特許第6041142号(P6041142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041142
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】吊り天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20161128BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   E04B5/58 S
   E04B5/52 U
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-22414(P2013-22414)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-152506(P2014-152506A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 栄次
【審査官】 河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−240538(JP,A)
【文献】 特開2008−138464(JP,A)
【文献】 特開2008−121371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
E04B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井裏側の建物構成部材に上端側を接続した複数の吊り部材に吊り下げ支持された天井下地と、天井下地に取り付けて天井面を形成する板状の天井材とを備える吊り天井構造において、
格子状に形成され、前記天井材の下方に、且つ前記天井材に接続し前記天井面に沿って配設されたフレーム部と、
前記フレーム部の端部側に一端を接続し、他端を前記天井材の外周端部の横方向外側に配された建物構成部材に接続して配設され、予め設定した外力が作用するとともに前記フレーム部と前記建物構成部材の連結状態を解除するように構成されたヒューズ部と、
前記フレーム部の端部側に一端を接続し、前記天井裏側の建物構成部材に他端を接続して設けられ、前記ヒューズ部による前記フレーム部と前記建物構成部材の連結状態が解除されるとともに、前記フレーム部を吊り下げ支持する吊り下げ支持部とを備えて構成されていることを特徴とする吊り天井構造。
【請求項2】
請求項1記載の吊り天井構造において、
前記ヒューズ部が、予め設定した外力が作用すると破断して、前記フレーム部と前記建物構成部材の連結状態を解除するように構成されていることを特徴とする吊り天井構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の吊り天井構造において、
前記ヒューズ部が、前記天井下地と前記天井材からなる天井部に作用する水平力を吸収・減衰させるダンパーを備えて構成されていることを特徴とする吊り天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り天井の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば学校、病院、生産施設、体育館、プール、空港ターミナルビル、オフィスビル、劇場、シネコン等の建物の天井として、吊り天井が多用されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。そして、吊り天井(吊り天井構造)Aには、例えば図1及び図2に示すように、水平の一方向T1に所定の間隔をあけて並設される複数の野縁1と、野縁1に直交し、水平の他方向T2に所定の間隔をあけて並設され、複数の野縁1に一体に接続して設けられる複数の野縁受け2と、下端を野縁受け2に接続し、上端を上階の床材等の上部構造(建物躯体)3に固着して配設される複数の吊りボルト(吊り部材)4と、野縁1の下面にビス留めなどによって一体に取り付けられ、天井面(天井部5)を形成する天井パネル(天井材)6とを備えて構成したものがある。
【0003】
また、例えば図3に示すように、例えば、クリーンルームのようにファンフィルターユニット等の大重量の設備機器を天井部に設置する必要がある吊り天井(吊り天井構造)Aには、水平の一方向T1に所定の間隔をあけて並設され、一方向T1に直交する他方向T2に延びる複数のTバー(断面逆T型の支持部材)7と、上端側を上階の床材(上部構造)等に固着し、下端側をTバー7に接続して配設された複数の吊りボルト(吊り部材)4と、一方向T1に隣り合うTバー7に架け渡すように配設されて天井面(天井部5)を形成する天井パネル6とを備えて構成したものがある。
【0004】
