特許第6041134号(P6041134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041134放射性廃棄物貯蔵施設、廃棄物ユニットを有する構造物及び放射性廃棄物貯蔵方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041134
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】放射性廃棄物貯蔵施設、廃棄物ユニットを有する構造物及び放射性廃棄物貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20161128BHJP
   G21C 17/00 20060101ALI20161128BHJP
   G01T 1/167 20060101ALI20161128BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G21F9/36 541A
   G21C17/00 D
   G01T1/167 C
   G21F9/30 515Z
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-265734(P2012-265734)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-52362(P2014-52362A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-174144(P2012-174144)
(32)【優先日】2012年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】石井 卓
(72)【発明者】
【氏名】大石 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】木下 哲一
【審査官】 後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−520967(JP,A)
【文献】 特開昭62−161098(JP,A)
【文献】 特開昭58−071498(JP,A)
【文献】 特開昭62−130398(JP,A)
【文献】 特開昭61−159200(JP,A)
【文献】 特開昭63−128298(JP,A)
【文献】 特開昭62−021100(JP,A)
【文献】 特開2013−117479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/36
G21F 9/34
G21F 9/30
G01T 1/167
G21C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質を含む廃棄物を保管する放射性廃棄物貯蔵施設であって、
該廃棄物が貯蔵される貯蔵容器と、
該貯蔵容器内に貯蔵された前記廃棄物における前記放射性物質の濃度を測定する第一測定装置とを有し、
前記貯蔵容器には、該貯蔵容器の表面から内部に向かって管状部材が設けられ、
前記第一測定装置は、前記管状部材の延在方向に該管状部材の内部を進退可能とされていることを特徴とする放射性廃棄物貯蔵施設。
【請求項2】
請求項に記載の放射性廃棄物貯蔵施設において、
前記管状部材が複数設けられていることを特徴とする放射性廃棄物貯蔵施設。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の放射性廃棄物貯蔵施設において、
前記廃棄物は、セメント及び水と混合されて固化されていることを特徴とする放射性廃棄物貯蔵施設。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の前記貯蔵容器と、該貯蔵容器に貯蔵され前記放射性物質の濃度が閾値以下とされた前記廃棄物とを有する廃棄物ユニットを構造体として利用したことを特徴とする構造物。
【請求項5】
放射性物質を含む廃棄物を保管する放射性廃棄物貯蔵方法であって、
該廃棄物を貯蔵容器に貯蔵する貯蔵工程と、
該貯蔵容器内に貯蔵する際の前記廃棄物における前記放射性物質の濃度を測定する第一測定工程と、
該貯蔵容器内に貯蔵された前記廃棄物における前記放射性物質の濃度を定期的に測定する定期測定工程と、
該定期測定工程における前記放射性物質の濃度が閾値以下であるか否かを判定する判定工程とを備え
前記第一測定工程及び前記定期測定工程は、前記貯蔵容器の表面から内部に向かって設けられた管状部材の延在方向に、該管状部材の内部に測定装置を進退させて、前記廃棄物における前記放射性物質の濃度を測定することを特徴とする放射性廃棄物貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物貯蔵施設、廃棄物ユニットを有する構造物及び放射性廃棄物貯蔵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有害物質であるセシウム等の放射性物質を含む土壌又は建築物においては、当該土壌又は建築物から放射性物質を取り除いて、該土壌又は建築物を健全な状態として使用することが進められている。
