(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両に搭載され、原動機からの動力を車軸に伝達するための複数の係合要素を有する変速機と、前記変速機を収容するケースと、前記複数の係合要素への油圧を制御する油圧制御装置と、を備える動力伝達装置であって、
作動油を貯留する作動油貯留部と、
前記原動機からの動力により作動し、前記作動油貯留部の作動油を吸入すると共に昇圧した作動油を前記油圧制御装置に供給する第1ポンプと、
電力の供給を受けてピストンが往復動する往復動ポンプとして構成され、前記作動油貯留部の作動油を吸入すると共に昇圧した作動油を前記複数の係合要素のうち発進時に係合される発進時係合要素に供給する第2ポンプと、
前記作動油貯留部と前記第1ポンプとを連通する第1油路と、
前記第1油路と前記第2ポンプとを連通する第2油路と、
を備え、
前記第2油路は、前記第1油路との連通位置からその全範囲において水平より下向きに延びるように前記第2ポンプの吸入口に向けて形成されている、
動力伝達装置。
【発明の概要】
【0004】
こうした動力伝達装置では、ストレーナと機械式オイルポンプとの間の第1油路の上部などにエアが溜まることがある。第1油路と電磁ポンプとを連通する第2油路が第1油路との連通位置から電磁ポンプの吸入口に向けて動力伝達装置における水平やそれより上向きに延びている場合、第1油路の上部にエアが溜まったときに、そのエアが第2油路ひいては電磁ポンプに達し、エアを電磁ポンプが吸い込んでしまうおそれがある。特に、路面勾配などによって車両が傾斜したときに、こうした事象が生じやすい。電磁ポンプがエアを吸い込むと、電磁ポンプにより油圧が十分に生成されなくなり、電磁ポンプから車両発進用のクラッチに油圧を作用させる必要があるときに、そのクラッチに作用させる油圧が低下(不足)してしまうおそれがある。一般的に、回転体の回転駆動により作動油を吐出するポンプ(例えば電動ポンプ)を用いる場合には、エアを吸い込んだとしても回転体の回転駆動により排出することができるが、ピストンの往復動により作動油を吐出するポンプ(例えば電磁ポンプ)を用いる場合には、エアを吸い込んだときにその排出が困難である。また、ピストンの往復動により作動油を吐出するポンプを車両発進用のクラッチへの油圧供給に用いる場合には、比較的小型なものが用いられることが多く、エアを吸い込んだときの吐出圧の低下の影響が現われやすい。これらのため、ピストンの往復動により作動油を吐出するポンプを車両発進用のクラッチへの油圧供給に用いる場合には、このポンプがエアを吸い込むのを抑制することがより要請される。
【0005】
本発明の動力伝達装置は、電力の供給を受けて作動し且つ作動油を発進時に係合される係合要素に供給するポンプがエアを吸い込むのを抑制することを主目的とする。
【0006】
本発明の動力伝達装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の動力伝達装置は、
車両に搭載され、原動機からの動力を車軸に伝達するための複数の係合要素を有する変速機と、前記変速機を収容するケースと、前記複数の係合要素への油圧を制御する油圧制御装置と、を備える動力伝達装置であって、
前記作動油を貯留する作動油貯留部と、
前記原動機からの動力により作動し、前記作動油貯留部の作動油を吸入すると共に昇圧した作動油を前記油圧制御装置に供給する第1ポンプと、
電力の供給を受けてピストンが往復動する往復動ポンプとして構成され、前記作動油貯留部の作動油を吸入すると共に昇圧した作動油を前記複数の係合要素のうち発進時に係合される発進時係合要素に供給する第2ポンプと、
前記作動油貯留部と前記第1ポンプとを連通する第1油路と、
前記第1油路と前記第2ポンプとを連通する第2油路と、
を備え、
前記第2油路は、前記第1油路との連通位置からその全範囲において水平より下向きに延びるように前記第2ポンプの吸入口に向けて形成されている、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の動力伝達装置では、作動油を貯留する作動油貯留部と原動機からの動力により作動する第1ポンプとが第1油路によって連津されており、その第1油路と電力の供給を受けてピストンが往復動する往復動ポンプとして構成された第2ポンプとが第2油路によって連通されている。そして、第2油路は、第1油路との連通位置からその全範囲において水平より下向きに延びるように第2ポンプの吸入口に向けて形成されている。これにより、第1油路の上部にエアが溜まったとしても、第2油路ひいては第2ポンプの吸入口にエア(エア溜まり)が達するのを抑制することができる。この結果、第2ポンプがエアを吸い込むのを抑制することができる。また、第2ポンプを発進時係合要素への油圧供給に用いる場合には、上述の理由により、第2ポンプがエアを吸い込むのを抑制することがより要請されるが、本発明の動力伝達装置の構成とすることにより、第2ポンプがエアを吸い込むのを十分に抑制することができる。そして、第2ポンプがエアを吸い込むのを抑制することにより、第2ポンプから発進時係合要素に作用させる油圧が低下するのを抑制することができる。
【0009】
