【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係る蓄電装置100の断面図である。蓄電装置100は、ケース1と、捲回型の電極組立体60と、第1導電部材68と、第2導電部材64と、第1電極端子19と、第2電極端子119と、電流遮断装置120と、第1スペーサ150と、第2スペーサ160とを備えている。なお、以下においては、説明の便宜上、z軸の正方向側を上側、負方向側を下側として説明することがある。
【0025】
ケース1は略直方体形状の箱型部材であり、内部に電極組立体60と、図示省略の電解液と、第1導電部材68と、第2導電部材64と、電流遮断装置120と、第1スペーサ150と、第2スペーサ160とを収容している。ケース1の上端面(z軸の正方向側の面)は、端子取付壁であり、第1電極端子19と、第2電極端子119が取付けられている。第1電極端子19は、電極組立体60の負極に電気的に接続しており、第2電極端子119は、電極組立体60の正極に電気的に接続している。
【0026】
図2,3に示すように、電極組立体60は、正極シート601、セパレータ603、負極シート602、セパレータ603が、この順序で積層された電極対を、正極シート601側を内側にして捲回軸(
図1および
図3に示すr軸)を中心に捲回したものである。正極シート601は、アルミニウム製の正極金属箔601aと、正極金属箔601aの両面に形成された正極活物質層601bとを備えている。負極シート602は、銅製の負極金属箔602aと、負極金属箔602aの両面に形成された負極活物質層602bとを備えている。セパレータ603は絶縁性の多孔体である。電極組立体60は、液状の電解質が含浸された状態でケース1内に収容されている。捲回構造体の捲回軸であるr軸は、y軸と略平行であり、第1電極端子19と第2電極端子119とは、r軸の方向に沿って端子取付壁の両端部にそれぞれ配置されている。
【0027】
第1導電部材68は、集電部67を備えており、電極組立体60の負極シート602は、集電部67によって束ねられている。第2導電部材64は、集電部65を備えており、電極組立体60の正極シート601は、集電部65によって束ねられている。
【0028】
図1に示すように、第1導電部材68は、銅製または銅の合金製の平板を屈曲させた形状を有し、第1電極端子19の下方でy軸の負方向に伸び、屈曲して、z軸の負方向に伸びている。
【0029】
図1,2に示すように、電極組立体60の上面60aは、端子取付壁側(z軸の正方向側)に凸のR形状の面である。上面60aのy方向の両端部において、第1スペーサ150および第2スペーサ160と、電極組立体60とが互いに接している。
【0030】
電流遮断装置120は、その下面側において第1導電部材68と接続されており、その上面側において第1電極端子19と接続されている。また、第1電極端子19と第1導電部材68とは、電流遮断装置120を介して電気的に接続されている。このように、電極組立体60の負極シート602から第1電極端子19までの負極側の通電経路は、この順で直列に接続された第1導電部材68と、電流遮断装置120とを介して接続されている。
【0031】
第2導電部材64は、アルミニウム製の平板を屈曲させた形状を有し、第2電極端子119の下方でy軸の正方向に伸び、屈曲して、z軸の負方向に伸びている。電極組立体60の正極シート601から第2電極端子119までの正極側の通電経路は、第2導電部材64を介して接続されている。蓄電装置100は、電極組立体60とケース1の外部とで、第1電極端子19、及び第2電極端子119を介して相互に電気の授受が可能である。なお、第2導電部材64は、必ずしも一部材であることを意味しない。複数の導電性の部材が接続されて第2導電部材64を構成してもよい。
【0032】
図4に示すように、第1スペーサ150は、略円柱形状の部材の一方の円形の面側をR形状に切り取った形状を有している。第1スペーサ150は、R形状の面150aが電極組立体60側(z軸の負方向側)となるように電流遮断装置120に固定される。面150aは、電極組立体60と接する面であり、電極組立体60の第1スペーサ150側の面(面60a)の形状に対応するように、端子取付壁側に凹のR形状(面60aと同程度の曲率を有する)を有している。第1スペーサ150には、z方向に貫通する貫通孔151が設けられている。
【0033】