【0003】
ここで、除去された放射性物質を含む廃棄物は、仮置き場所に一時的に仮置きされた後、貯蔵施設において該放射性物質の濃度が低減されるまで保管管理される。そして、将来的には、原子力施設等から排出される放射性廃棄物と同様に処分容器に格納されて、地中に設けられた処分施設に長期間にわたって収容される予定である(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−298319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、非常に大量の廃棄物が排出された場合には、該廃棄物を格納する処分容器が多数必要であるとともに、これら多数の処分容器を埋設するために大規模な処分施設を建設しななければならない。よって、大規模な処分施設の建築場所を確保することが困難であるばかりか、コストが嵩むという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、将来的な再利用を可能とするように廃棄物を安全に管理することができる放射性廃棄物貯蔵施設、廃棄物ユニットを有する構造物及び放射性廃棄物貯蔵方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る放射性廃棄物貯蔵施設は、放射性物質を含む廃棄物を保管する放射性廃棄物貯蔵施設であって、該廃棄物が貯蔵される貯蔵容器と、該貯蔵容器内に貯蔵された前記廃棄物における前記放射性物質の濃度を測定する第一測定装置とを有し、前記貯蔵容器には、該貯蔵容器の表面から内部に向かって管状部材が設けられ、前記第一測定装置は、前記管状部材の延在方向に該管状部材の内部を進退可能とされていることを特徴とする。
また、本発明に係る放射性廃棄物貯蔵方法は、該廃棄物を貯蔵容器に貯蔵する貯蔵工程と、該貯蔵容器内に貯蔵する際の前記廃棄物における前記放射性物質の濃度を測定する第一測定工程と、該貯蔵容器内に貯蔵された前記廃棄物における前記放射性物質の濃度を定期的に測定する定期測定工程と、該定期測定工程における前記放射性物質の濃度が閾値以下であるか否かを判定する判定工程とを備え、前記第一測定工程及び前記定期測定工程は、前記貯蔵容器の表面から内部に向かって設けられた管状部材の延在方向に、該管状部材の内部に測定装置を進退させて、前記廃棄物における前記放射性物質の濃度を測定することを特徴とする。
【0008】
このような放射性廃棄物貯蔵施設及び放射性廃棄物貯蔵方法では、貯蔵容器により放射性物質を含む廃棄物を貯蔵できるとともに、第一測定装置(第一測定工程、定期測定工程)により該廃棄物の放射性物質の濃度を把握することができる。よって、貯蔵期間中における廃棄物の放射性物質の濃度を把握できるため、廃棄物を安全に保管することができる。
また、判定工程により放射性物質の濃度が閾値以下となった廃棄物については、再利用することが可能となる。
さらに、貯蔵容器に貯蔵された廃棄物の表面から所望の深さにおける廃棄物の放射性物質の濃度を測定することができるため、貯蔵容器中の放射性物質の正確な濃度を把握することができる。
【0011】
また、本発明に係る放射性廃棄物貯蔵施設は、前記管状部材が複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
このような放射性廃棄物貯蔵施設では、貯蔵容器に貯蔵された廃棄物における所望の箇所の廃棄物の放射性物質の濃度を測定することができるため、放射性物質のより正確な濃度を把握することができる。
【0013】
また、本発明に係る放射性廃棄物貯蔵施設は、前記廃棄物は、セメント及び水と混合されて固化されていることを特徴とする。
【0014】
このような放射性廃棄物貯蔵施設では、廃棄物がセメント及び水と混合されて固化されている剛性が大きくなるため、外力等の影響を受けた場合でも破損する虞がなく安定的に貯蔵することができる。
【0017】
また、本発明に係る構造物は、上記に記載の前記貯蔵容器と、該貯蔵容器に貯蔵され前記放射性物質の濃度が閾値以下とされた前記廃棄物とを有する廃棄物ユニットを構造体として利用したことを特徴とする。
【0018】
このような構造物では、廃棄物ユニットは内部に廃棄物を貯蔵して強固とされるため、該廃棄物の放射性物質の濃度が保管により低減して閾値以下となった後には、構造物の内部の躯体、土台又は基礎等として活用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る放射性廃棄物貯蔵施設、廃棄物ユニットを有する構造物及び放射性廃棄物貯蔵方法によれば、貯蔵期間中における廃棄物の放射性物質の濃度を把握できるため、廃棄物を安全に保管することができ、判定工程により放射性物質の濃度が閾値以下となった廃棄物については、再利用することが可能となる。