こうした本発明の動力伝達装置において、前記第1油路は、前記油圧制御装置のバルブボディに形成されて前記作動油貯留部にストレーナを介して連通するボディ側油路と、前記ケースに形成されて前記ボディ側油路と前記第1ポンプとを連通するケース側油路とからなり、前記第2油路は、前記バルブボディに形成されて前記ケース側油路と前記第2ポンプとを連通しており、前記ケース側油路,前記第2油路,前記第2ポンプは、車両上側からこの順に並んでおり、前記第2ポンプは、前記吸入口が車両前後方向と車両左右方向とのうち少なくとも一方から見て前記ケース側油路と車両上下方向で重なるよう配置されている、ものとすることもできる。こうすれば、ケース側油路と第2ポンプとの車両前後方向や車両左右方向での距離を短くすることができる。この結果、ケース側油路の上部にエアが溜まったとしても、車両がより大きく傾斜しない限り、第2油路や第2ポンプの吸入口にエア(エア溜まり)が達するのを抑制することができ、第2ポンプがエアを吸い込むのをより抑制することができる。
【0010】
この第2ポンプの吸入口が車両前後方向と車両左右方向とのうち少なくとも一方から見てケース側油路と車両上下方向で重なる態様の本発明の動力伝達装置において、前記車両は、後輪駆動車両であり、前記第2ポンプは、前記吸入口が車両前後方向から見て前記ケース側油路と車両上下方向で重なるように配置されている、ものとすることもできる。こうすれば、車両が左右方向に傾斜しており且つケース側油路の上部にエアが溜まっているときに、第2ポンプがエアを吸い込むのをより抑制することができる。この態様の本発明の動力伝達装置において、前記第2ポンプは、前記吸入口が車両左右方向から見て前記ケース側油路と車両上下方向で重なるおよび/または前記ストレーナの出口と重なるように配置されているものとすることもできる。こうすれば、車両が前後方向に傾斜しており且つケース側油路の上部にエアが溜まっているときに、第2ポンプがエアを吸い込むのを抑制することができる。
【0011】
本発明の動力伝達装置において、前記動力伝達装置は、後輪駆動車両に、車両後側が車両前側より低くなるように搭載され、前記第2ポンプは、前記吸入口が前記連通位置より下側且つ車両後側となるように配置されている、ものとすることもできる。こうすれば、第2油路が、第1油路との連通位置からその全範囲において水平より下向きに延びるように第2ポンプの吸入口に向けて形成される、ものとすることができる。
【0012】
本発明の動力伝達装置において、前記第2ポンプは、電磁力により油圧を発生させる電磁ポンプとして構成され、前記バルブボディに取り付けられているものとすることもできる。こうすれば、電磁ポンプと、油圧制御装置の電磁ポンプと発進時係合要素との間に介在する部分と、の距離を短くすることができる。
【0013】
また、本発明の動力伝達装置において、前記発進時係合要素を係合すべき場合に、前記第1ポンプが作動しているときには該第1ポンプから吐出されて調圧された作動油が前記発進時係合要素に供給される第1状態を形成し、前記第1ポンプが作動していないときには前記第2ポンプから吐出された作動油が前記発進時係合要素に供給される第2状態を形成する切替バルブを備えるものとすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例としての動力伝達装置20を搭載する自動車10の構成の概略を示す構成図であり、
図2は、動力伝達装置20の構成の概略を示す構成図であり、
図3は、変速機30の各変速段とクラッチC1,C2およびブレーキB1〜B3の作動状態との関係を表す作動表を示す説明図であり、
図4は、作動油貯留部41やストレーナ42,オイルポンプ40,油圧制御装置50周辺の構成の概略を示す構成図である。
【0017】
実施例の自動車10は、後輪駆動車両として構成されており、
図1に示すように、原動機としてのエンジン12と、エンジン12を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)15と、エンジン12からの動力をデファレンシャルギヤ100を介して駆動輪(後輪)DWに伝達する動力伝達装置20と、を備える。
【0018】
ここで、動力伝達装置20は、流体伝動装置23や有段の変速機30,流体伝動装置23や変速機30の油圧発生源としてのオイルポンプ40,流体伝動装置23や変速機30に作動油を給排する油圧制御装置50,これらを収容するトランスミッションケース22,装置全体を制御する変速用電子制御ユニット(以下、変速ECUという)21等を有する。
図5は、動力伝達装置20の自動車10への搭載時の様子を示す説明図である。
図5中、一点鎖線Aは、動力伝達装置20単体における水平、具体的には、インプットシャフト34およびアウトプットシャフト35の中心軸を含む水平を示し、自動車10における水平、具体的には、地面に対する水平を示す。
図5に示すように、動力伝達装置20は、後輪駆動車両として構成された自動車10に、車両後側が車両前側より低くなるように搭載される。
【0019】
