特許第6041037号(P6041037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041037
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】アンダーカバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20161128BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B62D25/20 N
   H05K9/00 Q
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-245549(P2015-245549)
(22)【出願日】2015年12月16日
(62)【分割の表示】特願2012-5021(P2012-5021)の分割
【原出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-41586(P2016-41586A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】ルー ウェン レオン
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−083599(JP,A)
【文献】 特開2007−160843(JP,A)
【文献】 特開2000−177652(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/050060(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0199406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
H05K 9/00
B60K 1/00− 6/12
B60K 7/00− 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全確保用の操作部を備えた被保護体を保護するために車両に取り付けられるアンダーカバーであって、
手動で切り取り操作されることにより前記操作部の操作を行うための作業領域が形成され、前記切り取り操作のために把持する把持部を備え、前記把持部と反対側の端部の幅が前記把持部側の端部の幅よりも大きい切り取り部と、
前記切り取り部の長手方向に沿って位置し、前記切り取り操作の後に、前記作業領域を拡大するために当該切り取り操作と直交する方向へ折り曲げ可能となる折り曲げ部とを有することを特徴とするアンダーカバー。
【請求項2】
前記把持部は、前記アンダーカバーの、車両の側方に対応した縁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカバー。
【請求項3】
前記折り曲げ部は、車両の前方に対応する位置において前記切り取り部の隣に位置し、
前記アンダーカバーの、前記車両の前方に対応した縁部と、前記車両の側方に対応した縁部とを、その縁部としていることを特徴とする、請求項2に記載のアンダーカバー。
【請求項4】
前記把持部は、前記アンダーカバーの縁部に凹状に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のアンダーカバー。
【請求項5】
前記アンダーカバーの、前記切り取り部とそれ以外の部分とにまたがって、前記切り取り操作が可能なように、前記アンダーカバーに一体化された電磁シールドを有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載のアンダーカバー。
【請求項6】
前記電磁シールドは、可撓性であり、前記切り取り部と前記それ以外の部分とのそれぞれにおいて前記アンダーカバーに一体化されているとともに、前記切り取り操作が行われる前の状態において、前記切り取り部と前記それ以外の部分との境界部分に対応する位置にたるみを有することを特徴とする請求項5に記載のアンダーカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられるアンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーや燃料タンクなどの保護を行うために車両に取り付けられるアンダーカバーが知られている(たとえば、〔特許文献1〕、〔特許文献2〕参照)。このようなアンダーカバーは、バッテリーや燃料タンクなどの被保護体を保護するものであるが、被保護体に、緊急時等に安全確保を行うためのプラグやスイッチなどの操作部が備えられている場合、アンダーカバーが邪魔となって操作部の操作が困難となることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−160843号公報
