特許第6041189号(P6041189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041189
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】スナップリングの装着冶具
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/20 20060101AFI20161128BHJP
   B23P 19/02 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B25B27/20 B
   B23P19/02 D
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-133855(P2012-133855)
(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公開番号】特開2013-255968(P2013-255968A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】本村 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石原 信吾
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−300647(JP,A)
【文献】 実開昭63−179073(JP,U)
【文献】 特開平04−105882(JP,A)
【文献】 実開昭58−191928(JP,U)
【文献】 特開平08−150522(JP,A)
【文献】 特開2002−346855(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/153879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/20
B23P 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端開口と、前記先端開口から連続する装着孔内周面と、前記先端開口と略同軸で且つ前記先端開口よりも小径なピン係合部と、前記装着孔内周面に形成されるリング収容溝と、を有するリング装着孔の前記先端開口からスナップリングを挿入して前記リング収容溝に装着するスナップリングの装着冶具であって、
一端開口から直線状に延びる挿通孔を有するベース部材と、
前記挿通孔に挿入されて所定方向にスライド移動自在に支持され、前記ベース部材に対する一方向への移動によって前記一端開口から外部へ突出するとともに他方向への移動によって前記一端開口から前記挿通孔に没入する一端側のリング押圧端面と、前記ベース部材の外部に露出する他端側の被操作端面と、を有する可動部材と、
前記リング押圧端面から前記挿通孔と略同軸で前記所定方向に沿って延び、前記ピン係合部と係合可能な係合端部を前記一方向の先端側に有し、前記係合端部は、前記一方向への可動範囲が前記リング押圧端面よりも前記一方向側の初期位置に規制された状態で、前記可動部材に対して前記所定方向にスライド移動自在に支持されるセンタリングピンと、
前記係合端部を前記可動部材に対して前記一方向へ付勢する付勢手段と、を備え、
前記初期位置は、前記係合端部に前記他方向への外力が作用していない状態における前記係合端部の位置であり、
前記挿通孔は、前記一端開口の近傍にリング収容領域を有し、
前記ベース部材は、前記リング収容領域の内径を前記一端開口に向かって徐々に縮径させるテーパ状の内周面と、前記リング収容領域と外部とを連通して該リング収容領域へのスナップリングの挿入を許容するリング挿入孔と、を有し、
前記他方向への前記リング押圧端面の可動範囲は、前記リング挿入孔よりも前記他方向側の待機位置を含み、
前記待機位置は、スナップリングを前記リング挿入孔から前記リング収容領域に挿入する際に前記リング押圧端面を待機させる位置であり、
前記リング挿入孔から前記リング収容領域に挿入されたスナップリングは、ほぼ全周域において前記内周面と接触し、
前記センタリングピンの外周面は、前記ベース部材の前記内周面との間にスナップリングの前記所定方向に沿った移動を許容する筒状空間を区画し、
前記待機位置から前記一方向へ移動する前記リング押圧端面が前記リング収容領域に挿入されたスナップリングに前記一端開口の反対側から当接したときの前記ベース部材の前記一端開口からの前記初期位置での前記係合端部の突出位置は、前記一端開口が前記リング装着孔の前記先端開口に向かって移動することによって前記係合端部が前記ピン係合部と係合する位置に設定され、
前記待機位置から前記一方向へ移動する前記リング押圧端面は、前記リング収容領域の前記筒状空間に収容されたスナップリングに前記一端開口の反対側から当接し、該スナップリングを前記一端開口に向かって移動させて該一端開口から外部へ押し出し、
前記ピン係合部と係合した前記初期位置の前記係合端部は、前記一方向への前記リング押圧端面の移動に伴い、前記リング装着孔に対する前記一方向への移動が前記ピン係合部によって阻止された状態で、前記可動部材に対し前記付勢手段の付勢力に抗して前記初期位置から前記他方向へ移動する
ことを特徴とするスナップリングの装着冶具。
【請求項2】
先端開口と、前記先端開口から連続する装着孔内周面と、前記先端開口と略同軸で且つ前記先端開口よりも小径なピン係合部と、前記装着孔内周面に形成されるリング収容溝と、を有するリング装着孔の前記先端開口からスナップリングを挿入して前記リング収容溝に装着するスナップリングの装着冶具であって、
一端開口から直線状に延びる挿通孔を有するベース部材と、
前記挿通孔に挿入されて所定方向にスライド移動自在に支持され、前記ベース部材に対する一方向への移動によって前記一端開口から外部へ突出するとともに他方向への移動によって前記一端開口から前記挿通孔に没入する一端側のリング押圧端面を有する可動部材と
