(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、請求項1に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、
複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、
前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、
前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法。
あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、請求項3に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によって沈下速度値を求める第6演算手段と、
複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算する第7演算手段と、
第7演算手段で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を第7演算手段と同様にして計算する第8演算手段と、
第8演算手段をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算する第9演算手段とをさらに有することを特徴とする請求項3に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置。
あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、請求項5に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、
複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、
前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、
前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項5に記載の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラム。
【背景技術】
【0002】
従来、高レベル放射性廃棄物の地層処分では、
図10に示すように、緩衝材と呼ばれる厚さ0.3m〜1mのベントナイト系粘土材料1で廃棄体2周囲を取り囲み、周囲からの地圧を緩衝させるとともに、地下水の浸入を抑制し、廃棄体2からの放射性物質の漏えいを抑止することが考えられている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
廃棄体の周囲を0.3m〜1mの厚さのベントナイト系材料で取り囲むことのメリットは、この材料が有する下記の特長にある。
(1)実現可能なエネルギーで達成できる高密度なベントナイト系材料の透水係数は1E−10〜1E−13m/sであり、一般的な地盤材料の透水係数(1E−5〜1E−8m/s)に比べて難透水性に優れている。ここで、符号Eは10のべき乗を意味している。例えば「E−5」は「10のマイナス5乗」を意味し、「1E−5」は「0.00001」を意味している。
(2)ベントナイトはコンクリートに比べて柔軟性があるため、ひび割れが発生しにくく、かつ、存在していたひび割れは、周囲から地下水が浸入していた時点で、ベントナイトの有する吸水膨潤挙動によりシールされるので、卓越する水みちにならない。
(3)ベントナイトは天然に存在する粘土材料であることから、数万年以上の長期間を経ても材料劣化が生じにくい。
【0004】
次に、本発明の予測対象となる現象について説明する。
図11に示すように、放射性廃棄物を格納した廃棄体2は、その周囲を取り囲んでいる粘土材料1よりも大きな密度を有しているので、長期間の間に次第に沈下して位置が変化し、やがてはバリア材(粘土材料)の厚さが小さく変化するので、放射性物質の移流拡散を抑制する能力が減じることになる。したがって、将来の安全性を評価する上で廃棄体2の沈下を正しく予測することが求められていた。
【0005】
こうした現象に関連し、粘土の長期沈下挙動については、粘土が荷重を受けることによって、粘土の間隙水が絞り出される現象を圧密現象として評価予測する方法が既存の方法として存在している(例えば、非特許文献2を参照)。
【0006】
また、このような沈下挙動を抑制するための構造として、例えば下記の特許文献1に示される粘土系止水材による躯体支持構造が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、土の圧密現象として沈下速度と沈下量を予測する方法では、物体の下に存在していた粘土は密度増加して厚さを減じるものの、粘土粒子は物体の下から側方には移動しないので、沈下量を少なく見積もることが懸念される。
【0010】
実際に乾燥密度0.2g/cm
3のベントナイトを水で飽和状態にした粘土材料は柔らかくて、容易に粘性変形する。
図12はそのような粘土に円柱状の物体(貫入用円柱50mmφ)を一定荷重(800g)で貫入させたときの挙動を写真で示したものであるが、明らかに粘性流体に近い挙動をしていることがわかる。すなわち、粘土を粘性流体とみなして、物体の沈下速度と沈下量をより保守的な値として推定する方法が求められていた。
【0011】
また、
図11や
図12に示すような極端に形状変化を伴う挙動を正確に予測計算する簡便な計算方法が存在しなかった。
【0012】
一方、粘土を純粘性流体として計算する際に、物体は剛体であるから、粘性流体と物体の境界は常に一定の速度で形状を変化させることなく、沈下変位のみを生じるはずであるが、そのような条件で純粘性流体の運動を計算するには、単純に粘性流体に一定の力を作用させる境界条件では計算できないという問題があった。
【0013】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、粘性材料で囲まれた物体の沈下挙動をより正確かつ簡便に予測計算することができる粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法、計算装置、計算プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法は、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法であって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するステップ1と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ2と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ3と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ4と、前記ステップ3と前記ステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるステップ5とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法は、上述した発明において、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをさらに有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置は、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する装置であって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定する第1演算手段と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第2演算手段と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第3演算手段と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第4演算手段と、第3演算手段と第4演算手段による計算を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求める第5演算手段とを有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置は、上述した発明において、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によって沈下速度値を求める第6演算手段と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算する第7演算手段と、第7演算手段で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を第7演算手段と同様にして計算する第8演算手段と、第8演算手段をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算する第9演算手段とをさらに有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラムは、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法をコンピュータに実行させる計算プログラムであって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するステップ1と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ2と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ3と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ4と、前記ステップ3と前記ステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるステップ5とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラムは、上述した発明において、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上述した計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によれば、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法であって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するステップ1と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ2と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ3と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ4と、前記ステップ3と前記ステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるステップ5とを有するので、粘性材料で囲まれた物体の沈下挙動をより正確かつ簡便に予測計算することができるという効果を奏する。
【0022】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によれば、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをさらに有するので、上記効果に加え、任意の時間経過後(例えば100年、1000年、1万年、10万年後)における物体の沈下量の累計値をより正確かつ簡便に予測計算することができるという効果を奏する。
【0023】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によれば、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する装置であって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定する第1演算手段と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第2演算手段と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第3演算手段と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第4演算手段と、第3演算手段と第4演算手段による計算を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求める第5演算手段とを有するので、粘性材料で囲まれた物体の沈下挙動をより正確かつ簡便に予測計算することができるという効果を奏する。
【0024】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によれば、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によって沈下速度値を求める第6演算手段と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算する第7演算手段と、第7演算手段で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を第7演算手段と同様にして計算する第8演算手段と、第8演算手段をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算する第9演算手段とをさらに有するので、上記効果に加え、任意の時間経過後(例えば100年、1000年、1万年、10万年後)における物体の沈下量の累計値をより正確かつ簡便に予測計算することができるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラムは、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法をコンピュータに実行させる計算プログラムであって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するステップ1と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ2と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ3と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ4と、前記ステップ3と前記ステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるステップ5とをコンピュータに実行させるので、粘性材料で囲まれた物体の沈下挙動をより正確かつ簡便に予測計算することができるという効果を奏する。
