特許第6040996号(P6040996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6040996リチウムイオン二次電池用負極、及びこれを用いたリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6040996
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用負極、及びこれを用いたリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20161128BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20161128BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20161128BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20161128BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20161128BHJP
   C22C 27/02 20060101ALI20161128BHJP
   C22C 30/04 20060101ALI20161128BHJP
   C22C 45/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H01M4/134
   H01M4/38 Z
   H01M4/58
   H01M4/66 A
   C22C13/00
   C22C27/02 101Z
   C22C30/04
   C22C45/00
【請求項の数】9
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-548565(P2014-548565)
(86)(22)【出願日】2013年11月19日
(86)【国際出願番号】JP2013081117
(87)【国際公開番号】WO2014080886
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-256937(P2012-256937)
(32)【優先日】2012年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三木 文博
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 学
(72)【発明者】
【氏名】山本 健介
(72)【発明者】
【氏名】真田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】千葉 啓貴
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−311429(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/004031(WO,A1)
【文献】 特開2007−149604(JP,A)
【文献】 特開2010−205609(JP,A)
【文献】 特開2011−048969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の表面に配置された負極活物質、導電助剤、およびバインダを含む電極層と、を有するリチウムイオン二次電池用負極であって、
前記負極活物質が、下記式(1):
【化1】
(上記式(1)において、
Mは、Alであり、
Aは、不可避不純物であり、
x、y、z、およびaは、質量%の値を表し、この際、31≦x≦50、16≦y≦45、18≦z≦43、および0≦a<0.5であり、x+y+z+a=100である。)
で表される合金を含み、
前記集電体の弾性伸びが、1.39%以上、1.53%以下であることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項2】
集電体と、前記集電体の表面に配置された負極活物質、導電助剤、およびバインダを含む電極層と、を有するリチウムイオン二次電池用負極であって、
前記負極活物質が、下記式(1):
【化2】
(上記式(1)において、
Mは、Vであり、
Aは、不可避不純物であり、
x、y、z、およびaは、質量%の値を表し、この際、27≦x≦5210≦y≦636≦z≦63、および0≦a<0.5であり、x+y+z+a=100である。)
で表される合金を含み、
前記集電体の弾性伸びが、1.39%以上、1.53%以下であることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項3】
前記yが40以下であり、前記zが20以上である、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項4】
集電体と、前記集電体の表面に配置された負極活物質、導電助剤、およびバインダを含む電極層と、を有するリチウムイオン二次電池用負極であって、
前記負極活物質が、下記式(1):
【化3】
(上記式(1)において、
Mは、Cであり、
Aは、不可避不純物であり、
x、y、z、およびaは、質量%の値を表し、この際、29≦x≦6314≦y≦4811≦z≦48、および0≦a<0.5であり、x+y+z+a=100である。)
で表される合金を含み、
前記集電体の弾性伸びが、1.39%以上、1.53%以下であることを特徴とする、リチウムイオン二次電池用負極。
【請求項5】
前記xが44以下である、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項6】
前記xが40以下であり、前記yが34以上である、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項7】
前記集電体の弾性伸びが、1.40%以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項8】
前記集電体の弾性伸びが、1.50%以上である、請求項に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池負極を含む、リチウムイオン二次電池
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気デバイス用負極、及びこれを用いた電気デバイスに関する。本発明の電気デバイス用負極及びこれを用いた電気デバイスは、例えば、二次電池やキャパシタ等として電気自動車、燃料電池車及びハイブリッド電気自動車等の車両のモータ等の駆動用電源や補助電源に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの電気デバイスの開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、及び高いエネルギーを有することが求められている。従って、全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
【0005】
従来、リチウムイオン二次電池の負極には充放電サイクルの寿命やコスト面で有利な炭素・黒鉛系材料が用いられてきた。しかし、炭素・黒鉛系の負極材料ではリチウムイオンの黒鉛結晶中への吸蔵・放出により充放電がなされるため、最大リチウム導入化合物であるLiCから得られる理論容量372mAh/g以上の充放電容量が得られないという欠点がある。このため、炭素・黒鉛系負極材料で車両用途の実用化レベルを満足する容量、エネルギー密度を得るのは困難である。
【0006】
これに対し、負極にLiと合金化する材料を用いた電池は、従来の炭素・黒鉛系負極材料と比較しエネルギー密度が向上するため、車両用途における負極材料として期待されている。例えば、Si材料は、充放電において下記の反応式(A)のように1molあたり4.4molのリチウムイオンを吸蔵放出し、Li22Si(=Li4.4Si)においては理論容量2100mAh/gである。さらに、Si重量当りで算出した場合、3200mAh/gもの初期容量を有する。
【0007】
【化1】
【0008】
しかしながら、負極にLiと合金化する材料を用いたリチウムイオン二次電池は、充放電時の負極での膨張収縮が大きい。例えば、Liイオンを吸蔵した場合の体積膨張は、黒鉛材料では約1.2倍であるのに対し、Si材料ではSiとLiが合金化する際、アモルファス状態から結晶状態へ転移し大きな体積変化(約4倍)を起こすため、電極のサイクル寿命を低下させる問題があった。また、Si負極活物質の場合、容量とサイクル耐久性はトレードオフの関係であり、高容量を示しつつ高サイクル耐久性を向上させることが困難であるといった問題があった。
【0009】
