特許第6040967号(P6040967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6040967空気入りタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040967
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20161128BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20161128BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20161128BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20161128BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08L23/26
   C08L23/00
   C08K3/36
   B60C1/00 Z
   B60C1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-153939(P2014-153939)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-30800(P2016-30800A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
(72)【発明者】
【氏名】田邊 祐介
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−159840(JP,A)
【文献】 特開2010−222509(JP,A)
【文献】 特開2006−290986(JP,A)
【文献】 特表2003−519273(JP,A)
【文献】 特開2005−089625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
B60C 1/00 − 19/12@Z
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、エチレン及びα−オレフィンから形成される繰り返し単位を有する酸変性ポリオレフィン(A)と、酸変性ポリオレフィンを除くポリオレフィン(B)と、シリカとを含有し、
前記酸変性ポリオレフィン(A):前記ポリオレフィン(B)が質量比で1:5〜5:1であり、
前記酸変性ポリオレフィン(A)と前記ポリオレフィン(B)との合計量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して3〜60質量部であり、
前記シリカの量が前記ジエン系ゴム100質量部に対して5〜150質量部である、空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記α−オレフィンが、プロピレン、1−ブテンおよび1−オクテンからなる群から選択される1種である、請求項に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン(B)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン及び1−オクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種から形成される繰返し単位を有する、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記酸変性ポリオレフィン(A)が、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンである、請求項1〜のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記酸変性ポリオレフィン(A)と前記ポリオレフィン(B)が予め混合されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ用ゴム組成物を構成部材に用いた空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記構成部材がキャップトレッドである請求項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を保護する観点から、空気入りタイヤにも環境への配慮が求められ、具体的には高い強度を維持しながら燃費を向上させる性能が望まれている。
燃費を改善するためには、走行時の発熱を抑制可能なゴム組成物を用いて空気入りタイヤを製作すればよく、特に、走行時に路面に接するキャップトレッドや走行時の繰り返し変形が大きいサイドウォールの発熱を低減することにより、燃費を改善することができると考えられる。
【0003】
そして、特許文献1において、tanδを算出する際に使用されるG′(貯蔵弾性率の目安)を増加させることを目的として、加硫ゴム、無機充填剤及び変性ゴムであって、i)カルボン酸もしくは無水物基を含有するぶら下がったもしくは末端官能性基、又はii)重合された不飽和カルボン酸の金属塩を含有する変性ゴム、を含んでなるタイヤトレッドを含むタイヤ部品が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−524420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載されたゴム組成物について検討したところ、このようなゴム組成物から得られるゴムのモジュラス(特に高温でのモジュラス)が低下する場合があることを明らかとした。
また、ゴム組成物にポリオレフィンを単に添加しても、低発熱性に劣ることを本発明者らは明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、優れた低発熱性を維持しつつ、モジュラスを高くできるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ジエン系ゴムと酸変性ポリオレフィン(A)とポリオレフィン(B)とを含有し、酸変性ポリオレフィン(A)とポリオレフィン(B)との量比、合計量が特定の範囲であるゴム組成物が、優れた低発熱性を維持しつつ、低温から高温でのモジュラスを高くできることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0008】
1. ジエン系ゴムと、酸変性ポリオレフィン(A)と、ポリオレフィン(B)とを含有し、
前記酸変性ポリオレフィン(A):前記ポリオレフィン(B)が質量比で1:5〜5:1であり、
前記酸変性ポリオレフィン(A)と前記ポリオレフィン(B)との合計量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して3〜60質量部である、ゴム組成物。
