特許第6041085号(P6041085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6041085-重ね放電型内燃機関用点火装置 図000002
  • 特許6041085-重ね放電型内燃機関用点火装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041085
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】重ね放電型内燃機関用点火装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/00 20060101AFI20161128BHJP
   F02P 15/00 20060101ALI20161128BHJP
   F02P 15/10 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F02P3/00 E
   F02P15/00 302Z
   F02P15/10 301C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-11702(P2012-11702)
(22)【出願日】2012年1月24日
(65)【公開番号】特開2013-151866(P2013-151866A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174426
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ阪神株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】島田 直樹
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−229461(JP,A)
【文献】 特開昭56−110566(JP,A)
【文献】 特開2006−063973(JP,A)
【文献】 特開昭52−134939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00−3/12、7/00−17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火信号に応じて点火コイルの一次コイルの電流を遮断し、二次コイルに高電圧を誘起させると共に、該高電圧と同極性の電圧を重畳し、点火プラグの放電間隙に火花放電を起こして、燃焼室内の混合気に点火する重ね放電型内燃機関用点火装置において、
前記点火信号に基づく二次コイルの高電圧誘起のタイミングで、所要電圧・所要周波数の重畳電圧生成用交流を出力すると共に、外部よりの指示に基づいて出力する電力を増減可能な重畳電圧生成動作制御手段と、
前記重畳電圧生成動作制御手段から供給される重畳電圧生成用交流の周期内で作動する倍電圧整流回路を多段に組み合わせ、入力電圧の段数倍の直流高電圧を出力するようにした多段倍電圧整流手段と、
を備え、
前記多段倍電圧整流手段の倍電圧整流回路は、前記重畳電圧生成動作制御手段から出力される重畳電圧生成用交流の波高値の2倍程度以上の耐圧性を有するディスクリート部品で構成し、
前記点火コイルと同一のケース内へ前記多段倍電圧整流手段を収納し、
前記多段倍電圧整流手段から出力される直流高電圧を、前記点火コイルの二次コイルに誘起する高電圧と同極性で重畳し、点火プラグに印加することにより重ね放電を行わせ、
前記多段倍電圧整流手段により重畳された重ね電流値を検出すると共に、予め設定された重ね電流設定値と実際に検出された重ね電流検出値とを比較し、重ね電流検出値が重ね電流設定値よりも低い場合には出力増加指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ出力し、重ね電流検出値が重ね電流設定値よりも高い場合には出力低減指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ出力するフィードバック制御手段を設け、
前記フィードバック制御手段からの出力増加指示信号または出力低減指示信号に基づいて、前記重畳電圧生成動作制御手段が多段倍電圧整流手段へ出力する電力を調整することで、多段倍電圧整流手段から出力される直流高電圧を増減させ、重ね電流検出値を重ね電流設定値へ近づけるフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする重ね放電型内燃機関用点火装置。
【請求項2】
前記重畳電圧生成動作制御手段は、前記フィードバック制御手段から出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号を受ける毎に、予め定めた規定量だけ出力を増減させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の重ね放電型内燃機関用点火装置。
