(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040869
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】孔あけ装置
(51)【国際特許分類】
B21D 28/28 20060101AFI20161128BHJP
B21D 28/34 20060101ALI20161128BHJP
B21D 37/12 20060101ALI20161128BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
B21D28/28
B21D28/34 Z
B21D37/12
B21D43/00 P
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-117968(P2013-117968)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-233749(P2014-233749A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 堅太
【審査官】
塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−047524(JP,A)
【文献】
特開昭54−029181(JP,A)
【文献】
特開昭57−124525(JP,A)
【文献】
特開昭58−053331(JP,A)
【文献】
特開平10−244326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/28
B21D 28/34
B21D 37/12
B21D 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のワークを把持する筒状の把持部と、パンチまたはダイスのいずれか一方が設けられた第1の型と、他方が設けられた第2の型と、を有し、前記パンチが前記ダイスへ入り込むことで前記把持部が把持しているワークに孔をあける孔あけ装置であって、
前記把持部は、前記ワークの開口の少なくとも一方を前記ワークの開口方向から把持し、
前記第1の型は、前記把持部の中空内に配置され、
前記第2の型は、前記把持部の外周側に配置され、
前記第1の型と前記第2の型のいずれか一方には、他方に向かって突出する位置決めピンが設けられるとともに、
他方には、前記位置決めピンの突出方向に直交する方向の前記位置決めピンの大きさよりも大きい口径の位置決め孔が設けられ、
前記把持部には、前記位置決めピンの突出方向に直交する方向の前記位置決めピンの大きさよりも大きい口径のガイド孔が前記把持部の周方向に所定の間隔で複数設けられ、
前記把持部と、前記第1の型及び前記第2の型と、は、前記複数のガイド孔が並ぶ方向に沿って相対的に変位可能であることを特徴とする
孔あけ装置。
【請求項2】
前記把持部は、円筒形上であり、前記第1の型を中心に前記把持部の円周方向に回転させる回転機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の孔あけ装置。
【請求項3】
前記第2の型を前記第1の型へ向かって変位させる押圧機構を有することを特徴とする請求項1または2記載の孔あけ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のワークに孔を開けるための孔あけ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車部品等に用いられる部材の加工技術において、ワークに孔をあける孔あけ加工を施して、目的の製品を加工する加工技術が公知である。このような加工技術では、通常、パンチが入り込むパンチ挿入部が設けられたダイス、及びワークに孔をあけるパンチが設けられた孔あけ装置が用いられる。
【0003】
具体的には、上記のダイスに設けられたパンチ挿入部の形状は、ワークにあける孔の輪郭形状より僅かに大きく形成され、かかるパンチ挿入部に嵌合可能な形状にパンチが形成される。また、上記パンチの外周及びパンチ挿入部の縁部には、それぞれ切刃が形成されている。そして、パンチがパンチ挿入部に挿入される際に、各切刃の刃先によってワークが剪断されながらワークに孔があけられる。
【0004】
上記の孔あけ装置を利用して筒状のワークに複数の孔をあける装置として、ダイスには、筒状のワークの内周面に系合する段付溝が設けられており、ダイスをワークに系合させて位置決めした後、パンチをダイスに押し付けることでワークに孔をあける装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−319983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された孔あけ装置は、一対のパンチとダイスとを用いて筒状のワークに対して孔をあける装置であり、ワークの一箇所に対してパンチとダイスを位置決めし、孔をあける。そのため、当該孔あけ装置を用いてワークの円周上に複数の孔をあけるためには、孔をあける毎にワークを回転させ、孔から所定の間隔離れた位置にパンチとダイスを位置決めさせいく必要がある。当該孔あけ装置では、ワークに孔をあけた後、ワークにあけられた孔から所定の間隔離れた位置に正確に位置決めするために孔あけ装置の使用者の熟練した作業が必要であった。使用者の熟練度によっては、一度ワークに孔をあけた後、ワークを回転させて所定の位置にパンチ及びダイスを位置決めすることができず、ワークの外周上にあけられる複数の孔同士の間隔を精度よく設けることができなかった。