【特許文献2】特開2009−83599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アンダーカバーの形状を、初めから、操作部が露出するように形成すると、操作部の保護が不十分になり、アンダーカバーの所期の機能が果たされなくなる可能性がある。よって、アンダーカバーは、操作部の操作が必要になったときに、この操作のための作業領域が確保されるように形成されていることが望ましい。
【0005】
本発明は、安全確保用の操作部を備えた被保護体を保護するために車両に取り付けられるアンダーカバーであって、操作部の操作が必要になったときにこの操作のための作業領域を確保することが可能となるアンダーカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、安全確保用の操作部を備えた被保護体を保護するために車両に取り付けられるアンダーカバーであって、手動で切り取り操作されることにより前記操作部の操作を行うための作業領域が形成され、前記切り取り操作のために把持する把持部を備え、前記把持部と反対側の端部の幅が前記把持部側の端部の幅よりも大きい切り取り部と、前記切り取り部の長手方向に沿って位置し、前記切り取り操作の後に、前記作業領域を拡大するために当該切り取り操作と直交する方向へ折り曲げ可能となる折り曲げ部とを有することを特徴とするアンダーカバーにある。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記把持部は、前記アンダーカバーの、車両の側方に対応した縁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカバーにある。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記折り曲げ部は、車両の前方に対応する位置において前記切り取り部の隣に位置し、前記アンダーカバーの、前記車両の前方に対応した縁部と、車両の側方に対応した縁部とを、その縁部としていることを特徴とする、請求項2に記載のアンダーカバーにある。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記把持部は、前記アンダーカバーの縁部に凹状に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のアンダーカバーにある。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記アンダーカバーの、前記切り取り部とそれ以外の部分とにまたがって、前記切り取り操作が可能なように、前記アンダーカバーに一体化された電磁シールドを有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載のアンダーカバーにある。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記電磁シールドは、可撓性であり、前記切り取り部と前記それ以外の部分とのそれぞれにおいて前記アンダーカバーに一体化されているとともに、前記切り取り操作が行われる前の状態において、前記切り取り部と前記それ以外の部分との境界部分に対応する位置にたるみを有することを特徴とする請求項5に記載のアンダーカバーにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、安全確保用の操作部を備えた被保護体を保護するために車両に取り付けられるアンダーカバーであって、手動で切り取り操作されることにより前記操作部の操作を行うための作業領域が形成され、切り取り操作のために把持する把持部を備えた切り取り部を有することを特徴とするので、操作部の操作が必要になったときに、この操作のための作業領域を、把持部を用いて切り取り部を切り取る比較的簡易で速やかな操作を行うことによって確保することが可能となり、操作部の操作を比較的速やかで簡易に行うことが可能となるアンダーカバーを提供することができる。
【0013】
また、前記切り取り部の隣に位置し、前記切り取り操作の後に、前記作業領域を拡大するために折り曲げ可能となる折り曲げ部を有することを特徴とするので、操作部の操作が必要になったときに、この操作のための作業領域を、把持部を用いて切り取り部を切り取る比較的簡易で速やかな操作を行うことによって確保したうえで、折り曲げ分を折り曲げる比較的簡易で速やかな操作で拡大することが可能となり、操作部の操作を速やかにより簡易に行うことが可能となるアンダーカバーを提供することができる。
【0014】
前記把持部は、前記アンダーカバーの、前記車両の側方に対応した縁部に設けられていることを特徴とするので、アンダーカバーによる被保護体の保護機能を確保しつつ、操作部の操作が必要になったときに、この操作のための作業領域を、把持部を用いて切り取り部を切り取る比較的簡易で速やかな操作を行うことによって確保することが可能となり、操作部の操作を比較的速やかで簡易に行うことが可能となるアンダーカバーを提供することができる。
【0015】
