(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1曲げ工程においては、前記複数の周辺素線に含まれる一部の周辺素線を前記仮想面の第1の方向に曲げ、当該複数の周辺素線に含まれる残りの周辺素線を前記第1の方向と反対方向である第2の方向に曲げることを特徴とする請求項2又は3に記載の集合導体の製造方法。
前記周辺素線を曲げる工程のうち、少なくとも1つの工程では、ローラを用いて前記周辺素線を曲げることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の集合導体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1及び2を参照して実施の形態1にかかる製造方法について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる製造方法のフローチャートである。
図2は、実施の形態1にかかる製造方法の模式図である。ここでは、製造装置140を用いて、導体線群198から集合導体202を連続的に製造する製造方法について説明する。
図2中、導体線群198は、導体線109が紙面の奥から手前の方向に並んだ状態を模式的に表している。
【0014】
図2に示すように、素線供給機141は導体線群198を第1圧延ロール142に送る。模式
図161に示すように、導体線109は略円形状の断面形状を有する線状体である。導体線109は、周辺素線110を形成する導体線群198の一部である。
【0015】
第1圧延ロール142は導体線群198を素線供給機141から受けて、模式
図162に示すように導体線群198の導体線109を塑性変形させて、周辺素線110を形成する(単線圧延工程S1)。ここで、周辺素線110の断面形状は、断面形状が回転により変化しない等方性を有する円形状から、断面形状が回転により変化する異方性を有する異方性断面形状に変形すればよく、例えば、上底と下底の長さの異なる台形状に変形する。異方性断面形状として、例えば、台形状、扇形状、円弧状、三角形状などが挙げられる。また、周辺素線110及び中心素線130からなる素線群199内の各素線は、直列に配置されている。即ち素線群199の各素線は、当該素線群199の送り出し方向(素線群199に含まれる各素線の長手方向)に対して垂直な方向に一列に並んで配置されている。より具体的には、周辺素線110において、台形状の上底に相当する面と、台形状の下底に相当する面とが互いに交互に配置されるように配置されている。
【0016】
第1圧延ロール142は、1対のロールを有し、図示しない駆動機構により回転し、素線群199を、搬送装置144に送る。かかる素線群199は、各素線が紙面の奥から手前の方向に一列に並んだ状態を模式的に表している。
【0017】
搬送装置144は、素線群199を第1圧延ロール142から受ける。搬送装置144は、素線群199の各素線を展開し、周辺素線110が中心素線130を取り囲む位置関係を作る。より具体的には、模式
図163に示すように、周辺素線110が中心素線130を中心として放射状に配置される(展開工程S2)。このとき、各周辺素線110は、外周面が内周面よりも面積が広くなるように配置される。即ち、各周辺素線110の断面において、台形状の上底又は下底のうち長さの長い方が外側に、短い方が内側に位置するように配置される。なお、この展開工程S2の詳細については後述する。
【0018】
また、搬送装置144は、周辺素線110の内周面が中心素線130の各辺に向くように周辺素線110の位置及び向きを整える。即ち、周辺素線110の内周面は、円柱状の中心素線130の外周面に沿う必要があるから、各周辺素線110の上底を含む面と下底を含む面が平行になるようにして搬送された素線群199が、中心素線130から外側に放射状に延びる仮想線に対して垂直になるように角度を変換して配置される必要がある。搬送装置144は、素線群199をクランプ145に送る。
【0019】
続いて、クランプ145は、素線群199を搬送装置144から受ける。クランプ145は、素線群199を整列して、中心素線130の周囲に周辺素線110を配置し、束ねた集合導線、すなわち、集合導線束200を形成する(束形成工程S3)。また、クランプ145は、周辺素線110の内周面が中心素線130の外表面の各辺と対向するように、集合導線束200を形成する。
【0020】