なお、エンジンECU14には、アクセルペダル101の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ102からのアクセル開度や車速を検出する車速センサ108からの車速などが入力されている。また、ブレーキECU15には、ブレーキペダル103の踏み込みを検出するブレーキスイッチ104からのブレーキスイッチ信号や車速センサ108からの車速などが入力されている。さらに、変速ECU21には、アクセルペダルポジションセンサ102からのアクセル開度やシフトレバー105の位置を検出するシフトポジションセンサ106からのシフトポジションSP,車速センサ108からの車速などが入力されている。エンジンECU14とブレーキECU15と変速ECU21とは、通信ポートを介して接続されており、互いに各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0020】
流体伝動装置23は、流体式トルクコンバータとして構成されており、
図2に示すように、フロントカバー18を介してエンジン12のクランクシャフト16に接続されるポンプインペラ24や、タービンハブを介して変速機30のインプットシャフト(入力軸)34に接続されるタービンランナ25,ポンプインペラ24およびタービンランナ25の内側に配置されてタービンランナ25からポンプインペラ24への作動油(ATF)の流れを整流するステータ26,ステータ26の回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ26a,ダンパ機構(図示せず),ロックアップクラッチ28等を有する。なお、流体伝動装置23は、ステータ26を有さない流体継手として構成されるものとしてもよい。
【0021】
変速機30は、6段変速式の変速機として構成されており、何れもシングルピニオン式遊星歯車である第1遊星歯車機構31,第2遊星歯車機構32,第3遊星歯車機構33と、インプットシャフト34と、アウトプットシャフト(出力軸)35と、インプットシャフト34からアウトプットシャフト35までの動力伝達経路を変更するための2つのクラッチC1,C2と3つのブレーキB1,B2,B3とワンウェイクラッチF1と、を有する。第1〜第3遊星歯車機構31〜33とクラッチC1,C2とブレーキB1〜B3とワンウェイクラッチF1とは、トランスミッションケース22の内部に収容される。また、変速機30のインプットシャフト34は、流体伝動装置23を介してエンジンのクランクシャフトに連結され、アウトプットシャフト35は、差動機構(デファレンシャルギヤ)を介して駆動輪に連結される。
【0022】
第1遊星歯車機構31は、第1〜第3遊星歯車機構31〜33のうち最もエンジン側(車両前方)すなわち最もインプットシャフト34に近接して配置され、後段の第2遊星歯車機構32と共に変速ギヤ機構を構成する。この第1遊星歯車機構31は、外歯歯車である第1サンギヤ31sと、第1サンギヤ31sと同心円上に配置される内歯歯車である固定可能要素としての第1リングギヤ31rと、第1サンギヤ31sと噛合すると共に第1リングギヤ31rと噛合する複数の第1ピニオンギヤ31pを自転かつ公転自在に支持する第1キャリヤ31cと、を有する。第1遊星歯車機構31の第1サンギヤ31sは、インプットシャフト34と一体に回転可能なクラッチC1のクラッチドラムに連結(スプライン嵌合)される環状の連結ドラム36に固定される。
【0023】
第2遊星歯車機構32は、第1遊星歯車機構31のアウトプットシャフト35側(車両後方側)に並設される。この第2遊星歯車機構32は、外歯歯車である第2サンギヤ32sと、第2サンギヤ32sと同心円上に配置される内歯歯車である固定可能要素としての第2リングギヤ32rと、第2サンギヤ32sと噛合すると共に第2リングギヤ32rと噛合する複数の第2ピニオンギヤ32pを自転かつ公転自在に支持する第2キャリヤ32cと、を有する。第2遊星歯車機構32の第2サンギヤ32sは、インプットシャフト34とアウトプットシャフト35との間に両者に対して回転自在に配置される中空の中間シャフト37に固定される。第2遊星歯車機構32の第2リングギヤ32rは、第1遊星歯車機構31の第1キャリヤ31cに連結される。第2遊星歯車機構32の第2キャリヤ32cは、中間シャフト37により同軸かつ回転自在に支持されるスリーブ38に固定される。
【0024】
第3遊星歯車機構33は、第1〜第3遊星歯車機構31〜33のうち最もアウトプットシャフト35に近接して(車両後方に)配置され、減速ギヤ機構として機能する。この第3遊星歯車機構33は、外歯歯車である第3サンギヤ33sと、第3サンギヤ33sと同心円上に配置される内歯歯車である固定可能要素としての第3リングギヤ33rと、第3サンギヤ33sと噛合すると共に第3リングギヤ33rと噛合する複数の第3ピニオンギヤ33pを自転かつ公転自在に支持する第3キャリヤ33cと、を有する。第3遊星歯車機構33の第3サンギヤ33sは、中間シャフト37に固定されて第2遊星歯車機構32の第2サンギヤ32sと連結され、第3遊星歯車機構33の第3リングギヤ33rは、第2遊星歯車機構32の第2キャリヤ32cに連結され、第3遊星歯車機構33の第3キャリヤ33cは、アウトプットシャフト35に連結される。
【0025】
クラッチC1は、インプットシャフト34と中間シャフト37すなわち第2遊星歯車機構32の第2サンギヤ32sおよび第3遊星歯車機構33の第3サンギヤ33sとを連結すると共に両者の連結を解除することができる多板式油圧クラッチである。クラッチC2は、インプットシャフト34とスリーブ38すなわち第2遊星歯車機構32の第2キャリヤ32cとを連結すると共に両者の連結を解除することができる多板式油圧クラッチである。ワンウェイクラッチF1は、第2遊星歯車機構32の第2キャリヤ32cおよび第3遊星歯車機構33の第3リングギヤ33rの正転のみを許容して逆転を規制するものである。
