特許第6040983号(P6040983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040983
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン多層微多孔膜
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20161128BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20161128BHJP
   H01M 2/16 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   B32B5/32
   !H01M2/16 P
   !H01M2/16 L
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-507728(P2014-507728)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(86)【国際出願番号】JP2013057611
(87)【国際公開番号】WO2013146403
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-80033(P2012-80033)
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510157580
【氏名又は名称】東レバッテリーセパレータフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】山田 一博
(72)【発明者】
【氏名】菊地 慎太郎
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−245028(JP,A)
【文献】 特開2008−055901(JP,A)
【文献】 特開2011−225736(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/020671(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
B32B 5/32
H01M 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも両表面層を形成する第一の微多孔層と、両表層間に設けられた少なくとも一つの第二の微多孔層とを有するポリオレフィン多層微多孔膜であって、前記ポリオレフィン多層微多孔膜の表層面の一方の面に対する他方の面の長手方向(MD)の静摩擦係数が1.1以下、水銀圧入法にて測定される平均孔径が57nm以下、水銀圧入法にて測定される平均孔径と空孔率とから下記式で計算される孔緻密度が4以上であり、第二の微多孔層が超高分子量ポリエチレンを35重量%以上含むポリオレフィン多層微多孔膜。
孔緻密度=(P/A)×10
ここで、Aは水銀圧入法により求められる平均孔径(nm)、Pは空孔率(%)を表す。
【請求項2】
耐電圧が1.4kV/11.5μm以上、透気度が250秒/100cc以下である請求項1に記載のポリオレフィン多層微多孔膜。
【請求項3】
電気化学的安定性が65mAh以下である請求項2に記載のポリオレフィン多層微多孔膜。
【請求項4】
第一の微多孔層においてポリプロピレンが5重量%以上である請求項1〜のいずれかに記載のポリオレフィン多層微多孔膜。
【請求項5】
第一の微多孔膜と第二の微多孔膜は互いに組成が異なり、第一の微多孔膜の厚さ/第二の微多孔膜の厚さ/第一の微多孔膜の厚さは、0.05/0.9/0.05〜0.3/0.4/0.3である請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン多層微多孔膜。
【請求項6】
第一の微多孔層には超高分子量ポリエチレンが10重量%以下、第二の微多孔層には超高分子量ポリエチレンを35重量%以上含む請求項1又は2に記載のポリオレフィン多層微多孔膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン多層微多孔膜に関し、特にフィルム同士の静摩擦係数を下げて滑り性を改良かつ緻密化した微多孔を有するポリオレフィン多層微多孔膜及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
微多孔性膜は、例えば、リチウム一次電池および二次電池、リチウムポリマー電池、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、銀−亜鉛二次電池等における電池セパレータとして用いることができる。微多孔性膜を電池セパレータ、特にリチウムイオン電池セパレータに用いる場合には様々な特性が要求されるが、膜同士の摩擦係数が低いことによる優れた滑り性や、緻密な微細孔により構成されている微多孔膜の高い耐久性もこれら要求事項に含まれている。前者については、高い摩擦係数の場合、捲回状態から巻き出した際に剥離帯電現象が起きて静電気による周囲の器具・装置等にくっ付いてしまうハンドリング性の悪化がおこり、作業時の不快感にもつながる。更には静電気による異物の付着によりそのまま電池内部に取り込まれた場合ピンホールの発生等の懸念がある。後者については、例えば電池内部で膜の表面と裏面に電圧が印加された状態においてもショート発生確率が抑制されることに繋がる。この場合、緻密化により気体の透過性が損なわれるのが一般的であるが、一定の透気度範囲を維持しながら上記の性能を示すことが望ましい。また、このショート発生は膜表面に付着した異物も原因となりうるため、膜の耐電圧を高めるためには表面に異物が付きにくい、即ち膜表面の良好な滑り性、かつ膜の細孔が緻密な構造が望ましい。
【0003】
しかしながら微多孔膜におけるこれら表面の滑り性と細孔の緻密性に関する先行技術文献は極めて少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
例えば特許文献1では微多孔膜の安全性、サイクル特性、捲回性を両立し得るセパレータとして動摩擦係数を規定したポリオレフィン微多孔膜が開示されている。
【0005】
また、特許文献2ではポリオレフィン樹脂、フィラー及び可塑剤とを含む原料組成物において低透気度と高耐電圧を両立しうる微多孔膜の製法が開示されている。
【特許文献1】特開2010−202828号公報
【特許文献2】特開2010−202829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のポリオレフィン微多孔膜においては、細孔構造について着目されていない。
【0007】
特許文献2に記載の微多孔膜は、膜厚が大きく、セパレータとしてまだ不十分である。
【0008】
従って、本発明の課題は、膜同士の滑り性が良好でかつ緻密な細孔構造を有しつつも高透過性のポリオレフィン多層微多孔膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は以下の構成を有する。すなわち、