よって、将来的な再利用を可能とするように廃棄物を安全に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一実施形態に係る(a)放射性廃棄物貯蔵施設の概略斜視図、(b)放射性廃棄物貯蔵施設の内部を示す分解概略斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る放射性廃棄物貯蔵施設を構成する(a)貯蔵容器の上部が開放された斜視図、(b)貯蔵容器に廃棄物を貯蔵した状態の斜視図、(c)貯蔵容器の斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る放射性廃棄物貯蔵施設を構成する第一測定装置の構成を示す概略斜視図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る第一測定装置により廃棄物中の放射性物質の能動(放射能濃度)を測定した結果を表すグラフである。
図5】本発明の第一実施形態に係る第一測定装置により廃棄物中の放射能濃度を測定した結果の年月による変化を表すグラフである。
図6】本発明の第一実施形態に係る廃棄物ユニットを用いた構造物を示す概略斜視図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る加工工程を示す模式図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る第一測定装置により廃棄物中の放射能濃度を測定した結果を表すグラフである。
図9】本発明の第二実施形態に係る第一測定装置により廃棄物中の放射能濃度を測定した結果の年月による変化を表すグラフである。
図10】本発明の第四実施形態に係る放射性廃棄物貯蔵施設を構成する(a)貯蔵容器の上部が開放された斜視図、(b)貯蔵容器に廃棄物を貯蔵した状態の斜視図、(c)貯蔵容器の斜視図である。
図11】本発明の第四実施形態に係る放射性廃棄物貯蔵施設を構成する第一測定装置が(a)貯蔵容器の上方に位置している場合の概略斜視図、(b)貯蔵容器の内部に位置している場合の概略斜視図である。
図12】本発明の第四実施形態に係る第一測定装置により廃棄物中の放射能濃度を測定した結果の年月による変化を表すグラフである。
図13】本発明の第四実施形態に係る廃棄物ユニットを用いた構造物において、第一測定装置により放射性物質の濃度を測定する概略斜視図である。
図14】本発明の第四実施形態の変形例に係る廃棄物ユニットを用いた構造物において、第一測定装置により放射性物質の濃度を測定する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態である放射性廃棄物貯蔵施設1について、図1〜6を用いて説明する。
【0028】
図1に示すように、放射性廃棄物貯蔵施設1は、放射性物質を含む廃棄物Zを保管するものである。
ここで、放射性物質としては、例えばセシウム−134やセシウム−137等が挙げられる。廃棄物Zとしては、これら放射性物質を含む土壌、建築物又は植物等が挙げられる。
【0029】
この放射性廃棄物貯蔵施設1は、地上に設けられており、躯体をなす構造部10と、該構造部10の内部に配設され廃棄物Zが貯蔵された複数の貯蔵容器20と、廃棄物Z中の放射性物質の濃度を測定する第一測定装置30及び第二測定装置40とを備えている。
【0030】
構造部10は、床部11と、該床部11から立設された複数の外壁部12と、該複数の外壁部12で形成された空間の上部を覆う屋根部13とを備えている。
この床部11には、外壁部12の長手方向に沿って延在し下方に向かって凹む溝14が形成されており、該溝14は雨水が構造部10内に浸水した場合に該雨水を集約して外部に導くことが可能とされている。
【0031】
図2に示すように、貯蔵容器20は、底部21と、該底部21から立設された複数の側壁部22と、該複数の側壁部22で形成された空間を覆う蓋部23とを有しており、本実施形態ではこれら底部21、複数の側壁部22及び蓋部23により略直方体状に形成されている。
【0032】
図1(b)に示すように、放射性廃棄物貯蔵施設1には、このように構成された貯蔵容器20が、外壁部12の長手方向及び短手方向に向かってそれぞれ複数配設されるとともに、上下方向に向かって複数配設されている。
【0033】
また、本実施形態では、貯蔵容器20は、鉄筋コンクリート、鋼材、コンクリートやセラミック等の剛性の高い材料で構成されるとともに密閉空間とされることで、該貯蔵容器20内に貯蔵された廃棄物Zが漏出する虞がない。
【0034】
また、貯蔵容器20は、内部に廃棄物Zが貯蔵された状態で、該廃棄物から放射性物質を漏出させない耐久性を有している。
【0035】
また、貯蔵容器20は、例えば略直方体状に輸送用コンテナサイズに形成され、剛性の高い材料で構成されているため、放射性廃棄物貯蔵施設1から搬出可能とされている。
なお、貯蔵容器20の形状としては、直方体状に限られず円柱状であってもよい。
【0036】
図3に示すように、第一測定装置30は、貯蔵容器20の蓋部23(図2(c)参照)が取り外された密閉前の状態で、該貯蔵容器20に貯蔵された廃棄物Zの上面の放射性物質の濃度を測定するものである。
【0037】
