特許第6040961号(P6040961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040961
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/50 20160101AFI20161128BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20161128BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20161128BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20161128BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20161128BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20161128BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B60W20/50
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60K6/445ZHV
   B60L11/14
   F02D9/02 H
   F02D29/06 D
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-114226(P2014-114226)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-107786(P2015-107786A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2013-219220(P2013-219220)
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 慶
(72)【発明者】
【氏名】高橋 督忠
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−308207(JP,A)
【文献】 特開2004−132285(JP,A)
【文献】 特開2008−213824(JP,A)
【文献】 特開2015−199463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 20/50
B60K 6/20 − 6/547
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
F02D 9/00 − 11/10
F02D 29/00 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(21)の動力を第1モータジェネレータ(22)および車軸(43)に分割して伝達する動力分割機構(30)と、前記車軸に動力を伝達する第2モータジェネレータ(23)とを有するハイブリッド車を制御するハイブリッド車制御装置(11)と、
前記第1モータジェネレータと第2モータジェネレータを制御するモータ制御装置(4,5)と、
前記エンジンを制御するエンジン制御装置(3)と、
前記ハイブリッド車制御装置に異常が発生した場合に、前記第2モータジェネレータを強制的に停止させる停止手段(12,5)とを備え、
前記エンジン制御装置は、
前記停止手段による前記第2モータジェネレータの強制停止が実行中であり、且つ、前記第1モータジェネレータの回転数が予め設定された過回転判定回転数以上になる場合に、前記第1モータジェネレータの回転数が前記過回転判定回転数未満となるように、前記エンジンの回転数を制限する制御を行うエンジン回転制限手段(S100〜S150)を備え、
前記エンジン回転制限手段は、
前記第1モータジェネレータの回転数が前記過回転判定回転数を超えている分の回転数を超過回転数とし、前記第1モータジェネレータの回転数が前記過回転判定回転数以上である場合において、前記超過回転数が大きいことを示す予め設定された超過判定条件が成立したときには、フューエルカットにより前記エンジンの回転数を制限する一方、前記超過判定条件が成立していないときには、電子スロットルの開度を制御することにより、前記エンジンの回転数を制限する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記エンジン回転制限手段は、
前記第1モータジェネレータの回転数が前記過回転判定回転数になるときの前記エンジンの回転数を過回転判定エンジン回転数として、前記エンジンの回転数が前記過回転判定エンジン回転数以上になった場合に、前記第1モータジェネレータの回転数が前記過回転判定回転数以上になったと判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記モータ制御装置と前記エンジン制御装置は互いにデータ通信可能に接続されており、
前記モータ制御装置は、前記停止手段による前記第2モータジェネレータの強制停止が実行中である場合に、その旨を示す強制停止情報を前記エンジン制御装置へ送信する
