(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車室の位置で車幅方向両側に立設されているピラーと、左右のピラー間で車両床部分を車幅方向に延びるクロスメンバと、前記クロスメンバとピラー間に設けられ、前記左右のピラーを車室内側から支える左右のガセットとを備える車両の床部構造であって、
前記ガセットと前記クロスメンバ間には、前記ガセットを前記クロスメンバとピラー間にセットするのに必要な隙間が形成されており、
前記ガセットとクロスメンバとには、車幅方向において前記隙間を介して互いに対向する荷重伝達面が設けられており、
前記ガセットは、連結部材と被連結部材とからなる連結機構を利用して前記ピラーと前記クロスメンバとにそれぞれ連結され、さらに、前記ガセットと前記クロスメンバとを連結する連結機構は、少なくとも前記隙間の寸法分だけ前記ガセットと前記クロスメンバとの車幅方向の相対移動を許容した状態で両者を連結することを特徴とする車両の床部構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アーク溶接によりガセット115の固定を行う場合、工場の組立ラインにおける流れ作業でガセット115の固定を行うことはできない。このため、工場の組立ラインから外れた場所で手作業によりガセット115の溶接を行うようになる。即ち、専用の工程が必要になり、コスト的に不利となる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、工場の流れ作業において、ガセットをクロスメンバとピラー間に固定できるようにするとともに、この固定構造により車両側面衝突時の荷重伝達効率が低下しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、車室の位置で車幅方向両側に立設されているピラーと、左右のピラー間で車両床部分を車幅方向に延びるクロスメンバと、前記クロスメンバとピラー間に設けられ、前記左右のピラーを車室内側から支える左右のガセットとを備える車両の床部構造であって、前記ガセットと前記クロスメンバ間には、前記ガセットを前記クロスメンバとピラー間にセットするのに必要な隙間が形成されており、前記ガセットとクロスメンバとには、車幅方向において前記隙間を介して互いに対向する荷重伝達面が設けられており、 前記ガセットは、連結部材と被連結部材とからなる連結機構を利用して前記ピラーと前記クロスメンバとにそれぞれ連結され、さらに、前記ガセットと前記クロスメンバとを連結する連結機構は、少なくとも前記隙間の寸法分だけ前記ガセットと前記クロスメンバとの車幅方向の相対移動を許容した状態で両者を連結することを特徴とする。
【0007】
本発明によると、ガセットとクロスメンバ間には隙間が形成されるため、ガセットを後工程でクロスメンバとピラー間にセットすることが可能になる。さらに、ガセットは連結部材と被連結部材とからなる連結機構、例えば、ボルト、ナット等を利用してピラーとクロスメンバとにそれぞれ連結される。このため、工場の流れ作業で、ガセットをクロスメンバとピラー間にセットし、ピラーとクロスメンバとにそれぞれ連結できるようになる。
また、ガセットとクロスメンバとを連結する連結機構は、少なくとも隙間の寸法分だけガセットとクロスメンバとの車幅方向の相対移動を許容した状態で両者を連結する。このため、例えば、側面衝突荷重が車両に加わった場合、連結機構に無理な力が加わらず、連結機構の破損を防止できるようになる。そして、連結機構が機能している状態で、ガセットとクロスメンバとが車幅方向に相対移動するため、ガセットの荷重伝達面とクロスメンバの荷重伝達面とが確実に当接するようになる。
したがって、側面衝突荷重がピラー、ガセットを介して確実にクロスメンバに伝わるようになる。これにより、ガセットとクロスメンバ間に隙間が形成されていても側面衝突時の荷重伝達効率が低下しない。
【0008】
請求項2の発明によると、ガセットとクロスメンバとを連結する連結機構は、前記ガセットとクロスメンバとのいずれか一方に設けられたボルト穴と、前記ガセットとクロスメンバとのいずれか他方に設けられ、車幅方向に長い長穴と、前記長穴と前記ボルト穴に通されるボルトと、そのボルトに螺合されるナットとから構成されていることを特徴とする。
このため、連結機構の構成が簡単で信頼性の高いものになる。
