特許第6041090号(P6041090)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041090
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】発光パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20161128BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161128BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/12 Z
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-96775(P2012-96775)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-225409(P2013-225409A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】山北 裕文
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩幹
(72)【発明者】
【氏名】益本 賢一
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−103068(JP,A)
【文献】 特開2010−153126(JP,A)
【文献】 特開2003−295776(JP,A)
【文献】 特開2007−240800(JP,A)
【文献】 特開2010−135685(JP,A)
【文献】 特開2005−038760(JP,A)
【文献】 特開2001−176661(JP,A)
【文献】 特開2006−116768(JP,A)
【文献】 特開2006−179885(JP,A)
【文献】 特開2007−012464(JP,A)
【文献】 特開2003−280547(JP,A)
【文献】 特開2004−087407(JP,A)
【文献】 米国特許第04818913(US,A)
【文献】 特開2012−048934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
H05B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光面を有する発光パネルの製造方法であって、
全面点灯された前記発光面中の輝度分布を測定する第1工程と、
前記発光面を複数の領域に区画し、前記輝度分布に応じて、前記複数の領域それぞれにエージング温度を設定する第2工程と、
前記発光パネルを発光させ、且つ、前記発光面の温度を調整する第3工程と、を有し、
前記第3工程において、前記複数の領域それぞれは、前記第2工程において設定された前記エージング温度に調整され、
前記複数の領域は、第1領域と、前記第1工程において前記第1領域よりも高い輝度が測定された第2領域と、を含み、
前記第2工程において前記第1領域に対して設定されたエージング温度は、前記第2領域に対して設定されたエージング温度よりも高いことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記発光パネルは、互いに異なる色相で発光する複数の発光素子を含み、
前記複数の発光素子は、第1色相で発光する第1発光素子と、該第1発光素子よりも高い発光効率で、且つ、第1色相とは異なる第2色相で発光する第2発光素子と、を含み、
前記第1工程において、第1発光素子を用いて、前記発光面は全面点灯されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1発光素子は、前記複数の発光素子の中で最も低い発光効率で発光することを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1発光素子は、青の色相で発光する有機EL素子であることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第3工程は、前記発光面中の輝度分布をモニターする段階と、
前記モニターされた輝度分布の幅と前記輝度分布の前記幅に対して定められた閾値とを比較する段階と、
前記輝度分布の前記幅が前記閾値以下であるならば、前記発光パネルの発光及び前記発光パネルに対する温度調整を停止する段階と、を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記輝度分布の前記幅が前記閾値を超えるならば、前記エージング温度を再設定する第4工程と、
該第4工程において再設定されたエージング温度の下で、前記発光面の温度を調整する第5工程と、を更に有することを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第3工程は、前記複数の領域それぞれを異なる温度に調整することができる温度調整面を有する温度調整装置を前記発光パネルに当接させる段階を含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程は、前記温度調整面を前記発光パネルに当接させ、前記複数の領域を加熱する段階を含むことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第3工程は、前記温度調整面を前記発光パネルに当接させ、前記複数の領域を冷却する段階を含むことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記温度調整面は、マトリクス状に配置された複数の温度調整セルによって形成され、