記リング押圧端面から前記挿通孔と略同軸で前記所定方向に沿って延び、前記ピン係合部と係合可能な係合端部を前記一方向の先端側に有し、前記係合端部は、前記一方向への可動範囲が前記リング押圧端面よりも前記一方向側の初期位置に規制された状態で、前記可動部材に対して前記所定方向にスライド移動自在に支持されるセンタリングピンと、
前記係合端部を前記可動部材に対して前記一方向へ付勢する付勢手段と、を備え、
前記初期位置は、前記係合端部に前記他方向への外力が作用していない状態における前記係合端部の位置であり、
前記挿通孔は、前記一端開口の近傍にリング収容領域を有し、
前記ベース部材は、前記リング収容領域の内径を前記一端開口に向かって徐々に縮径させるテーパ状の内周面を有し
記リング収容領域に挿入されたスナップリングは、ほぼ全周域において前記内周面と接触し、
前記センタリングピンの外周面は、前記ベース部材の前記内周面との間にスナップリングの前記所定方向に沿った移動を許容する筒状空間を区画し
記一方向へ移動する前記リング押圧端面は、前記リング収容領域の前記筒状空間に収容されたスナップリングに前記一端開口の反対側から当接し、該スナップリングを前記一端開口に向かって移動させて該一端開口から外部へ押し出し、
前記ピン係合部と係合した前記初期位置の前記係合端部は、前記一方向への前記リング押圧端面の移動に伴い、前記リング装着孔に対する前記一方向への移動が前記ピン係合部によって阻止された状態で、前記可動部材に対し前記付勢手段の付勢力に抗して前記初期位置から前記他方向へ移動する
ことを特徴とするスナップリングの装着冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スナップリングの装着冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、C形状のスナップリング(止め輪)を穴に装着する作業には、スナップリングプライヤーが使用される。スナップリングプライヤーは、一端側の1対のグリップ部と、他端側の1対の先端係止部とを有する。作業者は、スナップリングプライヤーの先端係止部をスナップリングの両端に形成された係合孔に挿入し、スナップリングプライヤーのグリップ部を握り締め、スナップリングを弾性変形によって縮径させ、穴内の所定位置にスナップリングを挿入して、グリップ部の握り力を弱める。これにより、スナップリングが復元して拡がり、穴の内周面にスナップリングが嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−12536号公報
【特許文献2】特開平10−574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記スナップリングプライヤーを使用した作業では、装着前の縮径状態のスナップリングがスナップリングプライヤーから外れると、スナップリングが復元力によって飛んでしまい、紛失してしまう可能性がある。このため、作業者は、スナップリングがスナップリングプライヤーから外れないように、スナップリングを慎重に穴に挿入しなければならず、装着作業が煩雑となり、且つ時間を要してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な作業によって短時間にスナップリングを穴に装着することが可能なスナップリングの装着冶具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様の装着冶具は、ベース部材と可動部材とセンタリングピンと付勢手段とを備える。リング装着孔は、先端開口と、先端開口から連続する装着孔内周面と、先端開口と略同軸で且つ先端開口よりも小径なピン係合部と、装着孔内周面に形成されるリング収容溝と、を有し、スナップリングは、装着冶具によってリング装着孔の先端開口から挿入されてリング収容溝に装着される。
【0007】
ベース部材は、挿通孔と内周面とリング挿入孔とを有する。挿通孔は、一端開口から直線状に延びて、一端開口の近傍にリング収容領域を有する。内周面は、リング収容領域の内径を一端開口に向かって徐々に縮径させるテーパ状である。リング挿入孔は、リング収容領域と外部とを連通してリング収容領域へのスナップリングの挿入を許容する。リング挿入孔からリング収容領域に挿入されたスナップリングは、ほぼ全周域においてテーパ状の内周面と接触する。
【0008】
可動部材は、リング押圧端面と被操作端面とを有し、挿通孔に挿入されて所定方向にスライド移動自在に支持される。リング押圧端面は、可動部材の一端側に設けられ、ベース部材に対する可動部材の一方向への移動によって一端開口から外部へ突出するとともに、可動部材の他方向への移動によって一端開口から挿通孔に没入する。被操作端面は、可動部材の他端側に設けられ、ベース部材の外部に露出する。他方向へのリング押圧端面の可動範囲は、リング挿入孔よりも他方向側の待機位置を含む。待機位置は、スナップリングをリング挿入孔からリング収容領域に挿入する際にリング押圧端面を待機させる位置である。
【0009】
センタリングピンは、リング押圧端面から挿通孔と略同軸で上記所定方向に沿って延びる。センタリングピンの一方向の先端側には、係合端部が設けられている。係合端部は、ピン係合部と係合可能であり、一方向への可動範囲がリング押圧端面よりも一方向側の初期位置に規制された状態で可動部材に対して上記所定方向にスライド移動自在に支持される。初期位置は、係合端部に他方向への外力が作用していない状態における係合端部の位置である。センタリングピンの外周面は、ベース部材のテーパ状の内周面との間にスナップリングの上記所定方向に沿った移動を許容する筒状空間を区画する。待機位置から一方向へ移動するリング押圧端面がリング収容領域に挿入されたスナップリングに一端開口の反対側から当接したときのベース部材の一端開口からの初期位置での係合端部の突出位置は、一端開口がベース部材の先端開口に向かって移動することによって係合端部がピン係合部と係合する位置に設定される。
