特許第6041129号(P6041129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041129
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 7/06 20060101AFI20161128BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20161128BHJP
   G09F 19/12 20060101ALI20161128BHJP
   G09F 21/04 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G01D7/06
   B60K35/00 A
   G09F19/12 Z
   G09F21/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-200651(P2012-200651)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-55847(P2014-55847A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】海発 和行
(72)【発明者】
【氏名】三上 貴史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐一
(72)【発明者】
【氏名】山添 尚
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−249752(JP,A)
【文献】 特開2006−103508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 7/00 − 12
B60K 35/00 − 37/02
G09F 19/12
G09F 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認者側に実像用表示部を向けて配置された実像用表示ユニットと、
前記視認者側とは反対側に虚像用表示部を向けて配置された虚像用表示ユニットと、
前記実像用表示ユニットから出射される第1表示光を前記視認者側に透過させるとともに前記虚像用表示ユニットから出射される第2表示光を前記視認者側に反射させる透過反射部材と、
前記実像用表示ユニットと前記虚像用表示ユニットとを収容するハウジングとを備え、
前記透過反射部材は、前記実像用表示ユニットと前記虚像用表示ユニットとの間に介在するように前記ハウジングに配設され、
前記実像用表示ユニットから出射されて前記透過反射部材を透過する前記第1表示光による実像と、前記虚像用表示ユニットから出射されて前記透過反射部材にて反射された前記第2表示光による虚像とが並設された状態で視認され
前記透過反射部材は、前記虚像が風景と重畳されるようにその所要部が前記ハウジングの上方側に延出していることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載され、車速やエンジン回転数等の各種情報を表示する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の表示装置にあっては、例えば下記特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1に記載の表示装置は、車両のインストルメントパネルに設けられた車両用計器からなり、車速をデジタル表示する第1の表示ユニットと、この第1の表示ユニットと離間するように第1の表示ユニットの下方側に位置し、車両のエンジン回転数や燃料計、水温計等をアナログ表示する第2の表示ユニットとを備え、車両の運転席に着座する運転者は両表示ユニットに表示される車速やエンジン回転数等の車両情報を視認しながら車両を運転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−290590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置の場合、両表示ユニットに表示される車速やエンジン回転数等の車両情報は、ともに実像表示となっていることから、実像表示される前記車両情報の表示形態が単純なものとならざるを得なく斬新さに欠けていた。