【実施例1】
【0020】
図2は、実施例1に係る半導体受光素子100を備える半導体受光装置120の模式的な断面図である。
図3は、半導体受光素子100の拡大断面図である。
【0021】
図2および
図3に示すように、半導体受光装置120は、半導体基板10上に、半導体受光素子100、ダミーメサ110a、およびダミーメサ110bを備える。半導体受光素子100は、半導体基板10上において、n型半導体層21、i型半導体層22、およびp型半導体層23がこの順に積層された構造を有する。p型半導体層23上において、リング状にコンタクト層24が積層されている。n型半導体層21は、例えば、n型InPからなる。i型半導体層22は、例えば、i型InGaAsからなる。p型半導体層23は、例えば、p型InPからなる。n型半導体層21の厚さは、例えば、1.0μmである。i型半導体層22の厚さは、例えば、1.0μmである。p型半導体層23の厚さは、例えば、1.0μmである。p型半導体層23は、i型半導体層22よりも小さい径を有する。i型半導体層22上かつp型半導体層23の側面には、n型半導体層25が配置されている。n型半導体層25は、例えば、n型InPからなる。コンタクト層24は、例えば、p型InGaAsからなる。
【0022】
半導体基板10は、半絶縁性半導体からなり、例えば、2.2〜6.6×10
7Ωcmの抵抗率を有する。一例として、半導体基板10は、半絶縁性のInPからなる。また、半導体基板10の裏面において半導体受光素子100に対応する位置に、レンズ11が設けられている。それにより、半導体基板10の裏面から入射した光を半導体受光素子100に対して集光することができる。レンズ11は、半導体基板10に対してミリング処理などを施すことによって形成することができる。
【0023】
ダミーメサ110a,110bは、半導体基板10上において、n型半導体層31、i型半導体層32、およびn型半導体層33がこの順に積層された構造を有する。n型半導体層31は、例えば、n型InPからなる。i型半導体層32は、例えば、i型InGaAsからなる。n型半導体層33は、例えば、n型InPからなる。
【0024】
絶縁膜40は、AR膜として機能することができるシリコン窒化膜(SiN)からなり、半導体受光素子100の表面、ダミーメサ110a,110bの表面、半導体基板10の上面、および半導体基板10の裏面を覆っている。なお、n型半導体層25の上面と絶縁膜40との間には、拡散マスク26が介在している。拡散マスク26は、シリコン窒化膜(SiN)からなり、例えば0.2μm程度の厚みを有する。
【0025】
絶縁膜40は、コンタクト層24上において開口を有する。コンタクト層24上における絶縁膜40の開口には、リング状電極50aが形成されている。リング状電極50aは、バリア層として機能するTi/Pt層51が設けられている。コンタクト層24がリング形状を有していることから、Ti/Pt層51もリング状をなす。Ti/Pt層51からその内側にかけてAuスパッタ層52およびAuめっき層53が順に積層されている。したがって、Ti/Pt層51の内側において、Auスパッタ層52と絶縁膜40とが接している。
【0026】
引出電極
50aは、半導体受光素子100の表面、半導体基板10の表面、およびダミーメサ
110bの表面を通って、ダミーメサ110b上にまで形成されている。引出電極
50aは、Ti/Pt層51にAuスパッタ層52およびAuめっき層53が順に積層されている。ダミーメサ110b上においては、引出電極50a上に電極34が形成されている。
【0027】
また、絶縁膜40は、n型半導体層21上のi型半導体層22が設けられていない領域において開口を有する。この開口には、コンタクト層27が形成されている。n型半導体層21は、コンタクト層
27を介して引出電極50bと接触する。引出電極50bは、引出電極50aと同じ積層構造を有する。引出電極50bは、半導体基板10の表面およびダミーメサ110aの表面を通って、ダミーメサ110a上にまで形成されている。ダミーメサ110a上においては、引出電極50b上に電極34が形成されている。
【0028】
図4(a)は、半導体受光素子100において、コンタクト層24よりも内側部分の模式的な拡大断面図である。半導体受光素子100においては、コンタクト層24よりも内側において、p型半導体層23(InP)と絶縁膜40(シリコン窒化膜)とAuスパッタ層52(Au)との積層体が反射ミラーとして機能する。具体的には、Auスパッタ層52がp型半導体層23に対して反射ミラーとして機能する。レンズ11から入射した光は、絶縁膜40とAuスパッタ層52との界面で反射する。なお、絶縁膜40は、酸化シリコン膜(SiO)で形成されてもよい。
【0029】