少なくとも両表面層を形成する第一の微多孔層と、両表層間に設けられた少なくとも一つの第二の微多孔層とを有するポリオレフィン多層微多孔膜であって、前記ポリオレフィン多層微多孔膜の表層面の一方の面に対する他方の面の長手方向(MD)の静摩擦係数が1.1以下、水銀圧入法にて測定される平均孔径が57nm以下、水銀圧入法にて測定される平均孔径と空孔率とから下記式で計算される孔緻密度が4以上であり、第二の微多孔層が超高分子量ポリエチレンを35重量%以上含むポリオレフィン多層微多孔膜、である。
【0010】
孔緻密度=(P/A)×10
ここで、Aは水銀圧入法により求められる平均孔径(nm)、Pは空孔率(%)を表す。
【0011】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、耐電圧が1.4kV/11.5μm以上、透気度が250秒/100cc以下であることが好ましい。
【0012】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、電気化学的安定性が65mAh以下であることが好ましい。
【0013】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、前記のとおり、第二の微多孔層が超高分子量ポリエチレンを35重量%以上含む。
【0014】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、第一の微多孔層においてポリプロピレンが5重量%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、第一の微多孔層には超高分子量ポリエチレンが10重量%以下、第二の微多孔層には超高分子量ポリエチレンを35重量%以上含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、特定値以下の静摩擦係数による良好な膜同士の滑り性と緻密な細孔構造による高い耐久性を有する。本発明のポリオレフィン多層微多孔膜を電池用セパレータに用いると、電池製造工場内での優れたハンドリング性と品質の向上、及び安全性、耐久性に優れた電池が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、第一のポリオレフィンからなる第一の微多孔層と、第二のポリオレフィンからなる第二の微多孔層とを少なくとも有する。ポリオレフィン多層微多孔膜は少なくとも三層以上の構造であり、第一の微多孔層を両表面層に有し、両表面層間に少なくとも1つの第二の微多孔層を有する。
[1]ポリオレフィン多層微多孔膜の原料と組成
(A)ポリオレフィン原料
ポリオレフィン多層微多孔膜の第一の微多孔層(両表面層)を形成する第一のポリオレフィン、及び第二の微多孔層(三層以上の構造において両表面層以外を構成する層)を形成する第二のポリオレフィンはいずれも特に限定はされないが、(1)重量平均分子量(Mw)が1×10以上の超高分子量ポリエチレン、(2)ポリエチレン、(3)ポリプロピレンの単独あるいは混合物が望ましい。以下これらのポリオレフィンについて詳述する。
【0018】
(1)超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)
超高分子量ポリエチレンは1×10以上のMwを有する。超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを少量含有するエチレン・α−オレフィン共重合体でもよい。エチレン以外のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル及びスチレンが好ましい。エチレン以外のα−オレフィンの含有量は5mol%以下が好ましい。超高分子量ポリエチレンのMwは1×10〜15×10が好ましく、1×10〜5×10がより好ましく、1×10〜3×10が特に好ましい。
【0019】
(2)ポリエチレン
ポリエチレンとしては高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられ、特に限定しないがHDPEが好ましい。これらのポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル及びスチレンが好ましい。エチレン以外のα−オレフィンの含有量は5mol%以下が好ましい。ポリエチレンは単一物でも、二種以上のポリエチレンからなる組成物でもよい。
【0020】
ポリエチレン組成物としては、Mwの異なる二種以上のHDPE同士の組成物、同様なMDPE同士の組成物、又は同様なLDPE同士の組成物、又は同様なLLDPE同士の組成物を用いてもよく、HDPE、MDPE、LDPE、及びLLDPEからなる群から二種以上選ばれたポリエチレンの混合組成物を用いてもよい。組成物は異なる2種以上のポリエチレンのドライブレンド品でも多段重合品でもよい。
【0021】
ポリエチレンの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、通常1×10〜1×10であり、好ましくは1×10〜5×10である。Mwと数平均分子量(Mn)の比Mw/Mn(分子量分布)は特に制限されないが、5〜300の範囲内であるのが好ましく、6〜100の範囲内であるのがより好ましい。Mw/Mnがこの好ましい範囲であると、ポリオレフィン溶液の押出が容易であり、一方、得られる微多孔膜の強度にも優れる。Mw/Mnは分子量分布の尺度として用いられるものであり、この値が大きいほど分子量分布の幅が大きい。すなわち単一物からなるポリオレフィンの場合、Mw/Mnはその分子量分布の広がりを示し、その値が大きいほど分子量分布は広がっている。単一物からなるポリオレフィンのMw/Mnはポリオレフィンを多段重合により調製することにより適宜調整することができる。多段重合法としては、一段目で高分子量成分を重合し、二段目で低分子量成分を重合またはその逆となる二段重合が好ましい。ポリオレフィンが組成物である場合、Mw/Mnが大きいほど、配合する各成分のMwの差が大きく、また小さいほどMwの差が小さい。ポリオレフィン組成物のMw/Mnは各成分の分子量や混合割合を調整することにより適宜調整することができる。
【0022】
(3)ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレンは単独重合体及び他のオレフィンとの共重合体のいずれでも良いが、単独重合体が好ましい。共重合体はランダム及びブロック共重合体のいずれでも良い。プロピレン以外のオレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等のα−オレフィン、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィン等が挙げられる。プロピレン共重合体中の他のオレフィンの割合は、耐熱性、耐圧縮性、耐熱収縮性等の物性を損なわない範囲であれば良く、具体的には10モル%未満であるのが好ましい。
【0023】
ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)は1×10〜4×10が好ましく、3×10〜3×10がより好ましい。ポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は1.01〜100であるのが好ましく、1.1〜50であるのがより好ましい。
【0024】
(4)その他のポリオレフィン
第一及び第二のポリオレフィンは、上記以外の成分として、多層微多孔膜の性能を損なわない範囲で、(a)Mwが1×10〜4×10のポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びエチレン・α−オレフィン共重合体、及び(b)Mwが1×10〜1×10のポリエチレンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種を含有しても良い。ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル及びポリスチレンは単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを含有する共重合体でもよい。
【0025】
(B)好ましいポリオレフィン組成
ポリオレフィン多層微多孔膜の第一の微多孔層(両表面層)を形成する第一のポリオレフィン、及び第二の微多孔層(三層以上の構造における両表面層以外を構成する層)を形成する第二のポリオレフィンに用いられる材料は上記の通りであるが、それぞれの層を構成するポリオレフィンは以下のとおりが好ましい。
【0026】
第一のポリオレフィンについては良好な滑り性を発現させるにはUHMWPEを混合する場合でも10重量%以下が好ましい。UHMWPEは、より好ましくは5重量%以下である。
【0027】
また、PPを混合する場合は5重量%以上が好ましい。PPは、より好ましくは10重量%以上である。第一のポリオレフィンにPPを5重量%以上混合することにより優れた電気化学的安定性を得ることができる。
【0028】
第二のポリオレフィンについては多層微多孔膜の内部に存在するために膜全体の力学物性、ガス透過性、耐電圧等に及ぼす影響が大きい。したがって、UHMWPEが35重量%以上になると緻密な細孔構造が発現し、比較的高い透過性を示しつつも、単位厚みあたりの耐電圧の向上が見られ、電池セパレータに用いた場合の耐久性、安全性が確保される。
【0029】
[2]ポリオレフィン多層微多孔膜の製造方法
(A)第一の製造方法
ポリオレフィン多層微多孔膜を製造する第一の方法は、(1-1)第一のポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して第一のポリオレフィン溶液を調製し、(1-2)第二のポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して第二のポリオレフィン溶液を調製し、(1-3)第一及び第二のポリオレフィン溶液を1つのダイより同時に押し出し、(1-4)得られた押出し成形体を冷却してゲル状積層シートを形成し、(1-5)ゲル状積層シートを少なくとも一軸方向に延伸し(第一の延伸)、(1-6)ゲル状積層シートから成膜用溶剤を除去し、(1-7)得られた積層膜を乾燥し、及び(1-8)得られた乾燥積層微多孔膜を再び少なくとも一軸方向に延伸(第二の延伸)する工程を有する。工程(1-8)の後、必要に応じて、熱処理[工程(1-9)]、電離放射による架橋処理[工程(1-10)]、親水化処理[工程(1-11)]等を行っても良い。
(1-1)第一ポリオレフィン溶液の調製
第一のポリオレフィンに成膜用溶剤を溶融混練し、第一のポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン溶液に必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材、孔形成剤(例えば微粉珪酸)等の各種添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0030】
成膜用溶剤は液体、固体いずれも使用できるが、室温で液体であるのが好ましい。液体溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、及び沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状積層シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。また溶融混練状態ではポリエチレンと混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤の代わりに、又は液体溶剤とともに用いてもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0031】
液体溶剤の粘度は25℃において30〜500cStであるのが好ましく、30〜200cStであるのがより好ましい。25℃における粘度を30cSt以上とすれば、発泡しにくく、混練が容易である。一方、500cSt以下とすれば液体溶剤の除去が容易である。
【0032】
第一のポリオレフィン溶液の均一な溶融混練方法は特に限定されないが、高濃度のポリオレフィン溶液を調製するために二軸押出機中で行うのが好ましい。成膜用溶剤は混練開始前に添加しても、混練中に二軸押出機の途中から添加してもよいが、後者が好ましい。第一のポリオレフィン溶液の溶融混練温度は、第一のポリオレフィン樹脂の融点+10℃〜第一のポリオレフィン樹脂の融点+150℃とするのが好ましい。融点は、JIS
K 7121に基づき示差走査熱量測定(DSC)により求める。具体的には、140〜260℃であるのが好ましく、170〜250℃であるのがより好ましい。
【0033】
二軸押出機のスクリュの長さ(L)と直径(D)の比(L/D)は20〜100の範囲が好ましく、35〜70の範囲がより好ましい。L/Dを20以上にすると、溶融混練が十分となる。L/Dを100以下にすると、ポリエチレン溶液の滞留時間が増大し過ぎない。二軸押出機のシリンダ内径は40〜100mmであるのが好ましい。
【0034】
第一のポリオレフィン溶液の濃度は1〜75重量%が好ましく、より好ましくは20〜70重量%である。第一のポリオレフィン溶液の濃度をこの好ましい範囲とすると、生産性に優れ、押出しの際にダイス出口でスウェルやネックインが小さくなり、ゲル状積層成形体の成形性及び自己支持性に優れる一方、ゲル状積層成形体の成形性が向上する。
(1-2)第二のポリオレフィン溶液の調製
第二のポリオレフィンに成膜用溶剤を溶融混練し、第二のポリオレフィン溶液を調製する。第二のポリオレフィン溶液に用いる成膜用溶剤は、第一のポリオレフィン溶液に用いる成膜用溶剤と同じでもよいし、異なってもよいが、同じであるのが好ましい。それ以外の調整方法は第一のポリオレフィン溶液の調製の場合と同じでよい。
(1-3)押出