【0026】
ブレーキB1は、第1遊星歯車機構31の第1リングギヤ31rをトランスミッションケース22に対して固定すると共に第1リングギヤ31rのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる多板式油圧ブレーキである。ブレーキB2は、第1遊星歯車機構31の第1キャリヤ31cをトランスミッションケース22に対して固定することで第2遊星歯車機構32の第2リングギヤ32rをトランスミッションケース22に対して固定すると共に、第1キャリヤ31cおよび第2リングギヤ32rのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる多板式油圧ブレーキである。ブレーキB3は、第2遊星歯車機構32の第2キャリヤ32cと第3遊星歯車機構33の第3リングギヤ33rとをトランスミッションケース22に対して固定すると共に第2キャリヤ32cおよび第3リングギヤ33rのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる多板式油圧ブレーキである。
【0027】
クラッチC1,C2およびブレーキB1〜B3は、油圧制御装置による作動油の給排を受けて作動する。変速機30は、クラッチC1,C2およびブレーキB1〜B3を
図3の作動表に示す状態とすることにより、前進第1速〜第6速の変速段と後進1段の変速段とを提供する。
【0028】
オイルポンプ40は、ギヤポンプとして構成されており、ポンプボディとポンプカバーとからなるポンプアッセンブリと、ハブを介して流体伝動装置23のポンプインペラ24に接続された外歯ギヤと、を有する。このオイルポンプ40は、エンジン12からの動力によって作動し、
図4に示すように、作動油貯留部41に貯留されている作動油をストレーナ42,油圧制御装置50のバルブボディVBに形成された油路43,トランスミッションケース22に形成された油路44,ポンプアッセンブリに形成された吸入ポート40aを介して吸入して昇圧し、昇圧した作動油をポンプアッセンブリに形成された吐出ポート40bを介して油圧制御装置50の油路52に供給する。
【0029】
油圧制御装置50は、オイルポンプ40から油路52に供給された作動油を調圧してライン圧PLを生成すると共にライン圧PLの生成に伴って作動油の少なくとも一部を油路68に排出するプライマリレギュレータバルブ60と、プライマリレギュレータバルブ60から油路68に排出された作動油を調圧してセカンダリ圧Psecを生成すると共にセカンダリ圧Psecの生成に伴って作動油の少なくとも一部を潤滑油路(LUBE)78に排出するセカンダリレギュレータバルブ70と、ライン圧PLを元圧として一定のモジュレータ圧Pmodを生成する図示しないモジュレータバルブと、モジュレータ圧Pmodを元圧としてアクセル開度やスロットル開度に応じた油圧Psltを生成すると共に生成した油圧Psltを信号圧としてプライマリレギュレータバルブ60とセカンダリレギュレータバルブ70とに出力することによってこれらを駆動する図示しないリニアソレノイドバルブSLTと、ライン圧PLを入力する入力ポートやD(ドライブ)ポジション用出力ポート,R(リバース)ポジション用出力ポートとなどが形成されてシフトレバー105の操作に連動して各ポートを開閉する図示しないマニュアルバルブMVと、マニュアルバルブMVのDポジション用出力ポートから出力された作動油を入力ポートを介して入力すると共に入力した作動油をドレンポートからの排出を伴って調圧して出力ポートから出力する図示しないリニアソレノイドバルブSLC1と、トランスミッションケース22に形成された上述の油路44からバルブボディVBに形成された油路45を介して作動油を吸入すると共に昇圧した作動油を吐出する電磁ポンプ80と、リニアソレノイドバルブSLC1からの作動油(油圧Psl1)をクラッチC1の油路54に供給すると共に電磁ポンプ80からの作動油を潤滑油路78に供給する第1状態とリニアソレノイドバルブSLC1から油路54への作動油の供給を遮断すると共に電磁ポンプ80からの作動油をクラッチC1の油路54に供給する第2状態とを切り替える切替バルブ90と、を備える。ここで、潤滑油路78に供給された作動油は、第1〜第3遊星歯車機構31〜33の各ギヤやクラッチC1,C2,ブレーキB1〜B3,デファレンシャルギヤ100,各回転軸を回転自在に支持するベアリングなどの機械部分に供給されてこれらを潤滑した後、再び作動油貯留部41に戻る。なお、
図4では、クラッチC1以外のクラッチC2やブレーキB1〜B3,流体伝動装置23のロックアップクラッチ28などの油圧系については、本発明の中核をなさないから省略しているが、これらの油圧系については、周知のリニアソレノイドバルブなどを用いて構成することができる。
【0030】