図5に示すように、第2スペーサ160は、略円柱形状の部材の一方の円形の面側をR形状に切り取った形状を有している。第2スペーサ160は、R形状の面160aが電極組立体60側となるように第2電極端子119に固定される。第2スペーサ160は、中空の部材であり、第2電極端子119のボルト119aは、第2スペーサ160の内側の底面に接するまで伸びている。第2スペーサ160は、その上部においてケース1の端子取付壁に係合して、第2電極端子119および端子取付壁に固定されている。面160aは、電極組立体60と接する面であり、電極組立体60の第2スペーサ160側の面(面60a)の形状に対応するように、端子取付壁側に凹のR形状(面60aと同程度の曲率を有する)を有している。第1スペーサ150および第2スペーサ160は、絶縁性の樹脂材料によって形成されている。
【0034】
図2に、第2スペーサ160の面160aと、電極組立体60の第2スペーサ側の面60aが互いに接した状態を示す。面60aは、端子取付壁側に凸のR形状を有しており、面160aは、面60aの形状に対応するように、端子取付壁側に凹のR形状を有している。このため、面160aの全体と面60aの全体とが接触して互いの接触面積が大きくなり、接触による面圧を小さくすることができる。図示しないが、第1スペーサ150の面150aも同様に、電極組立体60の第1スペーサ150側の面の形状に対応する形状を有しているため、面150aと、電極組立体60の第1スペーサ150側の面との接触面積が大きくなり、接触による面圧を小さくすることができる。
【0035】
図6に示すように、電流遮断装置120は、変形板33と、接点板35と、環状部材37とを備えている。変形板33は、銅製または銅の合金製のダイアフラムであり、平面視すると円形の略平板状の部材であり、中央部に円錐台状の凸状部を有する。蓄電装置100の通常動作時においては、変形板33の凸状部は、第1導電部材68及び電極組立体60側が配置されている側(z軸の負方向側)に凸となっている。接点板35は、平面視すると円形の略平板状の金属製の部材であり、平板状の中央部と、中央部から変形板33の方向に湾曲して伸びる側面部とを有している。環状部材37は、平面視すると環状の部材である。変形板33と接点板35は、接続部34において互いに接しており、溶接によって固定されている。変形板33と接点板35によって、ケース1内の電極組立体60側から空間40を隔離する壁が形成されており、変形板33の上面(z軸の正方向側の面)及び接点板35の下面(z軸の負方向側の面)は、空間40に面している。
【0036】
接点板35は、第1電極端子19と接しており、溶接によって固定されている。変形板33は、環状部材37と接点板35とによって挟み込まれた状態で互いに溶接によって固定されている。さらに、変形板33は、接合部41において第1導電部材68と接しており、第1導電部材68と溶接されている。第1導電部材68は、変形板33の凸状部の円形の下面に沿って形成された円形の孔部68aを有しており、接合部41は、孔部68aの周囲に位置している。環状部材37は、シリコン系接着剤等の絶縁性の接着剤によって、第1導電部材68と互いに絶縁された状態で固定されている。電極組立体60から第1電極端子19に向かって、第1導電部材68、変形板33、接点板35はこの順序で直列に接続されており、これらの部材によって、負極側の通電経路が構成されている。第1スペーサ150は、貫通孔151が孔部68aの真下(z軸の負方向)となるように、接着剤等によって第1導電部材68の下方に固定される。第1スペーサ150は、第1導電部材68を介して電流遮断装置120に固定された状態となっている。
【0037】
変形板33の上面は空間40に面しており、下面は貫通孔151を介してケース1内の電極組立体60側に面しているため、ケース1内の電極組立体60側の圧力が上昇し、ケース1側に対して空間40側が負圧になると、
図7に示すように、変形板33は、第1導電部材68から離れる方向(z軸の正方向)に反転する。変形板33が反転して接合部41が第1導電部材68と剥離することよって、負極側の通電経路が遮断される。
【0038】
蓄電装置100の製造工程において、電極組立体60、第1導電部材68、電流遮断装置120および第1電極端子19を接続した状態で、電極組立体60側がケース1の底面側(端子取付壁と対向する面側)となるようにケース1内に挿入すると、電極組立体とケースの内壁との摩擦によって、挿入する方向(z軸の負方向)と逆方向(z軸の正方向)に反力が作用する。電極組立体60と電流遮断装置120との間に隙間があると、この反力によって、第1導電部材68に曲げモーメントが発生する場合がある。この曲げモーメントが第1導電部材68を介して電流遮断装置120に伝わると、電流遮断装置120において脆弱な、通電と遮電とを切り替える部分(変形板33と第1導電部材68とが互いに溶接されている接合部41)に負荷がかかり、電流遮断装置120が誤作動を起こして負極側の通電経路を遮断する原因となり得る。