【0009】
請求項3の発明によると、ガセットの端部は、クロスメンバの端部を前面側、上面側、及び後面側の三方から覆っており、連結機構は、前面側と上面側とでガセットと前記クロスメンバとを連結する構成であることを特徴とする。
このように、見易く、作業し易い部分に連結機構が設けられているため、ガセットとクロスメンバとの連結作業の作業効率が向上する。
【0010】
請求項4の発明によると、ガセットは、クロスメンバに固定されるガセット内側部材と、そのガセット内側部材を前面側、上面側、及び後面側の三方から覆うガセット外側部材とから構成されており、ガセット内側部材に前記荷重伝達面が設けられており、前記ガセット外側部材が前記クロスメンバの端部を前面側、上面側、及び後面側の三方から覆った状態で、前記連結機構により前記クロスメンバの端部に連結されるように構成されていることを特徴とする。
このように、ガセットのガセット外側部材がガセット内側部材とクロスメンバの端部とを前面側、上面側、及び後面側の三方から覆っているため、側面衝突荷重を受けたときにガセット内側部材がガセット外側部材にガイドされて、そのガセット内側部材の荷重伝達面がクロスメンバの荷重伝達面に確実に当接するようになる。
【0011】
請求項5の発明によると、ガセット内側部材は、前板部と天井板部と後板部とにより断面略逆U字形に形成されており、前記ガセット内側部材の端部に蓋状のバルクが被せられて荷重伝達面が形成されていることを特徴とする。
このように、荷重伝達面を備えるバルクとガセット内側部材とが別部材であるため、ガセット内側部材の構成を簡単にできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、工場の流れ作業において、ガセットをクロスメンバとピラー間に固定できるようになる。また、この固定構造により車両側面衝突時の荷重伝達効率が低下することがない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態1]
以下、
図1から
図9に基づいて本発明の実施形態1に係る車両の床部構造について説明する。
本実施形態に係る車両の床部構造は、セダンタイプの乗用車における車室中央部分の床部構造である。
ここで、図中における前後左右及び上下は前記乗用車の前後左右及び上下に対応している。
【0015】
<乗用車Cの基本構造概略について>
乗用車Cにおける床部構造の詳細について説明する前に、乗用車Cの基本構造概略について説明する。
図1(A)に示すように、乗用車Cにおける車室の床部Fには、車幅方向両側位置(左右端)に乗用車Cのフレームを構成するロッカレール10が車両前後方向に延びるように設けられている。そして、車室のドア開口部DKの後側位置にセンタピラー20が立設されて、そのセンタピラー20の下端部がロッカレール10に連結されている。センタピラー20の外側は、
図1(A)、(B)に示すように、乗用車Cの外側意匠面を構成するボディサイドパネル15によって覆われている。そして、車室のドア開口部DKの周縁に位置するボディサイドパネル15の窪み部15kに、
図1(B)に示すように、サイドドアDrが収まるように構成されている。
左右のセンタピラー20間には、
図1(A)に示すように、車室の床部Fを車幅方向に延びるクロスメンバ30が設けられており、そのクロスメンバ30と左右のセンタピラー20間に各センタピラー20を車室内側から支える左右のガセット40が設けられている。
ここで、左右のセンタピラー20、左右のガセット40は左右対称で等しい構成のため、以下、代表して右側のセンタピラー20とガセット40について説明することにする。
【0016】
<センタピラー20について>
センタピラー20は、
図1(B)、
図2に示すように、インナピラー23とピラーリインフォースメント25とから構成されている。インナピラー23の前端縁と後端縁とにはそれぞれフランジ部23fが形成されている。また、ピラーリインフォースメント25の前端縁と後端縁とにも同じくフランジ部25fが形成されている。そして、インナピラー23のフランジ部23fとピラーリインフォースメント25のフランジ部25fが合わせられて溶接されることによりセンタピラー20が筒状に形成される。さらに、センタピラー20の前側のフランジ部23f,25fには、
