特許第6040986号(P6040986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本理化株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040986
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】流体軸受用潤滑油基油
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/38 20060101AFI20161128BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20161128BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20161128BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20161128BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20161128BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   C10M105/38
   C10N30:00 Z
   C10N30:02
   C10N30:06
   C10N30:08
   C10N40:02
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-519923(P2014-519923)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(86)【国際出願番号】JP2013064480
(87)【国際公開番号】WO2013183463
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-129637(P2012-129637)
(32)【優先日】2012年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191250
【氏名又は名称】新日本理化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 真也
(72)【発明者】
【氏名】川原 康行
(72)【発明者】
【氏名】石田 寛
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/017629(WO,A1)
【文献】 特開2005−290256(JP,A)
【文献】 特表2013−501135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M,C10N
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−メチル−1,5−ペンタンジオールと、
n−ウンデカン酸(A成分)、並びに
n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸及びn−デカン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸(B成分)とをエステル化反応して得られるメチルペンタンジオールジエステルであって、
A成分とB成分のモル比が30:70〜70:30の範囲であるメチルペンタンジオールジエステルを含有することを特徴とする流体軸受用潤滑油基油。
【請求項2】
B成分が、n−オクタン酸、n−ノナン酸及びn−デカン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の流体軸受用潤滑油基油。
【請求項3】
流体軸受用潤滑油基油中のメチルペンタンジオールジエステルが90重量%以上である、請求項1又は2に記載の流体軸受用潤滑油基油。
【請求項4】
流体軸受用潤滑油基油が、動圧流体軸受用潤滑油基油又は焼結含油軸受用潤滑油基油である、請求項1〜3のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
【請求項5】
流体軸受用潤滑油基油が、スピンドルモータ用の流体軸受用潤滑油基油である、請求項1〜4のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体軸受用潤滑油基油に関する。
【背景技術】
【0002】
HDD(ハードディスクドライブ)等に搭載されるモータでは、軸受として球軸受やころ軸受が用いられていたが、モータの小型化、低振動・低騒音化等の要請から、近年、すべり軸受の一種である動圧流体軸受や焼結含油軸受が開発され、実用化されている。
【0003】
動圧流体軸受は、軸外周面とスリーブ内周面の隙間に介在する潤滑油の油膜圧力によって、回転軸を支持し、軸外周面またはスリーブ内周面の少なくともいずれか一方に動圧溝を設け、その動圧効果によって形成された潤滑油膜によって回転軸の摺動面を浮上支持する。
【0004】
また、焼結金属等から構成される多孔質体に、潤滑油または潤滑グリースを含浸させて自己潤滑機能を持たせ、回転軸を支持する焼結含油軸受や、さらに焼結含油軸受の軸受面に動圧溝を設けた動圧型焼結含油軸受も存在している。
【0005】
AV・OA機器の高性能化、携帯ユースの普及等に伴い、流体軸受モータが使用され、近年、高速化、小型化の要求が強く、そのため、流体軸受にはさらなる低トルク化の要求がある。この低トルク化の要求に対応するため、比較的低粘度の潤滑油基油が選択されてきた。低粘度の潤滑油基油としては、ポリ−α−オレフィン等の合成炭化水素系潤滑油基油、脂肪族二塩基酸ジエステル、ネオペンチル型ポリオールエステル、脂肪酸モノエステル等のエステル系潤滑油基油を用いた流体軸受用潤滑油基油が提案されている(特許文献1〜8)。
【0006】
それらの中でも、流体軸受用潤滑油基油として、粘度特性、耐熱性、低温流動性等に優れているエステル系潤滑油基油が多く使用されている。
【0007】
エステル系潤滑油基油にはいくつかの種類があり、それぞれ粘度特性、耐熱性(耐揮発性)、低温流動性等の特性が異なり、また、低粘度になるにしたがって耐熱性(耐揮発性)が劣る傾向がある。したがって、流体軸受のトルクを低減するために、単に現行より低粘度のエステル系潤滑油基油を選択するだけでは、耐熱性(耐揮発性)を損なうことになり、流体軸受の耐久性を低下させることになる。
【0008】
また、既存のエステル系潤滑油基油は流体軸受用潤滑油基油として用いた場合、流体軸受モータを使用した時に少しずつエステル系潤滑油基油の分解が起こるため、流体軸受モータを長期に使用する場合、問題となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平11−514778号公報