【請求項3】
前記フィードバック制御手段は、重ね電流検出値と重ね電流設定値との差に応じて出力増減量を決定すると共に、決定した出力増減量を含む出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ送信し、
前記重畳電圧生成動作制御手段は、フィードバック制御手段からの出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号に応じて、出力する電力を増減するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の重ね放電型内燃機関用点火装置。
【請求項4】
前記重畳電圧生成動作制御手段は、生成する重畳電圧生成用交流の波高値を変化させることで、多段倍電圧整流手段へ出力する電力を調整するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の重ね放電型内燃機関用点火装置。
【請求項5】
前記重畳電圧生成動作制御手段は、矩形波交流のON/OFFデューティー比を変化させるPWM制御によって、多段倍電圧整流手段へ出力する電力を調整するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の重ね放電型内燃機関用点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両に搭載される内燃機関の点火装置、特に重ね放電型内燃機関用点火装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では車両搭載の内燃機関として、燃費改善の為にリーンバーンエンジンや高EGRエンジンが採用されているが、これらのエンジンは着火効率が余り良くないため、点火装置には高エネルギー型のものが必要になる。そこで、従来からも、古典的な電流遮断原理により発生する点火コイル二次側出力にDC−DCコンバータの高圧出力を重畳する重ね放電型内燃機関用点火装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような従来の重ね放電型内燃機関用点火装置では、点火コイルの一次電流を遮断することにより点火コイルの二次側に発生する数kVの高圧電圧により、点火プラグの放電間隙に放電破壊を起こし、点火コイルの二次側から放電電流を流し始めた後に、当該放電状態を維持し得る放電維持電圧値以上の直流電圧(普通、500V程度以上)を別途に設けた昇圧回路によって保ちながら、当該昇圧回路からの出力電流を点火コイル放電電流に加算的に重畳する。事実、このような重ね放電型内燃機関用点火装置によると、点火プラグに比較的長い時間に亘り大きな放電エネルギーを得ることができるため、燃料への着火性が向上し、ひいては燃費も向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−68372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された重ね放電型内燃機関用点火装置においては、点火コイル二次側出力にDC−DCコンバータの高圧出力を重畳するため、DC−DCコンバータの高圧部、特に昇圧トランスと充放電用コンデンサには高耐圧の部品を選定する必要があり、DC−DCコンバータの小型化は困難である。このため、DC−DCコンバータを点火コイル周辺に設置するわけにはいかず、DC−DCコンバータを含む重ね放電機能部を点火コイルから離れた部位に設置せざるを得ないため、重ね放電機能部からの高圧出力を点火コイル2へ導出するために高耐圧の配線が必要になる。よって、従来の重ね放電型内燃機関用点火装置では、コストや収納スペースの面で問題が生じる。
【0006】
また、リーンバーンエンジンや高EGR等では、混合気の状態によって、同じ高エネルギーであっても短放電が望ましいケースや長放電が望ましいケースもあるため、混合気の状態に適した特性の放電を行えるような重ね放電型内燃機関用点火装置への要求があるものの、従来の重ね放電型内燃機関用点火装置では、重ね時間や重ね電流は充放電用コンデンサの容量で決まるため、重ね時間や重ね電流を任意に変更することは困難である。
【0007】