前記折り曲げ部は、車両の前方に対応する位置において前記切り取り部の隣に位置し、前記アンダーカバーの、車両の前方に対応した縁部と、車両の側方に対応した縁部とを、その縁部としていることを特徴とするので、アンダーカバーによる被保護体の保護機能を確保しつつ、操作部の操作が必要になったときに、この操作のための作業領域を、把持部を用いて切り取り部を切り取る比較的簡易で速やかな操作を行うことによって確保したうえで、折り曲げ分を折り曲げる比較的簡易で速やかな操作で拡大することが可能となり、操作部の操作を比較的速やかにより簡易に行うことが可能となるアンダーカバーを提供することができる。
【0016】
前記把持部は、前記アンダーカバーの縁部に凹状に設けられていることを特徴とするので、把持部の認識が手探りでも可能であり、操作部の操作が必要になったときに、この操作のための作業領域を、容易に認識される把持部を用いて切り取り部を切り取る比較的簡易で速やかな操作を行うことによって確保することが可能となり、操作部の操作を比較的速やかで簡易に行うことが可能となるアンダーカバーを提供することができる。
【0017】
前記アンダーカバーの、前記切り取り部とそれ以外の部分とにまたがって、前記切り取り操作が可能なように、前記アンダーカバーに一体化された電磁シールドを有することを特徴とするので、切り取り操作を可能としつつ電磁シールドの機能を確保することが可能であるとともに、操作部の操作が必要になったときに、この操作のための作業領域を、把持部を用いて切り取り部を切り取る比較的簡易で速やかな操作を行うことによって確保することが可能となり、操作部の操作を比較的速やかで簡易に行うことが可能となるアンダーカバーを提供することができる。
【0018】
前記電磁シールドは、可撓性であり、前記切り取り部と前記それ以外の部分とのそれぞれにおいて前記アンダーカバーに一体化されているとともに、前記切り取り操作が行われる前の状態において、前記切り取り部と前記それ以外の部分との境界部分に対応する位置にたるみを有することを特徴とするので、切り取り操作の作業性を確保しつつ電磁シールドの機能を確保することが可能であるとともに、操作部の操作が必要になったときに、この操作のための作業領域を、把持部を用いて切り取り部を切り取る比較的簡易で速やかな操作を行うことによって確保することが可能となり、操作部の操作を比較的速やかで簡易に行うことが可能となるアンダーカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用したアンダーカバーの一例及びこれを搭載した車両の一例の一部を示した概略図である。
図2図1に示したアンダーカバーの斜視図である。
図3図1に示したアンダーカバーに備えられた切り取り部及びこれに備えられた把持部を説明するための、該アンダーカバーの一部の概略拡大図である。
図4図3に示した切り取り部の切り取り操作を説明するための、図1に示したアンダーカバーの一部の概略拡大図である。
図5図3に示した切り取り部が切り取られることにより形成された作業領域を示した、図1に示したアンダーカバーの一部の概略拡大図である。
図6図1に示したアンダーカバーに備えられた折り曲げ部及びこの折り曲げ部の折り曲げ操作によって図3に示した作業領域が拡大されることを説明するための、該アンダーカバーの一部の概略拡大図である。
図7図1に示したアンダーカバーに備えられた電磁シールドを説明するための概略図である。
図8図7に示した電磁シールドの一部に形成されるたるみを説明するための概略図である。
図9図7に示した電磁シールドの一部に形成されたたるみの機能を説明するための概略図である。
図10】電磁シールドの形状に切り取り操作を行ううえでの不具合がある場合の比較例を示した概略図である。
図11】電磁シールドの形状にシールド機能を低下させる要因がある場合の比較例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に本発明を適用したアンダーカバーの一例の概略及びこれを搭載した車両の一部の概略を示す。同図(a)は平面図であり、同図(b)は同図(a)のA−A断面図である側断面図となっている。
【0021】
同図において、矢印Xはアンダーカバー10を取り付けられた車両100の左右方向すなわち車幅方向に対応しており、矢印Yは車両100の前後方向、とくに車両100の進行方向である前方に対応しており、矢印Zは車両100の上下方向、とくに上方に対応している。X方向、Y方向、Z方向は、これらが図示されている図において同じ方向を示している。
【0022】
同図に示されているように、車両100は、Z方向におけるアンダーカバー10の上方に位置する、アンダーカバー10による被保護体である電池パック20と、X方向におけるアンダーカバー10の両側にそのY方向における後側の部分が位置する一対のトレーリングアーム30と、X方向に延在し各トレーリングアーム30のY方向における中央部を連結したアクスル40と、各トレーリングアーム30のY方向における後側の端部に支持された一対の前輪である車輪50とを有している。
【0023】
