特許第6040910号(P6040910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6040910半導体素子、および、半導体素子の有する端子への半田の付着方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040910
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】半導体素子、および、半導体素子の有する端子への半田の付着方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20161128BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20161128BHJP
   B23K 1/20 20060101ALI20161128BHJP
   B23K 101/40 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   H01L23/50 E
   H01L23/50 N
   B23K1/00 330E
   B23K1/00 330D
   B23K1/20 J
   B23K101:40
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-221480(P2013-221480)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-82649(P2015-82649A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】林 敬昌
(72)【発明者】
【氏名】堀井 翔
(72)【発明者】
【氏名】中倉 剛
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−275155(JP,A)
【文献】 特開2004−259747(JP,A)
【文献】 特開昭62−234311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/50
B23K 1/00
B23K 1/20
B23K 101/40
H01L 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部(10)と、前記本体部に取り付け固定された複数の端子(20)と、を有し、複数の前記端子それぞれが溶融した半田(40)の蓄えられた半田浴(150)に浸漬された後、前記半田浴から引き上げられることで前記端子に溶融した前記半田が付着される半導体素子であって、
前記端子は、前記本体部から離れる方向に延びた足部(21)と、前記足部の端部に設けられ、前記半田浴に浸漬される接続部(22)と、を有し、
複数の前記端子それぞれの有する足部は前記半田浴に近づく方向に延びた形状を成し、
複数の前記端子それぞれの有する足部の少なくとも1つは他の前記端子の有する足部とは長さが異なっており、
前記接続部は一部が切り欠くことでギャップを有する環状を成すことを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記ギャップは、前記半田浴に近づく方向に直交する横方向に位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記接続部は前記ギャップを介して対向する2つの端面(22a,22b)を有し、
2つの前記端面の内の少なくとも一方は、前記接続部の内面によって囲まれた領域の中心(CP)から外に向かうにしたがって、前記接続部の中心の周り方向に沿う前記ギャップの幅が広がるように傾斜していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記接続部は前記ギャップを介して対向する2つの端面(22a,22b)を有し、
前記接続部の内面(22c)は、2つの前記端面の一方と前記半田浴に最も近い底線(BL)とを滑らかに連結する第1内面(22e)と、2つの前記端面の他方と前記底線とを滑らかに連結する第2内面(22f)と、を有し、
前記第1内面は、2つの前記端面の一方から前記底線に向かって、連続的に前記底線に近づく面形状を成し、
前記第2内面は、2つの前記端面の他方から前記底線に向かって、連続的に前記底線に近づく面形状を成していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の半導体素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の前記半導体素子(100)の端子(20)に溶融した前記半田(40)を付着させる付着方法であって、