クランプ145は、集合導線束200の中心方向に向かって、所定の圧力を集合導線束200に加える。このため、模式
図164に示すように、集合導線束200の断面190において、中心素線130及び周辺素線110並びに周辺素線110同士は接近する。集合導線束200を、クランプ145及び回転機146を通過させて、さらにクランプ147まで送る。
【0021】
クランプ145、回転機146及びクランプ147が集合導線束200をクランプし、集合導線束200の軸を固定する。さらに、クランプ145、回転機146及びクランプ147が集合導線束200をクランプしたまま、回転機146が所定の回転方向152に回転し、集合導線束200を捻る(捻り工程S4)。すると、捻れ集合導体201が形成される。ここで、捻れ集合導体201は、例えば、回転機146を境に、中心素線130を軸として螺旋を描くように捻じれている捻じれ部分と、この捻じれ部分の捻じれ方向と逆方向に捻じれている逆捻じれ部分とを有する。なお、捻れ集合導体201は、捻じれ部分と逆捻じれ部分との間には、中心素線130の軸と平行となる非捻じれ部分を有してもよい。
【0022】
模式
図165に示すように、捻れ集合導体201は中心素線130及び所定の形状を有する周辺素線110を整列した集合導体である。このため、回転機146は、断面190の実質的な円形状が維持された断面191を形成することができる。
【0023】
クランプ147は、捻れ集合導体201の中心方向に向かって、所定の圧力を捻れ集合導体201に加える。このため、中心素線130及び周辺素線110並びに周辺素線110同士を密着させる。
【0024】
第2圧延ロール151は、捻れ集合導体201をクランプ147から受ける。第2圧延ロール151は、1対のロールを有し、図示しない駆動機構により回転し、捻れ集合導体201を実質的な平角形状とした場合の図中の縦方向より、実質的に平面の圧力をかける(仕上げ圧延工程S5)。
【0025】
第2圧延ロール151は、模式
図166に示すように、集合導体202の断面192の図中の上下端に横方向の壁面194を与える。第2圧延ロール151は、必要に応じて、集合導体202を、加熱工程やコイル製造工程に送ってもよい。
【0026】
以上の工程を経ると、集合導体202が製造される。
【0027】
次に、
図3〜8を用いて、上記した実施の形態1にかかる製造方法における展開工程S2の詳細について説明する。ここでは、搬送装置144を用いて、周辺素線110を放射状に配置する。
図3は、実施の形態1にかかる製造方法の一工程のフローチャートを示す。
図4〜8は、実施の形態1にかかる製造方法の一工程の模式図を示す。また、
図4〜8では、XYZ直交座標系が定められている。
【0028】
図4及び5に示すように、搬送装置144は、8本の周辺素線110のそれぞれについて、角度変換及び搬送するためのローラ1〜8を含む。ここで、詳細には、
図4は、搬送装置144を側方視した場合の模式図である。また、
図5は、搬送装置144を中心素線130の軸に沿って、第1圧延ロール142から視た場合の模式図である。なお、
図4では、1本の周辺素線110を搬送及び角度変換させるローラ1〜8についてのみ図示した。中心素線130の軸は、Z軸方向に平行である。なお、周辺素線110が進行する方向は、Z軸に平行である。ローラ1〜4、6〜8は、その主面がYZ平面に沿うように設置されている。ローラ5は、その主面がXY平面に沿うように設置されている。ローラ4は軸A1を中心に回転し、ローラ5、6は軸A2、A3を中心にそれぞれ回転する。
【0029】
ローラ1及び2は、第1圧延ロール142(
図2参照)から、周辺素線110を受ける。ローラ2が上下方向に移動して、周辺素線110の搬送速度を調整する。また、ローラ1及び2は、周辺素線110をローラ3、4に送る。なお、ローラ1及び2は、必要に応じて省略してもよい。
【0030】
続いて、
図8を併せて参照すると、ローラ3、4は、ローラ1及び2から周辺素線110を受けて、周辺素線110を、半径方向、即ち、中心素線130から放射状に外側に延びる仮想線Lと交差する方向に曲げる(第1曲げ工程S21)。これらローラ3、4による第1曲げ工程S21では、周辺素線110は、その軸を中心として回転するように捻られることなく、曲げられる。さらに、ローラ3及び4は、周辺素線110をローラ5に送る。
図6に示すように、周辺素線110は、直列状に配置された状態から、軸A1を中心に回転するローラ3、4(図示略)により、その向きを調整される。なお、
図6では、ローラ3〜6の図示を省略している。なお、
