(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記箱体の底面と、前記左端面部、前記左中間面部、前記底面部、前記右中間面部及び前記右端面部とで囲まれる領域に、前記左端面部及び前記右端面部が延長されて形成される延長部又は他の矩形状の段ボールシートが、折り曲げられて配置されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の段ボール製緩衝材。
前記左端面部と前記左中間面部との間の山折線、及び、前記右中間面部と前記右端面部との間の山折線がそれぞれ2つ形成され、この2つの山折線の間に断面視V字状の谷部が形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の段ボール製緩衝材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のように、上記特許文献1〜5で提案された発明はいずれも、段ボールシートを複雑に折込み、切込み、抜打く等の工程が必要であったり、複雑な組立操作が必要であったりする等、設計的にも製造的にも大きな手間とコストを要している。さらに、使用する段ボールシートの数が多くなり、製造や組立を煩雑にしているほか、段ボールシートを複雑に折込むこと等により緩衝材を構成するから、箱体の微細な寸法や形状の変更に応じて設計等をやり直す必要があり、さらには抜本的な見直しに迫られることもあり、汎用性に乏しいという問題が生じている。また、このように複雑に組み立てられた段ボール製緩衝材であっても、外部からの衝撃によって折り目以外の箇所が切れる、破れる、潰れるといった不都合を回避することができず、緩衝材としての機能そのものが損なわれてしまう虞があるという問題もある。
【0005】
したがって、箱体の寸法等の変更に応じて抜本的な設計変更の必要がない汎用性の高い緩衝材を、シンプルな形状でコストを抑え、しかも、折り目以外の箇所が切れる、破れる、潰れるといった不都合も生じない構成で提供すべきという要請があった。本願発明者は、これを検討していくうち、ハンモック様の緩衝機能が発現する段ボール製緩衝材を創作することに成功した。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて提案され、汎用性の高い段ボール製緩衝材をシンプルな形状で構成することができ、折り目以外の箇所が切れる、破れる、潰れるといった不都合も生じ難くした段ボール製緩衝材及びこの段ボール製緩衝材が収納される段ボール製箱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、箱体内に収容した収容物が外部から受ける衝撃を吸収する段ボール製緩衝材であって、長手方向と平行に段目を有する矩形状の段ボールシートが、前記段目と垂直方向に、かつ、底辺を有する略M字状の断面視を備えるように折り曲げられて、左端面部と、この左端面部と山折線で山折りされて連続し、前記左端面部よりも面積の小さい左中間面部と、この左中間面部と谷折り線で谷折りされて連続している底面部と、この底面部と谷折線で谷折りされて連続し、前記左中間面部と同じ大きさの右中間面部と、この右中間面部と山折線で山折りされて連続し、前記左端面部と同じ大きさの右端面部とが形成されてなり、少なくとも2つ以上を用いて、前記左中間面部と前記底面部と前記右中間面部とで囲まれた空間が形成されるように上下クロスさせて前記箱体内に収納され、前記左端面部の左端辺、及び、前記右端面部の右端辺が前記箱体の隅部に位置決めされることで、前記底面部とこの底面部に近傍で対向する前記箱体の底面との間に空間が形成されて前記底面部に上下方向のバネ性が具備されるとともに、前記左端面部と前記左中間面部、及び、前記右端面部と前記右中間面部に左右方向のバネ性が具備されてハンモック様の緩衝機能が発揮されることを特徴とする。
【0008】
特に、上記段ボール製緩衝材は、箱体の底面と、左端面部、左中間面部、底面部、右中間面部及び右端面部とで囲まれる領域に、左端面部及び右端面部が延長されて形成される延長部又は他の矩形状の段ボールシートが折り曲げられて配置されて構成されることが好ましい。
【0009】
