(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硫化物系固体電解質を含む1又は2個以上の電池と、吸気口及び排気口を有し、前記1又は2個以上の電池を収容する筐体を含む電池パックと、前記筐体の吸気口に接続された冷却用空気供給路と、前記筐体の排気口に接続された排気路とを備える電源装置において、前記電池のうちの少なくとも1個の電池の破損を検出する電池破損検出装置であって、
前記筐体内に供給される冷却用空気中の硫化水素濃度情報を取得する第1の硫化水素濃度情報取得手段及び前記筐体からの排気中の硫化水素濃度情報を取得する第2の硫化水素濃度情報取得手段と、
第1の硫化水素濃度情報取得手段により取得された第1の硫化水素濃度情報と第2の硫化水素濃度情報取得手段により取得された第2の硫化水素濃度情報とを比較することにより電池からの硫化水素の漏れの有無を検知し、当該検知結果に基づいて前記電池のうちの少なくとも1個の電池が破損しているか否かを判定する判定手段、
を備えることを特徴とする電池破損検出装置。
前記判定手段が、第2の硫化水素濃度情報取得手段により取得された第2の硫化水素濃度から第1の硫化水素濃度情報取得手段により取得された第1の硫化水素濃度を差し引いた濃度差分値を算出して、前記濃度差分値が所定の閾値を超える場合には硫化水素の漏れがあると判定し、前記濃度差分値が所定の閾値以下である場合には硫化水素の漏れがないと判定する硫化水素漏れ検知結果に基づいて、前記電池のうちの少なくとも1個の電池が破損しているか否かを判定する、請求項1又は2に記載の電池破損検出装置。
現在位置における硫化水素濃度情報が電源装置の現在位置における硫化水素濃度又は硫化水素濃度閾値であり、(a)第2の硫化水素濃度情報取得手段により取得された第2の硫化水素濃度から前記電源装置の現在位置における硫化水素濃度を差し引いた差分値が所定の閾値を超える場合又は(b)第2の硫化水素濃度情報取得手段により取得された第2の硫化水素濃度から前記電源装置の現在位置における硫化水素濃度閾値を差し引いた差分値が0を超える場合には硫化水素の漏れがあると判定し、(c)第2の硫化水素濃度情報取得手段により取得された第2の硫化水素濃度から前記電源装置の現在位置における硫化水素濃度を差し引いた差分値が所定の閾値以下である場合又は(d)第2の硫化水素濃度情報取得手段により取得された第2の硫化水素濃度から前記電源装置の現在位置における硫化水素濃度閾値を差し引いた差分値が0以下である場合には硫化水素の漏れがないと判定する硫化水素漏れ検知結果に基づいて、前記電池のうちの少なくとも1個の電池が破損しているか否かを判定する、請求項4又は5に記載の電池破損検出装置。
硫化物系固体電解質を含む1又は2個以上の電池と、吸気口及び排気口を有し、前記1又は2個以上の電池を収容する筐体を含む電池パックと、前記筐体の吸気口に接続された冷却用空気供給路と、前記筐体の排気口に接続された排気路とを備える電源装置において、前記電池のうちの少なくとも1個の電池の破損を検出する電池破損検出方法であって、
前記筐体内に供給される冷却用空気中の第1の硫化水素濃度及び前記筐体からの排気中の第2の硫化水素濃度を取得すること、
第1の硫化水素濃度と第2の硫化水素濃度とを比較することにより電池からの硫化水素の漏れの有無を検知し、当該検知結果に基づいて前記電池のうちの少なくとも1個の電池が破損しているか否かを判定すること、
を含むことを特徴とする電池破損検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一又は対応する要素には同じ参照番号が付されている。
図1は、本発明の第1の実施形態の電池破損検出装置の一例を模式的に示す概略図であり、電池破損検出装置は電源装置に取り付けられた形態で示されている。電源装置1は、硫化物系固体電解質を含む1又は2個以上の電池10と電池10を収容する筐体12を備える電池パックを含み、電源装置は、さらに、筐体の吸気口14及び排気口16にそれぞれ接続された冷却用空気供給路20及び排気路22を備える。なお、
図1では、筐体12内に複数の電池10が概略的に示されているが、筐体12内に収容される電池の個数は1であってもよい。供給路20の上流側に設置された送風機(例えばシロッコファン、ターボファンなど)(図示せず)により冷却用空気を強制的に供給路20に取り込むことができる。冷却用空気は供給路20に自然に取り込まれたものであってもよく、例えば当該電池破損検出装置を備えた電源装置を搭載した装置が車両などの移動体である場合、走行風を利用して供給路20に冷却用空気を自然に取り込むことができる。
【0010】
電池破損検出装置は、筐体12内に供給される冷却用空気中のH
2S濃度情報を取得する第1のH
2S濃度情報取得手段30と、筐体12からの排気中のH
2S濃度情報を取得する第2のH