【特許文献2】特表平11−514779号公報
【特許文献3】特開2000−500898号公報
【特許文献4】特開2003−119482号公報
【特許文献5】国際公開第2004/018595号
【特許文献6】特開2004−084839号公報
【特許文献7】特開2005−290256号公報
【特許文献8】特開2008−007741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、広い温度範囲で粘度の変化率が小さく(粘度指数が高い)、低温においても低粘度であり、低温流動性且つ耐揮発性が良好で、基油の分解を低減させた潤滑油基油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、特定の脂肪族モノカルボン酸を使用した3−メチル−1,5−ペンタンジオールジエステルが、粘度指数が高く、低温においても低粘度であり、低温流動性且つ耐揮発性が良好で、基油の分解を低減させた潤滑油基油であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のものである。
【0012】
[項1]
3−メチル−1,5−ペンタンジオールと、
n−ウンデカン酸(A成分)、並びに
n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸及びn−デカン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸(B成分)とをエステル化反応して得られるメチルペンタンジオールジエステルであって、
A成分とB成分のモル比が30:70〜70:30の範囲であるメチルペンタンジオールジエステルを含有することを特徴とする流体軸受用潤滑油基油。
【0013】
[項2]
B成分が、n−オクタン酸、n−ノナン酸及びn−デカン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の流体軸受用潤滑油基油。
【0014】
[項3]
流体軸受用潤滑油基油中のメチルペンタンジオールジエステルが90重量%以上である、項1又は2に記載の流体軸受用潤滑油基油。
【0015】
[項4]
前記流体軸受用潤滑油基油が、動圧流体軸受用潤滑油基油又は焼結含油軸受用潤滑油基油である、項1〜3のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
【0016】
[項5]
流体軸受用潤滑油基油が、スピンドルモータ用の流体軸受用潤滑油基油である、項1〜4のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
【0017】
[項6]
流体軸受用潤滑油基油が、ハードディスクドライブのスピンドルモータ用の流体軸受用潤滑油基油である、項5に記載の流体軸受用潤滑油基油。
【0018】
[項7]
流体軸受用潤滑油基油が、サーバー向けハードディスクドライブのスピンドルモータ用の流体軸受用潤滑油基油である、項6に記載の流体軸受用潤滑油基油。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、広い温度範囲で粘度の変化率が小さく(粘度指数が高い)、低温においても低粘度であり、低温流動性且つ耐揮発性が良好で、潤滑油基油の分解を低減させた潤滑油を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の潤滑油基油は、特定の脂肪族モノカルボン酸から成るメチルペンタンジオールジエステルを含有することを特徴とする潤滑油基油である。
【0021】
<メチルペンタンジオールジエステル>
本発明に係るメチルペンタンジオールジエステルは、n−ウンデカン酸(A成分)、並びに、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸及びn−デカン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸(B成分)を、A成分とB成分のモル比が30:70〜70:30の範囲で含有する混合酸と、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとのエステル化反応から得られるものである。
【0022】
本発明に係るメチルペンタンジオールジエステルの具体例として、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸及びn−ヘキサン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸及びn−ヘプタン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸及びn−オクタン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸及びn−デカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−ヘキサン酸及びn−ヘプタン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−ヘキサン酸及びn−オクタン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−ヘキサン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−ヘキサン酸及びn−デカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−ヘプタン酸及びn−オクタン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−ヘプタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−ヘプタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−オクタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−オクタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸、n−ノナン酸及びn−デカン酸とのジエステル等が挙げられる。
【0023】
[エステル化反応]
本発明のメチルペンタンジオールジエステルは、3−メチル−1,5−ペンタンジオールに脂肪族モノカルボン酸をエステル化反応することにより製造される。当該製造方法には、特に限定がなく、従来公知の製造方法を用いることができる。
【0024】
エステル化反応を行うに際し、エステル化触媒存在下で3−メチル−1,5−ペンタンジオールと脂肪族モノカルボン酸とをエステル化反応させた後、後処理・精製処理することにより、本発明に係るメチルペンタンジオールジエステルを得る工程が例示される。