こうした問題を解決すべく、式;SiAlを有するアモルファス合金を含む、リチウムイオン二次電池用の負極活物質が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、式中x、y、zは原子パーセント値を表し、x+y+z=100、x≧55、y<22、z>0、Mは、Mn、Mo、Nb、W、Ta、Fe、Cu、Ti、V、Cr、Ni、Co、Zr、及びYの少なくとも1種からなる金属である。かかる特許文献1に記載の発明では、段落「0018」に金属Mの含有量を最小限にすることで、高容量の他に、良好なサイクル寿命を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2009−517850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載の式;SiAlを有するアモルファス合金を有する負極を用いたリチウムイオン二次電池の場合、良好なサイクル特性を示すことができるとされているものの、初期容量が十分とはいえなかった。またサイクル特性も十分なものとはいえなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、高いサイクル特性を維持しつつ、かつ、初期容量も高くバランスよい特性を示すLiイオン二次電池等の電気デバイス用負極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、所定の3元系Si合金を負極活物質として使用し、所定の弾性伸びを有する負極集電体を使用することによって、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、集電体と、前記集電体の表面に配置された負極活物質、導電助剤、およびバインダを含む電極層と、を有する電気デバイス用負極に関する。この際、負極活物質が、下記式(1):
【0015】
【化2】
【0016】
で表される合金であり、前記集電体の弾性伸びが、1.30%以上であることを特徴とする。この際、上記式(1)において、Mは、Mは、Al、V、Cおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属である。また、Aは、不可避不純物である。さらに、x、y、z、およびaは、質量%の値を表し、この際、0<x<100、0<y<100、0<z<100、および0≦a<0.5であり、x+y+z+a=100である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る電気デバイスの代表的な一実施形態である積層型の扁平な非双極型リチウムイオン二次電池の概要を模式的に表した断面概略図である。
図2】本発明に係る電気デバイスの代表的な実施形態である積層型の扁平なリチウムイオン二次電池の外観を模式的に表した斜視図である。
図3】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−Al系合金の組成範囲と共に、参考例Aで成膜した合金成分をプロットして示す3元組成図である。
図4】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−Al系合金の好適組成範囲を示す3元組成図である。
図5】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−Al系合金のより好適な組成範囲を示す3元組成図である。
図6】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−Al系合金のさらなる好適な組成範囲を示す3元組成図である。
図7】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−V系合金の組成範囲と共に、参考例Bで成膜した合金成分をプロットして示す3元組成図である。
図8】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−V系合金の好適組成範囲を示す3元組成図である。
図9】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−V系合金のより好適な組成範囲を示す3元組成図である。
図10】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−V系合金のさらなる好適組成範囲を示す3元組成図である。
図11】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−C系合金の組成範囲と共に、参考例Cで成膜した合金成分をプロットして示す三元組成図である。
図12】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−C系合金の好適な組成範囲を示す三元組成図である。
図13】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−C系合金のより好適な組成範囲を示す三元組成図である。
図14】本発明の電気デバイス用負極が有する負極活物質を構成するSi−Sn−C系合金のさらに好適な組成範囲を示す三元組成図である。
図15】参考例及び比較参考例で得られた電池の初期放電容量に及ぼす負極活物質合金組成の影響を示す図である。
図16】参考例及び比較参考例で得られた電池の50サイクル目の放電容量維持率に及ぼす負極活物質合金組成の影響を示す図である。
図17】参考例及び比較参考例で得られた電池の100サイクル目の放電容量維持率に及ぼす負極活物質合金組成の影響を示す図である。
図18】実施例において、負極集電体の弾性伸びと電池の放電容量維持率の向上率との関係を表す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のように、本発明は、所定の3元系Si合金を負極活物質として使用し、所定の弾性伸びを有する負極集電体を使用すること点に特徴を有する。
【0019】
本発明によれば、特定のSi合金を負極活物質として用いることにより、SiとLiが合金化する際のアモルファス−結晶の相転移が抑制され電池のサイクル特性が向上しうる。さらに、上記の特定のSi合金を用いた負極において、所定の弾性伸びを有する集電体を使用することにより、電池の充放電に伴う負極活物質の膨張・収縮による負極活物質層の体積変化に追随して集電体が弾性的に変形しうる。そのため、集電体の塑性変形が起こりにくく、集電体の塑性変形による負極活物質層のゆがみを低減でき、正極との均一な電極間距離を維持できる。その結果、高容量・高サイクル耐久性を有する電気デバイスが得られうる。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の電気デバイス用の負極及びこれを用いてなる電気デバイスの実施形態を説明する。但し、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
以下、本発明の電気デバイス用の負極が適用され得る電気デバイスの基本的な構成を、図面を用いて説明する。本実施形態では、電気デバイスとしてリチウムイオン二次電池を例示して説明する。なお、本発明において、「電極層」とは、負極活物質、導電助剤、およびバインダを含む合剤層を意味するが、本明細書の説明では「負極活物質層」とも称することがある。同様に、正極側の電極層を「正極活物質層」とも称する。
【0022】
まず、本発明に係る電気デバイス用負極の代表的な一実施形態であるリチウムイオン二次電池用の負極およびこれを用いてなるリチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成できる。そのため本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極を用いてなるリチウムイオン二次電池では、車両の駆動電源用や補助電源用として優れている。その結果、車両の駆動電源用等のリチウムイオン二次電池として好適に利用できる。このほかにも、携帯電話などの携帯機器向けのリチウムイオン二次電池にも十分に適用可能である。
【0023】
すなわち、本実施形態の対象となるリチウムイオン二次電池は、以下に説明する本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極を用いてなるものであればよく、他の構成要件に関しては、特に制限されるべきものではない。
【0024】
例えば、上記リチウムイオン二次電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
【0025】
また、リチウムイオン二次電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。
【0026】
リチウムイオン二次電池内の電解質層の種類で区別した場合には、電解質層に非水系の電解液等の溶液電解質を用いた溶液電解質型電池、電解質層に高分子電解質を用いたポリマー電池など従来公知のいずれの電解質層のタイプにも適用し得るものである。該ポリマー電池は、更に高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)を用いたゲル電解質型電池、高分子固体電解質(単にポリマー電解質ともいう)を用いた固体高分子(全固体)型電池に分けられる。
【0027】