ことを特徴とする請求項1〜請求項2の何れか1項に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力分割機構を用いるハイブリッド車を制御する車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイコンによる電子スロットル弁の制御が正常に行われない異常状態である場合に、スロットル弁を駆動するモータを強制的に停止させる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−127546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力分割機構を用いるハイブリッド車は、車軸を主にモータで駆動する。このため、ハイブリッド車を制御するマイコンで異常が発生した場合には、上記モータを強制的に停止させることになる。
【0005】
しかし、動力分割機構を用いるハイブリッド車では、動力分割機構を介して2つのモータとエンジンとが連結されている。このため、モータを駆動するためのモータが強制的に停止させられた場合においてエンジンが回転していると、エンジンの回転数によっては、もう一方のモータの回転数が大きくなり過ぎて、このモータが破損してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、動力分割機構を用いるハイブリッド車において、過回転によるモータの破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の車両制御システムは、ハイブリッド車制御装置と、モータ制御装置と、エンジン制御装置と、停止手段とを備える。
本発明の車両制御システムでは、ハイブリッド車制御装置が、エンジンの動力を第1モータジェネレータおよび車軸に分割して伝達する動力分割機構と、車軸に動力を伝達する第2モータジェネレータとを有するハイブリッド車を制御する。またモータ制御装置が第1モータジェネレータと第2モータジェネレータを制御し、エンジン制御装置がエンジンを制御する。そして停止手段が、ハイブリッド車制御装置に異常が発生した場合に、第2モータジェネレータを強制的に停止させる。またエンジン制御装置は、エンジン回転制限手段を備える。そしてエンジン回転制限手段が、停止手段による第2モータジェネレータの強制停止が実行中であり、且つ、第1モータジェネレータの回転数が予め設定された過回転判定回転数以上になる場合に、第1モータジェネレータの回転数が過回転判定回転数未満となるように、エンジンの回転数を制限する制御を行う。
【0008】
このように構成された本発明の車両制御システムは、ハイブリッド車制御装置に異常が発生した場合に第2モータジェネレータを強制的に停止させる。このため、ハイブリッド車制御装置に異常により第2モータジェネレータを正常に制御できなくなったとしても、第2モータジェネレータから車軸に過大な駆動力が伝達される事態の発生を回避することができる。
【0009】
さらに本発明の車両制御システムは、停止手段による第2モータジェネレータの強制停止が実行中であり、且つ、第1モータジェネレータの回転数が過回転判定回転数以上になる場合に、エンジンの回転数を制限する制御を行う。このため、動力分割機構を介してエンジンの動力が伝達される第1モータジェネレータにおいて、エンジンの回転数の上昇に起因して第1モータジェネレータの回転数が過回転判定回転数以上になる事態の発生を抑制することができ、過回転による第1モータジェネレータの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両制御システム1の構成を示すブロック図である。
図2】車両制御システム1が搭載された車両の駆動系の構成を示す平面図である。
図3】動力分割機構30の共線図である。
図4】監視処理の手順を示すフローチャートである。
図5】回転制限処理の手順を示すフローチャートである。
図6】車両制御システム1の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の車両制御システム1は、ハイブリッド車(Hybrid Vehicle)に搭載され、図1に示すように、ハイブリッド車電子制御装置2と、エンジン電子制御装置3と、モータジェネレータ電子制御装置4と、インバータ5を備える。以下、ハイブリッド車電子制御装置2をHVECU(Hybrid Vehicle Electronic Control Unit)2という。またエンジン電子制御装置3をエンジンECU3という。またモータジェネレータ電子制御装置4をMGECU(Motor Generator Electronic Control Unit)4という。
【0012】
HVECU2は、マイクロコンピュータ11(以下、マイコン11という)と監視回路12を備える。
マイコン11は、CPU、ROM、RAM、I/O及びこれらの構成を接続するバスラインなどから構成されており、車内LANを介してエンジンECU3およびMGECU4とデータ通信可能に接続されている。
【0013】
マイコン11は、運転者によるアクセルペダル踏み込み量、運転者によるブレーキペダル操作、および車両の走行速度等を用いて車両の運転状態を検出する。そしてマイコン11は、検出した運転状態に基づいて、エンジン21に対して要求するトルク(以下、要求エンジントルクという)と、モータジェネレータ22,23に対して要求するトルク(以下、要求モータトルクという)を算出する。その後にマイコン11は、算出した要求エンジントルクの大きさを示す要求エンジントルク信号をエンジンECU3へ送信するとともに、算出した要求モータトルクの大きさを示す要求モータトルク信号をMGECU4へ送信する。
【0014】