この第一測定装置30は、本実施形態では貯蔵容器20の外壁部12の長手方向に向かって設けられたレール部31と、該レール部31に沿って移動可能とされた支持部32と、該支持部32により支持されるとともに放射性物質の濃度を測定可能な測定部33と、支持部32及び測定部33と一体とされたレール部31を外壁部12の短手方向に向かって移動させる移動部(不図示)とを有している。
測定部33としては、例えばガイガーミュラー計数管等が挙げられる。
【0038】
ここで、移動部により外壁部12の短手方向に移動されるラインを順に、第一ラインL1、第二ラインL2及び第三ラインL3とする。
【0039】
貯蔵容器20に廃棄物Zを貯蔵した直後に、測定部33により測定された結果の一例を図4のグラフに示す。当該グラフの横軸は長手方向の端部P(図3参照)からの距離を表し、縦軸は該距離に応じた箇所の放射性物質中の濃度(放射能濃度)を表している。そして、第一ラインL1、第二ラインL2、第三ラインL3毎の距離に応じた放射能濃度を折れ線グラフとして表記している。
【0040】
ここで、第一測定装置30により放射性物質の濃度を測定した後に、貯蔵容器20の蓋部23を閉じて、図示しない溶接機により該貯蔵容器20を密閉状態とする。そして、この状態で、廃棄物Zが貯蔵された貯蔵容器20は放射性廃棄物貯蔵施設1内に保管される。
【0041】
そして、保管中に随時、貯蔵容器20の蓋部23を開いて、第一測定装置30により上記と同様にして放射性物質の濃度を測定することができる。なお、貯蔵容器20を放射性廃棄物貯蔵施設1内の別の場所や、該放射性廃棄物貯蔵施設1から搬出して測定することとしてもよい。
【0042】
図1に示すように、第二測定装置40は、例外的に貯蔵容器20から漏出した廃棄物Zにおける放射性物質の濃度を測定するものである。この第二測定装置40は、例えばゲルマニウム半導体検出器、シンチレーション検出器等で構成されている。
【0043】
例えば、屋根部13から漏水した雨水が貯蔵容器20に滴下して、該貯蔵容器20内に浸入した雨水が廃棄物Zと接触して、放射性物質を含んだ汚染水として床部11に形成された溝14に排水された場合において、第二測定装置40は当該放射性物質の濃度を測定できるように構成されている。
【0044】
次に、上記の放射性廃棄物貯蔵施設1における放射性廃棄物貯蔵方法について説明する。
放射性廃棄物貯蔵方法は、貯蔵工程と、第一測定工程と、定期測定工程と、貯蔵容器20から放射性物質が例外的に漏出した場合に実行する第二測定工程と、判定工程とを備えている。
【0045】
まず、貯蔵工程を実行して、廃棄物Zを貯蔵容器20に貯蔵する。
すなわち、図2(a)に示すように貯蔵容器20の蓋部23を開いて、図2(b)に示すように該貯蔵容器20の内部に廃棄物Zを貯蔵する。
【0046】
次に、第一測定工程を実行して、貯蔵容器20内に貯蔵する際の廃棄物Zにおける放射性物質の濃度を測定する。
【0047】
すなわち、図3に示すように、測定部33を支持する支持部32をレール部31に沿って外壁部12の長手方向に移動させる。また、移動部によりレール部31を外壁部12の短手方向に移動させる。これにより、廃棄物Zの表面の所望の位置における放射性物質の濃度を測定する。ここで、廃棄物Z中の放射性物質の濃度の一例を図4のグラフに示す。
【0048】
その後、図2(c)に示すように貯蔵容器20の蓋部23を閉じて、該貯蔵容器20を密閉状態とする。この状態で、廃棄物Zが貯蔵された貯蔵容器20を放射性廃棄物貯蔵施設1内に保管する。
【0049】
次に、定期測定工程を実行して、貯蔵容器20内に貯蔵された廃棄物Zにおける放射性物質の濃度を測定する。この定期測定工程は、例えば、1年ごと、10年ごと等定期点検ごとに実行する。
【0050】
すなわち、貯蔵容器20の蓋部23を開いて、第一測定装置30により上記と同様にして放射性物質の濃度を測定する。
【0051】
ここで、例外的に貯蔵容器20から放射性物質が漏出した場合には、第二測定工程を実行して漏出した放射性物質の濃度を測定する。これにより、漏出した放射性物質の濃度を把握することができる。
【0052】
次に、判定工程を実行して、上記の定期的に実行した定期測定工程における廃棄物Zの放射性物質の濃度が閾値以下であるか否かを判定する。
【0053】
放射性物質を含む廃棄物Zは、放射性崩壊して年月の経過とともに半減期を迎えて該放射性物質の濃度が低下する。例えば、セシウム−134は2.065年後に、セシウム−137は30.04年後に、それぞれ半減期を迎え、120年後にはセシウム−137の濃度が1/16以下に減少する。
【0054】
ここで、廃棄物Z中の放射性物質の濃度の一例として、図4に示した第一ラインL1の濃度変化を図5のグラフに示す。当該グラフの横軸は長手方向の端部からの距離を表し、縦軸は該距離に応じた箇所の放射性物質の濃度(放射能濃度)を表している。貯蔵容器20に貯蔵後、0年、30年、60年、90年と順次放射能濃度が減少しているのが分かる。
【0055】
このように構成された放射性廃棄物貯蔵施設1及び放射性廃棄物貯蔵方法によれば、貯蔵容器20により放射性物質を含む廃棄物Zを貯蔵することができるとともに、第一測定装置30を用いた第一測定工程、定期測定工程により該廃棄物Zの放射性物質の濃度を把握することができる。よって、貯蔵期間中における廃棄物Zの放射性物質の濃度を把握できるため、廃棄物を安全に保管することができる。
