(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定周波数の電波を送波するとともに、送波された電波の反射波を受波するセンサを備え、該センサによる検知結果としての送受波の周波数の差分に基づいて移動体の存否を検知し、照明光源の点灯を行うセンサ装置において、
前記センサの検知結果を示すセンサ信号を処理する処理部と、
前記センサ信号のうち前記所定周波数に対応するドップラー信号の信号強度が予め定めた閾値を超えるか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって閾値を超えると判定された際に前記照明光源の点灯制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記判定部によって閾値を超えると判定された場合、判定後、判定したときの時間から特定時間は、前記閾値を超えるとの判定に関わらず前記照明光源の点灯制御の実行を規制し、
前記制御部は、閾値を超えると判定されたタイミングより前に、予め定めた規定時間以上閾値を超えない時間がある場合にのみ、前記照明光源の点灯制御の実行を規制することを特徴とするセンサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を
図1〜
図4に従って説明する。
本実施形態の照明装置は、アクティブ型電波式のセンサを備えた器具である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の照明装置10は、所定の照射領域に光を照射する照明部20と、所定の検知エリアにおける移動体の存否を検知し、その検知結果を処理する処理部30から構成されている。
【0015】
照明部20は、光を照射する照明光源21と、処理部30からの点灯信号に基づいて照明光源21の点灯及び消灯の制御を行う光源制御部22から構成されている。光源制御部22は、処理部30から点灯信号を入力した場合には、点灯保持時間(本実施形態では10s)、照明光源21を点灯させ、その後、処理部30から点灯信号を入力しない場合には、照明光源21を消灯させる。
【0016】
処理部30は、センサ31と、センサ31から入力したドップラー信号(センサ信号)を増幅させる増幅器32を備える。さらに、処理部30は、増幅器32で増幅されたドップラー信号のうち、特定周波数帯域(本実施形態では、0〜500Hz)以外のドップラー信号を減衰させるフィルタ部33を備える。また、処理部30は、フィルタ部33で減衰されたドップラー信号を判定する判定部34と、判定部34による判定結果を点灯信号として光源制御部22に出力する信号制御部35を備える。また、照明部20と処理部30は、電気的に接続されている。
【0017】
センサ31は、所定周波数の電波(本実施形態では24GHzのミリ波)を送波するアクティブ型電波式のドップラーセンサである。センサ31は、送波された電波が物体において反射した反射波(受信波)を受波し、送波した電波の周波数と反射波の周波数との差分を示すドップラー信号を増幅器32に出力する。本実施形態においては、検知対象とする移動体を人体としている。
【0018】
フィルタ部33は、特定周波数帯域以外のドップラー信号を減衰させて、特定周波数帯域のドップラー信号を判定部34に出力する。なお、フィルタ部33は、照明光源21の点滅時に発生するノイズを除去するため、電源周波数のN倍にバンドパスフィルタをそれぞれ設けている。
【0019】
判定部34は、フィルタ部33で減衰されたドップラー信号の振幅を振幅データとしてデジタル変換する。そして、判定部34は、振幅データと予め定めた閾値と比較し、閾値を超えたか否かを判定する。閾値は、検知エリア内に移動体が存在するか否かを判定するために用いられる値である。そして、振幅データで特定される信号強度が閾値を超えている場合、判定部34は、閾値を超えることを指示する検知信号を信号制御部35に出力する。その一方で、振幅データで特定される信号強度が閾値を超えていない場合、判定部34は、検知信号を信号制御部35に出力しない。
【0020】
信号制御部35は、判定部34から検知信号を入力すると、点灯信号を出力させるための出力条件が成立した場合に限って、点灯信号を光源制御部22に出力する。つまり、信号制御部35は、検知信号を入力しても、出力条件が成立していなければ、点灯信号を光源制御部22に出力しない。
【0021】
次に、本実施形態の照明装置10における一制御例について、その作用とともに、
図2及び
図3に従って説明する。なお、
図3(a),(b)では、横軸を時間(ms)とする一方、縦軸を電圧(V)とする。一方、
図3(c),(d)では、横軸を時間(ms)とする一方、縦軸をコマンドの出力の有無としている。すなわち、「1」は、コマンド出力有を示す一方、「0」は、コマンド出力無を示す。