しかも、従来の重ね放電型内燃機関用点火装置は、設計上の重ね時間や重ね電流が保持されるため、結果的に、必要以上の放電エネルギーが供給されて無駄な電力消費が続いたり、点火プラグ電極の消耗を早めてしまうといった問題もある。逆に、無駄な電力消費を抑えるためにギリギリの重ね電流を重畳する設計とした場合は、重ね電流が不足して適正な燃焼状態を維持できなくなったり、最悪の場合は失火するなど、燃焼に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、低コストで装置の小型化が可能で、狭小な車載スペースへ設置できると共に、安定した放電を行うのに必要十分な重ね電流の供給を維持できる重ね放電型内燃機関用点火装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、点火信号に応じて点火コイルの一次コイルの電流を遮断し、二次コイルに高電圧を誘起させると共に、該高電圧と同極性の電圧を重畳し、点火プラグの放電間隙に火花放電を起こして、燃焼室内の混合気に点火する重ね放電型内燃機関用点火装置において、前記点火信号に基づく二次コイルの高電圧誘起のタイミングで、所要電圧・所要周波数の重畳電圧生成用交流を出力すると共に、外部よりの指示に基づいて出力する電力を増減可能な重畳電圧生成動作制御手段と、前記重畳電圧生成動作制御手段から供給される重畳電圧生成用交流の周期内で作動する倍電圧整流回路を多段に組み合わせ、入力電圧の段数倍の直流高電圧を出力するようにした多段倍電圧整流手段と、を備え、前記多段倍電圧整流手段の倍電圧整流回路は、前記重畳電圧生成動作制御手段から出力される重畳電圧生成用交流の波高値の2倍程度以上の耐圧性を有するディスクリート部品で構成し、前記点火コイルと同一のケース内へ前記多段倍電圧整流手段を収納し、前記多段倍電圧整流手段から出力される直流高電圧を、前記点火コイルの二次コイルに誘起する高電圧と同極性で重畳し、点火プラグに印加することにより重ね放電を行わせ、前記多段倍電圧整流手段により重畳された重ね電流値を検出すると共に、予め設定された重ね電流設定値と実際に検出された重ね電流検出値とを比較し、重ね電流検出値が重ね電流設定値よりも低い場合には出力増加指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ出力し、重ね電流検出値が重ね電流設定値よりも高い場合には出力低減指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ出力するフィードバック制御手段を設け、前記フィードバック制御手段からの出力増加指示信号または出力低減指示信号に基づいて、前記重畳電圧生成動作制御手段が多段倍電圧整流手段へ出力する電力を調整することで、多段倍電圧整流手段から出力される直流高電圧を増減させ、重ね電流検出値を重ね電流設定値へ近づけるフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の重ね放電型内燃機関用点火装置において、前記重畳電圧生成動作制御手段は、前記フィードバック制御手段から出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号を受ける毎に、予め定めた規定量だけ出力を増減させるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項1に記載の重ね放電型内燃機関用点火装置において、前記フィードバック制御手段は、重ね電流検出値と重ね電流設定値との差に応じて出力増減量を決定すると共に、決定した出力増減量を含む出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ送信し、前記重畳電圧生成動作制御手段は、フィードバック制御手段からの出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号に応じて、出力する電力を増減するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の重ね放電型内燃機関用点火装置において、前記重畳電圧生成動作制御手段は、生成する重畳電圧生成用交流の波高値を変化させることで、多段倍電圧整流手段へ出力する電力を調整するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に係る発明は、前記請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の重ね放電型内燃機関用点火装置において、前記重畳電圧生成動作制御手段は、矩形波交流のON/OFFデューテー比を変化させるPWM制御によって、多段倍電圧整流手段へ出力する電力を調整するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、多段倍電圧整流手段を構成する各倍電圧整流回路に用いるダイオードおよびコンデンサの耐圧は重畳電圧生成用交流出力の2倍程度で十分であるから、多段倍電圧整流手段の倍電圧整流回路は、重畳電圧生成用交流の波高値の2倍程度以上の耐圧性を有するディスクリート部品で構成でき、従来の重ね放電型内燃機関用点火装置の充放電用コンデンサの様な大容量のものは必要ない。また、倍電圧整流回路を構成するディスクリート部品は耐ノイズ性も高いので、点火コイルと同一のケース内へ多段倍電圧整流手段を収納でき、点火コイルと多段倍電圧整流手段をケース内の短い高圧配線で接続できる。これらのことから、コスト抑制および部品の小型化が可能になり、無理なく狭小な車載スペースへ設置できる。しかも、フィードバック制御手段によるフィードバック制御により、実際に重畳する直流高電圧を増減させて、安定した放電を行うのに必要十分な重ね電流の供給を維持できる。
