特許第6041008号(P6041008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000002
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000003
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000004
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000005
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000006
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000007
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000008
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000009
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000010
  • 特許6041008-電流遮断装置を備えた蓄電装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041008
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】電流遮断装置を備えた蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20161128BHJP
   H01M 2/18 20060101ALI20161128BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20161128BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20161128BHJP
   H01G 2/18 20060101ALI20161128BHJP
   H01G 11/16 20130101ALI20161128BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20161128BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01M2/34 B
   H01M2/18 Z
   H01M2/02 A
   H01M2/26 A
   H01G1/11 102
   H01G11/16
   H01G11/74
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-52321(P2015-52321)
(22)【出願日】2015年3月16日
(62)【分割の表示】特願2013-257981(P2013-257981)の分割
【原出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-130359(P2015-130359A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−172085(JP,A)
【文献】 特開2005−108503(JP,A)
【文献】 特開2013−242995(JP,A)
【文献】 特開2013−186954(JP,A)
【文献】 特開2013−229156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01M 2/14
H01G 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に収容され正極及び負極を備える電極組立体と、
前記ケースを構成する複数の壁の一つである端子取付壁に設けられる第1電極端子および第2電極端子と、
前記ケース内に収容され前記電極組立体の一方の極性の電極に接続された第1導電部材と、
前記ケース内に収容され前記電極組立体の他方の極性の電極と前記第2電極端子の双方に接続された第2導電部材と、
前記端子取付壁と前記電極組立体との間に配置されており、前記ケース内に収容され前記第1電極端子と前記第1導電部材との間に直列に接続されて、前記電極組立体から前記第1電極端子までの通電経路を接続または遮断する電流遮断装置と、