第一及び第二のポリオレフィン溶液をそれぞれ押出機から1つのダイに送給し、そこで両溶液を層状に組合せ、シート状に押し出す。三層以上の構造を有する多層微多孔膜を製造する場合、第一のポリオレフィン溶液が少なくとも両表面層を形成し、第二のポリオレフィン溶液が両表層間の少なくとも一層を形成するように(好ましくは、両表面層の一方又は両方に接触するように)両溶液を層状に組合せ、シート状に押し出す。
【0035】
押出方法はフラットダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。いずれの方法でも、溶液を別々のマニホールドに供給して多層用ダイのリップ入口で層状に積層する方法(多数マニホールド法)、又は溶液を予め層状の流れにしてダイに供給する方法(ブロック法)を用いることができる。多数マニホールド法及びブロック法自体は公知であるので、それらの詳細な説明は省略する。多層用フラットダイのギャップは0.1〜5mmであるのが好ましい。押出し温度は140〜250℃好ましく、押出速度は0.2〜15m/分が好ましい。第一及び第二のポリオレフィン溶液の各押出量を調節することにより、第一及び第二の微多孔層の膜厚比を調節することができる。
(1-4)ゲル状積層シートの形成
得られた積層押出し成形体を冷却することによりゲル状積層シートを形成する。冷却は少なくともゲル化温度までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。冷却は40℃以下まで行うのが好ましい。冷却により、成膜用溶剤によって分離された第一及び第二のポリオレフィンのミクロ相を固定化することができる。一般に冷却速度を遅くすると擬似細胞単位が大きくなり、得られるゲル状積層シートの高次構造が粗くなるが、冷却速度を速くすると密な細胞単位となる。冷却速度がこの好ましい範囲であると、結晶化度が上昇せず、延伸に適したゲル状シートとなりやすい。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができる。
(1-5)ゲル状積層シートの延伸(第一の延伸)
得られたゲル状積層シートを少なくとも一軸方向に延伸する。ゲル状積層シートは成膜用溶剤を含むので、均一に延伸できる。ゲル状積層シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、同時二軸延伸が好ましい。
【0036】
延伸倍率は、一軸延伸の場合、2倍以上が好ましく、3〜30倍がより好ましい。二軸延伸ではいずれの方向でも3倍以上が好ましい(面積倍率で9倍以上が好ましく、16倍以上がより好ましく、25倍以上が特に好ましい)。面積倍率を9倍以上とすることにより突刺強度が向上する。一般に面積倍率が400倍を超えると、延伸装置、延伸操作等の点で制約が生じる。
(1-6)成膜用溶剤の除去
成膜用溶剤の除去(洗浄)に洗浄溶媒を用いる。第一及び第二のポリオレフィン相は成膜用溶剤と相分離しているので、成膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。適当な洗浄溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、三フッ化エタン、C14、C16等の鎖状フルオロカーボン、C等の環状ハイドロフルオロカーボン、COCH、COC等のハイドロフルオロエーテル、COCF、COC等のパーフルオロエーテル等の易揮発性溶媒が挙げられる。
【0037】
ゲル状積層シートの洗浄は、洗浄溶媒に浸漬する方法、洗浄溶媒をシャワーする方法、又はこれらの組合せにより行うことができる。洗浄溶媒は、膜100質量部に対し、300〜30,000重量部使用するのが好ましい。洗浄温度は15〜30℃でよく、必要に応じて加熱洗浄すればよい。加熱洗浄の温度は80℃以下であるのが好ましい。洗浄溶媒による洗浄は、液体溶剤の残留量が当初の添加量の1重量%未満になるまで行うのが好ましい。
(1-7)乾燥
成膜用溶剤を除去した積層微多孔膜を、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度はポリオレフィンの結晶分散温度以下であるのが好ましく、特に結晶分散温度より5℃以上低いのが好ましい。乾燥は、積層微多孔膜を100重量%(乾燥重量)として、残存洗浄溶媒が5質量%以下になるまで行うのが好ましく、3重量%以下になるまで行うのがより好ましい。乾燥が十分であると、後段の積層微多孔膜の延伸工程及び熱処理工程を行ったときに積層微多孔膜の空孔率が低下せず、透過性に優れる。
(1-8)積層微多孔膜の再延伸(第二の延伸)
乾燥後の積層微多孔膜を、少なくとも一軸方向に延伸(再延伸)する。積層微多孔膜の延伸は、加熱しながら上記と同様にテンター法等により行うことができる。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸及び逐次延伸のいずれでもよいが、同時二軸延伸が好ましい。なお再延伸は通常延伸ゲル状積層シートから得られた長尺シート状の積層微多孔膜に対して行うので、再延伸におけるMD方向及びTD方向とゲル状積層シートの延伸におけるMD方向及びTD方向とは一致する。これは他の製造方法例でも同じである。
【0038】
延伸温度は、微多孔膜を構成するポリオレフィンの結晶分散温度+20℃以下にするのが好ましく、結晶分散温度+15℃以下にするのがより好ましい。二次延伸温度の下限は、ポリオレフィンの結晶分散温度にするのが好ましい。再延伸温度をこの好ましい範囲とすると、耐圧縮性が低下せず、TD方向に延伸した場合のシート幅方向の物性のばらつきが小さい一方、ポリオレフィンの軟化が十分となり、延伸において破膜しにくく、均一に延伸できる。
【0039】
積層微多孔膜の延伸の一軸方向への倍率は1.1〜1.8倍とするのが好ましい。一軸延伸の場合、長手方向又は横手方向に1.1〜1.8倍とする。二軸延伸の場合、長手方向及び横手方向に各々1.1〜1.8倍とし、長手方向と横手方向で互いに同じでも異なってもよいが、同じであるのが好ましい。
(1-9)熱処理
乾燥後の積層微多孔膜を熱処理するのが好ましい。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラが均一化される。熱処理方法としては、熱固定処理及び/又は熱緩和処理を用いることができる。熱固定処理は、テンター方式又はロール方式により行うのが好ましい。熱固定処理温度は結晶分散温度以上〜融点以下の範囲内が好ましく、積層微多孔膜の延伸温度±5℃の範囲内がより好ましく、積層微多孔膜の延伸(再延伸)温度±3℃の範囲内が特に好ましい。
【0040】
熱緩和処理は、テンター方式、ロール方式、圧延方式、ベルトコンベア方式又はフローティング方式により行う。熱緩和処理は融点以下の温度、好ましくは60℃〜(融点−5℃)の温度範囲内で行う。本発明の製造工程でのリラックス率とは熱緩和処理において設定する緩和の割合を意味している。例えばTD方向の場合最大再延伸幅に対する熱緩和処理後の膜幅の割合をさす。
(1-10)架橋処理