【0015】
また、請求項2に係る発明によれば、前記重畳電圧生成動作制御手段は、前記フィードバック制御手段から出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号を受ける毎に、予め定めた規定量だけ出力を増減させるようにしたので、フィードバック制御手段を比較的簡易に構成できる。
【0016】
また、請求項3に係る発明によれば、前記フィードバック制御手段は、重ね電流検出値と重ね電流設定値との差に応じて出力増減量を決定すると共に、決定した出力増減量を含む出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ送信し、前記重畳電圧生成動作制御手段は、フィードバック制御手段からの出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号に応じて、出力する電力を増減するようにしたので、急激に生じた重ね電流検出値の変化に対しても迅速に対応できる。
【0017】
また、請求項4に係る発明によれば、前記重畳電圧生成動作制御手段は、生成する重畳電圧生成用交流の波高値を変化させることで、多段倍電圧整流手段へ出力する電力を調整するようにしたので、交流生成用の昇圧機能を使って出力低減もしくは出力増加に対応できる。
【0018】
また、請求項5に係る発明によれば、前記重畳電圧生成動作制御手段は、矩形波交流のON/OFFデューテー比を変化させるPWM制御によって、多段倍電圧整流手段へ出力する電力を調整するようにしたので、所定波高値の矩形波交流を使って出力低減もしくは主流直増加に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態として示す重ね放電型内燃機関用点火装置の概略構成図である。
図2図1の重ね放電型内燃機関用点火装置における点火時の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る重ね放電型内燃機関用点火装置の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る重ね放電型内燃機関用点火装置を車両のエンジン点火装置に適用した一実施形態の概略構成を示すもので、点火コイル1(例えば、一次コイル1a、二次コイル1b、鉄心1c、スイッチング素子1dより成る)によって、点火プラグ2の放電間隙gに火花放電を起こし、図示を省略した車両エンジンの燃焼室の混合気に点火するものである。
【0022】
例えば、エンジン制御装置(ECU)からの点火信号により、点火コイル1のスイッチング素子1dがONになることで、図示を省略した車載バッテリーから直流電圧VBが供給されている一次コイル1aに電流が流れ、その後、点火信号のパルス立ち下がりでスイッチング素子1dがオフとなり、一次コイル1aの電流を遮断し、二次コイル1bに誘起される高電圧によって点火プラグ2の放電間隙間gに火花放電を起こす。
【0023】
しかして、本実施形態に係る重ね放電型内燃機関用点火装置においては、上記二次コイル1bに誘起される高電圧に重畳する電圧を生成するため、「点火信号に基づく二次コイルの高電圧誘起のタイミングで、所要電圧・所要周波数の重畳電圧生成用交流を出力すると共に、外部よりの指示に基づいて出力する電力を増減可能な重畳電圧生成動作制御手段」としてのDC−AC昇圧回路3から重畳電圧生成用交流(例えば、AC200V)を「重畳電圧生成動作制御手段から供給される重畳電圧生成用交流の周期内で作動する倍電圧整流回路を多段に組み合わせ、入力電圧の段数倍の直流高電圧を出力するようにした多段倍電圧整流手段」としての多段倍電圧整流回路4へ供給し、多段倍電圧整流回路4から直流高電圧(例えば、DC1.2kV)を出力させ、この直流高電圧を二次コイル1bの誘起電圧に重畳することで、点火プラグ2に生じさせる放電電流の大きさや放電時間を調整するのである。なお、二次コイル1bと接地点の間には、二次コイル1b側がアノード、接地側がカソードとなるように高圧ダイオード5を設けてあり、多段倍電圧整流回路4から出力される直流高電圧のプラス側を高圧ダイオード5のカソード側に、マイナス側を高圧ダイオード5のアノード側に接続することで、二次コイル1bに誘起する高電圧と同極性で重畳するようにした。
【0024】