半導体受光素子100においては、金属膜からなる引出電極50aのいずれかの金属層のレンズ11側表面に凹凸が設けられている。本実施例においては、一例として、Auスパッタ層52と絶縁膜40との界面に凹凸が設けられ、Auスパッタ層52とAuめっき層53との界面に凹凸が設けられている。この場合、レンズ11から入射した光は、絶縁膜40とAuスパッタ層52との界面において反射する際に乱反射する。それにより、当該反射光は、入射方向とは異なる光軸方向に反射する。その結果、光源に戻る光量を抑制することができる。
【0030】
図4(b)は、反射の様子を模式的に説明するための図である。
図4(b)に示すように、レンズ11から入射される光L1の一部は、吸収層として機能するi型半導体層22で吸収される。i型半導体層22を通過した光L2は、絶縁膜40とAuスパッタ層52との界面において反射され、光L3としてi型半導体層22に入射する。この場合、光L3は、光L1とは異なる光軸方向に乱反射する。光L3の一部はi型半導体層22で吸収される。i型半導体層22を通過した光L4は、レンズ11を介して外部に出射される。(光L1の光量−光L2の光量)+(光L3の光量−光L4の光量)がi型半導体層22におけるキャリア発生に寄与している。乱反射に起因して、光源に戻る光量を抑制することができることから、ORL不良を抑制することができる。
【0031】
図5(a)〜
図5(c)は、金属膜からなる電極のいずれかの金属層のレンズ11側表面に設けられた凹凸について説明するための模式図である。
図5(a)〜
図5(c)に示すように、凹凸は少なくとも2ピッチ(複数ピッチ)以上設けられている。
図5(a)に示すように、凹凸は、折れ線状にジグザグを形成するように設けられていてもよい。また、
図5(b)に示すように、凹凸は、波状に設けられていてもよい。また、
図5(c)に示すように、凹凸は、複数の台形が並ぶように設けられていてもよい。凹凸形状は特に限定されるわけではないが、凹凸のいずれかの面は、光入射方向に対して傾斜して、光入射側に露出するように形成されていることが好ましい。一例として、凹凸のピッチは、50nm程度であり、凹凸の深さは、50nm程度である。
【0032】
凹凸の形成方法について説明する。金属膜からなる電極の金属層の表面に凹凸を形成する際に、RIEエッチング処理を用いることができる。例えば、2150Å程度の絶縁膜40に対して、60sccm程度のArガスを流し、圧力を1.5Pa程度に設定し、パワーを200W程度に設定してRIEエッチング処理を施すことによって、RIEエッチング処理後における絶縁膜40の表面の凹凸をRIEエッチング処理前よりも大きくする。それにより、絶縁膜40に
図5(a)に示すような凹凸を形成することができる。この凹凸面にスパッタリングによってAuスパッタ層52を形成することによって、Auスパッタ層52に凹凸を形成することができ、さらに、Auめっき層53に凹凸を形成することができる。なお、
図5(b)の凹凸形状は、RIEエッチング処理の条件を変更することによって形成することができる。また、
図5(c)の凹凸形状は、絶縁膜40上にレジストを塗布し、露光・現像によりパターニングされたエッチングマスクを形成し、このエッチングマスクにより露出した絶縁膜40に、RIEエッチング処理を施すことで、絶縁膜40の表面の一部あるいは全部に複数の台形が並ぶように凹凸を形成することができる。
【0033】
(変形例1)
図6は、反射ミラーの他の例を説明するための模式的な断面図である。
図6に示すように、AR膜として機能する絶縁膜40を設けず、コンタクト層24およびTi/Pt層51がp型半導体層23上の略全面に設けられていてもよい。本変形例においては、コンタクト層24として、p型InGaAsPの第1層24a、p型InGaAsの第2層24b、および半導体とオーミック接触が可能な金属(例えば、Au/Zn/Au)の第3層24cをp型半導体層23側から順に積層させた積層体を用いる。InGaAsのエネルギギャップがInGaAsPよりも小さいため、ヘテロ障壁が緩和される。
【0034】
本変形例においては、第2層24b(p型InGaAs)と第3層24c(Au/Zn/Au)との積層体が反射ミラーとして機能する。具体的には、第3層24cが第2層24bに対して反射ミラーとして機能する。レンズ11から入射した光は、第2層24bと第3層24cとの界面で反射する。本変形例においては、第3層24bが、金属膜に含まれる金属層に対応する。なお、p型半導体層23は2元混晶であればよく、第1層24aは3元混晶であればよく、第2層24bは第1層24aよりもエネルギギャップが小さい3元以上の混晶であればよい。
【0035】