本発明においては、このような課題に対して、使用者の熟練度に依存せずにワークに対して容易に複数の孔を精度良い間隔で形成することができる孔あけ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る孔あけ装置では、筒状のワークを把持する筒状の把持部と、パンチまたはダイスのいずれか一方が設けられた第1の型と、他方が設けられた第2の型と、を備えており、パンチがダイスへ入り込むことで把持部が把持しているワークに孔をあけることを特徴としている。このような孔あけ装置において、把持部は、ワークの開口の少なくとも一方をワークの開口方向から把持し、第1の型は、把持部の中空内に配置され、第2の型は、把持部の外周側に配置されている。これら第1の型と第2の型のいずれか一方には、他方に向かって突出する位置決めピンが設けられ、他方には、位置決めピンが突出する方向に直交する方向の位置決めピンの大きさよりも大きい口径の位置決め孔が設けられている。また、把持部には、位置決めピンが突出する方向に直交する方向の位置決めピンの大きさよりも大きい口径のガイド孔が把持部の周方向に所定の間隔で複数設けられている。そして、把持部と、第1の型及び第2の型と、は、複数のガイド孔が並ぶ方向に沿って相対的に変位可能である。
【0008】
第1の型と第2の型と、の把持部と、が把持部の周方向に所定距離変位すると、変位前後において、位置決めピンが通過することができるガイド孔が、変位前に通過することができたガイド孔から他のガイド孔へ変更される。そのため、筒状のワークに対して第1の型及び第2の型を複数のガイド孔の位置で位置決めすることができる。すなわち、筒状のワークに対して第1の型、及び第2の型を位置決めさせる位置を、ガイド孔の変更に伴い変更させることができる。これによって、使用者の熟練度に依存せずに筒状のワークに対して容易に複数の孔を精度の良い間隔で形成することができる。
【0009】
把持部は筒形状であり、把持部を、第1の型を中心に把持部の円周方向に回転させる回転機構が設けられていても良い。
【0010】
把持部は、円筒状のワークの形状に沿ってワークを把持しつつ回転する。これによって、容易に把持部と、第1の型及び第2の型と、は、複数のガイド孔が並ぶ方向に沿って相対的な位置を変位させ、ワークに対して第1の型が位置決めされる位置を変化させることができる。これによって、孔あけ装置の使用者は、筒状のワークに対して容易に複数の孔を精度の良い間隔で形成することができる。
【0011】
第2の型を第1の型へ向かって押圧する押圧機構を備えていても良い。
【0012】
第2の型は、押圧機構により押圧されることで第1の型へ向かって変位する。これによって、孔あけ装置の使用者は、筒状のワークに対して容易に複数の孔を精度の良い間隔で形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、筒状のワークに複数の孔をあける際に、孔同士の間隔を精度良く開けて複数の孔をあけることができる装置を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ワークを把持し、ワークに孔をあける前の孔あけ装置の縦断面概略図
【
図3】位置決めピンがガイド孔に挿入された際の、
図1A−A断面概略図
【
図4】孔あけ装置がワークを把持する際の孔あけ装置の縦断面概略図
【
図5】第2の型がワークに向かって変位する工程を示す孔あけ装置の縦断面概略図
【
図6】位置決めピンがガイド孔に挿入され、位置決めされる際の工程を示す
図1A−A断面概略図
【
図7】第2の型がワークに向かって変位し、パンチがダイスに入り込んだ際の縦断面概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0016】
<発明の実施の形態>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る孔あけ装置1は、孔あけ装置1を支える土台101上に配置されており、円筒状の把持部10と、第1の型20と、第2の型30とを有する。
【0017】
円筒状の把持部10は、筒状のワークWの開口方向の一方から把持する把持部上部11と、ワークWの開口方向の他方から把持する把持部下部12と、から形成されている。把持部上部11には、把持用シリンダ40が取り付けられており、ワークWの開口方向に沿う方向に変位可能に形成されている。把持用シリンダ40には、ベアリング42を介して把持部側歯車41が連結されており、把持部側歯車41と噛み合うモータ側歯車51を介して回転機構であるモータ50が取り付けられている。把持部下部12は、把持部下部土台連結部14上に低摩擦部15とベアリング13を介して取り付けられている。なお、ベアリング13は、把持部下部土台連結部14上にスペーサ(不図示)を介して配置され、把持部下部12の中央部付近で当接している。把持部下部土台連結部14は、土台101が有するレール上に配置され(不図示)、
図1における左右方向に平行移動可能に配置されている。また、把持部下部12には、
図2に示すように、把持部下部12がワークWと当接している部位よりも土台側に、位置決めピン33が通過することができるガイド孔13〜18が均等な間隔で円周上
に6つ設けられている。
【0018】
第2の型30は、第2の型本体32の一方の面に位置決めピン33とダイス31とが設けられ、他方の面に押圧機構である押圧用シリンダ60が取り付けられており、押圧用シリンダ60により第1の型20に向かって変位可能な部材である。位置決めピン33は、把持部下部12に設けられたガイド孔13〜18と同一の高さに設けられており、ガイド孔13〜18の口径よりも短手方向の大きさが小さく形成されている。ダイス31は、位置決めピン33の上方に設けられている。
【0019】
第1の型20は、土台101上の把持部下部12の中空の中央に配置された円筒形状の部材であり、第1の型本体21に位置決め孔22とパンチ23とが設けられている。位置決め孔22は、把持部10のガイド孔13〜18、及び位置決めピン33と同じ高さに設けられており、いい決めピンの短手方向の大きさよりも大きい口径に形成されている。パンチ23は、把持部下部12と把持部上部11との間の高さであり、ダイス31と同じ高さに設けられている。
