(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1クラッチの内側または外側回転部材のいずれか一方と、第2クラッチの内側または外側回転部材のいずれか一方と、第3クラッチの内側または外側回転部材のいずれか一方は結合され、これらのクラッチで共用される共用回転部材とされて、前記第1サンギヤに常時連結され、
前記第1クラッチの他方の回転部材は、前記第4リングギヤに常時連結され、
前記第2クラッチの他方の回転部材は、前記入力部材及び第3キャリヤに常時連結され、
前記第3クラッチの他方の回転部材は、前記第3リングギヤ及び第4サンギヤに常時連結されていることを特徴とする請求項1記載の自動変速機。
前記第3プラネタリギヤセットと第4プラネタリギヤセットは、前者を内周側、後者を外周側として径方向に重ねられ、前記第3リングギヤと第4サンギヤとが一体化されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動変速機。
前記第2、第3クラッチは、変速機ケース内の反駆動源側の端部で径方向に重ねて配置されており、これらのクラッチへの油圧供給油路は、前記変速機ケースの反駆動源側の端部から各クラッチの油圧室に通じるように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動変速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に開示された自動変速機は、
図17に示すように、入力側(図の左側)から第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセットPGa、PGb、PGc、PGdを配置し、第2、第3プラネタリギヤセットPGb、PGc間に第1クラッチCLaを、第3、第4プラネタリギヤセットPGc、PGd間の外周側及び内周側に第2クラッチCLb及び第3クラッチCLcをそれぞれ配置すると共に、第1プラネタリギヤセットPGaのキャリヤと第4プラネタリギヤセットPGdのリングギヤとを動力伝達部材xで連結し、第2プラネタリギヤセットPGbのリングギヤと第3プラネタリギヤセットPGcのサンギヤとを動力伝達部材yで連結し、第3プラネタリギヤセットPGcのキャリヤと第4プラネタリギヤセットPGdのキャリヤとを動力伝達部材zで連結した構成とされている。
【0009】
このような構成によると、第1クラッチCLaの外側に前記動力伝達部材x、yが覆い被さり、第2、第3クラッチCLb、CLcの外側に前記動力伝達部材x、zが覆い被さり、これらのクラッチCLa、CLb、CLcが、両側のプラネタリギヤセットと、外側の動力伝達部材とで囲まれた閉鎖空間内に位置することになる。
【0010】
また、特許文献2に開示された自動変速機は、
図18に示すように、入力側(図の左側)にシングルピニオン型の第1、第2プラネタリギヤセットPGa’、PGb’を径方向の内外に重ねて配置し、その出力側にダブルピニオン型の第3プラネタリギヤセットPGc’と、シングルピニオン型の第4プラネタリギヤセットPGd’とを配置すると共に、前記第1、第2プラネタリギヤセットPGa’、PGb’の入力側に第1クラッチCLa’を、出力側に第2クラッチCLb’を、さらにその出力側に第3クラッチCLc’をそれぞれ配置し、前記第1クラッチCLa’の外側回転部材と第3クラッチCLc’の外側回転部材とを、第2クラッチCLb’の外周側を跨ぐ動力伝達部材x’で連結した構成とされている。
【0011】
したがって、この自動変速機においても、第2クラッチCLb’は、前記第1、第2プラネタリギヤセットPGa’、PGb’と、第3クラッチCLc’の内側回転部材y’と、前記動力伝達部材x’とで囲まれた閉鎖空間内に位置することになる。
【0012】
これらの自動変速機のように、クラッチが変速機ケース内において閉鎖空間内に配置されると、該クラッチに油圧を供給する油路を、変速機ケースの外周壁や縦壁、或いは縦壁から軸心に沿って延びるボス部等から導くことができず、例えばプラネタリギヤセットを貫通するシャフト部材やスリーブ部材を利用するなど、プラネタリギヤセットの内側を通過する油路を介してクラッチに油圧を供給する構成となる。
【0013】
そのため、油圧供給油路が長くかつ複雑化し、変速機が大型化すると共に、油圧の給排による変速制御の応答性が悪化する要因となる。また、相対回転する部材間での油路の連通部が増え、これらの連通部におけるシール機構からの作動油のリーク量が増大し、これによっても、リークを補うためのポンプの大型化による変速機の大型化や、リークによる変速制御の応答性の悪化を招くことになる。
【0014】
本発明は、自動変速機の多段化に伴う上記のような問題に対処し、軸心が車体幅方向に延びる横置き式の自動変速機として、クラッチへの油圧供給油路の簡素化が可能で、かつ、摩擦締結要素の適切な配置により一層コンパクト化されて、良好な車載性が得られる新たな構成の自動変速機を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明に係る自動変速機は、次のように構成したことを特徴とする。
【0016】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
変速機ケース内において、車体幅方向に延びる軸心上に、
駆動源に連結された入力部材と、
前記変速機ケース内の駆動源側に配置されてデファレンシャル機構に連結された出力部材と、