プライマリレギュレータバルブ60は、リニアソレノイドバルブSLTからの油圧Psltを信号圧として入力する信号圧用入力ポート62aやオイルポンプ40からの油路52に接続されてライン圧PLをフィードバック圧として入力するフィードバック用入力ポート62b,油路52に接続された入力ポート62c,セカンダリレギュレータバルブ70への油路68に接続された出力ポート62d,ストレーナ42の出口42aに接続された油路43に連通する油路56に接続されたドレンポート62eの各種ポートが形成されたスリーブ62と、スリーブ62内を軸方向に摺動するスプール64と、スプール64を軸方向の図中上側に付勢するスプリング66と、を有する。このプライマリレギュレータバルブ60では、スプール64が図中下側に移動するほど入力ポート62cから出力ポート62dを介して油路68に出力される油量を増やし、スプール64がさらに下側に移動すると入力ポート62cからドレンポート62eを介して作動油を油路56にドレンすることにより、オイルポンプ40からの油圧を降圧して、ライン圧PLを調整する。スプール64は、スプリング66のバネ力と信号圧用入力ポート62aに作用する油圧とにより図中上側に付勢されると共にフィードバック用入力ポート62bに作用するライン圧PLにより図中下側に付勢されるから、信号圧用入力ポート62aに作用する油圧Psltが高いほどライン圧PLが高くなる。なお、ドレンポート62eから油路56にドレンされた作動油は、油路43に戻る。
【0031】
セカンダリレギュレータバルブ70は、リニアソレノイドバルブSLTからの油圧Psltを信号圧として入力する信号圧用入力ポート72aやプライマリレギュレータバルブ60からの油路68に接続されてセカンダリ圧Psecをフィードバック圧として入力するフィードバック用入力ポート72b,油路68に接続された入力ポート72c,潤滑油路78に接続された出力ポート72d,油路43に連通する油路56に接続されたドレンポート72eの各種ポートが形成されたスリーブ72と、スリーブ72内を軸方向に摺動するスプール74と、スプール74を軸方向の図中上側に付勢するスプリング76と、を有する。このセカンダリレギュレータバルブ70では、スプール74が図中下側に移動するほど入力ポート72cから出力ポート72dを介して潤滑油路78に出力される油量を増やし、スプール74がさらに下側に移動すると入力ポート72cからドレンポート72eを介して作動油を油路56にドレンすることにより、プライマリレギュレータバルブ60からの油圧を降圧して、セカンダリ圧Psecを調整する。スプール74は、スプリング76のバネ力と信号圧用入力ポート72aに作用する油圧により図中上側に付勢されると共にフィードバック用入力ポート72bに作用するセカンダリ圧Psecにより図中下側に付勢されるから、信号圧用入力ポート72aに作用する油圧Psltが高いほどセカンダリ圧Psecが高くなる。なお、ドレンポート62eから油路56にドレンされた作動油は、油路43に戻る。
【0032】
電磁ポンプ80は、詳細は図示しないが、コイルへの通電を伴って電磁力を発生させる電磁部と、油路45から作動油を吸入する吸入ポート82aや作動油を吐出する吐出ポート82bが形成された中空円筒形状のシリンダと、電磁部からの電磁力により押圧を受けてシリンダ内を摺動する円柱形状のピストンと、電磁力の押圧方向とは反対方向にピストンを付勢するスプリングと、シリンダに内蔵されて吸入ポート82aからの作動油を流入を許容すると共に反対方向の作動油の流出を禁止する吸入用逆止弁と、ピストンに内蔵されて吐出ポート82bへの作動油の流出を許容すると共に作動油の反対方向の流入を禁止する吐出用逆止弁と、を有する。この電磁ポンプ80では、コイルへの間欠的な通電に伴ってピストンを往復動させることにより、吸入ポート82aから吸入した作動油を昇圧して吐出ポート82bから吐出する。
【0033】
切替バルブ90は、詳細は図示しないが、ライン圧PLを信号圧として入力する信号圧用入力ポート92aやリニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートに接続された第1入力ポート92b,電磁ポンプ80の吐出ポート82bに接続された第2入力ポート92c,クラッチC1の油路54に接続された第1出力ポート92dの各種ポートが形成されたスリーブと、スリーブ内を軸方向に摺動するスプールと、スプールを軸方向に付勢するスプリングと、を有する。この切替バルブ90は、ライン圧PLが信号圧用入力ポート92aに入力されているときには、第2入力ポート92cと第1出力ポート92dとの連通を遮断し、第1入力ポート92bと第1出力ポート92dとを連通する。これにより、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1の油路54とが連通され、電磁ポンプ80の吐出ポート82bとクラッチC1の油路54との連通が遮断される。また、切替バルブ90は、ライン圧PLが信号圧用入力ポート72aに入力されていないときには、第1入力ポート92bと第1出力ポート92dとの連通を遮断し、第2入力ポート92cと第1出力ポート92dとを連通する。これにより、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1の油路54との連通が遮断され、電磁ポンプ80の吐出ポート82bとクラッチC1の油路54とが連通される。
【0034】