したがって、以下の説明では、本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極を用いてなる非双極型(内部並列接続タイプ)リチウムイオン二次電池につき図面を用いてごく簡単に説明する。但し、本実施形態のリチウムイオン二次電池の技術的範囲が、これらに制限されるべきものではない。
【0028】
<電池の全体構造>
図1は、本発明の電気デバイスの代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)のリチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の全体構造を模式的に表した断面概略図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、正極集電体11の両面に正極活物質層13が配置された正極と、電解質層17と、負極集電体12の両面に負極活物質層15が配置された負極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの正極活物質層13とこれに隣接する負極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。
【0030】
これにより、隣接する正極、電解質層、および負極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層の正極集電体には、いずれも片面のみに正極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層の負極集電体が位置するようにし、該最外層の負極集電体の片面または両面に負極活物質層が配置されているようにしてもよい。
【0031】
正極集電体11および負極集電体12は、各電極(正極および負極)と導通される正極集電板25および負極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートシート29の端部に挟まれるようにしてラミネートシート29の外部に導出される構造を有している。正極集電板25および負極集電板27は、それぞれ必要に応じて正極リードおよび負極リード(図示せず)を介して、各電極の正極集電体11および負極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0032】
上記で説明したリチウムイオン二次電池は、負極に特徴を有する。以下、当該負極を含めた電池の主要な構成部材について説明する。
【0033】
<正極>
[正極活物質層]
正極活物質層13は、正極活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0034】
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、リチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物、固溶体系、3元系、NiMn系、NiCo系、スピネルMn系などが挙げられる。
【0035】
リチウム−遷移金属複合酸化物としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni、Mn、Co)O、Li(Li、Ni、Mn、Co)O、LiFePO及びこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等が挙げられる。
【0036】
固溶体系としては、xLiMO・(1−x)LiNO(0<x<1、Mは平均酸化状態が3+、Nは平均酸化状態が4+である1種類以上の遷移金属)、LiRO−LiMn(R=Ni、Mn、Co、Fe等の遷移金属元素)等が挙げられる。
【0037】
3元系としては、ニッケル・コバルト・マンガン系(複合)正極材等が挙げられる。
【0038】
NiMn系としては、LiNi0.5Mn1.5等が挙げられる。
【0039】
NiCo系としては、Li(NiCo)O等が挙げられる。
【0040】
スピネルMn系としてはLiMn等が挙げられる。
【0041】
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。活物質それぞれの固有の効果を発現する上で最適な粒子径が異なる場合には、それぞれの固有の効果を発現する上で最適な粒子径同士をブレンドして用いればよく、全ての活物質の粒子径を必ずしも均一化させる必要はない。
【0042】
正極活物質層13に含まれる正極活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜30μmであり、より好ましくは5〜20μmである。なお、本明細書において、「粒子径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用いて観察される活物質粒子(観察面)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。また、本明細書において、「平均粒子径」の値は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。他の構成成分の粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
【0043】
正極(正極活物質層)は、通常のスラリーを塗布(コーティング)する方法のほか、混練法、スパッタ法、蒸着法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法および溶射法のいずれかの方法によって形成することができる。
【0044】
<正極集電体>
正極集電体11は導電性材料から構成される。集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。
【0045】
集電体の厚さについても特に制限はない。集電体の厚さは、通常は1〜100μm程度である。
【0046】
集電体の形状についても特に制限されない。図1に示す積層型電池10では、集電箔のほか、網目形状(エキスパンドグリッド等)等を用いることができる。
【0047】
集電体を構成する材料に特に制限はない。例えば、金属や、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が採用されうる。
【0048】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。
【0049】
また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0050】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0051】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
【0052】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
【0053】
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜35質量%程度である。
【0054】
<負極>
本実施形態の負極は、集電体と、前記集電体の表面に配置された特定の負極活物質、導電助剤、バインダを含む電極層と、を含み、前記集電体の弾性伸びが1.30%以上であることを特徴とする。
【0055】
[負極活物質層]
負極活物質層15は、負極活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0056】
(負極活物質)
負極活物質は、所定の合金を含む。
【0057】
合金
本実施形態において、前記合金は、下記化学式(1)で表される。
【0058】
【化3】
【0059】
上記式(1)において、Mは、Al、V、C、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属である。また、Aは、不可避不純物である。さらに、x、y、z、およびaは、質量%の値を表し、この際、0<x<100、0<y<100、0<z<100、および0≦a<0.5であり、x+y+z+a=100である。また、本明細書において、前記「不可避不純物」とは、Si合金において、原料中に存在したり、製造工程において不可避的に混入するものを意味する。当該不可避不純物は、本来は不要なものであるが、微量であり、Si合金の特性に影響を及ぼさないため、許容されている不純物である。
【0060】
本実施形態では、負極活物質として、第1添加元素であるSnと、第2添加元素であるM(Al、V、C、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属)を選択したことによって、Li合金化の際に、アモルファス−結晶の相転移を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。また、これによって、従来の負極活物質、例えば炭素系負極活物質よりも高容量のものとなる。
【0061】