前記電流遮断装置と前記電極組立体との間に配置されている第1スペーサと、を備えており、
前記電流遮断装置は、前記ケース内の圧力を受ける変形板と、前記変形板を支持する支持部材とを備えており、前記変形板に作用する前記ケース内の圧力が上昇して前記変形板が変形したときに前記通電経路を遮断するように構成されており、
前記第1スペーサは、製造工程において、前記電極組立体と前記第1導電部材と前記第2導電部材と前記電流遮断装置と前記第1電極端子とを接続した状態で、前記電極組立体側から前記ケース内に挿入する際に、前記第1スペーサが前記電流遮断装置及び前記電極組立体に接触するように、前記電流遮断装置と前記電極組立体との間に配置されており、
前記端子取付壁を平面視したときに、前記第1電極端子の中心から前記第2電極端子の中心に向かって伸びる方向をy方向と規定すると共に、前記端子取付壁に直交する方向をz方向と規定したときに、
前記y方向に平行となり、前記z方向に平行となり、前記変形板の中心を通る断面において、前記第1スペーサの外周縁の位置は、前記変形板の外周縁の位置よりも内側に位置していることを特徴とする、蓄電装置。
【請求項2】
前記第1スペーサには、貫通孔が形成されており、
前記y方向に平行となり、前記z方向に平行となり、前記変形板の中心を通る断面において、前記第1スペーサの貫通孔が前記変形板の中心部の下方に位置している、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電装置は二次電池である、請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流遮断装置を備えた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、圧力検知型の電流遮断装置を備えたリチウム系電池が記載されている。この電池では、正極電極端子および負極電極端子は、ケースの同一側の壁に取り付けられており、電流遮断装置は、正極電極端子の略下方(電極組立体側)に設けられている。電流遮断装置は、電極組立体の正極に接続される導電部材と、正極電極端子との間に直列に接続されている。電池のケース内の圧力が上昇すると、電流遮断装置の変形板が変形して、正極と正極電極端子との通電経路を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−119183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極電極端子と負極電極端子との双方が1つの端子取付壁に設けられ、電流遮断装置が、電極組立体と端子取付壁との間に配置されている蓄電装置の製造工程において、電極組立体、導電部材、電流遮断装置および電極端子を接続した状態で、電極組立体側がケースの底面側(端子取付壁と対向する面側)となるようにケース内に挿入すると、電極組立体とケースの内壁との摩擦によって、挿入する方向と逆方向に反力が発生する。通常、電極組立体と電流遮断装置との間には隙間があるため、この反力によって、導電部材に曲げモーメントが発生する場合がある。この曲げモーメントが、導電部材を介して、電流遮断装置において脆弱な、通電と遮電を切り替える部分に伝わると、電流遮断装置が誤作動を起こして通電経路を遮断する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する蓄電装置は、ケースと、ケース内に収容され正極及び負極を備える電極組立体と、ケースを構成する複数の壁の一つである端子取付壁に設けられる第1電極端子および第2電極端子と、ケース内に収容され電極組立体の一方の極性の電極に接続された第1導電部材と、ケース内に収容され電極組立体の他方の極性の電極と第2電極端子の双方に接続された第2導電部材と、端子取付壁と電極組立体との間に配置されており、ケース内に収容され第1電極端子と第1導電部材との間に直列に接続され、電極組立体から第1電極端子までの通電経路を接続または遮断する電流遮断装置と、電流遮断装置と電極組立体との間に配置されている第1スペーサを備えている。電流遮断装置は、ケース内の圧力を受ける変形板と、変形板を支持する支持部材とを備えており、変形板に作用するケース内の圧力が上昇して変形板が変形したときに通電経路を遮断するように構成されている。第1スペーサは、製造工程において、電極組立体と第1導電部材と第2導電部材と電流遮断装置と第1電極端子とを接続した状態で、電極組立体側からケース内に挿入する際に、第1スペーサが電流遮断装置及び電極組立体に接触するように、電流遮断装置と電極組立体との間に配置されている。第1電極端子と前記第2電極端子とを接続する方向をy方向と規定すると共に、前記端子取付壁に直交する方向をz方向と規定したときに、y方向に平行となり、z方向に平行となり、変形板の中心を通る断面において、第1スペーサの外周縁の位置は、変形板の外周縁の位置よりも内側に位置することを特徴とする。