一方、上記のように構成した吊り天井Aにおいては、その構造上、地震時に作用する水平力によって横揺れしやすく、地震時に横揺れして、天井部5の端部が壁や柱、梁などの建物構成部材に衝突し、天井パネル6に破損が生じたり、脱落が生じるおそれがあった。このため、従来、図2図3に示すように、上部構造などに上端側を接続し、下端側を吊りボルト4や、野縁1、野縁受け2、Tバー7などの天井下地8に接続して補強ブレース9を設け、天井下地8及び天井パネル6からなる天井部5の地震時の横揺れを抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−121371号公報
【特許文献2】特開2005−350950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大規模地震などが発生して過大な外力が補強ブレースに作用し、この補強ブレースが座屈すると、大幅に且つ急激に耐力が低下し、天井パネルや天井下地の破損や脱落が生じるおそれがある。このため、この種の吊り天井に対しては、さらなる耐震性の向上が望まれるとともに、人命保護の観点から天井脱落をより確実に防止できるようにすることが強く望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、耐震性能を向上させて地震時の天井部の横揺れを抑えることを可能にするとともに、地震時に天井材の脱落を確実に防止することを可能にする吊り天井構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の吊り天井構造は、天井裏側の建物構成部材に上端側を接続した複数の吊り部材に吊り下げ支持された天井下地と、天井下地に取り付けて天井面を形成する板状の天井材とを備える吊り天井構造において、格子状に形成され、前記天井材の下方に、且つ前記天井材に接続し前記天井面に沿って配設されたフレーム部と、前記フレーム部の端部側に一端を接続し、他端を前記天井材の外周端部の横方向外側に配された建物構成部材に接続して配設され、予め設定した外力が作用するとともに前記フレーム部と前記建物構成部材の連結状態を解除するように構成されたヒューズ部と、前記フレーム部の端部側に一端を接続し、前記天井裏側の建物構成部材に他端を接続して設けられ、前記ヒューズ部による前記フレーム部と前記建物構成部材の連結状態が解除されるとともに、前記フレーム部を吊り下げ支持する吊り下げ支持部とを備えて構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の吊り天井構造においては、前記ヒューズ部が、予め設定した外力が作用すると破断して、前記フレーム部と前記建物構成部材の連結状態を解除するように構成されていることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明の吊り天井構造においては、前記ヒューズ部が、前記天井下地と前記天井材からなる天井部に作用する水平力を吸収・減衰させるダンパーを備えて構成されていることがより望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吊り天井構造においては、格子状のフレーム部と、フレーム部と壁、柱、梁等の建物構成部材を連結するヒューズ部を備えていることにより、格子状のフレーム部からヒューズ部を介して天井材、天井部に作用する外力(地震時の水平力など)を建物構成部材に伝達することができ、吊り天井の耐震性能を向上させることができる。
【0013】
また、ヒューズ部に地震時の水平力などの予め設定した外力(予め設定した外力以上の外力)が作用したり、破損するなどして脱落した天井材や天井部をフレーム部で受けることによりヒューズ部に予め設定した外力が作用すると、ヒューズ部が破断するなどし、このヒューズ部によるフレーム部と建物構成部材の連結状態が解除される。そして、このようにヒューズ部によるフレーム部と建物構成部材の連結状態が解除されると、格子状のフレーム部が吊り下げ支持部によって吊り下げ支持され、これらフレーム部と吊り下げ支持部がフェイルセーフネットとして機能し、天井材などの脱落を防止することができる。
【0014】
よって、本発明の吊り天井構造によれば、格子状のフレーム部にヒューズ部と吊り下げ支持部を取り付けることで、耐震機構とフェイルセーフ機構の両機構を構成することができ、構造合理性及び経済性を高めて耐震性能の向上、天井材の脱落防止(フェイルセーフ性能の向上)を図ることが可能になる。
【0015】
また、本発明の吊り天井構造において、予め設定した外力が作用するとともにヒューズ部が破断してフレーム部と建物構成部材の連結状態が解除するようにした場合には、ヒューズ部の構成を簡易にすることができ、容易に且つ確実に、予め設定した外力が作用するとともにフレーム部と建物構成部材の連結状態を解除させることが可能になる。
【0016】