車両100はまた、図示を省略するが、アンダーカバー10が取り付けられたフレームと、電池パック20と車両100の本体側とを電気的に接続し、電池パック20内の電池から車体100の本体側への給電あるいはかかる本体側からかかる電池への充電を行うための電気回路と、かかる本体側に備えられたラジオ放送の受信装置とを有している。
【0024】
電池パック20は、車両100の故障時などの緊急時にかかる電気回路を遮断して安全を確保するための、安全確保用の操作部としてのサービスプラグであるプラグ21と、通常のメンテナンス時に操作するメンテナンス用の図示しないサービスプラグと、X方向における右側であって、Y方向における前側に位置し、Y方向における前側及びZ方向における下方を向く、図1(b)に示す側面22とを有している。
【0025】
プラグ21、メンテナンス用のサービスプラグは、これを引き抜くことで、電気回路を遮断し、漏電等を防止して安全を確保する。この点、プラグ21、メンテナンス用のサービスプラグは、安全プラグ、電気回路遮断プラグとして機能する。
【0026】
メンテナンス用のサービスプラグは、アンダーカバー10が後述するように所定の取り外し作業により車両100から取り外された状態で引き抜くことが可能となるが、これに対し、プラグ21は、緊急時に引き抜くものであるため、かかる取り外し作業を経ることなく、アンダーカバー10に対する後述する作業により、引き抜くことが可能となるようになっている。この点、プラグ21は、緊急用プラグ、緊急遮断プラグとして機能する。
【0027】
プラグ21は、側面22に、Y方向における前側及びZ方向における下方を向くように突設されており、この方向に引き抜くことが可能となっている。プラグ21の突設方向、引き抜き方向が、Z方向における下向きの成分を含んでいることにより、アンダーカバー10による高い保護が得られるようになっている。
なお、電池パック20は、本形態では、メンテナンス用のサービスプラグを備えているが、これは必須ではない。
【0028】
一対のトレーリングアーム30は、図1(a)における一点鎖線の位置を中心として上下方向に揺動可能となっている。一対のトレーリングアーム30と、アクスル40とは、車輪50に関する車両100のサスペンション機構の一部を構成している。
【0029】
アンダーカバー10は、Y方向におけるアクスル40の後方の、X方向における各トレーリングアーム30及び各車輪50によって挟まれた領域であって、Z方向におけるアクスル40の配置位置とほぼ同じ位置に配設されている。
【0030】
アンダーカバー10は、後述する固定位置15、固定位置16等に対する、ねじ止めなどの所定の装着作業によってフレームに装着されて車両100に取り付けられ、また該固定位置15、固定位置16等における、ねじの取り外しなどの所定の取り外し作業により、フレームから取り外されて車両から取り外されるようになっている。
【0031】
図1または図2に示すように、アンダーカバー10は、車両100に取り付けられた状態において、電池パック20を、Z方向における下方からカバーするとともに、Y方向における前後方向、X方向における左右方向からカバーするようになっている。
【0032】
そのため、アンダーカバー10は、概略的に、Z方向における上方が開放された椀状をなしており、より具体的には、電池パック20をZ方向における下方からカバーするための、XY平面に沿って設けられたほぼ四角形の平面部11と、平面部11の、Y方向における前後の縁及びX方向における左右の縁からZ方向における上方に向けて屈曲するように形成された周縁部12とを有している。
【0033】
図2(a)に示すように、周縁部12は、Y方向における前側に位置する前縁部12fと、Y方向における後側に位置する後縁部12bと、X方向における右側に位置する右縁部12rと、X方向における左側に位置する左縁部12lとを有している。
【0034】
車両100の進行方向がY方向における前方であり、また、プラグ21が上述した方向に突設されていることから、周縁部12のうち、前縁部12fが、電池パック20を保護するのに最も重要である。
【0035】
すなわち、車両100の走行時には、主に、Y方向における前方から、電池パック20に向けて、図2に示されているように、走行風60が吹き付けられるとともに、雨などの水や飛石等の異物70が飛んでくるため、アンダーカバー10は、これら走行風60、異物70が、プラグ21を含め電池パック20に当たらないように、前縁部12fによってカバーする。なお、後縁部12b、右縁部12r、左縁部12lも、電池パック20を、走行風60や異物70から保護する。
【0036】
前縁部12fによるカバーを良好に行うために、アンダーカバー10は、図1に示すように、前縁部12fがX方向においてアクスル40に対向するように配置されているとともに、X方向における前縁部12fとアクスル40との間隔は、後述する第2の操作が確実に行われる範囲で、可能な限り狭く設定されている。これにより、かかる間隔から走行風60、異物70が進入することが抑制され、電池パック20の保護が高度に行われる。
【0037】
