(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物が、マゼンタインク、シアンインク、又はブラックインクのいずれかである、請求項1に記載の昇華転写用インクジェットインクセット。
前記第1インク組成物中の前記第1の分散染料の含有割合に対する、前記第2インク組成物中の前記第2の分散染料の含有割合の比率が、5.0〜50%である、請求項1又は2に記載の昇華転写用インクジェットインクセット。
前記第1の分散剤及び前記第2の分散剤が、芳香族スルホン酸のナトリウム塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、β−ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、及びβ−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の昇華転写用インクジェットインクセット。
インクジェット法を用いて、請求項1〜5のいずれか1項に記載の昇華転写用インクジェットインクセットに備えられる第1インク組成物及び第2インク組成物を中間転写媒体に付着させる付着工程と、
前記中間転写媒体の前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物が付与された面と、被記録媒体の染色面と、を対向させた状態で加熱し、前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物に含まれる分散染料を前記被記録媒体に転写させる転写工程と、を有する、染色物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
〔昇華転写用インクジェットインクセット〕
本実施形態の昇華転写用インクジェットインクセットは、第1の分散染料及び第1の分散剤を含む第1インク組成物と、第2の分散染料及び第2の分散剤を含む第2インク組成物と、を備え、前記第1の分散染料と前記第2の分散染料は互いに同一の分散染料であり、前記第1インク組成物中の前記第1の分散染料の含有割合は、前記第2インク組成物中の前記第2の分散染料の含有割合以上であり、前記第1インク組成物中の前記第1の
分散染料の含有割合に対する前記第1の
分散剤の含有割合の比率Aが、前記第2インク組成物中の前記第2の
分散染料の含有割合に対する前記第2の
分散剤の含有割合の比率B以上であり、前記第1の分散剤及び前記第2の分散剤が、芳香族スルホン酸のリチウム塩及びカリウム塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のリチウム塩及びカリウム塩、β−ナフタレンスルホン酸のリチウム塩及びカリウム塩、並びに、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のリチウム塩及びカリウム塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む。
【0011】
本発明においては、分散剤として分散染料との親和性が高いリチウム塩又はカリウム塩を用いることで第2インク組成物中の色材の凝集を抑制する。また、分散剤としてリチウム塩又はカリウム塩を用いることにより、染色物上で第2インク組成物に第1インク組成物が滲み出すことも抑制する。
【0012】
なお、上述の第1の分散染料と第2の分散染料が同一とは、分散染料成分の95%以上、より好ましくは98%以上が同一構造の染料から構成されていることを意味し、不可避的に含有される類似構造体や不純物を含んでもよい。
【0013】
〔第1インク組成物〕
第1インク組成物は、第1の分散染料及び第1の分散剤を含む。
【0014】
〔第1の分散染料〕
第1の分散染料としては、特に限定されないが、例えば、以下に例示するものが挙げられる。
【0015】
イエロー分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースイエロー3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232等が挙げられる。
【0016】
オレンジ分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースオレンジ1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142等が挙げられる。
【0017】
レッド分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースレッド1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、266、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328等が挙げられる。
【0018】
バイオレット分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77等が挙げられる。
【0019】
グリーン分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースグリーン9等が挙げられる。
【0020】
ブラウン分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースブラウン1、2、4、9、13、19等が挙げられる。
【0021】
ブルー分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースブルー3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、134、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、266、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359、360等が挙げられる。
【0022】
ブラック分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースブラック1、3、10、24等が挙げられる。
【0023】