【0006】
上記の蓄電装置では、電流遮断装置と電極組立体との間に第1スペーサが配置されている。そして、電極組立体をケースに挿入する製造工程においては、第1スペーサが電流遮断装置及び電極組立体と接触して、電極組立体をケースに挿入する際の摩擦等によって第1導電部材に曲げモーメントが発生することを抑制できる。このため、電流遮断装置が誤作動を起こして通電経路を遮断することを抑制することができる。
【0007】
上記の蓄電装置では、第1スペーサは、電流遮断装置に固定されていてもよい。
【0008】
上記の蓄電装置では、第1スペーサの電極組立体と接触する面は、電極組立体の第1スペーサ側の面の形状に対応する形状を有していてもよい。
【0009】
上記の蓄電装置は、第2電極端子と電極組立体との間に電極組立体と接する第2スペーサをさらに備えていてもよい。さらに、第2スペーサは、第2電極端子に固定されていてもよい。さらに、第2スペーサの電極組立体と接する面は、電極組立体の第2スペーサ側の面の形状に対応する形状を有していてもよい。
【0010】
上記の蓄電装置は、ケースの端子取付壁と対向する壁面と、電極組立体との間に、緩衝材をさらに備えていてもよい。
【0011】
上記の蓄電装置は、二次電池であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電極組立体をケースに挿入する際等に、第1導電部材に曲げモーメントが発生することを抑制でき、その結果、電流遮断装置の誤作動を抑制できる蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1に係る蓄電装置の縦断面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図1の捲回構造を有する電極組立体を概念的に示す図である。
図4図1の第1スペーサを拡大して示す図である。
図5図1の第2スペーサを拡大して示す図である。
図6図1の電流遮断装置およびその近傍を拡大して示す図であり、蓄電装置の通常動作時の状態を示している。
図7図1の電流遮断装置およびその近傍を拡大して示す図であり、蓄電装置の過充電時の状態を示している。
図8】変形例に係る電流遮断装置およびその近傍を示す図であり、蓄電装置の通常動作時の状態を示している。
図9】変形例に係る電流遮断装置およびその近傍を示す図であり、蓄電装置の過充電時の状態を示している。
図10】変形例に係る蓄電装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書が開示する蓄電装置は、例えば、密閉型の二次電池、密閉型のキャパシタ等の従来公知の蓄電装置として利用することができる。さらに、二次電池の具体例を挙げると、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の比較的高容量で大電流の充放電が行われる二次電池を例示できる。また、この蓄電装置は、車両や電気機器等に搭載されていてもよい。
【0015】
本明細書が開示する蓄電装置は、ケースと、ケース内に収容された、電極組立体、第1導電部材、第2導電部材、及び電流遮断装置と、ケースの端子取付壁に設けられる第1電極端子および第2電極端子とを備えている。電流遮断装置は、端子取付壁と電極組立体との間に配置されている。この蓄電装置は、電流遮断装置と電極組立体との間に電極組立体と接する第1スペーサをさらに備えている。第1スペーサは、電流遮断装置に固定されていてもよい。例えば、第1スペーサと電流遮断装置とは、互いに接する状態で固定されていてもよいし、他の部材(例えば、第1導電部材)を介して互いに固定されていてもよい。
【0016】
電極組立体は、正極及び負極を備えている。電極組立体としては、例えば、シート状の正極とシート状の負極がシート状のセパレータを間に挟んだ状態で層状をなす電極対を備えた電極組立体を挙げることができ、より具体的には、この電極対が多数積層された積層型の電極組立体や、この電極対が所定の軸周りに捲回された捲回型の電極組立体を例示できる。電極組立体の最も外側には、正極または負極のいずれか一方が配置されてもよいし、セパレータが配置されていてもよい。また、電極組立体は、電解質によって浸されていてもよい。