複数の前記端子を溶融した半田の蓄えられた前記半田浴(150)に近づけ、複数の前記端子それぞれの接続部(22)を前記半田浴に浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程後、複数の前記端子それぞれを前記半田浴から引き上げる引き上げ工程と、
前記引き上げ工程後、前記半田の付着した前記接続部を前記半田浴の液面上に所定時間留まらせることで、前記接続部の内面(22c)に表面張力によって膜状に付着した前記半田を、前記ギャップを埋める前記半田が自重のために前記半田浴に流れ落ちようとする際に生じる流動、および、前記ギャップを埋める前記半田が自身の表面積を最小にしようとする際に生じる流動によって破壊し、余分な前記半田を前記半田浴に戻すことで前記接続部に付着する前記半田の厚さを調整する厚さ調整工程と、を有することを特徴とする付着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部と、本体部に取り付け固定された複数の端子と、を有する半導体素子、および、半導体素子の有する端子への半田の付着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、端子のリード部の上端部に保持部を一体形成し、保持部に電子部品素子を挿入接続した後、電子部品素子および保持部を樹脂によって覆った電子部品の製造方法が提案されている。なお、保持部への電子部品素子の挿入接続は、端子の保持部およびリード部に薄膜の半田膜を形成する半田めっき処理を施した後に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開S63−126255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように特許文献1に示される電子部品の製造方法では、保持部に半田膜を形成する。この半田膜を形成する方法として、保持部を半田浴に浸漬した後、半田浴から保持部を引き上げて余分な半田を流れ落とす方法が考えられる。この方法の場合、複数の端子それぞれのリード部の長さが異なると、各リード部それぞれに付着される半田の量が異なることとなる。そのために半田浴から端子を引き上げた際、リード部から保持部に向かって半田が流れ落ち、これによって保持部に余分な半田が付着される虞がある。仮に保持部が環状を成し、その環状の内環面によって囲まれた領域(以下、単に孔と示す)内に電子部品素子が挿入される場合、本来であれば貫通しているはずの上記した孔が半田によって埋められてしまう。したがって電子部品素子(外部端子)を孔に挿入することで外部端子と端子とを接続することが困難となる虞がある。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、外部端子と端子との接続が困難となることが抑制された半導体素子、および、半導体素子の有する端子への半田の付着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明は、本体部(10)と、本体部に取り付け固定された複数の端子(20)と、を有し、複数の端子それぞれが溶融した半田(40)の蓄えられた半田浴(150)に浸漬された後、半田浴から引き上げられることで端子に溶融した半田が付着される半導体素子であって、端子は、本体部から離れる方向に延びた足部(21)と、足部の端部に設けられ、半田浴に浸漬される接続部(22)と、を有し、複数の端子それぞれの有する足部は半田浴に近づく方向に延びた形状を成し、複数の端子それぞれの有する足部の少なくとも1つは他の端子の有する足部とは長さが異なっており、接続部は一部が切り欠くことでギャップを有する環状を成すことを特徴とする。
【0007】
接続部(22)がギャップを有さずに環状を成す場合、接続部(22)を半田浴(150)から引き上げた際、自身の内面(22c)に表面張力によって膜状に溶融した半田(40)が付着する。複数の足部(21)それぞれの長さが等しい場合、複数の足部(21)それぞれを半田浴(150)に浸漬させずに複数の接続部(22)だけを半田浴(150)に浸漬することができる。そのために端子(20)を半田浴(150)から引き上げた際、接続部(22)の内面(22c)に膜状に半田(40)が付着していたとしても、その膜に足部(21)に付着した半田(40)が流動することが抑制され、それによって膜の強度が高まることが抑制される。そのために膜状の半田(40)の自重による流動によって膜を壊すことができる。
【0008】
しかしながら半導体素子(100)を収納するケース(120)の形状や端子(20)と接続される外部端子(130)の配置などの設計上の理由から足部(21)の長さが異なる場合、少なくとも1つの足部(21)を半田浴(150)に浸漬させなくてはならず、足部(21)に付着する半田(40)の量が異なる。また複数の接続部(22)それぞれが半田浴(150)に浸漬される時間も異なることとなる。そのため接続部(22)を半田浴(150)から引き上げた際、接続部(22)に膜状に付着した半田(40)に、足部(21)に付着した半田(40)が流動し、それによって膜の強度が高まる。そして膜が自重による流動によって壊れる前に半田(40)が固まり、本来であれば貫通しているはずの接続部(22)の内面(22c)によって囲まれた領域(以下、単に孔と示す)が半田(40)によって埋められてしまう。したがって外部端子(130)を接続部(22)の孔に通すことで外部端子(130)と端子(20)とを接続することができなくなる。