こうして構成された実施例の自動車10では、変速ECU21により、シフトレバー105がD(ドライブ)ポジションで走行しているときには、アクセルペダルポジションセンサ102からのアクセル開度や車速センサ108からの車速に基づいて変速マップを用いて目標変速段を設定し、設定した目標変速段に基づいてクラッチC1,C2やブレーキB1〜B3が係合や解放されるよう油圧制御装置50(リニアソレノイドバルブSLTやリニアソレノイドバルブSLC1など)を駆動制御する。
【0035】
ここで、エンジン12を運転中のときには、エンジン12からの動力によりオイルポンプ40が作動すると共にプライマリレギュレータバルブ60によりライン圧PLが生成され、切替バルブ90は、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1の油路54とを連通すると共に電磁ポンプ80の吐出ポート82bとクラッチC1の油路54との連通を遮断する状態となる。したがって、目標変速段に応じて、クラッチC1を係合すべきときに、リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧Psl1をクラッチC1に作用させてクラッチC1を係合することができる。
【0036】
また、実施例の自動車10では、シフトレバー105がD(ドライブ)ポジションで走行しているときに、車速が値0,アクセルオフ,ブレーキスイッチ信号がオンなど予め設定された自動停止条件の全てが成立すると、エンジン12を自動停止する。エンジン12が自動停止されると、その後、ブレーキスイッチ信号がオフなど予め設定された自動始動条件が成立したときに、エンジン12を自動始動する。
【0037】
ここで、エンジン12が自動停止中のときには、電磁ポンプ80を作動させて、吸入ポート82aから吸入した作動油を昇圧して吐出ポート82bから吐出させる(切替バルブ90側に圧送させる)。いま、自動停止条件が成立してエンジン12が自動停止したときを考える。このときには、オイルポンプ40が停止することによってライン圧PLが低下する。このため、切替バルブ90は、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1の油路54との連通を遮断すると共に電磁ポンプ80の吐出ポート82bとクラッチC1の油路54とを連通する状態となる。したがって、電磁ポンプ80によって作動油を圧送することにより、発進時に係合すべきクラッチC1に油圧を作用することができる。そして、その後に自動始動条件が成立してエンジン12が自動始動されると、オイルポンプ40が作動することによってライン圧PLが供給される。このため、切替バルブ90は、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートとクラッチC1の油路54とを連通すると共に電磁ポンプ80の吐出ポート82bとクラッチC1の油路54との連通を遮断する状態となる。このとき、リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧Psl1をクラッチC1に作用させることにより、クラッチC1を完全に係合して車両を発進させることができる。このように、エンジン12が自動停止している最中に電磁ポンプ80を駆動してクラッチC1に油圧を作用させておくことにより、エンジン12が自動始動した直後にリニアソレノイドバルブSLC1からの油圧によりクラッチC1を迅速に係合させることができるから、エンジン12の自動始動を伴う発進をスムーズに行なうことができる。
【0038】
次に、ストレーナ42やオイルポンプ40,電磁ポンプ80周辺の配置について説明する。
図6〜
図9は、それぞれ、ストレーナ42やオイルポンプ40,電磁ポンプ80周辺を車両の右後上側,上側,後側,左側から見た様子を示す配置図である。なお、
図7〜
図9では、見易さを考慮して、油路43の図示を省略した。
【0039】
図6〜
図9に示すように、電磁ポンプ80は、図示しないスプールが車両左右方向に移動するよう(吸入ポート82aと吐出ポート82bとが車両左右方向に並ぶよう)配置されており、バルブボディVB(
図6〜
図9では図示せず)に取り付けられている。スプールが車両左右方向に移動するよう電磁ポンプ80を配置するのは、車両の加減速時に、その加減速による力(荷重)が電磁ポンプ80に作用することによってスプールが軸方向に摺動しにくくなるのを抑制するためである。また、電磁ポンプ80をバルブボディVBに取り付けるのは、電磁ポンプ80の吐出ポート82bと、油圧制御装置50の電磁ポンプ80とクラッチC1との間に介在する部分(切替バルブ90など)と、の距離を短くするためである。
【0040】
また、
図6や
図9に示すように、ストレーナ42の出口42a,バルブボディVBに形成された油路43,トランスミッションケース22に形成された油路44は、車両下側からこの順に並んでいる。そして、
図6〜
図9に示すように、ストレーナ42の出口42aと油路44とは、車両前後方向や車両左右方向での互いの距離が比較的短くなるよう位置している。これは、オイルポンプ40が作動油貯留部41に貯留されている作動油をストレーナ42や油路43,44,吸入ポート40aを介して吸入しやすくするためである。
【0041】
さらに、
図6〜