【0026】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラムは、上述した発明において、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをコンピュータに実行させるので、上記効果に加え、任意の時間経過後(例えば100年、1000年、1万年、10万年後)における物体の沈下量の累計値をより正確かつ簡便に予測計算することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法、計算装置、計算プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法は、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法であって、ステップ1〜5を有するものである。
【0030】
ステップ1は、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するものである。
【0031】
ステップ2は、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するものである。
【0032】
ステップ3は、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するものである。
【0033】
ステップ4は、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するものである。
【0034】
ステップ5は、ステップ3とステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるものである。
【0035】
上記構成によれば、粘性材料で囲まれた物体の沈下挙動をより正確かつ簡便に予測計算することができる。
【0036】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法は、上記の構成に加え、次のステップ6〜9をさらに有してもよい。
【0037】
ステップ6は、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるものである。
【0038】
ステップ7は、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するものである。
【0039】
ステップ8は、ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、次の時間区間の一定時間間隔における沈下量をステップ7と同様にして計算するものである。
【0040】
ステップ9は、ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するものである。
【0041】
上記構成によれば、任意の時間経過後(例えば100年、1000年、1万年、10万年後)における粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映することにより物体の沈下量の累計値をより正確かつ簡便に予測計算することができるという効果を奏する。
【0042】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置としては、上記のステップ1〜5の処理内容をそれぞれコンピュータにより演算処理する第1〜第5演算手段を備えるように構成することができる。また、この構成に加えて、さらに上記のステップ6〜9の処理内容をそれぞれコンピュータにより演算処理する第6〜第9演算手段を備えるように構成してもよい。
【0043】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラムとしては、上記のステップ1〜5をそれぞれコンピュータに実行させるように構成することができる。また、この構成に加えて、さらに上記のステップ6〜9をそれぞれコンピュータに実行させるように構成してもよい。
【0044】
また、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上述した計算プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体により構成することができる。
【0045】
次に、上述した本発明の計算方法の基本原理等についてより具体的に説明する。
(1)粘土材料を純粘性流体としてモデル化
本発明では、以下のように、ベントナイト系粘土材料を純粘性流体とみなしてモデル化する。ここで、弾性、あるいは塑性的な性質を有していない粘性流体を純粘性流体という。純粘性流体の構成方程式は次式で表現される。
【0047】
ここに、Sは応力テンソル、−pは応力の等方成分、Iは単位テンソルである。
【0049】
また、Dはひずみ速度テンソル、Θは体積膨張速度であり、μを粘性率、λを第2粘性率と呼ぶ。
【0053】
非圧縮流体では、Θ≡0であるため、上記の構成方程式は、次のようになる。
【0055】
水、空気、アルコール、グリセリンなどの低分子量の流体は、ニュートン流体として分類される。ニュートン流体では、粘性率μはせん断ひずみ速度D
ijに依存しない。すなわち、
【0057】
一方、溶融高分子やゴム、粒子懸濁液、石油などの流動は、ニュートン流体とは異なり、粘性率μはせん断ひずみ速度に依存するため、粘性率をせん断粘度、せん断依存粘度、あるいは、単に粘度、みかけの粘度とも呼ばれる。ここでは、以降、単に粘度ηと呼ぶ。せん断ひずみ速度D
ijの大きさをγドット(・)で表せば、
【0059】
粘度ηのSI単位は、[Pa・s]、cgs単位は[Poise]である。
【0061】
表1に代表的な流体の粘度のオーダーを示す。
【0063】
(2)計算方法
(2−1)支配方程式
計算に用いる支配方程式としては、非圧縮性流体を仮定し、以下に示すナビエ・ストークスの運動方程式と連続式を扱う。
【0065】
ここで、ρは流体の密度、fは荷重ベクトルである。
上記の純粘性流体の構成方程式を再記すると、
【0067】
非圧縮性の仮定は、水、粘土ペーストや溶融樹脂などを取り扱う多くの流動問題では許容し得る近似とされている。また、一般に高粘度流動問題では、粘性力と圧力勾配が流動状況を支配的に決定するため、ナビエ・ストークス運動方程式の左辺第2項の非線形項を無視した近似(ストークス方程式)も多用されている。