平面部11は、プラグ21を含め、電池パック20を、下方から、走行風60や異物70から保護する。平面部11は、少なくとも一部に曲面形状を有していても良い。
なお、アンダーカバー10は、図7等に示して後述するように、Z方向における上方側に、ラジオ放送の受信装置へのノイズ電波の入力を低減するための電磁シールド19を一体に有しているが、図1図2等においては、その図示を省略している。
【0038】
アンダーカバー10は、電磁シールド19を除く部分が、樹脂製、具体的にはポリプロピレン製であって、平面部11と周縁部12とを一体成型されている。成型方法としては、射出成型、プレス成型など、種々の方法が挙げられる。アンダーカバー10の樹脂部分の厚みは、後述する部分を除いて3mmとされている。
【0039】
ところで、プラグ21は、緊急時に引き抜く必要があるが、前縁部12fをはじめとする周縁部12や平面部11によって覆われており、また、アクスル40が前縁部12fに近接して対向しているほか、アンダーカバー10の周囲にはトレーリングアーム30や車輪50がアンダーカバー10を取り囲むように配設されているため、図1図2に示された状態で、プラグ21を引き抜くことは困難である。かといって、プラグ21を引き抜くためにアンダーカバー10を車両100から取り外す上述の取り外し作業を行っていたのでは、時間がかかりすぎる懸念がある。
【0040】
そこで、車両100においては、アンダーカバー10が、手動で切り取り操作されることによりプラグ21の操作すなわち引き抜き作業を行うための作業領域が形成される切り取り部13を有している。
【0041】
図3に示すように、切り取り部13は、互いに連続した、平面部11の一部と右縁部12rの一部とによって形成されている。切り取り部13の周縁の厚みは1mmとされ、その周りの厚みである3mmよりも薄肉化されており、この薄肉部分は、切り取り操作の際に、アンダーカバー10の他の部分から容易に切り取ることが可能な厚みに設定されている。これにより、切り取り操作の際、切り取り部13が容易に分離されるようになっている。
【0042】
切り取り部13の、右縁部12rの端部の部分である縁部は、切り取り操作を行うときに作業者が把持するための把持部13aとなっている。
把持部13aは、同図(b)に示すように、右縁部12rの他の縁部より凹んだ状態で設けられている。
【0043】
また、把持部13aの両サイドには、切り込み13bが形成されている。すなわち、右縁部12rには、把持部13aの、上述した薄肉部分に向けて切り込み13bが形成されている。
【0044】
把持部13aの、Y方向における幅は、L1となっている。
その一方で、切り取り部13の最奥部すなわちX方向における左側の端縁の、Y方向における幅は、同図(a)に示すように、L1より大きいL2となっている。
【0045】
このL1<L2の関係を満たすために、切り取り部13の周縁のうち、Y方向における前側の縁部の一部、具体的には前縁部12fと右縁部12rとの角部に対応した部分は、X方向における右側から左側に向けて、Y方向における前側に傾斜した傾斜部13cとなっている。切り取り部13の最奥部のY方向における前側には、切り取り部13に含まれない前縁部12f側の平面部11の領域が出来る限り狭くなるように、L2、傾斜部13cが設定されており、これによって、かかる前側は、実質的に前縁部12fのみよって構成されている。
【0046】
同図において、符号15、符号16はそれぞれ、フレームに対するアンダーカバー10の固定位置を示している。固定位置15は、X方向において切り取り部13の左側に位置しているとともに、固定位置16は、Y方向において切り取り部13の後側に位置しており、固定位置15と固定位置16とを結ぶ直線は切り取り部13を横切るようになっている。なお、アンダーカバー10は、他の位置においても、フレームに固定されている。
【0047】
このような切り取り部13を用いた切り取り操作は次のようにして行うことが可能となっている。すなわち、作業者は、図1(a)において符号A1で示した空間において、図3(b)、図4に示すように手hをかけて把持部13aを把持し、図9において矢印αで示すようにZ方向における下方に力を加えると、切り取り部13を、アンダーカバー10の他の部分から容易に切り取ることが可能となっている。
【0048】
この際、切り込み13bが設けられていることにより、把持部13aに力を加え始めたときに、加えた力が、薄肉となっている切り取り部13の両端に集中し、切り取りがより小さな力で開始される。ただし、切り込み13bは必須ではない。
【0049】
このように、作業者は、アンダーカバー10を車両100から取り外す作業を行うことなく、切り取り操作のために把持部13aを把持し、手動で切り取り操作を行うことで、速やかに切り取り部13を切り取ることが可能となっている。
【0050】