図4の例では、ローラ4の軸A1が中心素線130の軸の下側に位置するものの、ローラ4の軸A1が中心素線130の軸の上側に位置してもよい。また、
図5及び6では、理解を容易にするために、周辺素線110はY軸方向に沿って進行してローラ3、4に到達するように図示されているが、周辺素線110はZ軸方向に沿って進行してローラ3、4に到達している。
【0031】
続いて、ローラ5は、ローラ3及び4から周辺素線110を受けて、周辺素線110を、半径方向、即ち、中心素線130から放射状に外側に延びる仮想線L上に沿うように曲げる(第2曲げ工程S22)。周辺素線110と仮想線Lとが交差する位置において、周辺素線110が曲げられる。ローラ5による第2曲げ工程S22において、いわゆる角度変換がおこなわれる。ここで、
図5に示すように、周辺素線110の曲げ角度は、目的角度θであると好ましい。
図5及び6に示すように、周辺素線110は、直列状に配置された状態から、軸A2を中心に回転するローラ5(図示略)により、曲げられる。この例においてローラ5による曲げにより、周辺素線110は、XY平面において目的角度θだけ曲げられるが、曲げる前にZ方向を向く面は、曲げた後も同じようにZ方向を向いたままであり、いわゆるねじれは発生していない。ローラ5は、周辺素線110をローラ6に送る。
【0032】
続いて、ローラ6は、ローラ5から周辺素線110を受ける。
図8に示すように、周辺素線110はそれぞれ、搬送装置144により、搬送及び角度変換されて、直列状から放射状に配置される。詳細には、周辺素線110を中心素線130から放射状に外側に延びる仮想線Lと交差する方向に曲げて(第1曲げ工程S21)、さらに、周辺素線110と仮想線Lとの交差する位置において、仮想線Lに沿うように周辺素線110を曲げて(第2曲げ工程S22)、周辺素線110は中心素線130の軸を中心として、放射状に配置される。また、周辺素線110は、例えば、中心素線130の軸に交差する仮想面(ここではXY平面)における中心素線130の軸を中心とした仮想円C(ここでは正円)の外縁上に均等に配置されている。そして、周辺素線110の断面形状である台形状の上底及び下底はそれぞれ中心素線130の軸から放射状に外側に延びる仮想線に対して垂直となるように角度変換されている。
【0033】
最後に、
図4に示すように、ローラ6は、周辺素線110を中心素線130の軸線側に曲げる(第3曲げ工程S23)。また、ローラ7、8は、周辺素線110を、中心素線130の軸に接近させるように曲げて、クランプ145(
図2参照)に送る。
【0034】
ここで、ローラ3〜6の詳細について説明する。目的位置の座標を(X,Y,Z)とすると、表1に示すように、ローラ3〜6の軸の中心、方向、ロール半径がそれぞれ表される。
【表1】
Y−X*tan
−1θ=y2 …(数式1)
z1+R1+R3=Z …(数式2)
ここで、R1、R2、R3は任意の値である。
図7に示すように、tは、周辺素線110の厚みである。wは周辺素線110の幅である。θは、周辺素線110を角度変換する場合における目的角度である。x3、y3は任意の値を取り得る。
【0035】
次に、
図9及び10を用いて、上記した実施の形態1にかかる製造方法により得られる集合導線束及び集合導体について説明する。
【0036】
図9に示すように、集合導線束200の周辺素線110には、捻じれによる転び、すなわち捻転が殆どない。また、集合導線束200の周辺素線110同士の間には、空隙が小さい。これは、ねじれ変形の発生が抑制されたためと考えられる。
【0037】
図10に示すように、集合導体202の中心素線132及び周辺素線112並びに周辺素線112同士の間には空隙が殆ど無い。中心素線132及び周辺素線112並びに周辺素線112同士は密着している。集合導体202の断面積における中心素線132及び周辺素線112の面積率は、99%と高い。上記した実施の形態1にかかる製造方法を用いると、占積率の高い集合導体が得られた。
【0038】
以上、実施の形態1にかかる製造方法によれば、周辺素線を曲げて、搬送及び角度変換して、周辺素線の捻転を抑制し、周辺素線同士の間に空隙の小さい集合導線束を得ることができる。さらに、得られた集合導線束を圧延加工して、占積率の高い集合導体が得ることができる。
【0039】