【0020】
図2は、把持部下部12に設けられたガイド孔13〜18と、第1の型20に設けられた位置決め孔22と、第2の型30に設けられた位置決めピン33とを示す
図1のA−A断面図、すなわち、第2の型30が第1の型20へ向かって変位する前を示す図である。
図3は、
図2の位置決めピン33がガイド孔13を通過して位置決め孔22に挿入された状態を示す状態の図、すなわち、第2の型30が第1の型20に向かって変位した結果、第1の型20、及び第2の型30がワークWに対して位置決めされた状態を示す図である。
【0021】
次に、本実施の形態に係る孔あけ装置1を用いて、ワークWに対して孔をあける方法を説明する。
【0022】
まず、
図4に示すように、ワークWは、把持部下部12上に配置されており、把持部上部11が把持用シリンダ40によりワークWに向かって変位させられることで、把持部下部12と把持部上部11との間に把持され、孔あけ装置1に固定される。ワークWを孔あけ装置1に固定後、第2の型30は、
図5に示すように、押圧用シリンダ60により、第1の型20に向かってワークWに対する第2の型30の位置を位置決めしながら変位していく。ここで、第2の型30が位置決めされる工程を、
図6を用いて説明する。第2の型30が第1の型20に向かって変位し始めると、
図6(a)に示すように配置されていた位置決めピン33は、まず、把持部下部12に設けられたガイド孔13を通過する。この際、位置決めピン33とガイド孔13との位置が一致している場合には、位置決めピン33がガイド孔13を通過してワークWに対して第2の型30の位置決めを行いながら第1の型20に向かって変位し、
図6(b)に示すように位置決めピン33が位置決め孔22に挿入される。
【0023】
第2の型30は、位置決めピン33がガイド孔13を通過することでワークWに対する位置決めを行いつつ、さらに第1の型20に向かって変位していく。これにより、第2の型30に設けられたダイス31はワークWに当接する。そして、さらに第2の型30が第1の型20に向かって変位していくと、ワークWは、第2の型30の変位により押圧されワークWを把持する把持部10と共に第1の型20に向かって変位していく。その後、ワークWは、第1の型20に設けられたパンチ23に当接し、パンチ23とダイス31に挟まれる。そして、さらに第2の型30が第1の型20に向かって変位すると、
図7に示すように、パンチ23はダイス31内に入り込む。この際、パンチ23とダイス31とに挟まれたワークWは、パンチ23とダイス31との間で裁断され、ワークWに孔が形成される。その後、第2の型30は変位前の位置に戻る。
【0024】
第2の型30が変位前の位置に戻った後、把持部10は、モータ50の駆動によりモータ側歯車51、及び把持部側歯車41を介してモータ50の駆動力を受けてワークWを把持しながら把持部10の周方向に回転する。この際、把持部側歯車41は、把持部用シリンダ40にベアリング42を介して連結されているため、把持部上部11は、把持部用シリンダ40に対して容易に回転する。また、把持部下部12は、ベアリング13と低摩擦部15とを介して把持部下部土台連結部14と連結しているため、把持部下部土台連結部14に対して容易に回転する。すなわち、把持部10は、ワークWを把持した状態でも把持部10は容易に回転する。これによりワークWは、第1の型20および第2の型30との相対的な位置が変位される。把持部10の回転は、位置決めピン33が、最初に用いたガイド孔13の隣に配置されたガイド孔14を通過できる位置になった際に停止される。その後、上記で説明したように第2の型30が変位することでワークWに対して孔をあける。
【0025】
以上のように、孔あけ装置1は、第2の型30に設けられた位置決めピン33が、把持部下部12に設けられたガイド孔13を通過して第1の型20に設けられた位置決め孔22に挿入されることで、ワークWに対して孔をあける位置を位置決めしつつ、ワークWに対して孔をあけることができる。そして、孔あけ装置1は、ワークWに孔があけられた後、把持部10が回転することにより、第2の型30に設けられた位置決めピン33を他のガイド孔14〜18に対して位置決めすることができる。なお、位置決めピン33とガイド孔13〜18との位置がずれている場合には、位置決めピン33がガイド孔13を通過することができず、第2の型30は第1の型20と嵌合できない。そのため、位置決めピン33、ガイド孔13〜18、及び位置決め孔22による位置決めが行われない限りワークWに孔があけられることはない。
そのため、孔あけ装置1は、第2の型30をワークWに対して均等な間隔で位置決めすることができる。すなわち、孔あけ装置1は、ワークWに対して均等な間隔で孔をあけることができる。
【0026】
<その他の実施の形態>
なお、発明の実施の形態において、把持部下部12に設けられているガイド孔13〜18は、均等な間隔で6つある例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、ガイド孔は、ワークに対してあける孔の数や孔同士の間隔等にあわせて適宜変更される。
【0027】
また、本発明は上記実施の形態に限定するものではなく、例えば、第1の型にパンチが設けられ、第2の型にダイスが設けられていても良い。
【0028】
さらに、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、既に述べた本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 ・・・孔あけ装置
10 ・・・把持部
11 ・・・把持部上部
12 ・・・把持部下部
13〜18 ・・・ガイド孔
20 ・・・第1の型
22 ・・・位置決め孔
23 ・・・パンチ
30 ・・・第2の型
31 ・・・ダイス
33 ・・・位置決めピン