【0010】
付勢手段は、係合端部を可動部材に対して一方向へ付勢する。
【0011】
待機位置から一方向へ移動するリング押圧端面は、リング収容領域の筒状空間に収容されたスナップリングに一端開口の反対側から当接し、スナップリングを一端開口に向かって移動させて一端開口から外部へ押し出す。ピン係合部と係合した初期位置の係合端部は、一方向へのリング押圧端面の移動に伴い、リング装着孔に対する一方向への移動がピン係合部によって阻止された状態で、可動部材に対し付勢手段の付勢力に抗して初期位置から他方向へ移動する。
【0012】
本発明の第2の態様の装着冶具は、ベース部材と可動部材とセンタリングピンと付勢手段とを備える。リング装着孔は、上記先端開口と上記装着孔内周面と上記ピン係合部と上記リング収容溝とを有し、スナップリングは、装着冶具によってリング装着孔の先端開口から挿入されてリング収容溝に装着される。
【0013】
ベース部材は、挿通孔と内周面とを有する。挿通孔は、一端開口から直線状に延びて、一端開口の近傍にリング収容領域を有する。内周面は、リング収容領域の内径を一端開口に向かって徐々に縮径させるテーパ状である。リング収容領域に挿入されたスナップリングは、ほぼ全周域において内周面と接触する。
【0014】
可動部材は、リング押圧端面を有し、挿通孔に挿入されて所定方向にスライド移動自在に支持される。リング押圧端面は、可動部材の一端側に設けられ、ベース部材に対する可動部材の一方向への移動によって一端開口から外部へ突出するとともに、可動部材の他方向への移動によって一端開口から挿通孔に没入する
【0015】
センタリングピンは、リング押圧端面から挿通孔と略同軸で上記所定方向に沿って延びる。センタリングピンの一方向の先端側には、ピン係合部と係合可能な係合端部が設けられている。係合端部は、一方向への可動範囲がリング押圧端面よりも一方向側の初期位置に規制された状態で可動部材に対して上記所定方向にスライド移動自在に支持される。初期位置は、係合端部に他方向への外力が作用していない状態における係合端部の位置である。センタリングピンの外周面は、ベース部材のテーパ状の内周面との間にスナップリングの上記所定方向に沿った移動を許容する筒状空間を区画する。付勢手段は、係合端部を可動部材に対して一方向へ付勢する。
【0016】
方向へ移動するリング押圧端面は、リング収容領域の筒状空間に収容されたスナップリングに一端開口の反対側から当接し、スナップリングを一端開口に向かって移動させて一端開口から外部へ押し出す。ピン係合部と係合した初期位置の係合端部は、一方向へのリング押圧端面の移動に伴い、リング装着孔に対する一方向への移動がピン係合部によって阻止された状態で、可動部材に対し付勢手段の付勢力に抗して初期位置から他方向へ移動する。
【0017】
また、上記第1又は第2の態様の装着冶具において、挿通孔は、ベース部材の上記一端開口から他端開口まで直線状に延びてもよい。また、上記第1の態様の装着冶具において、被操作端面は、他端開口から外部へ突出してもよい。
【0018】
また、上記第1の態様の装着冶具において、可動部材のリング押圧端面が待機位置に設定された状態で、センタリングピンは、リング挿入孔から挿入されたスナップリングのリング収容領域への移動を許容する。例えば、係合端部がリング収容領域よりも他方向に位置することによってスナップリングの移動を許容してもよく、センタリングピンの軸径をスナップリングの両端の間の隙間よりも細く形成することによってスナップリングの移動を許容してもよい。
【0019】
上記構成を有する第1の態様の装着冶具を用いてスナップリングをリング装着孔のリング収容溝に装着する場合、作業者は、ベース部材を一方の手で把持し、可動部材を待機位置に設定し、スナップリングをリング挿入孔からリング収容領域に挿入する。リング挿入孔からリング収容領域に挿入されたスナップリングは、ほぼ全周域においてテーパ状の内周面と接触する。
【0020】
次に、可動部材をベース部材に対して一方向へ適宜移動させることによってセンタリングピンの係合端部を一端開口から露出させ、係合端部をピン係合部に係合し、リング装着孔とリング収容領域とが直線状に連通するようにベース部材の一端開口をリング装着孔の先端開口に合わせる。
【0021】
次に、可動部材の被操作端面をハンマー等によって殴打し、可動部材を一方向へ移動させる。リング収容領域の筒状空間に収容されたスナップリングは、リング押圧端面に一端開口の反対側から押圧され、テーパ状の内周面によって縮径されながら一端開口に向かって移動し、一端開口から外部へ押し出されてリング装着孔に進入する。リング装着孔に進入したスナップリングは、リング押圧端面によってさらに押圧されて、リング装着孔の内周面に沿って移動し、リング装着孔のリング収容溝に嵌合する。
【0022】
上記第1の態様の構成では、ベース部材の一端開口をリング装着孔の先端開口に合わせる際に、作業者は、センタリングピンの係合端部をリング装着孔のピン係合部に係合させる。センタリングピンはベース部材の挿通孔と略同軸であり、ピン係合部はリング装着孔の先端開口と略同軸であるので、係合端部をピン係合部に係合させて、一端開口と先端開口とを当接させることによって、リング装着孔とリング収容領域とが直線状に連通する。従って、リング装着孔に対するベース部材の位置決めを容易に行うことができる。
【0023】
リング装着孔に対しベース部材が位置決めされた状態では、可動部材から延びるセンタリングピンの係合端部とリング装着孔のピン係合部との係合が維持される。この係合端部とピン係合部との係合によって、リング装着孔とリング収容領域との直線状の連通状態が維持されるとともに、リング装着孔の軸と交叉する方向への可動部材の移動が規制される。このため、作業者がハンマー等で被操作端面を殴打する際に、リング装着孔に対して位置決めされたベース部材が移動し難く、また被操作端面の位置も安定する。従って、被操作端面の殴打を容易に行うことができる。