【0009】
これに対して本発明では、接続部(22)は一部が切り欠くことでギャップを有する環状を成している。したがって、接続部(22)が半田浴(150)に浸漬された後に引き上げられた際、接続部(22)の内面(22c)に表面張力によって膜状に付着した半田(40)を、ギャップを埋める半田(40)が自重のために半田浴(150)に流れ落ちようとする際に生じる流動(以下、第1流動と示す)、および、ギャップを埋める半田(40)が自身の表面積を最小にしようとする際に生じる流動(以下、第2流動と示す)によって破壊することができる。これによって接続部(22)の孔が半田(40)によって埋められることが抑制され、外部端子(130)と端子(20)とを接続できなくなることが抑制される。更に言えば、上記した流動によって余分な半田(40)が半田浴(150)に戻されるので、接続部(22)に付着する半田(40)の厚さが調整される。
【0010】
ギャップは、半田浴に近づく方向に直交する横方向に位置する。これによれば、接続部(22)を半田浴(150)に浸漬させる際に、ギャップが半田浴(150)に対して対向する位置に設けられた構成とは異なり、第1流動と第2流動とが相殺し合うことが抑制される。第1流動は半田浴(150)に近づく方向に進み、第2流動は接続部(22)の中心に向かう方向に進む。上記した比較構成の場合、第1流動は半田浴(150)に近づく方向に進み、第2流動は半田浴(150)から遠ざかる方向に進む。そのために2つの流動が相殺し合う。これに対して上記構成の場合、第1流動は横方向に進み、第2流動は半田浴(150)に近づく方向に進む。そのために比較構成と比べて2つの流動が相殺し合うことが抑制され、両流動によって生じる応力によって膜が破壊される。この結果、接続部(22)の孔が半田(40)によって埋められることが抑制され、外部端子(130)と端子(20)とを接続できなくなることが抑制される。そして接続部(22)に付着する半田(40)の厚さが調整される。
【0011】
接続部はギャップを介して対向する2つの端面(22a,22b)を有し、2つの端面の内の少なくとも一方は、接続部の内面(22c)によって囲まれた領域の中心(CP)から外に向かうにしたがって、接続部の中心の周り方向に沿うギャップの幅が広がるように傾斜している。これによれば、2つの端面(22a,22b)の少なくとも一方が接続部(22)の中心(CP)から外に向かうにしたがって周り方向に沿うギャップの幅が狭まるように傾斜している構成と比べて、接続部(22)を半田浴(150)から引き上げた際、端面(22a,22b)と外面(22d)との成す2つのエッジ間にて生じる第2流動が促進され、膜が壊れやすくなる。この結果、接続部(22)の孔が半田(40)によって埋められることが抑制され、外部端子(130)と端子(20)とを接続できなくなることが抑制される。そして接続部(22)に付着する半田(40)の厚さが調整される。
【0012】
なお、特許請求の範囲に記載の請求項、および、課題を解決するための手段それぞれに記載の要素に括弧付きで符号をつけているが、この括弧付きの符号は実施形態に記載の各構成要素との対応関係を簡易的に示すためのものであり、実施形態に記載の要素そのものを必ずしも示しているわけではない。括弧付きの符号の記載は、いたずらに特許請求の範囲を狭めるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る半導体素子を含むECUの概略構成を示す斜視図である。
図2図1に示すECUの上面図である。
図3図2に示す端子の拡大図である。
図4】準備工程を示す概略図である。
図5】浸漬工程を示す概略図である。
図6】引き上げ工程を示す概略図である。
図7】端子を半田浴から第1距離引き上げた状態を示す平面図であり、(a)はx−y平面での状態、(b)はy−z平面での状態を示す。
図8】端子を半田浴から第2距離引き上げた状態を示す平面図であり、(a)はx−y平面での状態、(b)はy−z平面での状態を示す。
図9】端子を半田浴から第3距離引き上げた状態を示す平面図であり、(a)はx−y平面での状態、(b)はy−z平面での状態を示す。
図10】端子を半田浴から第4距離引き上げた状態を示す平面図であり、(a)はx−y平面での状態、(b)はy−z平面での状態を示す。
図11】端子を半田浴から第5距離引き上げた状態を示す平面図であり、(a)はx−y平面での状態、(b)はy−z平面での状態を示す。
図12】接続部の変形例を示す平面図である。
図13】接続部の変形例を示す平面図である。
図14】接続部の変形例を示す平面図である。