2S濃度情報取得手段40と、第1のH
2S濃度情報取得手段により取得された第1のH
2S濃度情報と第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度情報とを比較することにより電池からのH
2Sの漏れの有無を検知し、当該検知結果に基づいて上記電池のうちの少なくとも1個の電池が破損しているか否かを判定する判定手段50とを含む。第1のH
2S濃度情報取得手段により取得された第1のH
2S濃度情報には冷却用空気中のH
2S濃度が含まれ、第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度情報には排気路中のH
2S濃度が含まれる。第1のH
2S濃度情報取得手段30及び第2のH
2S濃度情報取得手段40は、H
2S濃度情報を取得し、取得したH
2S濃度情報を判定手段50に出力することができるものであればよく、特に限定されない。第1のH
2S濃度情報取得手段30及び第2のH
2S濃度情報取得手段40は、例えば、それぞれ、判定手段50と送受信可能に接続された送受信手段を有することによって、判定手段から受信した指令信号に従ってH
2S濃度情報を取得し、取得したH
2S濃度情報を判定手段50に送信することができるものであることができる。第1のH
2S濃度情報取得手段30が取得するH
2S濃度情報が筐体内に流入する冷却用空気中のH
2S濃度情報であることが確保され、第2のH
2S濃度情報取得手段40が取得するH
2S濃度情報が筐体から排出された排気中のH
2S濃度情報であることが確保される限り、第1のH
2S濃度情報取得手段30及び第2のH
2S濃度情報取得手段40が配置される位置は特に限定されず、第1のH
2S濃度情報取得手段30及び第2のH
2S濃度情報取得手段40はそれぞれ冷却用空気供給路20及び排気路22の任意の位置に設けられてもよく、第1のH
2S濃度情報取得手段30は冷却用空気供給路20の入口よりも上流側に設けられてもよく、第2のH
2S濃度情報取得手段40は排気路22の出口の下流側に設けられてもよい。
【0011】
第1の実施形態において、電池からのH
2Sの漏れの検知は、第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度から第1のH
2S濃度情報取得手段により取得された第1のH
2S濃度を差し引いた濃度差分値を算出し、当該濃度差分値を所定の閾値と比較して、当該濃度差分値が所定の閾値を超える場合には電池からのH
2Sの漏れがあると判定し、前記濃度差分値が所定の閾値以下である場合には電池からのH
2Sの漏れがないと判定することにより行うことができる。
【0012】
判定手段50は、例えば、後述するごとく、マイクロコンピュータとして構成された制御回路であることができ、例えば中央演算処理装置(CPU)と、リードオンリメモリ(ROM)部やランダムアクセスメモリ(RAM)部などの記憶装置、及び入出力手段としての入出力インターフェース等を備えてなることができる。ROM部は、濃度情報の比較演算や電池の破損判定のための制御プログラムや制御パラメータなどを記憶し、RAM部は、演算処理データの一次保存のために利用され、CPUの作業領域として機能する。CPUは、ROMなどの記憶装置に記憶された制御プログラムや制御データに従って制御を行う。入出力手段は、第1及び第2のH
2S濃度情報取得手段からの出力信号を受信し、受信した出力信号を、所定周期あるいは指令に応じてRAM部や別の記憶手段に送信することができ、また、入出力手段は、電池の破損判定結果を報知信号として出力することができる。RAM部などの記憶装置又は別の記憶手段に、第1及び第2のH
2S濃度情報取得手段からの経時的な濃度情報を記憶させてデータベースを構成することができる。第1及び第2のH
2S濃度情報取得手段からの経時的な濃度情報は、H
2S濃度とH
2S濃度検出時間を含むことができる。電池からのH
2Sの漏れの判定に使用される所定の閾値は、本発明の電池破損検出装置の判定手段に備えられた記憶装置に予め記憶されたものであることができる。必要に応じて、制御プログラム、制御パラメータ、濃度情報、所定の閾値などを、後述するような有線及び/又は無線通信網を介して第1のH
2S濃度情報取得手段に接続された外部サーバーのデータベースに格納し、判定手段50のCPUからの要求に応じて逐次読み取ることができるように構成してもよい。
【0013】
本発明の電池破損検出装置には、判定手段50による判定結果に基づいた報知を行うための報知手段(図示せず)が外付け又は内蔵されていてもよい。判定手段50が、少なくとも1個の電池が破損していると判定した場合に、判定手段から出力された報知信号に応じて視覚警報及び/又は音声警報を発するように報知手段を構成することができる。電源装置のユーザー又は周囲の人は、報知手段が発した視覚警報(例えば警報ランプの点灯、後述するナビゲーション装置の表示部への表示など)、音声警報(例えば後述するナビゲーション装置の音声出力部から発せられる警報音)などにより、電源装置を構成する電池の破損を迅速に把握することができる。