【0024】
スナップリングの装着作業中は、係合端部とピン係合部との係合が維持されるので、スナップリングの内側にセンタリングピンが挿通した状態で、スナップリングがベース部材側からリング装着孔側へ移動する。このため、装着作業中にベース部材の一端開口とリング装着孔の先端開口との間に間隙が生じた場合であっても、センタリングピンによってスナップリングの離脱(飛散等)を防止することができる。
【0025】
従って、作業中にスナップリングの紛失等が発生し難く、簡単な作業によって短時間にスナップリングをスナップリング装着孔に対して装着することができる。
【0026】
また、係合端部は可動部材に対して上記所定方向にスライド移動自在であるため、可動部材に対する係合端部の他方向への可動範囲を適宜設定することにより、ピン係合部の形状(例えば底の浅い有底穴や突起等)に関わらず、係合端部がピン係合部に係合した後のリング押圧端面の一方向への移動が許容される。このため、ピン係合部の形状の制約を受けることなく、リング押圧端面を一方向へ移動させてスナップリングをリング装着孔のリング収容溝に嵌合させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、簡単な作業によって短時間にスナップリングをリング装着孔に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る装着冶具の要部を示す側断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る装着冶具に対応するリング装着孔の側断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る装着冶具とリング装着孔との係合時の要部を拡大して示す側断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る装着冶具のリング収容部およびスナップリングの外観斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る装着冶具の要部を示す側断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る装着冶具に対応するリング装着孔の側断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る装着冶具とリング装着孔との係合時の要部を拡大して示す側断面図である。
図8】装着冶具の他の例を示す側断面図である。
図9】センタリングピンの他の実施形態における要部の外観斜視図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る装着冶具の可動部材とセンタリングピンの他の例を示す側断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、上下方向は、図1図3の上下方向に対応する。
【0031】
図1図4に示すように、スナップリング30(図4に示す)を被装着部材54のリング装着孔37(図2及び図3に示す)に装着するための装着冶具1は、ベース部材10と可動部材20とセンタリングピン40とコイルスプリング(付勢手段)51とを備える。
【0032】
スナップリング30は、C形状の弾性体であり、その両端に係合孔31が形成されている。なお、これらの係合孔31は、装着冶具1による装着作業では使用されないが、スナップリングプライヤー(図示省略)による取り外し作業において使用される。なお、以下の説明では、作業中に最も縮径された状態のスナップリング30をスナップリング30Sと表し、スナップリング30Sの内径をDri1と表す。
【0033】
被装着部材54は、基台58の上面に突出した状態で固定され、基台58には、円形状の開口60から下方へ直線状に延びる孔55が形成されている。被装着部材54には、後述する六角止めネジ39が固定される。
【0034】
被装着部材54は、肉厚の略円筒状であって、下端の下端開口57から上端の先端開口33まで上下方向に貫通孔62が貫通している。下端開口57は、基台58の開口60と同径で略同位置に配置され、貫通孔62と基台58の孔55とは同軸で連通している。下端開口57からは、上方へ直線状に貫通孔内周面66が延びている。先端開口33は、下端開口57よりも大きく形成され、貫通孔内周面66の先端開口33側は、上方に向かって拡径するテーパ状に形成されている。貫通孔62の中間部の貫通孔内周面66には、雌ネジ(図示省略)が形成されている。雌ネジよりも上方の貫通孔内周面66には、略コ字状断面のリング収容溝34が周方向に沿って環状に形成されている。リング収容溝34は、スナップリング30の径方向の厚さよりも浅い溝であって、スナップリング30の嵌合を許容する。なお、本実施形態では、先端開口33は下端開口57よりも大きく形成されているが、同径で形成されて貫通孔内周面66が先端開口33と下端開口57との間を上下方向に直線状に連続してもよい。
【0035】
六角穴付止めネジ39は、下端開口57とほぼ同径で、貫通孔内周面66の雌ネジと螺合する雄ネジ(図示省略)が形成された外周面を有する。六角穴付止めネジ39の上面の中央には、ピン係合部36が凹設されている。ピン係合部36は、六角棒スパナ(図示省略)と係合可能な有底孔であって、正六角形の開口から下方へ直線状に延びる内周面と、内周面の下端を下方に向かって先細りするテーパ状の底とにより区画されている。六角穴付止めネジ39は、先端開口33側から被装着部材54の貫通孔62に挿入されて螺合している。螺合した六角穴付止めネジ39の露出している上面の端縁と、先端開口33との間には、装着孔内周面38(先端開口33側の貫通孔内周面66)が形成される。なお、本実施形態では、ピン係合部36の形状は、六角棒スパナ(図示省略)と係合可能な有底孔としたが、これに限定されるのもではなく、例えばプラス形状や、四角形状の孔であってもよい。また、孔は有底孔に限られず貫通孔であってもよいし、さらには、孔ではなく突起物であってもよい。