【0022】
照明装置10では、照明装置10に交流電源が供給されると、センサ31が検知エリア内において移動体に電波を送波するとともに、移動体から反射した電波を受波する。そして、センサ31は、送波した電波の周波数と反射波の周波数との差分を示すドップラー信号を増幅器32に出力する。そして、ドップラー信号の信号強度が閾値を超えている場合、信号制御部35から点灯信号が出力された際には照明光源21の点灯が開始される。
【0023】
図3(a)は、照明光源21の点灯開始後、増幅器32で増幅されたドップラー信号を示している。照明光源21が点灯するタイミングP1や、照明光源21が安定して点灯する状態に移行するタイミングP2では、照明光源21の点灯状態が安定していない。また、照明光源21が安定して点灯している状態から消灯状態への切り替わり時においても、照明光源21の点灯状態が安定していない。このように、照明光源21の点灯状態が安定していない状況では、
図3(a)に示すように、スパイクノイズが発生し、センサ31から振幅の大きなドップラー信号が出力されることになる。
【0024】
また、照明装置10では、照明装置10に交流電源が供給されてからタイミングP1に到達するまでの時間が、規定時間t1(本実施形態では、250ms)以上となるように定められている。規定時間t1は、照明装置10に交流電源が供給された後、照明光源21が点灯するまでに要する最小時間である。ちなみに、センサ31の検知エリア内に移動体が存在する場合、タイミングP2の経過後、規定時間t1よりも短い間隔で、センサ31からドップラー信号が出力されるようになっている。
【0025】
ドップラー信号を入力すると、フィルタ部33は、特定周波数帯域以外のドップラー信号を減衰させる。フィルタ部33で減衰されたドップラー信号は、
図3(b)に示すような波形を示す。また、判定部34は、フィルタ部33で減衰したドップラー信号と閾値を比較する。このとき、判定部34は、上限値をVthmaxとする一方で、下限値をVthminとする閾値範囲を設定する。
【0026】
図3(b)に示すように、タイミングP1で出力されたドップラー信号は、上限値Vthmaxを超えている。一方、タイミングP2で出力されたドップラー信号は、上限値Vthmax及び下限値Vthminを超えている。つまり、スパイクノイズに基づくドップラー信号の信号強度は、閾値を超えるほど大きい。
【0027】
また、センサ31は、センサ31の近辺に配置されている照明光源21で発生したスパイクノイズを検知し得る。
図3(c)に示すように、判定部34は、入力したドップラー信号の信号強度が閾値を超えると判定した場合、検知信号を信号制御部35に出力する。一方、ドップラー信号の信号強度が閾値範囲を超えない場合、判定部34は、検知信号を出力しない。よって、信号制御部35が、検知信号を入力したことを契機として、光源制御部22に点灯信号を出力すると、スパイクノイズが検出されたにもかかわらず、光源制御部22は、照明光源21を点灯させるように制御してしまうことになる。
【0028】
具体的に説明すると、
図2に示すように、本実施形態の複数の照明装置10A,10Bが、室内空間Kにおいて各照明装置10A,10Bの検知エリアが一部重複するように配設されていたとする。そして、照明装置10Aの検知エリア内に移動体が存在しないが、照明装置10Bの検知エリア内に移動体が存在するような場合、照明装置10Bにおいて照明光源21の点灯が開始される。また、照明装置10Bでは、点灯の開始によって、タイミングP1,P2でスパイクノイズが発生することになる。この場合、照明装置10Aの検知エリア内に移動体が存在しないにも関わらず、照明装置10Bで発生したスパイクノイズを照明装置10Aのセンサ31aが検知してしまう。これにより、照明装置10Aの検知エリア内に移動体が存在しないにも関わらず、照明装置10Aの照明光源21が誤点灯してしまうことになる。
【0029】
そこで、本実施形態の照明装置10では、判定部34によってドップラー信号の信号強度が閾値を超えると判定された場合、判定後、特定時間t2(本実施形態では、200ms)は、照明光源21の点灯制御の実行を規制するようにした。また、特定時間t2は、タイミングP1からタイミングP2に到達するまでに要する時間よりも長くなるように定められている。なお、本実施形態における「点灯制御の実行を規制する」とは、照明光源21が点灯しているか否かを問わず、点灯信号に基づいて新たに照明光源21を点灯させることを規制する、ということを指す。より詳しくは、点灯制御の実行の規制によって規制される状態は、照明光源21が点灯していない状態から照明光源21を点灯させる状態と、照明光源21が点灯している状態から、新たに点灯保持時間の計測を開始することを含む。
【0030】