また、本発明の吊り天井構造において、ヒューズ部がダンパーを備えて構成されていると、地震時に天井部に作用する水平力を吸収・減衰させることができ、天井部の横揺れを効果的に抑えることが可能になる。そして、このようにヒューズ部で天井部の横揺れを抑えることで、天井材や天井部の破損や脱落などを生じにくくすることができ、耐震性能を確実に向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】野縁と野縁受けで天井下地が構成された吊り天井構造を示す斜視図である。
図2】野縁と野縁受けで天井下地が構成された吊り天井構造を示す側断面図である。
図3】Tバーで天井下地が構成された吊り天井構造を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる吊り天井構造を示す側断面図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる吊り天井構造を示す天井面側からの斜視図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる吊り天井構造を示す側断面図であり、通常の地震時にヒューズ部によって地震力を建物構成部材に伝達している状態を示す側断面である。
図7】本発明の一実施形態にかかる吊り天井構造を示す側断面図であり、大規模地震などによって天井に脱落が生じた際に、ヒューズ部が破断し、フレーム部と吊り下げ支持部がフェイルセーフネットとして機能している状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る吊り天井構造について説明する。ここで、本実施形態は、優れた耐震性能を備えるとともに天井脱落に対する優れたフェイルセーフ性能を備えた吊り天井の構造に関するものである。
【0019】
本実施形態の吊り天井(吊り天井構造)Bは、図1及び図2に示した吊り天井Aと同様に、野縁1と野縁受け2と吊り部材(吊りボルト)4と天井材6と補強ブレース9とを備えて構成されている。
【0020】
野縁1は、例えば断面コ字状に形成された溝形鋼であり、水平に延設され、且つ水平の一方向の横方向T1に所定の間隔をあけ、平行に複数配設されている。
【0021】
野縁受け2は、例えば断面コ字状に形成された溝形鋼であり、水平に延設され、且つ水平の他方向の横方向T2に所定の間隔をあけ、平行に複数配設されている。また、このとき、野縁受け2は、野縁1と交差するように配設されるとともに、複数の野縁1上に載置した状態で配設される。そして、各野縁受け2は、野縁1と交差する交差部で、クリップ(野縁接続用金具)10を使用することにより野縁1に接続されている。
【0022】
吊り部材4は、円柱棒状に形成されるとともに外周面に雄ネジの螺刻を有する吊りボルトであり、上端を上階の床材等の上部構造3(天井裏側の建物構成部材13)に固着、または鋼製の根太等に緊結して垂下され、下端側を、ハンガー(吊り部材接続用金具)11を用いることにより野縁受け2に接続して複数配設されている。また、複数の吊り部材4は、所定の間隔をあけて分散配置されている。
【0023】
天井材(天井パネル)6は、2枚のボードを貼り付けて一体に積層形成したものであり、例えば天井付帯設備等の重量と併せて、1mあたり20kg程度の重量で形成されている。そして、この天井材6は、複数の野縁1の下面にビス留めなどして設置されている。なお、天井材6は、1枚および3枚以上のボードで構成されていてもよい。
【0024】
補強ブレース9は、例えば断面コ字状に形成された溝形鋼であり、上部構造3などに上端側を接続し、下端側を吊りボルト4や野縁1、野縁受け2などに接続して設けられている。なお、補強ブレース9は必ずしも具備されていなくてもよい。
【0025】
そして、この吊り天井Bでは、吊り部材4を介して建物の上部構造3に、野縁1と野縁受け2と天井材6とが吊り下げ支持されている。また、野縁1と野縁受け2によって天井下地8が形成され、この天井下地8に取り付けた天井材6によって下階の天井面が、また、天井下地8と天井材6によって天井部5が形成されている。また、地震時など、天井下地8と天井材6からなる天井部5に作用する外力を補強ブレース9によって建物構成部材(建物躯体)に伝達させることで天井部5の横揺れが抑制される。
【0026】
一方、本実施形態の吊り天井Bにおいては、図4及び図5に示すように、格子状に形成され、天井材6、天井部5の下方に、且つ天井材6に接続し天井面に沿って配設されたフレーム部15と、フレーム部15の端部側に一端を接続し、他端を天井材6、天井部5の外周端部の横方向T1、T2外側に配された例えば柱や壁12、梁などの建物構成部材13に接続して配設されたヒューズ部16と、フレーム部15の端部側に一端を接続し、上部構造3などの天井裏側の建物構成部材13に他端を接続して設けられた吊り下げ支持部17とを備えて構成されている。
【0027】