ここでLi合金化の際、アモルファス−結晶の相転移を抑制するのは、Si材料ではSiとLiが合金化する際、アモルファス状態から結晶状態へ転移し大きな体積変化(約4倍)を起こすため、粒子自体が壊れてしまい活物質としての機能が失われるためである。そのためアモルファス−結晶の相転移を抑制することで、粒子自体の崩壊を抑制し活物質としての機能(高容量)を保持することができ、サイクル寿命も向上させることができるものである。かかる第1及び第2添加元素を選定することにより、高容量で高サイクル耐久性を有するSi合金負極活物質を提供できる。
【0062】
上述のように、Mは、Al、V、C、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの金属である。よって、以下、SiSnAl、SiSn、およびSiSnのSi合金について、それぞれ説明する。
【0063】
SiSnAl
上記SiSnAlは、上述のように、第1添加元素であるSnと、第2添加元素であるAlを選択したことによって、Li合金化の際に、アモルファス−結晶の相転移を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。また、これによって、従来の負極活物質、例えば炭素系負極活物質よりも高容量のものとなる。
【0064】
上記合金の組成において、xが12以上100未満であり、前記yが0超45以下であり、前記zが0超43以下であることが好ましい。なお、当該合金の組成は、図3の網掛け部分で表される。上記組成を有することにより、高容量を発現するのみならず、50サイクル後、100サイクル後も高い放電容量を維持しうる。
【0065】
なお、当該負極活物質の上記特性をより良好なものとする観点からは、図4の網掛け部分に示すように、前記xが31以上であることが好ましい。また、より好ましくは、図5の網掛け部分に示すように、さらに前記xを31〜50の範囲とする。さらに好ましくは、図6の網掛け部分に示すように、さらに前記yを15〜45、前記zを18〜43%の範囲とする。最も好ましくは、さらに前記xを16%〜45%の範囲とする。
【0066】
なお、Aは上述のように、原料や製法に由来する上記3成分以外の不純物(不可避不純物)である。前記aは、0≦a<0.5であり、0≦a<0.1であることが好ましい。
【0067】
SiSn
上記SiSnは、上述のように、第1添加元素であるSnと、第2添加元素であるVを選択したことによって、Li合金化の際に、アモルファス−結晶の相転移を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。また、これによって、従来の負極活物質、例えば炭素系負極活物質よりも高容量のものとなる。
【0068】
上記合金の組成において、前記xが27以上100未満であり、前記yが0超73以下であり、前記zが0超73以下であることが好ましい。なお、この数値範囲は、図7の網掛け部分で示す範囲に相当する。上記組成を有することにより、高容量を発現するのみならず、50サイクル後、100サイクル後も高い放電容量を維持しうる。
【0069】
なお、当該負極活物質の上記特性をさらに良好なものとする観点からは、前記xが27〜84、前記yが10〜73、前記zが6〜73の範囲であることが好ましい。また、更に好ましくは、図8の網掛け部分で示すように、前記xが27〜84、前記yが10〜63、前記zが6〜63の範囲である。そして、図9の網掛け部分で示すように、より好ましくは、さらに前記xが27〜52の範囲とする。図10の網掛け部分からわかるように、さらに前記yが10〜52、前記zが20〜63の範囲とすればより好ましく、最も好ましくは前記yが10〜40の範囲とする。
【0070】
なお、前記aは、0≦a<0.5であり、0≦a<0.1であることが好ましい。
【0071】
SiSn
上記SiSnは、上述のように、第1添加元素であるSnと、第2添加元素であるCを選択したことによって、Li合金化の際に、アモルファス−結晶の相転移を抑制してサイクル寿命を向上させることができる。また、これによって、従来の負極活物質、例えば炭素系負極活物質よりも高容量のものとなる。
【0072】
上記合金の組成において、前記xが29以上であることが好ましい。なお、この数値範囲は、図11の符号Aで示す範囲に相当する。上記組成を有することにより、高容量を発現するのみならず、50サイクル後、100サイクル後も高い放電容量を維持しうる。
【0073】
なお、当該負極活物質の上記特性のさらなる向上を図る観点からは、前記xが29〜63、yが14〜48、前記zが11〜48の範囲であることが好ましい。なお、この数値範囲は図12の符号Bで示す範囲に相当する。
【0074】
そして、より良好なサイクル特性を確保する観点からは、前記xが29〜44、前記yが14〜48、前記zが11〜48の範囲であることが好ましい。なお、この数値範囲は図13の符号Cで示す範囲に相当する。
【0075】
さらには、前記xが29〜40、前記yが34〜48(したがって、12<z<37)の範囲とすることが好ましい。なお、この数値範囲は図14の符号Dで示す範囲に相当する。
【0076】
なお、前記aは、0≦a<0.5であり、0≦a<0.1であることが好ましい。
【0077】
(Si合金の平均粒子径)
上記Si合金の平均粒子径は、既存の負極活物質層15に含まれる負極活物質の平均粒子径と同程度であればよく、特に制限されない。高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmの範囲であればよい。ただし、上記範囲に何ら制限されるものではなく、本実施形態の作用効果を有効に発現できるものであれば、上記範囲を外れていてもよいことは言うまでもない。なお、Si合金の形状としては、特に制限はなく、球状、楕円状、円柱状、多角柱状、鱗片状、不定形などでありうる。
【0078】
(合金の製造方法)
本形態に係る組成式SiSnを有する合金の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来公知の各種の製造を利用して製造することができる。即ち、作製方法による合金状態・特性の違いはほとんどないので、ありとあらゆる作製方法が適用できる。
【0079】
具体的には、例えば、組成式SiSnを有する合金の粒子形態の製造方法としては、例えば、メカニカルアロイ法、アークプラズマ溶融法等を利用することができる。
【0080】
上記の粒子の形態に製造する方法では、該粒子にバインダ、導電助剤、粘度調整溶剤を加えてスラリーを調整し、該スラリーを用いてスラリー電極を形成することができる。そのため、量産化(大量生産)し易く、実際の電池用電極として実用化しやすい点で優れている。
【0081】
<負極集電体>
負極集電体12は導電性材料から構成される。集電体の大きさは、電池の使用用途に応じて決定される。例えば、高エネルギー密度が要求される大型の電池に用いられるのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。
【0082】
集電体の形状についても特に制限されない。図1に示す積層型電池10では、集電箔のほか、網目形状(エキスパンドグリッド等)等を用いることができるが、本実施形態では集電箔を用いるのが望ましい。
【0083】
集電体を構成する材料に特に制限はない。例えば、金属や、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が採用されうる。
【0084】
具体的には、金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、など、またはこれらの合金が挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。電子伝導性や電池作動電位、集電体へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点から、後述のように銅が好ましく用いられうる。
【0085】
また、導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0086】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0087】
上記の導電性高分子材料または非導電性高分子材料には、必要に応じて導電性フィラーが添加されうる。特に、集電体の基材となる樹脂が非導電性高分子のみからなる場合は、樹脂に導電性を付与するために必然的に導電性フィラーが必須となる。
【0088】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、Ni、Ti、Al、Cu、Pt、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Sb、およびKからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン、ブラックパール、カーボンナノファイバ、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むものである。