具体的に説明すると、判定部34は、入力したドップラー信号の信号強度が閾値を超えると判定した場合、検知信号を信号制御部35に出力する。ただし、信号制御部35は、検知信号の立ち上がり直後から特定時間t2が経過するまでの間、検知信号に対してマスク処理を行うようにした。マスク処理とは、判定部34から検知信号を入力していても、検知信号を無視することで検知信号を入力していないとみなす処理である。これにより、信号制御部35は、点灯信号を光源制御部22に出力することがない。そして、点灯信号を入力しないことで、光源制御部22によって照明光源21のON制御が行われない。
【0031】
以下、マスク処理の流れについて説明する。
タイミングP1で出力されたドップラー信号の信号強度は、上限値Vthmaxを超えるため、
図3(c)に示すように、タイミングP1において1回の検知信号が出力される。同様に、タイミングP2で出力されたドップラー信号の信号強度は、上限値Vthmax及び下限値Vthminを超えるため、
図3(c)に示すように、タイミングP2において2回の検知信号が出力される。
【0032】
また、信号制御部35は、照明装置10に交流電源が供給された直後から経過した時間を計時する。その後、信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号を入力すると、照明装置10に電源が供給されてから検知信号を入力するまでの経過時間が、規定時間t1以上であるか否かを判定する。
【0033】
検知信号を入力するまでの経過時間が規定時間t1以上である場合、信号制御部35は、1回目の検知信号の立ち上がり直後(入力直後)から特定時間t2が経過するまでの間、マスク処理を行う。なお、以下の説明では、マスク処理を行う時間を「マスク時間」と示す。マスク処理を実行することで、信号制御部35は、マスク時間中に検知信号を入力したとしても、点灯信号を出力しない。
【0034】
また、前述したように、特定時間t2は、タイミングP1からタイミングP2に到達するまでに要する時間よりも長くなるように定められている。よって、
図3(c),(d)に示すように、タイミングP1,P2で、スパイクノイズが発生したことに起因して検知信号が出力されたとしても、マスク処理によって、スパイクノイズに基づく点灯信号が出力されない。結果、照明装置10では、該照明装置10が備えるセンサ31の付近に配置されている照明光源21の点灯時に出力されるスパイクノイズの影響を受けて、照明装置10が誤点灯することがない。一方、マスク時間の経過後に検知信号を入力した場合、信号制御部35は、マスク処理を実行することなく光源制御部22に点灯信号を出力することになる。よって、本実施形態では、マスク処理が行われていない期間中に検知信号を入力することが、出力条件の成立に相当する。
【0035】
このように、信号制御部35は、検知信号を入力したことを契機に点灯信号を光源制御部22に出力し得る。ただし、信号制御部35は、入力した検知信号の種類を照明装置10に交流電源が供給されてからの経過時間によって判別する。詳しくは、規定時間t1以上経過した後に検知信号を入力した場合、照明装置10の付近に配置されている照明光源21から発生したスパイクノイズに基づく検知信号であると判別する。一方、規定時間t1が経過する前に検知信号を入力した場合、照明装置10の検知エリア内に移動体が存在することで出力された検知信号であると判別する。
【0036】
そして、信号制御部35は、規定時間t1以上経過した後に検知信号を入力した場合、特定時間t2の間、マスク処理を行う。マスク処理を行うことで、信号制御部35は、特定時間t2が経過するまでの間に検知信号を入力しても、検知信号を入力していないとみなし、光源制御部22に点灯信号を出力しない。これにより、照明装置10の付近に配置されている照明光源21から発生したスパイクノイズに基づき、照明光源21が誤点灯することがない。
【0037】
また、信号制御部35は、マスク処理を定期的に実行するようになっている。
以下、定期的に行われるマスク処理の一制御例について、その作用とともに
図4(a)〜(c)に従って説明する。
【0038】
信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目のマスク時間(特定時間t2)が経過すると、再度、計時する。そして、
図4(a),(b)に示すように、規定時間t1が経過した後に、再度、信号制御部35が検知信号を入力したとする。この場合、信号制御部35は、規定時間t1経過後に入力した検知信号の立ち上がり直後から特定時間t2が経過するまでの間、再度、マスク処理を行う。なお、信号制御部35は、規定時間t1が経過する前に検知信号を入力した際には、マスク処理を実行しない。
【0039】
したがって、
図4(c)に示すように、1回目のマスク処理の終了後に、再度、スパイクノイズが発生したとしても、再度、マスク処理が行われる。よって、例えば、