図15】接続部の変形例を示す平面図である。
図16】接続部の変形例を示す平面図である。
図17】接続部の変形例を示す平面図である。
図18】接続部の変形例を示す平面図である。
図19】接続部の変形例を示す平面図である。
図20】接続部の変形例を示す平面図である。
図21】接続部の変形例を示す平面図である。
図22】接続部の変形例を示す平面図である。
図23】接続部の変形例を示す平面図である。
図24】接続部の変形例を示す平面図である。
図25】接続部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をECUに適用した場合の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1図11に基づいて、本実施形態に係る半導体素子を説明する。構成を明示するために、図1ではケース120で囲まれた半導体素子100、ヒートシンク110、および、外部端子130を実線で示し、図1および図2では半田40を省略している。また図2では外部端子130および外部端子130と接続されない端子20を省略し、図3では足部21と接続部22との境界を一点鎖線で示している。そして図4図6では端子20への溶融した半田40の付着の説明に不要な要素を省略している。また、各図面において端子20に付着した半田40をハッチングで示している。特に図7図11では、端子20に表面張力などのために付着している半田40もハッチングで示している。
【0015】
以下においては互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、z方向と示す。x方向とy方向とによって規定される平面をx−y平面、y方向とz方向とによって規定される平面をy−z平面、z方向とx方向とによって規定される平面をz−x平面と示す。x方向が特許請求の範囲に記載の横方向に相当し、y方向が特許請求の範囲に記載の半田浴に近づく方向に沿う方向である。なお、後述する端子20に溶融した半田40を付着させる付着方法において、x方向は鉛直方向に沿い、y−z平面は水平方向に沿っている。
【0016】
図1に示すように、半導体素子100はECU200の構成要素の一つである。ECU200は上記した半導体素子100と、この半導体素子100にて生じる熱を放熱するヒートシンク110と、半導体素子100とヒートシンク110を収納するケース120と、を有する。半導体素子100は端子20を有しており、この端子20がモーター巻線から延びた外部端子130と半田40を介して接続されている。ECU200は半導体素子100を2つ有し、これら2つの半導体素子100それぞれがヒートシンク110と熱的に接続されている。
【0017】
半導体素子100は、本体部10と、本体部10に取り付け固定された複数の端子20と、を有する。図示しないが、本体部10はパワー素子が形成されたチップと、このチップを被覆保護する保護部と、を有する。端子20の一端がチップと電気的に接続され、保護部によって被覆保護されている。そして端子20の他端が保護部から外部に露出され、半田40を介して外部端子130と接続されている。保護部は直方形状を成し、面積の異なる3つの面を2つずつ有する。保護部における最も面積の大きい主面はx−z平面に沿い、ヒートシンク110と熱的に接続されている。そして保護部における最も面積の小さい端面はx−y平面に沿い、その端面から端子20が外部に露出されている。
【0018】
端子20における保護部から外部に露出された部位は、本体部10から離れる方向に延びた足部21と、足部21の端部に設けられ、半田浴に浸漬される接続部22と、を有する。図1に示すように足部21は屈曲してy−z平面にてL字形状を成している。そして図2に示すように足部21はy方向に延びた形状を成している。また図1および図2に示すようにケース120は円筒形状を成しており、複数の端子20それぞれの有する足部21はケース120の形状に応じた長さを有している。そのため複数の端子20それぞれの有する足部21の少なくとも1つは、他の端子20の有する足部21とはy方向の長さが異なっている。
【0019】
図3に示すように、接続部22は一部が切り欠くことでギャップを有する環状(フック形状)を成している。ギャップはx方向に位置し、接続部22はx方向に開口している。接続部22はギャップを介して対向する2つの端面22a,22bと、それら端面22a,22bそれぞれと連結される内面22cと、端面22a,22bそれぞれを介して内面22cと連結される外面22dと、を有する。上端面22aはz−x平面に沿う形状を成し、下端面22bは内面22cによって囲まれた領域(以下、単に孔と示す)から外に向かうにしたがってギャップの幅が広がるように傾斜した形状を成している。より詳しく言えば、下端面22bは孔の中心CP(図3に示す×印)から外に向かうにしたがって中心CP周りの方向に沿うギャップの幅が広がるように傾斜している。より図3の形態に即して表現すると、下端面22bは中心CPからx方向に沿って紙面左方に向かうにしたがってy方向に沿うギャップの幅が広がるように傾斜している。この構成により、下端面22bにおける外面22dとの連結端と上端面22aにおける外面22dとの連結端とのy方向におけるギャップの幅d1(外開口面の幅d1)は、下端面22bにおける内面22cとの連結端と上端面22aにおける内面22cとの連結端とのy方向におけるギャップの幅d2(内開口面の幅d2)よりも長くなっている。
