(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表示輝度を変更可能な発光表示器と、周囲の照度を検出する照度検出手段と、前記照度検出手段の検出結果に基づいて算出される照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整する制御手段と、を備えてなる表示装置であって、
前記制御手段は、今回の照度値と前回判定時の照度値との差の絶対値が所定の閾値未満である場合は照度変化がないと判定し、前記今回の照度値と前記前回判定時の照度値との差の絶対値が前記閾値以上である場合は照度変化があると判定し、所定の第一の回数連続して照度変化があると判定される場合に、前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整し、さらに、前記制御手段は、前記第一の回数よりも多い第二の回数連続して照度変化がないと判定された場合に、前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整することを特徴とする表示装置。
表示輝度を変更可能な発光表示器と、周囲の照度を検出する照度検出手段と、を備え、前記照度検出手段の検出結果に基づいて算出される照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整する表示装置の制御方法であって、
今回の照度値と前回判定時の照度値との差の絶対値が所定の閾値未満である場合は照度変化がないと判定し、前記今回の照度値と前記前回判定時の照度値との差の絶対値が前記閾値以上である場合は照度変化があると判定し、所定の第一の回数連続して照度変化があると判定される場合に、前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整し、さらに、前記第一の回数よりも多い第二の回数連続して照度変化がないと判定された場合に、前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整することを特徴とする表示装置の制御方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示される構成は、一時的かつ突発的な照度検出値の変化に対してはちらつきを低減できるものの、微小な変化であっても照度変化があると判定されるため、照度検出値の微小なバラツキが連続する場合にはちらつきの発生を防止できないという問題点があった。これに対しては照度変化の判定回数を増加することで対応する余地はあるが、この場合は輝度調整の応答性が悪くなるという別の問題が生じる。日中などの周囲の照度が高い場合においては照度検出値の微小なバラツキに応じて表示輝度が変更されても利用者にはちらつきが認識されにくいが、日の出時や薄暮時などの周囲の照度が低い場合においては表示像と背景とのコントラストが高いため、ちらつきが認識されやすい。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題に着目してなされたものであり、表示輝度の調整の応答性を低下させることなく表示輝度の変更による表示のちらつきを低減することが可能な表示装置及びその制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、表示輝度を変更可能な発光表示器と、周囲の照度を検出する照度検出手段と、前記照度検出手段の検出結果に基づいて算出される照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整する制御手段と、を備えてなる表示装置であって、
前記制御手段は、今回の照度値と前回判定時の照度値との差の絶対値が所定の閾値未満である場合は照度変化がないと判定し、前記今回の照度値と前記前回判定時の照度値との差の絶対値が前記閾値以上である場合は照度変化があると判定し、所定の第一の回数連続して照度変化があると判定される場合に、前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整
し、さらに、前記制御手段は、前記第一の回数よりも多い第二の回数連続して照度変化がないと判定された場合に、前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整することを特徴とする。
【0009】
また、前記制御手段は、前記