図2において、照明装置10Bの検知エリアで移動体が検知されなくなったことで、照明光源21が安定して点灯している状態から消灯状態に切り替わる際にもスパイクノイズが発生することになる。ただし、点灯していない照明装置10Aにおいて、定期的にマスク処理を実行することで、照明装置10Bの消灯時に発生したスパイクノイズの影響を受けて照明装置10Aが誤点灯することがない。
【0040】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)光源制御部22及び信号制御部35は、ドップラー信号の信号強度が閾値を超えている場合、検知信号を入力したとしても、特定時間t2が経過するまでの間、照明光源21の点灯制御の実行を規制する。よって、特定時間t2中、光源制御部22及び信号制御部35は、特定時間t2中に検知信号を入力したとしても、照明光源21の点灯制御を行わない。これにより、照明装置10の付近に配置されている照明光源21が点灯するタイミングP1などに発生する電波の干渉による照明光源21の誤点灯を抑制することができる。
【0041】
(2)そして、特定時間t2が経過した後、ドップラー信号の信号強度が閾値を超えている場合、照明光源21の点灯制御の規制対象とならない。よって、光源制御部22及び信号制御部35は、照明光源21の点灯制御を実行する。これにより、検知信号の入力時に特定時間t2が経過している場合には、照明光源21を点灯させることができる。
【0042】
(3)規定時間t1以上、閾値を超えるドップラー信号を入力しなかった場合、光源制御部22及び信号制御部35は、照明光源21の点灯制御の実行を規制する。判定部34は、スパイクノイズであるか否かを問わず、ドップラー信号の信号強度が閾値を超えた場合に検知信号を出力している。一方、信号制御部35は、入力した検知信号の種類を照明装置10に交流電源が供給されてからの経過時間によって判別する。これにより、信号制御部35は、検知信号を入力するまでに要した時間の長短から、照明光源21の点灯制御を実行すべきか否かを把握することができる。
【0043】
(4)信号制御部35は、定期的にマスク処理を行う。これにより、照明装置10の付近に配置されている別の照明光源21の消灯時に発生するスパイクノイズの影響を受けて照明光源21が誤点灯することがない。
【0044】
(5)タイミングP1,P2等において、閾値範囲を超えるドップラー信号が出力される。このような場合、判定部34は、ドップラー信号が閾値範囲を超えたことで検知信号を信号制御部35に出力する。ただし、信号制御部35は、マスク処理を実行することで、検知信号を入力しても、検知信号を無視することになるので、点灯信号を光源制御部22に出力しない。このため、照明装置10の付近に配置されている照明光源21から発生したスパイクノイズの影響を受けて照明光源21が誤点灯することがない。
【0045】
(6)特定時間t2は、タイミングP1からタイミングP2に到達するまでに要する時間よりも長くなるように定められているので、タイミングP1,P2の両方のタイミングにおける誤点灯を、1回のマスク処理によって防ぐことができる。
【0046】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を
図5〜
図8に従って説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成及び同一制御内容について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0047】
本実施形態において、信号制御部35は、ドップラー信号の信号強度が閾値範囲の上限値及び下限値の両方を超えるか否かによってマスク時間を変更可能としている。
最初に、マスク時間の延長が行われるときの制御例について、
図5(a)〜(c)に従って説明する。
【0048】
図5(a),(b)に示すように、信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号を入力したことにより、検知信号の立ち上がり直後からマスク時間として「時間t3」を設定し、計時する。また、信号制御部35は、1回目の検知信号の入力期間と、再度、検知信号を入力するまでに要した時間を計時する。信号制御部35は、検知信号の入力レベルが「1」となったときには、検知信号の入力中であると判断する一方、検知信号の入力レベルが「0」となったときには、検知信号を入力していないと判断する。また、入力レベルが「1」となっている期間を計測することで、検知信号の入力期間を把握する。
【0049】