【0025】
エステル化反応の際、脂肪族モノカルボン酸は、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1モルに対して、通常2.0〜3.0モル、好ましくは2.02〜2.5モル用いられる。
【0026】
エステル化触媒としては、ルイス酸、スルホン酸誘導体等が例示される。より具体的には、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、錫誘導体、チタン誘導体が例示される。また、スルホン酸誘導体としては、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等が例示される。その使用量としては、例えば、3−メチル−1,5−ペンタンジオールと脂肪族モノカルボン酸の総重量に対して、通常0.01〜5.0重量%程度用いられる。
【0027】
エステル化反応は、通常120〜250℃、好ましくは140〜230℃の反応温度で、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。反応時間としては、通常3〜30時間程度である。必要に応じて、生成してくる水を、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の水同伴剤を用いて系外に共沸留去させてもよい。
【0028】
エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下又は常圧下にて留去する。引き続き慣用の精製方法、例えば、中和、水洗、液抽出、減圧蒸留、活性炭等の吸着剤精製によりメチルペンタンジオールジエステルを精製することができる。
【0029】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、40℃における動粘度として、通常1〜20mm/sの範囲が推奨され、さらに好ましくは5〜15mm/sの範囲、特に7〜13mm/sの範囲が推奨される。なお、上記動粘度は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0030】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、粘度指数として、通常120以上が推奨され、さらに好ましくは130以上、特に150以上が推奨される。なお、上記粘度指数は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0031】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、低温での流動性として、例えば、低温流動性試験の流動点によって評価することができる。流動点は、通常0℃以下が推奨され、さらに好ましくは−15℃以下が推奨される。なお、上記流動点は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0032】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、耐熱性として、例えば、耐熱性試験の揮発量によって評価することができる。揮発量は、通常5重量%以下が推奨され、さらに好ましくは4重量%以下、特に2重量%以下が推奨される。なお、上記揮発量は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
【0033】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、潤滑性として、例えば、潤滑性試験による摩耗痕径によって評価することができる。摩耗痕径は、好ましくは0.60mm以下であり、より好ましくは0.58mm以下、特に好ましくは0.55mm以下が推奨される。摩耗痕径が小さいものほど潤滑性に優れる。なお、上記摩耗痕径は、後記実施例に記載した潤滑性試験にて得られる値である。
【0034】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、使用時における安定性として、例えば、上記潤滑性試験後の部分エステル(ジエステル化合物の片方のエステル基が加水分解した化合物)の増加量を測定することにより評価することができる。潤滑油試験後の部分エステルの増加量は、好ましくは0.10GC面積%以下、より好ましくは0.08GC面積%以下、特に好ましくは0.06GC面積%以下が推奨される。部分エステルの増加量が少ないものほど潤滑油基油の安定性に優れる。なお、上記部分エステルの増加量は、後記実施例に記載した部分エステルの増加量測定にて得られる値である。
【0035】
また、潤滑性試験後の全酸価の上昇量でも、使用時における安定性を評価することができる。潤滑性試験後の全酸価の上昇量は、好ましくは0.60mgKOH/g以下、より好ましくは0.55mgKOH/g以下、特に好ましくは0.50mgKOH/g以下が推奨される。全酸価の上昇量が少ないものほど潤滑油基油の安定性に優れる。なお、上記全酸価の上昇量は、後記実施例に記載した全酸価の上昇量測定にて得られる値である。
【0036】
メチルペンタンジオールジエステルは、本発明の流体軸受用潤滑油基油中において、90重量%以上含有されていることが好ましく、より好ましくは、95重量%以上、特に98重量%以上が好ましい。
【0037】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、併用基油として鉱物油(石油の精製によって得られる炭化水素油)、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式炭化水素油、フィッシャートロプシュ法によって得られる合成炭化水素の異性化油等の合成炭化水素油、動植物油、本エステル以外の有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーン油等の併用基油の少なくとも1種を適宜併用することができる。
【0038】
鉱物油としては、溶剤精製鉱油、水素化精製鉱油、ワックス異性化油が挙げられるが、通常、100℃における動粘度が1.0〜25mm/s、好ましくは2.0〜20.0mm/sの範囲にあるものが用いられる。
【0039】
ポリ−α−オレフィンとしては、炭素数2〜16のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1ーヘキサデセン等)の重合体又は共重合体であって、100℃における動粘度が1.0〜25mm/s、粘度指数が100以上のものが例示され、特に100℃における動粘度が1.5〜20.0mm/sで、粘度指数が120以上のものが好ましい。
【0040】