【0014】
例えば、第1のH
2S濃度情報取得手段30が冷却用空気供給路20に設けられており、第2のH
2S濃度情報取得手段40が排気路22に設けられている場合に、第1のH
2S濃度情報取得手段30を通過した冷却用空気が筐体を通過して第2のH
2S濃度情報取得手段40を通過するまでには、冷却用空気の流量と第1のH
2S濃度情報取得手段30から第2のH
2S濃度情報取得手段40まで冷却用空気が流れる空間の容積に応じた滞留時間を要する。そのため、判定手段50は、第1のH
2S濃度情報取得手段30により取得された第1のH
2S濃度情報と当該第1のH
2S濃度情報を取得してから所定の時間が経過した後に第2のH
2S濃度情報取得手段40により取得された第2のH
2S濃度情報とを比較することにより電池の破損の有無を判定することが好ましい。従って、本発明の電池破損検出装置は、第1及び第2のH
2S濃度情報取得手段により出力された濃度情報を経時的に記憶する記憶手段をさらに含むことが好ましい。滞留時間t
rは、例えば、第1のH
2S濃度情報取得手段30から筐体12の吸気口14までの冷却用空気供給路20内の容積をV
1(リットル)とし、筐体12内の空隙の容積をV
2(リットル)とし、筐体12の排気口16から第2のH
2S濃度情報取得手段40までの排気路22内の容積をV
3(リットル)とし、冷却用空気の流量をv(リットル/秒)とすると、式:t
r=(V
1+V
2+V
3)/vに従って予め算出することができる。冷却用空気の流量は、例えば、供給路20に設置された流量センサ(図示せず)により求めることができる。判定手段50により電池の破損の有無を判定するにあたり、判定手段50のCPUは、記憶手段に経時的に記憶された第1及び第2のH
2S濃度情報の出力データから、時刻t
1で第1のH
2S濃度情報取得手段30により取得された第1のH
2S濃度C1と、時刻t
1から滞留時間t
r経過後に第2のH
2S濃度情報取得手段40により取得された第2のH
2S濃度C2を読み取り、第2のH
2S濃度C2から第1のH
2S濃度C1を差し引いた濃度差分値C3を算出することができる。
【0015】
本発明の電池破損検出装置の上記の第1の実施形態における第1及び第2のH
2S濃度情報取得手段のタイプやH
2S検出能並びに上記の第2の実施形態における第2のH
2S濃度情報取得手段のタイプやH
2S検出能は、上記のように冷却用空気と排気のH
2S濃度差に基づいて電池の破損の有無を有意なレベルで判定することができる限り、特に限定されない。第1及び第2のH
2S濃度情報取得手段の例としてはH
2S濃度センサが挙げられる。大抵の人は、0.25ppm程度のH
2S濃度でH
2Sの存在を臭いにより感知することができ、3〜5ppmのH
2S濃度で、H
2Sに独特の不快臭を感じるため、電池破損検出装置を、例えば、電源装置の周囲の人(例えば車両などの移動体の乗員)がH
2Sの臭いを感じる前に電池の破損を検出するように構成する場合には、第1及び第2のH
2S濃度情報取得手段のH
2S検出下限が例えば0.1ppm程度のものであれば十分である。かかるH
2S濃度センサは商業的に入手可能である。
【0016】
電池パックの構造は特に限定されない。筐体12に収容される電池10は、直列、並列又は直列と並列の組み合わせで電気的に接続される。電池10は1又は2個以上の単位電池から構成され、電池10は、積層型、巻回型などの当該技術分野で知られている任意の形態をとることができる。電池10の各々が2個以上の単位電池から構成される場合、各電池10において、単位電池は直列、並列又は直列と並列の組み合わせで電気的に接続される。
図1及び以下で説明する
図2に示されている実施形態では、筐体内に複数の電池が並列に配置されていることが模式的に例示されているが、筐体内の電池の配置は特に限定されず、任意の配置とすることができる。従って、複数の電池10が互いに積層していても、互いに離間して配置されてもよい。筐体12内に2個以上の電池10が収容されている場合に、冷却効率を高めるために、電池10間に冷却用空気が流れる通路が形成されていることが望ましい。冷却効率を高めるために電池10に放熱部材が接続されていてもよい。
【0017】
電池10を構成する単位電池は、硫化物系固体電解質を含み、電池が破損した場合に硫化物系固体電解質が空気中の水分と反応してH