そして、信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号の入力期間が、時間t3(本実施形態では、100ms)以内であるか否かを判定する。さらに、信号制御部35は、1回目の検知信号を入力してから、時間t4(本実施形態では、10ms)以内に、2回目の検知信号を入力したか否かを判定する。さらに、信号制御部35は、2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度と逆側の閾値を超えるか否かを判定する。
【0050】
これらの判定結果がいずれも肯定である場合、信号制御部35は、ドップラー信号の振幅が、連続して閾値範囲の上限値及び下限値を超えたと判定する。そして、信号制御部35は、1回目の検知信号に対するマスク処理の終了後、2回目の検知信号に対して、時間t3の間、マスク処理を行う。したがって、
図5(c)に示すように、延長された時間t3中に、判定部34から検知信号が出力されたとしても、マスク処理を実行することで、点灯信号は出力されない。
【0051】
前述した3つの判定結果がいずれも肯定であるということは、それだけ振幅が大きいということになる。そして、振幅が大きいほど、振幅が閾値範囲に収まって安定するまでに時間を要するということになる。つまり、ドップラー信号の振幅強度が上限値又は下限値のうちどちらか一方を超えた場合よりも、ドップラー信号の振幅強度が上限値及び下限値の両方を連続して超えた場合の方が、振幅が大きくなるので、マスク時間が長くなる。そして、信号制御部35が、マスク時間を延長することで、照明装置10の付近に配置されている照明光源21から発生したスパイクノイズに基づき、照明光源21が誤点灯することがない。
【0052】
次に、マスク時間の延長が行われないときの制御例について、
図6(a)〜(c)に従って説明する。
図6(a),(b)に示すように、信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号を入力したことにより、検知信号の立ち上がり直後からマスク時間として「時間t3」を設定し、計時する。このとき、1回目の検知信号の入力期間が、時間t3以内であって、かつ2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度と逆側の閾値を超えるものとする。その一方で、1回目の検知信号の入力後、時間t4以上経過した後に、2回目の検知信号を入力したとする。
【0053】
この場合、信号制御部35は、マスク時間を延長させるための条件が成立していないとみなす。つまり、時間t4以上経過した後に2回目の検知信号を入力したということは、
図5に示す例よりもスパイクノイズの余韻が小さくなる。したがって、
図6(c)に示すように、信号制御部35は、時間t3の経過後、マスク時間を延長しない。
【0054】
次に、マスク時間の延長が行われないときの別の制御例について、
図7(a)〜(c)に従って説明する。
図7(a),(b)に示すように、信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号を入力したことにより、検知信号の立ち上がり直後からマスク時間として「時間t3」を設定し、計時する。このとき、1回目の検知信号の入力期間が、時間t3以内であって、かつ1回目の検知信号の入力後、時間t4以内に2回目の検知信号を入力したとする。その一方で、2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度と同じ側の閾値を超えるものとする。
【0055】
この場合、信号制御部35は、マスク時間を延長させるための条件が成立していないとみなす。つまり、1,2回目の検知信号の出力契機となった各ドップラー信号の信号強度が同じ側の閾値を超えるということは、
図5に示す例よりもスパイクノイズの余韻が小さくなる。したがって、
図7(c)に示すように、信号制御部35は、時間t3の終了後、マスク時間を延長しない。
【0056】
次に、マスク時間の延長が行われないときの別の制御例について、
図8(a)〜(c)に従って説明する。
図8(a),(b)に示すように、信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号を入力したことにより、検知信号の立ち上がり直後からマスク時間として「時間t3」を設定し、計時する。このとき、1回目の検知信号の入力後、時間t4以内に2回目の検知信号を入力したとする。さらに、2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度と逆側の閾値を超えるものとする。ただし、1回目の検知信号の入力期間が、時間t3を超えるものとする。
【0057】
この場合、信号制御部35は、マスク時間を延長させるための条件が成立していないとみなす。つまり、1回目の検知信号の入力期間が長いということは、