2. さらに、シリカを含有し、前記シリカの量が前記ジエン系ゴム100質量部に対して5〜150質量部である、上記1に記載のゴム組成物。
3. 前記酸変性ポリオレフィン(A)が、エチレン及び/又はα−オレフィンから形成される繰り返し単位を有する、上記1又は2に記載のゴム組成物。
4. 前記α−オレフィンが、プロピレン、1−ブテンおよび1−オクテンからなる群から選択される1種である、上記3に記載のゴム組成物。
5. 前記ポリオレフィン(B)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン及び1−オクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種から形成される繰返し単位を有する、上記1〜4のいずれか1つに記載のゴム組成物。
6. 前記酸変性ポリオレフィン(A)が、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンである、上記1〜5のいずれか1つに記載のゴム組成物。
7. 前記酸変性ポリオレフィン(A)と前記ポリオレフィン(B)が予め混合されている、上記1〜6のいずれか1つに記載のゴム組成物。
8. 上記1〜7のいずれか1つに記載のゴム組成物を構成部材に用いた空気入りタイヤ。
9. 前記構成部材がキャップトレッドである上記8に記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた低発熱性を維持しつつ、モジュラスを高くできるゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、
ジエン系ゴムと、酸変性ポリオレフィン(A)と、ポリオレフィン(B)とを含有し、
前記酸変性ポリオレフィン(A):前記ポリオレフィン(B)が質量比で1:5〜5:1であり、
前記酸変性ポリオレフィン(A)と前記ポリオレフィン(B)との合計量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して3〜60質量部である。
【0012】
本発明においては、ジエン系ゴムに対して、酸変性ポリオレフィン(A):ポリオレフィン(B)の質量比及び酸変性ポリオレフィン(A)とポリオレフィン(B)との合計量を特定の範囲で使用することによって、優れた低発熱性を維持しつつ、モジュラス(特に高温でのモジュラス)を高くすることができる。
これは、詳細には明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
すなわち、酸変性ポリオレフィンは、酸変性基(例えば、無水マレイン酸基)の存在によりシリカとの親和性が高くなると考えられ、シリカの分散に寄与していると考えられる。
また、酸変性ポリオレフィンが有するポリオレフィン部位は疎水性であり、ゴムとの物理的相互作用に優れると予想されるところ、何らかの理由によって、モジュラスが低下する。
このため、ポリオレフィンを添加することによって、酸変性ポリオレフィンによるモジュラスの低下を回復させ、優れた低発熱性を維持しつつ、モジュラス(特に高温でのモジュラス)を高くすることができると考えられる。
以下に、本発明のゴム組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0013】
<ジエン系ゴム>
本発明のゴム組成物が含有するジエン系ゴムは、主鎖に二重結合を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、耐摩耗性が良好となり、加工性に優れるという観点から、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム、NR、BRを用いるのが好ましい。
【0014】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン−イソプレンゴム(SBIR)等が挙げられ、中でも、SBRであるのが好ましい。
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムは、末端がヒドロキシ基、ポリオルガノシロキサン基、カルボニル基、アミノ基等で変性されていてもよい。
更に、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムの重量平均分子量は特に限定されないが、加工性の観点から、10万〜250万であるのが好ましく、30万〜200万であるのがより好ましい。なお、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムの重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0015】
上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムは、加工性や耐摩耗性の観点から、芳香族ビニルを20〜50質量%含むことが好ましく、共役ジエン中のビニル結合量を20〜70質量%含むことがより好ましい。
【0016】
ジエン系ゴムが少なくとも芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムを含む場合、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴムの量は、低発熱化を更に図ることができ、低発熱性とウェットグリップ性能のバランスの観点から、ジエン系ゴムに30〜100質量%含まれていることが好ましく、40〜90質量%含まれていることがより好ましい。
【0017】
<酸変性ポリオレフィン(A)>
本発明のゴム組成物が含有する酸変性ポリオレフィン(A)は、カルボン酸で変性されたポリオレフィンである。
【0018】
酸変性ポリオレフィン(A)の骨格は単独重合体、共重合体のいずれであってもよい。
酸変性ポリオレフィン(A)は、エチレン及び/又はα−オレフィンから形成される繰り返し単位を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテンおよび1−オクテンからなる群から選択される1種が挙げられる。
【0019】
(ポリオレフィン)
上記酸変性ポリオレフィン(A)の骨格を構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリオクテンなどの単独重合体(ホモポリマー);
エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・1−デセン共重合体、プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−オクテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、1−ブテン・1−ヘキセン共重合体、1−ブテン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−ブテン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・1−デセン共重合体、1−ブテン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などの2成分系の共重合体;
エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、エチレン・プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・エチレン・プロピレン共重合体、1−ブテン・エチレン・1−ヘキセン共重合体、1−ブテン・エチレン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・プロピレン・1−オクテン共重合体、1−ブテン・エチレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・1,4−ヘキサジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・エチレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・プロピレン・2、5−ノルボルナジエン共重合体、1−ブテン・エチレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、1−ブテン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体のような多成分系の共重合体;などが挙げられる。
【0020】
これらのうち、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリオクテン、プロピレン・エチレン共重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、1−オクテン・エチレン共重合体を用いるのが好ましい。
【0021】
(カルボン酸)
一方、上述したポリオレフィンを変性するカルボン酸としては、例えば、不飽和カルボン酸が挙げられる。具体的には例えば、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、クロトン酸、メタアクリル酸、イタコン酸、または、これらの各酸の酸無水物などが挙げられる。
これらのうち、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸を用いるのが好ましい。
【0022】
変性ポリオレフィン(A)は無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンが好ましい。
【0023】
酸変性ポリオレフィン(A)は、通常行われる方法、例えば、上記ポリオレフィンに、通常行われる条件、例えば、加熱下での撹拌等により不飽和カルボン酸をグラフト重合させる方法で製造してもよく、また市販品を用いてもよい。
市販品としては、例えば、タフマーMA8510(三井化学社製)、MP0620(三井化学社製)などの無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体;タフマーMH7020(三井化学社製)などの無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体;アドマーQE060(三井化学社製)などの無水マレイン酸変性ポリプロピレン;アドマーNF518(三井化学社製)などの無水マレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0024】
本発明においては、上記酸変性ポリオレフィン(A)の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜40質量部であるのが好ましく、2〜30質量部であるのがより好ましい。
また、本発明のゴム組成物が更にシリカを含有する場合、上記酸変性ポリオレフィン(A)の含有量は、シリカ100質量部に対して、0.5〜50質量部であるのが好ましく、1〜40質量部であるのがより好ましい。
【0025】
<ポリオレフィン(B)>
本発明のゴム組成物が含有するポリオレフィン(B)は特に制限されない。なお、本発明において、ポリオレフィン(B)は、酸変性ポリオレフィン(A)を含まない。
ポリオレフィン(B)は変性されていないポリオレフィンであるのが好ましい。
【0026】
ポリオレフィン(B)は、単独重合体、共重合体のいずれであってもよい。
ポリオレフィン(B)は、エチレン及び/又はα−オレフィンから形成される繰り返し単位を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテンおよび1−オクテンからなる群から選択される1種が挙げられる。
ポリオレフィン(B)は、エチレン、プロピレン、1−ブテン及び1−オクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種から形成される繰返し単位を有するのが好ましい。
【0027】
ポリオレフィン(B)としては、上記酸変性ポリオレフィン(A)の骨格を構成するポリオレフィンと同様のものが挙げられる。
【0028】
これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリオクテン、プロピレン・エチレン共重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体、1−オクテン・エチレン共重合体を用いるのが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン(B)はその製造について特に制限されない。ポリオレフィン(B)はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
ポリオレフィン(B)の含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜40質量部であるのが好ましく、1〜35質量部であるのがより好ましく、2〜25質量部であるのが更に好ましい。
【0031】
本発明において、上記酸変性ポリオレフィン(A):上記ポリオレフィン(B)は質量比で1:5〜5:1であり、1:4〜4:1であるのが好ましく、1:3〜3:1であるのがより好ましい。
【0032】
また、本発明において、上記酸変性ポリオレフィン(A)と上記ポリオレフィン(B)との合計量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して3〜60質量部であり、4〜50質量部であるのが好ましく、5〜40質量部であるのがより好ましい。
【0033】
本発明において、上記酸変性ポリオレフィン(A)と上記ポリオレフィン(B)が予め混合されている混合物(マスターバッチ)であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
混合比率は上記と同様である。混合の方法は特に制限されない。
【0034】
<シリカ>