変形例1における凹凸の形成方法について説明する。金属層の表面に凹凸を形成する際に、熱処理を用いることができる。例えば、p型半導体層23上に、150nmの厚みを有するp型InGaAsPを第1層24aとして形成する。次に、第1層24a上に、100nmの厚みを有するp型InGaAsを第2層24bとして形成する。次に、第2層24b上に、Au(20nm)、Zn(15nm)、およびAu(60nm)が順に積層された構造を有する第3層24cを形成する。次に、第3層24c上に、Ti(50nm)およびPt(100nm)が順に積層された構造を有するTi/Pt層51を形成する。次に、Ti/Pt層51上に、100nmのAuスパッタ層52を形成し、Auスパッタ層52上にAuめっき層53を形成する。その後、350℃〜400℃の窒素雰囲気において30秒程度の熱処理を行う。この熱処理によって、第2層24bを構成する半導体(p型InGaAs)と第3層24cを構成する金属(Au/Zn/Au)とが反応することによって、第3層24cに凹凸が形成される。なお、このときの凹凸形状は、
図5(a)に示すような凹凸形状が形成される。このとき、凹凸形状が大きいことがある。この場合、p型半導体層23まで凹凸形状が影響を及ぼしてしまう可能性もある。この対策としては、コンタクト層24を厚く形成することで対応できるが、このコンタクト層24の全てにp型InGaAsを用いた場合には、光がp型InGaAsで吸収されてしまい反射光を得ることができない。したがって、本変形例においては、コンタクト層24として、p型InGaAsPの第1層24a、p型InGaAsの第2層24b、および半導体とオーミック接触が可能な金属(例えば、Au/Zn/Au)の第3層24cをp型半導体層23側から順に積層させた積層体を用いる。コンタクト層24の一部にp型InGaAsPの第1層24aを用いることで光の吸収を抑制することができる。
【実施例2】
【0036】
図7は、実施例2に係る表面入射型の半導体受光素子100aの模式的な断面図である。
図7に示すように、半導体受光素子100aは、n型半導体基板101上に、光吸収層102およびウィンドウ層103が順に積層された構造を有する。n型半導体基板101は、例えば、n型InPからなる。光吸収層102は、例えば、i型のInGaAsからなる。ウィンドウ層103は、例えばn型InPからなる。ウィンドウ層103には、リング状にp型不純物が注入されたp型不純物領域103aが形成されている。p型不純物領域103aのリング内側には、p型不純物が拡散することによって得られたp型ウィンドウ層103bが形成されている。
【0037】
p型ウィンドウ層103bの上面に、リング形状のコンタクト層104が設けられている。コンタクト層104は、例えばInGaAsからなる。コンタクト層104は、p型ウィンドウ層103bの周辺側に位置している。p型ウィンドウ層103b上のコンタクト層104よりも内側には、シリコン窒化膜105が設けられている。シリコン窒化膜105は、ウィンドウ層103上においてコンタクト層104よりも外側にも形成されている。
【0038】
コンタクト層104上には、Ti/Pt層106、Auスパッタ層107およびAuめっき層108が順に積層されている。Ti/Pt層106、AUスパッタ層107およびAuめっき層108は、引出配線としても機能する。この引出配線は、シリコン窒化膜105上を通って、他の機器に接続されている。なお、シリコン窒化膜105は、内部に樹脂109が設けられることによって所定の厚みを有していてもよい。
【0039】
n型半導体基板101の裏面では、p型ウィンドウ層103bに対応する領域に、AR膜として機能するシリコン窒化膜110が設けられている。シリコン窒化膜110よりも外側には、シリコン窒化膜110と離間して、半導体とオーミック接触するAuGe/Au膜111が設けられている。さらに、n型半導体基板101の裏面において、シリコン窒化膜110およびAuGe/Au膜111を覆うように、Ti/Au/TiW/Auの積層構造を有する電極112が設けられている。
【0040】
半導体受光素子100aにおいては、p型ウィンドウ層103bに入射した光は、光吸収層102を通って、金属膜の電極112において反射し、再度光吸収層102を通って外部に出射される。本実施例においては、電極112の少なくともいずれかの金属層の光吸収層102側の表面に実施例1で説明した凹凸が設けられている。それにより、電極112において光が乱反射する。その結果、電極112で反射した光は、入射方向とは異なる光軸方向に反射する。その結果、光源に戻る光量を抑制することができる。
【0041】
上記各実施例に係る受光素子は、n型半導体層上に、i型半導体層およびp型半導体層が設けられた積層構造を有していたが、逆の積層構造を有していてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。