特許第6041089号(P6041089)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041089
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】畳の調湿敷設構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   E04F15/02 102L
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-96315(P2012-96315)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-224524(P2013-224524A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】305038669
【氏名又は名称】エコ・もの・ファーム有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398040963
【氏名又は名称】株式会社岡田本店
(74)【代理人】
【識別番号】100098198
【弁理士】
【氏名又は名称】旦 武尚
(72)【発明者】
【氏名】落合 伸光
(72)【発明者】
【氏名】岡田 暁夫
【審査官】 小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−014380(JP,U)
【文献】 実開平05−062633(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/02
E04F 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の稜線部と谷線部とを交互平行かつ等高に多列形成した多孔波板を用意し、この多孔波板における前記各稜線部に非伸縮性の通気不織布を重合して張設固着することで、通常の畳下荷重を受けた多列の各稜線部同士の拡がりを前記通気不織布で阻止した波状多孔通気材となし、この通気材を床面と畳裏面との間に介在させて畳を敷設することで、この畳の裏面と床面との間に前記波状多孔通気材が保有する全方向通気空間を形成したことを特徴とする畳の調湿敷設構造。
【請求項2】
多数の稜線部と谷線部とを交互平行かつ等高に多列形成した多孔波板を用意し、この多孔波板における前記各稜線部に非伸縮性の通気不織布を重合して張設固着することで、通常の畳下荷重を受けた多列の各稜線部同士の拡がりを前記通気不織布で阻止した波状多孔通気材となし、この通気材を床面と畳裏面との間に介在させて前記通気不織布上に畳を敷設することで、この畳の裏面と床面との間に前記波状多孔通気材が保有する全方向通気空間を形成したことを特徴とする畳の調湿敷設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通常の畳下荷重に耐える全方向に通気可能な波状多孔通気材を敷設床面と畳裏面との間に介在して畳を敷設することで、畳自体が保有する吸湿・放湿効果を最大限に発揮させ、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境の湿気対策にも充分対処できる畳の調湿敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、住宅の高気密化が進み、畳を敷く床面がベニヤ合板を隙間無く敷き詰めたり、コンクリ打ち放し床や、モルタル仕上げ床等の密閉構造の床面が多くなり、これら各床面に畳をそのまま敷設した場合、梅雨時などには、床面に極く近い畳裏面や裏縁部分は、湿気を帯び易く、一端湿気を帯びると、この湿気放散に困難を極め、カビの発生原因となり、極めて不衛生であるし、多少ではあるが悪臭の原因にもなる。
【0003】
このため、従来、特開平10−61048号公報(特許文献1)記載のように、畳裏面と平行な凹部空間を作るスペーサパネルと称する通気構造体を密閉床面と畳裏面との間に介在させて畳を密閉床面に敷設した畳の敷設構造が周知である。
【0004】
上記特許文献1における肝心なスペーサパネルは、上記公報中の請求項1記載のように、空間を構成する壁面内側に対する結露対策を主眼とした通気構造体だから、その唯一の実施形態として、上記従来公報中、段落(0024)で、公報図面の図2と共に説明しているように、パネルの両面にその全面に亘って各所に凸部を突設することで、各凸部間の領域をパネル面と畳裏面に平行した少なくとも一方向に連通させて凹部空間とした通気構造体と称するスペーサパネルである。
【0005】