【0017】
第1導電部材は、電極組立体の一方の極性の電極に接続される。電流遮断装置は、第1電極端子と第1導電部材との間に直列に接続される。第2導電部材は、電極組立体の他方の極性の電極と第2電極端子の双方とに接続される。第1導電部材が正極に接続される場合には、電流遮断装置は、正極側の通電経路(電極組立体の正極から第1電極端子までの通電経路)に設置され、第2導電部材は、電極組立体の負極と負極電極端子との双方とに接続される。第1導電部材が電極組立体の負極に接続される場合には、電流遮断装置は、負極側の通電経路(電極組立体の負極から第1電極端子までの通電経路)に設置され、第2導電部材は、電極組立体の正極と正極電極端子との双方とに接続される。電流遮断装置は、電極組立体から第1電極端子までの通電経路を接続または遮断する。電極遮断装置は、電極組立体から第1電極端子までの通電経路の一部を構成していてもよい。より具体的には、例えば、電極組立体の第1電極端子に対応する第1電極(正極または負極)から第1電極端子までの通電経路は、この順で直列に接続された、第1導電部材、電流遮断装置を介して電気的に接続されていてもよい。
【0018】
第1スペーサの電極組立体と接する面は、電極組立体の第1スペーサ側の面の形状に対応する形状を有していてもよい。ここで、「対応する」とは、同様のまたは相補的な形状であることを意味し、これによって、互いの面が広く接触できるようになるものである。例えば、電極組立体の第1スペーサ側の面が平面である場合には、第1スペーサの電極組立体と接する面の形状は同様の平面であることが好ましい。また、例えば、電極組立体の第1スペーサ側の面がR形状の凸面である場合には、第1スペーサの電極組立体と接する面の形状は相補的な形状、すなわち、同様の曲率のR形状を有する凹面であることが好ましい。第1スペーサと電極組立体との互いの接触面が互いに対応する形状を有していると、互いの接触面の面積が大きくなり、接触による面圧を小さくすることができる。
【0019】
第1スペーサと電極組立体の第1スペーサと接する面とは、絶縁されていることが好ましい。絶縁するためには、例えば、電極組立体の最外周に絶縁性のセパレータを配置して、電極組立体の第1スペーサと接する面がセパレータとなるようにしてもよいし、第1スペーサの電極組立体と接する面を絶縁性の材料で形成してもよいし、第1スペーサ全体を絶縁性の材料で形成してもよい。絶縁性の材料としては、蓄電装置の分野において従来用いられている絶縁材料を使用することができ、第1スペーサ側には、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂材料を好適に用いることができる。
【0020】
第2電極端子と電極組立体との間に電極組立体と接する第2スペーサをさらに備えていてもよい。電極組立体60をケース1に挿入する際の反力等によって第1導電部材側に曲げモーメントが発生することを抑制する効果に加えて、第2導電部材側に曲げモーメントが発生することを抑制する効果を得ることができる。また、電極組立体をケースに挿入する際に、第1スペーサと第2スペーサの双方によって均等に電極組立体を押し入れることができる。第2スペーサは、第2電極端子に固定されていてもよい。
【0021】
第1スペーサと同様に、第2スペーサの電極組立体と接する面は、電極組立体の第2スペーサ側の面の形状に対応する形状を有していてもよい。第1スペーサにおいて説明したのと同様に、第2スペーサと電極組立体との互いの接触面が互いに対応する形状を有していると、接触面の面積が大きくなり、接触による面圧を小さくすることができる。
【0022】
また、第1スペーサと同様に、第2スペーサと電極組立体の第2スペーサと接する面とは、絶縁されていることが好ましい。第1スペーサについて用いたものと同様の手段で、第2スペーサと電極組立体の第2スペーサと接する面とを絶縁することができる。
【0023】
上記の蓄電装置では、ケースの端子取付壁と対向する壁面と、電極組立体との間に、緩衝材が設置されていてもよい。電極組立体をケースに挿入する際に、電極組立体をケースに深く挿しこんでも、ケースの端子取付壁と対向する壁面ではなく緩衝材に当接する。緩衝材と接することによって、電極組立体を挿入する際の反力(挿入する方向と逆方向に作用する力)を緩和することができる。
【実施例1】
【0024】