フレーム部15は、アルミ押出形鋼、スチール部材、ワイヤーなどの複数の引張材15aを天井部5の下方で一方向T1と他方向T2にそれぞれ延設するとともに、例えば900〜1800mmピッチに配設することによって、格子状に形成されている。また、これら複数の引張材15aは、ビスなどを用いて天井材6に固定して取り付けられている。なお、引張材15aは、鋼板、炭素繊維シートなどを用いた板状部材、棒状部材、帯状部材、テープ状部材、シート状部材であってもよい。なお、天井面(天井部5)自体に十分な強度があり、及びその落下を防止する処置がなされている場合には、フレーム部15を用いず、天井面に直接、詳細を後述するヒューズ部16と吊り下げ支持部17を接続することも可能である。
【0028】
ヒューズ部16は、フレーム部15を構成する各引張材15aの一端部側と他端部側にそれぞれ接続して配設されている。また、ヒューズ部16は、引張材15a(フレーム部15)の端部側に一端を接続し、他端を天井材6、天井部5の外周端部の横方向外側に配された柱や壁12、梁などの建物構成部材13に接続して配設されている。本実施形態では、ヒューズ部16が天井面に沿う水平方向T1、T2に延設され、フレーム部15の引張材15aと建物構成部材13を連結している。
【0029】
さらに、ヒューズ部16は、地震時など、予め設定した外力(設定した外力を上回る力)が作用すると、フレーム部15と建物構成部材13の連結状態を解除するように構成されている。具体的には、所定の強度で破断する材料を用いる他、摩擦機構や機械制御など、様々な構造のヒューズ部16を状況に応じて適用する。さらに、本実施形態のヒューズ部16は、地震などによって天井部5に作用する水平力を吸収・減衰させるダンパー16aを備えて構成されている。但し、ダンパー16aは必ずしも必要ではない。
【0030】
吊り下げ支持部17は、フレーム部15を構成する各引張材15aの一端部側と他端部側にそれぞれ接続して設けられている。また、本実施形態の吊り下げ支持部17は、フレーム部15の端部側に一端を接続し、建物の上階の床スラブや梁などの上部構造3に他端を接続して設けられている。この吊り下げ支持部17は、例えば、ワイヤー、炭素繊維シートなどの帯状部材、テープ状部材、シート状部材などを用いて形成されている。すなわち、所定の強度を備えつつある程度フレキシブルな材料を用いて形成されている。そして、本実施形態では、この吊り下げ支持部17が、予め所定の緩みを持たせた状態で建物の上部構造3とフレーム部15に接続して設けられている。
【0031】
なお、吊り下げ支持部の他端は、天井裏側の建物構成部材13に接続されていればよく、上階の床スラブや梁の他に、天井裏側の壁や柱、梁などの建物構成部材13に接続するようにしてもよい。すなわち、この吊り下げ支持部17は、ヒューズ部16によるフレーム部15と建物構成部材13の連結状態が解除された状態で、フレーム部15を吊り下げ支持することができるようにその他端が建物構成部材13に接続されていればよい。
【0032】
次に、上記構成からなる本実施形態の吊り天井構造Bの作用及び効果について説明する。
【0033】
本実施形態の吊り天井構造Bにおいては、格子状のフレーム部15とヒューズ部16を備えていることにより、図6に示すように、例えば小中規模の地震時など、通常の地震時には、格子状のフレーム部15からヒューズ部16を介して天井部5に生じる外力(地震力、水平力)が建物構成部材13に伝達される。このため、補強ブレース9だけでなく、格子状のフレーム部15とヒューズ部16が地震力を水平に伝達する耐震要素、耐震機構として機能し、地震時の吊り天井構造Bの天井部5の揺れが小さく抑えられる。
【0034】
また、本実施形態では、ヒューズ部16がダンパー16aを備えて構成されているため、ヒューズ部16のダンパー16aによって地震時に吊り天井Bに作用する外力が吸収・減衰され、天井部5の揺れがさらに小さく抑えられる。
【0035】
一方、図7に示すように、例えば大規模地震時に、ヒューズ部16に予め設定した外力(予め設定した外力を上回る力)が作用したり、天井下地8や天井材6が破損するなどして脱落し、フレーム部15で脱落した天井材6などを受けることでヒューズ部16に予め設定した外力が作用するとともに、ヒューズ部16が破断するなどして、ヒューズ部16によるフレーム部15と建物構成部材13の連結状態が解除される。
【0036】
そして、このとき、格子状のフレーム部15と吊り下げ支持部17を備えていることにより、フレーム部15が吊り下げ支持部17によって吊り下げ支持される。これにより、これらフレーム部15と吊り下げ支持部17がフェイルセーフネットとして機能し、天井材6などの脱落が確実に防止される。
【0037】
したがって、本実施形態の吊り天井構造Bにおいては、格子状のフレーム部15と、フレーム部15と壁、柱、梁等の建物構成部材13を連結するヒューズ部16を備えていることにより、格子状のフレーム部15からヒューズ部16を介して天井材6、天井部5に作用する外力(地震時の水平力など)を建物構成部材13に伝達することができ、吊り天井Bの耐震性能を向上させることができる。これにより、例えば中小規模の地震が発生した場合に、天井材6に破損が生じることがなく、BCP(事業継続計画)などの上でも優れた吊り天井構造Bにすることができる。