上記DC−AC昇圧回路3は、点火信号によって点火コイル1のスイッチング素子1dがオフになるタイミング(例えば、点火信号のパルス立ち下がりの検出タイミング)で動作を開始し、所定の重ね時間経過後にタイマ等で動作を停止するものでも良いが、内燃機関の燃焼特性に応じた重ね時間に調整することが容易なように、「重畳電圧生成動作制御手段の駆動時間を任意に制御できる重ね時間制御手段」としての重ね時間制御回路6を設け、この重ね時間制御回路6に対する設定により、重ね時間(DC−AC昇圧回路3から重畳電圧生成用交流を出力させる時間)を任意に変化させることが出来るようにした。
【0025】
また、点火プラグ2の放電経路適所(例えば、高圧ダイオード5と接地点との間)に電流検出用抵抗7を設け、実際に流れた放電電流を重ね電流検出・比較回路8にて検出できるようにする。この重ね電流検出・比較回路8は、外部から入力される重ね電流設定信号に基づいて重ね電流設定値を記憶しておくことができ、「多段倍電圧整流手段により重畳された重ね電流値を検出すると共に、予め設定された重ね電流設定値と実際に検出された重ね電流検出値とを比較し、重ね電流検出値が重ね電流設定値よりも低い場合には出力増加指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ出力し、重ね電流検出値が重ね電流設定値よりも高い場合には出力低減指示信号を前記重畳電圧生成動作制御手段へ出力するフィードバック制御手段」として機能する。
【0026】
すなわち、重ね電流検出・比較回路8からの出力増加指示信号または出力低減指示信号に基づいて、DC−AC昇圧回路3が多段倍電圧整流回路4へ出力する電力(重畳電圧生成用交流の波高値)を調整(例えば、AC200Vを基準値として、±αVの範囲で増減)することで、多段倍電圧整流回路4から出力される直流高電圧を増減(例えば、1200−6αV〜1200+6αkVの範囲で増減)させ、重ね電流検出値を重ね電流設定値へ近づけるフィードバック制御を行うのである。
【0027】
なお、重ね電流検出・比較回路8が検出する放電電流には、二次コイル1bに誘起する高電圧に基づくスパイク状の放電電流も含んでいるので、例えば、放電電流の検出タイミングから所定時間経過後に検出される電流値を重ね電流検出値として取り込み、重ね電流設定値との比較に用いるようにすれば良い。
【0028】
ここで、図2の動作波形を参照しつつ、本実施形態に係る重ね放電型内燃機関用点火装置の各部動作を説明する。
【0029】
先ず、点火信号として所定幅のパルスが点火コイル1に入力されると、パルス立ち上がりによってスイッチング素子1dがONとなり、一次コイル1aに一次電流が流れ始めるが、点火信号のパルス立ち下がりによってスイッチング素子1dがオフになると、一次コイル1aに電流が流れなくなるため、点火コイル1の二次コイル1bには瞬時的に大きな二次電圧が誘起される。
【0030】
上記のように、二次コイル1bに二次電圧が誘起されるタイミング(点火信号のパルス立ち下がりのタイミング)で重ね時間制御回路6がDC−AC昇圧回路3へ出力する重ね時間制御信号をONにし(例えば、信号レベルをLからHに変更し)、DC−AC昇圧回路3による重畳電圧生成用交流の出力を開始させる。DC−AC昇圧回路3は、重ね時間制御回路6からの重ね時間制御信号がOFFになる(信号レベルがHからLに変わる)まで重畳電圧生成用交流の出力を続けるので、その間継続して多段倍電圧整流回路4から直流高電圧が出力されることとなる。
【0031】
なお、DC−AC昇圧回路3は、車載バッテリーの直流電圧VB(例えば、DC12V)をAC200Vにして出力するものを例示したが、これに限定されるものではなく、重畳電圧生成用交流の電圧値は任意に設定して構わない。
【0032】
上記のように構成したDC−AC昇圧回路3からの重畳電圧生成用交流を受ける多段倍電圧整流回路4は、入力された交流の尖頭値の2倍の直流電圧を出力する倍電圧整流回路を3段としたもので、AC200Vの入力に対して6倍圧となるDC1.2kVの直流高電圧を得ることができる。
【0033】
なお、多段倍電圧整流回路4に用いる倍電圧整流回路は既知のもので良く、図1に示す3段倍電圧整流回路においては、ダイオードD1によりキャパシタC1に充電し、ダイオードD2によりキャパシタC2に充電し、以下同様にしてダイオードD3、ダイオードD4,ダイオードD5,ダイオードD6によりキャパシタC3,キャパシタC4,キャパシタC5,キャパシタC6に充電された結果、直列に接続されているキャパシタC2,キャパシタC4,キャパシタC6は、それぞれ入力尖頭値のおよそ2倍に充電されるので、6倍圧(キャパシタの充電電圧×2×段数)の直流を得ることができる。
【0034】
すなわち、図1に示すような多段倍電圧整流回路4を用いて直流高電圧を取得する場合、各倍電圧整流回路のダイオードD1〜D6およびキャパシタC1〜C6の耐圧は、何れも重畳電圧生成用交流の電圧値の2倍以上あれば問題ないので、従来の重ね放電型内燃機関用点火装置の充放電用コンデンサの様な大容量は必要なく、部品の小型化およびコスト低減が可能になる。なお、多段倍電圧整流回路4は3段のものに限定されず、2段あるいは4段以上でも構わない。
