信部11は、NFC(Near Field Communication)すなわち近接場型の非接触式通信により、ICカード1に記録された識別情報を取得することができる。
【0013】
ICカード1は、利用者が所持し、識別情報が記録され、無線通信により識別情報の取得が行われる情報記録媒体の一例である。このような情報記録媒体としては、パッシブ型のRFIDタグの他、アクティブ型(あるいはセミアクティブ型)のRFIDタグを用いることもできる。
【0014】
通常時において、第1の通信部11はICカード1との通信待ち状態である。そして、第1の通信部11が通信待ち状態である場合に、利用者が携行するICカード1を第1の通信部11のアンテナ部にかざす等し、ICカード1が第1の通信部11との通信可能範囲内に入ると、NFCにより第1の通信部11はICカード1の識別情報を取得する。
【0015】
認証端末装置10は、入退室管理装置20と通信可能に接続されている。入退室管理装置20は、制御部21、認証部22及び第1の記憶部23を備えている。制御部21は入退室管理装置20の動作を制御する。また、制御部21は、第1の通信部11における通信処理等を含む認証端末装置10の動作も制御する。
【0016】
認証端末装置10の第1の通信部11により取得されたICカード1の識別情報は、入退室管理装置20へと送られる。入退室管理装置20においては、認証部22が、前記第1の通信手段により取得された識別情報に基づいて、当該識別情報の利用者の認証を行う。この認証においては、第1の記憶部23に記憶されている情報が参照される。第1の記憶部23には、各利用者の識別情報のそれぞれに対応付けて、当該識別情報の利用者の権限に関する情報が認証情報として予め記憶されている。
【0017】
この認証情報として記憶される利用者の権限に関する情報としては、例えば、認証端末装置10が区画の扉の近傍に設置されている場合における当該扉の通行権限に関する情報がある。また、後述する保守作業権限の有無も、この第1の記憶部23に記憶される利用者の権限に関する情報に含まれる。認証部22は、第1の通信部11により取得された識別情報を第1の記憶部23に記憶された認証情報と照合することにより、当該識別情報の利用者の認証を行う。
【0018】
例えば、扉の通行権限について認証する場合、第1の通信部11により取得された識別情報が、第1の記憶部23に当該扉の通行権限を有する者の識別情報として記憶されていた場合、当該識別情報の利用者についての認証は成功となる。一方、第1の通信部11により取得された識別情報が、第1の記憶部23に当該扉の通行権限を有する者の識別情報として記憶されていない場合、当該識別情報の利用者についての認証は失敗となる。
【0019】
こうして入退室管理装置20において行われた認証の結果等、入退室管理装置20の動作のログを含む保守情報は、第1の記憶部23に記憶されて蓄積される。また、第1の記憶部23には、入退室管理装置20の制御部21及び認証部22等において必要な機能を実現するためのアプリケーションソフトウェアも記憶される。
【0020】
この発明の入退室管理システムの保守管理作業を実施する保守作業員は、携帯端末装置30を所持している。携帯端末装置30は、具体的に例えば、いわゆるスマートフォンを含む携帯電話、タブレットPC、あるいは、小型のノートPC等である。携帯端末装置30は、第2の通信部31及び第2の記憶部32を備えている。
【0021】
第2の通信部31は、認証端末装置10の第1の通信部11と無線通信可能である。第1の通信部11と第2の通信部31とは、NFCすなわち近接場型の非接触式通信により、双方向に情報のやり取りができるように構成されている。
【0022】
前述したように第1の通信部11における通信処理動作は制御部21により制御されている。制御部21は、通常時において第1の通信部11をICカード1との通信待ち状態にする。そして、ICカード1が第1の通信部11との通信可能範囲内に入ると、制御部21は、第1の通信部11とICカード1との通信状態を確立させ、必要な通信が終了すれば再び第1の通信部11を通信待ち状態にする。
【0023】
また、制御部21は、第1の通信部11がICカード1との通信待ち状態である場合に、携帯端末装置30の第2の通信部31が第1の通信部11との通信可能範囲内に入ると、第1の通信部11と第2の通信部31との間での通信を許可し、これらの通信部間での通信(保守通信)を確立させる。
【0024】
この第1の通信部11と第2の通信部31との間での保守通信においては、入退室管理装置20の第1の記憶部23に記憶されている保守情報を携帯端末装置30の第2の記憶部32へと複製及び/又は移動することができる。
【0025】
また、携帯端末装置30の第2の記憶部32に第1の記憶部23のアプリケーションソフトウェアを最新版のものに更新するための更新用プログラムを予め格納しておく。この更新用プログラムには、最新版のアプリケーションソフトウェアが含まれている。そして、第1の通信部11と第2の通信部31との間での保守通信中に更新用プログラムを実行することで、第2の通信部31に記憶された最新版のアプリケーションソフトウェアでもって、第1の記憶部23に記憶されたアプリケーションソフトウェアを更新することもできる。
【0026】
携帯端末装置30は、既存の通信インフラを活用して例えば保守会社40あるいはメーカー等のデータベース(第3の記憶部41)と通信可能である。例えば、携帯端末装置30が携帯電話であれば、携帯電話の通信回線等を利用して保守会社40と通信することができる。また、携帯端末装置30がノートPCであれば、WAN、LANあるいはインターネット等の通信網を利用して保守会社40と通信することができる。
【0027】
このように、携帯端末装置30は保守会社40と通信可能に構成されているため、携帯端末装置30の第2の記憶部32に取り出した入退室管理装置20の保守情報を、容易に保守会社40の第3の記憶部41へと複製及び/又は移動させることができる。また、保守会社40の第3の記憶部41から、携帯端末装置30の第2の記憶部32へと、更新用プログラムを複製することも容易である。