【0036】
リング装着孔37は、被装着部材54に六角穴付止めネジ39が螺合した状態で、先端開口33と装着孔内周面38とリング収容溝34と六角穴付止めネジ39の上面とピン係合部36とにより区画される。螺合した六角穴付止めネジ39のピン係合部36は、先端開口33と同軸になる。そして、リング装着孔37のリング収容溝34にスナップリング30が装着されることにより、六角穴付止めネジ39は、ネジが緩んだとしても上方への移動がスナップリング30により阻止され、被装着部材54からの離脱が防止される。
【0037】
ベース部材10は、一側(下側)のリング収容部11と他側(上側)のベース本体12とを有する。リング収容部11とベース本体12とは、それぞれ上下方向に貫通する円筒形状であり、両者の内径部分が挿通孔2として連通した状態で、リング収容部11がベース本体12の下端部に固着されている。挿通孔2は、リング収容部11の下端の一端開口3とベース本体12の上端の他端開口4との間を上下方向に直線状に貫通する。
【0038】
挿通孔2は、一端開口3の近傍にリング収容領域5を有する。リング収容領域5は、リング収容部11の内周面13によって区画され、内周面13は、リング収容領域5の内径を一端開口3に向かって徐々に縮径させるテーパ形状を有する。
【0039】
リング収容部11の周壁には、周方向に沿った横孔状のリング挿入孔14が形成されている。リング挿入孔14は、リング収容領域5と外部とを連通し、リング収容領域5へのスナップリング30の挿入を許容する。リング挿入孔14からリング収容領域5に挿入されたスナップリング30は、ほぼ全周域においてテーパ状の内周面13と接触する。
【0040】
可動部材20は、棒体状であって、一側(下側)の蓋体17と、中間部の細径部21と、他側(上側)の太径部22と、を備える。細径部21の上端と太径部22の下端とは、連続して一体的に形成されている。細径部21は、円柱状に形成され、下端から上方へ直線状に延びるピン挿入孔29を有する。ピン挿入孔29は、有底孔であって、下端の円形状の挿入孔開口19からベース部材10の挿通孔2と同軸で延びている。ピン挿入孔29は、後述するコイルスプリング51及びセンタリングピン40の挿入を許容する。細径部21は、他端開口4から挿通孔2に挿入され、ベース本体12に上下のブッシュ25を介して所定方向(上下方向)にスライド移動自在に支持される。太径部22の外径は、挿通孔2の内径よりも大きく、他端開口4から上方に突出し、ベース部材10の外部に常時露出する。細径部21のピン挿入孔29に後述するコイルスプリング51及びセンタリングピン40が挿入された後で、細径部21の下端には、円板状の蓋体17が同軸で固定される。蓋体17の外径は、細径部21の外径と同じ大きさに設定されている。蓋体17の中央には、細径部21の挿入孔開口19よりも小径であり且つピン係合部36と同径の正六角形のピン開口28が上下方向に貫通している。ピン開口28は、ピン挿入孔29と外部とを連通し、後述するピン本体41の挿通を許容する。可動部材20は、一端側(下側)にリング押圧端面(蓋体17の下面)23を有し、他端側(上側)に被操作端面(太径部22の上端面)24を有する。
【0041】
リング押圧端面23は、ベース部材10に対する可動部材20の一方向(下方)への移動によって一端開口3から外部へ突出するとともに、可動部材20の他方向(上方)への移動によって一端開口3から挿通孔2に没入する。
【0042】
センタリングピン40は、上下方向に直線状に延びる正六角柱状のピン本体41と、ピン本体41の上端部のリブ48と、ピン本体41の下端のピン先端部45と、を一体的に備える。ピン本体41は、外径がピン係合部36およびピン開口28よりも僅かに小さく設定されている。リブ48は、板状であって、ピン本体41の上端縁から径方向外側へ突出している。リブ48の外径は、細径部21の挿入孔開口19よりも僅かに小さく設定されている。ピン先端部45は、ピン外周面(センタリングピンの外周面)44の下端を下方に向かって先細りするテーパ状に形成されている。センタリングピン40の下方の先端側は、ピン係合部36と係合する係合端部43(センタリングピン40の下端側のピン外周面44およびピン先端部45)として機能する。
【0043】
センタリングピン40は、挿入孔開口19からピン挿入孔29に挿入され、可動部材20に上下方向にスライド移動自在に支持されている。ピン本体41は、蓋体17のピン開口28を挿通し、センタリングピン40の下方への可動範囲は、リブ48の下面と蓋体17の上面との当接によって規定される。すなわち、リブ48と蓋体17との当接は、可動部材20からのセンタリングピン40の脱落を防止する。
【0044】
センタリングピン40のピン本体41の外径D3と、リング収容領域5で一端開口3に内接する縮径されたスナップリング30Sの内径Dri1とは、D3<Dri1に設定されている。センタリングピン40がベース部材10の一端開口3を挿通している状態でのピン外周面44は、ベース部材10の内周面13との間にスナップリング30の上下方向の移動を許容する筒状空間18を区画する。
【0045】
コイルスプリング51は、ピン挿入孔29の内径よりも小さな外径の伸縮可能な螺旋状のバネであって、センタリングピン40の上面とピン挿入孔29の底面(上端面)との間に配置されている。センタリングピン40は、コイルスプリング51の付勢力によって可動部材20から初期位置に向かって常に付勢されている。コイルスプリング51に付勢されたセンタリングピン40は、リブ48が蓋体17に当接することによって、外力が加わらない限り可動部材20に対して初期位置に維持され、上方へ押し上げる外力が付与されることによって付勢力に抗して初期位置から上方へ移動する。