ポリブテンとしては、イソブチレンを重合したもの、イソブチレンをノルマルブチレンと共重合したものがあり、一般に100℃の動粘度が2.0〜40mm/sの広範囲のものが挙げられる。
【0041】
アルキルベンゼンとしては、炭素数1〜40の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が200〜450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベンゼン等が例示される。
【0042】
アルキルナフタレンとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン等が例示される。
【0043】
動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油等が例示される。
【0044】
本エステル以外の有機酸エステルとしては、脂肪酸モノエステル、脂肪族二塩基酸ジエステル、ポリオールエステル及びその他のエステルが例示される。
【0045】
脂肪酸モノエステルとしては、炭素数5〜22の脂肪族直鎖状又は分岐鎖状モノカルボン酸と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
【0046】
脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸等脂肪族二塩基酸若しくはその無水物と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのフルエステルが挙げられる。
【0047】
ポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−ブチル2−エチルプロパンンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のネオペンチル型構造のポリオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,6−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,7−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,9−ノナンジオール、4−メチル−1,9−ノナンジオール、5−メチル−1,9−ノナンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等の非ネオペンチル型構造のポリオールと炭素数3〜22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和のモノカルボン酸とのフルエステルを使用することが可能である。
【0048】
その他のエステルとしては、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の重合脂肪酸、或いは、縮合ヒマシ油脂肪酸、水添縮合ヒマシ油脂肪酸等のヒドロキシ脂肪酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
【0049】
ポリアルキレングリコールとしては、アルコールと炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレンオキシドの開環重合体が例示される。アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、これらの1種を用いた重合体、若しくは2種以上の混合物を用いた共重合体が使用可能である。又、片端又は両端の水酸基部分がエーテル化した化合物も使用可能である。重合体の動粘度としては、5.0〜1000mm/s(40℃)、好ましくは5.0〜500mm/s(40℃)である。
【0050】
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーの重合によって得られる化合物であり、モノマーとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。重合体の動粘度としては、5.0〜1000mm/s(40℃)、好ましくは5.0〜500mm/s(40℃)である。
【0051】
ポリフェニルエーテルとしては、2個以上の芳香環のメタ位をエーテル結合又はチオエーテル結合でつないだ構造を有する化合物が挙げられ、具体的には、ビス(m−フェノキシフェニル)エーテル、m−ビス(m−フェノキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの酸素の1個若しくは2個以上を硫黄に置換したチオエーテル類(通称C−エーテル)等が例示される。
【0052】
アルキルフェニルエーテルとしては、ポリフェニルエーテルを炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、特に1個以上のアルキル基で置換したアルキルジフェニルエーテルが好ましい。
【0053】
シリコーン油としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンのほか、長鎖アルキルシリコーン、フルオロシリコーン等の変性シリコーンが挙げられる。
【0054】
本発明の流体軸受用潤滑油基油に中における併用基油の含有量としては、10重量%未満が推奨され、好ましくは5重量%未満、特に2重量%未満が好ましい。
【0055】
本発明の流体軸受用潤滑油基油には、その性能を向上させるために、潤滑油基油(即ち、メチルペンタンジオールジエステル又はメチルペンタンジオールジエステル+併用基油)に加えて、酸化防止剤、金属清浄剤、無灰分散剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、加水分解抑制剤等の添加剤の少なくとも1種を適宜配合することも可能である。これらの配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、その具体的な例を以下に示す。