【0056】
また、例外的に放射性物質が貯蔵容器20から漏出した場合には、第二測定装置40を用いた第二測定工程で測定した結果を第一測定工程で測定した結果と比較することで、漏出した放射性物質の濃度を把握して、漏出量を把握することができる。
【0057】
さらに、判定工程により放射性物質の濃度が閾値以下となった廃棄物Zについては、再利用することが可能となる。
【0058】
その具体例として、廃棄物Zが貯蔵された貯蔵容器20を用いた構造物Aについて説明する。
図6に示すように、例えば、構造物Aは河川沿いに設けられた堤防であって、該構造物Aの内部には廃棄物ユニットVが河川の延在方向に向かって複数設けられ、複数の該廃棄物ユニットVの外側には外装部Bが設けられている。この外装部Bは、コンクリート等で形成され、構造物Aを構成し荷重を負担する構造体の一部として機能するように構成されている。
【0059】
この廃棄物ユニットVは、貯蔵容器20に放射性物質の濃度が低下した廃棄物Zが貯蔵されたものを言う。
【0060】
このような構造物Aでは、廃棄物ユニットVは内部に廃棄物Zを貯蔵して強固とされるため、該廃棄物Zにおける放射性物質の濃度が低減した後には、構造物Aの内部の躯体、土台又は基礎等として活用することができる。
【0061】
つまり、構造物Aを建設するコンクリート等の材料を低減することができるとともに、該廃棄物Zの最終的な処理費用を削減することができ、コスト面においても有益である。
【0062】
また、貯蔵容器20は、例えば輸送用のコンテナと同等の大きさで構成されているため、図1(b)に示すように放射性廃棄物貯蔵施設1内に整頓して多数配設することが可能であるとともに、該放射性廃棄物貯蔵施設1内から搬出することが容易である。
【0063】
また、放射性廃棄物貯蔵施設1は地上に設けられているため、検査等のために該放射性廃棄物貯蔵施設1から貯蔵容器20を搬出することが容易である。さらに、地中に放射性廃棄物貯蔵施設1を設ける場合と比較して、地下水が浸入する虞がないとともに、雨水等が浸入した際には、該貯蔵容器20に接触した雨水等を集約して管理しやすいというメリットがある。
【0064】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係る放射性廃棄物貯蔵方法について説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
本実施形態における放射性廃棄物貯蔵方法は、廃棄物Zを粉砕し、混合して加工廃棄物Xを生成する加工工程を備えている。
【0066】
図7に示すように、重機T1,T2により生成された土壌U1や建築物U2の表面を削り、該表面に付着した放射性物質を廃棄物Zとして集約する。そして、粉砕機T3で廃棄物Zを粉砕して混合した加工廃棄物Xを生成する。これにより、複数の加工廃棄物Xは略同一の大きさで成分が略同一に均質化される。
なお、貯蔵容器20内の放射性物質の濃度が所定の濃度以下となるように、適宜混合しても良い。
【0067】
次に、貯蔵工程と、第一測定工程と、定期測定工程と、貯蔵容器20から放射性物質が漏出した場合には第二測定工程と、判定工程とを実行する。
なお、第一実施形態における廃棄物Zの替わりに本実施形態における加工廃棄物Xと用いる点以外は、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0068】
ここで、測定部33により測定した廃棄物Z中の放射性物質の濃度の一例を図8のグラフに示す。当該グラフの横軸は長手方向の端部P(図3参照)からの距離を表し、縦軸は該距離に応じた箇所の放射性物質の濃度(放射能濃度)を表している。端部Pからの距離に関わらず、第一ラインL1、第二ラインL2及び第三ラインL3において、放射能濃度が略同一とされていることが分かる。
【0069】
また、廃棄物Z中の放射性物質の濃度の一例として、図8に示した第一ラインL1の濃度変化を図9のグラフに示す。当該グラフの横軸は長手方向の端部からの距離を表し、縦軸は該距離に応じた箇所の放射性物質の濃度(放射能濃度)を表している。貯蔵容器20に貯蔵後、0年、30年、60年と順次放射能濃度が減少しているのが分かる。
【0070】
このように構成された放射性廃棄物貯蔵方法では、加工工程により廃棄物Zを均質化することができるため、貯蔵容器20内の加工廃棄物Xの放射性物質の濃度を均一に保つことができ安定的に加工廃棄物X(廃棄物Z)を貯蔵することができる。また、適宜混合することで該放射性物質の濃度を調整することもできる。
よって、年月が経過した後の貯蔵容器20内の加工廃棄物Xの放射性物質の濃度の推測もしやすいため、該加工廃棄物X(廃棄物Z)を計画的に保管して廃棄物ユニットとしての利用性を高めることができる。
【0071】
また、貯蔵容器20内の加工廃棄物Xの放射性物質の濃度を均一であるため、一箇所の放射性物質の濃度を測定すれば貯蔵容器20内全体の放射性物質の濃度を把握することができるため、加工廃棄物X(廃棄物Z)の管理が容易となる。