【0089】
導電性フィラーの添加量は、集電体に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、一般的には、5〜35質量%程度である。
【0090】
本実施形態の負極は、集電体の平面方向への弾性伸びが、1.30%以上であることを特徴とする。ここで集電体の弾性伸び(%)は、引張方向への比例限度までの弾性伸びの大きさの、元の大きさに対する割合(%)である。
【0091】
本実施形態の負極は、負極活物質として特定の三元系Si合金を適用することで、Si負極と同様の高い初期放電容量が得られると同時に、SiとLiとが合金化する際のアモルファス−結晶の相転移を抑制しサイクル寿命を向上させるという作用が得られる。
【0092】
しかしながら、上記の特定の三元系Si合金をバインダ、導電助剤と共に有する負極活物質層を負極集電体上に塗布した負極を用いて電池を作製した場合、電池の充放電に伴って負極活物質の膨張・収縮が生じうる。これに伴って、負極活物質層が体積変化し、負極活物質層に密着している集電体に応力が働く。このとき、負極活物質層の体積変化に集電体が追随できないと、集電体が塑性変形してしまい、集電体にしわが生じてしまう。集電体にしわが生じると、負極活物質層がゆがんでしまい、正極との電極間距離が不均一になってしまうため、Li反応性が低下したり、電極集中が生じうる。さらには、集電体の塑性変形によって集電体に亀裂、破断が生じたり、負極活物質層の直接的な破壊につながる可能性もある。その結果、電池の放電容量の低下が生じてしまう。
【0093】
本実施形態の負極は、このような問題を解決するものであって、弾性伸びが1.30%以上の負極を用いることにより、充放電による負極活物質の膨張・収縮による負極活物質層の体積変化に対して、集電体が弾性的に追随しうる。そのため、負極活物質層と密着している集電体に応力が働くことで生じうるしわを抑制することができるため、負極活物質層のゆがみや、負極活物質層または集電体の破断を防ぐことができる。その結果、正極との電極間距離が均一に保たれる。さらに、副反応も生じにくくなる。そのため、高い放電容量が得られうる。さらに、充放電を繰り返しても集電体の塑性変形が起こりにくいため、サイクル耐久性も向上しうる。
【0094】
また、弾性伸びが1.30%以上の集電体であれば、仮に充放電に伴う負極活物質の膨張・収縮によって負極活物質層の弾性が失われた場合であっても集電体が負極活物質層に密着して弾性変形するため、容量の低下、サイクル耐久性の低下を最小限に抑えることができる。
【0095】
本実施形態の負極に用いられる集電体の弾性伸びは、好ましくは1.40%以上である。集電体の弾性伸びが1.40%以上であれば、本実施形態で用いられる負極活物質の充放電に伴う体積変化の程度を考慮すると、より追随しやすい。そのため、放電容量維持率の向上率が高く、サイクル特性がより改善されうる。さらに、集電体の弾性伸びが1.50%以上であると、本実施形態の負極活物質を用いた場合、より高い効果が得られうる。
【0096】
前記集電体の弾性伸びが大きいほど負極活物質層の体積変化に弾性的に追随することができるため、弾性伸びの上限値は、特に限定されない。
【0097】
本実施形態で用いられる負極活物質は、黒鉛などの炭素材料と比較すると充放電に伴う体積変化が大きいが、上記のような集電体を用いることで集電体の塑性変形を抑えることができ、負極活物質層のゆがみ、およびこれに起因する放電容量の低下を抑えることができる。しかしながら、純Siを負極活物質として用いた場合、充放電に伴う体積変化がさらに大きいため、上記のような集電体を用いても負極活物質層の体積変化に十分に追随できず、放電容量の低下を防ぐことが難しい場合がある。本実施形態で用いられる三元系Si合金の活物質の場合、集電体の弾性伸びが1.30%以上であればよく、放電容量およびサイクル特性に優れた電池が得られる(図18参照)。
【0098】
なお、本明細書中、集電体の弾性伸び(%)は、JIS K 6251(2010年)の引張試験方法に準じて測定した値を用いるものとする。また、集電体の弾性伸び(%)は、25℃において測定した時の値である。
【0099】
本実施形態における集電体は、引張強度が、150N/mm以上であることが好ましい。引張強度が150N/mm以上であれば、集電体の破断を防止する効果が高い。
【0100】
なお、本明細書中、集電体の引張強度(N/mm)は、JIS K 6251(2010年)の引張試験方法に準じて測定した値を用いるものとする。また、集電体の引張強度(N/mm)は、25℃において測定した時の値である。
【0101】
本実施形態における集電体は、弾性伸びが1.30%以上であれば、上述したように集電体を構成する材料に特に制限はなく、好ましくは銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、コバルトなどの金属、またはこれらの金属の合金が用いられうる。
【0102】
上記の金属の中でも、銅、ニッケル、ステンレス、またはこれらに他の金属を添加した合金を用いた金属箔が機械的強度、活物質層との密着性、化学的安定性、電池反応が進行する電位における電気化学的な安定性、導電性、コスト等の観点から好ましい。特に銅または銅の合金は、標準酸化還元電位の理由から特に好ましい。
【0103】
銅箔は、圧延銅箔(圧延法によって得られる銅箔)または電解銅箔(電解法によって得られる銅箔)を用いることができる。銅合金箔についても、電解銅合金箔または圧延銅合金箔のいずれも用いることができる。本実施形態の負極においては、引張強度が大きいこと、屈曲性に優れることから、圧延銅箔または圧延銅合金箔を用いることが好ましい。
【0104】
銅の合金としては、銅に、例えば、Zr、Cr、Zn、Snなどの元素を添加した合金が好ましく用いられうる。このような合金は、純銅と比較して、弾性率が高く、負極活物質層の体積変化に追随しやすく塑性変形が生じにくい。このため、集電体のしわや破断が生じにくい。また、銅にZr、Cr、Zn、Snなどの元素を添加した合金は純銅と比較して耐熱性が向上しうる。特に、軟化点が、負極の製造工程において負極活物質を含むスラリーを集電体上に塗布して乾燥する際の熱処理する場合の熱処理温度(約300℃)よりも高い合金であれば、熱処理後も弾性が維持されうるため好ましい。中でも、Cr、Zn、Snを添加した合金が、熱処理後の弾性維持の理由で好ましい。これらの合金元素は、1種類でも、2種類以上含まれてもよい。これらの合金元素の含有量は、合計で、例えば、0.01〜0.9質量%であり、好ましくは0.03〜0.9質量%であり、さらに好ましくは0.3〜0.9質量%である。合金元素の含有量が0.03質量%以上であれば、熱処理後の弾性維持の理由で好適である。
【0105】
弾性伸びが1.30%以上である集電体を得る方法は特に制限されない。本実施形態の集電体が金属箔からなるものである場合、加熱、冷却、圧力、不純物元素添加により機械的特性を変化させることができる。なお、上記の伸びを有する市販の金属箔を用いてもよい。
【0106】
負極の集電体の厚さについても特に限定されないが、本実施形態の負極においては、5〜15μmであることが好ましく、5〜10μmであることがより好ましい。負極の集電体の厚さが5μm以上であれば、十分な機械的強度が得られるため好ましい。また負極の集電体の厚さが15μm以下であれば、電池の薄型化の点で好ましい。
【0107】
なお、双極型電極用の集電体についても、負極集電体と同様のものを用いればよい。特に正極電位および負極電位に対する耐性を有するものを用いるのが望ましい。
【0108】
(正極及び負極に共通する要件)
以下に、正極及び負極に共通する要件につき、説明する。
【0109】
正極活物質層13および負極活物質層15は、バインダ、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等を含む。
【0110】
バインダ
活物質層に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
【0111】
活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0112】
導電助剤
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0113】
また、上記導電助剤とバインダの機能を併せ持つ導電性結着剤をこれら導電助剤とバインダに代えて用いてもよいし、あるいはこれら導電助剤とバインダの一方ないし双方と併用してもよい。導電性結着剤としては、既に市販のTAB−2(宝泉株式会社製)を用いることができる。
【0114】
活物質層へ混入されてなる導電助剤の含有量は、活物質層の総量に対して、1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上の範囲である。また、活物質層へ混入されてなる導電助剤の含有量は、活物質層の総量に対して、15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下の範囲である。活物質自体の電子導電性は低く導電助剤の量によって電極抵抗を低減できる正極活物質層での導電助剤の配合比(含有量)を上記範囲内に規定することで以下の効果が発現される。即ち、電極反応を阻害することなく、電子導電性を十分に担保することができ、電極密度の低下によるエネルギー密度の低下を抑制でき、ひいては電極密度の向上によるエネルギー密度の向上を図ることができる。