監視回路12は、マイコン11が正常状態であるか異常状態であるかを判断するために予め設定された判定情報をマイコン11から取得し、マイコン11が異常状態であると判断した場合に、インバータ5を強制停止させる停止信号をインバータ5へ出力する。
【0015】
インバータ5は、監視回路12から停止信号を入力すると、この停止信号をMGECU4へ出力する。
エンジンECU3は、HVECU2からの要求エンジントルク信号が示す要求エンジントルクを実現するために必要な吸入空気量、燃料噴射量および点火時期等を算出する。そしてエンジンECU3は、この算出結果に基づいて、スロットルモータ、インジェクタおよび点火プラブ等の各種アクチュエータを制御して、エンジン21を作動させる。
【0016】
MGECU4は、HVECU2からの要求モータトルク信号が示す要求モータトルクを実現するように駆動信号をインバータ5へ出力することによって、モータジェネレータ22,23を作動させる。またMGECU4は、インバータ5から停止信号を入力すると、モータジェネレータ23が強制停止状態であることを示すMG強制停止情報をエンジンECU3へ送信する。
【0017】
図2に示すように、エンジン21およびモータジェネレータ22,23は、動力分割機構30に連結されている。
動力分割機構30は、サンギア31、リングギア32およびプラネタリキャリア33を備えた遊星歯車機構により構成されている。
【0018】
エンジン21のクランク軸は、プラネタリキャリア33に連結される。そしてモータジェネレータ22の回転軸は、サンギア31に連結されている。またモータジェネレータ23の回転軸は、リングギア32に連結されている。これにより、エンジン21の回転駆動力は、プラネタリキャリア33を介して、サンギア31に連結されたモータジェネレータ22と、リングギア32に連結されたモータジェネレータ23とに伝達される。
【0019】
さらにリングギア32は、減速ギア機構41とディファレンシャルギヤ42を介して、車軸43に連結されている。このため、エンジン21を駆動させることにより、エンジン21の回転駆動力を車軸43に伝達することができる。同様に、モータジェネレータ23を駆動させることにより、モータジェネレータ23の回転駆動力を車軸43に伝達することができる。
【0020】
例えば車両の発進時や低速走行時には、エンジン21を停止させた状態でモータジェネレータ23を駆動させることにより、モータジェネレータ23の動力のみで車両を走行させることができる。
【0021】
また、例えば車両の通常走行時には、エンジン21を作動させることにより、車軸43を駆動させて車両を走行させるとともに、モータジェネレータ22を駆動させて発電させることができる。そして、この発電電力でモータジェネレータ23を駆動させることにより、エンジン21の動力にモータジェネレータ23の動力を追加して車両を走行させることができる。
【0022】
また上述のように、エンジン21のクランク軸はプラネタリキャリア33に連結され、モータジェネレータ22の回転軸はサンギア31に連結されて、車軸43は減速ギア機構41とディファレンシャルギヤ42を介してリングギア32に連結されている。このため、エンジン21の回転数(以下、エンジン回転数Neという)と、モータジェネレータ22の回転数(以下、モータ回転数Ngという)と、車軸43の回転数(以下、車軸回転数Ndという)は、図3に示す共線図のように、同一直線上に位置するように変化する。
【0023】
具体的には、エンジン21と車軸43との間のギア比を1とした場合におけるエンジン21とモータジェネレータ22との間のギア比をKとすると、エンジン回転数Neは下式(1)で表される。
【0024】
Ne = (Ng + K×Nd)/(K+1) ・・・(1)
次に、監視回路12が実行する処理(以下、監視処理という)を説明する。
監視処理が実行されると、監視回路12は、図4に示すように、まずS10にて、マイコン11から取得した判定情報に基づいて、マイコン11が異常状態であるか否かを判断する。異常状態であるか否かは、例えば「アクセル開度に対して実駆動トルクが異常に大きい」といった現象の発生を検知することにより判断することができる。
【0025】
ここで、マイコン11が正常状態である場合には(S10:NO)、監視処理を一旦終了し、S10の処理から監視処理を再度実行する。一方、マイコン11が異常状態である場合には(S10:YES)、S20にて、インバータ5を強制停止させる停止信号をインバータ5へ出力する。これにより、停止信号がインバータ5に入力し、インバータ5は強制停止する。
【0026】
そして、S20の処理が終了すると、監視処理を一旦終了し、S10の処理から監視処理を再度実行する。
次に、エンジンECU3が実行する回転制限処理の手順を説明する。回転制限処理は、エンジンECU3の動作中に繰り返し実行される処理である。
【0027】
この回転制限処理が実行されると、エンジンECU3は、図5に示すように、まずS100にて、モータジェネレータ23が停止状態であるか否かを判断する。具体的には、MGECU4からMG強制停止情報を受信した場合に、モータジェネレータ23が停止状態であると判断し、MG強制停止情報を受信していない場合に、モータジェネレータ23が停止状態でないと判断する。
【0028】
ここで、モータジェネレータ23が停止状態でない場合には(S100:NO)、回転制限処理を一旦終了する。一方、モータジェネレータ23が停止状態である場合には(S100:YES)、S110にて、下式(2)によりエンジン最大回転数Nemaxを算出する。ここで、Xは、モータジェネレータ22の最大回転数(以下、モータ最大回転数Xという)である。なお下式(2)は、式(1)のモータ回転数Ngをモータ最大回転数Xに置き換えることにより得られる。