【0072】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態に係る放射性廃棄物貯蔵方法について説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0073】
本実施形態における放射性廃棄物貯蔵方法は、加工廃棄物Xをセメント及び水と混合して混合物Yを生成する混合工程を備えている。これにより、加工廃棄物Xはセメント及び水と反応して固化された混合物Yとなる。
【0074】
加工工程の後に、貯蔵工程と、第一測定工程と、定期測定工程と、貯蔵容器20から放射性物質が漏出した場合には第二測定工程と、判定工程とを実行する。
なお、第一実施形態における廃棄物Zの替わりに本実施形態における混合物Yを用いる点以外は、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0075】
このように構成された放射性廃棄物貯蔵方法では、加工廃棄物Xはセメント及び水によりセメント固化した混合物Yとされるため、該混合物Yが貯蔵容器20から漏出する虞がないため、安全性を高めることができる。
【0076】
また、加工廃棄物Xがセメント及び水によりセメント固化されて剛性が大きくなるため、外力等の影響を受けた場合でも破損する虞がなく安定的に貯蔵することができる。また、該構造物Aとして再利用する際には、荷重を負担することができるため、躯体、土台又は基礎として確実に活用することができる。
【0077】
(第四実施形態)
以下、本発明の第四実施形態に係る放射性廃棄物貯蔵施設401について、図10から図14を用いて説明する。
この実施形態において、前述した実施形態で用いた部材と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
本実施形態における放射性廃棄物貯蔵施設401では、第一測定装置430は、貯蔵容器420の表面から所望の深さの位置における廃棄物Zの放射性物質の濃度を測定可能とされている。
【0079】
図10に示すように、貯蔵容器420は、底部421と、該底部421から立設された複数の側壁部422と、該複数の側壁部422で形成された空間を覆う蓋部423とを有しており、本実施形態ではこれら底部421、複数の側壁部422及び蓋部423により略直方体状に形成されている。
【0080】
また、貯蔵容器420の蓋部(表面)423から内部に向かって管状部材424が設けられている。本実施形態では、蓋部423の板厚方向に形成された貫通孔423Aに、底部421から立設された管状部材424が挿通されている。
【0081】
この管状部材424は、例えば塩化ビニル等の低密度の材料や薄い金属材料で形成され、放射線が透過しやすい構成とされている。
また、蓋部423には、管状部材424の端部を塞ぐ閉塞部材(不図示)が着脱可能に設けられている。
【0082】
図11に示すように、第一測定装置430は、放射性物質の濃度を測定可能な測定部433と、該測定部433を支持する支持部432とを有している。
【0083】
測定部433は、貯蔵容器420に設けられた管状部材424の内部を、該管状部材424の延在方向に向かって進退可能とされている。この測定部433は、例えばゲルマニウム半導体検出器やシンチレーション検出器等で構成されている。
【0084】
次に、上記の放射性廃棄物貯蔵施設401における放射性廃棄物貯蔵方法について説明する。
放射性廃棄物貯蔵方法は、貯蔵工程と、第一測定工程と、定期測定工程と、貯蔵容器420から放射性物質が例外的に漏出した場合に実行する第二測定工程と、判定工程とを備えている。
【0085】
まず、貯蔵工程を実行して、廃棄物Zを貯蔵容器420に貯蔵する。
すなわち、図10(a)に示すように貯蔵容器420の蓋部423を開き、図10(b)に示すように貯蔵容器420の底部421に立設された管状部材424の周りを囲むようにして、該貯蔵容器420の内部に廃棄物Zを貯蔵して、蓋部423を閉じる。
【0086】
次に、第一測定工程を実行して、貯蔵容器420内に貯蔵する際の廃棄物Zにおける放射性物質の濃度を測定する。
【0087】
すなわち、図11に示すように、蓋部423に設けられた閉塞部材を取り外た後、第一測定装置430を用いて放射性物質の濃度を測定する。具体的には、測定部433を管状部材424の内部に配した後、支持部432を該管状部材424の延在方向に移動させることで、管状部材424の上端から該管状部材424の内部において測定部433を該延在方向に移動させる。これにより、管状部材424の所望の延在方向の位置において、廃棄物Zの放射性物質の濃度を測定することができる。
【0088】
測定部433を管状部材424の延在方向に移動させ放射性物質の濃度を測定する作業を、複数の管状部材424において実行する。これにより、所望の箇所における廃棄物Zの放射性物質の濃度を測定することができる。
【0089】
その後、第一測定装置430の測定部433を取り出した後、閉塞部材で管状部材424の端部を塞いで、貯蔵容器420を密閉状態とする。この状態で、廃棄物Zが貯蔵された貯蔵容器420を放射性廃棄物貯蔵施設401内に保管する。