【0039】
蓄電装置100では、電流遮断装置120と電極組立体60との間に、電極組立体60と接する第1スペーサ150が備えられている。第1スペーサ150が電極組立体60に接することによって、電流遮断装置120と電極組立体60との間の隙間がなくなるため、電極組立体60をケース1に挿入する際の反力等によって第1導電部材68に曲げモーメントが発生することを抑制できる。このため、電流遮断装置120が誤作動を起こして負極側の通電経路を遮断することを抑制することができる。
【0040】
また、蓄電装置100は、第2電極端子119と電極組立体60との間に、電極組立体60と接する第2スペーサ160を備えている。このため、電極組立体60をケース1に挿入する際の反力等によって第2導電部材
64側に発生する曲げモーメントを抑制できる。また、電極組立体60をケース1に挿入する際に、第1スペーサ150と第2スペーサ160の双方によって均等に電極組立体60を押し入れることができる。
【0041】
(変形例)
上記の実施例では、ケース1が略直方体形状の箱型部材である場合について説明したが、ケースは例えば略円筒形状の箱型部材であってもよい。
【0042】
また、上記の実施例では、電流遮断装置120は、接合部41を有する変形板33の一方の面がケース1内の圧力に晒されており、ケース1内の圧力が上昇し、この変形板33の両面における圧力差が所定値以上となった場合に反転するものであったが、これに限られない。例えば、
図8,9を用いて下記に説明する電流遮断装置220のように、第1導電部材68と接合する第1変形板5(変形板の一例)は、ケース1内の圧力が上昇したときに反転する第2変形板3(変形板の一例)が加える荷重を受けて変形し、これによって通電経路が遮断されてもよい。また、変形板と接合する被接合部材(例えば、第1導電部材)は、電流遮断時に剥離によって分断されず、接合を維持したまま切断されるものであってもよい。なお、下記の
図8,9に係る変形例の説明においては、実施例1の蓄電装置100と相違する部分のみを説明し、蓄電装置100と同様の構成については重複説明を省略する。
【0043】
電流遮断装置220は、第1変形板5と、第2変形板3と、絶縁性の樹脂製のOリング14,17と、支持部材11,20と、突起12とを備えている。電流遮断装置220には、第1導電部材68の端部に設けられた通電部4が挿入されている。第1変形板5は、封口蓋体7を介して、第1電極端子19と電気的に接続している。第1電極端子19側から、電極組立体60側に向かう方向(
図8の上から下に向かう方向)に、第1変形板5、通電部4、第2変形板3がこの順で配置されている。第1変形板5と通電部4との間には、Oリング17が挟持されており、通電部4と第2変形板3との間には、Oリング14が挟持されている。第2変形板3、第1変形板5、Oリング14,17及び支持部材11,20によって空間240が形成されている。
【0044】
第2変形板3は、銅製または銅の合金製のダイアフラムであり、外周部において支持部材11で固定されるとともに、Oリング14により、ケース1内の電極組立体60側とシールされている。第2変形板3の中央部には、通電部4の側に向けて突出する絶縁性の突起12が設けられている。突起12は、筒形状をなしており、通電部4側の面が当接部24である。突起12が設置されている面に対向する第2変形板3の下面側は、平面状の受圧部22である。
【0045】
第1導電部材68の通電部4は、中央部15が薄く形成されている。中央部15は、第2変形板3の突起12の当接部の上方に位置しており、その下面には、破断溝16が形成されている。中央部15の上面は、接合部6である。通電部4は、接合部6において第1変形板5と接している。
【0046】
第1変形板5は、銅製または銅の合金製のダイアフラムであり、外周部において支持部材11で固定されている。第1変形板5は、その中央部の下面の接合部23において、通電部4の接合部6と接触している。通電部4の接合部6と第1変形板5の接合部23とは、溶接によって互いに固定されており、電気的に接続している。
【0047】