前記温度調整セルは、熱電変換素子を含み、
前記第3工程は、前記熱電変換素子を用いて、前記発光面の温度を調整する段階を含むことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記複数の温度調整セルは、前記発光パネルの局所的な温度を検出する少なくとも1つの温度検出セルを含み、
前記第3工程は、前記少なくとも1つの温度検出セルが検出した前記温度に応じて、前記発光面の温度を調整する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像光を出射する発光パネルを備える様々な表示装置が開発されている。発光パネルは、発光素子を用いて発光し、映像を表示する。有機EL(エレクトロルミネセンス)素子といった発光素子の発光効率は、温度に依存することが知られている。特許文献1は、発光素子の温度依存性を利用し、発光効率を制御する技術を開示する。
【0003】
発光素子の発光効率は、経時的に変化することも知られている。特許文献2は、発光効率の経時的な変化を低減させるためのエージング技術を開示する。
【0004】
特許文献2に開示されるエージング技術は、発光パネルの温度を用いて、発光パネルに対する加熱量を制御する。この結果、発光パネルは適切な温度環境下でエージング処理を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−251193号公報
【特許文献2】特開平1−189889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光素子を全面点灯させ、発光パネルをエージングする技術も知られている。この場合、映像を表示する表示面内において、位置的な温度のばらつきが生ずる。位置的な温度のばらつきは、エージングレベルのばらつきに帰結する。即ち、表示面内において、過度にエージングされた領域と不十分なエージング処理を受けた領域とが生ずることもある。
【0007】
以下に開示される例示的な実施形態にしたがって、エージングレベルの位置的なばらつきを緩和する技術が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に開示される例示的な実施形態は、発光面を有する発光パネルの製造方法に関する。製造方法は、全面点灯された前記発光面中の輝度分布を測定する第1工程と、前記発光面を複数の領域に区画し、前記輝度分布に応じて、前記複数の領域それぞれにエージング温度を設定する第2工程と、前記発光パネルを発光させ、且つ、前記発光面の温度を調整する第3工程と、を有し、前記第3工程において、前記複数の領域それぞれは、前記第2工程において設定されたエージング温度に調整されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以下に開示される例示的な実施形態にしたがう技術は、エージング処理中の発熱に起因する性能劣化をほとんど生じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発光パネルの概略的な平面図である。
図2図1に示される発光パネルの発光部の概略的な部分断面図である。
図3】エージング処理時における発光部中の温度分布を表す例示的な等温線図である。
図4図3に示される温度特性を有する発光部の発光層の輝度分布を表す例示的な等輝度線図である。
図5図1に示される発光パネルの概略的な断面図である。
図6図1に示される発光パネルの概略的な断面図である。
図7】輝度計がコンピュータに出力した輝度データを表す概略的な等輝度線図である。
図8】平均化処理後の輝度データの概略図である。
図9】コンピュータが分割領域に割り当てた温度データ値の概略図である。
図10】エージング処理中の温度調整に用いられる温度調整装置の概略的な斜視図である。
図11図10に示される温度調整装置によって温度調整される発光パネルの概略的な断面図である。
図12】第1実施形態に従う発光パネルの製造方法の概略的なフローチャートである。
図13】第2実施形態に従う発光パネルの製造方法の概略的なフローチャートである。
図14図13に示されるステップS280において再設定された分割領域の概略図である。
図15図13に示されるステップS290において、コンピュータが分割領域に割り当てた温度データ値の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な発光パネルの製造方法が図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、発光パネルの製造方法の原理を容易に理解させることを目的とするものである。発光パネルの製造方法の原理はこれらに何ら限定されるものではない。
【0012】
<エージング処理に関する課題>
図1は、発光パネル500の概略的な平面図である。図1を用いて、発光パネル500が説明される。
【0013】
発光パネル500は、例えば、映像を表示するための略矩形の発光部510と、発光部510の四辺に沿って配置された回路基板520と、発光部510と回路基板520とを電気的に接続するためのフレキシブル基板530と、を備える。回路基板520は、発光部510を駆動するための駆動信号を生成する。駆動信号は、フレキシブル基板530を介して発光部510に入力される。発光部510は、駆動信号に従って発光し、映像を表示する。
【0014】
図2は、発光部510の概略的な部分断面図である。図1及び図2を用いて、発光部510が説明される。
【0015】