【0115】
電解質塩(リチウム塩)
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0116】
イオン伝導性ポリマー
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0117】
正極活物質層および上記(5)(ii)の粒子の形態の合金を用いる場合の負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0118】
各活物質層(集電体片面の活物質層)の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)、イオン伝導性を考慮し、通常1〜500μm程度、好ましくは2〜100μmである。
【0119】
<電解質層>
電解質層17を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
【0120】
液体電解質は、有機溶媒にリチウム塩(電解質塩)が溶解した形態を有する。有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)等のカーボネート類が例示される。
【0121】
また、リチウム塩としては、Li(CFSON、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiAsF、LiTaF、LiClO、LiCFSO等の電極の活物質層に添加され得る化合物を採用することができる。
【0122】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0123】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質(電解液)が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導を遮断することが容易になる点で優れている。
【0124】
マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0125】
ゲル電解質中の上記液体電解質(電解液)の割合としては、特に制限されるべきものではないが、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。本実施形態では、電解液の割合が70質量%以上の、電解液が多いゲル電解質について、特に効果がある。
【0126】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質や真性ポリマー電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータ(不織布を含む)の具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜や多孔質の平板、更には不織布が挙げられる。
【0127】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0128】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0129】
<集電板およびリード>
電池外部に電流を取り出す目的で、集電板を用いてもよい。集電板は集電体やリードに電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0130】
集電板を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極集電板と負極集電板とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0131】
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0132】
<電池外装材>
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
【0133】
なお、上記のリチウムイオン二次電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
【0134】
<リチウムイオン二次電池の外観構成>
図2は、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0135】
図2に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極集電板58、負極集電板59が引き出されている。発電要素57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極集電板58および負極集電板59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、図1に示すリチウムイオン二次電池(積層型電池)10の発電要素21に相当するものである。発電要素57は、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0136】
なお、上記リチウムイオン二次電池は、積層型の扁平な形状のもの(ラミネートセル)に制限されるものではない。巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のもの(コインセル)や角柱型形状(角型セル)のもの、こうした円筒型形状のものを変形させて長方形状の扁平な形状にしたようなもの、更にシリンダー状セルであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型や角柱型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0137】
また、図2に示す正極集電板58、負極集電板59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極集電板58と負極集電板59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極集電板58と負極集電板59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出すようにしてもよいなど、図2に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、集電板に変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0138】
上記したように、本実施形態のリチウムイオン二次電池用の負極活物質を用いてなる負極並びにリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、好適に利用することができる。即ち、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0139】
なお、上記実施形態では、電気デバイスとして、リチウムイオン電池を例示したが、これに制限されるわけではなく、他のタイプの二次電池、さらには一次電池にも適用できる。また電池だけではなくキャパシタにも適用できる。
【実施例】
【0140】
本発明を、以下の実施例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0141】
はじめに、参考例として、本発明に係る電気デバイス用負極を構成する化学式(1)で表されるSi合金についての性能評価を行った。
【0142】
(参考例A):SiSnAlについての性能評価
[1]負極の作製
スパッタ装置として、独立制御方式の3元DCマグネトロンスパッタ装置(大和機器工業株式会社製、コンビナトリアルスパッタコーティング装置、ガン−サンプル間距離:約100mm)を使用し、厚さ20μmのニッケル箔から成る基板(集電体)上に、下記の条件のもとで、各組成を有する負極活物質合金の薄膜をそれぞれ成膜することによって、都合23種の負極サンプルを得た(参考例1〜14および比較参考例1〜9)。
【0143】
(1)ターゲット(株式会社高純度化学研究所製、純度:4N)
Si:50.8mm径、3mm厚さ(厚さ2mmの無酸素銅製バッキングプレート付)
Sn:50.8mm径、5mm厚さ
Al:50.8mm径、3mm厚さ。
【0144】
(2)成膜条件
ベース圧力:〜7×10−6Pa
スパッタガス種:Ar(99.9999%以上)
スパッタガス導入量:10sccm
スパッタ圧力:30mTorr
DC電源:Si(185W)、Sn(0〜40W)、Al(0〜150W)
プレスパッタ時間:1min.
スパッタ時間:10min.
基板温度:室温(25℃)。