図5に示す例よりもスパイクノイズの余韻が小さくなる。したがって、
図8(c)に示すように、信号制御部35は、時間t3の終了後、マスク時間を延長しない。これにより、信号制御部35は、時間t3の経過後に検知信号を入力した場合、点灯信号を光源制御部22に出力することになる。
【0058】
次に、本第2実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて以下の効果を有する。
(7)2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、時間t4以内に1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度と逆側の閾値を超えるということは、それだけ振幅が大きいということになる。そして、振幅が大きいほど、振幅が閾値範囲に収まって安定するまでに時間を要するということになる。このような場合であっても、マスク時間を延長することで、振幅が閾値範囲内に収まるまで、照明装置10の付近に配置されている照明光源21から発生したスパイクノイズの影響を受けて照明光源21が誤点灯することがない。
【0059】
(第3実施形態)
以下、本発明を具体化した第3実施形態を
図9に従って説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成及び同一制御内容について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0060】
本実施形態において、信号制御部35は、ドップラー信号の信号強度が閾値範囲を超えるか否かに加え、ドップラー信号の信号強度の大小に応じて、マスク時間を変更している。
【0061】
具体的に説明すると、信号制御部35は、閾値範囲の上限値及び下限値を複数段階に区分けして設定する。詳しくは、上限値Vthmaxよりも大きい第2上限値Vthmax2と、第2上限値Vthmax2よりも大きい第3上限値Vthmax3を設定する。さらに、下限値Vthminよりも小さい第2下限値Vthmin2と、第2下限値Vthmin2よりも小さい第3下限値Vthmin3を設定する。
【0062】
また、以下の説明では、上限値Vthmax及び下限値Vthminを纏めて第1閾値範囲Vthと示す場合がある。また、第2上限値Vthmax2及び第2下限値Vthmin2を纏めて第2閾値範囲Vth2と示す場合がある。また、第3上限値Vthmax3及び第3下限値Vthmin3を纏めて第3閾値範囲Vth3と示す場合がある。
【0063】
信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号の入力期間中、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、第2閾値範囲Vth2又は第3閾値範囲Vth3を超えているか否かを判定する。
【0064】
第1閾値範囲Vthを超えているが第2閾値範囲Vth2を超えていない場合、信号制御部35は、時間t3(本実施形態では、100ms)をマスク時間として決定する。一方、第2閾値範囲Vth2を超えているが第3閾値範囲Vth3を超えていない場合、信号制御部35は、時間t3に時間t5(本実施形態では、50ms)を加算した時間をマスク時間として決定する。また、第3閾値範囲Vth3を超えている場合、信号制御部35は、時間t3に時間t3を加算した時間をマスク時間として決定する。つまり、本実施形態では、信号強度が大きくなるに連れて、マスク時間も長くなる。
【0065】
ドップラー信号の信号強度が大きいということは、それだけ振幅が大きいということになる。振幅が大きいほど、振幅が第1閾値範囲Vthに収まって安定するまでに時間を要することになる。このため、ドップラー信号の信号強度の大きさに合わせてマスク時間を延長することで、照明装置10の付近に配置されている照明光源21から発生したスパイクノイズに基づき、照明光源21が点灯することがない。
【0066】
以下、本実施形態の照明装置10における一制御例について、その作用とともに
図9(a)〜(c)に従って説明する。
図9(a),(b)に示すように、信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号を入力すると、その検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が超えている閾値範囲を判定する(Vth,Vth2,Vth3)。
【0067】
図9(a)では、ドップラー信号の信号強度が第3閾値範囲Vth3を超えている。このため、
図9(c)に示すように、信号制御部35は、時間t3に時間t3を加算した時間をマスク時間として決定する。
【0068】