【0029】
Nemax = (X + K×Nd)/(K+1) ・・・(2)
そしてS120にて、エンジン21の回転数(以下、エンジン回転数Neという)が、予め設定された回転制限判定回転数βをエンジン最大回転数Nemaxから減算した回転数以上であるか否かを判断する。なお、回転制限判定回転数βは、部品故障に至るまでのマージン等を考慮して設定される。例えば、「Nemax>Ne>Nemax−βの場合には、モータジェネレータ22の信頼性が低下しないが、Ne>Nemaxの場合には、モータジェネレータ22の信頼性が低下する」という基準で、回転制限判定回転数βが設定される。
【0030】
なお、後述のモータ制限判定回転数X1は、下式(3)により算出される。
(Nemax−β) = (X1 + K×Nd)/(K+1) ・・・(3)
ここで、エンジン回転数Neが、回転制限判定回転数βをエンジン最大回転数Nemaxから減算した回転数未満である場合には(S120:NO)、回転制限処理を一旦終了する。一方、エンジン回転数Neが、回転制限判定回転数βをエンジン最大回転数Nemaxから減算した回転数以上である場合には(S120:YES)、S130にて、電子スロットルの開度を絞るようにスロットルモータを制御する処理を実行することにより、エンジン回転数Neを小さくする。
【0031】
その後S140にて、エンジン回転数Neが、予め設定されたフューエルカット判定回転数αをエンジン最大回転数Nemaxに加算した回転数以上であるか否かを判断する。なお、フューエルカット判定回転数αは、部品故障マージン等を適用して設定される。例えば、「Ne>Nemax+αの場合には、モータジェネレータ22が一発で故障する一方、Ne>Nemaxの場合には、モータジェネレータ22の劣化で済む」という基準で、フューエルカット判定回転数αが設定される。
【0032】
ここで、エンジン回転数Neが、フューエルカット判定回転数αをエンジン最大回転数Nemaxに加算した回転数未満である場合には(S140:NO)、回転制限処理を一旦終了する。一方、エンジン回転数Neが、フューエルカット判定回転数αをエンジン最大回転数Nemaxに加算した回転数以上である場合には(S140:YES)、S150にて、フューエルカットを実行することにより、エンジン回転数Neを小さくする。そしてS150の処理が終了すると、回転制限処理を一旦終了する。
【0033】
次に、このように構成された車両制御システム1の動作の具体例を説明する。
図6に示すように、まず、マイコン11が異常状態であると監視回路12が判断すると(「マイコン11の状態」の時刻t01を参照)、監視回路12は停止信号をインバータ5へ出力する(「停止信号」の時刻t02を参照)。
【0034】
これにより、HVECU2からのモータジェネレータ23に対する要求モータトルクの大きさ(要求トルクRQ1を参照)に関わらず、モータジェネレータ23の実トルクRT1が低下し0N・mになる(「モータジェネレータ23のトルク」の時刻t02〜t03を参照)。
【0035】
その後、エンジン回転数Neが、(エンジン最大回転数Nemax−回転制限判定回転数β)以上になると(「Ne」の時刻t04を参照)、エンジン回転数Neを制限する制御(以下、Ne制限制御という)を開始する(矢印NCを参照)。
【0036】
これにより、HVECU2からのエンジン21に対する要求エンジントルクの大きさ(要求トルクRQ2を参照)に関わらず、エンジン21の実トルクRT2が低下し、エンジン回転数Neが、(エンジン最大回転数Nemax−回転制限判定回転数β)未満になると(「Ne」の時刻t05を参照)、Ne制限制御を終了する。その後、エンジン回転数Neが、(エンジン最大回転数Nemax−回転制限判定回転数β)以上になる度に(「Ne」の時刻t06,t07,t08,t09,t010を参照)、Ne制限制御が実行される。
【0037】
このように構成された車両制御システム1では、HVECU2のマイコン11が、エンジン21の動力をモータジェネレータ22および車軸43に分割して伝達する動力分割機構30と、車軸43に動力を伝達するモータジェネレータ23とを有するハイブリッド車を制御する。また、MGECU4とインバータ5がモータジェネレータ22とモータジェネレータ23を制御し、エンジンECU3がエンジン21を制御する。そして、HVECU2の監視回路12とインバータ5が、HVECU2のマイコン11に異常が発生した場合に、モータジェネレータ23を強制的に停止させる。またエンジンECU3が、監視回路12とインバータ5によるモータジェネレータ23の強制停止が実行中であり、且つ、モータジェネレータ22の回転数が予め設定されたモータ制限判定回転数X1以上になる場合に、モータジェネレータ22の回転数がモータ制限判定回転数X1未満となるように、エンジン21の回転数を制限する制御を行う(S100〜S150)。
【0038】
これにより車両制御システム1は、HVECU2のマイコン11の異常によりモータジェネレータ23を正常に制御できなくなったとしても、モータジェネレータ23から車軸43に過大な駆動力が伝達される事態の発生を回避することができる。さらに車両制御システム1は、動力分割機構30を介してエンジン21の動力が伝達されるモータジェネレータ22において、エンジン21の回転数の上昇に起因してモータジェネレータ22の回転数がモータ制限判定回転数X1以上になる事態の発生を抑制することができ、過回転によるモータジェネレータ22の破損を抑制することができる。