【0028】
なお、第1の通信部11と第2の通信部31との間での保守通信を確立するにあたり、第1の通信部11がICカード1との通信待ち状態である場合に加えて、さらに、予め定められた保守通信許可条件が成立した場合に第1の通信部11と第2の通信部31との間での保守通信を許可するようにしてもよい。
【0029】
この保守通信許可条件について、次に例をいくつか述べる。まず、第1の例としては、認証端末装置10、入退室管理装置20あるいは携帯端末装置30に備えられているボタン、スイッチ類が予め定められた通常行わないような手順で操作された場合に、保守通信を許可するというものがある。
【0030】
次に、第2の例としては、保守作業員が認証端末装置10あるいは携帯端末装置30を操作して、予め定められたパスワードを正しく入力することができた場合に、保守通信を許可するというものがある。
【0031】
そして、第3の例は、保守作業員が所持するICカード1を用いて保守作業権限の有無を認証部22で認証し、当該保守作業員に保守作業権限が有ることが認証された場合に、保守通信を許可するというものである。この第3の例においては、前述したように、第1の記憶部23に予め記憶される利用者の権限に関する情報に、保守作業権限の有無を含んでおく必要がある。
【0032】
なお、この場合、保守作業員も、ICカード1を所持する利用者に含めている。また、保守作業員が所持するICカード1の機能を、保守作業員が所持する携帯端末装置30に備えるようにしてもよい。
【0033】
このように、保守通信許可条件として、所定の操作手順、パスワード又はICカード1を用いた認証を要求することで、保守通信におけるセキュリティ性を向上させることができる。なお、以上の第1の例から第3の例までの条件の複数を組み合わせることで、セキュリティをより堅固なものとすることができる。例えば、正しいパスワードを入力され、かつ、作業権限を有する識別情報のICカード1を所持していることが確認された場合に保守通信を許可するようにすれば、より強固なセキュリティを確保できる。
【0034】
次に、
図2のフロー図を参照しながら、以上のように構成された入退室管理システムにおける保守通信に係る動作を、当該動作の流れに沿って説明する。まず、第1の通信部11がICカード1との通信待ち状態である場合(ステップS1)に、携帯端末装置30の第2の通信部31が第1の通信部11との通信可能範囲内に入ると、ステップS2において、制御部21は、保守通信が許可されているか否かを確認する。
【0035】
このステップS2における保守通信が許可されているか否かの確認は、予め設定された保守通信可能条件が成立しているか否かを確認することにより行われる。保守通信可能条件が成立していない場合には、保守通信が許可されていないとして、ステップS1へと戻る。一方、保守通信可能条件が成立している場合には、保守通信が許可されているとして、ステップS3へと進む。
【0036】
ステップS3においては、制御部21は第1の通信部11と第2の通信部31との間の通信を確立させ、保守通信を開始する。そして、ステップS4へと進んで、保守作業を実施する。この保守作業においては、具体的には、第1の通信部11と第2の通信部31との間の通信を介して、第1の記憶部23の保守情報を第2の記憶部32へと複製又は移動させる。あるいは、第1の記憶部23のアプリケーションソフトウェアを、第2の記憶部32に記憶されたもので上書き更新する。
【0037】
ステップS4における保守作業が終了したら、ステップS5へと進む。このステップS5においては、制御部21は、第1の通信部11と第2の通信部31との間の保守通信を終了させる。そして、ステップS1へと戻り、制御部21は第1の通信部11をICカード1との通信待ち状態とする。以降は、以上のステップS1からステップS5までの動作を操り返す。
【0038】
以上のように構成された入退室管理システムは、利用者が所持する情報記録媒体であるICカード1に記録された識別情報を無線通信により取得する第1の通信部11を有する認証端末装置10と、第1の通信部11により取得された識別情報に基づいて、当該識別情報の利用者の認証を行う認証部22を有する入退室管理装置20と、第1の通信部と無線通信可能な第2の通信部を有する携帯端末装置30と、を備えている。そして、入退室管理装置20は、第1の通信部11がICカード1との通信待ち状態である場合に、第1の通信部11と第2の通信部31との通信を許可する制御部21を備えている。
【0039】
このため、ICカード1の識別情報を取得するための認証端末装置10の第1の通信部11を活用して、携帯端末装置30との保守通信を実施することができる。したがって、認証端末装置10及び入退室管理装置20と携帯端末装置30との間で保守通信を、専用の通信装置を必要とすることなく実施することが可能であるため、システムの構成を簡潔なものとすることができる。
【0040】
また、予め定められた保守通信許可条件が成立した場合、特に、利用者が保守作業権限を有することが認証された場合に、保守通信を許可するようにすることで、保守通信におけるセキュリティ性も確保することができる。
【0041】
さらに、この際の通信形式として、NFCすなわち近接場型の非接触式通信を採用することで、認証端末装置10と携帯端末装置30との保守通信に通信線を必要としないため、保守作業性及び利便性を向上することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ICカード、 10 認証端末装置、 11 第1の通信部、 20 入退室管理装置、 21 制御部、 22 認証部、 23 第1の記憶部、 30 携帯端末装置、 31 第2の通信部、 32 第2の記憶部、 40 保守会社、 41 第3の記憶部