2Sガスを発生するおそれがあるものであれば特に限定されない。単位電池は、正極層、負極層、及び正極層と負極層の間に配置された固体電解質を含む。単位電池の正極層、負極層及び固体電解質は、それぞれ、正極層、負極層及び固体電解質としての機能を有するものであれば特に限定されず、当該技術分野で知られているものを用いることができる。正極層は正極集電体とその上に形成された正極合剤層とを含み、負極層は負極集電体とその上に形成された負極合剤層を含む。正極合剤層は、正極活物質及び固体電解質を含み、さらに必要に応じて、導電助剤(例えばカーボンブラック、カーボンファイバーなど)、バインダーなどを含んでもよい。負極合剤層は、負極活物質及び固体電解質を含み、さらに必要に応じて、導電助剤(例えばカーボンブラック、カーボンファイバーなど)、バインダーなどを含んでもよい。硫化物系固体電解質は、正極合剤中、負極合剤中、及び/又は正極と負極の間に配置される固体電解質中に存在することができる。各単位電池は、例えば全固体リチウムイオン電池であることができる。硫化物系固体電解質の例としては、少なくともリチウムと硫黄を含むもの、例えばLi
2S−P
2S
5、Li
2S−SiS
2、Li
2S−GeS
2、Li
2S−Al
2S
3、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
次に、本発明の第2の実施形態の電池破損検出装置を説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態の電池破損検出装置の一例を模式的に示す概略図であり、電池破損検出装置は電源装置に取り付けられた形態で示されている。電源装置1は、硫化物系固体電解質を含む1又は2個以上の電池10と電池10を収容する筐体12を含む電池パックと、筐体の吸気口14に接続された冷却用空気供給路20と、筐体12の排気口16に接続された排気路22とを含む。なお、
図2では、
図1と同様に、筐体12内に複数の電池10が図示されているが、筐体12内に収容される電池の個数は1であってもよい。供給路20の上流側に設置された送風機(例えばシロッコファン、ターボファンなど)(図示せず)により冷却用空気を強制的に供給路20に取り込むことができる。冷却用空気は供給路20に自然に取り込まれたものであってもよく、例えば当該電源装置を搭載した装置が車両などの移動体である場合、走行風を利用して供給路20に冷却用空気を自然に取り込むことができる。
【0019】
図2に示される第2の実施形態では、筐体12内に供給される冷却用空気中のH
2S濃度情報を取得する第1のH
2S濃度情報取得手段30は、
判定手段に接続された入出力手段、
地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報を格納したデータベース、
電源装置の現在位置を特定するための電源装置の現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段、及び
判定手段から受信した指令信号に従って、現在位置情報取得手段により取得された電源装置の現在位置情報に基づいて、データベースに格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報から電池破損検出装置の現在位置におけるH
2S濃度情報を特定するH
2S濃度特定手段、
を備える。
第2の実施形態では、先に説明した第1の実施形態と同様に、筐体12からの排気中のH
2S濃度情報を取得する第2のH
2S濃度情報取得手段40が排気路22に配置されている。上記の第1の実施形態と同様に、第2のH
2S濃度情報取得手段40は、H
2S濃度情報を取得し、取得したH
2S濃度情報を判定手段50に出力することができるものであればよく、特に限定されない。また、第2のH
2S濃度情報取得手段40が配置される位置は特に限定されない。第2のH
2S濃度情報取得手段40は、例えばH
2S濃度センサであることができる。
【0020】
上記地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報を格納したデータベースは、記憶手段、例えば固定記憶装置、例えばハードディスクなどや、着脱可能な記憶媒体、例えば光ディスク(CD−ROM、DVD−ROMなど)、フラッシュメモリデバイスなどの記憶装置に予め記憶されたものであることができる。第1のH
2S濃度情報取得手段30は、さらに、地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報を格納したデータベースを有する所定の外部サーバーと通信可能に接続された通信端末を備えることができる。第1のH
2S濃度情報取得手段30が、かかる通信端末を備えることによって、地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報はを、電源装置の外部に設けられた外部サーバーから、有線及び/又は無線通信網(例えば移動体通信網(例えばパーソナル・ハンディフォン・システム(PHS)通信網、携帯電話通信網など)、インターネット、有線及び無線LAN(Local Area Network)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)など)並びに放送システムを介してダウンロードして第1のH