第1の分散染料の含有割合は、第1インク組成物の総量に対して、好ましくは2.0〜8.0質量%であり、より好ましくは3.0〜7.0質量%である。第1の分散染料の含有割合が2.0質量%以上であることにより、得られる染色物の光学濃度がより向上する傾向にある。また、第1の分散染料の含有割合が8.0質量%以下であることにより、保存安定性がより向上する傾向にある。なお、第1インク組成物中の第1の分散染料の含有割合は、第2インク組成物中の第2の分散染料の含有割合以上である。
【0024】
〔第1の分散剤〕
第1の分散剤は、芳香族スルホン酸のリチウム塩及びカリウム塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のリチウム塩及びカリウム塩、β−ナフタレンスルホン酸のリチウム塩及びカリウム塩、並びに、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のリチウム塩及びカリウム塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含む。
【0025】
上記芳香族スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β−ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸とβ−ナフトールスルホン酸との混合物、クレゾールスルホン酸と2−ナフトール−6−スルホン酸との混合物、及びリグニンスルホン酸が挙げられる。
【0026】
このなかでも、第1の分散剤として、β−ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物のリチウム塩及びカリウム塩、並びに、リグニンスルホン酸塩のリチウム塩及びカリウム塩からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、このなかでもリチウム塩がより好ましい。これにより、滲みがより抑制された染色物が得られる傾向にある。
【0027】
また、第1の分散剤は、芳香族スルホン酸のナトリウム塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、β−ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、及びβ−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物をさらに含んでもよい。これら化合物をさらに含むことにより、保存安定性がより向上する傾向にある。
【0028】
〔第2インク組成物〕
第2インク組成物は、第2の分散染料及び第2の分散剤を含む。
【0029】
〔第2の分散染料〕
第2の分散染料は第1の分散染料と同一の分散染料である。第2の分散染料の含有割合は、インク組成物の総量に対して、好ましくは0.10〜4.5質量%であり、好ましくは0.20〜4.0質量%である。第2の分散染料の含有割合が0.10質量%以上であることにより、得られる染色物の光学濃度がより向上する傾向にある。また、第2の分散染料の含有割合が4.5質量%以下であることにより、粒状性がより抑制される傾向にある。なお、第2インク組成物中の前記第2の分散染料の含有割合は、第1インク組成物中の前記第1の分散染料の含有割合以下である。
【0030】
〔第2の分散剤〕
第2の分散剤としては、特に限定されないが、例えば、第1の分散剤で例示したものを用いることができる。第2の分散剤と第1の分散剤とは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
このなかでも、第2の分散剤として、β−ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物のリチウム塩及びカリウム塩、並びに、リグニンスルホン酸塩のリチウム塩及びカリウム塩からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、このなかでもリチウム塩がより好ましい。これにより、色材の凝集がより抑制され、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0032】
第1インク組成物及び第2インク組成物は、マゼンタインク、シアンインク、又はブラックインクのいずれかであることが好ましい。第1インク組成物及び第2インク組成物がこのようなインク組成物であることにより、得られる染色物の粒状性がより向上する傾向にある。
【0033】
〔比率A〕
第1インク組成物中の第1の
分散染料の含有割合に対する第1の
分散剤の含有割合の比率Aは、好ましくは50〜200%であり、より好ましくは50〜150%であり、更に好ましくは75〜125%である。比率Aが50%以上であることにより、分散安定性がより向上し、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。また、比率Aが200%以下であることにより、インク中の水分蒸発時に生じる粘度上昇を抑制でき、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0034】
〔比率B〕
第2インク組成物中の第2の
分散染料の含有割合に対する第2の
分散剤の含有割合の比率Bは、好ましくは50〜200%であり、より好ましくは50〜150%であり、更に好ましくは75〜125%である。比率Bが50%以上であることにより、分散安定性がより向上し、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。また、比率Bが200%以下であることにより、得られる染色物の滲みがより抑制される傾向にある。
【0035】
〔比率C〕
比率Aは、比率B以上である。比率Bに対する比率Aの比率C(比率A/比率B)は、好ましくは1.0以上2.0以下であり、より好ましくは1.0以上1.5以下であり、更に好ましくは1.0以上1.3以下である。比率Cが1.0以上であることにより、得られる染色物の滲みがより抑制される傾向にある。また、比率Cが2.0以下であることにより、目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
【0036】
〔比率D〕