したがって、この従来のスペーサパネルには、特許文献1の何処を見てもパネルの厚さ方向に湿気を逃がす通気孔が一切無いから、このスペーサパネルを密閉床面または通気床面と畳裏面との間に介在使用した場合、パネル下面と床面との間における折角の凹部空間が畳裏面に対しては、全部無駄になるという根源的で切実な問題点が有る。
【0006】
また、上記スペーサパネルには通気孔が全く無いから、畳裏面下の凹部空間に生じた湿気は、畳の厚さ方向には抜けず、畳が保有する折角の吸湿・放湿作用を上記パネル自体で大きく阻害してしまい、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境における密閉床面には、到底対処できないという根源的で切実な問題点が有る。
【0007】
このため、前記特許文献1では、その苦肉の策として、文献1の請求項2に記載のように、畳下に敷設したスペーサパネルの畳裏面に平行な前記凹部空間を畳の外縁に沿った和室の回し縁や敷居等の建物構造体に明けた孔に連通させることで、上記凹部空間に生じた湿気や臭気を畳裏面に平行に上記建物構造体の各孔方向に流出させ、これら各孔を経て畳の外縁付近から室内に放散させるとしている。
【0008】
ところが、上記文献1における湿気対策では、和室の回し縁や敷居等の一目で分かる建物構造体部分に多数の通気孔を開ける事態となって建物建築途上の障害となるし、室内の見栄えを悪くすると共に、上記通気孔はゴミ等で目詰まりし易く、湿気放散作用を阻害したり、さらに、室内の見栄えが悪くなるという根源的で切実な問題点が有る。
【0009】
そもそも、この従来例特許文献1には、例えば畳表上に置いた直径約10cm程度の硬質円盤上における約100Kg程度の重錘荷重に対応した畳上居住者の体重や家具重量等による畳下床面に通常加わる畳下荷重(以下、前記通常の畳下荷重という)を受けたスペーサパネルの説明およびパネル材質と厚さ、パネル凸部の直径・突出高さとか、その突設間隔等のスペーサパネル自体の作り方の記載も全く無く、示唆すらも無い。
【0010】
そこで上記文献1の段落(0032)の説明に基づき、文献1の図面中、図3の側面図における畳の厚さ寸法を基準として、文献1における畳の厚さを割り出すと、畳厚は現用一般の畳厚60mmの半分の30mm程度となり、パネル厚さは2〜3mm程度と薄いパネルとなる。
【0011】
さらに、上記畳の厚さを基準として、前記パネル両面の各凸部の高さを割り出すと、これら各凸部の高さは、それぞれ前記畳厚の半分程度の15mm程度で中空半球形のスポット状であり、その突設間隔は、上記畳厚の3倍程度の90mm程度ずつ離れており、疎らな突設間隔であることは推測できるが、スペーサパネル自体の材質や肝心な作り方とか、スペーサパネル上の荷重に関する記載等は、一切不明で示唆すらも無い。
【0012】
しかも、前記特許文献1におけるスペーサパネルは、文献1の請求項1記載のように、空間を構成する壁面部に内装する湿気対策用のスペーサパネルを主眼としているから、前記通常の畳下荷重よりも著しく小さい側面加圧力に耐えるだけの材質と厚さでよく、このパネルを文献1の請求項2記載のように、床面と畳裏面との間に介在使用する場合のパネル強度の具体例の記載も全く無く、一切不明で示唆すらも無い。
【0013】
したがって、上記請求項1記載のスペーサパネルをそのまま文献1の請求項2記載のように床面と畳裏面との間に介在使用した場合、スペーサパネル両面の上記スポット状半球中空凸部が、前記通常の畳下荷重に到底耐えきれず、各中空凸部が潰れてしまい、最早通気部材としての作用が無くなると共に、畳が部分的に大きく撓み凹んでしまい、使い物にならなくなるという根源的で切実な問題点が有る。
【0014】
上記の問題点を除去すべく、スペーサパネルを特許文献1の請求項2と、公報図3のように、畳下に敷設可能な程度に硬い材質の前記の薄いプラスチック板とすれば、前記通常の畳下荷重でも、この荷重を受けた凸部直下のパネル部分が荷重に耐えきれず、割れて破損してしまうし、この破損を防ぐべく、上記凸部の数を増やせば、この増やした凸部の分だけ肝心な凹部空間が減少してしまうという互いに相容れない大きな問題点が生じる。
【0015】
このため、上記事故を避けるべく、スペーサパネルを金属や強化プラスチック製として、薄くても割れないように作れば、前記疎らな突設間隔のスポット状凸部間のパネル自体が、今度は、畳と共に部分的に撓み凹む結果となり、人が歩く度毎に畳が沈み込むような違和感が生じたり、箪笥脇の畳が凹んでしまうし、この問題点を除去すべく、上記凸部の数を増やせば、前述したように肝心な凹部空間が減少するという、前記と同様な互いに相容れない大きな問題点が生じる。
【0016】