本発明のゴム組成物は更にシリカを含有するのが好ましい。シリカは特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
上記シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、上記シリカは、シリカの凝集を抑制する観点から、CTAB吸着比表面積が50〜300m2/gであるのが好ましく、80〜250m2/gであるのがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0036】
本発明においては、上記シリカの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して5〜150質量部であるのが好ましく、10〜120質量部であるのがより好ましく、20〜100質量部であるのがさらに好ましい。
【0037】
<シランカップリング剤>
本発明のゴム組成物は更にシランカップリング剤を含有するのが好ましい。シランカップリング剤は特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシランカップリング剤を用いることができる。
上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種または2種以上を事前にオリゴマー化させたものを用いてもよい。
【0038】
また、上記以外のシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−[エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオールなどのメルカプト系シランカップリング剤;3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランなどのチオカルボキシレート系シランカップリング剤;3−チオシアネートプロピルトリエトキシシランなどのチオシアネート系シランカップリング剤;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種または2種以上を事前にオリゴマー化させたものを用いてもよい。
【0039】
これらのうち、補強性改善効果の観点から、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび/またはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用することが好ましく、具体的には、例えば、Si69[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;エボニック・デグッサ社製]、Si75[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;エボニック・デグッサ社製]等が挙げられる。
【0040】
上記シランカップリング剤の含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して1質量部以上であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
また、上記シランカップリング剤の含有量は、上記シリカ100質量部に対して0.1〜20質量部であるのが好ましく、0.5〜15質量部であるのがより好ましい。
【0041】
<カーボンブラック>
本発明のゴム組成物は更にカーボンブラックを含有するのが好ましい。
上記カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記カーボンブラックは、ゴム組成物の混合時の加工性等の観点から、窒素吸着比表面積(N2SA)が10〜300m2/gであるのが好ましく、20〜200m2/gであるのがより好ましい。
ここで、N2SAは、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0042】
上記カーボンブラックの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、1〜100質量部であるのが好ましく、5〜80質量部であるのがより好ましい。
【0043】
<その他の成分>
本発明のゴム組成物は、上述した成分以外に、炭酸カルシウムなどのフィラー;中空ポリマーなどの化学発泡剤;硫黄等の加硫剤;スルフェンアミド系、グアニジン系、チアゾール系、チオウレア系、チウラム系などの加硫促進剤;酸化亜鉛、ステアリン酸などの加硫促進助剤;ワックス;アロマオイル;パラフェニレンジアミン類(例えば、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン等)、ケトン−アミン縮合物(例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等)などのアミン系老化防止剤;可塑剤;等のタイヤ用のゴム組成物に一般的に用いられる添加剤を配合することができる。
これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。例えば、ジエン系ゴム100質量部に対して、硫黄は0.5〜5質量部、加硫促進剤は0.1〜5質量部、加硫促進助剤は0.1〜10質量部、老化防止剤は0.5〜5質量部、ワックスは1〜10質量部、アロマオイルは5〜30質量部、それぞれ配合してもよい。
【0044】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0045】
〔空気入りタイヤ〕
本発明の空気入りタイヤ(以下、単に「本発明のタイヤ」ともいう。)は、上述した本発明のゴム組成物を構成(ゴム)部材に用いた空気入りタイヤである。
ここで、本発明のゴム組成物を用いる構成部材は特に限定されないが、例えば、タイヤトレッド部、サイドウォール部、ビード部、ベルト層被覆用、カーカス層被覆用、インナーライナー等が挙げられ、中でも、タイヤトレッド部が好ましい。
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの模式的な部分断面図を示すが、本発明のタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0046】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
また、タイヤの内面には、タイヤ内部に充填された空気がタイヤ外部に漏れるのを防止するために、インナーライナー9が配置されている。
【0047】
本発明のタイヤは、例えば、本発明のゴム組成物をタイヤトレッド部のキャップトレッドに用いた場合、優れた低発熱性を維持しつつ、モジュラスを高くすることができる。
また、本発明のタイヤは、例えば、本発明のゴム組成物に用いられたジエン系ゴム、加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤の種類およびその配合割合に応じた温度で加硫または架橋し、キャップトレッドを形成することにより製造することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