図1は、実施例1に係る蓄電装置100の断面図である。蓄電装置100は、ケース1と、捲回型の電極組立体60と、第1導電部材68と、第2導電部材64と、第1電極端子19と、第2電極端子119と、電流遮断装置120と、第1スペーサ150と、第2スペーサ160とを備えている。なお、以下においては、説明の便宜上、z軸の正方向側を上側、負方向側を下側として説明することがある。
【0025】
ケース1は略直方体形状の箱型部材であり、内部に電極組立体60と、図示省略の電解液と、第1導電部材68と、第2導電部材64と、電流遮断装置120と、第1スペーサ150と、第2スペーサ160とを収容している。ケース1の上端面(z軸の正方向側の面)は、端子取付壁であり、第1電極端子19と、第2電極端子119が取付けられている。第1電極端子19は、電極組立体60の負極に電気的に接続しており、第2電極端子119は、電極組立体60の正極に電気的に接続している。
【0026】
図2,3に示すように、電極組立体60は、正極シート601、セパレータ603、負極シート602、セパレータ603が、この順序で積層された電極対を、正極シート601側を内側にして捲回軸(図1および図3に示すr軸)を中心に捲回したものである。正極シート601は、アルミニウム製の正極金属箔601aと、正極金属箔601aの両面に形成された正極活物質層601bとを備えている。負極シート602は、銅製の負極金属箔602aと、負極金属箔602aの両面に形成された負極活物質層602bとを備えている。セパレータ603は絶縁性の多孔体である。電極組立体60は、液状の電解質が含浸された状態でケース1内に収容されている。捲回構造体の捲回軸であるr軸は、y軸と略平行であり、第1電極端子19と第2電極端子119とは、r軸の方向に沿って端子取付壁の両端部にそれぞれ配置されている。
【0027】
第1導電部材68は、集電部67を備えており、電極組立体60の負極シート602は、集電部67によって束ねられている。第2導電部材64は、集電部65を備えており、電極組立体60の正極シート601は、集電部65によって束ねられている。
【0028】
図1に示すように、第1導電部材68は、銅製または銅の合金製の平板を屈曲させた形状を有し、第1電極端子19の下方でy軸の負方向に伸び、屈曲して、z軸の負方向に伸びている。
【0029】
図1,2に示すように、電極組立体60の上面60aは、端子取付壁側(z軸の正方向側)に凸のR形状の面である。上面60aのy方向の両端部において、第1スペーサ150および第2スペーサ160と、電極組立体60とが互いに接している。
【0030】
電流遮断装置120は、その下面側において第1導電部材68と接続されており、その上面側において第1電極端子19と接続されている。また、第1電極端子19と第1導電部材68とは、電流遮断装置120を介して電気的に接続されている。このように、電極組立体60の負極シート602から第1電極端子19までの負極側の通電経路は、この順で直列に接続された第1導電部材68と、電流遮断装置120とを介して接続されている。
【0031】
第2導電部材64は、アルミニウム製の平板を屈曲させた形状を有し、第2電極端子119の下方でy軸の正方向に伸び、屈曲して、z軸の負方向に伸びている。電極組立体60の正極シート601から第2電極端子119までの正極側の通電経路は、第2導電部材64を介して接続されている。蓄電装置100は、電極組立体60とケース1の外部とで、第1電極端子19、及び第2電極端子119を介して相互に電気の授受が可能である。なお、第2導電部材64は、必ずしも一部材であることを意味しない。複数の導電性の部材が接続されて第2導電部材64を構成してもよい。
【0032】
図4に示すように、第1スペーサ150は、略円柱形状の部材の一方の円形の面側をR形状に切り取った形状を有している。第1スペーサ150は、R形状の面150aが電極組立体60側(z軸の負方向側)となるように電流遮断装置120に固定される。面150aは、電極組立体60と接する面であり、電極組立体60の第1スペーサ150側の面(面60a)の形状に対応するように、端子取付壁側に凹のR形状(面60aと同程度の曲率を有する)を有している。第1スペーサ150には、z方向に貫通する貫通孔151が設けられている。
【0033】
図5に示すように、第2スペーサ160は、略円柱形状の部材の一方の円形の面側をR形状に切り取った形状を有している。第2スペーサ160は、R形状の面160aが電極組立体60側となるように第2電極端子119に固定される。第2スペーサ160は、中空の部材であり、第2電極端子119のボルト119aは、第2スペーサ160の内側の底面に接するまで伸びている。第2スペーサ160は、その上部においてケース1の端子取付壁に係合して、第2電極端子119および端子取付壁に固定されている。面160aは、電極組立体60と接する面であり、電極組立体60の第2スペーサ160側の面(面60a)の形状に対応するように、端子取付壁側に凹のR形状(面60aと同程度の曲率を有する)を有している。第1スペーサ150および第2スペーサ160は、絶縁性の樹脂材料によって形成されている。