第1サンギヤ、第1リングギヤ、第1キャリヤを有する第1プラネタリギヤセット、第2サンギヤ、第2リングギヤ、第2キャリヤを有する第2プラネタリギヤセット、第3サンギヤ、第3リングギヤ、第3キャリヤを有する第3プラネタリギヤセット、及び、第4サンギヤ、第4リングギヤ、第4キャリヤを有する第4プラネタリギヤセットと、
内側回転部材と外側回転部材とを有し、油圧の給排に応じてこれらを断接する第1、第2、第3クラッチと、
油圧の給排に応じて変速機ケースと所定の回転部材とを断接する第1、第2ブレーキと、が備えられた横置き式の自動変速機であって、
前記第3、第4プラネタリギヤセットは、前記第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセットのうち最も反駆動源側において径方向に重ねて配置され、
前記第2プラネタリギヤセットは、前記第3、第4プラネタリギヤセットの駆動源側に隣接させて配置され、
前記第1クラッチは、前記第2プラネタリギヤセットの外周側に配置され、
前記第2、第3クラッチは、前記第3、第4プラネタリギヤセットの反駆動源側において径方向に重ねて配置されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1記載の自動変速機において、
前記第1クラッチの内側または外側回転部材のいずれか一方と、第2クラッチの内側または外側回転部材のいずれか一方と、第3クラッチの内側または外側回転部材のいずれか一方は結合され、これらのクラッチで共用される共用回転部材とされて、前記第1サンギヤに常時連結され、
前記第1クラッチの他方の回転部材は、前記第4リングギヤに常時連結され、
前記第2クラッチの他方の回転部材は、前記入力部材及び第3キャリヤに常時連結され、
前記第3クラッチの他方の回転部材は、前記第3リングギヤ及び第4サンギヤに常時連結されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の自動変速機において、
前記第3プラネタリギヤセットと第4プラネタリギヤセットは、前者を内周側、後者を外周側として径方向に重ねられ、前記第3リングギヤと第4サンギヤとが一体化されていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動変速機において、
前記第2、第3クラッチは、変速機ケース内の反駆動源側の端部で径方向に重ねて配置されており、これらのクラッチへの油圧供給油路は、前記変速機ケースの反駆動源側の端部から各クラッチの油圧室に通じるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の自動変速機において、
前記第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセットは、いずれもシングルピニオン型のプラネタリギヤセットであり、
前記第1キャリヤと前記第2リングギヤとが常時連結され、
前記第2サンギヤと前記第3サンギヤとが常時連結され、
前記第2キャリヤと前記第4キャリヤとが常時連結され、
前記第3リングギヤと前記第4サンギヤとが常時連結され、
前記入力部材は前記第3キャリヤに常時連結され、
前記出力部材は前記第2キャリヤ及び第4キャリヤに常時連結され、
前記第1クラッチは、前記第4リングギヤと前記第1サンギヤとを断接し、
前記第2クラッチは、前記入力部材及び第3キャリヤと前記第1サンギヤとを断接し、
前記第3クラッチは、前記第3リングギヤ及び第4サンギヤと前記第1サンギヤとを断接し、
前記第1ブレーキは、前記第2サンギヤ及び前記第3サンギヤと変速機ケースとを断接し、
前記第2ブレーキは、前記第1リングギヤと変速機ケースとを断接することを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の自動変速機において、
前記第1、第2、第3クラッチ及び前記第1、第2ブレーキのうち、
前記第2クラッチ、前記第1ブレーキ及び前記第2ブレーキが締結されたときに1速が形成され、
前記第3クラッチ、前記第1ブレーキ及び前記第2ブレーキが締結されたときに2速が形成され、
前記第2クラッチ、前記第3クラッチ及び前記第2ブレーキが締結されたときに3速が形成され、
前記第1クラッチ、前記第3クラッチ及び前記第2ブレーキが締結されたときに4速が形成され、
前記第1クラッチ、前記第2クラッチ及び前記第2ブレーキが締結されたときに5速が形成され、
前記第1クラッチ、前記第2クラッチ及び前記第3クラッチが締結されたときに、減速比が1の6速が形成され、
前記第1クラッチ、前記第2クラッチ及び前記第1ブレーキが締結されたときに7速が形成され、
前記第1クラッチ、前記第3クラッチ及び前記第1ブレーキが締結されたときに8速が形成され、
前記第1クラッチ、前記第1ブレーキ及び前記第2ブレーキが締結されたときに後退速が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記の構成により、請求項1に記載の発明によれば、第1クラッチは、第3、第4プラネタリギヤセットの駆動源側に隣接させて配置された第2プラネタリギヤセットの外周側に配置され、第2、第3クラッチは、第3、第4プラネタリギヤセットの反駆動源側において径方向に重ねて配置されるので、第1、第2、第3クラッチを、プラネタリギヤセットや他の動力伝達部材等に囲まれることなく、非閉鎖状態で配設することが可能となる。
【0023】
これにより、例えば
図17、
図18に示す自動変速機のように、クラッチがプラネタリギヤセットや動力伝動部材等で囲まれた閉鎖空間内に配置される場合に比べて、各クラッチへの油圧供給油路を短く、かつ簡素に構成することができ、変速機全体の大型化や、油圧の給排による変速制御の応答性の悪化が抑制される。また、相対回転する部材間での油路の連通部を少なくすることができるため、該連通部からの作動油のリーク量が減少し、これによっても、変速制御の応答性の悪化が抑制される。