また、左端面部と左中間面部との間の山折線、及び、右中間面部と右端面部との間の山折線がそれぞれ2つ形成され、この2つの山折線の間に断面視V字状の谷部が形成されると、さらに好ましい構成となる。
【0010】
また、本発明に係る段ボール製箱体は、上記段ボール製緩衝材が収納され、隅部で、前記左端面部の左端辺、及び、前記右端面部の右端辺が位置決めされる形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、長手方向と平行に段目を有する矩形状の段ボールシートが、段目と垂直方向に、かつ、底辺を有する略M字状の断面視を備えるように折り曲げられて、左端面部と、この左端面部と山折線で山折りされて連続し、左端面部よりも面積の小さい左中間面部と、この左中間面部と谷折り線で谷折りされて連続している底面部と、この底面部と谷折線で谷折りされて連続し、左中間面部と同じ大きさの右中間面部と、この右中間面部と山折線で山折りされて連続し、左端面部と同じ大きさの右端面部とが形成されて構成されている。したがって、段ボールシートを複雑に折込み、切込み、抜打く等の工程を不要とし、複雑な組立操作も不要として、設計的、製造的に大幅なコスト削減を実現することができる。特に、使用する段ボールシートは最低1種で済み、その数も最小2枚で済むほか、底辺を有する略M字状の断面視という簡単な構成により十分な緩衝機能を備えるため、箱体の寸法等に応じて根本的な設計変更の必要もない等、汎用性の高い緩衝材をシンプルな形状で構成することができる。
【0012】
また、本発明は、この構成のまま少なくとも2つ以上を用いて、左中間面部と底面部と右中間面部とで囲まれた空間が形成されるように上下クロスさせて箱体内に収納され、左端面部の左端辺、及び、右端面部の右端辺が箱体の隅部に位置決めされることで、底面部とこの底面部に近傍で対向する箱体の底面との間に空間が形成されて底面部に上下方向のバネ性が具備されるとともに、左端面部と左中間面部、及び、右端面部と右中間面部に左右方向のバネ性が具備されてハンモック様の緩衝機能が発揮されるので、外部からの衝撃を吸収して折り目以外の箇所が切れる、破れる、潰れるといった不都合を極力回避することも可能となる。少なくとも2つ以上を用いて、左中間面部と底面部と右中間面部とで囲まれた空間が形成されるように上下クロスさせて箱体内に収納されることで、ハンモック様の緩衝機能が上下前後左右のいずれの方向にも発揮される点は特筆すべきである。
【0013】
さらに、本発明を、箱体の底面と、左端面部、左中間面部、底面部、右中間面部及び右端面部とで囲まれる領域に、左端面部及び右端面部が延長されて形成される延長部又は他の矩形状の段ボールシートが折り曲げられて配置されるように構成すれば、上下方向のバネ性や左右方向のバネ性を強化することができ、上述した効果を益々発揮することができる。
【0014】
また、左端面部と左中間面部との間の山折線、及び、右中間面部と右端面部との間の山折線がそれぞれ2つ形成され、この2つの山折線の間に断面視V字状の谷部が形成される構成とすれば、さらに前後左右方向のバネ性を強化することができる。
【0015】
このほか、本発明は、上記段ボール製緩衝材が収納され、隅部で、左端面部の左端辺、及び、右端面部の右端辺が位置決めされる形状を有する段ボール製箱体であり、箱体の寸法設計、内寸及び略M字状のV字部分の角度の観点から、上記段ボール製緩衝材の緩衝機能を有効に発揮させる形状を有するので、汎用性の高い本発明の段ボール製緩衝材を最も生かすことができる段ボール製箱体として提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るいくつか実施形態を、図面を参照しながら例示して説明する。なお、この実施形態は、本発明の構成を具現化した例示に過ぎず、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ種々の設計変更を行うことができる。
【0018】
本発明に係る段ボール製緩衝材1Aは、
図1又は
図2に示すように、立方体又は直方体の箱体B内に収納されることで、箱体B内に収容した収容物としての、例えば、半導体ウエハーが積層されて梱包されているウエハーケースCが、例えば、外部から受ける衝撃等を吸収する緩衝材として機能するものである。
【0019】
段ボール製緩衝材1Aを構成する略M字状段ボール材1は、