【0056】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、3−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジベンゾイルレゾルシノール、4−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、α−トコフェロール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−tert−ブチルベンジル)−4−メチル−6−tert−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジフェニルアミン、モノブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン、特にモノ(C−Cアルキル)ジフェニルアミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の一方が、アルキル基、特にC−Cアルキル基でモノ置換されているもの、即ち、モノアルキル置換されたジフェニルアミン)、p,p’−ジブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のジ(アルキルフェニル)アミン、特にp,p’−ジ(C−Cアルキルフェニル)アミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の各々が、アルキル基、特にC−Cアルキル基でモノ置換されているジアルキル置換のジフェニルアミンであって、二つのアルキル基が同一であるもの)、ジ(モノC−Cアルキルフェニル)アミンであって、一方のベンゼン環上のアルキル基が他方のベンゼン環上のアルキル基と異なるもの、ジ(ジ−C−Cアルキルフェニル)アミンであって、二つのベンゼン環上の4つのアルキル基のうちの少なくとも1つが残りのアルキル基と異なるもの等のジフェニルアミン類;N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン類;p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類等が例示される。この中でも、特に、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、チオジプロピオン酸ジ(n−ドデシル)、チオジプロピオン酸ジ(n−オクタデシル)等のチオジプロピオン酸エステル、フェノチアジン等の硫黄系化合物等が例示される。これらの酸化防止剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%添加することが望ましい。
【0057】
ここで、「潤滑油基油に対して0.01〜5重量%」とは、本発明に係るメチルペンタンジオールジエステルのみからなる潤滑油基油又はメチルペンタンジオールジエステルと併用基油との混合物からなる潤滑油基油100重量部に対して、0.01〜5重量部という意味である。以下の同様の表現においても同様である。
【0058】
金属清浄剤としては、Ca−石油スルフォネート、過塩基性Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルナフタレンスルフォネート等の金属スルフォネート、Ca−フェネート、過塩基性Ca−フェネート、Ba−フェネート、過塩基性Ba−フェネート等の金属フェネート、Ca−サリシレート、過塩基性Ca−サリシレート等の金属サリシレート、Ca−フォスフォネート、過塩基性Ca−フォスフォネート、Ba−フォスフォネート、過塩基性Ba−フォスフォネート等の金属フォスフォネート、過塩基性Ca−カルボキシレート等が使用可能である。これらの金属清浄剤は、使用する場合、潤滑油組成物中、通常、1〜10重量%程度、好ましくは2〜7重量%程度添加するのがよい。
【0059】
無灰分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルベンジルアミン、ポリアルケニルコハク酸エステル等が例示される。これらの無灰分散剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%添加することが望ましい。
【0060】
油性剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等の重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミン等の脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール等のグリセリンエーテル、ラウリルポリグリセリンエーテル、オレイルポリグリセリルエーテル等のアルキル若しくはアルケニルポリグリセリルエーテル、ジ(2−エチルヘキシル)モノエタノールアミン、ジイソトリデシルモノエタノールアミン等のアルキル若しくはアルケニルアミンのポリ(アルキレンオキサイド)付加物等が例示される。これらの油性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%添加することが望ましい。
【0061】
摩耗防止剤・極圧剤としては、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、アルキルフェニルホスフェート類、トリブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリブチルホスファイト、ジブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等の亜リン酸エステル類及びこれらのアミン塩等のリン系、硫化油脂、硫化オレイン酸等の硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、硫化オレフィン、ジアルキルジスルフィド等の硫黄系、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオカルバメート等の有機金属系化合物等が例示される。これらの摩耗防止剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%添加することが望ましい。
【0062】
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、没食子酸エステル系の化合物等が例示される。これらの金属不活性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜0.4重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%添加することが望ましい。
【0063】
防錆剤としては、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミド等のアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエート等の多価アルコール部分エステル、Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Zn−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネート等の金属スルフォネート、ロジンアミン、N−オレイルザルコシン等のアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が例示される。これらの防錆剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%添加することが望ましい。