2S濃度情報取得手段30のデータベース又は判定手段50に備えられた記憶手段に格納することができる。
【0021】
上記の現在位置情報取得手段は、電源装置の現在位置情報を取得することができる機能を有するものであればよく、例としては、リアルタイムに現在位置を把握することができるグローバル・ポジショニング・システム(GPS)端末やパーソナル・ハンディフォン・システム(PHS)端末などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の電池破損検出装置自体が、第1のH
2S濃度情報取得手段に現在位置情報取得手段を含んでいてもよいが、本発明の電池破損検出装置を備えた電源装置を搭載した装置がGPS端末を備えたナビゲーションシステムを搭載した移動体、例えば車両である場合に、現在位置情報取得手段として当該GPS端末を利用することができる。H
2S濃度情報取得手段としてH
2S濃度センサを2基使用する場合と比べて、H
2S濃度情報取得手段としてH
2S濃度センサを1基使用する場合には、H
2S濃度センサの個数が減る分だけコストを低減することができる。
【0022】
次に、H
2S濃度特定手段によって、現在位置情報取得手段により取得された現在位置情報に基づいて、データベースに格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報から電源装置の現在位置におけるH
2S濃度情報が検索され特定される。
【0023】
電源装置の現在位置における特定されたH
2S濃度情報は、第1のH
2S濃度情報取得手段の入出力手段により判定手段50に出力される。判定手段50は、上記第1の実施形態について説明したように、第1のH
2S濃度情報取得手段により取得された第1のH
2S濃度情報と第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度情報とを比較することにより電池からのH
2Sの漏れの有無を検知し、当該検知結果に基づいて前記電池のうちの少なくとも1個の電池が破損しているか否かを判定する。例えば、(a)第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度から電源装置の現在位置におけるH
2S濃度を差し引いた差分値が現在位置に対して選択された所定の閾値を超える場合又は(b)第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度から電源装置の現在位置に対して選択されたH
2S濃度閾値を差し引いた差分値が0を超える場合には上記1又は2個以上の電池からのH
2Sの漏れがあると判定し、(c)第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度から電源装置の現在位置におけるH
2S濃度を差し引いた差分値が所定の閾値以下である場合又は(d)第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度から電源装置の現在位置に対して選択されたH
2S濃度閾値を差し引いた差分値が0以下である場合には上記1又は2個以上の電池からのH
2Sの漏れがないと判定する。所定の閾値は、本発明の電池破損検出装置に外付け又は内蔵された記憶手段に予め記憶されたものであることができ、例えば上記のデータベースに格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報とともに、固定記憶装置、例えばハードディスクなどや、着脱可能な記憶媒体、例えば光ディスク(CD−ROM、DVD−ROMなど)、フラッシュメモリデバイスなどの記憶装置に予め記憶されたものであることができる。
【0024】
第2の実施形態において、判定手段50は、第1の実施形態について先に説明したように、中央演算処理装置(CPU)と、リードオンリメモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などの記憶装置及び入出力インターフェース等を備えてなることができ、CPUは、制御プログラムに従って、第2のH
2S濃度から第1のH
2S濃度を差し引いた濃度差分値を算出し、算出した濃度差分値を記憶装置に予め記憶された所定の閾値と比較して上記1又は2個以上の電池のうちの少なくとも1個の電池が破損しているか否かを判定する処理を行うことができる。第2の実施形態の電池破損検出装置には、さらに、上記第1の実施形態について説明したように、判定手段50による判定結果に基づいた報知を行うための報知手段(図示せず)が外付け又は内蔵されていてもよい。