第1インク組成物中の第1の分散染料の含有割合に対する、第2インク組成物中の第2の分散染料の含有割合の比率Dは、好ましくは5.0%以上50%以下であり、好ましくは5.0%以上35%以下であり、好ましくは5.0%以上20%以下である。比率Dが5.0%以上であることにより、濃色部と淡色部の光学濃度差がより小さくなり、色の階調とび(トーンジャンプ)がより抑制される傾向にある。また、比率Dが50%以下であることにより、染色物上の濃色部と淡色部の光学濃度差がより大きくなり、粒状性がより改善される傾向にある。
【0037】
以下、第1インク組成物及び第2インク組成物(以下、まとめて「インク組成物」ともいう。)に含まれる分散染料以外の成分について説明する。なお、第1インク組成物と第2インク組成物に含まれる各成分は、第1インク組成物と第2インク組成物とを区別できる範囲において、互いに同一のものを用いても異なったものを用いてもよい。また、各成分の含有割合についても、第1インク組成物と第2インク組成物とを区別できる範囲において、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
〔水〕
インク組成物は、水を含んでもよい。水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生がより防止される傾向にある。
【0039】
水の含有割合は、インク組成物の総量に対して、50〜90質量%が好ましく、55〜85質量%がより好ましい。
【0040】
〔水溶性有機溶剤〕
インク組成物は、1種又は2種以上の水溶性有機溶剤をさらに含んでもよい。水溶性有機溶剤を含むことにより、長期放置時によるヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制しつつ、中間記録媒体への濡れ性を高めてインク組成物の浸透性がより向上し、吐出安定性及び目詰まり回復性もより向上する傾向にある。そのような水溶性有機溶剤としては、通常のインクに水溶性有機溶剤として使用されている化合物を用いることができ、ポリオール化合物、グリコールエーテル、糖類、ベタイン化合物が挙げられる。
【0041】
ポリオール化合物としては、例えば、分子内の炭素数が2以上6以下であり、かつ、分子内にエーテル結合を1つ有してもよいポリオール化合物(好ましくはジオール化合物)等が挙げられる。具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6− ヘキサンジオールが挙げられる。
【0042】
グリコールエーテルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールから選択されるグリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。より具体的には、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が好ましく例示できる。
【0043】
糖類とは単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類をいうものとする。糖類としては、例えば、トレオース、エリトルロース、エリトロース、アラビノース、リブロース、リボース、キシロース、キシルロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、イドース、ソルボース、グロース、タロース、タガトース、ガラクトース、アロース、プシコース、アルトロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、イソトレハロース、ゲンチオビオース、メリビオース、ツラノース、ソホロース、イソサッカロース、グルカン、フルクタン、マンナン、キシラン、ガラクツロナン、マンヌロナン、N−アセチルグルコサミン重合体などのホモグリカン、ジヘテログリカン、トリへテログリカンなどのヘテログリカン、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、マルトテトラオース、マルトペンタオースが挙げられ、好ましくは、トレハロースが例示できる。
【0044】
ベタイン化合物とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合しておらず、分子全体としては電荷を持たない化合物(分子内塩)である。好ましいベタイン化合物としては、アミノ酸のN−アルキル置換体であり、より好ましくはアミノ酸のN−トリアルキル置換体である。ベタイン化合物としては、例えば、トリメチルグリシン(「グリシンベタイン」ともいう。)、γ−ブチロベタイン、ホマリン、トリゴネリン、カルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、リジンベタイン、オルニチンベタイン、アラニンベタイン、スタキドリンおよびグルタミン酸ベタインが挙げられ、好ましくは、トリメチルグリシンが例示できる。
【0045】
水溶性有機溶剤の含有割合は、インク組成物の総量に対して、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。水溶性有機溶剤の含有割合が上記範囲内であることにより、長期放置時によるヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制しつつ、中間転写媒体への濡れ性を高めてインク組成物の浸透性により優れ、吐出安定性及び目詰まり回復性もより向上する傾向にある。
【0046】
〔界面活性剤〕
本実施形態で用いるインク組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。当該界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤のうち少なくともいずれかが好ましい。インク組成物がこれらの界面活性剤を含むことにより、吐出時のインク滴形成が一層良好となる。
【0047】
これらの中でも、インク流路への濡れ性を高めて、吐出特性がより向上する、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。