<組成物の製造>
下記第1表に示す成分を、同表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち加硫系成分(硫黄および加硫促進剤)を除く成分を、1.7リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、150℃に達したときに混合物をミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、オープンロールで該混合物と加硫系成分とを混練し、ゴム組成物を製造した。
【0050】
<加硫ゴムシートの製造>
次に、上記のとおり製造したゴム組成物をランボーン摩耗用金型(直径63.5mm、厚さ5mmの円板状)中で、160℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを製造した。
【0051】
上記のとおり製造した加硫ゴムシートを用いて以下の評価を行った。その結果を第1表に示す。
<硬度>
上記のとおり製造した加硫ゴムシートについて、JIS K6253−3:2012に準じて、デュロメータ硬さ(タイプA)を20℃で測定して評価した。
測定結果を、比較例1の値を100とする指数で表した。この値が大きいほど硬度が良好であることを示す。
【0052】
<所定伸び引張応力(Se):(モジュラスの指標)>
上記のとおり製造した加硫ゴムシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251:2010に準拠して行い、100%伸び時における引張応力(100%モジュラス,以下「M100」と略す。)および300%伸び時における引張応力(300%モジュラス,以下「M300」と略す。)を、0℃又は100℃の条件下で測定した。
測定結果を、比較例1の値を100とする指数で表した。この指数が大きいほど応力が大きく、モジュラスが高いことを意味する。
【0053】
<反発弾性(60℃)>
上記のとおり製造した加硫ゴムシートについて、JIS K6255:2013に準じて、温度60℃における反発弾性を測定した。
測定結果を、比較例1の値を100とする指数で表した。この指数が大きいほど反発弾性に優れることを意味する。
【0054】
<tanδ(60℃)>
上記のとおり製造した加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、損失正接tanδ(60℃)を測定した。
測定結果を、比較例1の値を100とする指数で表した。この指数が小さいほど、低発熱性に優れることを意味する。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
第1表に示す各成分の詳細は下記のとおりである。
・SBR:乳化重合SBR、Nipol 1502(日本ゼオン社製)
・BR:Nipol BR 1220(日本ゼオン社製)
・酸変性α−ポリオレフィンA1:無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体(タフマーMH7020、三井化学社製)
・酸変性α−ポリオレフィンA2:無水マレイン酸変性プロピレン・エチレン共重合体(タフマーMP0620、三井化学社製)タフマーMP0620の酸変性率はタフマーMH7020と同じである。
・酸変性α−ポリオレフィンA3:無水マレイン酸変性エチレン・1−ブテン共重合体(タフマーMP7010、三井化学社製)タフマーMP7010の酸変性率はタフマーMH7020およびMP0620の半分である。
・酸変性α−ポリオレフィンA4:無水マレイン酸変性ポリエチレン(アドマーNF518、三井化学社製)。
・ポリオレフィンB1:ポリプロピレン、プライムポリマー社製プライムポリプロE−333GV、融点146℃
・ポリオレフィンB2:ポリエチレン、日本ポリエチレン社製ノバテックYF30、融点108℃
・酸変性ポリオレフィンA・ポリオレフィンBのM/B1:上記酸変性α−ポリオレフィンA1と上記ポリオレフィンB1とを各50質量%の割合で予め混合したマスターバッチ
・酸変性ポリオレフィンA・ポリオレフィンBのM/B2:上記酸変性α−ポリオレフィンA1と上記ポリオレフィンB2とを各50質量%の割合で予め混合したマスターバッチ
・シランカップリング剤:スルフィド系シランカップリング剤、Si69VP(エボニックデグッサ社製)
・シリカ:湿式シリカ(ニップシールAQ、CTAB吸着比表面積170m2/g、日本シリカ社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339M(昭和キャボット社製)
・酸化亜鉛:亜鉛華3号(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・老化防止剤:N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(アンチゲン6C、住友化学社製)
・オイル:エクストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・イオウ:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
・含硫黄加硫促進剤(CZ):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(サンセラー CM−PO、三新化学工業社製)
・加硫促進剤(DPG):1,3−ジフェニルグアニジン(サンセラー D−G、三新化学工業社製)
【0058】
上記第1表に示す結果から明らかなように、比較例1を基準として、比較例3、6(ポリオレフィンBを含まない)と比較すると、比較例3、6は比較例1よりモジュラスが低下した。
比較例4(酸変性ポリオレフィンAを含まない)は比較例1より、反発弾性、低発熱性が低下した。
酸変性ポリオレフィン(A):ポリオレフィン(B)の質量比が所定の範囲外である比較例5は、比較例3よりもモジュラスは若干改善されたものの、要求レベルを満足するものではなかった。
酸変性ポリオレフィン(A)とポリオレフィン(B)との合計量が所定の範囲より少ない比較例2は、比較例1よりもM300(100℃)が低かった。
酸変性ポリオレフィン(A)とポリオレフィン(B)との合計量が所定の範囲より多い比較例7は、比較例1よりもM300のモジュラスが低かった。
【0059】
これに対して、実施例1〜16は、比較例1よりも、低発熱性に優れ、モジュラスが同等又は高かった。また実施例1〜16は、比較例3と比べて優れた低発熱性を維持しつつ比較例3よりもモジュラス(特に高温でのモジュラス)が高かった。
また、実施例1〜16は硬度、反発弾性が高かった。
【符号の説明】
【0060】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
9 インナーライナー
図1