図9に示すように、油路44,バルブボディVBに形成された油路45,電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、車両上側からこの順に並んでいる。即ち、油路45は、油路44との連通位置45aからその全範囲において動力伝達装置20単体における水平より下向きに延びるように吸入ポート82aに向けて形成されている。また、上述したように、動力伝達装置20は、後輪駆動車両として構成された自動車10に、車両後側が車両前側より低くなるように搭載される。そして、
図6〜
図9に示すように、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、油路45の油路44との連通位置45aより下側且つ車両後側に配置されている。したがって、これらより、油路45は、連通位置45aからその全範囲において動力伝達装置20単体だけでなく自動車10に搭載された状態の動力伝達装置20においても水平より下向きに延びるように吸入ポート82aに向けて形成されている、と言える。
【0042】
そして、
図6〜
図8に示すように、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、車両前後方向から見たときに、油路45と車両上下方向で重なっている。また、
図6,
図7,
図9に示すように、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、車両左右方向から見たときに、ストレーナ42の出口42aと重なっている。これらより、油路44と電磁ポンプ80の吸入ポート82aとの車両前後方向や車両左右方向での距離を短くすることができる。特に、実施例では、油路44と電磁ポンプ80の吸入ポート82aとの車両左右方向での距離をより短くする(略ゼロとする)ことができる。
【0043】
いま、自動停止条件が成立してエンジン12を自動停止し、その後の発進に備えて電磁ポンプ80を駆動してクラッチC1に油圧を作用させるときを考える。実施例と同様の構成の自動車、即ち、ストレーナ42やオイルポンプ40,電磁ポンプ80,油路43,44,45を備える自動車では、油路43,44(特に油路44)の上部にエアが溜まることがある。そのときに自動車10が車両前後方向や車両左右方向に傾斜していると、エア(エア溜まり)が油路45に達することがある。油路45が車両前後方向や左右方向に長いときには、自動車10の車両前後方向や車両左右方向の比較的小さな傾斜で、油路45の上部に達したエアが電磁ポンプ80の吸入ポート82aに達し、電磁ポンプ80がエアを吸い込んでしまうおそれがある。電磁ポンプ80がエアを吸い込むと、電磁ポンプ80からクラッチC1に作用させる油圧が低下(不足)し、その後にエンジン12を自動始動してリニアソレノイドバルブSLC1からの油圧によりクラッチC1を係合させる際にクラッチC1の係合に時間を要し、車両の発進性が低下するおそれがある。特に、電磁ポンプ80を用いる場合には、電動ポンプを用いる場合とは異なり、エアを吸い込んだときにその排出が困難である。また、こうした電動ポンプ80は、比較的小型なものが用いられることが多く、エアを吸い込んだときの吐出圧の低下の影響が現われやすい。これらの要因により、電磁ポンプ80がエアを吸い込むのをより抑制することが要請される。
【0044】
これに対して、実施例では、油路45が、油路44との連通位置45aからその全範囲において動力伝達装置20単体や自動車10における水平より下向きに延びるように電磁ポンプ80の吸入ポート82aに向けて形成されるものとし、さらに、油路44と電磁ポンプ80の吸入ポート82aとの車両前後方向や車両左右方向での距離を短くするものとした。これにより、自動車10が車両前後方向や車両左右方向により大きく傾斜しない限り、油路44に溜まったエア(エア溜まり)が油路45や電磁ポンプ80の吸入ポート82aに達するのを抑制することができ、電磁ポンプ80がエアを吸い込むのを抑制することができる。特に、実施例では、上述したように、油路44と電磁ポンプ80の吸入ポート82aとの車両左右方向での距離をより短くする(略ゼロとする)から、自動車10の車両左右方向の傾斜に対してより大きな効果を奏する。このように、電磁ポンプ80がエアを吸い込むのを抑制することにより、電磁ポンプ80からクラッチC1に作用させる油圧が低下するのを抑制することができる。そして、その後にエンジン12を自動始動してリニアソレノイドバルブSLC1からの油圧によりクラッチC1を係合させる際にクラッチC1の係合に要する時間が長くなるのを抑制することができ、車両の発進性が低下するのを抑制することができる。
【0045】
以上説明した実施例の動力伝達装置20では、油路44と電磁ポート80とを連通する油路45は、油路44との連通位置45aからその全範囲において動力伝達装置20単体や自動車10における水平より下向きに延びるように電磁ポンプ80の吸入ポート82aに向けて形成されている。また、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、車両前後方向から見たときに、トランスミッションケース22に形成されてストレーナ42の出口42aとオイルポンプ40との間に介在する油路44より車両下側に位置し、且つ、油路44と車両上下方向で重なっている。また、この吸入ポート82aは、車両左右方向から見たときに、ストレーナ42の出口42aと重なっている。