【0025】
本発明の電池破損検出装置は、冷却用空気中のH
2S濃度情報を取得する第1のH
2S濃度情報取得手段として、
(i)H
2S濃度センサと、
(ii)判定手段に接続された入出力手段、地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報を格納したデータベース、電源装置の現在位置を特定するための電源装置の現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段、及び判定手段から受信した指令信号に従って現在位置情報取得手段により取得された電源装置の現在位置情報に基づいて、データベースに格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報から電源装置の現在位置情報に関連するH
2S濃度情報を検索し特定するH
2S濃度特定手段を含むH
2S濃度情報取得手段(以下、「地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報データベースに基づくH
2S濃度情報取得手段」という)、
の両方を備えてもよい。本発明の電池破損検出装置は、冷却用空気中のH
2S濃度情報を取得する第1のH
2S濃度情報取得手段として、(i)H
2S濃度センサと(ii)地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報データベースに基づくH
2S濃度情報取得手段の両方を含む場合、必要に応じて、2基のH
2S濃度センサにより取得されたH
2S濃度情報の比較と、H
2S濃度センサと地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報データベースに基づくH
2S濃度情報取得手段とにより取得されたH
2S濃度情報の比較を選択することができる。
【0026】
図3は、本発明の電池破損検出装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図3において、マイクロコンピュータ500は、判定手段として構成された制御回路510を有する。制御回路510は、入出力手段520と、CPU530と、ROM540と、RAM550とを有し、これらは双方向バス560により互いに接続されている。
図3に例示される構成では、マイクロコンピュータ500は、さらに、第1及び第2のH
2S濃度情報取得手段により出力された濃度情報などを経時的に記憶することのできる記憶手段570を有する。ROM540は制御プログラムを記憶しており、CPU530は制御プログラムに基づいて下記のごとく信号の処理を行う。マイクロコンピュータ500は、第1のH
2S濃度情報取得手段30及び第2のH
2S濃度情報取得手段40に指令信号を出力する。第1のH
2S濃度情報取得手段30及び第2のH
2S濃度情報取得手段40は、それぞれ、マイクロコンピュータ500からの指令信号に応じて取得したH
2S濃度情報をマイクロコンピュータ500に送信するように構成されている。
図4に示すフローチャートを参照して後に詳細に説明するように、マイクロコンピュータ500は、電池からの硫化水素の漏れの有無を検知し、当該検知結果に基づいて電池が破損しているか否かを判定した場合に、報知信号を発信するように構成されている。なお、判定手段を制御回路510により例示したが、判定手段は、例示した構成に限定されない。
【0027】
次に、
図3に例示した実施形態における電池破損検出の処理の流れの一例を、
図4のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、電池破損検出装置の動作中に判定手段が繰り返し実行する。なお、このフローチャートに示す電池破損検出処理の例では、電池からの硫化水素の漏れの有無を検知することは、第2のH
2S濃度情報取得手段40により取得された第2のH
2S濃度から第1のH
2S濃度情報取得手段30により取得された第2のH
2S濃度を差し引いた差分値を算出し、算出された差分値を所定の閾値と比較して、当該差分値が所定の閾値を超える場合には電池からの硫化水素の漏れがあると判定し、前記濃度差分値が所定の閾値以下である場合には電池からの硫化水素の漏れがないと判定することにより行われる。
【0028】
電池破損検出処理では、まず、CPUが、第1のH
2S濃度情報取得手段30により取得された第1のH
2S濃度C1及び第2のH
2S濃度情報取得手段40により取得された第2のH
2S濃度C2を読み取る(ステップS101)。
【0029】
CPUは、第2のH
2S濃度C2から第1のH