発光部510は、光を発する発光面551を規定する第1基板511と、第1基板511に対向する第2基板512と、を備える。第2基板512は、発光面551とは反対側の裏面552を規定する。第1基板511と第2基板512との間には、映像を表示するための様々な素子(後述される)が形成又は配置される。
【0016】
発光部510は、第2基板512上に形成されたTFT基板513と、TFT基板513を平坦化するための平坦化層514と、平坦化層514上に形成されたバンク部515と、を含む。バンク部515は、赤の色相で発光する表示画素(図2中、「表示画素(赤)」と表記されている)、緑の色相で発光する表示画素(図2中、「表示画素(緑)」と表記されている)及び青の色相で発光する表示画素(図2中、「表示画素(青)」と表記されている)の輪郭を規定する。
【0017】
発光部510は、表示画素それぞれに対応して配置された反射陽極516と、反射陽極516に対して略直交する方向に延びる透明陰極517と、を更に含む。反射陽極516は、バンク部515間において、平坦化層514上に形成される。透明陰極517は、第1基板511とバンク部515との間に形成される。回路基板520から駆動信号が出力されると、反射陽極516と透明陰極517との間に電圧が印加される。
【0018】
発光部510は、反射陽極516上に積層された正孔注入層518と、正孔注入層518上に積層された正孔輸送層519と、を更に含む。発光部510は、赤の色相で発光する表示画素に対応して形成された発光層540Rと、緑の色相で発光する表示画素に対応して形成された発光層540Gと、青の色相で発光する表示画素に対応して形成された発光層540Bと、を更に含む。発光層540R,540G,540Bは、それぞれ正孔輸送層519上に形成される。
【0019】
反射陽極516と透明陰極517との間に電圧が印加されると、発光層540R,540G,540B中に電流が流れる。発光層540R,540G,540Bは、電流の流れに応じて発光する有機EL素子から形成される。発光層540Rは、電流の流れに応じて赤の色相で発光する。発光層540Gは、電流の流れに応じて緑の色相で発光する。発光層540Bは、電流の流れに応じて青の色相で発光する。本実施形態において、発光層540R,540G,540Bは、互いに異なる色相で発光する複数の発光素子として例示される。発光層540Bは、第1発光素子として例示される。発光層540R又は発光層540Gは、第2発光素子として例示される。
【0020】
青の色相で発光する有機EL素子は、一般的に、赤や緑の色相で発光する有機EL素子よりも発光効率が低い(即ち、印加電圧に対する輝度が低い)。したがって、本実施形態において、発光層540Bは、他の発光層540R,540Gよりも低い発光効率を有する。
【0021】
発光部510は、発光層540R,540G,540B上に積層された電子輸送層541と、電子輸送層541と透明陰極517との間に形成された電子注入層542と、を含む。尚、図2を参照して説明された発光部510の詳細な構造は、本実施形態の原理を何ら限定するものではない。本実施形態の原理は、エージング処理を施与される他の発光パネルに対しても、好適に適用される。
【0022】
図3は、エージング処理時における発光部510中の温度分布を表す例示的な等温線図である。図1乃至図3を用いて、エージング処理時における発光部510中の温度分布が説明される。
【0023】
エージング処理時において、発光部510は、全面点灯される。即ち、発光層540R,540G,540Bが発光する。発光層540R,540G,540Bの厚さや発光層540R,540G,540Bに印加される実際の電圧の大きさは、位置的に必ずしも均一ではない。この結果、発光層540R,540G,540Bの発光に伴う発熱量は、発光部510内において、位置的に変動する。この結果、図3に示される等温線図のように、不均一な温度分布が発光部510内に発生する。図3において、発光部510の右上の領域は、高温になる一方で、左下の領域は低温になっている。したがって、図3の等温線図は、左下の領域から右上の領域に向けて増加する温度勾配を表す。
【0024】
エージング処理の期間を短縮するために、発光部510を加熱するための加熱装置が用いられることがある。加熱装置が、発光部510を加熱するならば、左下の領域は適切にエージングされる一方で、右上の領域は、過度にエージングされることもある。或いは、右上の領域は適切にエージングされる一方で、左下の領域は、不十分なエージングを受けることもある。本発明者は、以下に説明される知見に基づき、全面点灯によって生じた不均一な温度分布に起因するエージングレベルのばらつきを解消するための技術を案出した。
【0025】
<本発明者が見出した知見>
本発明者は、低い発光効率を有する発光層の輝度分布とエージング中の温度分布との間に高い相関関係があることを見出した。
【0026】
図4は、図3に示される温度特性を有する発光部510の発光層540Bの輝度分布を表す例示的な等輝度線図である。図2乃至図4を用いて、発光層540Bの輝度分布と発光部510中の温度分布との相関が説明される。
【0027】
本発明者は、発光部510の発光層540Bのみを点灯させ、輝度分布を測定した。この結果、図4に示される等輝度分布線図が得られた。図4の等輝度線図から、発光部510の右上の領域は、高い輝度で発光しているのに対し、左下の領域は、低い輝度で発光していることが分かる。図4の等輝度線図は、左下の領域から右上の領域に向けて増加する輝度勾配を表す。
【0028】
図3図4を対比すると、低輝度で発光している領域の温度は、低くなる傾向があることが分かる。また、高輝度で発光している領域の温度は高くなる傾向があることが分かる。