したがって、油路44と電磁ポンプ80の吸入ポート82aとの車両前後方向や車両左右方向での距離を短くすることができる。以上より、油路44の上部にエアが溜まったとしても、自動車10が車両前後方向や車両左右方向により大きく傾斜しない限り、油路44に溜まったエア(エア溜まり)が油路45や電磁ポンプ80の吸入ポート82aに達するのを抑制することができ、電磁ポンプ80がエアを吸い込むのを抑制することができる。この結果、電磁ポンプ80からクラッチC1に油圧を作用させる必要があるときに、電磁ポンプ80からクラッチC1に作用させる油圧が低下するのを抑制することができる。そして、その後にエンジン12を自動始動してリニアソレノイドバルブSLC1からの油圧によりクラッチC1を係合させる際にクラッチC1の係合に要する時間が長くなるのを抑制することができ、車両の発進性が低下するのを抑制することができる。
【0046】
実施例の動力伝達装置20では、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、
図9に示したように、車両左右方向から見たときにストレーナ42の出口42aと重なる(油路44と車両上下方向で重ならない)ものとしたが、車両左右方向から見たときに、油路44と車両上下方向で重なるものとしてもよい。こうすれば、油路44と電磁ポンプ80の吸入ポート82aとの車両前後方向での距離をより短くすることができ、自動車10の車両前後方向の傾斜に対してより大きな効果を奏する。なお、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、車両左右方向から見たときに、ストレーナ42の出口42aと重なると共に油路44と車両上下方向で重なるよう配置されるものとしてもよいのは勿論である。また、この場合、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、車両前後方向から見たときに、油路44と車両上下方向で重ならないものとしてもよい。
【0047】
実施例の動力伝達装置20では、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、車両前後方向から見たときに、油路44より車両下側に位置し且つ油路44と車両上下方向で重なり、車両左右方向から見たときに、ストレーナ42の出口42aと重なるものとしたが、油路45が油路44との連通位置45aからその全範囲において動力伝達装置20単体や自動車10における水平より下向きに延びるように吸入ポート82aに向けて形成されるものであればよく、電磁ポンプ80の吸入ポート82aは、車両前後方向から見たときに、油路44と車両上下方向で重ならず、車両左右方向から見たときに、ストレーナ42の出口42aと重ならないと共に油路44と車両上下方向で重ならないものとしてもよい。この場合、油路44と電磁ポンプ80の吸入ポート82aとの車両前後方向や車両左右方向での距離が長くなるが、油路45が油路44との連通位置45aから動力伝達装置20単体や自動車10における水平またはそれより上向きに延びるように吸入ポート82aに向けて形成されるものに比して、油路44の上部にエアが溜まったときに、そのエア(エア溜まり)が油路45や電磁ポンプ80の吸入ポート82aに達するのを抑制することができ、電磁ポンプ80がエアを吸い込むのを抑制することができる。
【0048】
実施例の動力伝達装置20では、電磁力により作動する電磁ポンプ80を備えるものとしたが、電動機からの動力により作動する電動ポンプなどを備えるものとしてもよい。
【0049】
実施例の動力伝達装置20では、6段変速式の変速機30を備えるものとしたが、6段変速機式に限定されるものではなく、4段変速式や5段変速式,8段変速式など、如何なる段数の変速機を備えるものとしてもよい。
【0050】
実施例の動力伝達装置20では、原動機として、エンジン12を備えるものとしたが、エンジン以外のモータなどを備えるものとしてもよい。
【0051】
実施例の動力伝達装置20では、後輪駆動車両として構成された自動車10に搭載されるものとしたが、前輪駆動車両に搭載されるものとしてもよい。
【0052】
実施例の主要な要素と発明の概要の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、変速機30が「変速機」に相当し、トランスミッションケース22が「ケース」に相当し、油圧制御装置50が「油圧制御装置」に相当し、オイルポンプ40が「第1ポンプ」に相当し、電磁ポンプ80が「電磁ポンプ」に相当し、油路43,44が「第1油路」に相当し、油路45が「第2油路」に相当する。
【0053】
なお、実施例の主要な要素と発明の概要の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が発明の概要の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、発明の概要の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、発明の概要の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は発明の概要の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。