【0024】
また、前記第3、第4プラネタリギヤセットは、径方向に重ねて配置され、前記第2、第3クラッチも、径方向に重ねて配置されるから、第3、第4プラネタリギヤセットを軸方向に並べて配置する場合や、第2、第3クラッチを軸方向に並べて配置する場合などに比べて、変速機の軸方向寸法が短縮される。
【0025】
これにより、特に軸方向寸法(車体幅方向寸法)の制約が厳しい横置き式の自動変速機において、その軸方向寸法が効果的に短縮され、車載性が向上することになる。
【0026】
また、第1クラッチは、第2プラネタリギヤセットの外周側に配置され、第2、第3クラッチは、第3、第4プラネタリギヤセットの反駆動源側において径方向に重ねて配置されているので、第3、第4プラネタリギヤセットの反駆動源側に第1、第2、第3クラッチが配設される場合に比して、自動変速機の反駆動源側の径寸法を抑制することができる。これにより、横置き式の自動変速機において、サイドフレームなどの車体構成部材との干渉を回避することができる。
【0027】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記第1、第2、第3クラッチの内側回転部材または外側回転部材のいずれか一方の回転部材が結合されて、各クラッチで共用される共用回転部材とされているので、これらの回転部材をクラッチごとに設ける場合に比べて構成が簡素化されると共に、この共用回転部材を利用することにより、各クラッチへの油圧供給油路の構成を一層簡素化することが可能となる。
【0028】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記第3プラネタリギヤセットが内周側、第4プラネタリギヤセットが外周側として径方向に重ねられるので、前者の第3リングギヤと後者の第4サンギヤとを一体化することができ、これらを別体で形成して連結する場合に比べて、部品点数が削減されると共に、第3、第4プラネタリギヤセットの配設位置における径方向寸法の縮小が可能となる。
【0029】
また、請求項4に記載の発明によれば、第2、第3クラッチは、変速機ケース内の反駆動源側の端部で径方向に重ねて配置されるので、これらのクラッチへの油圧供給油路を、前記変速機ケースの反駆動源側の端部から各クラッチの油圧室に通じるように構成することができ、変速機ケースから各クラッチへの油圧供給油路の短縮、簡素化が具体的に実現される。
【0030】
また、請求項5に記載の発明によれば、第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセットの各回転要素間の連結関係や、これらと入、出力部材との連結関係、さらには、クラッチやブレーキによって断接される回転要素等を含めて、自動変速機全体の構成が具体化され、また、請求項6に記載の発明によれば、さらに、変速制御の内容が具体化される。これにより、油圧供給油路が簡素化され、しかも、軸方向寸法が短縮されて車載性に優れた前進8段、後退1段の横置き式自動変速機が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動変速機10の構成を示す骨子図であって、この自動変速機10は、車体幅方向に軸心が延びる横置き式の自動変速機であって、変速機ケース11内に、例えばエンジンとトルクコンバータとでなる駆動源Aから延びる入力部材としての入力軸12と、変速機ケース11内の前記駆動源A側(以下、「前側」とする)に配設された出力部材としての出力ギヤ13と、該出力ギヤ13の反駆動源A側(以下、「後側」とする)に配置された第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセット(以下、単に「ギヤセット」という)PG1、PG2、PG3、PG4とを有し、これらが同一軸線上に配置されている。
【0034】
なお、前記出力ギヤ13は、図示しないが、カウンタドライブ機構を構成するカウンタドライブシャフト上のギヤを介してデファレンシャル機構の入力ギヤに連結され、この出力ギヤ13から入力ギヤまでのギヤ列で終減速機が構成されている。自動変速機10では、自動変速機10の駆動源側にデフャレンシャル機構が配置され、自動変速機10にデフャレンシャル機構が一体化されて1つのユニットとして構成されている。
【0035】
前記第3ギヤセットPG3と第4ギヤセットPG4とは、軸方向のほぼ同一位置で、前者を内周側、後者を外周側として径方向に重ねて配置され、各ギヤセットは、前側から、第1ギヤセットPG1、第2ギヤセットPG2、径方向に重ねられた第3、第4ギヤセットPG3、PG4の順に配置されている。
【0036】
前記ギヤセットPG1〜PG4は、いずれも、キャリヤに支持されたピニオンがサンギヤとリングギヤとに直接噛合するシングルピニオン型であって、回転要素として、第1ギヤセットPG1は、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、第1キャリヤC1を有し、第2ギヤセットPG2は、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、第2キャリヤC2を有し、第3ギヤセットPG3は、第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、第3キャリヤC3を有し、第4ギヤセットPG4は、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、第4キャリヤC4を有する。