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、2つの表示ユニットを利用して新規な見栄えを実現し得る表示装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、視認者側に実像用表示部を向けて配置された実像用表示ユニットと、前記視認者側とは反対側に虚像用表示部を向けて配置された虚像用表示ユニットと、前記実像用表示ユニットから出射される第1表示光を前記視認者側に透過させるとともに前記虚像用表示ユニットから出射される第2表示光を前記視認者側に反射させる透過反射部材と、前記実像用表示ユニットと前記虚像用表示ユニットとを収容するハウジングとを備え、前記透過反射部材は、前記実像用表示ユニットと前記虚像用表示ユニットとの間に介在するように前記ハウジングに配設され、前記実像用表示ユニットから出射されて前記透過反射部材を透過する前記第1表示光による実像と、前記虚像用表示ユニットから出射されて前記透過反射部材にて反射された前記第2表示光による虚像とが並設された状態で視認され、前記透過反射部材は、前記虚像が風景と重畳されるようにその所要部が前記ハウジングの上方側に延出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、初期の目的を達成でき、2つの表示ユニットを利用して新規な見栄えを実現し得る表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態による表示装置の断面図。
図2】同実施形態による視認者側から透過反射部材を見たときの実像と虚像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図2に基づいて、本発明を車両のインストルメントパネルに設けられた車両用計器に適用した一実施形態を説明する。
【0010】
図1において、本実施形態による表示装置としての車両用計器は、例えば自動車等の運転席に着座する運転者(視認者)Dの前方となる車両のインストルメントパネルに設けられ、運転者D側に後述する実像用表示部を向けて配置された実像用表示ユニット10と、運転者D側とは反対側に後述する虚像用表示部を向けて配置された虚像用表示ユニット20と、実像用表示ユニット10と虚像用表示ユニット20との間に位置(介在)するハーフミラー(透過反射部材)30と、実像用表示ユニット10と虚像用表示ユニット20とを収容するハウジング40とから主に構成されている。
【0011】
実像用表示ユニット10は、実像用表示部である第1の表示素子11と、この第1の表示素子11のソース線(信号線)を駆動するソース線駆動回路(図示せず)と、表示素子11のゲート線(走査線)を駆動するゲート線駆動回路(図示せず)と、導光体12aや光源12b、フレキシブル配線板12c等から構成され、第1の表示素子11に照明光を導くための照明手段12と、第1の表示素子11及び導光体12aを保持する略平板状の白色樹脂からなる樹脂ケース13と、前面フレーム14と背面フレーム15とでなり、実像用表示ユニット10の外装ケースを構成する導電性材料からなるフレーム体16と、前記ソース線駆動回路及び前記ゲート線駆動回路のタイミングを制御する各種タイミング信号を生成するタイミングコントローラ等が搭載されたプリント基板(図示せず)とを備え、適宜固定手段を用いてハウジング40に固定されている。
【0012】
そして、この場合、前面フレーム14と背面フレーム15とから構成されるフレーム体16は、その内部に第1の表示素子11や導光体12a、光源12b、樹脂ケース13等を収納する。なお、必要に応じて、第1の表示素子11を略均一にバックライト照明するための光学部材(例えば拡散シートやプリズムシート)を第1の表示素子11と導光体12aとの間に1つ以上配置してもよい。
【0013】
第1の表示素子11は、例えば一対の透光性基板に液晶を封入した液晶セルの前後面に偏光膜を各々設けたTFT(薄膜トランジスタ)型の液晶表示パネルからなり、車両に搭載された車速センサを除く各種センサからの検出信号に基づいて、燃料計、燃料消費、外気温等の車両情報(所定情報)を表示する実像用の表示部からなるものである。この実像用の表示部は、第1の表示素子11の表示領域(図示せず)に表示される。
【0014】
なお、実像用表示部である第1の表示素子11に表示される表示情報(前記所定情報)は、前記車両情報以外に、例えばナビゲーション情報や車両の後進時に表示されるバックモニタ情報であってもよい。また、必要に応じて、前記表示領域表面での外光反射を防ぐために、前記表示領域表面に低反射処理を施すようにしてもよい。
【0015】
導光体12aは、略平板状の透光性合成樹脂からなり、第1の表示素子11の背面に沿うように配置される。別の言い方をすれば、導光体12aは、光源12bから第1の表示素子11へと至る照明光路中に配置されていることになる。
【0016】