【0035】
上記のようにして多段倍電圧整流回路4から得られるDC1.2kVの直流高電圧は、重ね時間制御回路6の重ね時間制御信号がOFFになる(信号レベルがHからLに変わる)まで継続して出力される。但し、多段倍電圧整流回路4から得られた直流高電圧を二次コイル1bに誘起される高電圧に重畳するとき、二次コイル1bに誘起される高電圧と同極性で重畳する必要があるため、放電電極への重畳電圧は、多段倍電圧整流回路出力の反転波形となる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る重ね放電型内燃機関用点火装置においては、多段倍電圧整流回路4から出力される直流高電圧を点火コイル1の二次コイル1bに誘起する高電圧と同極性で重畳することで、点火プラグ2の放電波形は、図2に示すように、点火初期の大電流が流れた後も、多段倍電圧整流回路4からの直流高電圧が重畳されていることで、重ね時間制御回路6により制御される重ね時間が経過するまで点火プラグ2の放電が継続し、重ね電流設定値に等しい重ね電流が流れ続ける。
【0037】
しかも、本実施形態に係る重ね放電型内燃機関用点火装置においては、重畳電圧生成用交流を出力するDC−AC昇圧回路3と、この重畳電圧生成用交流を受けて直流高電圧を生成する多段倍電圧整流回路4とを用いる構成としたので、重畳電圧生成動作制御手段としてのDC−AC昇圧回路3が出力する重畳電圧生成用交流の電圧値を高くしたり、或いは低くしたりすることにより、多段倍電圧整流手段としての多段倍電圧整流回路4より出力される電圧を高くしたり低くしたり調整できるので、混合気の状態に適した特性の放電を行えるような放電電流を流すことができる。
【0038】
さらに、重畳電圧生成動作制御手段としてのDC−AC昇圧回路3の駆動時間は、重ね時間制御手段としての重ね時間制御回路6によって任意に制御できるので、多段倍電圧整流回路4によって生成された直流高電圧の重ね時間を長くしたり、短くしたり、任意に変更でき、混合気の状態に適した特性の放電を行えるような重ね時間だけ放電電流を継続させることができる。
【0039】
加えて、DC−AC昇圧回路3による放電エネルギーの調整機能と、重ね時間制御回路6による重ね時間の調整機能を併せて使えば、重ね時間と重畳する放電エネルギーを任意に変更できるので、混合気の状態に最適な放電時間および最適な放電エネルギーを供給でき、必要以上の放電エネルギーが供給されて無駄な電力消費が続いたり、点火プラグ2の電極の消耗を早めてしまうといった問題を回避できる。
【0040】
また、多段倍電圧整流回路4は、小型の部品で構成することが出来るので、点火コイル1と同一のケース内へ収納することが容易である。しかも、多段倍電圧整流回路4と高圧ダイオード5を点火コイル1と同一のケース内へ収納しておけば、多段倍電圧整流回路4からの高電圧供給線をケース内に納めることができ、直流高電圧線の引き回しが不要になって高耐圧の配線材料や配線スペースの確保も不要になる。
【0041】
なお、重ね放電型内燃機関用点火装置の設計上は、AC200Vの重畳電圧生成用交流をDC−AC昇圧回路3から多段倍電圧整流回路4へ供給することで多段倍電圧整流回路4から出力されるDC1.2kVを放電電極へ重畳すると、重ね電流設定値にほぼ等しい重ね電流が検出されるはずであるが、回路上の器差やパーツの経年劣化等に起因して重ね電流設定値と同一とはみなせない程に検出電圧が低かったり、高かったりする可能性もある。このように、DC−AC昇圧回路3から基準となる重畳電圧生成用交流を多段倍電圧整流回路4へ供給しても重ね電流検出値が重ね電流設定値と一致しない場合(例えば、予め定めた許容誤差を超える差が生じていた場合)には、重ね電流検出・比較回路8がこれを検知し、フィードバック制御を行うことで、重ね電流検出値を重ね電流設定値へ近づけるのである。
【0042】
このフィードバック制御の一例を具体的に説明すると、重ね電流検出・比較回路が重ね電流検出値と重ね電流設定値を比較した結果、重ね電流検出値の絶対値が重ね電流設定値の絶対値よりも小さかった場合、重ね電流検出・比較回路8がDC−AC昇圧回路3へ出力増加指示信号を出力し、これを受けたDC−AC昇圧回路3は、予め定めた規定量(例えば、1V)だけ重畳電圧生成用交流の波高値を高くし、多段倍電圧整流回路4の出力電圧を増加(例えば、加算電圧の6倍となる約6Vだけ増加)させ、放電電極への重畳電圧を高めて重ね電流を増加させる。これによって増加した重ね電流を重ね電流検出・比較回路8が検出・比較し、未だ重ね電流検出値が重ね電流設定値に満たない場合には、重ね電流検出・比較回路8が出力増加指示信号をDC−AC昇圧回路3へ出力して重畳電圧生成用交流の波高値を更に微増させる。重ね電流検出値と重ね電流設定値とが一致すれば、重ね電流検出・比較回路8からDC−AC昇圧回路3へ出力増加指示信号が出力されることはないため、DC−AC昇圧回路3から出力される重畳電圧生成用交流の波高値はそのまま保持されるので、多段倍電圧整流回路4から放電電極への重畳電圧もそのまま保持され、重ね電流設定値と一致した重ね電流が保持される。