図1(B)に示すように、ボディサイドパネル15の窪み部15kの端縁に形成されたフランジ部15fが合わせられて溶接により固定される。
センタピラー20を構成するにおけるインナピラー23の下端部の側壁面23wには、
図1(B)、
図3等に示すように、ガセット40(後記する)が連結されている。また、インナピラー23の裏側面23rには、
図1(B)、
図2に示すように、ガセット40の延長線上の位置に衝撃吸収用の第2バルク24が固定されている。また、ピラーリインフォースメント25の外壁面25wには、ガセット40、及び第2バルク24の延長線上の位置に同じく衝撃吸収用の第1バルク27が固定されている。
【0017】
<クロスメンバ30について>
クロスメンバ30は、車室の中央部で車幅方向に延びて車室の床部Fを補強するフレームである。クロスメンバ30は、
図3、
図4に示すように、ベースメンバ32と、内側メンバ34と、外側メンバ35とから構成されている。ベースメンバ32は、
図4、
図9(断面図)に示すように、前板部32fと天井板部32uとにより断面略逆L字形に成形されており、車室の床部F(
図9の縦断面図参照)のシート支持部前面Ffと上面Fuとの角部を覆った状態で、その床部Fに固定されている。
内側メンバ34は、
図4、
図9に示すように、前板部34f、天井板部34u、及び後板部34bにより断面略逆U字形をした細幅の箱形に形成されており、前板部34fの下端縁がベースメンバ32の前板部32fの上部に溶接等により固定されている。内側メンバ34の後板部34bには下端縁にフランジ部34xが折り曲げ形成されており、そのフランジ部34xが、
図9に示すように、ベースメンバ32の天井板部32uに溶接等により固定されている。
【0018】
内側メンバ34の右端部には、
図4に示すように、前板部34fの所定位置に二個のボルト穴342が車幅方向に並んで形成されており、天井板部34uの所定位置に一個のボルト穴344が形成されている。同様に、内側メンバ34の左端部にも、前板部34fに二個、天井板部34uに一個のボルト穴342,344が形成されている。前記ボルト穴342,344は、左右のガセット40のガセット外側部材47(後記する)をボルトB止めする際に使用される穴である。内側メンバ34(前板部34f,天井板部34u)の内側には、
図8、
図9に示すように、各々のボルト穴342,344の位置にボルトBが螺合されるナットNが溶接等により固定されている。なお、ボルト穴344の位置のナットNは図示省略されている。
また、内側メンバ34の左右端部は、
図8の平断面図に示すように、前板部34fの端部と後板部34bの端部とが直角に折り曲げられて合わせられることで開口部が塞がれて、荷重伝達面34pが形成されている。
外側メンバ35は、内側メンバ34を外側から覆って補強する部材であり、
図4、
図9に示すように、前板部35f、天井板部35u、及び後板部35bにより断面略逆U字形をした細幅の箱形に形成されている。そして、外側メンバ35の前板部35fと天井板部35uとに、左右のガセット40のガセット外側部材47をボルトB止めするためのボルト穴352,354が内側メンバ34のボルト穴342,344とそれぞれ重なるように形成されている。
外側メンバ35は、内側メンバ34に被せられた状態で所定位置が内側メンバ34に溶接等により固定されている。
【0019】
<ガセット40について>
ガセット40は、センタピラー20を車室内側から支えるとともに、車両側面衝突時の衝突荷重をクロスメンバ30に伝達するための部材である。ガセット40は、
図5、
図6に示すように、ガセット内側部材43とガセット外側部材47とから構成されている。
ガセット内側部材43は、
図5に示すように、前板部43f、天井板部43u、及び後板部43bにより断面略逆U字形をした細幅の箱形に形成されている。ガセット内側部材43は、
図7に示すように、天井板部43uが水平になるようにセンタピラー20とクロスメンバ30間にセットされる。ここで、ガセット内側部材43の車幅方向における長さ寸法は、
図7に示すように、センタピラー20の側壁面23wからクロスメンバ30の荷重伝達面34pまでの距離よりも小さく設定されている。
ガセット内側部材43の前板部43fは、