【0034】
図2に、第2スペーサ160の面160aと、電極組立体60の第2スペーサ側の面60aが互いに接した状態を示す。面60aは、端子取付壁側に凸のR形状を有しており、面160aは、面60aの形状に対応するように、端子取付壁側に凹のR形状を有している。このため、面160aの全体と面60aの全体とが接触して互いの接触面積が大きくなり、接触による面圧を小さくすることができる。図示しないが、第1スペーサ150の面150aも同様に、電極組立体60の第1スペーサ150側の面の形状に対応する形状を有しているため、面150aと、電極組立体60の第1スペーサ150側の面との接触面積が大きくなり、接触による面圧を小さくすることができる。
【0035】
図6に示すように、電流遮断装置120は、変形板33と、接点板35と、環状部材37とを備えている。変形板33は、銅製または銅の合金製のダイアフラムであり、平面視すると円形の略平板状の部材であり、中央部に円錐台状の凸状部を有する。蓄電装置100の通常動作時においては、変形板33の凸状部は、第1導電部材68及び電極組立体60側が配置されている側(z軸の負方向側)に凸となっている。接点板35は、平面視すると円形の略平板状の金属製の部材であり、平板状の中央部と、中央部から変形板33の方向に湾曲して伸びる側面部とを有している。環状部材37は、平面視すると環状の部材である。変形板33と接点板35は、接続部34において互いに接しており、溶接によって固定されている。変形板33と接点板35によって、ケース1内の電極組立体60側から空間40を隔離する壁が形成されており、変形板33の上面(z軸の正方向側の面)及び接点板35の下面(z軸の負方向側の面)は、空間40に面している。
【0036】
接点板35は、第1電極端子19と接しており、溶接によって固定されている。変形板33は、環状部材37と接点板35とによって挟み込まれた状態で互いに溶接によって固定されている。さらに、変形板33は、接合部41において第1導電部材68と接しており、第1導電部材68と溶接されている。第1導電部材68は、変形板33の凸状部の円形の下面に沿って形成された円形の孔部68aを有しており、接合部41は、孔部68aの周囲に位置している。環状部材37は、シリコン系接着剤等の絶縁性の接着剤によって、第1導電部材68と互いに絶縁された状態で固定されている。電極組立体60から第1電極端子19に向かって、第1導電部材68、変形板33、接点板35はこの順序で直列に接続されており、これらの部材によって、負極側の通電経路が構成されている。第1スペーサ150は、貫通孔151が孔部68aの真下(z軸の負方向)となるように、接着剤等によって第1導電部材68の下方に固定される。第1スペーサ150は、第1導電部材68を介して電流遮断装置120に固定された状態となっている。
【0037】
変形板33の上面は空間40に面しており、下面は貫通孔151を介してケース1内の電極組立体60側に面しているため、ケース1内の電極組立体60側の圧力が上昇し、ケース1側に対して空間40側が負圧になると、図7に示すように、変形板33は、第1導電部材68から離れる方向(z軸の正方向)に反転する。変形板33が反転して接合部41が第1導電部材68と剥離することよって、負極側の通電経路が遮断される。
【0038】
蓄電装置100の製造工程において、電極組立体60、第1導電部材68、電流遮断装置120および第1電極端子19を接続した状態で、電極組立体60側がケース1の底面側(端子取付壁と対向する面側)となるようにケース1内に挿入すると、電極組立体とケースの内壁との摩擦によって、挿入する方向(z軸の負方向)と逆方向(z軸の正方向)に反力が作用する。電極組立体60と電流遮断装置120との間に隙間があると、この反力によって、第1導電部材68に曲げモーメントが発生する場合がある。この曲げモーメントが第1導電部材68を介して電流遮断装置120に伝わると、電流遮断装置120において脆弱な、通電と遮電とを切り替える部分(変形板33と第1導電部材68とが互いに溶接されている接合部41)に負荷がかかり、電流遮断装置120が誤作動を起こして負極側の通電経路を遮断する原因となり得る。
【0039】