【0048】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製商品名)、サーフィノール465やサーフィノール61(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S−144、S−145(旭硝子株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(Dupont社製);FT−250、251(株式会社ネオス製)などが挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。
【0051】
界面活性剤の含有割合は、インク組成物の総質量に対し、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。界面活性剤の含有割合が上記範囲内であることにより、被記録媒体に付着したインク組成物の濡れ性がより向上する傾向にある。
【0052】
(その他の添加剤)
インク組成物は、さらに必要に応じて、防腐防黴剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、pH調整剤(例えば、トリエタノールアミン、アジピン酸、水酸化カリウム)、又は溶解助剤、その他、通常のインクにおいて用いることができる各種添加剤を含んでもよい。なお、各種添加剤は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0053】
〔染色物の製造方法〕
本実施形態の染色物の製造方法は、インクジェット法を用いて、上記昇華転写用インクジェットインクセットに備えられる前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物を中間転写媒体に付着させる付着工程と、前記中間転写媒体の前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物が付与された面と、被記録媒体の染色面と、を対向させた状態で加熱し、前記第1インク組成物及び前記第2インク組成物に含まれる分散染料を前記被記録媒体に転写させる転写工程とを有する。
【0054】
〔付着工程〕
付着工程は、インクジェット法を用いて、昇華転写用インクジェットインクセットに備えられる第1インク組成物及び第2インク組成物を中間転写媒体に付着させる工程である。インクジェット方式によるインク組成物の吐出は、公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。吐出方法としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができる。このなかでも、インク組成物の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
【0055】
インク付着工程では、本実施形態のインク組成物以外のインク組成物を用いてもよい。これにより、例えば、表現することのできる色域をより広いものとすることができる。
【0056】
(中間転写媒体)
中間転写媒体としては、特に限定されないが、例えば、普通紙等の紙、インク受容層が設けられた被記録媒体(インクジェット用専用紙、コート紙等で呼称される)等を用いることができる。このなかでも、シリカ等の無機微粒子でインク受容層が設けられた紙が好ましい。これにより、中間転写媒体に付着したインク組成物が乾燥する過程で、滲み等が抑制された中間転写媒体を得ることができ、また、後の転写工程において、分散染料の昇華がより円滑に進行する傾向にある。
【0057】
〔転写工程〕
転写工程は、中間転写媒体の第1インク組成物及び第2インク組成物が付着した面と、被記録媒体の染色面とを対向させた状態で加熱し、インク組成物に含まれる分散染料を被記録媒体に転写させる工程である。
【0058】
転写工程における加熱温度は、特に限定されないが、好ましくは160℃以上220℃以下であり、より好ましくは170℃以上200℃以下である。加熱温度が上記範囲内であることにより、転写に要するエネルギーをより少なくすることができ、染色物の生産性により優れる傾向にある。また、得られる染色物の発色性がより優れる傾向にある。
【0059】
本工程での加熱時間は、加熱温度にもよるが、30秒以上90秒以下が好ましく、45秒以上60秒以下がより好ましい。加熱時間が上記範囲内であることにより、転写に要するエネルギーをより少なくすることができ、染色物の生産性により優れる傾向にある。また、得られる染色物の発色性がより優れる傾向にある。
【0060】
また、本工程は、インク組成物が付着した中間転写媒体の表面を、被記録媒体と一定間隔で離間して対向させた状態で加熱することにより行うことも、中間転写媒体と被記録媒体とを密着させた状態で加熱することにより行うこともできる。このなかでも、中間転写媒体と被記録媒体とを密着させた状態で加熱することにより行うことが好ましい。これにより、転写に要するエネルギーをより少なくすることができ、染色物の生産性により優れる傾向にある。また、本工程における被記録媒体と中間転写媒体との位置ずれがより生じにくくなるため、染料を所望の位置により正確に転写した染色物が得られる上、得られる染色物の発色性がより向上する傾向にある。
【0061】
(被記録媒体)
被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、布帛(疎水性繊維布帛等)、樹脂(プラスチック)フィルム、紙、ガラス、金属、陶磁器等が挙げられる。また、被記録媒体としては、シート状、球状又は直方体形状等の立体的な形状を有する物を用いてもよい。
【0062】
被記録媒体が布帛である場合に、布帛を構成する繊維としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維、ポリアミド繊維及びこれらの繊維を2種以上用いた混紡品等が挙げられる。また、これらとレーヨン等の再生繊維あるいは木綿、絹、羊毛等の天然繊維との混紡品を用いてもよい。
【0063】
また、被記録媒体が樹脂(プラスチック)フィルムである場合、用い得る樹脂(プラスチック)フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム等が挙げられる。樹脂(プラスチック)フィルムは、複数の層が積層された積層体であってもよいし、材料の組成が傾斜的に変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
【0064】