図5等に示すように、天井板部43uの位置(上端位置)から下端位置までの高さ寸法がセンタピラー20側で小さく、クロスメンバ30側で大きくなるように形成されている。これに対し、ガセット内側部材43の後板部43bは、車幅方向においてほぼ等しい高さ寸法であり、前板部43fのセンタピラー20側の高さ寸法にほぼ等しい値に設定されている。
【0020】
ガセット内側部材43の前板部43fには、
図5に示すように、クロスメンバ30側の下端位置にフランジ部430が設けられており、そのフランジ部430に二個のボルト穴432が形成されている。前板部43fのフランジ部430のボルト穴432は、
図3に示すクロスメンバ30のベースメンバ32のボルト穴323に合わせられて、クロスメンバ30のベースメンバ32にボルト止めされるように構成されている。ここで、ガセット内側部材43の前板部43fのボルト穴432は前記ボルトに対して十分大径に形成されており、ガセット内側部材43が側面衝突荷重を受けたときに、クロスメンバ30のベースメンバ32に対してボルト穴432と前記ボルトとの径寸法差分だけ移動可能に構成されている。
また、ガセット内側部材43のクロスメンバ30側の端部には、
図5に示すように、ガセット内側部材43の端部開口を塞ぐように蓋状のバルク45(以下、蓋状バルク45という)が溶接等により固定されている。
【0021】
蓋状バルク45は、ガセット内側部材43に加わった側面衝突荷重をクロスメンバ30の内側メンバ34の荷重伝達面34pに伝えるための部材である。蓋状バルク45は、ガセット内側部材43の端部開口を塞ぐバルク本体部45pと、バルク本体部45pに対して直角に折り曲げられて、ガセット内側部材43の前板部43f、天井板部43u、及び後板部43bにそれぞれ溶接されるフランジ部45f,45u,45bとから構成されている。そして、蓋状バルク45のバルク本体部45pがクロスメンバ30(内側メンバ34)の荷重伝達面34pとほぼ等しい形状に形成されている。
ガセット内側部材43に蓋状バルク45が固定された状態におけるガセット内側部材43等の車幅方向における長さ寸法は、
図7に示すように、センタピラー20の側壁面23wからクロスメンバ30の荷重伝達面34pまでの距離よりも小さく設定されている。このため、ガセット内側部材43等がセンタピラー20とクロスメンバ30間にセットされた状態で、ガセット内側部材43等のバルク本体部45pとクロスメンバ30(内側メンバ34)の荷重伝達面34pとが対向し、両者45p,34p間には隙間Tが形成されるようになる。
即ち、ガセット内側部材43等のバルク本体部45pが本発明のガセット内側部材の荷重伝達面に相当する。
【0022】
ガセット内側部材43の上部と蓋状バルク45とは、
図6に示すように、ガセット外側部材47によって覆われている。
ガセット外側部材47は、
図7に示すように、センタピラー20側が高くなるように、そのセンタピラー20とクロスメンバ30間に斜めに掛け渡されて、センタピラー20の倒れ防止を図る部材である。ガセット外側部材47は、
図5に示すように、前板部47f、天井板部47u、及び後板部47bにより断面略逆U字形をした細幅の箱形に形成されており、ガセット内側部材43よりも車幅方向の長さ寸法が大きく設定されている。そして、ガセット外側部材47は、センタピラー20側の端部(右側端部)がガセット内側部材43の右側端部に合わせられた状態で、
図6に示すように、ガセット内側部材43の上部と蓋状バルク45とに被せられ、ガセット内側部材43に溶接等(
図6の符号Y参照)により固定される。これにより、ガセット外側部材47の左端部(クロスメンバ30側端部)は、ガセット内側部材43の蓋状バルク45に対して一定寸法だけ左側に張り出すようになる。そして、ガセット外側部材47の左端部(クロスメンバ30側端部)が、
図7〜
図9に示すように、クロスメンバ30の外側メンバ35に被せられる。
【0023】
ガセット外側部材47の左端部(クロスメンバ30側端部)の前板部47fには、
図6等に示すように、クロスメンバ30(外側メンバ35、内側メンバ34)の前板部35f,34fのボルト穴352,342に対応する位置に二個の長穴472が形成されている。また、ガセット外側部材47の左端部の天井板部47uには、同じく外側メンバ35、内側メンバ34の天井板部35u,34uのボルト穴354,344に対応する位置に長穴474が形成されている。
ガセット外側部材47の長穴472,474は、
図6、