【0068】
(2−2)有限要素法
上述の問題を有限要素法により解析するため、粘性流体の流速と圧力を未知量とし、流速に対しては要素の頂点の節点による一次補間、圧力については要素内一定とした、いわゆる混合補間を採用するものとする。
【0069】
(2−3)物体の沈下速度の計算方法
粘性流体(以下、粘性体ということがある。)内に埋設される物体の沈降速度は、
図1に示すように物体に作用する荷重(自重−浮力)と流体抗力との釣り合い条件から、次式を用いて評価する。
【0071】
ここで、左辺は、物体に作用する荷重であり、gは重力加速度、ρ
wは物体の密度、ρ
bは粘性体の湿潤密度、V
wは物体の体積である。右辺はベントナイトの流動に伴って発生する抗力を表し、S・nは粘性体から物体の表面(表面積S
w)に作用する表面力である。
【0072】
物体は変形しない剛体とみなし、解析対象は流動領域となる粘性体とする。粘性体から物体に作用する表面力分布は未知であり、その積分値が荷重と釣り合う条件を満足する。したがって、流動境界条件として、物体表面を一定沈降速度u
wの速度規定境界とみなし、
図2のフローチャート図に示す反復計算を通じて釣り合い条件を満足するu
wを求める。
【0073】
すなわち、
図2に示すように、(1)まず、物体の仮の沈下速度の初期値u
0を設定し(ステップS11)、この初期値u
0を仮の沈下速度u
wとして設定するとともに、物体の沈下現象の原動力となる沈下力f
w(物体に作用する重力から、粘性体から受ける浮力を差し引いた値)を設定する(ステップS12)。(2)粘性体とその境界を設定し、粘性体を有限個の要素に分割して、要素を構成する節点の座標情報や物性情報等の計算情報を整理する。(3)設定した仮の沈下速度u
wで物体が沈下するという条件で粘性体の流動変形挙動を粘性流体として有限要素法により計算し(ステップS13)、物体の表面が粘性体から受ける抗力f
rの積分値を求める(ステップS14)。(4)計算された物体に作用する抗力f
rが仮設定した沈下力f
wに一致していない場合には(ステップS15でNo)、その差が縮まるような沈下速度u
*wに変更して(ステップS16)、ステップS13に戻り、(3)の計算を行う。(3)と(4)の計算を繰り返して、物体に作用する抗力f
rの計算値が、沈下力f
wに対して事前に設定してある所定の誤差範囲であった場合には計算を終了する(ステップS15でYes)。
【0074】
なお、上記のステップS16において、仮の沈下速度を変更する場合の補正方法としては、例えば、u
*w=ωu’
w+(1−ω)u
wのような計算式を用いることができる。ここで、u’
w=u
w(f
w/f
r)、0≦ω≦1である。
【0075】
(2−4)沈下量の計算方法
前述の方法である時点における物体の沈下速度を精度良く推定計算することができるので、次は下記の方法で所定時間経過後の沈下量の累計値を計算する。
【0076】
(1)沈下現象を予測したい期間(例えば1万年間)を複数の区間(例えば100年×100区間)に分割する。
(2)最初の時間区間における物体の粘性体の中における位置を境界条件に反映して、物体の沈下速度を前述(
図2のフローチャート)の方法で計算する。
(3)最初の時間区間における物体の沈下速度は上記(2)で計算された一定の沈下速度で沈下するものとみなして、沈下量を時間積分して計算する。
(4)最初の時間区間における物体の沈下量を反映して、物体と粘性体の境界の座標位置をシフトした場合の各要素の幾何学形状に節点情報を修正する(有限要素解析では「リメッシュ」と称す。)。この修正によって、例えば
図5−1と
図5−2の違いのように、粘性体の流動する領域幅が狭い条件に変わる部位と広い条件に変わる部位が計算モデルに反映される。
(5)物体および粘性体の修正した位置情報に基づいて、次の第2の時間区間における上記(2)(3)の計算を実施し、再び上記(4)の計算条件の修正を実施して、さらにその次の第3の時間区間の沈下予測計算を実施する。
(6)上記(5)の計算を繰り返して、所定の期間までの沈下量計算を実施したら、計算を終了する。
【0077】
(2−5)沈下速度の計算方法の検証
ここでは、前節(2−4)で示した本発明の抗力評価方法の妥当性をストークスの法則に基づき検証した結果を示す。
【0078】
ストークスの法則によれば、粘度ηの流体内を一定速度uで移動する半径Rの球体に作用する抗力f
rは、次式で与えられる。
【0080】
ストークスの法則は、運動量方程式において慣性項を無視し、無限遠で流体速度がゼロになる仮定を採用することによって、解析的に導かれるものであり、この式から理論的な計算をすることができる。例えば、沈下する物体は半径2mの球体とし、粘性体の粘度ηを1E+14Pa・sとすると、沈下速度v=1E−3m/sとなるときの球体が受ける抗力はストークスの法則により、1.885E+12Nと計算される。
【0081】
本発明の計算方法では、計算する座標系として軸対称円柱座標系を採用し、
図3に示すような解析モデルを採用した。左辺、上辺、右辺を流速ゼロの壁面境界、底辺を軸対称境界、球体表面を一定速の速度規定境界として設定した。
【0082】
収束計算の目標となる抗力は1.885E+12Nとし、粘度ηを1E+14Pa・sとした。仮の沈下速度を0.02m/sに設定して、
図2に示す反復計算を実施した結果は
図4に示すように、理論計算で設定した沈下速度v=1E−3m/sに収束することを確認できた。
【0083】
表2は、ストークスの法則より得られる抗力の厳密解と本発明による有限要素(FEM)解析により計算された抗力の比較である。両者は良好な一致を示すことが確認できた。
【0085】
次に、本発明による沈下量の予測計算例(その1、その2)について説明する。
【0086】
(3)予測計算例その1
図5−1は、本発明による計算方法で沈下現象を予測計算する解析モデル(その1)の計算開始時における流動場の幾何学形状を示したものである。
図5−1に示すように、解析対象は高レベル放射性廃棄物を粘性材料1内に縦置き定置した場合の廃棄体オーバーパック2の沈下である。計算条件を表3に示す。なお、
図5−2は計算ステップの途中における流動場の違いの一例として、廃棄体オーバパックが0.3m沈下したときの幾何学形状を示している。
【0088】
計算結果を時間の経過と沈下量の関係でグラフ表示したものが
図6である。
図6に示すように、50万年間で約0.65mの沈下量と計算された。
【0089】
(4)予測計算例その2
図7は、本発明による計算方法で沈下現象を予測計算する別の解析モデル(その2)を示したものである。
図7に示すように、このモデルは上記の特許文献1に示された沈下抑制対策を、高レベル放射性廃棄物を縦置きした場合に適用した場合を模擬している。左右下部に配置してある沈下抑制材3は、縦置き処分孔の底部にリング状に配置した岩石である。
【0090】
解析対象は
図5−1、
図6と同様に高レベル放射性廃棄物を粘性材料1内に縦置き定置した場合の廃棄体オーバーパック2の沈下であり、計算条件は上記のその1と同じ(表3を参照)にしてある。ただし、縦置き処分孔の底部にリング状に配置した沈下抑制材3と粘性体(緩衝材と称するベントナイト系粘土材料)の境界面を不動点になるように境界条件を設定して計算した。