【0064】
粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体等のオレフィン共重合体が例示される。これらの粘度指数向上剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜7重量%添加することが望ましい。
【0065】
流動点降下剤としては、塩素化パラフィンとアルキルナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、既述の粘度指数向上剤であるポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン等が例示される。これらの流動点降下剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、潤滑油基油に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%添加することが望ましい。
【0066】
消泡剤としては、液状シリコーンが適しており、これを使用する場合、その添加量は、通常、潤滑油基油に対して0.0005〜0.01重量%である。
【0067】
加水分解抑制剤としては、アルキルグリシジルエーテル類、アルキルグリシジルエステル類、アルキレングリコールグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ類、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、1,3−ジ−p−トリルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物が使用可能であり、通常、潤滑油基油に対して0.05〜2重量%添加するのが望ましい。
【0068】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、潤滑性試験後においてもほとんど分解せず、また、揮発量が少ないことから、特に、スピンドルモータ用の流体軸受用潤滑油基油として好適に用いることができる。なかでも、ハードディスクドライブのスピンドルモータ用、とりわけ、サーバー向けハードディスクドライブのスピンドルモータ用の流体軸受用潤滑油基油に適している。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、各例における潤滑油基油の物理特性及び化学特性は以下の方法により評価した。
【0070】
(a)全酸価
JIS−K−2501(1992)に準拠して測定した。なお検出限界は0.01mgKOH/gである。
【0071】
(b)動粘度
JIS−K−2283(2000)に準拠して、40℃、100℃における動粘度を測定した。但し、0℃動粘度はJIS−K−2283(2000)に規定される粘度−温度関係式より算出した。
【0072】
(c)粘度指数
JIS−K−2283(2000)に準拠して算出した。
【0073】
(d)低温流動性試験(流動点)
JIS−K−2269(1987)に準拠して流動点を測定した。
【0074】
(e)耐熱性試験(揮発量)
実施例又は比較例の各々の潤滑油基油に対し、2,2’−メチレンビス−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(東京化成工業(株)製)、IRGANOX L57(製品名,BASF製)、各0.5重量%を添加し溶解させて潤滑油組成物を調製した。当該潤滑油組成物を、内径25mm、高さ90mmのガラス管にエステル10gを秤量し、ガラス管を2本取り付けたシリコンゴム栓を付け、片方の管から空気を1.0NL/minで送る。150℃に設定したオイルバスにガラス管を浸漬して、20時間加熱した。加熱試験後の揮発量は下記の式に従い算出した。
揮発量(%)=[(W−W)/W]×100
[式中、Wは試験前の重量を示し、Wは試験後の重量を示す。]。
【0075】
(f)潤滑性試験
JPI−5S−32−90に準拠して、高速四球型摩耗試験機(神鋼造機製)を用いて、回転数1200rpm、荷重40kg、温度75℃、時間60分の条件で試験し、摩耗痕径を測定した。
【0076】
[安定性評価:潤滑性試験後の潤滑油基油の分析]
(g)部分エステルの増加量測定
潤滑性試験前及び試験後の潤滑油基油をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、部分エステル(ジエステル化合物の片方のエステル基が加水分解した化合物)を測定し、試験後の部分エステルのGC面積%の増加量を算出した。なお、混合エステルについては、各々の部分エステルを合計した。
[GC分析条件]
機器:島津製作所製 GC−2010
カラム:J&W製TC−5 30mx0.25mm
カラム温度:60〜300℃(昇温速度10℃/min)
インジェクション温度/検出器温度:305℃/305℃
検出器:FID
キャリアガス:ヘリウム
ガス流量:1.08ml/min
【0077】
(h)全酸価の上昇量測定
潤滑性試験前及び試験後の全酸価を測定し、試験後の全酸価の上昇量を算出した。
【0078】
<使用原料>
3−メチル−1,5−ペンタンジオール:クラレ(株)製[MPD]
n−ヘキサン酸:東京化成工業(株)製[Hexanoic Acid]を蒸留精製したものを使用(nC酸)
n−ヘプタン酸:アルケマ社製[NORMAL HEPTANOIC ACID]を蒸留精製したものを使用(nC酸)
n−オクタン酸:新日本理化(株)製[カプリル酸]を蒸留精製したものを使用(nC酸)
n−ノナン酸:OXEA社製[n−Pelargonic Acid]を蒸留精製したものを使用(nC酸)
n−デカン酸:新日本理化(株)製[カプリン酸]を蒸留精製したものを使用(nC10酸)
n−ウンデカン酸:東京化成工業(株)製[Undecanoic Acid]を蒸留精製したものを使用(nC11酸)
【0079】
[実施例1]
撹拌器、温度計、冷却管付き水分分留受器を備えた1リットルの四ツ口フラスコにn−ヘキサン酸106.5g(0.92モル)、n−ウンデカン酸398.4g(2.14モル)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)、キシレン(原料の総量に対し5重量%)及び触媒として酸化スズ(原料の総量に対し0.1重量%)を仕込み、窒素置換した後、徐々に230℃まで昇温した。理論生成水量(54.0g)を目処にして留出してくる生成水を水分分留受器で除去しつつ、還流が起こるように減圧度を調整しながら、エステル化反応を行い、全酸価が20以下となるまで反応を行った。反応終了後、キシレン及び残存する原料脂肪族モノカルボン酸を蒸留により除去してエステル化粗物を得た。次いで、得られたエステル化粗物の全酸価に対して1.2当量の苛性ソーダ水溶液で中和した後、中性になるまで水洗した。更に、得られたエステル化粗物を活性炭で処理した後、濾過により活性炭を除去して、全酸価が0.01mgKOH/g以下、部分エステル量0.12GC面積%の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ヘキサン酸、n−ウンデカン酸(モル比:nC酸/nC11酸=30/70)とのジエステル521.8gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0080】