切り取り操作は、切り取り部13の周縁が周りに比べて薄肉に形成されていることによって容易に行われる他、切り込み13bが形成されていることによって、上述のようにさらに容易に行われるようになっている。また、アンダーカバー10が少なくとも固定位置15、固定位置16においてフレームに固定されているため、切り取り操作のときにアンダーカバー10の位置変動は生じないか抑制されていることから、同操作を行うにあたってアンダーカバー10の変位が支障になることはない。
【0051】
切り取り操作は、たとえば、作業者が、車両100の下側に手を伸ばした、あるいは車両100の下にもぐりこんだ作業状態で行う場合が想定され、また、アンダーカバー10具体的には周縁部12の周囲の空間は、上述のように比較狭くなっているが、切り取り操作は、把持部13aを把持しZ方向における下方に引き下げることによって行うことが可能となっているため、容易に行われる。
【0052】
また、上述の作業状態では、車両100の下方が暗い場合はとくに、把持部13aを目視困難であることが想定されるが、把持部13aが、右縁部12rの縁部に凹状に設けられているため、手探りでも把持部13aの位置が確認、把握可能となっているため、切り取り操作の開始に手間取ることが抑制ないし防止されている。ただし、切り込み13bが設けられている場合には、切り込み13bの間が把持部であることが比較的容易に理解され得るため、把持部13aを凹状に設けずとも良い。
【0053】
切り取り操作により切り取り部13を切り取ると、切り取り部13があった部分からアンダーカバー10の上方に手を差し入れ、プラグ21を引き抜くことが可能となる。図5に示すように、この切り取り部13があった部分は、プラグ21の操作すなわち引き抜きを行うための作業領域A2となる。
【0054】
作業領域A2は、切り取り部13が傾斜部13cを有し、L1<L2となっていることにより、把持部13aの幅を、プラグ21を操作するのに必要な幅未満に設定したとしても、比較的広い面積、つまりプラグ21を操作するのに十分な面積となっている。L1<L2となっていることは、作業領域A2を比較的広い面積としてプラグ21の引き抜き動作を容易化するとともに、切り取り操作の前の状態における前縁部12fの強度を確保することに寄与している。
【0055】
この作業領域A2により、プラグ21の引き抜き動作が可能となるが、この動作をより容易に行えるように、アンダーカバー10は、切り取り部13の隣に位置し、切り取り操作の後に、作業領域A2を拡大するために折り曲げ可能となる折り曲げ部14を有している。
【0056】
折り曲げ部14は、切り取り操作の前の状態のアンダーカバー10の、Y方向における切り取り部13の前方の部分によって形成されている。すなわち、折り曲げ部14は、Y方向における切り取り部13の前方の位置において切り取り部13の隣に位置している。
【0057】
折り曲げ部14は、右縁部12rのうち、Y方向における把持部13aの前方の縁部と、前縁部12fのうちX方向における右側の端部部分の縁部とをその縁部として有している。上述のように、L1<L2となっていることにより、折り曲げ部14の、X方向における左側の端部は、前縁部12fからなっている。
【0058】
よって、折り曲げ部14の基端すなわちX方向における左側の端部の、Y方向における幅は小さくなっているため、切り取り操作の後において、図3(a)、図6(a)において矢印αで示すように、折り曲げ部14の先端すなわちX方向における右側の端部に、Y方向の前方に向けて力を加えると、折り曲げ部14は容易に折り曲がり、作業領域A2が拡大されて、図6(b)に示すように、作業領域A3が得られる。
【0059】
この折り曲げ部14の折り曲げ操作によって得られる作業領域A3は作業領域A2より大きいため、プラグ21の引き抜き動作をより容易に行うことが可能となる。よって、緊急時にも、プラグ21の引き抜き動作が確実に行われる。なお、折り曲げ操作の際も、上述した切り取り操作の際と同様に、アンダーカバー10が少なくとも固定位置15、固定位置16においてフレームに固定されているため、同操作を行うにあたってアンダーカバー10の変位が支障になることはない。
【0060】
このように、プラグ21の引き抜き動作に先立って行うアンダーカバー10の前処理動作として、アンダーカバー10においては、切り取り操作である第1の操作と、折り曲げ操作である第2の操作とを行うことが可能となっている。ただし、プラグ21の引き抜き動作が確実に行われるのであれば、アンダーカバー10は、少なくとも第1の操作を行うことが可能となっていれば良い。
【0061】
図7に示すように、電磁シールド19は、平面部11のほぼ全体を覆うように配設されている。電磁シールド19は、金属製の一枚の網であって、布のように柔らかい金属メッシュによって形成されている。
【0062】
ここで、電磁シールド19を、かりに図10に示すように、切り取り部13及びその周縁上も覆うようにすると切り取り操作が不能となり、かといって、かりに図11に示すように、切り取り部13を全く覆わないようにするとシールド効率が低下する。
【0063】