蓄電装置100では、電流遮断装置120と電極組立体60との間に、電極組立体60と接する第1スペーサ150が備えられている。第1スペーサ150が電極組立体60に接することによって、電流遮断装置120と電極組立体60との間の隙間がなくなるため、電極組立体60をケース1に挿入する際の反力等によって第1導電部材68に曲げモーメントが発生することを抑制できる。このため、電流遮断装置120が誤作動を起こして負極側の通電経路を遮断することを抑制することができる。
【0040】
また、蓄電装置100は、第2電極端子119と電極組立体60との間に、電極組立体60と接する第2スペーサ160を備えている。このため、電極組立体60をケース1に挿入する際の反力等によって第2導電部材64側に発生する曲げモーメントを抑制できる。また、電極組立体60をケース1に挿入する際に、第1スペーサ150と第2スペーサ160の双方によって均等に電極組立体60を押し入れることができる。
【0041】
(変形例)
上記の実施例では、ケース1が略直方体形状の箱型部材である場合について説明したが、ケースは例えば略円筒形状の箱型部材であってもよい。
【0042】
また、上記の実施例では、電流遮断装置120は、接合部41を有する変形板33の一方の面がケース1内の圧力に晒されており、ケース1内の圧力が上昇し、この変形板33の両面における圧力差が所定値以上となった場合に反転するものであったが、これに限られない。例えば、図8,9を用いて下記に説明する電流遮断装置220のように、第1導電部材68と接合する第1変形板5(変形板の一例)は、ケース1内の圧力が上昇したときに反転する第2変形板3(変形板の一例)が加える荷重を受けて変形し、これによって通電経路が遮断されてもよい。また、変形板と接合する被接合部材(例えば、第1導電部材)は、電流遮断時に剥離によって分断されず、接合を維持したまま切断されるものであってもよい。なお、下記の図8,9に係る変形例の説明においては、実施例1の蓄電装置100と相違する部分のみを説明し、蓄電装置100と同様の構成については重複説明を省略する。
【0043】
電流遮断装置220は、第1変形板5と、第2変形板3と、絶縁性の樹脂製のOリング14,17と、支持部材11,20と、突起12とを備えている。電流遮断装置220には、第1導電部材68の端部に設けられた通電部4が挿入されている。第1変形板5は、封口蓋体7を介して、第1電極端子19と電気的に接続している。第1電極端子19側から、電極組立体60側に向かう方向(図8の上から下に向かう方向)に、第1変形板5、通電部4、第2変形板3がこの順で配置されている。第1変形板5と通電部4との間には、Oリング17が挟持されており、通電部4と第2変形板3との間には、Oリング14が挟持されている。第2変形板3、第1変形板5、Oリング14,17及び支持部材11,20によって空間240が形成されている。
【0044】
第2変形板3は、銅製または銅の合金製のダイアフラムであり、外周部において支持部材11で固定されるとともに、Oリング14により、ケース1内の電極組立体60側とシールされている。第2変形板3の中央部には、通電部4の側に向けて突出する絶縁性の突起12が設けられている。突起12は、筒形状をなしており、通電部4側の面が当接部24である。突起12が設置されている面に対向する第2変形板3の下面側は、平面状の受圧部22である。
【0045】
第1導電部材68の通電部4は、中央部15が薄く形成されている。中央部15は、第2変形板3の突起12の当接部の上方に位置しており、その下面には、破断溝16が形成されている。中央部15の上面は、接合部6である。通電部4は、接合部6において第1変形板5と接している。
【0046】
第1変形板5は、銅製または銅の合金製のダイアフラムであり、外周部において支持部材11で固定されている。第1変形板5は、その中央部の下面の接合部23において、通電部4の接合部6と接触している。通電部4の接合部6と第1変形板5の接合部23とは、溶接によって互いに固定されており、電気的に接続している。
【0047】
第1スペーサ260は、第2変形板3の下方に固定される。第1スペーサ260の上面は、第2変形板3の下面の形状に対応する形状を有している。第1スペーサ260の下面(電極組立体60と接する面)は、実施例1の第1スペーサ150と同様に、電極組立体60の第1スペーサ260側の面(図1,2に示す面60a)の形状に対応する形状を有している。第1スペーサ260は、平面視するとその中央に貫通孔を有する略環状の部材であり、絶縁性の材料で形成されている。第1スペーサ260は、その貫通孔が第2変形板3の受圧部22の下方に位置するように、電流遮断装置220に固定される。受圧部22は、第1スペーサ260の貫通孔を介してケース1内の電極組立体60側に面している。