2S濃度C1を差し引いた濃度差分値C3=C2−C1を算出する(ステップS102)。次に、ステップS102において算出された差分値C3が所定の閾値Cを超えるか否かを判定する(ステップS103)。差分値C3が所定の閾値Cを超える場合には、電池から硫化水素が漏れていると判定し、差分値C3が所定の閾値C以下である場合には電池からの硫化水素の漏れがないと判定する。冷却用空気中のH
2S濃度情報を取得する第1のH
2S濃度情報取得手段30が地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報データベースに基づくH
2S濃度情報取得手段である場合には、例えば、(a)第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度C2から電源装置の現在位置に対して選択されたH
2S濃度C1を差し引いた差分値C3が所定の閾値を超える場合又は(b)第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度から電源装置の現在位置に対して選択されたH
2S濃度閾値を差し引いた差分値が0を超える場合には硫化水素の漏れがあると判定し、(c)第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度C2から電源装置の現在位置におけるH
2S濃度C1を差し引いた差分値が所定の閾値以下である場合又は(d)第2のH
2S濃度情報取得手段により取得された第2のH
2S濃度から電源装置の現在位置に対して選択されたH
2S濃度閾値を差し引いた差分値が0以下である場合には硫化水素の漏れがないと判定する。
【0030】
電池からの硫化水素の漏れが有ると判定された場合には、電池が破損していると判定する(ステップS104)、電池からの硫化水素の漏れが無いと判定された場合には、電池は破損していないと判定する(ステップS105)。ステップ104において電池が破損していると判定された場合には、CPUは、報知信号を発信し(S106)、電池破損検出処理を終了する。ステップS105において電池が破損していないと判定された場合には、上記のS101〜S103の処理を繰り返す。
【0031】
本発明の電池破損検出装置を備えた電源装置が、移動体、例えば車両などに搭載された場合には、第1のH
2S濃度情報取得手段が、車両の外部に設置された所定の外部サーバーと通信可能な通信端末を備えることによって、外部サーバーのデータベースに格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報を、外部サーバーから、無線通信網(例えば移動体通信網(例えばパーソナル・ハンディフォン・システム(PHS)通信網、携帯電話通信網など)、インターネット、無線LAN、WiMAXなど)を介してダウンロードすることができる。
【0032】
移動体、例えば車両が、本発明の電池破損検出装置を備えた電源装置を備える場合、電源装置の現在位置が車両の現在位置に対応するとみなすことができる。従って、電源装置の現在位置情報を車両の現在位置情報として使用することができる。車両の現在位置における空気中のH
2S濃度情報を外部サーバーから第1のH
2S濃度情報取得手段30により逐次取得し更新することができるように、外部サーバーを構成することができる。例えば、外部サーバーは、データベースと、第1のH
2S濃度情報取得手段30と通信可能な通信端末の他に、第1のH
2S濃度情報取得手段30からの要求に応じて、第1のH
2S濃度情報取得手段30から送信された車両の現在位置情報に基づいて、外部サーバーのデータベースに格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報から車両の現在位置におけるH
2S濃度情報を検索し特定するH
2S濃度情報特定手段を備えることができる。外部サーバー側のH
2S濃度情報特定手段により車両の現在位置におけるH
2S濃度情報が特定されると、その特定されたH
2S濃度情報は、そのH
2S濃度情報の特定に使用された現在位置情報と関連付けて、第1のH
2S濃度情報取得手段30に配信される。第1のH
2S濃度情報取得手段30は、外部サーバーから配信された現在位置情報と関連付けられたH
2S濃度情報を入出力手段により判定手段50に出力することができる。外部サーバーのデータベースに格納されたH
2S濃度情報は、地図情報に加えて時刻情報と関連付けられていてもよい。外部サーバーのデータベースに格納されたH
2S濃度情報が地図情報及び時刻情報と関連付けられている場合には、第1のH
2S濃度情報取得手段30は、車両の現在位置情報及び時刻情報に基づいて特定されたH
2S濃度情報を外部サーバーから取得することができる。例えば、現在時刻よりも前に、車両が現在走行している地点におけるH
2S濃度が予報されていた場合に、車両の現在位置情報と、地図情報及び時刻情報と関連付けられたH