今回の照度値を照度変化の判定をする周期よりも短い周期で算出し、照度変化の判定結果の状態が照度変化なし、照度上昇あるいは照度低下のいずれであるかを判定し、前記第一の回数連続して照度変化があると判定されている間は前記
今回の照度値の変化の状態が前記照度変化の判定結果の状態と一致する場合にのみ前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整することを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、表示輝度を変更可能な発光表示器と、周囲の照度を検出する照度検出手段と、を備え、前記照度検出手段の検出結果に基づいて算出される照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整する表示装置の制御方法であって、
今回の照度値と前回判定時の照度値との差の絶対値が所定の閾値未満である場合は照度変化がないと判定し、前記今回の照度値と前記前回判定時の照度値との差の絶対値が前記閾値以上である場合は照度変化があると判定し、所定の第一の回数連続して照度変化があると判定される場合に、前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整
し、さらに、前記第一の回数よりも多い第二の回数連続して照度変化がないと判定された場合に、前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整することを特徴とする。
【0012】
また、前記
今回の照度値を照度変化の判定をする周期よりも短い周期で算出し、照度変化の判定結果の状態が照度変化なし、照度上昇あるいは照度低下のいずれであるかを判定し、前記第一の回数連続して照度変化があると判定されている間は前記
今回の照度値の変化の状態が前記照度変化の判定結果の状態と一致する場合にのみ前記今回の照度値に応じて前記発光表示器の表示輝度を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表示輝度の調整の応答性を低下させることなく表示輝度の変更による表示のちらつきを低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を車両用のヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display;HUD)装置に適用した一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
まず、
図1を用いてHUD装置1の基本的な構成を説明する。HUD装置1は、ケース体10と、表示器(発光表示器)20と、回路基板30と、反射部材40と、コンバイナ50と、コンバイナ50と一体的に形成された導光体60と、光センサ(照度検出手段)70と、を備える。
HUD装置1は、例えば、車両のダッシュボード上(例えば、インストルメントパネル上方)に取り付けられる据え置き型のHUD装置として構成されている。以下の説明では、HUD装置1が表示する表示画像を視認する観察者2からみて、上方向を「上」、下方向を「下」、前方向を「前」、後ろ方向を「後」として(
図1の両端矢印参照)、適宜、HUD装置1を構成する各部を説明する。
【0017】
ケース体10は、遮光性の樹脂材料等からなる箱形状の部材であり、表示器20、回路基板30、反射部材40及び光センサ70を収納し、また、コンバイナ50を保持する。また、ケース体10の上部には、表示器20から発せられる表示光Lを通過させる第一の開口部11が形成されている。第一の開口部11よりも前方側にはコンバイナ50が取り付けられる部分である被取付部(図示しない)を有し、例えばネジによって前記被取付部にコンバイナ50の下端部が取り付けられている。このようにして、ケース体10はコンバイナ50を保持している。保持されたコンバイナ50は、ケース体10から上方に延出するような格好となる。また、ケース体10には、導光体60を上方に露出させるとともに、入射した光(後述する外光N)をケース体10内部に通過させるための第二の開口部12が形成されている。
【0018】
表示器20は、車速、エンジン回転数、シフトポジション、走行距離、残燃料量、時刻、燃費、外部温度等の表示情報を含む表示画像を表す表示光Lを出射する発光表示器であり、例えばLED(Light Emitting Diode)をマトリクス状に配置したLED表示器や液晶パネルとバックライト用光源から構成される透過型液晶ディスプレイ、あるいは有機ELディスプレイ等からなる。表示器20は、後述する調光制御によって外光Nの照度に応じて表示光Lの輝度(表示輝度)を調整可能なものである。