図3に示すように、長手方向と平行な段目aを有するとともに、この段目aと垂直方向に設けられた第1〜第4罫線21,22,23,24を有する1枚の矩形状の段ボールシートが折り曲げられて形成される。具体的には、略M字状段ボール材1は、第1〜第4罫線21,22,23,24に沿って、底辺を有する略M字状の断面視を備えるように折り曲げられて形成される。
【0020】
さらに詳述すれば、矩形状の段ボールシートが折り曲げられ、左端面部11と、この左端面部11と山折線としての第1罫線21で山折りされて連続し、左端面部11よりも面積の小さい左中間面部12と、この左中間面部12と谷折り線としての第2罫線22で谷折りされて連続している底面部13と、この底面部13と谷折線としての第3罫線23で谷折りされて連続し、左中間面部12と同じ大きさの右中間面部14と、この右中間面部14と山折線としての第4罫線24で山折りされて連続し、左端面部11と同じ大きさの右端面部15とが形成されて、略M字状段ボール材1は構成されるものである。
【0021】
なお、略M字状段ボール材1を形成するための矩形状の段ボールシートは、通常の段ボール紙を製造するのと同様、2枚の段ボール原紙の間に、段目aを形成した別の段ボール原紙を挟んで貼り合わせ、段目aと垂直方向の所定の位置に、第1〜第4罫線21,22,23,24を入れて作製すればよい。また、作製した矩形状の段ボールシートに関し、印刷のための工程や型抜き等をはじめとする成形のための工程を適宜加えてもよい。
【0022】
そして、段ボール製緩衝材1Aは、
図1又は
図2に示すように、略M字状段ボール材1を最低1種で、2つ以上(本実施形態では1種を2枚)用いて、左中間面12と底面部13と右中間面部14とで囲まれた空間、例えば、略直方体空間が形成されるように上下クロスさせて箱体B内に収納され、左端面部11の左端辺11a、及び、右端面部15の右端辺15aが箱体Bの隅部に位置決めされることで、底面部13とこの底面部13に近傍で対向する箱体Bの底面B1との間に空間が形成されて底面部13に上下方向のバネ性が具備される。また、左端面部11と左中間面部12、及び、右端面部15と右中間面部14に左右方向のバネ性が具備される。段ボール製緩衝材1Aは、略M字状段ボール材1を2つ以上用い、上述のとおりに箱体Bへ収納する構成に基づいた左右方向及び上下方向のバネ性により、収容物としてのウエハーケースCを中空状態に保持し、収容時、運搬時等にハンモック様の緩衝機能を上下前後左右方向から発揮するものとなる。ちなみにハンモック様とは、丈夫な網または布の両端を纏めて壁や柱、野外の立木の間などに吊し、その上で寝たり、くつろいだりすることができる寝具のように、包み込んで収容物の重量に対抗し、また、外部からの応力に対抗して収容物を中空状態に保持する態様をいう。
【0023】
ここで、
図1又は
図2を参照しつつ、略M字状段ボール材1を2枚用い、略直方体空間が形成されるように上下クロスさせて箱体B内に収納する様子を詳述する。まず、一方の略M字状段ボール材1を、左端面部11の左端辺11a、及び、右端面部15の右端辺15aが箱体Bの隅部に位置決されるようにして箱体B内へ収容する。次に、ウエハーケースCを略M字状段ボール1の底面部13上に載せる。最後に、他方の略M字状段ボール材1を、すでに収納した一方の略M字状段ボール材1と対称に対向させて、さらに90°角度を変えてクロスするように挟み込んで、箱体B内に収納する。すなわち、ウエハーケースCを、2枚の略M字状段ボール材1の左中間面12と底面部13と右中間面部14とで囲まれた略直方体空間に収容するのである。そうすると、一方の略M字状段ボール材1による左右方向及び上下方向のバネ性による緩衝機能に加え、他方の略M字状段ボール材1によって前後方向のバネ性による緩衝機能が備わる。さらに、上下を逆さまにした場合には、他方の略M字状段ボール材1によって上下方向の緩衝機能が発揮されることになって、前後、左右、上下のいずれの方向からの応力にも対抗してウエハーケースCを保持することができる。
【0024】