さらに、前記各問題点も避けるべく、スペーサパネルを前記通常の畳下荷重で割れず、撓まない強固なパネルとするには、パネルを金属または強化プラスチックで分厚く頑丈に作る必要があるため、今度は、パネル自体が大重量になってしまい、その成形製造・金型管理・梱包保管・運搬流通・販売購入・開梱敷設・保守点検などのすべての面で扱い辛く不便で面倒となるし、高価にもなるという根源的で切実な問題点が生じる。
【0017】
また、前記通常の畳下荷重では破損せず撓まないスペーサパネルでは、上記の問題点のほかに、前記疎らな突設間隔のスポット状各凸部が今度は、その半球状頂部から畳裏面に潜り込み易く、この潜り込み寸法だけ畳裏面とスペーサパネル上面との間隔が狭くなり、この狭くなった寸法だけ、通気性が悪くなってしまうし、畳の敷設高さが上記潜り込み寸法だけ部分的に凹むので、この凹みを無くするために上記凸部の数を増やせば、肝心な凹部空間が減少するという、前記と同様な互いに相容れない大きな問題点が生じる。
【0018】
以上の特許文献1とは別に,特開2002−47784号公報(特許文献2)記載の畳床の施工方法も従来周知である。この従来例は、床面に接する下面を連続した凹凸構造に加工した一定の厚みの通気性が無い合成樹脂発泡体製の厚さ調整材を用意し、段落(0010)のように、厚さ調整材の凸部を下面にして敷き詰め、厚さ調整材の平坦上面に20mm以下の薄畳の裏面に密着させて敷設使用するとしている。
【0019】
ところが、この特許文献2における厚さ調整材も、前記特許文献1におけるスペーサパネルと同様に、肉厚方向に湿気を抜くための通気孔が無く、しかも、厚さ調整材の平坦上面に畳の裏面を密着させて敷設する畳敷設施工方法だから、肝心な畳裏面下には通気空間が一切無いので、畳が保有する折角の吸湿・放湿作用を上記厚さ調整材自体の平坦面で大きく阻害してしまい、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境における密閉床面には、到底対処できないという本質的かつ、大きな問題点が有る。
【0020】
したがって、この従来例による畳床の施工方法では、畳裏面に平行または畳裏面から畳表に向けて湿気が全く抜けないので、この特許文献2では、その段落(0006)記載のように、臭いがひどいと考えられる場合には、合成樹脂発泡体に針で穴を開ければ効果的であるとの記載が有る。
【0021】
ところが、上記のような針穴程度の細い孔を通気性が無い分厚い合成樹脂発泡体に開けても、畳裏面には厚さ調整材の平坦面が密着していて畳裏面の下には通気空間が一切無いから、畳下の湿気放散に乏しいという根源的で切実な問題点が有り、この問題点を除去すべく、上記針穴を大きくしたり、針穴の数を多くすれば、その分だけ厚さ調整材の強度が弱くなり、前記通常の畳下荷重に耐えなくなり、使い物にならなくなる物も出てくるという互いに相容れない本質的かつ、大きな問題点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平10−61048号公報
【特許文献2】特開2002−47784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この発明は、前記各文献における多くの根源的な問題点を除去する畳の湿気対策として、畳自体が保有する吸湿・放湿効果を最大限に発揮させ、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境にも充分対処できる畳の調湿敷設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の第一の目的は、多数の稜線部と谷線部とを交互平行かつ等高に多列形成した硬質の多孔波板を用意し、この多孔波板における前記各稜線部に非伸縮性の通気不織布を重合して張設固着することで、前記通常の畳下荷重を受けた多数の各稜線部同士の拡がりを前記通気不織布で阻止した全方向に通気可能な波状多孔通気材となし、この通気材を床面と畳裏面との間に介在させて畳を敷設することで、この畳の裏面と床面との間に前記波状多孔通気材が保有する全方向通気空間を形成したことで達成できた。
【0025】
本発明の第二の目的は、多数の通気孔を有する熱可塑性硬質多孔板に多数の直線状稜線部と直線状谷線部とを交互平行かつ等高に多列形成して横断面ほぼ正弦波状の多孔波板を作り、この多孔波板における前記多数の稜線部に非伸縮性の通気不織布を重合張設して各稜線部同士を通気不織布で橋絡し、これら各橋絡部における稜線部と前記通気不織布とを加熱溶着して多数の各稜線部同士の拡がりを上記通気不織布で阻止することで、前記通常の畳下荷重を受けた多数の各稜線部同士の潰れ曲がりを前記不織布で阻止した全方向に通気可能な波状多孔通気材となし、この通気材を床面と畳裏面との間に介在して前記通気不織布上に畳を敷設することで、この畳の裏面と床面との間に前記波状多孔通気材が保有する全方向通気空間を形成したことで達成できた。