積層微多孔膜に対して、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線の照射により架橋処理を施してもよい。電子線の照射の場合、0.1〜100Mradの電子線量が好ましく、100〜300kVの加速電圧が好ましい。架橋処理により積層微多孔膜のメルトダウン温度が上昇する。
(1-11)親水化処理
積層微多孔膜に親水化処理を施してもよい。親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
【0041】
界面活性剤処理の場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤及び両イオン系界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤を水又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールに溶解してなる溶液中に積層微多孔膜を浸漬するか、積層微多孔膜にドクターブレード法により溶液を塗布する。
(B)第二の製造方法
ポリオレフィン多層微多孔膜を製造する第二の方法は、(2-1)第一のポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して第一のポリオレフィン溶液を調製し、(2-2)第二のポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して第二のポリオレフィン溶液を調製し、(2-3)第一及び第二のポリオレフィン溶液を別個のダイより押出した直後に積層し、(2-4)得られた積層体を冷却してゲル状積層シートを形成し、(2-5)ゲル状積層シートを延伸し、(2-6)ゲル状積層シートから成膜用溶剤を除去し、(2-7)得られた積層微多孔膜を乾燥し、及び(2-8)積層微多孔膜を延伸する工程を有する。工程(2-8)の後、必要に応じて、熱処理工程(2-9)、電離放射による架橋処理工程(2-10)、親水化処理工程(2-11)等を行っても良い。
【0042】
第二の方法は工程(2-3)以外は第一の方法における各工程と同じであるので、工程(2-3)のみ説明する。工程(2-3)では、複数の押出機の各々に接続した近接するダイから第一及び第二のポリオレフィン溶液をシート状に押出し、各溶液の温度が高い(例えば100℃以上)うちに直ちに積層する。これ以外の工程は第一の方法と同じでよい。
(C)第三の製造方法
ポリオレフィン多層微多孔膜を製造する第三の方法は、(3-1)第一のポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して第一のポリオレフィン溶液を調製し、(3-2)第二のポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して第二のポリオレフィン溶液を調製し、(3-3)第一のポリオレフィン溶液を一つのダイより押し出して第一の押出し成形体を調製し、(3-4)第二のポリオレフィン溶液を別のダイより押し出して第二の押出し成形体を調製し、(3-5)得られた第一及び第二の押出し成形体を冷却して第一及び第二のゲル状シートを形成し、(3-6)第一及び第二のゲル状シートをそれぞれ延伸し、(3-7)延伸した第一及び第二のゲル状シートを積層し、(3-8)得られたゲル状積層シートから成膜用溶剤を除去し、(3-9)得られた積層微多孔膜を乾燥し、及び(3-10)積層微多孔膜を延伸する工程を有する。工程(3-7)と(3-8)の間に、(3-11)ゲル状積層シートの延伸工程等を設けてもよい。また工程(3-10)の後、(3-12)熱処理工程、(3-13)電離放射による架橋処理工程、(3-14)親水化処理工程等を設けてもよい。
【0043】
工程(3-1)及び(3-2)は第一の方法における工程(1-1)及び(1-2)と同じでよく、工程(3-3)及び(3-4)は第一及び第二のポリオレフィン溶液を個別のダイより押し出す以外は第一の方法における工程(1-3)と同じでよく、工程(3-5)は個別のゲル状シートを形成する以外は第一の方法における工程(1-4)と同じでよく、工程(3-6)は個別のゲル状シートを延伸する以外は第一の方法における工程(1-5)と同じでよく、工程(3-8)〜(3-10)は第一の方法における工程(1-6)〜(1-8)と同じでよい。また、工程(3-11)は第一の方法における工程(1-5)と同じでよく、工程(3-12)〜(3-14)は第一の方法における工程(1-9)〜(1-11)と同じでよい。
【0044】
以下に延伸した第一及び第二のゲル状シートを積層する工程(7)について説明する。三層以上の構造を有する多層微多孔膜を製造する場合、延伸した第一のゲル状シートが少なくとも両表面層を形成し、延伸した第二のゲル状シートが両表層間の少なくとも一層を形成するように、延伸ゲル状シートを積層する。積層方法は特に限定されないが、熱積層法が好ましい。熱積層法としては、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波積層法等が挙げられるが、ヒートシール法が好ましい。ヒートシール法としては熱ロールを用いたものが好ましい。熱ロール法では、一対の加熱ロール間に第一及び第二のゲル状シートを通す。ヒートシール時の温度及び圧力は、ゲル状シートが十分に接着し、かつ得られる多層微多孔膜の特性が低下しない限り特に制限されない。ヒートシール温度は、例えば90〜135℃とし、好ましくは90〜115℃とする。ヒートシール圧力は0.01〜50MPaが好ましい。第一及び第二のゲル状シートの厚さを調節することにより、第一及び第二の微多孔層の厚さ比を調節することができる。また多段の加熱ロール間を通すことにより、積層しながら延伸しても良い。
(D)第四の製造方法
ポリオレフィン多層微多孔膜を製造する第四の方法は、(4-1)第一のポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して第一のポリオレフィン溶液を調製し、(4-2)第二のポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して第二のポリオレフィン溶液を調製し、(4-3)第一のポリオレフィン溶液を一つのダイより押し出し、(4-4)第二のポリオレフィン溶液を別のダイより押し出し、(4-5)得られた各押出し成形体を冷却して第一及び第二のゲル状シートを形成し、(4-6)第一及び第二のゲル状シートをそれぞれ延伸し、(4-7)延伸した各ゲル状シートから成膜用溶剤を除去し、(4-8)得られた第一及び第二のポリオレフィン微多孔膜を乾燥し、(4-9)少なくとも第二のポリオレフィン微多孔膜を延伸し、(4-10)第一及び第二のポリオレフィン微多孔膜を積層する工程を有する。必要に応じて、工程(4-8)と(4-9)の間に第一及び第二のポリオレフィン微多孔膜のそれぞれに熱処理工程(4-11)を行ってもよい。また工程(4-10)の後、積層微多孔膜の延伸工程(4-12)、熱処理工程(4-13)、電離放射による架橋処理工程(4-14)、親水化処理工程(4-15)等を行ってもよい。
【0045】