底面部13と箱体Bの底面B1との間に空間が形成されるのは、左中間面部12が左端面部11よりも面積が小さく、右中間面部14が右端面部15よりも面積が小さいことに基づく。さらに、左端面部11と右端面部15とが同じ面積であることに基づく。また、左端面部11と左中間面部12、及び、右端面部15と右中間面部14にそれぞれ左右方向のバネ性が具備されるのは、左端面部11と左中間面部12とが第1罫線21で山折りされて連続し、右中間面部14と右端面部15とが第4罫線24で山折りされて連続していることに基づく。
【0025】
底面部13に上下方向のバネ性が具備されるのは、底面部13にウエハーケースCが収容されたとき、山折りされた第1罫線21、第4罫線24が、谷折りされた第2罫線22、第3罫線23を支点にして内向きに移動することでウエハーケースCの重量に対抗し、底面部13、左中間面部12及び右中間面部14でウエハーケースCを包み込むようになることに基づく。
【0026】
また、箱体B内に本発明に係る段ボール製緩衝材1Aが収納され、この段ボール製緩衝材1Aの底面部13にウエハーケースCが収容されて運搬される際には、外部からの左右方向の衝撃に対し、左端面部11と左中間面部12とで形成されたバネ性、及び、右中間面部14と右端面部15とで形成されたバネ性によって左右方向の緩衝機能が発揮される。また、底面部13、左中間面部12及び右中間面部14で形成されたバネ性によって、外部からの上下方向の衝撃に対する緩衝機能が発揮される。そして、略M字状段ボール1を2つ用い、左中間面12と底面部13と右中間面部14とで囲まれた略直方体空間が形成されるように上下クロスさせて箱体B内に収納されるから、上述したように、上下前後左右のいずれの方向にも緩衝機能が発揮されるものとなる。なお、段ボール製緩衝材1Aは、底辺を有する断面視略M字状であって開放部を有するので、左中間面部12及び右中間面部14に伝わった衝撃を、この開放部へ逃がすことができる構成でもある。
【0027】
ここで、本発明に係る段ボール製緩衝材1Aと、
図6に示す比較例とを対比し、本発明の優位性について説明する。
【0028】
図6に示す比較例は、角筒状の角筒部102で四方を囲むようにして電子機器等を梱包する梱包部101を形成した段ボール紙製緩衝材100である。なお、比較例は、本発明との比較対比のため、1枚の段ボールシートから形成している。また、箱体の底面と梱包部101との間に、空間を形成している。
【0029】
段ボール紙製緩衝材100の梱包部101にウエハーケースCを収容すると、角筒部102の梱包部101側の辺が、ウエハーケースCの重量に伴って重力方向に落ち込み、梱包部101の全体が箱体の底面へ向かって落ち込む(
図6に破線と実線で示した)。すなわち、ウエハーケースCの重量に対抗することができないために、上下方向のバネ性が発揮されない構成となる。さらに、梱包部101にウエハーケースCが収容されて運搬される際には、外部からの左右方向の衝撃を角筒部102で吸収するため、外部からの衝撃によって角筒部102の折り目以外の箇所に切れる、破れる、潰れるといった不都合が生ずる虞がある。一方、本発明に係る段ボール製緩衝材1Aは、上述したとおりであって、左右方向及び上下方向の衝撃に対し、それぞれバネ性による緩衝機能が発揮され、底辺を有する断面視略M字状という簡単に構成できる形状で、汎用性の高い段ボール製緩衝材として提供することができる。
【0030】
なお、比較例の段ボール紙製緩衝材100は、ウエハーケースCの重量に対向するため切り込みや抜き型によって、箱体の底面と梱包部101との間を接続する下駄の歯様部又は爪様部103が形成されて構成されることもある。しかし、形成された下駄の歯様部又は爪様部103では、ウエハーケースCを、その重量に対向して支持する機能に留まり、衝撃を吸収するといったバネ性による緩衝機能までを得ることが難しい。また、製造するに際して段ボール紙に切り込みや抜き型を行う工程が必須となるので、手間とコストがかかる問題を内在している。このほか、下駄の歯様部又は爪様部103で支持できる収容物は軽量物に限られ、仮に所定の重量を超えると、
図6に示すように、下駄の歯様部又は爪様部103が曲がってしまい、その支持機能さえ失われる虞がある。本発明に係る段ボール製緩衝材1Aでは、このような問題がすべて解決されているのである。
【0031】
ここで、本発明に係る段ボール製緩衝材は、以下に説明するように、底辺を有する断面視略M字状というシンプルな形状を生かし、いくつかの構成を簡単に追加することができ、これにより左右方向及び上下方向の緩衝機能を強化することができる。