【0090】
次に、定期測定工程を実行して、貯蔵容器420内に貯蔵された廃棄物Zにおける放射性物質の濃度を測定する。この定期測定工程は、例えば、1年ごと、10年ごと等定期点検ごとに実行する。
【0091】
定期測定工程では、閉塞部材を取り外して、第一測定工程と同様に、管状部材424の上端から該管状部材424の内部において測定部433を上下方向に移動させて、廃棄物Zの所望の上下方向の位置における放射性物質の濃度を測定する作業を、複数の管状部材424において実行する。
【0092】
ここで、例外的に貯蔵容器20から放射性物質が漏出した場合には、第一実施形態と同様に第二測定工程及び判定工程を実行する。
【0093】
放射性物質を含む廃棄物Zは、放射性崩壊して年月の経過とともに半減期を迎えて該放射性物質の濃度が低下する。例えば、セシウム−137は30.04年後に、それぞれ半減期を迎え、120年後にはセシウム−137の濃度が1/16以下に減少する。
【0094】
ここで、廃棄物Z中の放射性物質の濃度の一例として、貯蔵容器420の長手方向の端部から距離に応じた測定箇所における濃度変化を図12のグラフに示す。当該グラフの横軸は長手方向の端部からの距離(奥行き位置)を表し、縦軸は該距離に応じた箇所の放射性物質の濃度(放射能濃度)を表している。貯蔵容器20に貯蔵後、0年、30年、60年と順次放射能濃度が減少し、60年後には放射能濃度が基準値8000Bq/Kgを下回っていることがわかる。
【0095】
このように構成された放射性廃棄物貯蔵施設401及び放射性廃棄物貯蔵方法によれば、貯蔵容器420に貯蔵された廃棄物Zの表面から所望の深さにおける廃棄物Zの放射性物質の濃度を測定することができるため、貯蔵容器420中の放射性物質の正確な濃度を把握することができる。
【0096】
また、貯蔵容器420には管状部材424が複数設けられているため、貯蔵容器420に貯蔵された廃棄物Zにおける所望の箇所の廃棄物の放射性物質の濃度を測定することができる。よって、放射性物質のより正確な濃度を把握することができる。
【0097】
なお、蓋部423における管状部材424の端部を塞いで閉塞部材が着脱可能とされているため、通常時は貯蔵容器420を密閉状態として保管することができる。また、第一測定工程及び定期測定工程においては、閉塞部材を取り外すことにより、貯蔵容器420の内部の廃棄物Zの濃度を測定することができる。
【0098】
次に、廃棄物Zが貯蔵された貯蔵容器420の再利用の一例として、廃棄物Zが貯蔵された貯蔵容器420を用いた構造物4Aについて説明する。
【0099】
図13に示すように、例えば、構造物4Aは高潮や津波を防ぐために設けられた防潮堤であって、防潮堤4Aは、土台4Dと、該土台4Dから立設された壁部4Cと、該壁部4Cを支持するとともに海岸の延在方向(水平方向)及び鉛直方向に向かって複数設けられた廃棄物体4Vとを有している。
この土台2Dには、下方に向かって凹むとともに、海岸の延在方向(水平方向)に向かって延びる溝414が形成されている。
【0100】
廃棄物体4Vは、貯蔵容器420と、該貯蔵容器420の内部に貯蔵された放射性物質を含む廃棄物Zとを有している。廃棄物体4Vは、貯蔵容器420の蓋部423に設けられた管状部材424の端部が、構造物4Aの側方の表面側に位置するように設けられている。
また、構造物4Aは、貯蔵容器420から漏出した放射性物質の濃度を測定する第三測定装置450を有している。
【0101】
第三測定装置450は、例外的に貯蔵容器420から漏出した廃棄物Zにおける放射性物質の濃度を測定するものである。この第三測定装置450は、例えばゲルマニウム半導体検出器、シンチレーション検出器等で構成されている。
【0102】
例えば、例外的に貯蔵容器420内に浸入した雨水が廃棄物Zと接触して、放射性物質を含んだ汚染水として土台4Dに形成された溝414に排水された場合において、第三測定装置450は当該放射性物質の濃度を測定できるように構成されている。
【0103】
このような構造物4Aでは、廃棄物体4Vを構成する貯蔵容器420に設けられた管状部材424の端部が、構造物4Aの側方の表面側に位置するように配されている。よって、閉塞部材を取り除くことにより側方から貯蔵容器420の内部に向かって第一測定装置430を移動させれば、廃棄物Zの放射性物質の濃度を測定することができる。したがって、廃棄物体4Vを構造物4Aとして利用した後においても、放射性物質の濃度を測定して、長期にわたって安定的に管理することができる。
【0104】
また、放射性物質の濃度が所定の閾値以下に低減されていない場合でも、上記と同様に第一測定装置430により廃棄物Zの放射性物質の濃度を測定して安全性を確認しながら、該廃棄物体4Vを構造体の一部として利用することができるため、利用価値を高めることができる。
【0105】
また、例外的に放射性物質が漏出下場合には、第三測定装置450により漏出した放射性物質の濃度を把握することができるため、廃棄物体4Vから漏出する放射性物質を管理しながら、該廃棄物体4Vを構造体の一部として利用することができる。