【0020】
内面22cは、半田浴150に最も近い底線BL(図3に示す○印)によって第1内面22eと第2内面22fに分割されている。底線BLは足部21から最も遠くに位置し、z方向に沿っている。第1内面22eは上端面22aに連結され、上端面22aから底線BLに向かって連続的に近づく面形状を成している。そして第2内面22fは下端面22bに連結され、下端面22bから底線BLに向かって連続的に近づく面形状を成している。また第1内面22eはx方向において上端面22aと連続的に連結され、第2内面22fは下端面22bと不連続的に連結されている。
【0021】
次に、端子20に溶融した半田40を付着させる付着方法を図4図6に基づいて説明する。先ず図4に示すように、溶融した半田40の蓄えられた半田浴150の液面に対して複数の端子20それぞれの足部21の延びる方向が直交するように、半導体素子100を半田浴150の上方に配置させる。以上が準備工程である。
【0022】
準備工程後、図5に示すように複数の端子20を半田浴150に近づけ、複数の端子20それぞれの接続部22を半田浴150に浸漬する。この際、最も短い足部21への溶融した半田40の付着を回避しつつ、全ての接続部22を半田浴150に浸漬させる。以上が浸漬工程である。
【0023】
浸漬工程後、図6に示すように半田浴150に浸漬された全ての接続部22を半田浴150から引き上げる。こうすることで接続部22それぞれに溶融した半田40を付着させる。以上が引き上げ工程である。
【0024】
引き上げ工程後、半田40の付着した接続部22を半田浴150の液面上に所定時間留まらせる。こうすることで、接続部22の内面22cに表面張力によって膜状に付着した半田40を、半田40が自重のために半田浴150に流れ落ちようとする際に生じる流動、および、ギャップを埋める半田40が自身の表面積を最小にしようとする際に生じる流動によって破壊する。このように余分な半田40を半田浴150に戻すことで接続部22に付着する半田40の厚さを調整する。以上が厚さ調整工程である。
【0025】
図7図11に基づいて引き上げ工程と厚さ調整工程における半田40の流動を説明する。図7に示すように、端子20を半田浴150に浸漬した後に上端面22aが外部に露出されるように接続部22を半田浴150の液面から第1距離だけ引き上げる。この際、内面22cは半田浴150にあるので、接続部22の孔とギャップは半田40によって埋められている。
【0026】
次に図8に示すように下端面22bのすべてが外部に露出されるように接続部22を第2距離だけ引き上げる。この際、ギャップを埋める半田40が半田浴150に蓄えられた半田40から離される。ギャップを埋める半田40には、自重によって半田浴150に流れ落ちようとする力とともに、表面積(外部雰囲気との接触面積)を最小にしようする力が生じる。上記したようにギャップの幅は中心CPから外に向かうにしたがって広がっている。そのため、ギャップを埋める半田40は中心CPに向かって流動しようとする。換言すれば、ギャップを埋める半田40は外開口面から内開口面に向かって流動しようとする。この際、図8(a)に示すように、外開口面を閉塞する半田40の表面張力が切れ、ギャップを埋める半田40は内開口面に向かって流動する。
【0027】
次に図9に示すように接続部22のすべてが外部に露出されるように接続部22を第3距離だけ引き上げる。この際、上記した表面積を最小にしようとする半田40の流動とともに、孔を埋める半田40は自重によって半田浴150へと流れ落ちようと流動する。
【0028】
更に図10に示すように、接続部22を第4距離だけ引き上げる。第3距離から第4距離まで引き上げている際においても上記した流動が継続されるが、まだ余分な半田40が孔内にある。そのために接続部22の表面に付着した半田40の厚さは未だに不均一である。
【0029】
しかしながら図11に示すように、接続部22を第5距離まで引き上げて所定時間留まらせる。こうすることで孔内にある余分な半田40を上記した流動によって流れ落とし、接続部22の表面に付着した半田40の厚さを均一とする。
【0030】