工程(4-1)及び(4-2)は第一の方法における工程(1-1)及び(1-2)と同じでよく、工程(4-3)及び(4-4)は第一及び第二のポリオレフィン溶液を個別のダイより押し出す以外は第一の方法における工程(1-3)及び(1-4)と同じでよく、工程(4-5)は個別のゲル状シートを形成する以外は第一の方法における工程(1-4)と同じでよく、工程(4-6)は第三の方法における工程(3-6)と同じでよく、工程(4-7)は個別のゲル状シートから成膜用溶剤を除去する以外は第一の方法における工程(1-6)と同じでよく、工程(4-8)は個別の微多孔膜を乾燥する以外は第一の方法における工程(1-7)と同じでよい。工程(4-13)〜(4-15)は第一の方法における工程(1-9)〜(1-11)と同じでよい。
【0046】
工程(4-9)では、少なくとも第二のポリオレフィン微多孔膜を延伸する。延伸温度は、融点以下が好ましく、結晶分散温度〜融点がより好ましい。必要に応じて第一のポリオレフィン微多孔膜も延伸してもよい。延伸温度は、融点以下が好ましく、結晶分散温度〜融点がより好ましい。第一及び第二のポリオレフィン微多孔膜のいずれを延伸する場合でも、延伸倍率は、積層していない微多孔膜を延伸する以外第一の方法と同じでよい。
【0047】
次に、延伸した第一のポリオレフィン微多孔膜、及び延伸した第二のポリオレフィン微多孔膜を積層する工程(4-10)について説明する。三層以上の構造を有する多層微多孔膜を製造する場合、第一のポリオレフィン微多孔膜が少なくとも両表面層を形成し、前記第二のポリオレフィン微多孔膜が両表層間の少なくとも一層を形成するように、両微多孔膜を積層する。積層方法は特に限定されないが、第三の方法でゲル状シートを積層する工程と同様に熱積層法が好ましく、特にヒートシール法が好ましい。ヒートシール温度は、例えば90〜135℃とし、好ましくは90〜115℃とする。ヒートシール圧力は0.01〜50MPaが好ましい。積層しながら延伸してもよく、その方法として、上記温度及び圧力で多段の加熱ロール間に通す方法が挙げられる。
【0048】
熱処理工程(4-11)では、第一及び第二のポリオレフィン微多孔膜のそれぞれに別個で熱処理を施す。第一の微多孔膜の熱固定温度は結晶分散温度〜融点が好ましい。第一の微多孔膜の熱緩和温度は融点以下が好ましく、60℃〜(融点−5℃)がより好ましい。第二の微多孔膜の熱固定温度は結晶分散温度〜融点が好ましく、延伸温度±5℃がより好ましく、延伸温度±3℃が特に好ましい。第二の微多孔膜の熱緩和温度は融点以下が好ましく、60℃〜(融点−5℃)がより好ましい。
[3]ポリオレフィン多層微多孔膜の構造
(A)第一の微多孔層
(1)層数
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は三層以上の構造を有するが、第一の微多孔層は少なくとも両表面層にあればよい。多層微多孔膜を四層以上の構造とする場合、必要に応じて、両表面層の間に第一の微多孔層をさらに設けてもよい。例えば、第一の微多孔層/第二の微多孔層/第一の微多孔層/第二の微多孔層/第一の微多孔層といった構成である。
(2)第一の微多孔層の作用
両表面層を第一の微多孔層により形成すると、優れた滑り性を示すポリオレフィン多層微多孔膜が得られる。
(B)第二の微多孔層
(1)層数
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は三層以上の構造を有するが、第二の微多孔層は2つの第一の微多孔層(両表面層)の間に少なくとも一層設けられていればよい。多層微多孔膜を四層以上の構造とする場合、必要に応じて、第二の微多孔層を多層にしてもよい。
(2)第二の微多孔層の作用
第二の微多孔層は、表層ではないため、膜の表面性状に関係するような物性(例えば滑り性)への影響は小さいが、優れた膜全体の性能(例えば膜の力学物性やガス透過性や耐電圧特性)バランスを発現させる作用がある。
(C)第一及び第二の微多孔層の配置及び割合
ポリオレフィン多層微多孔膜の第一及び第二の微多孔層の配置は、両表面層に第一の微多孔層が設けられ、両表面層間に少なくとも一つの第二の微多孔層が設けられた三層以上の構造になる。四層以上の構造を有する多層微多孔膜の場合、両表面層間には、少なくとも一つの第二の微多孔層が設けられている限り、他に第一及び第二の微多孔層の一方又は両方が設けられていてもよい。両表面層間に複数の微多孔層を設ける場合、両表面層間の微多孔層の配置は特に制限されない。限定的ではないが、本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、第一の微多孔層/第二の微多孔層/第一の微多孔層の三層構造が好ましい。また、四層以上の構造を有する多層微多孔膜の場合、第一及び第二の微多孔層とは異なる組成の微多孔層(第三、第四・・・の微多孔層)を両表面層間に設けていてもよい。この場合、第三、第四・・・の微多孔層を構成する原料としては第一及び第二の微多孔層に用いられる原料を使用することができる。
【0049】
三層以上の構造において、第一の微多孔層の厚さ(第一の微多孔層の合計厚さ)の割合は、第一及び第二の微多孔層の合計厚さを100%として、10〜60%であるのが好ましい。第一の微多孔層の厚さ(第一の微多孔層の合計厚さ)の割合がこの好ましい範囲であると、十分な滑り性が発現し、一方、第二の微多孔層の厚さが相対的に少なくなり過ぎないので、細孔緻密化による高耐電圧等の耐久性、安全性が確保できる。この割合は、15〜50%がより好ましい。三層構造の場合、第一の微多孔層/第二の微多孔層/第一の微多孔層の層厚比は0.05/0.9/0.05〜0.3/0.4/0.3であるのが好ましく、0.07/0.86/0.07〜0.25/0.5/0.25であるのがより好ましい。
[3]ポリオレフィン多層微多孔膜の特性
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、以下の式で算出される孔緻密度が4以上であることが重要である。
【0050】
孔緻密度=(P/A)×10
ここで、Aは水銀圧入法により求められる平均孔径(nm)、Pは空孔率(%)を表す。
【0051】
なお、空孔率は後述する方法で求めた値である。孔緻密度は4.5以上であることが好ましい。孔緻密度が4未満であると、例えば膜の両側に電圧が印加された状態でショートが発生しやすくなり、耐電圧の低下につながる。本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は電池のセパレータに用いられた場合、耐久性が高まり安全性が増すことになる。
【0052】
また、本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、前記ポリオレフィン多層微多孔膜の表層の一方の面に対する他方の面の長手方向(MD)の静摩擦係数が1.1以下であることが重要である。静摩擦係数は、好ましくは1.0以下である。膜のおもて面対裏面の長手方向(MD)の静摩擦係数が1.1を越えると、膜同士の滑り性に劣り、捲回状態からの捲き出しに際して剥離帯電による静電気が発生し、作業の効率が悪化し、作業者の不快感、異物付着による品質劣化が生じる。