【0048】
封口蓋体7の上面とケース1の内面との間には絶縁性のシール部材10が装着されており、封口蓋体7とケース1とは電気的に絶縁されている。支持部材11は、絶縁性であり、樹脂モールドで成形され、断面が略U字状でリング状に形成されている。支持部材11の略U字状の内面でもって、第1スペーサ260の外周部、第2変形板3の外周部、Oリング14,17、通電部4の外周部、第1変形板5の外周部、及び封口蓋体7の外周部を覆うとともにこれらの部材を積層状に挟着し、一体的に保持している。なお、Oリング14,17及び支持部材11は絶縁性であり、第2変形板3と通電部4は絶縁されており、第1変形板5と第1導電部材68の通電部4は、接合部6,23以外では絶縁されている。支持部材11の外面には、金属製のカシメ部材20が被覆され、密封及び保持を確実なものとしている。また、封口蓋体7の内面部分は上方に窪んだ凹部18とされ、第1変形板5が第2変形板3の突起12により上方に変形される場合の空間240を形成している。

【0049】
電極組立体60から第1電極端子19に向かって、第1導電部材68の通電部4、第1変形板5、封口蓋体7はこの順序で直列に接続されている。第1電極端子19と第1導電部材68とは、電流遮断装置220の第1変形板5を介して電気的に接続されている。蓄電装置の通常動作時には、図8に示すように、突起12の当接部24は、通電部4に接触していない。すなわち、負極側の通電経路は接続している。
【0050】
蓄電装置の過充電時には、図9に示すように、第2変形板3が通電部4に向けて変形し、突起12の当接部24が通電部4の中央部の下面に当接して通電部4を破断溝16において破断し、通電部4の中央部を通電部4から分離する。これによって、接合部6及び接合部23が通電部4に対して分離され、離間して、電流遮断装置220と第1導電部材68との電気的接続が遮断され、負極側の通電経路が遮断される。
【0051】
また、他の変形例においては、図10に示す蓄電装置100aのように、ケース1の端子取付壁と対向する壁面と、電極組立体60との間に、緩衝材190が設置されていてもよい。緩衝材190の材料としては、絶縁性および弾性を有する樹脂材料を好適に用いることができる。蓄電装置100aの緩衝材190以外の構成については、図1等に示す蓄電装置100と同様であるため、説明を省略する。電極組立体60をケース1に挿入する際に、電極組立体60をケース1に深く挿しこんでも、電極組立体60は弾性を有する緩衝材190に当接するため、電極組立体60がケース1の端子取付壁と対向する壁面と当接する場合と比較して、当接によって生じる反力を緩和することができる。
【0052】
なお、上記の実施例および変形例では、電流遮断装置は、負極側の通電経路上に配置したが、電流遮断装置は、正極通電経路上に配置してもよい。また、第1スペーサは、電流遮断装置に固定されていなくてもよい。同様に、第2スペーサは、第2電極端子に固定されていなくてもよい。
【0053】
また、第1スペーサの電極組立体と接する面は、電極組立体の第1スペーサ側の面の形状に対応する形状を有していなくてもよい。例えば、電極組立体の第1スペーサ側の面が図2のようにR形状を有している場合に、第1スペーサの電極組立体と接する面が平面であってもよい。同様に、第2スペーサの電極組立体と接する面は、電極組立体の第2スペーサ側の面の形状に対応する形状を有していなくてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施形態及び実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0055】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0056】
1 :ケース
3 :第2変形板
4 :通電部
5 :第1変形板
6,23,41 :接合部
19 :第1電極端子
33 :変形板
35 :接点板
60 :電極組立体
64 :第2導電部材
68 :第1導電部材
100,100a:蓄電装置
119:第2電極端子
120,220 :電流遮断装置
150,260:第1スペーサ
160:第2スペーサ
601:正極シート
602:負極シート
603:セパレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10