【0029】
本発明者は、上述の知見を用いて、以下の様々な実施形態を案出した。
【0030】
<第1実施形態>
図5は、発光パネル500の概略的な断面図である。図2及び図5を用いて、発光パネル500に対するエージング処理が説明される。
【0031】
発光パネル500に対するエージング処理のために、支持台100が用意される。発光パネル500は、支持台100上でエージング処理を受ける。
【0032】
支持台100は、台座部110と、台座部110から直立した脚部120と、脚部120上で構築された支持枠体130と、を備える。支持枠体130は、発光部510の周縁部を支持する内枠131と、内枠131を取り囲む外枠132と、を含む。回路基板520は、外枠132によって支持される。
【0033】
外枠132は、金属やカーボングラファイトシートといった高熱伝導性材料を用いて形成される。発光層540R,540G,540Bの発光を用いて、エージング処理が行われている間、回路基板520は、発熱する。回路基板520からの熱は、外枠132に効率的に伝達される。外枠132は、高い熱伝導率を有するので、回路基板520から伝達された熱は、外枠132に全体的に伝導される。この結果、外枠132は、効率的に放熱することができる。
【0034】
内枠131は、ガラス繊維、セメントやマイカといった断熱性に優れた材料から形成される。したがって、内枠131は、発光部510と外枠132との間での熱の流れの多くを遮断する。したがって、発光部510は、外枠132に伝達された熱に影響されにくくなる。
【0035】
図6は、発光パネル500の概略的な断面図である。図2及び図6を用いて、発光パネル500に対するエージング処理が更に説明される。
【0036】
支持台100上の発光パネル500の輝度分布を測定するための輝度計200及び輝度計200が取得した輝度データを処理するコンピュータ300が用意される。回路基板520は、発光層540Bを発光させるための駆動信号を、フレキシブル基板530を介して、発光部510に出力する。尚、このとき、発光層540R,540Gは、発光されない。
【0037】
回路基板520からの駆動信号の出力の結果、発光パネル500は、青の発光色で全面点灯する。回路基板520が生成した駆動信号は、発光部510の全体に亘って均一な輝度を、各発光層540Bに対して規定するが、輝度計200によって測定される実際の輝度は、位置的に変動する。
【0038】
図7は、輝度計200がコンピュータ300に出力した輝度データを表す概略的な等輝度線図である。図6及び図7を用いて、輝度データに対する処理が説明される。
【0039】
図6を参照して説明されたように、輝度計200は、青色の発光色で発光する発光パネル500の輝度分布に関する輝度データを取得する。輝度データは、輝度計200からコンピュータ300へ出力される。
【0040】
図7は、発光部510の発光領域ER中の輝度分布を表す。コンピュータ300は、発光領域ERを複数の分割領域DR1乃至DR16に区分する。コンピュータ300は、分割領域DR1乃至DR16に対して、輝度データを処理する。例えば、コンピュータ300は、分割領域DR1乃至DR16にそれぞれに対応する輝度データに対して、平均化処理を行ってもよい。発光領域ERに対する区分が細かくなれば、発光領域ER中の輝度分布が高い精度で再現される。この結果、エージングレベルは、高い精度で調整される。尚、発光領域の区分の細かさは、温度調整装置(後述される)の性能に応じて決定されてもよい。
【0041】
図8は、平均化処理後の輝度データの概略図である。図6乃至図8を用いて、輝度データが説明される。
【0042】
コンピュータ300は、分割領域DR1乃至DR16にそれぞれに対応する輝度データに対して、平均化処理を行う。図8に示される分割領域DR1乃至DR16には、算出された平均輝度B1乃至B16がそれぞれ示されている。コンピュータ300は、平均輝度B1乃至B16に基づき、分割領域DR1乃至DR16それぞれに対して、個別に温度データ値を割り当てる。
【0043】
図9は、コンピュータ300が分割領域DR1乃至DR16に割り当てた温度データ値の概略図である。図4図6乃至図9を用いて、温度データ値が説明される。
【0044】
コンピュータ300は、平均輝度B1乃至B16に基づき、分割領域DR1乃至DR16それぞれに対して、個別に温度データ値を割り当てる。分割領域DR1乃至DR16には、温度を表す温度データ値T1乃至T16がそれぞれ割り当てられている。
【0045】
図7に示される等輝度線図は、図4を参照して説明された等輝度線図と同一である。したがって、図8に示される分割領域DR4に対して算出された平均輝度B4は、分割領域DR13に対して算出された平均輝度B13よりも大きい。コンピュータ300は、高い平均輝度に対して、小さな温度データ値を設定する。したがって、コンピュータ300が分割領域DR4に対して割り当てた温度データ値T4は、分割領域DR13に対して割り当てられた温度データ値T13よりも小さい。コンピュータ300は、平均輝度と温度データ値との対応関係に関するデータ(例えば、ルックアップテーブル)を予め記憶していてもよい。代替的に、コンピュータ300は、平均輝度に応じて温度データ値を出力するための演算式を予め記憶していてもよい。本実施形態において、分割領域DR4は、第2領域として例示される。分割領域DR13は、第1領域として例示される。
【0046】