【0053】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、電気化学的安定性が65mAh以下であることが好ましい。さらに好ましくは60mAh以下である。電気化学的安定性とは後述する方法で求めた値である。
【0054】
本発明において耐電圧とは実施例の欄の(7)に記載された方法で測定した値をいう。本発明のポリオレフィン多層微多孔膜の耐電圧は1.4kV/11.5μm以上であることが好ましい。ここで耐電圧とは、微多孔膜を正極及び負極で挟み両電極に段階的に電圧を印加し、ショート個数を数え20個に達した電圧を言い、具体的に後述する方法で測定した値である。耐電圧は1.5kV/11.5μm以上であることがさらに好ましく、1.6kV/11.5μm以上であることがより好ましい。
【0055】
またさらに、透気度は250秒/100cc以下であることが好ましい。透気度は後述する方法で求めた値である。透気度は200秒/100cc以下であることがさらに好ましい。本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は膜厚が小さく、高い透気性を維持したままで、優れた孔緻密度、耐電圧を実現することができる。
[5]電池用セパレータ
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は電池用セパレータとして好適に使用できる。本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、電池用セパレータとして用いるため膜厚は電池の種類に応じて適宜選択しうるが、3〜200μmの膜厚を有するのが好ましく、5〜50μmの膜厚を有するのがより好ましく、10〜35μmの膜厚を有するのが特に好ましく、10〜20μmの膜厚を有するのが最も好ましい。
[6]電池
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル−水素二次電池、ニッケル−カドミウム二次電池、ニッケル−亜鉛二次電池、銀−亜鉛二次電池等の二次電池用のセパレータに好ましいが、特にリチウムイオン二次電池用セパレータに好ましい。以下リチウムイオン二次電池を説明する。ただし本発明はリチウムイオン二次電池に限定されない。
【0056】
リチウムイオン二次電池は、正極と負極がセパレータを介して積層されており、セパレータが電解液(電解質)を含有している。電極の構造は特に限定されず、公知の構造でよい。例えば、円盤状の正極及び負極が対向するように配設された電極構造(コイン型)、平板状の正極及び負極が交互に積層された電極構造(積層型)、積層された帯状の正極及び負極が巻回された電極構造(捲回型)等にすることができる。
【0057】
正極は、通常集電体と、その表面に形成され、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む層とを有する。正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物(リチウム複合酸化物)、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられ、遷移金属としては、V、Mn、Fe、Co、Ni等が挙げられる。リチウム複合酸化物の好ましい例としては、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、α−NaFeO型構造を母体とする層状リチウム複合酸化物等が挙げられる。負極は、集電体と、その表面に形成され、負極活物質を含む層とを有する。負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック等の炭素質材料が挙げられる。
【0058】
電解液はリチウム塩を有機溶媒に溶解することにより得られる。リチウム塩としては、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、LiN(CSO、LiPF(CF、LiPF(C、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等の高沸点及び高誘電率の有機溶媒や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキソラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低沸点及び低粘度の有機溶媒が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。高誘電率の有機溶媒は粘度が高く、低粘度の有機溶媒は誘電率が低いため、両者の混合物を用いるのが好ましい。
【0059】
電池を組み立てる際、セパレータに電解液を含浸させる。これによりセパレータ(多層微多孔膜)にイオン透過性を付与することができる。含浸処理は多層微多孔膜を常温で電解液に浸漬することにより行う。円筒型電池を組み立てる場合、例えば正極シート、多層微多孔膜からなるセパレータ、及び負極シートをこの順に積層し、巻回し、電池缶に挿入し、電解液を含浸させ、次いで安全弁を備えた正極端子を兼ねる電池蓋を、ガスケットを介してかしめる。
【実施例】
【0060】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各実施例におけるポリオレフィン微多孔膜特性の測定方法は次の通りである。
(1)平均膜厚(μm)
100mm四方のサンプル片を切り出し、四隅と中心部を接触厚み計により膜厚を測定し、平均することにより求めた。
(2)透気度(sec/100cm
JIS P 8117に準拠して測定した。
(3)空孔率(%)
50mm四方のサンプル質量から目付けW(g/cm)を算出した。次に膜の構成成分の平均密度ρ(g/cm)(単一成分の密度の加重平均)と厚みd(cm)から下式にて空孔率を計算した。
例えば成分1と成分2の比率がそれぞれy、yとすると(y+y=1)、それぞれ単一の密度をρ、ρとすると
平均密度ρ=y×ρ+y×ρ
空孔率P=(1−W/(d×ρ))×100(%)
空孔率は好ましくは20〜75%、さらに好ましくは25〜60%である。
(4)突刺強度(gf)
100mm四方のサンプル片を切り出し、四隅と中心部を先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、微多孔膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定し、平均値を求めた。
(5)熱収縮率(%)
微多孔膜を105℃で8時間保持したときの長手方向(MD)及び横手方向(TD)の長さの変化より収縮率を求めた。計算式は以下の通り。
【0061】
熱収縮率(%)=(1−(加熱後の長さ/加熱前の長さ))×100
(6)孔緻密度
上記(3)の空孔率P(%)及び後述する水銀圧入法より求められる平均孔径A(nm)から次式により求めた。
【0062】
孔緻密度=(P/A)×10