次に、本実施形態に係る半導体素子100の作用効果を説明する。本実施形態で示した半導体素子100とは異なり、接続部22がギャップを有さずに環状を成す場合、接続部22を半田浴150から引き上げた際、自身の内面22cに表面張力によって膜状に溶融した半田40が付着する。この構成において複数の足部21それぞれの長さが等しい場合、複数の足部21それぞれを半田浴150に浸漬させずに複数の接続部22だけを半田浴150に浸漬することができる。そのために端子20を半田浴150から引き上げた際、接続部22の内面22cに膜状に半田40が付着していたとしても、その膜に足部21に付着した半田40が流動することが抑制され、それによって膜の強度が高まることが抑制される。そのために膜状の半田40の自重による流動によって膜を壊すことができる。
【0031】
しかしながら半導体素子100を収納するケース120の形状や外部端子130の配置などの設計上の理由から足部21の長さが異なる場合、少なくとも1つの足部21を半田浴150に浸漬させなくてはならず、足部21に付着する半田40の量が異なる。また複数の接続部22それぞれが半田浴150に浸漬される時間も異なることとなる。そのため接続部22を半田浴150から引き上げた際、接続部22に膜状に付着した半田40に、足部21に付着した半田40が流動し、それによって膜の強度が高まる。そして膜が自重による流動によって壊れる前に半田40が固まり、本来であれば貫通しているはずの接続部22の孔が半田40によって埋められてしまう。したがって外部端子130を接続部22の孔に通すことで外部端子130と端子20とを接続することができなくなる。
【0032】
これに対して本実施形態では、接続部22は一部が切り欠くことでギャップを有する環状を成している。したがって、接続部22が半田浴150に浸漬された後に引き上げられた際、接続部22の内面22cに表面張力によって膜状に付着した半田40を、ギャップを埋める半田40が自重のために半田浴150に流れ落ちようとする際に生じる流動(以下、第1流動と示す)、および、ギャップを埋める半田40が自身の表面積を最小にしようとする際に生じる流動(以下、第2流動と示す)によって破壊することができる。これによって接続部22の孔が半田40によって埋められることが抑制され、外部端子130と端子20とを接続できなくなることが抑制される。更に言えば、上記した流動によって余分な半田40が半田浴150に戻されるので、接続部22に付着する半田40の厚さが調整される。
【0033】
ギャップはx方向に位置する。これによれば、接続部22を半田浴150に浸漬させる際に、ギャップがy方向に位置する構成(ギャップが半田浴150に対して対向する位置に設けられた構成)とは異なり、第1流動と第2流動とが相殺し合うことが抑制される。第1流動は半田浴150に近づく方向に進み、第2流動は接続部22の中心に向かう方向に進む。上記した比較構成の場合、第1流動は半田浴150に近づく方向に進み、第2流動は半田浴150から遠ざかる方向に進む。そのために2つの流動が相殺し合う。これに対して上記構成の場合、第1流動はx方向に進み、第2流動はy方向に進む。そのために比較構成と比べて2つの流動が相殺し合うことが抑制され、両流動によって生じる応力によって膜が破壊される。この結果、接続部22の孔が半田40によって埋められることが抑制され、外部端子130と端子20とを接続できなくなることが抑制される。そして接続部22に付着する半田40の厚さが調整される。
【0034】
中心CPから外に向かうにしたがってギャップの幅が広がるように傾斜している。これによれば、中心CPから外に向かうにしたがってギャップの幅が狭まる構成と比べて、接続部22を半田浴150から引き上げた際、端面22a,22bと外面22dとの成す2つの端部間(外開口面)にて生じる第2流動が促進され、膜が壊れやすくなる。この結果、接続部22の孔が半田40によって埋められることが抑制され、外部端子130と端子20とを接続できなくなることが抑制される。そして接続部22に付着する半田40の厚さが調整される。
【0035】
第1内面22eは上端面22aから底線BLに向かって連続的に近づく面形状を成し、第2内面22fは下端面22bから底線BLに向かって連続的に近づく面形状を成している。例えば、内面22e,22fの少なくとも一方が不連続的に底線BLに近づく面形状、すなわち、内面22e,22fの一部が底線BLから離れる方向に沿う面形状の場合、半田浴150から遠ざかるように、接続部22に膜状に形成された半田40が壊れる。そのため、膜状の半田40の壊れる速度が遅くなり、意図しない半田40が接続部22に取り残される虞がある。これに対して上記構成の場合、半田浴150に近づくように、接続部22に膜状に形成された半田40が壊れる。そのため上記した比較構成と比べて意図しない半田40が接続部22に取り残されることが抑制される。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0037】
本実施形態では半導体素子100がECU200に適用される例を示した。しかしながら、半導体素子100は長さの異なる複数の端子20の接続部22を半田浴150に浸漬することで半田40を接続部22に付着させるものであればよく、適用対象は限定されない。
【0038】