本実施形態において、コンピュータ300は、分割領域DR1乃至DR16に対して、温度データ値T1乃至T16を設定するために、輝度データに対して平均化処理を行っている。代替的に、他の演算処理に基づいて、温度データ値が設定されてもよい。例えば、分割領域内の輝度勾配に関するデータが温度データ値に設定のための演算に用いられてもよい。温度データ値の設定のための演算手法は、本実施形態の原理を何ら限定しない。
【0047】
図10は、エージング処理中の温度調整に用いられる温度調整装置400の概略的な斜視図である。図1図7及び図10を用いて、温度調整装置400が説明される。
【0048】
温度調整装置400は、複数のセル要素410を備える。セル要素410は、マトリクス状に配列され、略平坦な上面420を形成する。上面420は、発光部510の発光領域と略等しい面積を有する。
【0049】
セル要素410は、ペルチエ素子(図示せず)を用いて形成される。各セル要素410に対して供給される電流の極性が、個別に変更可能なように、温度調整装置400は形成される。したがって、上面420は、局所的に、昇温或いは冷却される。本実施形態において、セル要素410は、温度調整セルとして例示される。セル要素410によって形成された上面420は、温度調整面として例示される。セル要素410に用いられるペルチエ素子は、熱電変換素子として例示される。
【0050】
複数のセル要素410のうち一部は、ペルチエ素子に加えて、上面420に接触した物体の温度を測定するための温度センサ(図示せず)を備える。図10中において、温度センサを備えるセル要素は、符号「411」を用いて表記されている。セル要素411の配置密度は、図7を参照して説明された発光領域ERの区分の細かさに応じて定められてもよい。本実施形態において、セル要素411は、温度検出セルとして例示される。
【0051】
本実施形態において、複数のセル要素410のうち一部が温度センサ付のセル要素411である。代替的に、全てのセル要素410が、温度センサ付のセル要素411であってもよい。セル要素411の高い配設密度は、細かな温度調整に帰結する。
【0052】
図11は、温度調整装置400によって温度調整される発光パネル500の概略的な断面図である。図9乃至図11を用いて、エージング処理を使用される発光パネル500に対する温度調整処理が説明される。
【0053】
発光パネル500を温度調整するために、温度調整装置400及び温度調整装置400の各セル要素410に供給される電流の極性や大きさを制御するための制御盤430が用意される。制御盤430は、支持台100の台座部110上に設置される。温度調整装置400は、制御盤430上に設置される。このとき、温度調整装置400の上面420は、発光部510の裏面552に接触する。なお、本実施形態では、発光面の裏面552側に温度調整装置400を配置する構成としたが、同じ構成のパネルで、パネル内の温度分布がほぼ変わらないことが自明である等の理由でエージング中の輝度をモニターする必要がない場合は、発光面551側に温度調整装置400を配置する構成としてもよい。
【0054】
制御盤430は、コンピュータ300に電気的に接続される。コンピュータ300は、図9を参照して説明された温度データ値を制御盤430に出力する。制御盤430は、温度データ値に応じて、各セル要素410に供給される電流の極性や大きさを調整する。
【0055】
温度センサ付のセル要素411は、発光部510の局所的な温度を検出する。セル要素411が検出した温度に応じた検出信号は、制御盤430に出力される。制御盤430は、検出信号に応じて、各セル要素410に供給される電流の極性や大きさを調整する。かくして、制御盤430と温度調整装置400との間でのフィードバック制御が確立される。制御盤430と温度調整装置400との間のフィードバック制御の下、発光部510の発光面551の温度は適切に調整される。
【0056】
セル要素410は、供給される電流の極性に応じて、発光部510を加熱したり、冷却したりできる。したがって、発光部510の温度調整は、高い精度で行われる。各セル要素410の温度は、個別に調整されるので、分割領域DR1乃至DR16の温度は、異なる温度に設定される。この結果、発光部510の発光面551が、コンピュータ300によって分割領域DR1乃至DR16に対して割り当てられた温度データ値T1乃至T16となるように、温度調整装置400は、温度を調整することができる。本実施形態において、温度調整装置400は、発光部510を加熱及び冷却することができる。代替的に、温度調整装置として、発光部に対する加熱のみを行うヒータが用いられてもよい。或いは、温度調整装置として、発光部に対する冷却のみを行う冷却構造が用いられてもよい。
【0057】
図12は、発光パネル500の製造方法の概略的なフローチャートである。図2図5乃至図12を用いて、発光パネル500の製造方法が説明される。
【0058】
(ステップS110)
ステップS110において、図5を参照して説明された如く、支持台100上に発光パネル500が設置される。発光パネル500が支持台100上に設置された後、ステップS120が実行される。
【0059】
(ステップS120)
ステップS120において、図6を参照して説明された如く、発光層540Rのみを用いて、発光パネル500は全面点灯される。この間、輝度計200は、発光部510上に現れる輝度分布を測定する。輝度計200は、輝度分布に関するデータをコンピュータ300へ出力する。輝度計200からコンピュータ300へのデータの出力の後、ステップS130が実行される。本実施形態において、ステップS120は、第1工程として例示される。
【0060】
(ステップS130)