【0037】
そして、第3ギヤセットPG3の外周側に第4ギヤセットPG4が重ねられることにより、常時連結される前記第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが、単一部品として、或いは溶接等により直接結合されて、一体化されている。
【0038】
また、前記第2サンギヤS2と第3サンギヤS3、前記第1キャリヤC1と第2リングギヤR2、前記第2キャリヤC2と第4キャリヤC4が、それぞれ常時連結されている。そして、前記入力軸12は、前記第3キャリヤC3に、前記出力ギヤ13は、前記第2キャリヤC2及び第4キャリヤC4に、それぞれ常時連結されている。
【0039】
また、前記変速機ケース11内の前端部において、前記駆動源Aと出力ギヤ13との間に第1ブレーキBR1が配設され、前記変速機ケース11内の駆動源側において、前記第1ギヤセットPG1の径方向の外側に第2ブレーキBR2が配設され、前記変速機ケース11内の軸方向中間部において、前記第2ギヤセットPG2の径方向の外側に第1クラッチCL1が配設され、前記変速機ケース11内の後端側において、径方向に重ねられた前記第3、第4ギヤセットPG3、PG4のさらに後方に、第2、第3クラッチCL2、CL3が配設されている。
【0040】
そして、この自動変速機10においては、変速機ケース11の後端側に配置された第2クラッチCL2と第3クラッチCL3とは、軸方向のほぼ同一位置で径方向に重ねて配置され、第2クラッチCL2の外周側に第3クラッチCL3が配設されている。
【0041】
前記第1クラッチCL1は、前記第4リングギヤR4と前記第1サンギヤS1との間に配設されて、これらを断接するようになっており、前記第2クラッチCL2は、前記入力軸12及び第3キャリヤC3と前記第1サンギヤS1との間に配設されて、これらを断接するようになっており、前記第3クラッチCL3は、一体化された前記第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4と前記第1サンギヤS1との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0042】
ここで、前記第1〜第3クラッチCL1〜CL3は、それぞれ、シリンダP1’〜P3’と、これらのシリンダP1’〜P3’にそれぞれ嵌合されたピストンP1”〜P3”とによって画成された油圧室P1〜P3を有し、これらの油圧室P1〜P3に油圧が供給されたときに摩擦板が締結され、内外一対の回転部材が結合されるようになっている。
【0043】
具体的には、第1クラッチCL1は、油圧室P1への油圧供給時に、内側回転部材14に常時連結された第4リングギヤR4と、外側回転部材14’に常時連結された第1サンギヤS1とを連結し、第2クラッチCL2は、油圧室P2への油圧供給時に、内側回転部材15に常時連結された入力軸12及び第3キャリヤC3と、外側回転部材15’に常時連結された第1サンギヤS1とを連結し、第3クラッチCL3は、油圧室P3への油圧供給時に、内側回転部材16に常時連結された第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4と、外側回転部材16’に常時連結された第1サンギヤS1とを連結する。
【0044】
その場合に、前記第1〜第3クラッチCL1〜CL3の外側回転部材14’、15’、16’は、いずれも第1サンギヤS1に常時連結されているので、これらの回転部材は結合されて、各クラッチCL1〜CL3で共用される共用回転部材17とされている。共用回転部材17の後端部17aにより、前記第2、第3クラッチCL2、CL3のシリンダP2’、P3’ないし油圧室P2、P3が径方向に重ねて形成されている。
【0045】
また、前記第1ブレーキBR1は、前記変速機ケース11と前記第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、前記第2ブレーキBR2は、前記変速機ケース11と前記第1リングギヤR1との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0046】
具体的には、第1、第2ブレーキBR1、BR2も、それぞれ、シリンダP4’、P5’と、これらのシリンダP4’、P5’にそれぞれ嵌合されたピストンP4”、P5”とによって画成された油圧室P4、P5を有し、これらの油圧室P4、P5に油圧が供給されたときに摩擦板が締結され、第1ブレーキBR1は、第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3を変速機ケース11に結合して固定し、第2ブレーキBR2は、第1リングギヤR1を変速機ケース11に結合して固定する。
【0047】
一方、前記変速機ケース11は、外周壁11aの前端部に設けられて、前記第1ブレーキBR1のシリンダP4’を構成する前部縦壁11bと、外周壁11aの駆動源側において前記第1ブレーキBR1の後方に設けられて、前記出力ギヤ13を支持すると共に前記第2ブレーキBR2のシリンダP5’を外周壁11aと共に構成する第1中間壁11cと、外周壁11aの軸方向中央部において前記第2ブレーキBR2の後方且つ前記第1クラッチCL1の前方に設けられた第2中間壁11dと、外周壁11aの後端部に設けられた後部縦壁11eとを有する。
【0048】
前記第2中間壁11dには、第1クラッチCL1に対応させて、内周端から後方へ延びるボス状の円筒部11fが設けられ、該円筒部11fの外周面に、前記第1クラッチCL1の共用回転部材17におけるシリンダP1’を構成する部分の内周面が嵌合されている。