本実施形態では本体部10はパワー素子が形成されたチップと、このチップを被覆保護する保護部と、を有する例を示した。しかしながら本体部10としては上記例に限定されず、端子20の一端が固定されるものであれば良い。
【0039】
足部21は屈曲してy−z平面においてL字形状を成している例を示した。しかしながら足部21は屈曲していなくともよく、y方向に延びた部位を有していれば良い。
【0040】
本実施形態では、上端面22aはz−x平面に沿う形状を成し、下端面22bは孔から外に向かうにしたがってギャップの幅が広がるように傾斜した形状を成している例を示した。しかしながら端面22a,22bの形状としては上記例に限定されない。
【0041】
例えば図12に示すように、下端面22bがz−x平面に沿う形状を成し、ギャップの幅が一定の構成を採用することもできる。また図13に示すように、上端面22aはz−x平面に沿う形状を成し、下端面22bは孔から外に向かうにしたがってギャップの幅が狭まるように傾斜した形状を成していてもよい。
【0042】
本実施形態では特に言及しなかったが、図3に示すように内面22e,22fそれぞれの曲率が不定である例を示した。しかしながら図14に示すように、内面22e,22fそれぞれの曲率が一定であり、x−y平面における内面22cの成す輪郭線が円形を成していても良い。
【0043】
本実施形態では、第1内面22eは上端面22aから底線BLに向かって連続的に近づく面形状を成し、第2内面22fは下端面22bから底線BLに向かって連続的に近づく面形状を成している例を示した。しかしながら図15に示すように、第1内面22eは上端面22aから底線BLに向かって不連続的に近づく面形状を成し、第2内面22fは下端面22bから底線BLに向かって不連続的に近づく面形状を成していても良い。
【0044】
本実施形態ではギャップがx方向に位置する例を示した。しかしながら図16図19に示すようにギャップがy方向に位置しても良い。図16ではギャップが底線BLの上方に位置し、図17図19ではギャップの中に底線BLが位置する。そして図17図19では外面22dにおけるx方向において端面22a,22bと対向する部位の外径が半田浴150に近づくにつれて狭まるように傾斜している。そして図17および図19では端面22a,22bが内面22e,22fと不連続的に連結され、図18では端面22a,22bが内面22e,22fと連続的に連結されている。また図17および図18では端面22a,22b間のギャップのx方向の幅が一定であり、図19ではギャップのx方向の幅が中心から外に向かうにしたがって広がっている。なお、図17図19においては底線BLを図示していないが、上記した底線BLとは、接続部22が環状の場合に内面22cにおける足部21から最も離れた線である。
【0045】
本実施形態では、下端面22bが孔から外に向かうにしたがってギャップの幅が広がるように傾斜した形状を成している例を示した。しかしながら図20図22に示すように、下端面22bがz−x平面に沿う形状を成した構成を採用することもできる。図20図22では上端面22aの形状が異なり、図20では上端面22aが孔から外に向かうにしたがってギャップの幅が広がるように傾斜した形状を成し、図21では上端面22aがz−x平面に沿う形状を成している。また図22では上端面22aが孔から外に向かうにしたがってギャップの幅が狭まるように傾斜した形状を成している.
本実施形態では、第1内面22eが上端面22aと連続的に連結された例を示した。しかしながら図23および図24に示すように、第1内面22eが上端面22aと不連続的に連結された構成を採用することもできる。図23ではギャップにおけるy方向の幅が一定であり、図24ではギャップにおけるy方向の幅が不定である。詳しく言えば、孔から外に向かうにしたがってギャップの幅が徐々に広がっている。
【0046】
本実施形態では特に言及しなかったが、図3に示すように、下端面22bと第2内面22fとの連結角度が鋭角である例を示した。しかしながら図25に示すように、下端面22bと第2内面22fとの連結角度が鈍角である構成を採用することもできる。なお、図23に示すように、上記した連結角度が直角である構成を採用することもできる。この連結角度の関係については、上端面22aと第1内面22eとにおいても同様である。
【0047】
本実施形態では底線BLがz方向に沿っている例を示した。しかしながら底線BLの形状としては上記例に限定されず、z−x平面に沿う形状であれば適宜採用することができる。
【0048】
本実施形態では浸漬工程において、最も短い足部21への溶融した半田40の付着を回避しつつ、全ての接続部22を半田浴150に浸漬させる例を示した。しかしながら、全ての足部21に溶融した半田40を付着させても良い。
【符号の説明】
【0049】
10・・・本体部
20・・・端子
21・・・足部
22・・・接続部
40・・・半田
100・・・半導体素子
150・・・半田浴
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