第1スペーサ260は、第2変形板3の下方に固定される。第1スペーサ260の上面は、第2変形板3の下面の形状に対応する形状を有している。第1スペーサ260の下面(電極組立体60と接する面)は、実施例1の第1スペーサ150と同様に、電極組立体60の第1スペーサ260側の面(
図1,2に示す面60a)の形状に対応する形状を有している。第1スペーサ260は、平面視するとその中央に貫通孔を有する略環状の部材であり、絶縁性の材料で形成されている。第1スペーサ260は、その貫通孔が第2変形板3の受圧部22の下方に位置するように、電流遮断装置220に固定される。受圧部22は、第1スペーサ260の貫通孔を介してケース1内の
電極組立体60側に面している。
【0048】
封口蓋体7の上面とケース1の内面との間には絶縁性のシール部材10が装着されており、封口蓋体7とケース1とは電気的に絶縁されている。支持部材11は、絶縁性であり、樹脂モールドで成形され、断面が略U字状でリング状に形成されている。支持部材11の略U字状の内面でもって、第1スペーサ260の外周部、第2変形板3の外周部、Oリング14,17、通電部4の外周部、第1変形板5の外周部、及び封口蓋体7の外周部を覆うとともにこれらの部材を積層状に挟着し、一体的に保持している。なお、Oリング14,17及び支持部材11は絶縁性であり、第2変形板3と通電部4は絶縁されており、第1変形板5と第1
導電部材68の通電部4は、接合部6,23以外では絶縁されている。支持部材11の外面には、金属製のカシメ部材20が被覆され、密封及び保持を確実なものとしている。また、封口蓋体7の内面部分は上方に窪んだ凹部18とされ、第1変形板5が第2変形板3の突起12により上方に変形される場合の空間240を形成している。
【0049】
電極組立体60から第1電極端子19に向かって、第1導電部材68の通電部4、第1変形板5、封口蓋体7はこの順序で直列に接続されている。第1電極端子19と第1導電部材68とは、電流遮断装置220の第1変形板5を介して電気的に接続されている。蓄電装置の通常動作時には、
図8に示すように、突起12の当接部24は、通電部4に接触していない。すなわち、負極側の通電経路は接続している。
【0050】
蓄電装置の過充電時には、
図9に示すように、第2変形板3が通電部4に向けて変形し、突起12の当接部24が通電部4の中央部の下面に当接して通電部4を破断溝16において破断し、通電部4の中央部を通電部4から分離する。これによって、接合部6及び接合部23が通電部4に対して分離され、離間して、電流遮断装置220と第1導電部材68との電気的接続が遮断され、負極側の通電経路が遮断される。
【0051】
また、他の変形例においては、
図10に示す蓄電装置100aのように、ケース1の端子取付壁と対向する壁面と、電極組立体60との間に、緩衝材190が設置されていてもよい。緩衝材190の材料としては、絶縁性および弾性を有する樹脂材料を好適に用いることができる。蓄電装置100aの緩衝材190以外の構成については、
図1等に示す蓄電装置100と同様であるため、説明を省略する。電極組立体60をケース1に挿入する際に、電極組立体60をケース1に深く挿しこんでも、電極組立体60は弾性を有する緩衝材190に当接するため、電極組立体60がケース1の端子取付壁と対向する壁面と当接する場合と比較して、当接によって生じる反力を緩和することができる。
【0052】
なお、上記の実施例および変形例では、電流遮断装置は、負極側の通電経路上に配置したが、電流遮断装置は、正極通電経路上に配置してもよい。また、第1スペーサは、電流遮断装置に固定されていなくてもよい。同様に、第2スペーサは、第2電極端子に固定されていなくてもよい。
【0053】
また、第1スペーサの電極組立体と接する面は、電極組立体の第1スペーサ側の面の形状に対応する形状を有していなくてもよい。例えば、電極組立体の第1スペーサ側の面が
図2のようにR形状を有している場合に、第1スペーサの電極組立体と接する面が平面であってもよい。同様に、第2スペーサの電極組立体と接する面は、電極組立体の第2スペーサ側の面の形状に対応する形状を有していなくてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施形態及び実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0055】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。