【0049】
そして、これらの嵌合面間を介して、変速機ケース11側から、前記第2中間壁11dの円筒部11fを介して、前記共用回転部材17によって形成された第1クラッチCL1の油圧室P1に通じる油圧供給油路aが形成されている。
【0050】
また、前記後部縦壁11eには、内周端から前方へ延びるボス状の円筒部11gが設けられ、該円筒部11gの外周面に、前記第2、第3クラッチCL2、CL3の共用回転部材17における後端部17aの内周面が嵌合されている。
【0051】
そして、これらの嵌合面間を介して、変速機ケース11側から、前記後部縦壁11eの円筒部11gを介して、前記共用回転部材17の後端部17aによって径方向に重ねて形成された第2、第3クラッチCL2、CL3の油圧室P2、P3にそれぞれ通じる油圧供給油路b、cが形成されている。
【0052】
また、第1、第2ブレーキBR1、BR2の油圧室P4、P5に油圧を供給する油圧供給油路d、eは、変速機ケース11の外周壁11aから油圧室P4、P5に、それぞれ直接通じるように設けられている。
【0053】
自動変速機10ではまた、第2、第3クラッチCL2、CL3は、径方向に重ねて配置される第3、第4ギヤセットPG3、PG4の反駆動源側において径方向に重ねて配置されているので、変速機ケース11の外周壁11aの反駆動源側における第2、第3クラッチCL2、CL3に対応する部位11a’が、第3、第4ギヤセットPG3、PG4に対応する部位よりも小径とされ、共用回転部材17の反駆動源側における第2、第3クラッチCL2、CL3に対応する部位17’の外周面が、第3、第4ギヤセットPG3、PG4に対応する部位より小径とされている。
【0054】
なお、図示しないが、前記円筒部11fの外周面と、共用回転部材17の第1クラッチCL1のシリンダP1’を構成する部分の内周面との嵌合部における油圧供給油路aの連通部、及び前記円筒部11gの外周面と、共用回転部材17の後端部17aの内周面との嵌合部における油圧供給油路b、cの連通部は、それぞれシールリングでシールされている。
【0055】
以上の構成により、この自動変速機10によれば、前記油圧室P1〜P5に対する油圧の給排制御により、
図2の締結表に示すように、5つの摩擦締結要素から3つの摩擦締結要素を選択的に締結することにより、前進の1〜8速及び後退速が形成される。次に、
図2に示す各摩擦締結要素の締結の組み合わせに従い、変速段ごとに、減速比が決定されるメカニズムを
図3〜
図11によって説明する。
【0056】
なお、
図3〜
図11の(a)図は、変速機ケース11及び油圧室P1〜P5等に関連する構成を省いた点を除き、
図1と同じ図面であり、当該変速段で締結される摩擦締結要素を網掛けによって表示している。
【0057】
(b)図は、当該変速段の減速比を線図によって示すもので、この減速比線図において、横軸のリングギヤ、キャリヤ間、及び、キャリヤ、サンギヤ間の横方向の間隔はそれぞれのギヤ比に従って設定される。
【0058】
また、縦軸は回転速度を表し、入力回転速度、即ち、入力軸12とこれに常時連結された第3キャリヤC3の回転速度を「1」、ブレーキによって固定された回転要素の回転速度を「0」とする。また、常時連結された回転要素同士、及びクラッチによって連結された回転要素同士の回転速度は等しくなる。そして、N1〜N8、Nrは、第2キャリヤC2ないし出力ギヤ13から出力される回転の各変速段での回転速度を示し、この出力回転速度の逆数が当該変速段における減速比となる。
【0059】
まず、1速では、
図3に示すように、第2クラッチCL2と、第1、第2ブレーキBR1、BR2とが締結されるから、入力軸12が第1サンギヤS1に連結されて、その回転速度が「1」となり、第1リングギヤR1の回転速度が「0」となるから、第1キャリヤC1の回転速度及びこれに常時連結された第2リングギヤR2の回転速度が決定する。そして、第2サンギヤS2の回転速度が「0」であることにより、第2キャリヤC2の回転速度が決定し、これが出力回転速度N1となる。
【0060】
次に、2速では、
図4に示すように、第3クラッチCL3と、第1、第2ブレーキBR1、BR2とが締結されるから、まず、入力軸12に常時連結された第3キャリヤC3の回転速度が「1」、第3サンギヤS3の回転速度が「0」となることにより、第3リングギヤR3及びこれに連結された第1サンギヤS1の回転速度が決定する。そして、第1リングギヤR1の回転速度が「0」であるから、第1キャリヤC1の回転速度及びこれに常時連結された第2リングギヤR2の回転速度が決定し、さらに、第2サンギヤS2の回転速度が「0」であることにより、第2キャリヤC2の回転速度が決定し、これが出力回転速度N2となる。
【0061】
次に、3速では、
図5に示すように、第2、第3クラッチCL2、CL3と、第2ブレーキBR2とが締結されるから、まず、入力軸12に常時連結された第3キャリヤC3と、該入力軸12に連結された第3リングギヤR3とが同一回転することにより、第3ギヤセットPG3の全体が回転速度「1」で一体回転し、第3サンギヤS3に常時連結された第2サンギヤS2の回転速度、第3リングギヤR3に連結された第1サンギヤS1の回転速度も「1」となる。
【0062】
そして、第1リングギヤR1の回転速度が「0」であることにより、第1キャリヤC1及びこれに常時連結された第2リングギヤR2の回転速度が決定し、さらに、第2サンギヤS2の回転速度が「1」であることにより、第2キャリヤC2の回転速度が決定し、これが出力回転速度N3となる。