【0019】
回路基板30は、ガラス繊維を含む樹脂等からなる板状の基材に、光センサ70や後述する制御手段80(
図1においては図示しない)等を表面に実装し、部品間を配線したプリント回路基板である。回路基板30は、ケース体10内部の表示器20よりも前側に図示しない取付部材によって固定される。回路基板30と表示器20とはFPC(Flexible Printed Circuit)3を介して導通接続されている。FPC3の一端部はコネクタCを介して回路基板30と接続されている。
【0020】
反射部材40は、例えばアルミ蒸着された板状の樹脂成型品からなり、表示器20の表示側、すなわち表示光Lの出射側に位置し、到達した表示光Lをコンバイナ50に向けて反射するものである。また、反射部材40は、表示画像の拡大や歪みの補正のために曲面として構成された反射面を有する(なお、
図1においては反射面を概略的に平面のように表している)。反射部材40は、その反射面が表示器20の表示側と略対向するように配置されている。表示器20から反射部材40に到達した表示光Lは、反射部材40の反射面で反射され、ケース体10の第一の開口部11を通過してコンバイナ50に向かう。
【0021】
コンバイナ50は、曲面状の反射面を有する板状のハーフミラー等により構成される(なお、
図1においてはコンバイナ50を概略的に平面のように表している)。前述のように、コンバイナ50は、ケース体10に取り付けられており、その反射面が反射部材40の反射面と略対向する。コンバイナ50は、到達した表示光Lを反射面で観察者2に向けて反射し、表示光Lを観察者2の目に入射させて観察者2にコンバイナ50の前方に形成される表示画像の虚像Vを視認させる。これにより、観察者2は前方の実体である風景と虚像Vとの双方を重ねて視認することができる。なお、コンバイナ50としてホログラム素子を用いてもよく、この場合はコンバイナ50に到達した表示光Lは回折によって光路変更される。
【0022】
導光体60は、コンバイナ50と一体的に形成されてなり、例えば、コンバイナ50の下端部の一部から下方に突出形成される。導光体60は、所定の方向(本実施形態においては主に前方)からの外光Nを光センサ70に導くものであり、上向きに傾斜し外光Nを入射する入射面61と、光センサ70に向けて外光Nを出射する出射面62と、を有して形成されている。
【0023】
光センサ70は、到達した光の明るさ(照度)を検出するためのものであり、導光体60の出射面62と対向し、かつ、光センサ70に入射する光の光軸が上下方向に沿うように回路基板30上に配設されている。光センサ70は、到達した光の照度に応じた電圧を増幅回路(図示しない)を介して制御手段に供給する。
【0024】
図2は、HUD装置1の電気的構成を示す図である。制御手段80は、CPU(Central Processing Unit)81と、RAM(Random Access Memory)82と、ROM(Read Only Memory)83と、データI/O回路84と、A/D変換器85と、駆動回路86と、これらを接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成される回路である。
CPU81は、他の各部82〜86と接続され、各種演算処理によって表示器20の表示制御や調光制御を行うものである。
RAM82は、CPU81における演算処理結果を一時記憶する読み出し及び書き換え可能なワークメモリとして機能するものである。
ROM83は、CPU81を動作させるプログラム等が記憶されるものである。
データI/O回路84は、CAN(Controller Area Network)と称される相互接続された機器間のデータ通信仕様に基づいて、車両側の各種システムと車両情報(車速やエンジン回転数等の各種検出信号)を取得するものである。
A/D変換器85は、光センサ70から出力されたアナログ電圧をデジタル値(照度検出値)に変換してCP81に出力するものである。
駆動回路86は、CPU81からの制御信号に応じて表示器20に駆動電流を出力し、表示器20の表示内容の変更や表示光Lの輝度調整を行う。
【0025】
次に、
図3及び
図4を用いてHUD装置1の制御方法について説明する。
まず、
図3はHUD装置1の表示制御処理全体のフローチャートを示している。
【0026】