【0046】
ベース部材10に対する上方へのリング押圧端面23の可動範囲は、初期位置での係合端部43がリング挿入孔14を超える(リング挿入孔14よりも上方の)待機位置(図3中に2点鎖線で示す位置8)を含む。
【0047】
リング押圧端面23がリング収容領域5に挿入されたスナップリング30に上方から当接したときの一端開口3からの初期位置での係合端部43の突出位置は、先端開口33からピン係合部36の底までの距離よりも長く突出する位置に設定されている。
【0048】
初期位置の係合端部43の可動部材20に対する上方への可動範囲は、初期位置の係合端部43がピン係合部36に係合したときのリング押圧端面23からリング収容溝34までのリング移動距離50よりも長い範囲に設定されている。
【0049】
リング押圧端面23の外径D1と、一端開口3の内径D2と、リング収容領域5に挿入された自然長のスナップリング30の外径Dro及び内径Driとは、Dri<D1<D2<Droに設定されている。
【0050】
待機位置から下方へ移動するリング押圧端面23は、リング収容領域5の筒状空間18に収容されたスナップリング30に上方から当接し、スナップリング30を一端開口3に向かって移動させて一端開口3から外部へ押し出す。
【0051】
装着冶具1を用いてスナップリング30をリング装着孔37に装着する場合、作業者は、ベース部材10を一方の手で把持し、リング押圧端面23を待機位置に設定し、スナップリング30をリング挿入孔14からリング収容領域5に挿入する。リング挿入孔14からリング収容領域5に挿入されたスナップリング30は、ほぼ全周域においてテーパ状の内周面13と接触する。
【0052】
次に、作業者は、可動部材20を他方の手で下方へ移動させる。可動部材20の下方への移動に伴い、センタリングピン40はスナップリング30の内側を挿通する。下方へ移動するリング押圧端面23は、リング収容領域5の筒状空間18に挿入されたスナップリング30に上方から当接し、センタリングピン40の係合端部43は、一端開口3から外部へ突出する。
【0053】
続いて、突出したセンタリングピン40の係合端部43をリング装着孔37のピン係合部36に挿入して係合させ、リング装着孔37とリング収容領域5とが直線状に連通するようにベース部材10の一端開口3をリング装着孔37の先端開口33に合わせる。
【0054】
次に、作業者は、他方の手をハンマーに持ち替え、可動部材20の被操作端面24を該ハンマーによって殴打し、可動部材20を下方へ移動させる。
【0055】
ピン係合部36と係合した初期位置のセンタリングピン40は、リング装着孔37に対する下方への移動がピン係合部36によって阻止されている。この状態から、下方へのリング押圧端面23の移動に伴い、センタリングピン40は、コイルスプリング51の付勢力に抗してピン挿入孔29内を初期位置から上方へ移動する。
【0056】
リング収容領域5の筒状空間18に収容されたスナップリング30は、リング押圧端面23に上方から押圧され、テーパ状の内周面13によって縮径されながら一端開口3に向かって移動し、一端開口3から外部へ押し出されてリング装着孔37に進入する。リング装着孔37に進入したスナップリング30は、リング押圧端面23によってさらに押圧されて、リング装着孔37の装着孔内周面38に沿って移動し、リング装着孔37のリング収容溝34に嵌合する。
【0057】
本実施形態によれば、ベース部材10の一端開口3をリング装着孔37の先端開口33に合わせる際に、作業者は、センタリングピン40の係合端部43をリング装着孔37のピン係合部36に挿入する。センタリングピン40は、ピン外周面44がピン係合部36に接し、ピン先端部45がピン係合部36の底に当接して係合する。ピン係合部36は、先端開口33と同軸であるため、センタリングピン40は、リング装着孔37と同軸となる。また、センタリングピン40は、ベース部材10の挿通孔2と同軸であるため、ベース部材10の挿通孔2もリング装着孔37と同軸となり、該軸に交叉する方向への移動が規制される。従って、係合端部43とピン係合部36とを係合させた状態で、センタリングピン40に沿って下方にベース部材10を移動させるだけで、容易にベース部材10の一端開口3をリング装着孔37の先端開口33に当接させることができ、且つベース部材10のリング収容領域5をリング装着孔37に同軸で直線状に連通させて位置決めすることができる。
【0058】
さらに、本実施形態のリング収容部11の下端外周は下方に向かって先細りするテーパ形状を有し、リング装着孔37の先端開口33側は上方に向かって拡径するテーパ形状を有するため、リング収容部11の下端とリング装着孔37の先端開口33との位置合わせを容易に行うことができる。
【0059】
リング装着孔37に対しベース部材10が位置決めされた状態では、可動部材20から延びるセンタリングピン40の係合端部43とリング装着孔37のピン係合部36との係合が維持される。この係合端部43とピン係合部36との係合によって、リング装着孔37とリング収容領域5との直線状の連通状態が維持されるとともに、リング装着孔37の軸と交叉する方向への可動部材20の移動が規制される。このため、作業者がハンマーで被操作端面24を殴打する際に、リング装着孔37に対して位置決めされたベース部材10が移動し難く、また被操作端面24の位置も安定する。従って、被操作端面24の殴打を容易に行うことができる。
【0060】
スナップリング30の装着作業中は、係合端部43とピン係合部36との係合が維持されるので、スナップリング30の内側にセンタリングピン40が挿通した状態で、スナップリング30がベース部材10からリング装着孔37へ移動する。このため、装着作業中にベース部材10の一端開口3とリング装着孔37の先端開口33との間に間隙が生じた場合であっても、センタリングピン40によってスナップリング30の離脱(飛散等)を防止することができる。