そのため、電磁シールド19は、切り取り部13の周縁に沿った切り込み19aを有し、切り取り部13の形状に合わせた島状部19bが形成されている。電磁シールド19はまた、島状部19bの他に、島状部19bと、電磁シールド19の面積の大部分を占める本体部分19cと、これらの境界部分に設けられ、これらを連結した連結部19dとを有している。よって、電磁シールド10は、島状部19bと本体部分19cとが連結部19dを介して導通しているため、シールド効率を確保しつつ、切り取り操作を可能としている。
【0064】
このように、電磁シールド19は、切り取り部13とそれ以外の部分とにまたがって、切り取り操作が可能なように、アンダーカバー10に一体化されている。
より具体的には、電磁シールド19は、連結部19dによって互いに連結された状態の島状部19bと本体部分19cとのそれぞれにおいてアンダーカバー10に固定され、一体化されている。
【0065】
連結部19dは、切り取り操作が行われる前の状態において、図7(b)、図8(a)に示すように、連結部19dにおいてたるみ19eを形成している。たるみ19eを形成するために、電磁シールド10は、アンダーカバー10に一体化される前の形成工程すなわちカット工程において、たるみ19aの形成を見込んだ長さで、同図(b)に示すように、連結部19dを形成される。そして、アンダーカバー10への一体化工程において、破線で示すように島状部19bを移動させたうえで、電磁シールド19は、本体部分19cと島状部19bがアンダーカバー10に固定される。
【0066】
アンダーカバー10はこのように構成されていることにより、切り取り操作によって切り取り部13が切り取られる際に、切り込み19a及びたるみ19eが形成されていることで、電磁シールド19が切り取り操作の邪魔になることが防止ないし抑制されている。ただし、切り取り操作の作業性が多少低下してもよければ、たるみ19eは必須ではない。
【0067】
なお、Y方向における連結部19dの幅は、シールド性を考慮すると、広いほうが良く、図7等に示した幅よりも広くても良いが、切り取り操作の作業性を考慮すると、少なくとも、島状部19bと本体部分19cとの間にくびれが形成される幅で形成されることが好ましい。
【0068】
図9に示すように、切り取り操作が行われると、切り取り部13は、最奥部が折り曲がってぶら下がった状態となる。この状態で切り取り操作を完了しても良く、この場合には、切り取り操作は、切り取り部13の一部がアンダーカバー10の本体側につながって残っている状態として作業領域A2を形成する操作を意味する。
【0069】
ただし、切り取り部13を完全に切り取って作業領域A2を形成し、切り取り操作を完了しても良い。切り取り部13を完全に切り離しても、電磁シールド19は本体部分19cと島状部19bとでアンダーカバー10に一体化されているため、切り取り部13は島状部19bおよび連結部19dに支えられてぶら下がった状態となり、落下が防止される。
【0070】
なお、電磁シールド19は、少なくとも本体部分19cがアンダーカバー10に固定されていれば良く、島状部19dは切り取り部13から分離していても良いが、切り取り操作後の切り取り部13の落下防止のみならず、走行風60等を受けた場合の電磁シールド19のめくれを防止してシールド性を確保するには、島状部19dも切り取り部13に固定されていることが好ましい。
【0071】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0072】
たとえば、被保護体は、安全確保用の操作部を備えていれば、燃料タンク等であっても良い。被保護体が燃料タンクである場合には、操作部は、燃料タンクからエンジン側に燃料を供給する給油路を遮断するために操作される。
【0073】
また、安全確保用の操作部は、プラグでなくとも、スイッチなどの安全装置であればどのようなものであっても良い。操作部がスイッチである場合には、操作部の操作は、引き抜きによるものでなく、押圧等によって行われる。
【0074】
上述の構成例では、操作部の位置に合わせて、把持部を、アンダーカバーの、車両の側方に対応した縁部に備えているが、把持部は、切り取り操作によって形成される作業領域によって操作部の操作が行われるのであれば、アンダーカバーの他の縁部に設けても良い。ただし、すでに述べたように、前縁部は、アンダーカバーの機能を確保するのに重要であるため、前縁部の強度を確保する観点からは、把持部は前縁部と異なる縁部に設けることが好ましい。
【0075】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0076】
10・・アンダーカバー、1・・アンダーカバーの縁部、12f・・アンダーカバーの車両の前方に対応した縁部、12r・・アンダーカバーの車両の側方に対応した縁部、13・・切り取り部、13a・・把持部、14・・折り曲げ部、19・・電磁シールド、
19d・・電磁シールドの境界部分、19e・・電磁シールドのたるみ、20・・被保護体、21・・操作部、100・・車両、A2・・作業領域、X・・車両の側方、Y・・車両の前方。
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11