光源12bは、適宜色を発するチップ型発光ダイオードからなり、導光体12aの上側に位置する一側面12dに沿うように列状に複数個配置され、第1の表示素子11に照明光を供給する発光体からなる。そして、光源12bからの照明光が第1の表示素子11を透過することで、第1の表示素子11からは前記所定情報を示す表示光である第1表示光L1がハーフミラー30に向けて出射される。
【0017】
前面フレーム14は、略枠状に成形され、その中央部には、表示素子11に対応するように略矩形状の開口窓からなる表示窓部14aが形成されている。また、前面フレーム14と対をなす背面フレーム15は、断面略凹部形状にて形成され、樹脂ケース13の背面側を覆うように設けられる。
【0018】
そして、図1中、背面フレーム15の上方に位置する壁部15aの内壁面には、フレキシブル配線板12cが適宜固定手段を用いて固定され、各光源12bは、導光体12aの一側面12dと対向するようにフレキシブル配線板12cに設けられる導電路(図示せず)に実装される。
【0019】
虚像用表示ユニット20は、実像用表示ユニット10の配設位置よりも運転者D側に近い位置に配設され、回路基板21と、回路基板21に実装された発光体22と、この発光体22からの照明光を透過して第2表示光L2を形成するように発光体22の前方側に位置する虚像用表示部である第2の表示素子23と、回路基板21と発光体22と第2の表示素子23とを収納するケース体24とを備え、適宜固定手段を用いてハウジング40に固定されている。
【0020】
回路基板21は、例えば所定の配線パターンが施された配線基板からなり、前記配線パターン上に発光体22が搭載されている。
【0021】
発光体22は、適宜色を発するチップ型発光ダイオードからなり、第2の表示素子23に照明光を供給する発光体である。
【0022】
第2の表示素子23は、実像用表示ユニット10に備えられる第1の表示素子11と同様にTFT型の液晶表示パネルからなるものである。この第2の表示素子23は、車両に搭載された車速センサからの車速検出信号に基づいて車速を表示する虚像用の表示部からなるものである。この虚像用の表示部は、第2の表示素子23の表示エリア(図示せず)に表示される。
【0023】
なお、必要に応じて、前記表示エリア表面での外光反射を防ぐために、前記表示エリア表面に低反射処理を施すようにしてもよいし、発光体22と第2の表示素子23との間に発光体22側が平坦面であって、第2の表示素子23側が凸面となるレンズ部材を配置してもよい。
【0024】
ケース体24は、合成樹脂からなり、略箱形状にて形成され、第2の表示素子23の表示エリア(図示せず)を臨ませるための開口部24aを備えている。そして、第2の表示素子23から発せられる車速表示光である第2表示光L2は、開口部24aを通過してハーフミラー30側に導かれる構成となっている。
【0025】
ハーフミラー30は、例えば暗色系の着色されたガラスまたは合成樹脂材からなり、その運転者D側を向く面は所定の曲率を有する凹面となっている。なお、場合によっては、ハーフミラー30の表面(運転者D側を向く面)に光干渉膜からなる反射膜を被着してもよい。
【0026】
このハーフミラー30は、実像用表示ユニット10と虚像用表示ユニット20との間に位置(介在)するようにハウジング40に適宜固定手段を用いて固定(配設)され、実像用表示ユニット10から出射される第1表示光L1を運転者D側に透過させるとともに虚像用表示ユニット20から出射される第2表示光L2を運転者D側に反射させるものである。
【0027】
また、この場合、ハーフミラー30は、略直立状態となるようにハウジング40に固定され、実像P1と虚像P2とのうち、虚像P2のみが風景と重畳されるようにその所要部がハウジング40の上方側に延出している(飛び出している)。なお、ここでの所要部とは、図2に示すようにハーフミラー30を上下に2等分したときの上半分の領域(以下、上側領域R1と言う)を指す。
【0028】
図2は、運転者Dがハーフミラー30を正視したときに、運転者Dが視認する実像P1と虚像P2とを示している。
【0029】
具体的には、ハーフミラー30における上側領域R1には、虚像用表示ユニット20から発せられる第2表示光L2によって、車速表示像を示す虚像P2が風景と重畳されるように表示される。一方、上側領域R1以外の領域となるハーフミラー30の下半分の領域(以下、下側領域R2と言う)には、実像用表示ユニット10から発せられる第1表示光L1によって、虚像P2とは異種の表示像(例えば走行距離表示像)を示す実像P1が表示される。なお、実像P1は虚像P2よりも近い位置に視認される。
【0030】