図7に示すように、車幅方向に長く形成されており、それらの長穴472,474の長さ寸法が前記長穴472,474に通されるボルトBの径寸法よりも所定寸法Rだけ大きく設定されている。このため、前記長穴472,474を利用してガセット外側部材47がクロスメンバ30にボルトB止めされた状態で、ガセット外側部材47はクロスメンバ30に対して所定寸法Rだけ車幅方向に相対移動が可能になる。
ここで、所定寸法R(以下、長穴余裕寸法Rという)は、ガセット内側部材43等のバルク本体部45pとクロスメンバ30の荷重伝達面34p間の隙間寸法T(
図7参照)よりも十分大きな値に設定されている。
【0024】
ガセット外側部材47のセンタピラー20側の端部(右端部)には、
図6等に示すように、前板部47f、天井板部47u、及び後板部47bの端部がそれぞれ外側に約90°折り曲げられることで三個のフランジ部475が形成されている。そして、ガセット外側部材47の各フランジ部475にボルト穴476が形成されている。
また、センタピラー20のインナピラー23には、
図3、
図7に示すように、ガセット外側部材47の各フランジ部475のボルト穴476に対応する位置にボルト穴236が形成されている。そして、前記インナピラー23の裏側面23rには、
図7に示すように、ボルト穴236の位置にナットNが溶接等により固定されている。
【0025】
<ガセット40の固定について>
次に、上記構成のガセット40をセンタピラー20とクロスメンバ30間にセットして固定する手順について説明する。
ここで、ガセット40を固定する際には、センタピラー20とクロスメンバ30とは乗用車Cのボディに予め溶接等により固定されている。また、ガセット40を構成するガセット内側部材43の端部に蓋状バルク45が溶接等により固定され、さらに、そのガセット内側部材43の上部、及び蓋状バルク45にガセット外側部材47が被せられて溶接等により固定されている。
この状態で、ガセット40をセンタピラー20とクロスメンバ30間にセットする。即ち、ガセット40のガセット外側部材47の端部をクロスメンバ30の外側メンバ35の端部に被せ、ガセット内側部材43、及び蓋状バルク45をセンタピラー20の側壁面23wとクロスメンバ30の荷重伝達面34pとの間にセットする。そして、
図7に示すように、ガセット外側部材47の長穴472,474をクロスメンバ30の外側メンバ35(内側メンバ34)のボルト穴352(342),354(344)に合わせる。また、ガセット外側部材47の各フランジ部475のボルト穴476をセンタピラー20(インナピラー23)のボルト穴236に合わせる。さらに、
図3に示すように、ガセット40のガセット内側部材43の下端部に形成されたフランジ部430のボルト穴432をクロスメンバ30のベースメンバ32のボルト穴323に合わせるようにする。
【0026】
前述のように、ガセット内側部材43、及び蓋状バルク45(ガセット内側部材43等)をセンタピラー20の側壁面23wとクロスメンバ30の荷重伝達面34pとの間にセットした状態で、ガセット内側部材43等のバルク本体部45pとクロスメンバ30の荷重伝達面34pとの間には隙間Tが形成されるため、ガセット40の位置合わせが容易になる。
このようにして、ガセット40をセンタピラー20とクロスメンバ30間にセットした後、ガセット40(ガセット内側部材43)のフランジ部430をクロスメンバ30のベースメンバ32にボルト穴432,323を利用してボルトB止めする(
図3参照)。また、ガセット40(ガセット外側部材47)の各フランジ部475を、
図7に示すように、センタピラー20(インナピラー23)にボルト穴476,236を利用してボルトB止めする。さらに、ガセット40のガセット外側部材47の端部を、
図7〜
図9に示すように、クロスメンバ30の外側メンバ35の端部に長穴472,474、及びボルト穴352(342),354(344)を利用してボルトB止めする。
この状態で、ガセット40の固定が完了する。
【0027】
<側面衝突時のガセット40の動作について>
次に、乗用車Cが側面衝突された場合のガセット40の動作について説明する。