【0145】
すなわち、上記のようなSiターゲット、Snターゲット及びAlターゲットを使用し、スパッタ時間を10分に固定し、DC電源のパワーを上記の範囲でそれぞれ変化させることによって、Ni基板上にアモルファス状態の合金薄膜を成膜し、種々の組成の合金薄膜を備えた負極サンプルを得た。
【0146】
ここで、サンプル作製の数例を示せば、参考例4では、DC電源1(Siターゲット):185W、DC電源2(Snターゲット):25W、DC電源3(Alターゲット):130Wとした。また、比較参考例2では、DC電源1(Siターゲット):185W、DC電源2(Snターゲット):30W、DC電源3(Alターゲット):0Wとした。さらに、比較参考例5では、DC電源1(Siターゲット):185W、DC電源2(Snターゲット):0W、DC電源3(Alターゲット):78Wとした。
【0147】
これら合金薄膜の成分組成を表1及び図3〜6に示す。なお、得られた合金薄膜の分析は、下記の分析法、分析装置によった。
【0148】
(3)分析方法
組成分析:SEM・EDX分析(JEOL社)、EPMA分析(JEOL社)
膜厚測定(スパッタレート算出のため):膜厚計(東京インスツルメンツ)
膜状態分析:ラマン分光測定(ブルカー社)。
【0149】
[2]電池の作製
上記により得られた各負極サンプルとリチウム箔(本城金属株式会社製、直径15mm、厚さ200μm)から成る対極とをセパレータ(セルガード社製セルガード2400)を介して対向させたのち、電解液を注入することによってCR2032型コインセルをそれぞれ作製した。
【0150】
なお、上記電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を1:1の容積比で混合した混合非水溶媒中に、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)を1Mの濃度となるように溶解させたものを用いた。
【0151】
[3]電池の充放電試験
上記により得られたそれぞれの電池に対して下記の充放電試験を実施した。
【0152】
すなわち、充放電試験機(北斗電工株式会社製HJ0501SM8A)を使用し、300K(27℃)の温度に設定された恒温槽(エスペック株式会社製PFU−3K)中にて、充電過程(評価対象である負極へのLi挿入過程)では、定電流・定電圧モードとして、0.1mAにて2Vから10mVまで充電した。その後、放電過程(上記負極からのLi脱離過程)では、定電流モードとし、0.1mA、10mVから2Vまで放電した。以上の充放電サイクルを1サイクルとして、これを100回繰り返した。
【0153】
そして、50サイクル及び100サイクル目の放電容量を求め、1サイクル目の放電容量に対する維持率を算出した。この結果を表1に併せて示す。この際、放電容量は、合金重量当りで算出した値を示している。なお、「放電容量(mAh/g)」は、pure Si又は合金重量当りのものであり、Si−Sn−M合金(Si−Sn合金、pure SiまたはSi−Sn合金)へLiが反応する時の容量を示す。なお、本明細書中で「初期容量」と表記しているものが、初期サイクル(1サイクル目)の「放電容量(mAh/g)」に相当するものである。
【0154】
また、50サイクル目、100サイクル目の「放電容量維持率(%)」は、「初期容量からどれだけ容量を維持しているか」の指標を表す。放電容量維持率(%)の計算式は下記の通りである。
【0155】
【数1】
【0156】
【表1-1】
【0157】
【表1-2】
【0158】
表1より、参考例1〜14の電池は、1サイクル目放電容量、50サイクル目放電容量維持率及び100サイクル目放電容量維持率のバランスが優れていることがわかった。すなわち、Siが12質量%以上100質量%未満、Snが0質量%超45質量%以下、及びAlが0質量%超43質量%以下であるとき、上記のバランスが優れていることが判明した。これに対し、比較参考例1〜9の電池は、参考例の電池に比べて、1サイクル目の放電容量が大きいことがあっても、放電容量維持率の低下が著しいことがわかった。
【0159】
以上の結果をまとめると、各成分が本発明の特定範囲内にあるSi−Sn−Al系合金を負極活物質として用いた参考例の電池においては、以下のことが確認された。すなわち、このような電池では、1700mAh/gを超える高い初期容量を有し、50サイクル目で92%以上、100サイクル目でも55%以上の放電容量維持率を示し、容量とサイクル耐久性のバランスに優れていることが確認された。これに対し、比較参考例の電池においては、初期容量、サイクル耐久性いずれにおいても、参考例における上記数値を下回る結果となった。特に、純Siに近い合金では、高容量ではあるものの、サイクル特性に劣る傾向があることが判明した。また、Sn含有量の高い合金では、サイクル特性には比較的優れるものの、初期容量に劣る傾向があることが判明した。
【0160】
(参考例B):SiSnについての性能評価
[1]負極の作製
参考例Aの(1)におけるターゲットの「Al:50.8mm径、3mm厚さ」を「V:50.8mm径、3mm厚さ」に変更し、(2)におけるDC電源の「Sn(0〜40W)、Al(0〜150W)」を「Sn(0〜50W)、V(0〜150W)」に変更したことを除いては、参考例Aと同様の方法で、都合32種の負極サンプルを作製した(参考例15〜27および比較参考例10〜28)。
【0161】
なお、前記(2)について、サンプル作製の数例を示せば、参考例25では、DC電源1(Siターゲット):185W、DC電源2(Snターゲット):30W、DC電源3(Vターゲット):140Wとした。また、比較参考例19では、DC電源1(Siターゲット):185W、DC電源2(Snターゲット):30W、DC電源3(Vターゲット):0Wとした。さらに、比較参考例25では、DC電源1(Siターゲット):185W、DC電源2(Snターゲット):0W、DC電源3(Vターゲット):80Wとした。
【0162】
これら合金薄膜の成分組成を表2及び図7〜10に示す。
【0163】
[2]電池の作製
参考例Aと同様の方法でCR2032型コインセルを作製した。
【0164】
[3]電池の充放電試験
参考例Aと同様の方法で電池の充放電試験を行った。この結果を表2に併せて示す。
【0165】
【表2-1】
【0166】
【表2-2】
【0167】
表2より、参考例の電池は、1サイクル目放電容量、50サイクル目放電容量維持率及び100サイクル目放電容量維持率のバランスが優れていることがわかった。すなわち、Siが27質量%以上100質量%未満、Snが0質量%超73質量%以下、及びVが0質量%超73質量%以下であるとき、上記のバランスが優れていることが判明した。これに対し、比較参考例の電池は、参考例の電池に比べて、1サイクル目の放電容量が大きいことがあっても、放電容量維持率の低下が著しいことがわかった。
【0168】
以上の結果をまとめると、参考例の電池においては次のことが確認された。すなわち、このような電池では、712mAh/g以上の初期容量と、50サイクル後では92%以上、100サイクル後では44%以上の放電容量維持率を示すことが確認された。
【0169】
(参考例C):SiSnについての性能評価
[1]負極の作製
参考例Aの(1)におけるターゲットの「Al:50.8mm径、3mm厚さ」を「C:50.8mm径、3mm厚さ(厚さ2mmの無酸素銅製バッキングプレート付)」に変更し、(2)におけるDC電源の「Al(0〜150W)」を「C(0〜150W)」に変更したことを除いては、参考例Aと同様の方法で、都合34種の負極サンプルを作製した(参考例28〜49および比較参考例29〜40)。
【0170】
なお、前記(2)について、サンプル作製の数例を示せば、参考例43では、DC電源1(Siターゲット)を185W、DC電源2(Snターゲット)を35W、DC電源3(Cターゲット)を110Wとした。また、比較参考例30では、DC電源1(Siターゲット)を185W、DC電源2(Snターゲット)を22W、DC電源3(Cターゲット)を0Wとした。さらに、比較参考例35では、DC電源1(Siターゲット)を185W、DC電源2(Snターゲット)を0W、DC電源3(Cターゲット)を30Wとした。
【0171】
これら合金薄膜の成分組成を表3及び図11に示す。
【0172】
[2]電池の作製
参考例Aと同様の方法でCR2032型コインセルを作製した。
【0173】
[3]電池の充放電試験
参考例Aと同様の方法で電池の充放電試験を行った。この結果を表3に併せて示す。
【0174】
【表3-1】
【0175】
【表3-2】
【0176】
以上の結果、29質量%以上のSiを含有し、残部がSn、C及び不可避不純物であるSi−Sn−C系合金を負極活物質として用いた参考例の電池においては、少なくとも1000mAh/gを超える初期容量を備え、50サイクル後では92%以上、100サイクル後でも45%以上の放電容量維持率を示すことが確認された。
【0177】
次に、実施例として、上記Si合金のうちSi41Sn16Al43を用いて、導電助剤、およびバインダを含む負極活物質層を有する電気デバイス用負極についての性能評価を行った。