【0091】
計算結果を時間の経過と沈下量の関係でグラフ表示したものが
図8である。
図8に示すように、50万年間で約0.2mの沈下量と計算された。上記の「予測計算例その1」の結果と比較して沈下量が低減していることから、沈下抑制材3による沈下抑制対策が効果を発揮していることを予測評価できた。
【0092】
図9には、上記の2つの計算条件(その1、その2)で予測した計算結果である沈下速度と粘性体の流速を鉛直断面上において図化した例を示している。矢印は粘性体の流動方向を示している。沈下抑制材3による沈下抑制対策によって粘性体の流れが抑制されていることの違いが明確に示されている。
【0093】
以上説明したように、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によれば、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法であって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するステップ1と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ2と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ3と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ4と、前記ステップ3と前記ステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるステップ5とを有するので、粘性材料で囲まれた物体の沈下挙動をより正確かつ簡便に予測計算することができる。
【0094】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によれば、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをさらに有するので、上記効果に加え、任意の時間経過後(例えば100年、1000年、1万年、10万年後)における物体の沈下量の累計値をより正確かつ簡便に予測計算することができる。
【0095】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によれば、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する装置であって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定する第1演算手段と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第2演算手段と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第3演算手段と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算する第4演算手段と、第3演算手段と第4演算手段による計算を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求める第5演算手段とを有するので、粘性材料で囲まれた物体の沈下挙動をより正確かつ簡便に予測計算することができる。
【0096】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によれば、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算装置によって沈下速度値を求める第6演算手段と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算する第7演算手段と、第7演算手段で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を第7演算手段と同様にして計算する第8演算手段と、第8演算手段をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算する第9演算手段とをさらに有するので、上記効果に加え、任意の時間経過後(例えば100年、1000年、1万年、10万年後)における物体の沈下量の累計値をより正確かつ簡便に予測計算することができる。
【0097】
また、本発明に係る粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラムは、粘性材料で囲まれた物体の沈下を予測計算する方法をコンピュータに実行させる計算プログラムであって、粘性材料を粘性流体とみなして、この粘性流体で囲まれている物体の沈下力を、物体に作用する重力から、粘性流体から受ける浮力を差し引いた値として設定するステップ1と、物体の沈下速度を任意の速度である仮の沈下速度に設定して、設定した仮の沈下速度で物体が沈下するときの物体周囲の粘性流体の粘性流れ速度を、粘性流体を単純な粘性流体とみなして計算するとともに、粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ2と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも大きい場合には、仮の沈下速度を若干小さく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ3と、計算された抗力の積分値が設定した沈下力よりも小さい場合には、仮の沈下速度を若干大きく設定して、改めて粘性流体から物体の表面に作用する抗力を計算するステップ4と、前記ステップ3と前記ステップ4を繰り返して、計算された抗力の積分値が事前に設定した沈下力の誤差範囲に収束した時点で計算を停止し、そのときの仮の沈下速度を沈下力に相当する沈下速度値として求めるステップ5とをコンピュータに実行させるので、粘性材料で囲まれた物体の沈下挙動をより正確かつ簡便に予測計算することができる。
【0098】
また、本発明に係る他の粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算プログラムは、上述した発明において、あらかじめ沈下量を予測したい時間を複数の一定時間間隔に分割して、上述した粘性材料で囲まれた物体の沈下予測計算方法によって沈下速度値を求めるステップ6と、複数の一定時間間隔に分割したときの最初の時間区間の一定時間間隔において、求めた沈下速度値に等しい沈下速度で物体が移動するものとみなして、沈下変位量を時間積分することにより、この一定時間間隔における沈下量を計算するステップ7と、前記ステップ7で計算した沈下量に応じて、粘性流体の移動に見合った位置に当初設定した有限要素解析における計算要素の節点が移動したとみなして、節点の座標を補正し、粘性流体の流動場の違いを計算条件に反映して次の時間区間の一定時間間隔における沈下量を前記ステップ7と同様にして計算するステップ8と、前記ステップ8をあらかじめ沈下量を予測したい時間として設定した時間まで繰り返して最終的な沈下量を計算するステップ9とをコンピュータに実行させるので、上記効果に加え、任意の時間経過後(例えば100年、1000年、1万年、10万年後)における物体の沈下量の累計値をより正確かつ簡便に予測計算することができる。