【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明を限定するものではない。
【0040】
(実施例1)
(ゴム弾性体の作製)
カプロラクトン系ポリオール(分子量2000)100質量部と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)38質量部とを115℃×20分間反応させた後、架橋剤として1,4−ブタンジオール6.1質量部およびトリメチロールプロパン2.6質量部を混合し、140℃に保った金型で40分間加熱硬化させた。成形後、幅12.3mm、厚さ2.0mm、長さ324mmに切断加工したゴム弾性体とした。得られたゴム弾性体は、弾性率が10.0MPaであった。
【0041】
(表面処理液の調製)
2官能イソシアネート化合物としてMDI(日本ポリウレタン工業(株)製、分子量250.25)と、3官能ポリオールとしてTMP(三菱ガス化学(株)製、分子量134.17)と、有機溶剤としてMEKとを、イソシアネート基と水酸基との比率(NCO基/OH基)が1.0となるように混合し、濃度5質量%の表面処理液を調製した。ここで、表面処理液の濃度(質量%)は、表面処理液の全体の質量に対するイソシアネート化合物及びポリオールの質量の割合とする。
【0042】
(ゴム弾性体の表面処理)
表面処理液を23℃に保ったまま、ゴム弾性体を表面処理液に0.5分間浸漬後、50℃に保持されたオーブンで1時間加熱した。これにより、表層部に厚さ10μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0043】
なお、表面処理層の厚さは、島津製作所製ダイナミック超微小硬度計を用いて、JIS Z2255、ISO14577に準じて以下の手順で測定した。まず、ゴム弾性体の表面硬度を測定し、次いで表面処理したゴム弾性体の断面を切り出し、断面の表層からゴム弾性体の内部に向けての硬度変化を測定し、表面からの距離10μmの硬度との変化量が30%以下の距離を計測し、表面からその距離までを表面処理層の厚さとした。
【0044】
(実施例2)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、イソシアネート基と水酸基との比率(NCO基/OH基)が1.2となるように混合した濃度10質量%の表面処理液にゴム弾性体を1分間浸漬した以外は実施例1と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ30μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0045】
(実施例3)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、表面処理液にゴム弾性体を5分間浸漬した以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ80μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0046】
(実施例4)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、表面処理液にゴム弾性体を10分間浸漬した以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ100μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0047】
(実施例5)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、イソシアネート基と水酸基との比率(NCO基/OH基)が1.5となるように混合した濃度20質量%の表面処理液にゴム弾性体を1分間浸漬した以外は実施例1と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ50μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0048】
(実施例6)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、TMPの代わりにTME(三菱ガス化学(株)製、分子量120.15)を含有する表面処理液を用いた以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ30μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0049】
(実施例7)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、TMPの代わりにグリセリン(関東化学(株)製、分子量92.09)を含有する表面処理液を用いた以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ30μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0050】
(比較例1)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、濃度20質量%の表面処理液にゴム弾性体を30分間浸漬した以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ120μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0051】
(比較例2)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、濃度30質量%の表面処理液にゴム弾性体を20分間浸漬した以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ150μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0052】
(比較例3)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、濃度3質量%の表面処理液にゴム弾性体を0.1分間浸漬した以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ5μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0053】
(比較例4)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、イソシアネート基と水酸基との比率(NCO基/OH基)が0.9となるように混合した表面処理液を用いた以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ30μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0054】
(比較例5)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、イソシアネート基と水酸基との比率(NCO基/OH基)が1.7となるように混合した表面処理液を用いた以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ30μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0055】