【0043】
逆に、重ね電流検出・比較回路が重ね電流検出値と重ね電流設定値を比較した結果、重ね電流検出値の絶対値が重ね電流設定値の絶対値よりも大きかった場合、重ね電流検出・比較回路8がDC−AC昇圧回路3へ出力低減指示信号を出力し、これを受けたDC−AC昇圧回路3は、予め定めた規定量(例えば、1V)だけ重畳電圧生成用交流の波高値を低くし、多段倍電圧整流回路4の出力電圧を低減(例えば、加算電圧の6倍となる約6Vだけ低減)させ、放電電極への重畳電圧を下げて重ね電流を低減させる。これによって低減された重ね電流を重ね電流検出・比較回路8が検出・比較し、未だ重ね電流検出値が重ね電流設定値を上回っていた場合には、重ね電流検出・比較回路8が出力低減指示信号をDC−AC昇圧回路3へ出力して重畳電圧生成用交流の波高値を更に微減させる。重ね電流検出値と重ね電流設定値とが一致すれば、重ね電流検出・比較回路8からDC−AC昇圧回路3へ出力低減指示信号が出力されることはないため、DC−AC昇圧回路3から出力される重畳電圧生成用交流の波高値はそのまま保持されるので、多段倍電圧整流回路4から放電電極への重畳電圧もそのまま保持され、重ね電流設定値と一致した重ね電流が保持される。
【0044】
なお、重ね電流検出・比較回路8によるフィードバック制御の基準となる重ね電流設定値は、外部から重ね電流設定信号を入力することで任意に設定変更できるようにしたので、重ね放電型内燃機関用点火装置が適用されるエンジンの特性に応じた最適の重ね電流値を設定できるので、装置としての汎用性を高められる。
【0045】
また、重ね電流検出・比較回路8とDC−AC昇圧回路3とで実現されるフィードバック制御は、上述した手法に限らず、公知既存の手法を適宜に使用して構わない。例えば、重ね電流設定値と重ね電流検出値との差分と、この差分を埋めるためにDC−AC昇圧回路3に指示する出力増減値とを対応付けた対応表あるいは演算式を重ね電流検出・比較回路8に記憶させておき、この対応表あるいは演算式から決定した出力増減量を含む信号(出力増加指示信号もしくは出力低減指示信号)を重ね電流検出・比較回路8からDC−AC昇圧回路3へ送信し、これを受けたDC−AC昇圧回路3が指示情報に基づいて重畳電圧生成用交流の波高値を変化させ、多段倍電圧整流回路4から放電電極への充電電圧を一気に増減させることで、迅速に重ね電流を設定値へ近づけるようにしても構わない。
【0046】
さらに、上述した重ね放電型内燃機関用点火装置の実施形態においては、DC−AC昇圧回路3から供給する重畳電圧生成用交流の波高値を変化させることで多段倍電圧整流回路4への供給電力を変化させ、多段倍電圧整流回路4の各キャパシタC1〜C6の充電電圧を増減させて、放電電極への重畳電圧を増減するものとしたが、放電電極への充電電圧を増減させる手法は、これに限定されるものではない。
【0047】
例えは、DC−AC昇圧回路3内にPWM制御手段3a(チョッパ回路やインバータ回路で構成)を設けておき、重畳電圧生成用交流としての矩形波のON/OFFデューティー比を変化させることで、多段倍電圧整流回路4への供給電力を変化させるようにしても良い。PWM制御手段3aにより重畳電圧生成用交流(矩形波)のONデューティー時間を変更すると、多段倍電圧整流回路4に入力される矩形波の波高値は変わらないものの、ON/OFFデューティー比に応じて各キャパシタC1〜C6の充電電圧が増減するので、多段倍電圧整流回路4から得られる直流電圧を調整することができる。
【0048】
なお、PWM制御手段3aは、DC−AC昇圧回路3の一機能として含ませず、DC−AC昇圧回路3の出力側に独立したチョッパ回路等として設けるようにしても構わない。斯くする場合は、重ね電流検出・比較回路8からの増減指示をPWM制御手段3aへ供給するものとし、この指示に基づいてPWM制御手段3aがDC−AC昇圧回路3により生成された所定波高値(例えば、200V)の矩形波に対するON/OFFデューティー比を変化させる制御を行うことで、PWM制御手段3aから重畳電圧生成用交流が出力されることとなる。
【0049】
以上、本発明に係る重ね放電型内燃機関用点火装置の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 点火コイル
1a 一次コイル
1b 二次コイル
1c 鉄心
1d スイッチング素子
2 点火プラグ
g 放電間隙
3 DC−AC昇圧回路
3a PWM制御手段
4 多段倍電圧整流回路
5 高圧ダイオード
6 重ね時間制御回路
7 電流検出用抵抗
8 重ね電流検出・比較回路
図1
図2