ステップS130において、図7を用いて説明された如く、コンピュータ300は、発光面551上に現れた発光領域を分割領域DR1乃至DR16に区画する。その後、コンピュータ300は、図8及び図9を用いて説明された如く、分割領域DR1乃至DR16それぞれに対して、温度データ値T1乃至T16を設定する。温度データ値T1乃至T16の設定の後、ステップS140が実行される。本実施形態において、ステップS130は、第2工程として例示される。分割領域DR1乃至DR16は、複数の領域として例示される。温度データ値T1乃至T16は、エージング温度として例示される。
【0061】
(ステップS140)
ステップS140において、回路基板520は、発光部510へ駆動信号を出力する。この結果、発光部510の発光層540R,540G,540Bは、発光する。発光パネル500は、発光層540R,540G,540Bを用いて、全面点灯するので、発光領域ER全体に亘って、エージング処理が進行する。
【0062】
図11を参照して説明された如く、温度調整装置400は、発光部510に当接される。発光部510の発光面551が、ステップS130において設定された温度となるように、発光パネル500の温度は、温度調整装置400によって調整される。ステップS140の間、輝度計200は、発光面551の輝度を測定する。測定された輝度に関するデータは、輝度計200からコンピュータ300へ出力される。本実施形態において、ステップS140は、第3工程として例示される。ステップS140の開始から所定期間が経過すると、ステップS150が実行される。
【0063】
(ステップS150)
ステップS150において、コンピュータ300は、発光面551の輝度が目標値に到達しているか否かを判定する。発光面551上の輝度が目標値に到達していないならば、ステップS140が再度実行される。発光面551上の輝度が目標値に到達しているならば、ステップS150は終了する。
【0064】
<第2実施形態>
図13は、発光パネル500の製造方法の概略的なフローチャートである。図2図5乃至図11並びに図13を用いて、発光パネル500の製造方法が説明される。
【0065】
(ステップS210)
ステップS210において、図5を参照して説明された如く、支持台100上に発光パネル500が設置される。発光パネル500が支持台100上に設置された後、ステップS220が実行される。
【0066】
(ステップS220)
ステップS220において、図6を参照して説明された如く、発光層540Rのみを用いて、発光パネル500は全面点灯される。この間、輝度計200は、発光部510上に現れる輝度分布を測定する。輝度計200は、輝度分布に関するデータをコンピュータ300へ出力する。輝度計200からコンピュータ300へのデータの出力の後、ステップS230が実行される。本実施形態において、ステップS220は、第1工程として例示される。
【0067】
(ステップS230)
ステップS230において、図7を用いて説明された如く、コンピュータ300は、発光面551上に現れた発光領域ERを分割領域DR1乃至DR16に区画する。その後、コンピュータ300は、図8及び図9を用いて説明された如く、分割領域DR1乃至DR16それぞれに対して、温度データ値T1乃至T16を設定する。温度データ値T1乃至T16の設定の後、ステップS240が実行される。本実施形態において、ステップS230は、第2工程として例示される。分割領域DR1乃至DR16は、複数の領域として例示される。温度データ値T1乃至T16は、エージング温度として例示される。
【0068】
(ステップS240)
ステップS240において、回路基板520は、発光部510へ駆動信号を出力する。この結果、発光部510の発光層540R,540G,540Bは、発光する。発光パネル500は、発光層540R,540G,540Bを用いて、全面点灯するので、発光領域ER全体に亘って、エージング処理が進行する。
【0069】
図11を参照して説明された如く、温度調整装置400は、発光部510に当接される。発光部510の発光面551が、ステップS230において設定された温度となるように、発光パネル500の温度は、温度調整装置400によって調整される。ステップS240の間、輝度計200は、発光面551の輝度を測定する。測定された輝度に関するデータは、輝度計200からコンピュータ300へ出力される。本実施形態において、ステップS240は、第3工程として例示される。ステップS240の間実行される発光面551に対する輝度の測定は、輝度分布をモニターする段階として例示される。ステップS240の開始から所定期間が経過すると、ステップS250が実行される。
【0070】
(ステップS250)
ステップS250において、コンピュータ300は、発光面551の平均輝度が目標値に到達しているか否かを判定する。発光面551上の平均輝度が目標値に到達していないならば、ステップS240が再度実行される。発光面551上の平均輝度が目標値に到達しているならば、ステップS260が実行される。
【0071】
(ステップS260)
ステップS260において、コンピュータ300は、輝度計200が測定した輝度データのうち最大輝度と最小輝度との差分値を算出する。本実施形態において、差分値は、輝度分布の幅として例示される。
【0072】
コンピュータ300は、差分値に対して定められた閾値を予め記憶している。コンピュータ300は、差分値と閾値とを比較する。差分値が閾値以下であるならば、発光パネル500の発光及び温度調整装置400による温度調整が停止される。差分値が閾値を超えるならば、ステップS270が実行される。
【0073】
(ステップS270)