[実施例2]
n−ヘキサン酸に代えてn−オクタン酸220.3g(1.53モル)を用い、n−ウンデカン酸の使用量を284.6g(1.53モル)に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−オクタン酸、n−ウンデカン酸(モル比:nC酸/nC11酸=50/50)とのジエステル574.7gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0081】
[実施例3]
n−ヘキサン酸に代えてn−ノナン酸241.7g(1.53モル)を用い、n−ウンデカン酸の使用量を284.6g(1.53モル)に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ノナン酸、n−ウンデカン酸(モル比:nC酸/nC11酸=50/50)とのジエステル594.3gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0082】
[実施例4]
n−ヘキサン酸に代えてn−デカン酸157.9g(0.92モル)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−デカン酸、n−ウンデカン酸(モル比:nC10酸/nC11酸=30/70)とのジエステル620.2gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0083】
[実施例5]
n−ヘキサン酸に代えてn−デカン酸263.2g(1.53モル)を用い、n−ウンデカン酸の使用量を284.6g(1.53モル)に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−デカン酸、n−ウンデカン酸(モル比:nC10酸/nC11酸=50/50)とのジエステル613.8gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0084】
[実施例6]
n−ヘキサン酸に代えてn−デカン酸368.4g(2.14モル)を用い、n−ウンデカン酸の使用量を170.7g(0.92モル)に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−デカン酸、n−ウンデカン酸(モル比:nC10酸/nC11酸=70/30)とのジエステル606.4gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0085】
[実施例7]
n−ヘキサン酸に代えてn−ノナン酸145.0g(0.92モル)及びn−デカン酸157.9g(0.92モル)を用い、n−ウンデカン酸の使用量を227.7g(1.22モル)に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸(モル比:nC酸/nC10酸/nC11酸=30/30/40)とのジエステル594.3gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0086】
[比較例1]
n−ヘキサン酸355.0g(3.06モル)と3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ヘキサノエート)438.0gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0087】
[比較例2]
n−ヘプタン酸397.8g(3.06モル)と3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ヘキサノエート)477.1gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0088】
[比較例3]
n−オクタン酸440.6g(3.06モル)と3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ヘキサノエート)516.2gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0089】
[比較例4]
n−ノナン酸483.5g(3.06モル)と3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ヘキサノエート)555.2gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0090】
[比較例5]
n−デカン酸526.3g(3.06モル)と3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ヘキサノエート)594.3gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0091】
[比較例6]
n−ウンデカン酸569.2g(3.06モル)と3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)とを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、本発明の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ヘキサノエート)633.3gを得た。合成したエステルの全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表1に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
表1から、本発明の潤滑油基油は、比較例1〜6に比べ、潤滑油基油の安定性評価(部分エステル量の増加量、全酸価の上昇量)において極めて優れており、潤滑油基油としての性能(動粘度、粘度指数、低温流動性、耐熱性、潤滑性)においても優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、広い温度範囲で粘度の変化率が小さく(粘度指数が高い)、低温においても低粘度であり、低温流動性且つ耐揮発性が良好で、潤滑油基油の分解を低減することができ、よって、長期間安定して流体軸受モータを使用することができる。