【0032】
例えば、段ボール製緩衝材1Bは、
図4(a)に示すように、段ボール製緩衝材1Aと対比すれば、構成するM字状段ボール材を、左端面部11と左中間面部12との間の山折り線である第1罫線に関して、左側第1罫線211及び右側第1罫線212の2つを形成し、右中間面部14と右端面部15との間の山折線である第4罫線に関しても、左側第4罫線241及び右側第4罫線242の2つを形成し、左側第1罫線211と右側第1罫線212の間に断面視V字状の谷部V1を、左側第4罫線241と右側第4罫線242の間に断面視V字状の第2谷部V2をそれぞれ形成して構成した点で異なり、この相違点が段ボール製緩衝材1Bの更なる特徴となる。
【0033】
段ボール製緩衝材1Bでは、左側第1罫線211及び右側第1罫線212の2つの山折りと谷部V1とで連続された左端面部11と左中間面部12とが形成され、かつ、左側第4罫線241及び右側第4罫線242の2つの山折りと谷部V2とで連続された右端面部15と右中間面部14とが形成されるので、一方のM字状段ボール材に左右方向のバネ性(緩衝機能)を強化することができ、上下クロスさせて収納される他方のM字状段ボール材にあっては前後方向のバネ性(緩衝機能)を強化することができる。
【0034】
また、段ボール製緩衝材1Cは、
図4(b)に示すように、段ボール製緩衝材1Aと対比すれば、構成するM字状段ボール材を、箱体の底面と、左端面部11、左中間面部12、底面部13、右中間面部14及び右端面部15とで囲まれる領域に、左端面部11及び右端面部15が延設されることで形成される左延長部111及び右延長部151を配置して構成した点で異なり、この相違点が段ボール製緩衝材1Cの更なる特徴となる。
【0035】
この段ボール製緩衝材1Cでは、左延長部31及び右延長部35が、箱体の底面と、左端面部11、左中間面部12、底面部13、右中間面部14及び右端面部15とで囲まれる領域に配置されることで、延設された左延長部111及び右延長部111自体に備わるクッション性によって、一方のM字状段ボール材に左右方向のバネ性(緩衝機能)を強化することができ、上下クロスさせて収納される他方のM字状段ボール材にあっては前後方向のバネ性(緩衝機能)を強化することができる。
【0036】
また、段ボール製緩衝材1D,1Eは、それぞれ
図4(c)、
図4(d)に示すように、段ボール製緩衝材1Aと対比すれば、箱体の底面と、左端面部11、左中間面部12、底面部13、右中間面部14及び右端面部15とで囲まれる領域に、他の矩形状の段ボールシートD1,D2を折り曲げて配置して構成したものである。
【0037】
この段ボール製緩衝材1D,1Eでは、折り曲げた他の矩形状の段ボールシートD1,D2が、箱体の底面と、左端面部11、左中間面部12、底面部13、右中間面部14及び右端面部15とで囲まれる領域に配置されることで、他の矩形状の段ボールシートD自体に備わるクッション性によって、左右方向及び上下方向のバネ性(緩衝機能)を強化することができる。
【0038】
また、段ボール製緩衝材1Fは、
図4(e)に示すように、段ボール製緩衝材1Aと対比すれば、構成するM字状段ボール材の左端面部11及び右端面部15にセンター合わせ用の耳部11b、15bを形成して構成したものである。
【0039】
この段ボール製緩衝材1Fでは、センター合わせ用の耳部11b、15bにより、箱体B内に収納されたとき、収容物を収容する底面部13が箱体Bの中心に位置するようになるため、前後左右方向及び上下方向のバネ性(緩衝機能)が最も発揮される状態で収容物を収容することができるようになる。加えて、略M字状段ボール材を2枚用い、略直方体空間が形成されるように上下クロスさせて箱体B内に収納するから、センター合わせ用の耳部11b、15bによって先に収容した一方のM字状段ボール材が必ずセンターに配置されることになり、他方の略M字状段ボール材を箱体B内に収納する作業がスムーズになるという効果も得られる。
【0040】
また、底辺を有する略M字状の断面視を有する略M字状段ボール材の優位性を示す参考例としての段ボール製緩衝材1Gは、