ステップS270において、図6を参照して説明された如く、発光層540Rのみを用いて、発光パネル500は全面点灯される。この間、輝度計200は、発光部510上に現れる輝度分布を測定する。輝度計200は、輝度分布に関するデータをコンピュータ300へ出力する。輝度計200からコンピュータ300へのデータの出力の後、ステップS280が実行される。
【0074】
(ステップS280)
ステップS280において、コンピュータ300は、発光面551上に現れた発光領域ERを複数の分割領域に新たに区画する。新たな分割領域の区画は、後述される。新たな分割領域の設定の後、ステップS290が実行される。
【0075】
(ステップS290)
ステップS290において、コンピュータ300は、新たに設定された複数の分割領域それぞれに対して、温度データ値を設定する。温度データ値の設定の後、ステップS240が再度実行される。ステップS290の後のステップS240において、発光パネル500は、新たに設定された温度データ値に従って、温度調整される。本実施形態において、ステップS280及びステップS290は、第4工程として例示される。ステップS290の後に実行されるステップS240は、第5工程として例示される。
【0076】
図14は、ステップS280において再設定された分割領域DS1乃至DS4の概略図である。図6図8図13及び図14を用いて、ステップS280が説明される。
【0077】
ステップS270の前に実行されたステップS240のエージング処理によって、発光領域ER中の輝度の位置的な変動は緩和される。したがって、図8及び図14に示される如く、ステップS280における発光領域ERに対する分割は、以前の発光領域ERに対する分割よりも粗くてもよい。
【0078】
ステップS280において、コンピュータ300は、分割領域DS1乃至DS4にそれぞれに対応する輝度データに対して、平均化処理を行ってもよい。図14に示される分割領域DS1乃至DS4には、算出された平均輝度BS1乃至BS4がそれぞれ示されている。コンピュータ300は、平均輝度BS1乃至BS4に基づき、分割領域DS1乃至DS4それぞれに対して、個別に温度データ値を割り当てる。
【0079】
図15は、ステップS290において、コンピュータ300が分割領域DS1乃至DS4に割り当てた温度データ値の概略図である。図6並びに図13乃至図15を用いて、ステップS290が説明される。
【0080】
コンピュータ300は、平均輝度BS1乃至BS4に基づき、分割領域DS1乃至DS4それぞれに対して、個別に温度データ値を割り当てる。分割領域DS1乃至DS4には、温度を表す温度データ値TS1乃至TS4がそれぞれ割り当てられている。平均輝度BS1乃至BS4に基づく温度データ値TS1乃至TS4の設定手法は、ステップS230に関連して説明された手法と同様である。
【0081】
本実施形態において、コンピュータ300は、分割領域DS1乃至DS4に対して、温度データ値TS1乃至TS4を設定するために、輝度データに対して平均化処理を行っている。代替的に、他の演算処理に基づいて、温度データ値が設定されてもよい。例えば、分割領域内の輝度勾配に関するデータが温度データ値に設定のための演算に用いられてもよい。温度データ値の設定のための演算手法は、本実施形態の原理を何ら限定しない。
【0082】
上述された実施形態に係る発光パネルの製造方法は、以下の構成を主に備える。
【0083】
上述された実施形態の一の局面に係る製造方法に従って製造される発光パネルは、発光面を有する。製造方法は、全面点灯された前記発光面中の輝度分布を測定する第1工程と、前記発光面を複数の領域に区画し、前記輝度分布に応じて、前記複数の領域それぞれにエージング温度を設定する第2工程と、前記発光パネルを発光させ、且つ、前記発光面の温度を調整する第3工程と、を有し、前記第3工程において、前記複数の領域それぞれは、前記第2工程において設定された前記エージング温度に調整されることを特徴とする。
【0084】
上記構成によれば、第1工程において、全面点灯された発光面中の輝度分布が測定される。第2工程において、発光面は複数の領域に区画される。複数の領域それぞれに対して、輝度分布に応じてエージング温度が設定させる。第3工程において、発光パネルは発光される。また、発光面の温度が調整される。複数の領域それぞれは、第2工程において設定されたエージング温度に調整されるので、エージングレベルの位置的なばらつきは緩和される。
【0085】
上記構成において、前記複数の領域は、第1領域と、前記第1工程において前記第1領域よりも高い輝度が測定された第2領域と、を含んでもよい。前記第2工程において前記第1領域に対して設定されたエージング温度は、前記第2領域に対して設定されたエージング温度よりも高くてもよい。
【0086】
上記構成によれば、第1工程において、第2領域に対して、第1領域よりも高い輝度が測定される。第2工程において第1領域に対して設定されたエージング温度は、第2領域に対して設定されたエージング温度よりも高いので、第1領域と第2領域との間でのエージングレベルの差異が緩和される。
【0087】
上記構成において、前記発光パネルは、互いに異なる色相で発光する複数の発光素子を含んでもよい。前記複数の発光素子は、第1色相で発光する第1発光素子と、該第1発光素子よりも高い発光効率で、且つ、第1色相とは異なる第2色相で発光する第2発光素子と、を含んでもよい。前記第1工程において、第1発光素子を用いて、前記発光面は全面点灯されてもよい。
【0088】