2S濃度情報とに基づいて、第1のH
2S濃度情報取得手段30は、車両の現在位置及び現在時刻におけるH
2S濃度情報を外部サーバーから取得することができ、H
2S濃度情報を、電池が破損しているか否かの判定に使用することができる。
【0033】
次に、
図5を参照して、本発明に係る電池破損検出装置を備えた電源装置を備えた移動体の電池破損検出システムを例示する。
図5において、本発明の電池破損検出装置600a、600b、600cを備えた電源装置を搭載した複数の車両610a、610b、610cが模式的示されている。当該複数の車両の運転中に、各車両において電池破損検出装置の第2のH
2S濃度情報取得手段40(すなわち電源装置の排気路内を流れる排気中の硫化水素濃度情報を取得するH
2S濃度情報取得手段)(例えばH
2S濃度センサ)によりH
2S濃度を逐次測定することができる。
図5は、本発明の電池破損検出装置を備えた電源装置が車両に備えられる場合の一実施形態を示しており、この例示の実施形態では、第1のH
2S濃度情報取得手段30は、判定手段50に接続された入出力手段32、通信端末34、及び電源装置の現在位置を特定するための電源装置の現在位置情報を取得する現在位置情報取得手段36を備える。通信端末34は、外部サーバー630に無線通信網620を介して接続されている。
図5に例示される実施形態は、電池破損検出装置において使用されるH
2S濃度センサが1基であり、H
2S濃度センサが第2のH
2S濃度情報取得手段40として使用される場合を例示するものである。第1のH
2S濃度情報取得手段30は、第2のH
2S濃度情報取得手段40により各測定地点で測定されたH
2S濃度情報を判定手段50を介して受信し、現在位置情報取得手段34により取得された各測定地点についての位置情報とともに、通信端末34により、無線通信網620を介して外部サーバー630に逐次送信することができる。各測定地点で測定されたH
2S濃度情報及び各測定地点についての位置情報が、外部サーバー630に逐次アップロードされることによって、外部サーバー630のデータベース(図示せず)に格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報を逐次更新することができる。上記のように、外部サーバーのデータベースに格納されたH
2S濃度情報は、地図情報に加えて時刻情報と関連付けられていてもよい。外部サーバー630は、データベースに格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報から、車両610a、610b、610cにおける電池破損検出装置の第1のH
2S濃度情報取得手段より取得されるH
2S濃度又はH
2S濃度閾値を配信することができる。車両610a、610b、610cの電源装置に備えられた電池破損検出装置において、第1のH
2S濃度情報取得手段30は、電源装置の現在位置情報に対応して、電源装置の現在位置(すなわち、車両の現在位置)における最新のH
2S濃度又はH
2S濃度閾値を取得することができる。各車両における第2のH
2S濃度情報取得手段(例えばH
2S濃度センサ)によるH
2S濃度の測定は、各車両が各地を走行中及び停止中に逐次的又は断続的に(例えば、一定の距離及び/又は時間をおいて)実施することができる。電源装置の電池の破損をできるだけ速く検出するためには、第2のH
2S濃度情報取得手段によるH
2S濃度の測定を逐次的に実施することが好ましい。ほとんどの車両において、電源装置の電池が破損していないという前提に立てば、第2のH
2S濃度情報取得手段40としてH
2S濃度センサにより測定されたH
2S濃度は、測定時の測定地点での空気中のH
2S濃度とみなすことができる。第1のH
2S濃度情報取得手段30及び第2のH
2S濃度情報取得手段40が両方ともH
2S濃度センサである場合には、第1のH
2S濃度情報取得手段30としてのH
2S濃度センサにより測定された冷却用空気中のH
2S濃度を、H
2S濃度を測定した各測定時刻及び各測定地点の位置情報と関連付けて外部サーバーに必要に応じて又は逐次アップロードすることによって、外部サーバー630のデータベース(図示せず)に格納された地図情報と関連付けられたH
2S濃度情報を逐次更新することができる。従って、本発明の電池破損検出装置を備えた電源装置を搭載した車両が普及すればするほど、外部サーバー630のデータベースに蓄積されるH
2S濃度情報は、各地点での空気中のH
2S濃度情報をより正確かつよりリアルタイムに反映したものになる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示のためのものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されない。