【0106】
(第四実施形態の変形例)
図14は、第四実施形態の変形例である。具体的には、廃棄物体4Vの蓋部423に設けられた管状部材424の端部が、構造物4Bの上方の表面側に位置するように配されている。また、蓋部423の上方には、通路部425が設けられている。
【0107】
通路部425は、蓋部423の上部に設けられた床部425Aと、該床部425Aから立設された一対の側壁部425B,425Bと、該一対の側壁部425B,425Bの上部を連結する上壁部425Cとを有している。
【0108】
これら床部425A、一対の側壁部425B,425B及び上壁部425Cにより囲まれた空間部分が通路部425として構成されている。
また、床部425Aには、蓋部423に設けられた管状部材424と連通する開口部426が形成され、該開口部426には該開口部426を閉塞するキャップ(不図示)が設けられている。
【0109】
このような構造物4Bでは、放射性物質の濃度の測定時に、キャップ及び閉塞部材を取り除いて、複数の管状部材424の内部に第一測定装置430を上下方向に移動させて、放射性物質の濃度を測定することができる。
また、通路部425を、放射性物質の濃度を測定する作業空間として利用することができるため、天候等の影響を受けずに作業することができる。
【0110】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0111】
例えば、上記の実施形態においては、図3に示す測定部33は外壁部12の短手方向に向かって第一ラインL1、第二ラインL2及び第三ラインL3の三段階の移動が可能とされているが、三段階以上の移動が可能であってもよい。この場合には、放射性物質の濃度分布の更に詳細なデータを入手することができる。
【0112】
また、貯蔵容器20を屋外又は覆土中等に設けてよい。この場合でも第一測定装置30を備えることにより、貯蔵容器20内の廃棄物Zの放射性物質の濃度を把握することが可能となる。
【0113】
また、放射性廃棄物貯蔵施設1の耐久年数が貯蔵容器20の耐久年数よりも低い場合には、放射性廃棄物貯蔵施設1の耐久年数が経過した後に、該放射性廃棄物貯蔵施設1から貯蔵容器20を全て搬出し、新たに設けた放射性廃棄物貯蔵施設内に貯蔵容器20を設けることとしてもよい。
【0114】
また、貯蔵容器20の耐久年数が経過した後には、当該年数毎に新たな貯蔵容器20に交換したり、または廃棄物Zが貯蔵された貯蔵容器20をそのまま更に大きな容器内に貯蔵させる構成であってもよい。これにより、貯蔵容器20や大きな容器から放射性物質が流出する虞がなく、安全性を確保することができる。
【0115】
また、第三実施形態の混合工程において、加工廃棄物Xの替わりに第一実施形態に係る廃棄物Zとセメント及び水を混合させてもよい。この場合には、加工工程を省略して固化した混合物Yを生成することができるため、作業性を向上させることができる。
さらに、廃棄物Zがセメント及び水によりセメント固化されて剛性が大きくなるため、外力等の影響を受けた場合でも破損する虞がなく安定的に貯蔵することができる。また、該構造物として再利用する際には、荷重を負担することができるため、躯体、土台又は基礎として確実に活用することができる。
【0116】
また、第一実施形態における廃棄物ユニットVを構成する廃棄物Zとして、第二実施形態の加工廃棄物X又は第三実施形態の混合物Yを使用してもよい。
【0117】
また、廃棄物ユニットVを用いた構造物Aの他の例としては、防潮堤、道路の路体等が挙げられる。
【0118】
また、廃棄物Z中の放射性物質の濃度が減少した後には、貯蔵容器20から該廃棄物Zを取り出し土砂等と混合して、土木工事における盛土として利用することも可能である。
【0119】
また、放射性物質を含む廃棄物Z中のセシウム−137の濃度は、90年後には1/8に減少し、150年後には1/32に減少する。すなわち、廃棄物Zを貯蔵する貯蔵期間を任意に設定し、それに応じた初期段階の濃度に調整してから廃棄物Zを貯蔵すれば、所定の貯蔵期間経過後の放射性物質の濃度を調整することができる。
【0120】
また、第四実施形態において、複数の管状部材424は貯蔵容器420の長手方向に沿って一列状に設けられているが、複数の管状部材424を貯蔵容器420の短手方向に沿って複数設けてもよいし、長手方向及び短手方向のそれぞれに複数設けてもよい。
【0121】
また、第四実施形態において、貯蔵容器420に廃棄物Zを貯蔵して蓋部423を閉じた後に、貯蔵容器420を回転させて、管状部材424が略水平方向を向くように保管してもよい。この場合には、第一測定装置430を水平方向に移動させて測定することができるため、作業性を良好とすることができる。
【符号の説明】
【0122】
1,401…放射性廃棄物貯蔵施設
4V…廃棄物体
20,420…貯蔵容器
30,430…第一測定装置
40…第二測定装置
450…第三測定装置
A,4A,4B…構造物
X…加工廃棄物
Y…混合物
Z…廃棄物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14