【0061】
また、初期位置の係合端部43の可動部材20に対する上方への可動範囲は、リング移動距離50よりも長い範囲に設定されている。そのため、センタリングピン40は、コイルスプリング51を収縮させながらピン挿入孔29の内部を上方へリング移動距離50よりも長い距離の移動が可能である。このセンタリングピン40の移動により、リング押圧端面23は、係合端部43がピン係合部36に係合した後もリング装着孔37に対する下方への移動が許容され、スナップリング30を下方へ移動させてリング装着孔37のリング収容溝34に嵌合させることができる。
【0062】
従って、作業中にスナップリング30の紛失等が発生し難く、簡単な作業によって短時間にスナップリング30をリング装着孔37に対して装着することができる。
【0063】
なお、ピン先端部45の形状は、ピン係合部36の形状に応じて適宜設定可能である。例えばピン先端部45の形状を、ピン係合部36の形状に応じてプラス形状や四角形状としてもよく、凸形状や凹形状としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態のようにセンタリングピン40のうちピン先端部45のみをピン係合部36と係合させる場合、ピン本体41の外径をピン係合部36の外径よりも大きく設定してもよい。
【0065】
また、蓋体17を細径部21に対してネジ等によって着脱自在に固定してもよい。これにより、可動部材20からセンタリングピン40を容易に取り外すことができ、センタリングピン40のメンテナンス作業や他のピン係合部の形状に応じたピン先端部を有するセンタリングピンへの交換作業を容易に行うことができる。
【0066】
また、上記実施形態では付勢手段としてコイルスプリング51を用いたが、例えば板バネなどの他の弾性部材や同極同士で対向して反発する磁石などを付勢手段として用いてもよい。
【0067】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、図6に示すように、六角穴付止めネジ39(図2に示す)に代えて管状部材49が被装着部材54に挿入されてリング装着孔32が形成されている点、及び図5に示すように、センタリングピン52が可動部材53に固定的に設けられている点で第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。また、以下の説明において、上下方向は、図5図7の上下方向に対応する。
【0068】
図5及び図7に示すように、スナップリング30(図4に示す)を被装着部材54のリング装着孔32(図6及び図7に示す)に装着するための装着冶具7は、ベース部材10と可動部材53とセンタリングピン52とを備える。
【0069】
被装着部材54の貫通孔内周面66の下端開口57側の端縁には、リブ63が径方向内側へ全周域において突出する状態で固定されている。リブ63は、同一の中心軸を有するドーナツ板状で形成され、外径が下端開口57よりも僅かに小さく設定され、且つ内径が後述するピン係合部35の内径よりも大きく設定されている。
【0070】
管状部材49は、同一の中心軸を有する円筒状であって、外径が下端開口57よりも僅かに小さく設定されている。ピン係合部35は、管状部材49を上下方向に貫通する孔であって、管状部材49の内周面によって区画されている。管状部材49は、先端開口33から被装着部材54の貫通孔62に全周域において接触する状態で挿入され、下端面がリブ63の上面に当接している。挿入された管状部材49の上面の端縁と、先端開口33との間には、装着孔内周面38(先端開口33側の貫通孔内周面66)が形成される。なお、本実施形態では、ピン係合部35の断面形状は円形状であるが、これに限られず、例えば、四角形状や六角形状等であってもよい。
【0071】
リング装着孔32は、被装着部材54に管状部材49が挿入された状態で、先端開口33と装着孔内周面38とリング収容溝34と管状部材49の上面とピン係合部35とにより区画される。挿入された管状部材49のピン係合部35は、先端開口33と同軸になる。そして、リング装着孔32のリング収容溝34にスナップリング30が装着されることにより、管状部材49は、スナップリング30とリブ63とにより挟まれ、被装着部材54からの離脱が防止される。
【0072】
可動部材53は、一側(下側)の細径部21の上端と他側(上側)の太径部22の下端とが連続する棒体状である。可動部材53は、その一端側(下側)にリング押圧端面(細径部21の下端面)23を有する。
【0073】
センタリングピン52は、外径がピン係合部35よりも僅かに小さく設定された円柱状(棒体状)であって、その上端が可動部材53の下端に固定され、リング押圧端面23からベース部材10の挿通孔2と同軸で下方へ直線状に延びている。
【0074】
ベース部材10に対する上方へのリング押圧端面23の可動範囲は、係合端部43がリング挿入孔14を超える(リング挿入孔14よりも上方の)待機位置(図7中に2点鎖線で示す位置8)を含む。
【0075】
リング押圧端面23がリング収容領域5に挿入されたスナップリング30に上方から当接したときの一端開口3からの係合端部43の突出位置は、先端開口33からピン係合部35までの距離よりも長く突出する位置に設定されている。
【0076】
装着冶具7を用いてスナップリング30をリング装着孔32に装着する場合、作業者は、スナップリング30が挿入された装着冶具7の被操作端面24をハンマーで殴打する。センタリングピン52の係合端部43と係合したピン係合部35は、リング装着孔32に対する下方へのセンタリングピン52の移動を許容する。このため、可動部材53のリング押圧端面23もリング装着孔32に対する下方への移動が許容される。リング収容領域5の筒状空間18に収容されたスナップリング30は、リング押圧端面23に上方から押圧され、一端開口3から外部へ押し出されてリング装着孔32に進入する。リング装着孔32に進入したスナップリング30は、リング押圧端面23によってさらに押圧されて、リング装着孔32の装着孔内周面38に沿って移動し、リング装着孔32のリング収容溝34に嵌合する。