つまり、本例の場合、運転者D側からハーフミラー30を見ると、運転者Dは、実像用表示ユニット10から出射されてハーフミラー30を透過する第1表示光L1による実像P1と、虚像用表示ユニット20から出射されてハーフミラー30にて反射された第2表示光L2による虚像P2とが上下に並設された状態で視認され、しかも虚像P2は実像P1の表示位置よりも遠方に位置しているかのごとく視認される構成となっている。
【0031】
従って、従来の場合は、両表示ユニットに表示される車両情報がともに実像表示されていたのに対し、本実施形態では運転者Dがハーフミラー30越しに視認する実像P1と虚像P2のうち、前記異種の表示像である実像P1は風景と重畳されない状態で実像表示されるとともに、実像P1と隣接している虚像P2(車速表示像)は風景と重畳され、且つ、実像P1の表示位置よりも遠方に位置しているかのごとく虚像表示されることから、ハーフミラー30越しに視認される車両情報が一風変わった斬新さのある(面白みのある)ものとなり、新規な見栄えを実現することができる。
【0032】
ハウジング40は、例えば黒色の合成樹脂材料もしくはアルミダイキャストにて形成されてなり、上側ケース41と下側ケース42とを備え、上側ケース41と下側ケース42とで形成される内部空間である空間部43において、実像用表示ユニット10と虚像用表示ユニット20とを収容している。
【0033】
上側ケース41には、虚像用表示ユニット20から出射される第2表示光L2を通過させるための開口窓部44が形成されている。なお、図1中、45は上側ケース41の開口窓部44を塞ぐように配設される透光性合成樹脂材料からなる透光性カバーであり、虚像用表示ユニット20から出射される第2表示光L2は、透光性カバー45を透過してハーフミラー30(上側領域R1)へと導かれる。
【0034】
以上のように本実施形態では、運転者D側に第1の表示素子(実像用表示部)11を向けて配置された実像用表示ユニット10と、運転者D側とは反対側に第2の表示素子(虚像用表示部)23を向けて配置された虚像用表示ユニット20と、実像用表示ユニット10から出射される第1表示光L1を運転者D側に透過させるとともに虚像用表示ユニット20から出射される第2表示光L2を運転者D側に反射させるハーフミラー30と、実像用表示ユニット10と虚像用表示ユニット20とを収容するハウジング40とを備え、ハーフミラー30は、実像用表示ユニット10と虚像用表示ユニット20との間に介在するようにハウジング40に配設され、実像用表示ユニット10から出射されてハーフミラー30を透過する第1表示光L1による実像P1と、虚像用表示ユニット20から出射されてハーフミラー30にて反射された第2表示光L2による虚像P2とが並設された状態で視認されるものである。また、ハーフミラー30は、虚像P2が風景と重畳されるようにその前記所要部がハウジング40の上方側に延出しているものである。
【0035】
従って、運転者Dがハーフミラー30越しに視認する実像P1と虚像P2のうち、前記異種の表示像である実像P1は風景と重畳されない状態で実像表示されるとともに、実像P1と隣接している虚像P2(車速表示像)は風景と重畳され、且つ、実像P1の表示位置よりも遠方に位置しているかのごとく虚像表示されることから、ハーフミラー30越しに視認される車両情報が一風変わった斬新さのある(面白みのある)ものとなり、新規な見栄えを実現することができる。
【0036】
また本実施形態では、実像用表示ユニット10としてTFT型の液晶表示パネル(つまり第1の表示素子11)が用いられている例について説明したが、例えば実像用表示ユニット10として、アナログ式(指針式)のエンジン回転計、燃料計、水温計等を含む実像用表示ユニットを採用してもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、虚像用表示ユニット20から出射される第2表示光L2により車速表示像である虚像P2が表示され、実像用表示ユニット10から出射される第1表示光L1により虚像P2とは種類の異なる前記異種の表示像である実像P1が表示される例について説明したが、実像P1と虚像P2にて表示される表示像は、種類の異なる表示像であればあらゆる表示像を採用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
10 実像用表示ユニット
11 第1の表示素子
12 照明手段
13 樹脂フレーム
16 フレーム体
20 虚像用表示ユニット
21 回路基板
22 発光体
23 第2の表示素子
30 ハーフミラー(透過反射部材)
40 ハウジング
45 透光性カバー
D 運転者(視認者)
L1 第1表示光
L2 第2表示光
P1 実像
P2 虚像
図1
図2