また、実施の形態1にかかる製造方法によれば、周辺素線を曲げて、放射状に配置し、束形成工程に供給する。これにより、周辺素線におけるねじり変形の発生が抑制されて、束形成工程での周辺素線の姿勢が安定して、捻転の発生が抑制される。また、周辺素線に曲げ変形を複数回与えて、周辺素線の残留応力を軽減させることができる。なお、この残留応力のメカニズムについては後述する。
【0040】
また、実施の形態1にかかる製造方法によれば、周辺素線が略台形状の断面形状を有する。これにより、周辺素線が中心素線の周囲に配置されやすく、周辺素線同士の間における空隙の発生が抑制され、占積率の高い集合導体がより確実に得ることができる。
【0041】
ところで、周辺素線をピンチローラでガイドして、目的の角度に変換するためにねじり変形を加えつつ、搬送及び角度変換するねじり角度変換工程を含む集合導体の製造方法がある。この集合導体の製造方法は、実施の形態1にかかる集合導体の製造方法と異なり、展開工程S2の代わりにねじり角度変換工程を含む。つまり、この集合導体の製造方法は、単線圧延工程S1と、ねじり角度変換工程と、束形成工程S3と、捻り工程S4と、仕上げ圧延工程S5と、を含む。
【0042】
このような製造方法では、周辺素線にはねじり変形が付与されてしまう。詳細には、まず、導体線群198(
図2参照。)が、単線圧延工程S1、ねじり角度変換工程及び束形成工程S3を経ると、集合導線束900が得られる。
図13に示すように、集合導線束900では、周辺素線910が捻転し、大きな空隙が周辺素線910同士の間に発生してしまう。
【0043】
また、集合導線束900が捻り工程S4を経て、さらに仕上げ圧延工程S5を経ると、集合導体902が得られる。詳細には、捻り工程S4では、周辺素線910の間の力の釣り合いが崩れ、
図13に示すように、周辺素線910のうち、矢印に指された周辺素線910が、捻転した状態で捻られることとなる。続いて、仕上げ圧延工程S5では、集合導線束900を圧延し、
図14に示す集合導体902が得られる。集合導体902の断面における中心素線932及び周辺素線912の面積率は、89%と低い。つまり、実施の形態1にかかる製造方法は、このような製造方法と比較しても、ねじり変形の発生を抑制しつつ、周辺素線をその軸を中心として角度変換させて、さらに占積率の高い集合導体を製造することができる。
【0044】
また、実施の形態1にかかる製造方法は、このような製造方法と比較して、製造装置間の直線距離が短い。実施の形態1にかかる製造方法によれば、ライン配置の自由度を高め得て、製造ラインのコンパクト化が図れる。
【0045】
実施の形態2.
次に、
図11を参照して実施の形態2にかかる製造方法について説明する。
図11は、実施の形態2にかかる製造方法の模式図である。実施の形態2にかかる製造方法は、実施形態1にかかる製造方法と比較して、素材供給機を除いて共通する。異なる構成について説明する。ここでは、製造装置240を用いて、導体線群198から集合導体202(図示略)を連続的に製造する製造方法について説明する。
【0046】
素材供給部241は、複数のボビン242を含む。ボビン242には、導体線109が巻かれている。素材供給部241は、複数のボビン242をそれぞれ回転させて、導体線109を第1圧延ロール142へ送る。続いて、実施の形態1にかかる製造方法と同様に、単線圧延工程S1〜仕上げ圧延工程S5を経て、集合導体202を得る。導体線109が略円形状の断面形状を有し、ボビン242は、大きな巻量を有し、長い周辺素線110を巻き付けられる。
【0047】
ところで、
図15に示すような集合導体の製造方法がある。
図15に示す製造方法は、実施の形態2にかかる製造方法と、周辺素線と素材供給部と第1圧延ロールと搬送装置とを除き、共通している。異なる構成について説明する。ここでは、製造装置940を用いて、中心素線130及び周辺素線910(後述)から集合導体202(図示略)を連続的に製造する製造方法について説明する。
【0048】
図15に示すように、製造装置940は、1つのボビン942と、複数のボビン941と、を含む。ボビン942は、クランプ145から視ると、中心素線130の軸上に配置されている。複数のボビン941は、クランプ145から視ると、ボビン942を中心として放射状に配置されている。複数のボビン941は、例えば、ボビン942の位置を中心とする仮想円上に均等に配置されている。
【0049】
ボビン942は、中心素線130を巻かれており、クランプ145へ供給する。複数のボビン941は、周辺素線910を巻かれており、クランプ145へ供給する。模式
図961に示すように、周辺素線910は、略台形の断面形状を有する素線である。