【0077】
本実施形態では、第1実施形態と異なり、可動部材53に対してセンタリングピン52を固定的に設けているため、ピン挿入孔29やコイルスプリング(付勢手段)51を要する第1実施形態に比して部品点数の低減及び構造の簡素化を図ることができる。
【0078】
このように、本実施形態によれば、部品点数の低減及び構造の簡素化に加えて、第1実施形態と同様に、作業中にスナップリング30の紛失等が発生し難く、簡単な作業によって短時間にスナップリング30をリング装着孔32に対して装着することができる。
【0079】
なお、センタリングピン52は、可動部材53に対して着脱自在に固定されてもよい。これにより、ピン係合部35に応じた部品への交換を容易に行うことができる。
【0080】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定をされるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲では適宜の変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0081】
例えば、図8に示す装着冶具6では、リング収容部11がベース本体12に一体形成され、ベース本体12の上部には、上下方向に延びる複数の溝15が形成されている。可動部材20には、太径部22(図1に示す)に代えて、ベース部材10の上端部分を覆うU状断面の被操作部26と、各溝15を挿通して被操作部26と細径部21の上端部とを連結する複数の連結軸27とが設けられ、被操作部26の上面が被操作面24となる。
【0082】
また、上記第1及び第2実施形態において、センタリングピン40,52の形状は、上記各形状に限られず、ピン係合部35,36に応じて適宜変更可能である。この場合、第1実施形態については、蓋体17のピン開口28の形状もセンタリングピン40に応じて適宜変更可能である。
【0083】
また、図9に示すセンタリングピン46は、他端側のリング通過部42の一端と、一端側のピン本体41の他端とが連続して一体的に形成される。リング通過部42は、センタリングピン46の軸と同軸で延びる略平板状であって、外径がピン本体41よりも同径または小径に形成されている。リング通過部42は、センタリングピン46の軸方向に直交する断面が矩形状であって、矩形断面の対向する2つの短辺の長さは、C形状のスナップリング30(図4に示す)の自然長での両端の間の隙間よりも短く設定されている。センタリングピン46を上記第1または第2実施形態に用いた場合、リング押圧端面23をリング挿入孔14を超える待機位置(図3または図7に2点鎖線で示す位置9)にまで移動しさえすれば、スナップリング30の自然長での両端の間の隙間にリング通過部42を通過させてスナップリング30をリング挿入孔14からリング収容領域5に挿入することができる。なお、リング通過部42は、板状に限られず、スナップリング30の自然長での両端の間の隙間を通過可能であればよい。例えば、該隙間よりも細い軸径の棒体状であってもよい。
【0084】
また、上記第1実施形態において、リング押圧端面23から初期位置での係合端部43までの距離がリング移動距離50(図3に示す)の2倍の距離よりも長い場合には、図10に示す可動部材16およびセンタリングピン56であってもよい。センタリングピン56は、支持軸47とピン本体41とを有する。支持軸47は、可動部材16に固定される棒体状であって、ベース部材の挿通孔と同軸で下方に延びている。支持軸47は、スナップリング30(図4に示す)の自然長での両端の間の隙間よりも細く形成されている。支持軸47の下端縁には、全周域において径方向外側へ支持軸47と同軸で突出する状態でリブ64が固定されている。ピン本体41には、上端から下方に向かってピン挿入孔65が形成されている。ピン挿入孔65は、ベース部材の挿通孔と同軸で直線状に下方に延びる有底孔である。ピン挿入孔65の内周面の上端縁には、全周域において径方向内側へ突出する状態でリブ61が固定されている。支持軸47は、ピン挿入孔65に挿入され、ピン本体41を上下方向にスライド移動自在に支持している。可動部材16に対するピン本体41および係合端部43の下方への可動範囲は、リブ64の上面とリブ61の下面との当接によって規定される。すなわち、リブ64とリブ61との当接は、支持軸47からのピン本体41の脱落を防止する。コイルスプリング(付勢手段)51は、支持軸47の下端面とピン挿入孔65の底面(下端面)との間に配置され、ピン本体41および係合端部43を初期位置に付勢する。
【符号の説明】
【0085】
1,6,7:装着冶具
2:挿通孔
3:一端開口
4:他端開口
5:リング収容領域
10:ベース部材
11:リング収容部
12:ベース本体
13:内周面
14:リング挿入孔
16,20,53:可動部材
18:筒状空間
21:細径部
22:太径部
23:リング押圧端面
24:被操作端面
29,65:ピン挿入孔
30:スナップリング
32,37:リング装着孔
33:先端開口
34:リング収容溝
35,36:ピン係合部
39:六角穴付止めネジ
40,46,52,56:センタリングピン
41:ピン本体
43:係合端部
48:ストッパ
49:管状部材
50:リング移動距離
51:コイルスプリング(付勢手段)
54:被装着部材
58:基台
D1:リング押圧端面の外径
D2:一端開口の内径
D3:センタリングピンの外径
Dro:自然長のスナップリングの外径
Dri:自然長のスナップリングの内径
Dri1:一端開口に内接する縮径されたスナップリングの内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10