次に、本第3実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて以下の効果を有する。
(8)ドップラー信号の信号強度の大小に応じてマスク時間の長さを変更するようにした。これにより、ドップラー信号の信号強度に応じたマスク時間を設定することができる。よって、マスク時間が短すぎることで、照明装置10の付近に配置されている照明光源21から発生したスパイクノイズの影響を受けて照明光源21が誤点灯するといったようなこともなくなる。その結果、より一層、正確な点灯制御を行うことができる。
【0069】
(第4実施形態)
以下、本発明を具体化した第4実施形態を
図10及び
図11に従って説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構成及び同一制御内容について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0070】
本実施形態において、信号制御部35は、ドップラー信号の信号強度が閾値範囲を超えるか否かに加え、閾値範囲の上限値及び下限値の両方を超えるか否かと、ドップラー信号の信号強度の大小に応じて、マスク時間を異ならせている。
【0071】
具体的に説明すると、ドップラー信号の信号強度が第1閾値範囲Vthを超えているが第2閾値範囲Vth2を超えていない場合、閾値範囲の上限値又は下限値を超えるにつき、マスク時間として「時間t5(本実施形態では、50ms)」が加算される。一方、ドップラー信号の信号強度が第2閾値範囲Vth2を超えているが第3閾値範囲Vth3を超えていない場合、閾値範囲の上限値又は下限値を超えるにつき、マスク時間として「時間t3(本実施形態では、100ms)」が加算される。また、ドップラー信号の信号強度が第3閾値範囲Vth3を超えている場合、閾値範囲の上限値又は下限値を超えるにつき、マスク時間として「時間t6(本実施形態では、150ms)」が加算される。
【0072】
例えば、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、第1閾値範囲Vthを超えているが第2閾値範囲Vth2を超えていないとする。一方、2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号が、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度と逆側に出現するが、第1閾値範囲Vthを超えていないとする。
【0073】
この場合、信号制御部35は、
図10に示すようにマスク時間を設定する。具体的には、1回目の検知信号が出力されたことを契機に、マスク時間として「時間t5」を設定する。そして、時間t5の経過後は、2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が第1閾値範囲Vthを超えていないため、信号制御部35は、マスク時間の延長は行わない。これにより、合計マスク時間は、「時間t5」となる。
【0074】
以下、本実施形態の照明装置10における一制御例について、その作用とともに
図11(a)〜(c)に従って説明する。
図11(a),(b)に示すように、信号制御部35は、照明装置10への電源供給後、1回目の検知信号を入力すると、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が超える閾値範囲を判定する。
【0075】
図11(a)では、ドップラー信号の信号強度が第3閾値範囲Vth3を超えている。このため、
図11(c)に示すように、信号制御部35は、時間t6をマスク時間として決定する。そして、信号制御部35は、決定したマスク時間を、1回目の検知信号の立ち上がり直後に設定し、計時する。
【0076】
また、信号制御部35は、1回目の検知信号の入力期間と、再度、検知信号を入力するまでに要した時間を計時する。このとき、1回目の検知信号の入力期間が、「時間t5」以内であって、かつ、1回目の検知信号の入力後、時間t4以内に2回目の検知信号を入力したとする。さらに、2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、1回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度と逆側の閾値を超えるものとする。
【0077】
この場合、信号制御部35は、2回目の検知信号の出力契機となったドップラー信号の信号強度が、各閾値範囲Vth,Vth2,Vth3のうちどの閾値範囲を超えているかを判定する。
【0078】
図11(a)では、2回目のドップラー信号の信号強度が第2閾値範囲Vth2を超えているが第3閾値範囲Vth3を超えていない。このため、
図11(c)に示すように、信号制御部35は、時間t6の経過後、時間t3だけマスク時間を延長する。