上記構成によれば、発光パネルは、互いに異なる色相で発光する複数の発光素子を含む。複数の発光素子は、第1色相で発光する第1発光素子と、第1色相とは異なる第2色相で発光する第2発光素子と、を含む。第1工程において、第1発光素子を用いて、発光面は全面点灯される。第1発光素子は、第2発光素子よりも低い発光効率を有するので、第1工程において測定された輝度分布は、第1工程における発光面の温度分布と高い相関関係を有することとなる。複数の領域それぞれは、第2工程において設定されたエージング温度に調整されるので、エージングレベルの位置的なばらつきは緩和される。
【0089】
上記構成において、前記第1発光素子は、前記複数の発光素子の中で最も低い発光効率で発光してもよい。
【0090】
上記構成によれば、第1発光素子は、複数の発光素子の中で最も低い発光効率で発光するので、第1工程において測定された輝度分布は、第1工程における発光面の温度分布と高い相関関係を有することとなる。複数の領域それぞれは、第2工程において設定されたエージング温度に調整されるので、エージングレベルの位置的なばらつきは緩和される。
【0091】
上記構成において、前記第1発光素子は、青の色相で発光する有機EL素子であってもよい。
【0092】
上記構成によれば、第1発光素子は、青の色相で発光する有機EL素子であるので、複数の発光素子の中で最も低い発光効率で発光する。したがって、第1工程において測定された輝度分布は、第1工程における発光面の温度分布と高い相関関係を有することとなる。複数の領域それぞれは、第2工程において設定されたエージング温度に調整されるので、エージングレベルの位置的なばらつきは緩和される。
【0093】
上記構成において、前記第3工程は、前記発光面中の輝度分布をモニターする段階と、前記モニターされた輝度分布の幅と前記輝度分布の前記幅に対して定められた閾値とを比較する段階と、前記輝度分布の前記幅が前記閾値以下であるならば、前記発光パネルの発光及び前記発光パネルに対する温度調整を停止する段階と、を含んでもよい。
【0094】
上記構成によれば、第3工程において、発光面中の輝度分布がモニターされる。モニターされた輝度分布の幅と閾値とが比較される。輝度分布の幅が閾値以下であるならば、発光パネルの発光及び発光パネルに対する温度調整は停止される。したがって、発光パネルは、過度のエージング処理に曝されることはない。
【0095】
上記構成において、製造方法は、前記輝度分布の前記幅が前記閾値を超えるならば、前記エージング温度を再設定する第4工程と、該第4工程において再設定されたエージング温度の下で、前記発光面の温度を調整する第5工程と、を更に有してもよい。
【0096】
上記構成によれば、輝度分布の幅が閾値を超えるならば、第4工程が実行される。第4工程において、エージング温度が再設定される。再設定されたエージング温度の下で、発光面の温度が調整されるので、エージングレベルの位置的なばらつきは適切に緩和される。
【0097】
上記構成において、前記第3工程は、前記複数の領域それぞれを異なる温度に調整することができる温度調整面を有する温度調整装置を前記発光パネルに当接させる段階を含んでもよい。
【0098】
上記構成によれば、第3工程において、複数の領域それぞれを異なる温度に調整することができる温度調整面を有する温度調整装置が発光パネルに当接されるので、発光面は適切に温度調整される。
【0099】
上記構成において、前記第3工程は、前記温度調整面を前記発光パネルに当接させ、前記複数の領域を加熱する段階を含んでもよい。
【0100】
上記構成によれば、第3工程において、発光パネルに当接された温度調整面は、複数の領域を加熱するので、発光面は適切に温度調整される。
【0101】
上記構成において、前記第3工程は、前記温度調整面を前記発光パネルに当接させ、前記複数の領域を冷却する段階を含んでもよい。
【0102】
上記構成によれば、第3工程において、発光パネルに当接された温度調整面は、複数の領域を冷却するので、発光面は適切に温度調整される。
【0103】
上記構成において、前記温度調整面は、マトリクス状に配置された複数の温度調整セルによって形成されてもよい。前記温度調整セルは、熱電変換素子を含んでもよい。前記第3工程は、前記熱電変換素子を用いて、前記発光面の温度を調整する段階を含んでもよい。
【0104】
上記構成によれば、温度調整面は、マトリクス状に配置された複数の温度調整セルによって形成される。温度調整セルは、熱電変換素子を含む。第3工程において、発光面の温度は、熱電変換素子を用いて適切に調整される。
【0105】
上記構成において、前記複数の温度調整セルは、前記発光パネルの局所的な温度を検出する少なくとも1つの温度検出セルを含んでもよい。前記第3工程は、前記少なくとも1つの温度検出セルが検出した前記温度に応じて、前記発光面の温度を調整する段階を含んでもよい。
【0106】
上記構成によれば、複数の温度調整セルは、発光パネルの局所的な温度を検出する少なくとも1つの温度検出セルを含む。第3工程において、少なくとも1つの温度検出セルが検出した温度に応じて、発光面の温度が適切に調整される。
【産業上の利用可能性】
【0107】
上述の実施形態に係る原理は、例えば、映像を表示するための表示装置や、発光パネルを備えた照明装置に好適に適用される。
【符号の説明】
【0108】
400・・・・・・・・・・・・・・・・温度調整装置
410・・・・・・・・・・・・・・・・セル要素
411・・・・・・・・・・・・・・・・セル要素
420・・・・・・・・・・・・・・・・上面
500・・・・・・・・・・・・・・・・発光パネル
540R,540G,540B・・・・・発光層
551・・・・・・・・・・・・・・・・発光面
DR1乃至DR16・・・・・・・・・・分割領域
T1乃至T16・・・・・・・・・・・・温度データ値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15