図5(a)に示すように、底面部13から矩形状の段ボールシートの長手方向に対して垂直方向へ延長する延設部を設け、この延設部を段目aと平行方向に、かつ、底辺を有する略M字状の断面視を備えるよう折り曲げて、第2左端面部31と、この第2左端面部31と山折線で山折りされて連続し、第2左端面部31よりも面積の小さい第2左中間面部32と、底面部13と谷折線で谷折りされて連続し、第2左中間面部32と同じ大きさの第2右中間面部34と、この第2右中間面部34と山折線で山折りされて連続し、第2左端面部31と同じ大きさの第2右端面部35とを形成して構成することで、ヤッコ型の形状の略M字状段ボール材としたものである。
【0041】
この段ボール製緩衝材1Gではヤッコ型の形状により、折り曲げて構成すれば、
図5(b)に示すように2枚の段ボールシートから上下方向、左右方向に加え、前後方向のバネ性(緩衝機能)を具備することができる。
【0042】
なお、本発明に係る段ボール製緩衝材1A〜1Fは、実施する場面に応じてそれぞれ対応するM字状段ボール材を組合せて構成することができ、これにより、収容物に応じて求められる緩衝機能にそれぞれ対応することができる。例えば、先に箱体Bへ収納する一方の略M字状段ボール材を、段ボール製緩衝材1Fを構成するものとし、後に箱体Bへ収納する一方の略M字状段ボール材を、段ボール製緩衝材1Aを構成するものとすれば、最もスムーズに収容物の梱包作業を進めることが可能である。
【0043】
したがって、本発明に係る段ボール製緩衝材1A〜1Fは、長手方向と平行に段目aを有する矩形状の段ボールシートを、段目aと垂直方向に、かつ、底辺を有する略M字状の断面視を備えるように折り曲げて構成するというシンプルな構成により、左右方向、前後方向及び上下方向の緩衝機能を備えさせて、箱体Bの寸法に応じて設計等をやり直す必要もないことをはじめとする汎用性の高い緩衝材を提供することができる。段ボールシートを複雑に折込み、切込み、抜打く等の工程を不要とし、複雑な組立操作も不要としているので、設計的、製造的に大幅なコスト削減を実現することができるのも、もちろんである。また、左右方向、前後方向及び上下方向のバネ性に基づいた緩衝機能により外部からの衝撃を吸収するので、折り目となる罫線以外の箇所が切れる、破れる、潰れるといった不都合を極力回避することも可能となる。
【0044】
さらに、本発明は、箱体Bの底面B1と、左端面部11、左中間面部12、底面部13、右中間面部14及び右端面部15とで囲まれる領域に、左端面部11及び右端面部15が延長されて形成される左右の延長部111,151又は他の矩形状の段ボールシートD1,D2が折り曲げられて配置されるように構成すること、左端面部11と左中間面部12との間の山折線、及び、右中間面部14と右端面部15との間の山折線がそれぞれ2つ形成され、この2つの山折線の間に断面視V字状の谷部V1,V2が形成される構成とすること等の簡単な構成追加により、バネ性を強化することができる。
【0045】
ここで、本発明は、上記段ボール製緩衝材1A〜1Fが収納され、隅部で、左端面部11の左端辺11a、及び、右端面部15の右端辺15aが位置決めされる形状を備える段ボール製箱体(本発明)とセットで、実施されることが好ましい。このような段ボール製箱体は、その寸法設計、内寸及び略M字状のV字部分の角度の観点から、段ボール製緩衝材1A〜1Fの緩衝機能を有効に発揮させる形状を有するものとなるので、汎用性の高い本発明の段ボール製緩衝材を最も生かすことができる段ボール製箱体として提供することができるからである。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示して詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【0047】
例えば、本発明が適用される収容物は、上述したようなウエハーケースの運搬に限られず、モバイル液晶画面部品が複数個収納されるようなトレイが積層されて運搬される場面、ラップトップ型PC等の通信用精密機器やその架台が運搬される場面等、様々な電子機器、家電製品等を想定することができる。また、段ボールシートの材質や硬度は、収容物の形状や重量との関係から適宜調整することができ、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することなく構成すれば、所望の緩衝機能を備える段ボール製緩衝材を得ることができる。