【0079】
これにより、本実施形態では、連続して出現する各ドップラー信号の信号強度が大きくなるに連れて、マスク時間も長くなる。よって、1,2回目の検知信号の出力契機となった各ドップラー信号が同一の振幅とならない場合であっても、各信号強度に合ったマスク時間が設定されることになる。
【0080】
次に、本第4実施形態によれば、上記第1実施形態の(1)〜(6)の効果に加えて以下の効果を有する。
(9)ドップラー信号が、閾値範囲の上限値側及び下限値側に同一の振幅で出力されるとは限らない。そこで、1,2回目の検知信号の出力契機となった各ドップラー信号がどのような振幅となる場合であっても、各ドップラー信号の信号強度が超えた閾値範囲の段階に応じて、マスク時間の長さを変更することで、より一層、正確な点灯制御を行うことができる。
【0081】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・第2実施形態において、ドップラー信号の信号強度が連続して上下の閾値を超える場合、1回目の検知信号の立ち上がり直後に設定したマスク時間の経過後、マスク時間を上乗せするようにしていた。これに代えて、2回目の検知信号を入力した時点で、1回目のマスク時間をリセットし、新たなマスク時間の計時を行うようにしても良い。これによれば、マスク時間とスパイクノイズに基づく検知信号の入力時間との差が開き難くなるので、マスク時間終了後に入力した検知信号に基づき、早い段階で照明光源21を点灯させることができる。
【0082】
・各実施形態では、定期的にマスク処理を行うことで、センサ31の検知エリア内で発生した振動がスパイクノイズとして検出された場合であっても、照明光源21の誤点灯を抑制するようにしても良い。
【0083】
・各実施形態において、照明装置10に電源が供給されてから照明光源21が点灯するタイミングまでの長さ、及び照明光源21が点灯してから安定して点灯する状態に移行するタイミングまでの長さに応じて、それぞれマスク時間を変更しても良い。
【0084】
・上記各実施形態において、点灯保持時間は如何なる時間であっても良い。ただし、点灯保持時間が短ければ短いほど、照明光源21への制御信号の出力回数が多くなってしまうため、例えば、10秒以上などが好ましい。
【0085】
・上記各実施形態において、光源制御部22は、照明光源21への電源供給線上に設けられていても良く、この場合、点灯信号を出力する代わりに、照明光源21への電源供給をオンオフすることにより照明光源21を点灯・消灯させることができる。
【0086】
・上記各実施形態において、センサ31は、アクティブ型のセンサであれば良く、ミリ波を用いるミリ波センサに限らない。例えば、マイクロ波を用いたマイクロ波センサや、たとえば超音波を検知波として検知エリア内の物体までの距離を検知する測距センサのようなものでも良い。
【0087】
・上記各実施形態において、人体を検知するために必要な検知信号の周波数帯域は、0〜500Hzの周波数帯域でなくても良い。すなわち、人体の移動速度、センサ31が送波する電波の周波数、光速、及び物体の上端とセンサとを結ぶ直線に対して物体の移動方向がなす角の角度に基づいて、適宜、変更しても良い。
【0088】
・各実施形態では、信号制御部35が点灯信号を光源制御部22に出力するが、光源制御部22がマスク処理中であることを認識した際には、点灯信号の出力を規制することで、照明光源21が点灯しないように制御しても良い。
【0089】
・各実施形態では、室内空間Kに複数の照明装置を配置する場合、少なくとも1台が照明装置10であれば良い。これによれば、照明装置10は、その他の照明装置の照明光源から発生したスパイクノイズに基づくドップラー信号を入力したとしても、マスク処理を実行することで、照明光源21が誤点灯することがない。
【0090】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)所定周波数の電波を送波するとともに、送波された電波の反射波を受波するセンサを備え、該センサによる検知結果としての送受波の周波数の差分に基づいて移動体の存否を検知するセンサ装置において、前記センサの検知結果を示す検知信号を処理する処理部を備え、前記処理部は、前記検知信号の立ち上がり直後から一定時間は、前記検知信号をマスクすることを特徴とするセンサ装置。
【0091】
(ロ)前記技術的思想(イ)に記載のセンサ装置を備え、前記センサ装置によって移動体の存在が検知されると照明光源の点灯を行うことを特徴とする照明装置。
(ハ)請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のセンサ装置において、前記特定時間は、前記照明光源の点灯直後から前記照明光源が安定して点灯するまでの期間以上の長さであることを特徴する照明装置。