CPU81は、車両のバッテリラインの接続などによってマイクロコンピュータに電源が投入されると、まず、ステップS1において各種機能の初期設定を行う。
【0027】
次に、CPU81は、ステップS2において、駆動回路86への電源供給を行う。
【0028】
次に、CPU81は、ステップS3において、データI/O回路84を介して車両側より前記車両情報を受信し、前記車両情報に基づいて表示器20に表示する表示画像データを作成する。
【0029】
次に、CPU81は、ステップS4において、後で詳述する調光制御処理によって今回の出力輝度値Pnを決定する。
【0030】
次に、CPU81は、ステップS5において、ステップS4で決定した今回の出力輝度値Pnを駆動回路86に出力する。駆動回路86は出力輝度値Pnに応じて表示器20を例えばPWM制御し、表示光Lの輝度を調整する。
【0031】
次に、CPU81は、ステップS6において、ステップS3において作成した表示画像データを駆動回路86に出力する。駆動回路86は表示画像データに応じて表示器20の表示内容を変更して、任意の表示画像を表示させる。
【0032】
CPU81は、以後ステップS3〜S6までの処理を電源が供給されなくなるまで繰り返し行う。
【0033】
次に、
図4を用いて、ステップS4における調光制御処理の詳細を説明する。
【0034】
まず、CPU81は、ステップS11において、光センサ70からA/D変換器85を介して外光Nの照度を示す照度検出値xを取得する。なお、照度検出値xは、今回分と過去3回分の合計4回分がRAM82に保持される。
【0035】
次に、CPU81は、ステップS12において、前述した今回分を含む4回分の照度検出値xについて単純移動平均化処理を行い、今回の平均照度値Xを算出する。なお、本実施形態においてはサンプリング数は4回であったが、サンプリング数は任意である。
【0036】
次に、CPU81は、ステップS13において、前回の照度変化の判定(後述する)からタイマ設定された設定時間t(例えば300msec)が経過したか否かを判定する。設定時間tが経過している場合(ステップS13;Yes)は、ステップS14に移行し、設定時間tが経過していない場合(ステップS13;No)は、ステップS19に移行する。
【0037】
ステップS14において、CPU81は、RAM82に記憶されている前回判定時の(すなわち、設定時間t前の)平均照度値X0と今回の平均照度値Xとの差の絶対値が予め定められる閾値hより小さいか否かを判定し、両者の差の絶対値が閾値hより小さい場合(|X0−X|<h、ステップS14;Yes)は照度変化がないと判定してステップS15に移行し、両者の差が閾値h以上である(|X0−X|≧h、ステップS14;No)場合は照度変化があると判定してステップS16に移行する。
【0038】
ステップS15において、CPU81は、ステップS14における今回の照度変化の判定結果の状態の種別を周囲照度に変化がない(照度変化なし)状態を示す「同」とする。その後、CPU81は、ステップS19に移行する。
【0039】
ステップS16において、CPU81は、前回判定時の平均照度値X0が今回の平均照度値Xより大きいか否かを判定し、前回判定時の平均照度値X0が今回の平均照度値Xより大きい(X0>X、ステップS16;Yes)場合は、ステップS17に移行し、前回判定時の平均照度値X0が今回の平均照度値Xより小さい(X0<X、ステップS16;No)場合は、ステップS18に移行する。
【0040】
ステップS17において、CPU81は、ステップS14における今回の照度変化の判定結果の状態の種別を周囲照度が低下した(照度低下)状態を示す「低」とする。その後、CPU81は、ステップS19に移行する。
【0041】
ステップS18において、CPU81は、ステップS14における今回の照度変化の判定結果の状態の種別を周囲照度が上昇した(照度上昇)状態を示す「高」とする。その後、CPU81は、ステップS19に移行する。
【0042】
ステップS19において、CPU81は、今回分を含む3回分の照度変化の判定結果の状態が連続して同種(「同」、「同」、「同」か「低」、「低」、「低」か「高」、「高」、「高」かのいずれか)であるか否かを判定し、状態が3回連続して同種である場合(ステップS19;Yes)はステップS20に移行し、同種の状態が3回連続しない場合(ステップS19;No)はステップS26に移行する。なお、状態が3回より多く連続して同種である場合も3回連続して同種である場合に含まれる。
【0043】