【発明の効果】
【0026】
密閉床面や通気床面に敷設した本発明による前記波状多孔通気材上に畳を敷設すると、多列の各稜線部と谷線部には、畳裏面から前記通常の畳下荷重が垂直に加わり、各稜線部と谷線部とで畳を支持できると共に、この支持力で各稜線部同士や谷線部同士とをそれぞれ離隔させる方向の拡開力が生じる結果、各稜線部と谷線部とは、それぞれ潰れ曲がる方向の押圧力を受ける。
【0027】
ところが、上記拡開力による稜線部同士や谷線部同士との拡開離隔は、前記多列の各稜線部同士間に張り渡して橋絡固着した非伸縮性の通気不織布の張力で確実に阻止でき、各稜線部同士および谷線部同士は妄りに離隔しないので、前記通常の畳下荷重を受けた各稜線部および谷線部の潰れ拡がりと撓み曲がりとをそれぞれ確実に阻止できた。
【0028】
したがって、前記多列の各稜線部と谷線部に前記通常の畳下荷重が掛かっても、多数の稜線部および谷線部が潰れず、撓まず、曲がらない本発明による波状多孔通気材は、畳下使用中でも、この通気材が保有する全方向通気空間を確実に維持でき、現用一般の畳が保有する吸湿・放湿効果を最大限に発揮させ、畳下の湿気を室内に放散できるから、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境にも充分対処可能になった。
【0029】
ただし、本発明による請求項2に記載した発明のように、床面に敷設した前記波状多孔通気材における非伸縮性通気不織布上に畳を敷設した場合は、前記多列の各稜線部間における不織布に対しても畳裏面の荷重による押圧力が加わるので、この不織布の張力が増加する結果となり、この増加した不織布張力でも畳裏面を僅かながら支持できる。
【0030】
この畳裏面支持と同時に上記増加した不織布の張力は、多列の各稜線部同士を互いに引き寄せる力となるので、前述したような各稜線部同士の拡開力を打ち消すことができ、各稜線部同士および谷線部同士の拡開離隔をより一層確実に阻止できるので、その潰れ拡がりと撓み曲がりとを一層確実に阻止できると共に、上記増加した不織布の張力で、多列の各稜線部に対する畳裏面の食い込みも一層減少できた。
【0031】
なお、本発明による前記波状多孔通気材の平面輪郭を敷設畳の平面輪郭に近似させれば、通常「サブロク板」と称する現用一般のベニヤ板サイズとなるので、その製造管理・梱包保管・運搬流通・販売購入・開梱使用・保守点検などのすべての面で扱い易くなり、価格的にも有利になる。
【0032】
また、本発明による前記波状多孔通気材は、その二枚の谷線部同士を互いに入れ込み、合接させて二枚ずつ重合すれば、谷線部を通気不織布上に載置して重合させた場合の高さのほぼ半分になり、運搬時等に嵩張らず便利となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この発明の実施形態の一例を示す拡大断面図
図2】この発明に用いる多孔板の一例を示す斜視図
図3】この発明に用いる波状多孔通気材の一例を示す斜視図
図4図3に示すものの部分的拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明による畳の調湿敷設構造の実施形態を要約すると、図2のように多数の通気孔1を有する多孔板2に図3図4のように多数の稜線部3と谷線部4とを交互平行かつ等高に多列形成して上記各図のような多孔波板5を作り、この多孔波板5における前記多列の各稜線部3に非伸縮性の通気不織布6を上記各図のように重合張設して橋絡固着することで、通常の畳下荷重を受けた多列の各稜線部3同士の拡がりを前記通気不織布6で阻止した上記各図のような波状多孔通気材9となし、この通気材9を図1のように床面10と畳裏面12との間に介在させて畳11を敷設することで、この畳11の裏面12と床面10との間に上記図1のような通気材9が保有する全方向通気空間13を形成できた。
【0035】
次に、この発明の具体例を図面と共に説明するが、以下の説明は、畳のサイズとして、幅が88cm程度・長さが176cm程度の現用一般サイズで、本発明による波状多孔通気材9と共に畳を床面に重合敷設した場合、その敷設高さが畳周辺の回し縁や敷居の高さと面一になるように、本発明に用いる畳の厚さは、畳厚約60mmの現用一般の畳よりも、上記通気材9の全高さ10mm程度を差し引いた50mm程度とした実施形態について述べる。
【0036】
本発明による上記波状多孔通気材9を作るに当たっては、先ず、ポリプロピレン等の熱可塑性硬質プラスチック素材を現用一般の加熱成形手段により、一辺が2mm程度の丸みを帯びた方形の通気孔1、または直径が2mm程度の円形の通気孔1を図1のように1mm程度のピッチで規則正しく全面に満遍なく形成した同図1のような厚さ1mm程度の熱可塑性多孔板2を用意する。