水銀圧入法(使用機器:Poresizer Type 9320、Micromeritic社製)により得られた累積の細孔容積をVp(cm/g)、Vpと各圧力で求められる細孔径rを基に円筒状細孔仮定の累積細孔比表面積をSp(m/g)として次式により算出した。
【0063】
平均孔径=2×Vp×1,000/Sp
平均孔径は好ましくは57nm以下、さらに好ましくは53nm以下である。
(7)耐電圧(kV)
微多孔膜の耐電圧については以下の方法にて評価した。サンプルサイズは幅650〜700mm×長さ600mm以上に切り出し、銅板電極(650mm×530mm)の上に広げる。その上に金属蒸着フィルムを被せてフェルト布を用いて表面を撫でて空気やシワを除去する。金属蒸着フィルムと銅板間に電圧を印加する。この場合0.5kVにて30秒間保持した後、0.1kV/10秒の速度で昇圧、0.1kVごとに10秒間保持、これを繰り返した。この間0.1kVごとにショート発生個数を数え、20個を超えた時点で測定終了とし、その時点での電圧を耐電圧とした。
【0064】
この操作を5回繰り返した平均値を(1)で求めた厚みを比例配分することで11.5μmでの値に換算して当該微多孔膜の耐電圧とした。
(8)電気化学的安定性(mAh)
本発明中における膜の電気化学的安定性とは、電池セパレータ用途の場合で高温(40〜80℃程度)下での使用や保管に対しての酸化劣化に対する耐久性を表す。具体的な測定方法を以下に示す。正極にLiCO2、負極に黒鉛、LiPF6を1モル/Lになるようにエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(体積比4/6)に溶解させた溶液を電解液として微多孔膜に浸漬し、電池を組み立てた。この電池に4.3Vの充電状態を60℃で21日間続け、この間電圧が一定となるように電池に供給した充電電流の積算値をmAh単位で示した。この値が小さいと電池容量の損失が小さいため電気化学的安定性に優れている。
(9)重量平均分子量
ポリエチレン、ポリプロレンの分子量は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Polymer Laboratories製 PL−20
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:145℃
・溶媒(移動相):o−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0mL/分
・試料調整:試料10mgに測定溶媒5mLを添加し、140〜150℃で約20分加熱攪拌
・インジェクション量:0.200mL
・検出器:示差屈折率検出器RI
・標準試料:単分散ポリスチレン
(10)静摩擦係数
ASTM D1894に準拠してフィルムの前記ポリオレフィン多層微多孔膜の表層の一方の面に対する他方の面のMD方向の静止摩擦係数を測定した。試験速度は15cm/分とした。
〔実施例1〕
(1)第一のポリオレフィン溶液の調製
重量平均分子量(Mw)が3.0×10の高密度ポリエチレン(HDPE)80重量%及びMwが1.2×10のポリプロピレン(PP)20重量%からなる第一のポリオレフィン組成物100重量部に、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2重量部をドライブレンドした。得られた混合物25重量%を強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=52.5)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[50cSt(40℃)]75重量%を供給し(樹脂濃度=25重量%)、230℃及び250rpmの条件で溶融混練して、第一のポリオレフィン溶液を調製した。
(2)第二のポリオレフィン溶液の調製
Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)40重量%、上記のHDPE60重量%からなる第二のポリオレフィン組成物100重量部に、上記酸化防止剤0.2重量部をドライブレンドした。得られた混合物25重量%を上記と同じ二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから上記と同じ流動パラフィン75重量%を供給し(樹脂濃度=25重量%)、230℃及び250rpmの条件で溶融混練して、第二のポリオレフィン溶液を調製した。
(3)成膜
第一及び第二のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機から三層用Tダイに供給し、第一のポリオレフィン溶液/第二のポリオレフィン溶液/第一のポリオレフィン溶液の層厚比が0.1/0.8/0.1となるように押し出した。押出し成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。ゲル状三層シートを、テンター延伸機により115℃で長手方向及び横手方向ともに5倍に同時二軸延伸(第一の延伸)を施し、100℃で熱固定した。次いで延伸したシート状のゲル状成形物を塩化メチレンの洗浄槽中に浸漬し、洗浄して流動パラフィンを除去した。洗浄した膜を風乾し、次に125℃の温度に加熱しながら、テンター延伸機によりTD方向に1.4倍に再び延伸(第二の延伸)し、更に同TD方向に86%のリラックスを施し、テンターに保持しながら125℃で熱固定処理して(第二の延伸、リラックス及び熱固定処理の合計26秒)ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0065】
得られた微多孔膜の物性を表1に示した。
〔実施例2〜9〕
第一、第二のポリオレフィン溶液の組成や第一、第二の延伸温度、リラックス率などを変更し、それ以外は実施例1同様の条件で微多孔膜を得たが、これらの諸条件及び物性を表1に纏めた。
〔実施例10〕
第二のポリオレフィン溶液のポリオレフィン組成物にはMwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)40重量%とMwが3.5×10のHDPE60重量%を用いた以外は実施例1同様の方法で微多孔膜を得た。
比較例1〜4
第一、第二のポリオレフィン溶液の組成や第一、第二の延伸温度、リラックス率などを変更し、それ以外は実施例1同様の条件で微多孔膜を得た。これらの諸条件及び物性を表1に纏めた。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すとおり、実施例の本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は膜同士の滑り性が良好でかつ緻密な細孔構造を有し、電池用セパレータとして好適である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のポリオレフィン多層微多孔膜は、特定値以下の静摩擦係数による良好な膜同士の滑り性と緻密な細孔構造による高い耐久性を有する。本発明のポリオレフィン多層微多孔膜を電池用セパレータに用いると、電池製造工場内での優れたハンドリング性と品質の向上、及び安全性、耐久性に優れた電池が得られる。