ステップS20において、CPU81は、3回連続した照度変化の判定結果の状態の種別が「高」であるか否かを判定し、状態の種別が「高」である場合(ステップS20;Yes)はステップS21に移行し、状態の種別が「高」でない場合(ステップS20;No)はステップS22に移行する。
【0044】
ステップS21において、CPU81は、今回の平均照度値Xが、現在設定されている目標基準値Yよりも大きいか否かを判定し、今回の平均照度値Xが目標基準値Yよりも大きい場合(ステップS21;Yes)は、ステップS25に移行し、今回の平均照度値Xが目標基準値Y以下である場合は(ステップS21;No)は、ステップS26に移行する。
【0045】
ステップS22において、CPU81は、3回連続した照度変化の判定結果の状態の種別が「低」であるか否かを判定し、状態の種別が「低」である場合(ステップS22;Yes)はステップS23に移行し、状態の種別が「低」でない場合(ステップS22;No)はステップS24に移行する。
【0046】
ステップS23において、CPU81は、今回の平均照度値Xが、現在設定されている目標基準値Yよりも小さいか否かを判定し、今回の平均照度値Xが目標基準値Yよりも小さい場合(ステップS23;Yes)は、ステップS25に移行し、今回の平均照度値Xが目標基準値Y以上である場合は(ステップS23;No)は、ステップS26に移行する。
【0047】
ステップS24において、CPU81は、今回分を含む50回分の照度変化の判定結果の状態が連続して「同」であるか否かを判定し、状態が50回連続して「同」である場合(ステップS24;Yes)はステップS25に移行し、状態が50回連続して「同」でない場合(ステップS24;No)はステップS26に移行する。なお、状態が50回より多く連続して同種である場合も50回連続して同種である場合に含まれる。
【0048】
ステップS25において、CPU81は、目標基準値Yの更新を行い、今回の平均照度値Xを新たな目標基準値Yとする。その後、CPU81は、ステップS26に移行する。
【0049】
ステップS26において、CPU81は、設定されている目標基準値Yに対応する目標輝度値Ptを読み出し、さらに目標輝度値Ptに基づいて出力輝度値Pnを算出する。
具体的には、まず、CPU81は、複数の目標基準値Yと目標基準値Yの各々に対応する複数の目標輝度値Ptとからなり、ROM83に記憶されるデータテーブルを参照して、現在設定されている目標基準値Yに対応する目標輝度値Ptを決定する。なお、このデータテーブルにおける目標基準値Yと目標輝度値Ptとの対応関係は、目標輝度値Ptが、目標基準値Y、すなわち周囲照度に対して観察者2が表示画像(虚像V)を視認しやすい値となるように定められる。
そして、CPU81は、前回の出力輝度値Poから決定された目標輝度値Ptに対して一定の割合で近づかせるように今回の出力輝度値Pnを算出する。具体的には、Pn=Po+(Pt−Po)/a(aは係数)で示される式によって今回の出力輝度値Pnを得る。この式は、目標輝度値Ptと前回の出力輝度値Poとの差分を係数aで除して輝度値の増加分を算出し、この増加分を前回の出力輝度値Poに加算して今回の出力輝度値Pnを得るものである。このようにして今回の出力輝度値Pnを算出するのは、前回の出力輝度値Poから目標輝度値Ptに直接変化させると急激な輝度変化が生じ、観察者2の妨げとなるためである。なお、係数aは常に一定である必要はなく、表示輝度を上昇させる場合と低下させる場合とで異なる値を用いてもよい。一般的に、明順応は暗順応よりも必要とする時間が短いため、表示輝度を上昇させる場合は係数aの値を小さくして目標輝度値Ptに達するまでの時間を短くし、表示輝度を低下させる場合は係数aの値を大きくして目標輝度値Ptに達するまでの時間を長くすることで、人間の目の特性に適合した輝度調整を実現できる。
【0050】
以上の処理を実行することによって、CPU81は、設定時間t毎に照度変化の判定を行う。そして、照度変化の判定結果の状態が3回連続して「高」であると、次の判定を行うまでの間(すなわちステップS13;Noとなる設定時間t経過までの間)、今回の平均照度値Xが目標基準値Yより大きい場合にのみ目標基準値Yを今回の平均照度値Xに更新して、目標基準値Y(すなわち今回の平均照度値X)に基づいて表示輝度の調整を行う。なお、平均照度値Xの算出は、表示画像の更新周期に合わせて設定時間tよりも短い周期(例えば100msec)で行われる。