(比較例6)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、TMPの代わりに、1,3−プロパンジオール(PDO)(関東化学(株)製、分子量76.09)を含有する表面処理液を用いた以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ30μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0056】
(比較例7)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、ポリオールを含まず、ポリイソシアネート(品名:ミリネートMR−400、日本ポリウレタン工業(株)製)を含有し、ポリイソシアネート濃度が10質量%の表面処理液を用いた以外は実施例2と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ30μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0057】
(比較例8)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、ポリイソシアネート濃度が30質量%の表面処理液を用いた以外は比較例7と同様の手順でゴム弾性体の表面処理を行った。これにより、表層部に厚さ200μmの表面処理層を有するゴム弾性体を得た。その後、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0058】
(比較例9)
実施例1と同様の手順でゴム弾性体を得た。そして、ゴム弾性体に表面処理を施さず、ゴム弾性体を支持部材に接着してクリーニングブレードとした。
【0059】
実施例1〜7及び比較例1〜9で得られたゴム弾性体又はクリーニングブレードについて、以下の手法で、動摩擦係数、表面処理層の押し込み弾性率、表面硬度及び表面粗さを測定し、クリーニング性、フィルミング抑制性、耐摩耗性、外観及び表面処理液の有効期間を評価した。
【0060】
(試験例1)
<動摩擦係数の測定>
新東科学製表面性試験機を用いて、JIS K7125、P8147、ISO8295に準じ、相手材として直径10mmのSUS304鋼球を用い、移動速度50mm/分、荷重0.49N、振幅50mmの条件下で動摩擦係数を測定した。
【0061】
(試験例2)
<押し込み弾性率の測定>
島津製作所製ダイナミック超微小硬度計を用いて、ISO14577に準じ、負荷−除荷試験により保持時間5s、最大試験荷重0.98N、負荷速度0.14N/sの条件下で表面処理層の押し込み弾性率を測定した。
【0062】
(試験例3)
<表面硬度の測定>
島津製作所製ダイナミック超微小硬度計を用いて、JIS Z2255、ISO14577に準じ、圧し押し込み試験により負荷速度1.4mN/s、測定深さ10μmの条件下で表面硬度を測定した。
【0063】
(試験例4)
<表面粗さの測定>
東洋精密サーフコム1400Aを用いて、JIS B0601−1994に準じ、移動速度0.15mm/s、カットオフ波長:0.8mm、負荷速度1.4mN/s、測定深さ10μmの条件下でゴム弾性体表面の十点平均粗さR
zを測定した。
【0064】
(試験例5)
<クリーニング性の評価>
京セラ製TASKalfa5550ciを用いて、カートリッジにブレードを組み込み100万枚印刷した後、トナーのすり抜けがなかった場合を○、トナーの多少のすり抜けはあったが許容範囲であった場合を△、トナーのすり抜けがあった場合を×としてクリーニング性を評価した。
【0065】
(試験例6)
<フィルミング抑制性の評価>
京セラ製TASKalfa5550ciを用いて、カートリッジにブレードを組み込み100万枚印刷した後、トナーの固着がなかった場合を○、トナーの固着が多少あったが、許容範囲であった場合を△、トナーの固着があった場合を×としてフィルミング抑制性を評価した。
【0066】
(試験例7)
<耐摩耗性の評価>
京セラ製TASKalfa5550ciを用いて、カートリッジにブレードを組み込み100万枚印刷した後、カケや摩耗がなかった場合を○、極微小なカケがあったが、許容範囲であった場合を△、カケや摩耗があった場合を×として耐摩耗性を評価した。
【0067】
(試験例8)
<外観の評価>
京セラ製TASKalfa5550ciを用いて、カートリッジにブレードを組み込み100万枚印刷した後、処理ムラがなかった場合を○、処理ムラが多少見られたが、許容範囲であった場合を△、処理ムラがあった場合を×として外観を評価した。
【0068】
(試験例9)
<表面処理液の有効期間の評価>
500ml容器に表面処理液400gを調合し密封して保管温度40℃で保管し、外観上に異常が発生するまでの日数を測定し、2日以上外観上に異常が発生しなかった場合を○、2日未満で多少の異常が見られたが、許容範囲であった場合を△、2日未満で外観上に異常が発生した場合を×として表面処理液の有効期間を評価した。
【0069】
<試験結果>
試験例1〜9の結果を表1に示す。表1に示すように、表面処理液が2官能イソシアネート化合物と3官能ポリオールとを含有し、表面処理液中のイソシアネート基と水酸基との比率(NCO基/OH基)が1.0以上1.5以下であり、且つ表面処理層の厚さが10μm以上100μm以下である実施例1〜7は、クリーニング性、フィルミング抑制性、耐摩耗性、外観及び表面処理液の有効期間の評価がいずれも○となった。また、動摩擦係数、押し込み弾性率、表面硬度及び表面粗さについては十分実用に耐え得る数値が得られた。
【0070】
表面処理液が2官能イソシアネート化合物と3官能ポリオールとを含有し、且つイソシアネート基と水酸基との比率が所定範囲であっても、表面処理層の厚さが100μmより厚い比較例1,2は、表面硬度や押し込み弾性率が高く、クリーニング性及び外観の評価が×となり、耐摩耗性の評価が△となった。また、表面処理層の厚さが5μmと薄い比較例3は、動摩擦係数がやや高く、フィルミング抑制性及び耐摩耗性の評価が×となった。
【0071】
また、表面処理液が2官能イソシアネート化合物と3官能ポリオールとを含有し、且つ表面処理層の厚さが所定範囲であっても、イソシアネート基と水酸基との比率が1.0未満である比較例4は、動摩擦係数がやや高く、クリーニング性、フィルミング抑制性、耐摩耗性及び外観の評価が×となり、かかる比率が1.5より大きい比較例5は、クリーニング性、耐摩耗性及び外観の評価が×となった。
【0072】
一方、ポリオールとして2官能ポリオールを含有する表面処理液を用いた比較例6は、クリーニング性、耐摩耗性及び表面処理液の有効期間の評価が△となった。また、ポリイソシアネートのみを含有する表面処理液を用いた比較例7,8及び表面処理を施さなかった比較例9は、クリーニング性、フィルミング抑制性、耐摩耗性、外観及び表面処理液の有効期間の評価の内、少なくとも2以上が×又は△となった。
【0073】
以上の結果から、2官能イソシアネート化合物と3官能ポリオールとを含有する表面処理液を用い、表面処理液中のイソシアネート基と水酸基との比率及び表面処理層の厚さを所定範囲とすることにより、クリーニング性、フィルミング抑制性、耐摩耗性、外観及び表面処理液の有効期間を確実に向上できることがわかった。このようなゴム弾性体を具備するクリーニングブレードは、表面処理層の厚さが薄くても高硬度で低摩擦であり、且つ耐摩耗性に優れ、長期にわたり良好なクリーニング性を維持することができる信頼性の高いものとなる。
【0074】
【表1】