【0063】
次に、4速では、
図6に示すように、第1、第3クラッチCL1、CL3と、第2ブレーキBR2とが締結されるから、まず、第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とが同一回転して第4ギヤセットPG4の全体が一体回転し、第4サンギヤS4に一体の第3リングギヤR3、及び、第4キャリヤC4に常時連結された第2キャリヤC2も同一回転し、さらに、第4リングギヤR4に連結された第1サンギヤS1も同一回転する。
【0064】
そして、この条件と、第3キャリヤC3の回転速度が「1」、第1リングギヤR1の回転速度が「0」であること、及び、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3、第1キャリヤC1と第2リングギヤR2とが、それぞれ常時連結されていることとから、同一回転する前記各回転要素の回転速度が決定し、これが第2キャリヤC2から出力される出力回転速度N4となる。
【0065】
次に、5速では、
図7に示すように、第1、第2クラッチCL1、CL2と、第2ブレーキBR2とが締結されるから、まず、入力軸12に常時連結された第3キャリヤC3と第4リングギヤR4と第1サンギヤS1とが連結され、これらの回転速度が「1」となる。また、第1リングギヤR1の回転速度が「0」となるから、第1キャリヤC1及びこれに常時連結された第2リングギヤR2の回転速度が決定する。
【0066】
そして、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3、第2キャリヤC2と第4キャリヤC4とがそれぞれ常時連結されており、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とは一体であることから、第2キャリヤC2の回転速度が決定し、この回転速度が出力回転速度N5となる。
【0067】
次に、6速では、
図8に示すように、第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3が締結されるから、まず、入力軸12に連結された第3リングギヤR3と、該入力軸12に常時連結された第3キャリヤC3とが同一回転して、第3ギヤセットPG3の全体が回転速度「1」で一体回転する。また、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とは一体であり、かつ、該第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とが同一回転することにより、第4ギヤセットPG4も全体が回転速度「1」で一体回転する。
【0068】
そして、この回転速度が第4キャリヤC4から第2キャリヤC2を経由して出力回転速度N6として出力される。これにより、6速が減速比「1」の直結段となる。
【0069】
次に、7速では、
図9に示すように、第1、第2クラッチCL1、CL2と、第1ブレーキBR1とが締結されるから、まず、第3サンギヤS3の回転速度が「0」となり、入力軸12に常時連結された第3キャリヤC3の回転速度が「1」であることにより、第3リングギヤR3及びこれに一体の第4サンギヤS4の回転速度が決定する。また、第3キャリヤC3に連結された第4リングギヤR4の回転速度が「1」となることにより、第4キャリヤC4の回転速度が決定し、この回転速度が第2キャリヤC2を経由して出力回転速度N7として出力される。
【0070】
次に、8速では、
図10に示すように、第1、3クラッチCL1、CL3と、第1ブレーキBR1とが締結されるから、まず、第3サンギヤS3の回転速度が「0」となり、入力軸12に常時連結された第3キャリヤC3の回転速度が「1」であることにより、第3リングギヤR3及びこれに一体の第4サンギヤS4の回転速度が決定する。
【0071】
また、この第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とが連結されることにより、第4ギヤセットPG4の全体が一体回転し、その回転速度が、第4キャリヤC4から第2キャリヤC2を経由して出力回転速度N8として出力される。
【0072】
さらに、後退速では、
図11に示すように、第1クラッチCL1と、第1、第2ブレーキBR1、BR2とが締結されるから、まず、入力軸12に常時連結された第3キャリヤC3の回転速度が「1」、第3サンギヤS3の回転速度が「0」となることにより、第3リングギヤR3及びこれに一体の第4サンギヤS4の回転速度が決定する。
【0073】
そして、この条件と、第1サンギヤS1と第4リングギヤR4とが連結されて同一回転すること、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2の回転速度が「0」であること、第1キャリヤC1と第2リングギヤR2とが常時連結されていること、第2キャリヤC2と第4キャリヤC4とが常時連結されていることとから、該第2キャリヤC2の回転速度が決定し、この回転速度が前進時と逆方向の出力回転速度Nrとなる。
【0074】
以上のようにして、
図2に示す摩擦締結要素の締結の組み合わせにより、回転速度N1〜N8、Nrを、N1<N2<N3<N4<N5<N6<N7<N8、Nr<0とすることが可能となると共に、前記の構成により、N6=1となるから、前進8段、後退1段で、6速が減速比「1」の直結段となる自動変速機が得られる。
【0075】
ここで、第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4の各ギヤの歯数を例えば