また、照度変化の判定結果の状態が3回連続して「低」であると、今回の平均照度値Xが目標基準値Yより小さい場合にのみ目標基準値Yを今回の平均照度値Xに更新して、目標基準値Y(すなわち今回の平均照度値X)に基づいて表示輝度の調整を行う。また、照度変化の判定結果の状態が50回連続して「同」であると、目標基準値Yを今回の平均照度値Xに更新して、目標基準値Y(すなわち今回の平均照度値X)に基づいて表示輝度の調整を行う。上記以外の場合は、目標基準値Yの更新は行われず、目標基準値Y(すなわち今回の平均照度値Xでなく、それ以前の平均照度値)に基づいて表示輝度の調整を行う。この場合、前回の出力輝度値Poが目標輝度値Ptに達していなければ継続して目標輝度値Ptに近づくように表示輝度の調整が行われ、既に前回の出力輝度値Poが目標輝度値Ptに達していれば表示輝度が維持されることとなる。
【0051】
本実施形態であるHUD装置1及びその制御方法は、制御手段80のCPU81により、光センサ70の検出結果(照度検出値x)に基づいて算出される今回の平均照度値X(今回の照度値)と前回判定時の平均照度値X0(前回判定時の照度値)との差の絶対値が所定の閾値h未満である場合は照度変化がないと判定し(|X0−X|<h、ステップS14;Yes)、今回の平均照度値Xと前回判定時の平均照度値X0との差の絶対値が閾値h以上である場合は照度変化があると判定し(|X0−X|≧h、ステップS14;No)、3回(第一の回数)連続して照度変化があると判定される場合に、今回の平均照度値Xに応じて表示器20の表示輝度を調整する(ステップS25、S26)ものである。
これによって、照度検出値xの微小なバラツキが連続する場合であっても、閾値hによって微小なバラツキによる変化を照度変化があるとの判定から除外することができ、表示輝度の調整の応答性を低下させることなく表示輝度の変更による表示のちらつきを低減することが可能となる。
【0052】
さらに、本実施形態であるHUD装置1及びその制御方法は、制御手段80のCPU81により、50回(第二の回数)連続して照度変化がないと判定された場合(ステップS24;Yes)に、今回の平均照度値Xに応じて表示器20の表示輝度を調整する(ステップS25、S26)ものである。
これによって、閾値hの範囲内で徐々に照度変化が生じ、実際の周囲の照度と表示輝度とが適合しなくなる場合があっても、一定周期(本実施形態では50回の判定を行うのに必要な時間毎)に実際の照度に適した表示輝度に修正することができる。なお、この場合、修正の周期が短いと表示のちらつきとなるおそれがあるため、周期を比較的長く設定することが望ましい。
【0053】
また、本実施形態であるHUD装置1及びその制御方法は、制御手段80のCPU81により、平均照度値Xを照度変化の判定をする周期(設定時間t)よりも短い周期で算出し、照度変化の判定結果の状態が照度変化なし(「同」)、照度上昇(「高」)あるいは照度低下(「低」)のいずれであるかを判定し(ステップS14〜S18)、3回連続して照度変化があると判定されている間は平均照度値Xの変化の状態(平均照度値Xの目標基準値Yに対する大小)が照度変化の判定結果の状態と一致する場合(連続する照度変化の判定結果の状態が「高」であればX>Yである場合、「低」であればX<Yである場合、ステップS20〜S23)にのみ今回の平均照度値Xに応じて表示器20の表示輝度を調整する(ステップS25、S26)ものである。
従来、3回連続して照度変化があると判定されている間に単にその間算出される今回の平均照度値Xに応じた(今回の平均照度値Xを目標基準値Yに更新した)表示器20の表示輝度の調整を行うと、平均照度値Xにバラツキが生じる場合に出力輝度値Pnが安定せず、表示のちらつきとなる場合がある。これに対し、上記のようにすることで、照度変化の判定結果の状態と異なる平均照度値Xの変化があっても、表示輝度の調整を行う基準として採用されないため(目標基準値Yに更新されないため)、照度変化の判定がされる間の出力輝度値Pnを安定化させ、表示のちらつきを抑制することが可能となる。
【0054】
以上の説明は本発明を例示するものであって、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、変形が可能であることは言うまでもない。本実施形態は表示画像の虚像Vを観察者2に視認させるHUD装置1であったが、表示画像を観察者が直接視認する直視型の表示装置に本発明を適用してもよい。また、本発明は表示画像の周囲の照度変化が激しい車載用の表示装置に特に効果を奏するが、周囲照度が変化する環境下での使用が想定される表示装置であれば車載用以外にも適用することができる。