【0039】
またエンジンECU3は、エンジン21の回転数が、(エンジン最大回転数Nemax−回転制限判定回転数β)以上になった場合に、モータジェネレータ22の回転数がモータ制限判定回転数X1以上になったと判断する(S120)。
【0040】
これにより、車両制御のために一般的に利用されているエンジン回転数を用いてモータジェネレータ22の過回転を検出することができる。このため、モータジェネレータ22の過回転検出のために、モータジェネレータ22の回転数を示す情報を別途取得する必要がなくなり、車両制御システム1の構成を簡略化することができる。
【0041】
またエンジンECU3は、電子スロットルの開度を制御することにより、エンジン21の回転数を制限する(S130)。これにより、モータジェネレータ22の回転数がモータ制限判定回転数X1を超えている分の回転数(以下、超過回転数という)が大きいほど、電子スロットルの開度を小さくするというように、超過回転数に応じてエンジン21の回転数を制限する制御を行うことができる。
【0042】
またエンジンECU3は、フューエルカットにより、エンジン21の回転数を制限する(S150)。フューエルカットによりエンジン21への燃料供給が抑制されるため、エンジン21の出力を確実に低下させることができる。これにより、エンジン21の回転数の制限をより確実に実行することができる。
【0043】
またエンジンECU3は、エンジン回転数Neが、フューエルカット判定回転数αをエンジン最大回転数Nemaxに加算した回転数以上である場合には(S140:YES)、フューエルカットによりエンジン21の回転数を制限する(S150)。一方、エンジンECU3は、フューエルカット判定回転数αをエンジン最大回転数Nemaxに加算した回転数未満である場合には(S140:NO)、電子スロットルの開度を制御することによりエンジン21の回転数を制限する(S130)。
【0044】
なお、フューエルカットによるエンジン回転数の制限量は、電子スロットル開度の制御によるエンジン回転数の制限量よりも大きい。このため、上記の超過回転数が大きい場合には、フューエルカットを用いる一方、上記の超過回転数が大きくない場合には、電子スロットルの開度の制御を用いるというように、超過回転数の大きさに応じて適切なエンジン回転制限の方法を採用することができる。
【0045】
また、MGECU4とエンジンECU3は互いにデータ通信可能に接続されている。そしてMGECU4は、監視回路12とインバータ5によるモータジェネレータ23の強制停止が実行中である場合に、その旨を示すMG強制停止情報をエンジンECU3へ送信する。これにより、エンジンECU3は、モータジェネレータ23の強制停止が実行中であるか否かを、異常が発生しているHVECU2のマイコン11から取得する必要がなくなり、モータジェネレータ23の強制停止が実行中であるか否かの判断の信頼性を向上させることができる。
【0046】
以上説明した実施形態において、モータジェネレータ22は本発明における第1モータジェネレータ、モータジェネレータ23は本発明における第2モータジェネレータ、HVECU2のマイコン11は本発明におけるハイブリッド車制御装置、MGECU4とインバータ5は本発明におけるモータ制御装置、エンジンECU3は本発明におけるエンジン制御装置、監視回路12とインバータ5は本発明における停止手段、S100〜S150の処理は本発明におけるエンジン回転制限手段、モータ制限判定回転数X1は本発明における過回転判定回転数、(エンジン最大回転数Nemax−回転制限判定回転数β)は本発明における過回転判定エンジン回転数、S140の判断条件は本発明における超過判定条件である。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、図3の共線図により示される関係に基づいて導出された式(2)を用いて、エンジン最大回転数Nemaxを算出するものを示した。式(2)では、車軸回転数Ndを用いてエンジン最大回転数Nemaxを算出する。しかし、リングギア32の回転数を導出することができる回転数であれば、式(2)において車軸回転数Nd以外の回転数を用いてもよい。例えば、モータジェネレータ23の回転軸はリングギア32に連結されているため、モータジェネレータ23の回転数を用いてエンジン最大回転数Nemaxを算出するようにしてもよい。
【0048】
また上記実施形態では、エンジン回転数Neが、回転制限判定回転数βをエンジン最大回転数Nemaxから減算した回転数以上になると、エンジン回転数を制限する制御を実行するものを示した。しかし、モータジェネレータ22の回転数(モータ回転数Ng)を直接計測し、モータ回転数Ngがモータ制限判定回転数X1以上である場合に、エンジン回転数を制限する制御を実行するようにしてもよい。
【0049】
また上記実施形態では、HVECU2のマイコン11が異常状態である場合に停止信号を出力するものを示した。しかし、MGECU4が異常状態である場合に停止信号を出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…車両制御システム、2…HVECU、3…エンジンECU、4…MGECU、5…インバータ、11…マイコン、12…監視回路、21…エンジン、22,23…モータジェネレータ、30…動力分割機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6