【0037】
次いで、上記多孔板2を現用一般の加熱型押し機械で、図2図3のような上下5mm程度ずつの高さ(上下全高さ10mm程度)の直線状稜線部3と直線状谷線部4との多数をそれぞれ前記通常の畳下荷重では上記稜線部3が畳裏面に潜り込まない程度の突設ピッチと形状、例えば10mm程度ずつの突設ピッチで交互平行かつ等高に上記各図のような横断面がほぼ正弦波状に加熱軟化成形後に冷却硬化して保形することで、すぺての方向に通気可能な波板全高さが10mm程度・厚さが0.5mm程度の多孔波板5を作る。
【0038】
その後、上記多孔波板5における前記多列の各稜線部3にそれぞれプラスチック繊維製不織布等の厚さ0.5〜1mm程度の分厚い感じで手触りがゴワゴワした感じの僅かな剛性を有する非伸縮性の通気不織布6を張り渡し、重合して各稜線部3同士を通気不織布6で橋絡し、この橋絡状態を保持する。
【0039】
次いで、上記橋絡部7における前記多数の稜線部3と通気不織布6とをそれぞれ現用一般の高周波溶着ミシンまたはヒートプレス溶着機械で加熱加圧することで、上記多列の各稜線部3と通気不織布6とをそれぞれ加熱溶融後における冷却固化溶着力で一挙に固着でき、この固着部8で多数の稜線部3同士間に一枚の通気不織布6を満遍なく強固に橋絡張着した畳の平面輪郭に近い本発明に用いる図2図3のような波状多孔通気材9を構成できた。
【0040】
本発明による前記波状多孔通気材9は、以上のような構成となしたので、この通気材9を図1のようなベニヤ合板を敷設施工した密閉床面10に敷設し、この通気材9の上に畳11を敷設すると、前記多列の各稜線部3と谷線部4には、畳裏面12から前記通常の畳下荷重が垂直に加わり、主として各稜線部3と谷線部4とで畳11を支持できると共に、この支持力で各稜線部3と谷線部4には、これら各稜線部3同士や谷線部4同士とをそれぞれ離隔させる方向の拡開力が生じる結果、各稜線部3と谷線部4とは、それぞれ潰れ曲がる方向の押圧力を受ける。
【0041】
ところが、上記拡開力による稜線部3同士や谷線部4同士との拡開離隔は、前記多列の各稜線部3同士間に図2図3のように張り渡して橋絡固着した非伸縮性の通気不織布6の張力で確実に阻止でき、各稜線部3同士および谷線部4同士は妄りに離隔しないので、前記通常の畳下荷重を受けた各稜線部3および谷線部4の潰れ拡がりと撓み曲がりとをそれぞれ確実に阻止できた。
【0042】
したがって、前記多列の各稜線部3と谷線部4に図1のような通常の畳下荷重が掛かっても、多数の稜線部3および谷線部4が潰れず、撓まず、曲がらない本発明による波状多孔通気材9は、上記図1のような畳下敷設使用中でも、この通気材が保有する全方向通気空間13を確実に維持でき、現用一般の畳11が保有する吸湿・放湿効果を最大限に発揮させ、畳下の湿気を室内に放散できるから、住宅の高気密化が進んだ現在の住環境にも充分対処可能になった。
【0043】
ただし、本発明による請求項2に記載した発明のように、床面に敷設した前記波状多孔通気材9における非伸縮性通気不織布6上に畳11を図1のように敷設した場合には、前記多列の各稜線部3同士間における不織布6に対しても畳裏面12の荷重による押圧力が加わるので、各稜線部3同士間の不織布6の張力が増加する結果となり、この張力が増加した不織布6でも通気材9と共に畳裏面12を支持できる。
【0044】
この畳裏面12支持と同時に上記増加した不織布6の張力は、多列の各稜線部3同士を互いに引き寄せる力となるので、前述したような各稜線部3同士の拡開力を打ち消すことができ、各稜線部3同士および谷線部4同士の拡開離隔をより一層確実に阻止できるので、その潰れ拡がりと撓み曲がりとを一層確実に阻止できると共に、上記増加した不織布6の張力で、多列の各稜線部3に対する畳裏面12の食い込みも一層減少できた。
【0045】
前記畳11にその厚さが60mm程度の現用一般の畳11を利用する場合には、建物和室等における回し縁の高さや敷居の高さを前記波状多孔通気材9の全高さ(10mm程度)分だけ高く築造すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明を実施できる床面は、前述したような密閉床面に限らず、木造一戸建て家屋等における現用一般の通気間隙を有する通気床面に対しても、本発明は当然に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1…通気孔
2…多孔板
3…稜線部
4…谷線部
5…多孔波板
6…通気不織布
7…橋絡部
8…固着部
9…波状多孔通気材
10…密閉床面(通気床面)
11…畳
12…畳裏面
13…全方向通気空間
図1
図2
図3
図4