【0038】
また、ヒューズ部16に地震時の水平力などの予め設定した外力が作用したり、破損するなどして脱落した天井材6や天井部5をフレーム部15で受けることによりヒューズ部16に予め設定した外力が作用するとともに、ヒューズ部16が破断するなどして、ヒューズ部16によるフレーム部15と建物構成部材13の連結状態を解除することができる。そして、このようにヒューズ部16によるフレーム部15と建物構成部材13の連結状態が解除されることにより、格子状のフレーム部15が吊り下げ支持部17によって吊り下げ支持され、これらフレーム部15と吊り下げ支持部17がフェイルセーフネットとして機能して、天井材6などの脱落を防止することができる。これにより、地震時などに、天井材6などが脱落して人身安全を脅かすことをなくすことができる。
【0039】
また、建物構成部材(建物躯体)13の強度やBCP等の条件に応じてヒューズ部16が破断する耐力を自由に設定することができ、想定地震力に対し、適切な耐震性能を付与することが可能になる。
【0040】
さらに、例えば吊り下げ支持部17の長さや吊元の位置を調整しておくことで、脱落した天井材6などを受け、フェイルセーフネットとしてフレーム部15及び吊り下げ支持部17が機能する際に、天井鉛直変位を小さく抑えることもできる。すなわち、設備等の条件に応じてフェイルセーフネットのように機能する際の鉛直変位位置を自在に調整、設定することができる。
【0041】
よって、本実施形態の吊り天井構造Bによれば、格子状のフレーム部15(単一の引張材15a)にヒューズ部16と吊り下げ支持部17を取り付けることで、耐震機構とフェイルセーフ機構の両機構を構成することができ、構造合理性及び経済性を高めて耐震性能の向上、天井材6の脱落防止(フェイルセーフ性能の向上)を図ることが可能になる。
【0042】
また、このとき、耐震機構からフェイルセーフ機構に移行する耐力レベル(ヒューズ部16による連結状態が解除される外力の大きさ)を自由に且つ適切に設定することができ、設計の自由度と信頼性を高めて耐震性能を向上させることが可能になる。
【0043】
さらに、新設の吊り天井Bでも、既設の吊り天井Bに対するあと施工でも適用することができ、新設、既設を問わず、比較的容易に施工して、吊り天井Bの耐震性能、フェイルセーフ性能を付与、向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態の吊り天井構造Bにおいては、予め設定した外力が作用するとともにヒューズ部16が破断してフレーム部15と建物構成部材13の連結状態が解除するようにすると、ヒューズ部16の構成を簡易にすることができ、容易に且つ確実に、予め設定した外力が作用するとともにフレーム部15と建物構成部材13の連結状態を解除させることが可能になる。
【0045】
また、ヒューズ部16がダンパー16aを備えて構成されていると、地震時に天井部5に作用する外力を吸収・減衰させることができ、天井部5の横揺れを効果的に抑えることが可能になる。そして、このようにヒューズ部16で天井部5の横揺れを抑えることで、天井材6や天井部5の破損や脱落などを生じにくくすることができ、耐震性能を確実に向上させることが可能になる。
【0046】
以上、本発明に係る吊り天井構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0047】
例えば、図3に示した複数のTバー7と、複数の吊りボルト(吊り部材)4と、隣り合うTバー7に架け渡すように配設されて天井面を形成する天井材6とを備えたライン式の吊り天井に、本実施形態と同様のフレーム部15とヒューズ部16と吊り下げ支持部17を設けて吊り天井構造Bを構成してもよい。すなわち、吊り下げ支持された天井下地8に、天井面を形成する天井材6を取り付けて構成した天井部5に対し、フレーム部15とヒューズ部16と吊り下げ支持部17を設けて吊り天井構造Bが構成されていれば、特に天井部5の構成を限定する必要はない。
【符号の説明】
【0048】
1 野縁
2 野縁受け
3 建物の上部構造(建物構成部材、建物躯体)
4 吊りボルト(吊り部材)
5 天井部
6 天井パネル(天井材)
7 Tバー
8 天井下地
9 補強ブレース
10 クリップ
11 ハンガー
12 壁
13 建物構成部材(建物躯体)
15 フレーム部
15a 引張材
16 ヒューズ部
16a ダンパー
17 吊り下げ支持部
A 従来の吊り天井(吊り天井構造)
B 吊り天井(吊り天井構造)
T1 水平の一方向
T2 水平の他方向
T3 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7