【0178】
なお、前記Si41Sn16Al43以外のその他の本発明に用いられる合金(SiSnAl、SiSn、およびSiSnAのうち、Si41Sn16Al43以外のもの)についてもSi41Sn16Al43を用いた下記の実施例と同一または類似する結果が得られる。この理由は、参考例に示されるように、前記その他の本発明に用いられる合金は、Si41Sn16Al43と同様の特性を有するためである。すなわち、同様の特性を有する合金を用いた場合には、合金の種類を変更したとしても同様の結果が得られうる。
【0179】
次に、以下の実施例および比較例では、上記Si合金のうちSi41Sn16Al43を負極活物質として用い、集電体の種類(弾性伸び)を替えた電気デバイス用負極についての性能評価を行った。
【0180】
(実施例1)
[Si合金の製造]
上記Si合金は、メカニカルアロイ法(または、アークプラズマ溶融法)により製造した。具体的には、ドイツ フリッチュ社製遊星ボールミル装置P−6を用いて、ジルコニア製粉砕ポットにジルコニア製粉砕ボールと各合金の各原料粉末を投入し、600rpm、48hかけて合金化させた。
【0181】
[負極の作製]
(実施例1)
負極活物質80質量部、導電助剤5質量部、およびバインダ15質量部を溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中で混合し、負極活物質スラリーを調製した。ここで、負極活物質には、上記で製造したSi合金粉末(Si41Sn16Al43、一次粒子の平均粒子径0.3μm)を用いた。また、導電助剤には、短鎖状カーボンブラックとして短鎖状アセチレンブラックを用い、バインダにはポリイミドを用いた。
【0182】
弾性伸び1.43%、引張強度580N/mmである厚さ10μmの銅合金箔(銅合金1:Cr、Sn、Znがそれぞれ約0.3質量%添加されたCu)を準備した。
【0183】
本実施例において、集電体の弾性伸び(%)および引張強度(N/mm)は、INSTRON社製デジタル材料試験機5565型を用いて、試験速度10mm/min、チャック間50mmにて測定した。サンプルは、全長70mm、平行部幅5mmの楔形に成形した集電箔を用いた。
【0184】
得られた負極活物質スラリーを、上記の銅合金箔(銅合金1)の両面に、乾燥後の厚さがそれぞれ50μmとなるように均一に塗布し、真空中で24時間乾燥させて、負極を得た。
【0185】
(実施例2)
負極集電体として、弾性伸び1.53%、引張強度450N/mmである厚さ10μmの銅合金箔(銅合金2:Zrが約0.3質量%添加されたCu)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で負極を作製した。
【0186】
(実施例3)
負極集電体として、弾性伸び1.39%、引張強度420N/mmである厚さ10μmの銅合金箔(銅合金3:Zrが約0.1質量%添加されたCu)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で負極を作製した。
【0187】
(比較例1)
負極集電体として、弾性伸び1.28%、引張強度139N/mmである厚さ10μmの銅箔(タフピッチ銅:Cuの純度が99.9質量%以上)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で負極を作製した。
【0188】
(比較例2)
負極活物質としてケイ素(純Si)粉末(純度:99.999質量%、一次粒子の平均粒子径45μm)80質量部を用いた以外は、比較例1と同様の方法で負極を作製した。
【0189】
(比較例3)
バインダ材料としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いたことを除いては、比較例2と同様の方法で負極を作製した。
【0190】
[正極の作製]
正極活物質であるLi1.85Ni0.18Co0.10Mn0.87を、特開2012−185913号公報の実施例1(段落0046)に記載の手法により作製した。そして、この正極活物質90質量部と、導電助剤であるアセチレンブラック5質量部と、バインダであるポリフッ化ビニリデン5質量部と、を混合し、N−メチルピロリドンに分散させて正極スラリーを得た。次いで、得られた正極スラリーを、アルミニウム箔よりなる正極集電体の両面にそれぞれ正極活物質層の厚さが30μmとなるように均一に塗布し、乾燥させて、正極を得た。
【0191】
[電池の作製]
上記で作製した正極と、負極とを対向させ、この間にセパレータ(ポリオレフィン、膜厚20μm)を配置した。次いで、負極、セパレータ、および正極の積層体をコインセル(CR2032、材質:ステンレス鋼(SUS316))の底部側に配置した。さらに、正極と負極との間の絶縁性を保つためガスケットを装着し、下記電解液をシリンジにより注入し、スプリングおよびスペーサを積層し、コインセルの上部側を重ねあわせ、かしこめることにより密閉して、リチウムイオン二次電池を得た。
【0192】
なお、上記電解液としては、エチレンカーボネート(EC)およびジエチルカーボネート(DEC)を、EC:DC=1:2(体積比)の割合で混合した有機溶媒に、支持塩である六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を、濃度が1mol/Lとなるように溶解させたものを用いた。
【0193】
[電池の充放電試験]
参考例Aと同様の方法で電池の充放電試験を行った。
【0194】
すなわち、充放電試験機(北斗電工株式会社製HJ0501SM8A)を使用し、300K(27℃)の温度に設定された恒温槽(エスペック株式会社製PFU−3K)中にて、充電過程(評価対象である負極へのLi挿入過程)では、定電流・定電圧モードとして、0.1mAにて2Vから10mVまで充電した。その後、放電過程(上記負極からのLi脱離過程)では、定電流モードとし、0.1mA、10mVから2Vまで放電した。以上の充放電サイクルを1サイクルとして、これを50回繰り返した。
【0195】
そして、50サイクル目の放電容量を求め、1サイクル目の放電容量に対する放電容量維持率(%)を算出した。50サイクル目の「放電容量維持率(%)」は、「初期容量からどれだけ容量を維持しているか」の指標を表す。放電容量維持率(%)の計算式は下記の通りである。
【0196】
【数2】
【0197】
さらに、得られた放電容量維持率(%)の結果を、比較例1の放電容量維持率を100としたときの割合(放電容量維持率の向上率(%))として、下記の表4および図18に示す。
【0198】
【表4】
【0199】
表4および図18の結果から、弾性伸びが1.30%以上の集電体を用いた実施例1〜3の電池では、比較例1〜3の電池と比較して高い放電容量維持率を実現できることが確認できた。これは、実施例1〜3で用いた集電体が、電池の充放電に伴うSi合金を含む負極活物質層の体積変化に弾性的に追随することで、電極層の変形が抑制されたためであると考えられる。特に、集電体の弾性伸びが1.40%以上、または1.50%以上である実施例1、2においては、より高い放電容量維持率が得られた。
【0200】
一方で、弾性伸びが所定の値以下の集電体を用いた比較例1の電池では、電池の充放電に伴う負極活物質層の体積変化に伴って集電体が塑性変形しやすくなり、その結果、負極活物質層がゆがみ、負極の平面方向において正極との均一な電極間距離を維持することが難しくなってしまい、高い放電容量維持率が得られなかったものと考えられる。
【0201】
また、負極活物質として純Siを用いた比較例2の電池では、電池の充放電に伴う負極活物質の膨張・収縮による体積変化が、Si合金の場合よりも大きい。そのため、負極活物質層の体積変化がより大きいため、負極活物質層の体積変化に集電体が追随できないことに起因する容量の低下がより大きくなっているものと考えられる。
【0202】
さらに、負極活物質層のバインダとしてPVdFを用いた比較例3の電池では、放電容量維持率がより低くなっている。これは、比較例3で用いたバインダであるPVdFの弾性率(1.0GPa)が、実施例1〜3、比較例1、2で用いたポリイミドの弾性率(3.73GPa)よりも小さいため、充放電に伴う活物質の膨張・収縮にバインダが追随できず、負極活物質層の体積変化が大きくなるためと考えられる。その結果、負極活物質層の体積変化に集電体が追随できないことによる容量の低下がさらに大きくなると考えられる。
【0203】
本出願は、2012年11月22日に出願された日本国特許出願第2012−256937号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0204】
10、50 リチウムイオン二次電池(積層型電池)、
11 正極集電体、
12 負極集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
25、58 正極集電板、
27、59 負極集電板、
29、52 電池外装材(ラミネートフィルム)。
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