【0050】
クランプ145は、ボビン942から中心素線130を受け、複数のボビン941から複数の周辺素線910を受ける。クランプ145は、中心素線130及び周辺素線910を整列して、中心素線130の周囲に周辺素線910を配置し、束ねた集合導線、すなわち、集合導線束200を形成する(束形成工程S3)。続いて、実施の形態1にかかる製造方法と同様に、束形成工程S3〜仕上げ圧延工程S5を経て、集合導体202を得ることができる。
【0051】
図15に示す集合導体の製造方法では、第1圧延ロール142(
図2参照)及び搬送装置144(
図2参照)を必要としておらず、これらを省略しても、実施の形態1及び2にかかる製造方法と同様に、占積率の高い集合導体を製造することができる。しかしながら、周辺素線910は略台形の断面形状を有する。これにより、円形状の断面形状を有する周辺素線110と比較して、周辺素線910はボビンに重ねて巻かれにくい。つまり、ボビン941の周辺素線910の巻量は、ボビン242の周辺素線110の巻量と比較して少ない。従って、
図15に示す集合導体の製造方法では、周辺素線910を巻いたボビン941を取り換える作業が、実施の形態2にかかる製造方法と比較して多く、労務コストが高い。また、
図15に示す集合導体の製造方法では、略台形の断面形状を有する周辺素線910は、円形状の断面形状を有する周辺素線110と比較して、高い製造コストを有する。ここで、第1圧延ロール142及び搬送装置144によるコスト増加の影響よりも、労務コストや周辺素線の製造コスト等の低減の影響が大きい。以上より、実施の形態1及び2にかかる製造方法は、
図15に示す集合導体の製造方法と比較して、第1圧延ロール142及び搬送装置144を必要とするものの、労務コストや周辺素線の製造コスト等が低く、結果として、集合導体の製造コストを低減することができる。
【0052】
残留応力の減少メカニズム.
次に、
図12を用いて、残留応力の減少メカニズムについて説明をする。
図12は、板厚延の工程及び板材の残留応力分布を示す模式図である。
図12に示す板材の残留応力分布では、残留応力は板材厚み方向において、中立面上の点に関して点対称であった。したがって、
図12では、中立面片側のみの残留応力分布を示した。
【0053】
図12に示すように、複数のローラ91が、互いに対向するように設置されている。ワークとしての板材81がこれらのローラ91の間を通過し、曲げ変形を与えられる。すると、ローラ91の入口から出口に向かって、残留応力が細分化されて、巨視的に残留応力の影響が小さくなることが知られている。なお、板材81の代わりに線材を用いても、線材の内部の残留応力が減少する。
【0054】
さて、実施の形態1及び2にかかる製造方法では、第1曲げ工程S22〜第3曲げ工程S24において、周辺素線110は、順次、いずれも異なる方向に曲げ変形を与えられている。従って、周辺素線110にかかる応力3軸度が降伏条件を満たすと考えられる。曲げ変形の付与の度に、周辺素線110は、主応力方向に一律に変形している。第1曲げ工程S22〜第3曲げ工程S24を順次経ると、主応力方向の変形が、すでに与えられた他の方向の残留応力を除去するように、順次与えられる。これにより、実施の形態1及び2にかかる製造方法により得られた集合導体202では、残留応力が軽減される。
【0055】
なお、周辺素線の材料の降伏強度近くまで、周辺素線に張力をかけるとよい。また、曲げ半径を小さくするとよい。このように張力と曲げ半径とを制御すると、周辺素線の表面から中心まで残留応力を除去し得て、好ましい。
【0056】
応用例.
次に、実施の形態1にかかる製造方法により得られる集合導体を用いてコイルを形成することができる。このため、本実施形態は以下の応用に適する。
【0057】
上記の製造方法により製造された集合導体からなるコイルを製造する。すると、かかるコイルでは渦損が小さいので、かかるモータは小さなコイルを備えても、モータとしての性能を維持することができる。
【0058】
また、自動車は、かかるモータを備えることで、従来の性能を維持したまま軽量化し得る。自動車はかかるモータを有する駆動部を備えることが、軽量化の観点から好ましい。かかるモータはハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカーに特に好適である。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。