図12に示すように設定すれば、各変速段の減速比及び前進の隣接変速段間のギヤステップ(下段の減速比/上段の減速比)は
図13に示すようになり、各変速段間でほぼ均等なギヤステップの変速段が得られる。
【0076】
一方、この自動変速機10においては、
図1を用いて前述したように、第1クラッチCL1を変速機ケース11内の軸方向中間部において第2ギヤセットPG2の径方向の外側に配設し、該第1クラッチCL1の油圧室P1へ油圧を供給する油圧供給油路aを、変速機ケース11から、該変速機ケース11の第2中間壁11d及び円筒部11fを経由して、油圧室P1へ導くようになっている。
【0077】
また、第2、第3クラッチCL2、CL3は、前記変速機ケース11内の後端部に配置し、該第2、第3クラッチCL2、CL3の油圧室P2、P3へ油圧を供給する油圧供給油路b、cを、変速機ケース11から、該変速機ケース11の後部縦壁11e及び円筒部11gを経由して、油圧室P2、P3へ導くようになっている。
【0078】
つまり、第1〜第3クラッチCL1〜CL3のいずれも、ギヤセットや他の動力伝達部材等に囲まれることなく、非閉鎖状態で配設することが可能とされているので、これらのクラッチCL1〜CL3に油圧を供給する油圧供給油路a、b、cが、他の動力伝達部材等を介することなく、変速機ケース11から各油圧室P1〜P3へ直接導くことが可能とされている。
【0079】
これにより、例えば、
図17、
図18に示す自動変速機のように、クラッチが閉鎖空間内に配置されているため、油圧室への油圧供給油路をギヤセットの内側を貫通するシャフト部材等のクラッチ構成部材以外の動力伝達部材等を経由させる必要がなくなる。その結果、油圧供給油路が短く、かつ簡素化され、変速機の大型化や、変速制御の応答性の悪化等が抑制される。
【0080】
また、この自動変速機10においては、前記第3、第4ギヤセットPG3、PG4が、軸方向のほぼ同一位置で径方向の内周側と外周側とに重ねて配置され、さらに、前記第2、第3クラッチCL2、CL3も、軸方向のほぼ同一位置で径方向に重ねて配置されるから、第3、第4ギヤセットPG3、PG4を軸方向に並べて配置する場合や、第2、第3クラッチCL2、CL3を軸方向に並べて配置する場合などに比べて、変速機の軸方向寸法が短縮される。
【0081】
これにより、特に横置き式で車体に搭載されるため、軸方向寸法(車体幅方向寸法)の制約が厳しい横置き式の自動変速機において、その軸方向寸法が効果的に短縮され、車載性が向上することになる。
【0082】
また、第1クラッチCL1は、第2ギヤセットPG2、PG3の外周側に配置され、第2、第3クラッチCL2、CL3は、第3、第4ギヤセットPG3、PG4の反駆動源側において径方向に重ねて配置されているので、第3、第4ギヤセットPG3、PG4の反駆動源側に第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3が配設される場合に比して、自動変速機の反駆動源側の径寸法を抑制することができる。これにより、横置き式の自動変速機において、サイドフレームなどの車体構成部材Mとの干渉を回避することができる。
【0083】
自動変速機10では、第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3の外側回転部材14’、15’、16’を結合して共用回転部材17として第1サンギヤS1に連結しているが、第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3の内側回転部材または外側回転部材のいずれか一方の回転部材を結合して共用回転部材として第1サンギヤS1に連結するようにしてもよい。
【0084】
このように、第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3の内側回転部材または外側回転部材のいずれか一方の回転部材を結合して共用回転部材とすることにより、これらの回転部材をクラッチごとに設ける場合に比べて構成が簡素化されると共に、この共用回転部材を利用することにより、各クラッチへの油圧供給油路の構成を一層簡素化することが可能となる。
【0085】
また、第3ギヤセットPG3が内周側、第4ギヤセットPG4が外周側として径方向に重ねられるので、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とを一体化することができ、これらを別体で形成して連結する場合に比べて、部品点数が削減されると共に、第3、第4ギヤセットPG3、PG4の配設位置における径方向寸法の縮小が可能となる。
【0086】
次に、
図14〜
図16に示す第2〜第4実施形態に係る第2〜第4自動変速機20〜40について説明する。なお、以下の説明では、ギヤセットや摩擦締結要素等の基本的構成については、第1実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いる。
【0087】
図14に示す第2自動変速機20は、前記第1実施形態に係る自動変速機(以下、「第1自動変速機」という)10を基本とするもので、入力軸12、出力ギヤ13、第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4、第1〜第3クラッチCL1〜CL3及び第1、第2ブレーキBR1、BR2の配置は、第1自動変速機10と全く同じであり、また、第1〜第3クラッチCL1〜CL3が断接する回転部材、第1、第2ブレーキBR1、BR2が変速機ケース11に対して断接する回転部材も第1自動変速機10と同じである。
【0088】