乗用車Cが側面衝突されると、衝突荷重はセンタピラー20の第1バルク27、第2バルク24である程度吸収された後、ガセット40に加わるようになる。ガセット40に対してセンタピラー20を介して衝突荷重が加わると、ガセット40のガセット外側部材47とガセット内側部材43とが同時に室内側に押圧される。前述のように、ガセット外側部材47の端部は長穴472,474を介してクロスメンバ30の端部にボルトB止めされているため、ガセット外側部材47はクロスメンバ30に対して比較的容易に室内側に移動する。ここで、長穴余裕寸法Rは、ガセット内側部材43等のバルク本体部45pとクロスメンバ30の荷重伝達面34p間の隙間寸法Tよりも十分大きく設定されている。このため、ガセット40に対して衝突荷重が加わると、ガセット内側部材43等のバルク本体部45pがクロスメンバ30の荷重伝達面34pに当接した後で、ガセット外側部材47の長穴472,474の端部がクロスメンバ30のボルトBの側面に当接するようになる。
このため、ガセット40に対して衝突荷重が加わったときに、ボルトBに対して無理な力が加わらず、ボルトBの切断等が防止できる。そして、ボルトB等が機能している状態で、前記衝突荷重がガセット40からクロスメンバ30に効率的に加わるようになる。
【0028】
<本実施形態に係る乗用車Cの床部構造の長所について>
本実施形態に係る乗用車Cの床部構造によると、ガセット40(ガセット内側部材43等)のバルク本体部45pとクロスメンバ30の荷重伝達面34p間には隙間Tが形成されるため、ガセット40を後工程でクロスメンバ30とセンタピラー20間にセットすることが可能になる。さらに、ガセット40のガセット外側部材47は、ボルトB、ナットNを利用してセンタピラー20とクロスメンバ30とにそれぞれ連結される。このため、工場の流れ作業で、ガセット40をクロスメンバ30とセンタピラー20間にセットし、センタピラー20とクロスメンバ30とにそれぞれ連結できるようになる。
また、ガセット40とクロスメンバ30とは長穴472,474とボルトB、ナットN等を利用して連結される構成で、少なくとも前記隙間Tの寸法分だけガセット40(ガセット外側部材47)とクロスメンバ30との車幅方向の相対移動を許容した状態で両者47,30を連結する。
このため、例えば、側面衝突荷重が車両に加わった場合、ボルトB等に無理な力が加わらず、ボルトBの破損を防止できるようになる。そして、ボルトB等が機能している状態で、ガセット40とクロスメンバ30とが車幅方向に相対移動するため、ガセット40のバルク本体部45p(荷重伝達面)とクロスメンバ30の荷重伝達面34pとが確実に当接するようになる。
したがって、側面衝突荷重がセンタピラー20、ガセット40を介して確実にクロスメンバ30に伝わるようになる。これにより、ガセット40とクロスメンバ30間に隙間Tが形成されていても側面衝突時の荷重伝達効率が低下することがない。
【0029】
また、ガセット40(ガセット外側部材47)の端部は、クロスメンバ30の端部を前面側、上面側、及び後面側の三方から覆えるように構成されており、ボルトB等による連結機構は、前面側と上面側とでガセット外側部材47とクロスメンバ30とを連結する構成である。このように、見易く、作業し易い部分にボルトB等による連結機構が設けられているため、ガセット40とクロスメンバ30との連結作業の作業効率が向上する。
また、ガセット40のガセット外側部材47がガセット内側部材43とクロスメンバ30の端部とを前面側、上面側、及び後面側の三方から覆っているため、側面衝突荷重を受けたときにガセット内側部材43がガセット外側部材47にガイドされて、そのガセット内側部材43のバルク本体部45p(荷重伝達面)がクロスメンバ30の荷重伝達面34pに確実に当接するようになる。
また、バルク本体部45p(荷重伝達面)を備える蓋状バルク45とガセット内側部材43とが別部材であるため、ガセット内側部材43の構成を簡単にできる。
【0030】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、ガセット40のガセット内側部材43の端部開口を蓋状バルク45で塞ぐことで、荷重伝達面(バルク本体部45p)を形成する例を示した。しかし、例えば、ガセット内側部材43の前板部43fと後板部43bとの端部を約90°内側に折り曲げて互いに重ね、荷重伝達面を構成することも可能である。
また、本実施形態では、ガセット40をガセット内側部材43とガセット外側部材47とから構成する例を示した。しかし、ガセット内側部材43とガセット外側部材47とを一体化することも可能である。