(他の工程)
本実施形態の染色物の製造方法は、上述したような工程に加え、さらに他の工程(前処理工程、中間処理工程、後処理工程)を有するものであってもよい。
前処理工程としては、特に限定されないが、例えば、付着工程前に、被記録媒体にコート層を塗布する工程が挙げられる。
中間処理工程としては、特に限定されないが、例えば、中間転写工程の前又は転写工程の前に被記録媒体を予備加熱する工程が挙げられる。
後処理工程としては、特に限定されないが、例えば、転写工程後に、被記録媒体を洗浄する工程が挙げられる。
【0065】
また、インク組成物は、中間転写媒体を用いない昇華転写においても好適に使用できる。中間転写媒体を用いない昇華転写は、特に限定されないが、例えば、剥離可能なインク受容層が設けられた被記録媒体(フィルム製品等)のインク受容層に、インクジェット方式により本実施形態のインク組成物を付着させる工程と、インク組成物が付着したインク受容層が設けられた被記録媒体をそのまま加熱して、インク受容層から、その下層側の被記録媒体に昇華拡散染色する工程と、インク受容層を被記録媒体から剥離して染色物を得る工程とを有する方法が挙げられる。
【0066】
本実施形態の染色物は、上記昇華転写用インクジェットインクセットを用いて得られたものであり、例えば、上記染色物の製造方法により得られるものである。このような染色物は、粒状性、及びにじみがより抑制されたものとなる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0068】
[インク組成物用の材料]
下記の実施例及び比較例において使用したインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔色材〕
DR60 (Disperse Red 60)
DB359(Disperse Blue 359)
DY54 (Disperse Yellow 54)
〔界面活性剤〕
BYK−348(シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製)
〔分散剤〕
リグニンスルホン酸のLi塩
リグニンスルホン酸のK塩
リグニンスルホン酸のNa塩
β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のLi塩
〔水溶性有機溶剤〕
グリセリン
【0069】
[インク組成物の調製]
各材料を下記の表1に示す組成(質量%)で混合し、各インク組成物を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
〔実施例1〜16、比較例1〜6〕
〔粒状性〕
上記で得られた各インク組成物をインクジェットプリンタ(PX−G930、セイコーエプソン社製)にそれぞれ充填した。その後、プリンタのヘッドに昇華転写用インクを充填し、目詰まりしているノズルがなく、通常の記録ができることを確認した。このインクジェットプリンタにより、第1インク組成物及び第2インク組成物の両方を用いて、インクの打ち込み量を5%から最大で100%まで変化させた20階調のグラデーションパターンを、中間転写媒体であるTRANSJET Classic(Cham Paper社)に印刷した。なお、記録解像度を1440×720dpiとし、プリンタの動作環境は25℃とした。
【0072】
印刷後、目視にて記録面の粒状性の有無を確認した。
(評価基準)
A:記録面において、インク打ち込み量5%では粒状性が確認されない。
B:記録面において、インク打ち込み量5%で粒状性が確認されるが、インク打ち込み量10%では粒状性が確認されない。
C:記録面において、インク打ち込み量10%で粒状性が確認される。
【0073】
〔滲み〕
上記で得られた各インク組成物をインクジェットプリンタ(PX−G930、セイコーエプソン社製)にそれぞれ充填した。その後、プリンタのヘッドに昇華転写用インクを充填し、目詰まりしているノズルがなく、通常の記録ができることを確認した。このインクジェットプリンタにより、中間転写媒体であるTRANSJET Classic(Cham Paper社)に、第2インク組成物の打ち込み量が100%であるパターンと、第1インク組成物の打ち込み量を10%から100%まで変化させた10階調のグラデーションパターンとがそれぞれ直接接するように印刷し、中間転写媒体を得た。なお、記録解像度を1440×720dpiとし、プリンタの動作環境は25℃とし、各パターンを2枚ずつ印刷した。
【0074】
その後、印刷した2枚のうち一方の中間転写媒体を用いて、中間転写媒体の昇華転写用インク付着側を白色記録媒体である布帛(ポリエステル100%、タフタ、東レ社製)と密着させ、この状態で、ヒートプレス機(TP−608M、太陽精機社製)を用いて200℃で60秒の条件で加熱・加圧し、昇華転写を行い、各染色物を得た。
【0075】
中間転写媒体及び染色物の両方について、目視にて第2インク組成物のパターンと第1インク組成物のパターンとの界面の滲みの有無を確認した。
(評価基準)
A:染色物上、中間転写媒体上ともに滲みが確認されない。
B:染色物上では滲みが確認されないが、中間転写媒体上では滲みが確認される。
C:染色物上、中間転写媒体上ともに滲みが確認される。
【0076】
〔高温放置後の目詰まり回復性〕
上記で得られた各インク組成物をインクジェットプリンタ(PX−G930、セイコーエプソン社製)にそれぞれ充填した。その後、プリンタのヘッドに昇華転写用インクを充填し、目詰まりしているノズルがなく、通常の記録ができることを確認した。その後、ホームポジション外の位置(ヘッドがプリンタに備えたキャップの位置からずれており、ヘッドにキャップがされていない状態)で、40℃、20RH%の環境下に48時間放置した。放置後、再び全ノズルよりインク組成物を吐出し、初期と同等の印刷が可能となるまでに必要とされたクリーニングの回数を計測し、結果を以下の基準に基づいて判定した。
(評価基準)
A:第1インク組成物及び第2インク組成物を吐出するノズル共に、クリーニングが3回以内で全ノズルが吐出可能となる。
B:第1インク組成物及び第2インク組成物を吐出するノズル共に、クリーニングが4回以上6回以内で全ノズルが吐出可能となる。
C:第1インク組成物及び第2インク組成物を吐出するノズル共に、クリーニングを7回以上実施しても少なくとも一部のノズルの目詰まりが回復しない。
【0077】
【表2】