第1、第2自動変速機10、20の相違は、第3クラッチCL3の構成において、第1自動変速機10では、内側回転部材16が一体化された第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4に常時連結され、外側回転部材16’が共用回転部材17を介して第1サンギヤS1に常時連結されているのに対し、第2自動変速機20では、内側回転部材26が共用回転部材27を介して第1サンギヤS1に常時連結され、外側回転部材26’が一体化された第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4に常時連結されている点のみである。
【0089】
この第2自動変速機20においても、第1〜第3クラッチCL1〜CL3に油圧を供給する油圧供給油路a、b、cが、変速機ケース11から各油圧室P1〜P3へ直接導くことが可能とされ、各クラッチへの油圧供給油路を短く、かつ簡素に構成することができ、変速機全体の大型化や、油圧の給排による変速制御の応答性の悪化が抑制される。また、第2自動変速機20によれば、第3クラッチCL3の内側回転部材26を、その内周側に位置する第2クラッチCL2の外側回転部材25’と結合して一体化することにより、部品点数の削減が期待できる。
【0090】
図15に示す第3自動変速機30は、前記第2自動変速機20を基本とするもので、入力軸12、出力ギヤ13、第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4、第1〜第3クラッチCL1〜CL3及び第1、第2ブレーキBR1、BR2の配置は、第2自動変速機20と全く同じであり、また、第1〜第3クラッチCL1〜CL3が断接する回転部材、第1、第2ブレーキBR1、BR2が変速機ケース11に対して断接する回転部材も第2自動変速機20と同じである。
【0091】
第2、第3自動変速機20、30の相違は、第1クラッチCL1の構成において、第2自動変速機20では、内側回転部材24が第4リングギヤR4に常時連結され、外側回転部材24’が共用回転部材27を介して第1サンギヤS1に常時連結されているのに対し、第3自動変速機30では、内側回転部材34が共用回転部材37を介して第1サンギヤS1に常時連結され、外側回転部材34’が第4リングギヤR4に常時連結されている点のみである。
【0092】
この第3自動変速機30においても、第1〜第3クラッチCL1〜CL3に油圧を供給する油圧供給油路a、b、cが、変速機ケース11から各油圧室P1〜P3へ直接導くことが可能とされ、各クラッチへの油圧供給油路を短く、かつ簡素に構成することができ、変速機全体の大型化や、油圧の給排による変速制御の応答性の悪化が抑制される。また、第3自動変速機30においても、第3クラッチCL3の内側回転部材36を、その内周側に位置する第2クラッチCL2の外側回転部材35’と結合して一体化することにより、部品点数の削減が期待できる。
【0093】
また、
図16に示す第4自動変速機40は、前記第2自動変速機20を基本とするもので、入力軸12、出力ギヤ13、第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4、第1〜第3クラッチCL1〜CL3及び第1、第2ブレーキBR1、BR2の配置は、第2自動変速機20と全く同じであり、また、第1〜第3クラッチCL1〜CL3が断接する回転部材、第1、第2ブレーキBR1、BR2が変速機ケース11に対して断接する回転部材も第2自動変速機20と同じである。
【0094】
第2、第4自動変速機20、40の相違は、第2クラッチCL2の構成において、第2自動変速機20では、内側回転部材25が入力軸12及び第3キャリヤC3に常時連結され、外側回転部材25’が共用回転部材27を介して第1サンギヤS1に常時連結されているのに対し、第4自動変速機40では、内側回転部材45が共用回転部材47を介して第1サンギヤS1に常時連結され、外側回転部材45’が入力軸12及び第3キャリヤ3に常時連結されている点のみである。
【0095】
この第4自動変速機40においても、第1〜第3クラッチCL1〜CL3に油圧を供給する油圧供給油路a、b、cが、変速機ケース11から各油圧室P1〜P3へ直接導くことが可能とされ、各クラッチへの油圧供給油路を短く、かつ簡素に構成することができ、変速機全体の大型化や、油圧の給排による変速制御の応答性の悪化が抑制される。
【0096】
以上のように、第2〜第4自動変速機20〜40は、第1自動変速機10と部分的に構成が相違するが、第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4と、第1〜第3クラッチCL1〜CL3及び第1、第2ブレーキBR1、BR2との関係は共通しているので、
図2の締結表に従ってクラッチ及びブレーキの締結制御を行うことにより、第1自動変速機10と同様の6速が直結段の前進8段、後退1段の自動変速機が得られる。
【0097】
そして、第1〜第4自動変速機10〜40のいずれにおいても、第1〜第3クラッチCL1〜CL3がギヤセットや他の動力伝達部材で覆われない非閉鎖状態で配設されることにより、これらのクラッチCL1〜CL3に油圧を供給する油圧供給油路a、b、cを短く、かつ簡素に構成することができて、変速機の大型化や変速制御の応答性の悪化等が抑制される。
【0098】
また、第3、第4ギヤセットPG3、PG4が、軸方向のほぼ同一位置で径方向の内周側と外周側とに重ねて配置され、さらに、第2、第3クラッチCL2、CL3も、軸方向のほぼ同一位置で径方向に重ねて配置されるから、変速機の軸方向寸法の短縮が可能となる。