特許第6041196号(P6041196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041196
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】中和器およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/66 20060101AFI20161128BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20161128BHJP
   F23L 17/14 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   C02F1/66 510Q
   C02F1/66 521C
   C02F1/66 530B
   C02F1/66 530Q
   F24H9/00 B
   F23L17/14 P
   F23L17/14 R
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-191529(P2012-191529)
(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公開番号】特開2014-46266(P2014-46266A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】中塚 祐次
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−107769(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/053810(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00−1/78
F23L 17/14
F24H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口から導入された酸性のドレン水を中和するための中和剤を収容する中和処理槽と、
この中和処理槽内を進行してこの中和処理槽の終端部を通過したドレン水を外部に排出するための排出口と、
を備えている、中和器であって、
前記中和処理槽のうち、前記中和処理槽の終端部よりもドレン水流れ方向上流側に設けられ、かつ前記中和処理槽内のドレン水を前記排出口に流れさせることを可能とする複数のバイパス用連通部と、
少なくとも一部分が前記中和処理槽内に位置して前記中和処理槽内のドレン水に接触するように、前記複数のバイパス用連通部に対応して設けられ、かつ接触するドレン水のpHに対応した開閉動作が可能とされたpH応答型の複数のバルブと、
を備えており、
前記複数のバイパス用連通部および前記複数のバルブは、前記ドレン水の流れ方向に沿って分散配置されており、
前記複数のバルブのうち、所定のpHに達していないドレン水が存在する位置のバルブは、このバルブに対応するバイパス用連通部をドレン水が通過しない第1の状態とする一方、前記所定のpHに達したドレン水が存在する位置のバルブは、このバルブに対応するバイパス用連通部をドレン水が通過する第2の状態とするように構成されていることを特徴とする、中和器。
【請求項2】
請求項1に記載の中和器であって、
前記pH応答型の複数のバルブは、pHに対応して体積が変化する高分子ゲルを利用して弁開閉動作を行なうように構成されている、中和器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の中和器であって、
前記複数のバイパス用連通部は、前記中和処理槽の底壁部または側壁部に設けられ、かつこの底壁部または側壁部に隣接する位置には、前記バイパス用連通部を通過したドレン水を前記排出口に向けて流れさせることが可能なドレン水排水路が設けられており、
前記pH応答型の複数のバルブは、前記複数のバイパス用連通部を開閉するように設けられ、かつ前記中和処理槽内のドレン水が前記所定のpHに達していないときには閉状態となる一方、前記ドレン水が前記所定のpHに達したときには開状態となるように構成されている、中和器。
【請求項4】
燃焼ガスまたはその他の潜熱を含むガスから潜熱回収が可能な熱交換器と、
前記潜熱回収に伴って発生するドレン水の中和処理を行なうための中和器と、を備えている、温水装置であって、
前記中和器として、請求項1ないし3のいずれかに記載の中和器が用いられていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる潜熱回収型の給湯装置などにおいて発生する酸性のドレン水(ドレン水)を中和処理するのに好適な中和器、およびこれを備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、中和器の一例として、特許文献1に記載のものを先に提案している。この中和器は、中和剤として、マグネシウム系の塩基性中和剤を用いている。ここで、本明細書において、「塩基性中和剤」とは、酸と反応した場合の平衡pHが強アルカリ性となる中和剤の意である。このような中和剤を用いれば、たとえば炭酸カルシウムなどの非塩基性中和剤を用いる場合と比較して、中和処理性能に優れたものとなるため、中和剤の使用量を少なくし、中和器の小型化を図ることが可能である。
一方、塩基性中和剤を用いた場合には、中和器内にドレン水が長時間滞留した場合に、過剰反応を生じ、ドレン水が強アルカリ性となる。このような強アルカリ性のドレン水をそのまま廃棄処理することは環境保護などの観点から好ましいものではない。
そこで、特許文献1では、中和器のドレン水導入管とドレン水排水管とを、流量調整バルブを備えたバイパス配管を介して接続し、ドレン水排水管内に、中和処理が未処理の強酸性のドレン水を流入させる手段を採用している。このような手段によれば、中和器内を通過して強アルカリ性となったドレン水に、強酸性のドレン水を混合させることによって、これらを中和することができる。したがって、強アルカリ性のドレン水が外部に廃棄されることを防止することが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次のように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、前記従来技術では、中和器を通過したドレン水に、中和処理が未処理のドレン水を混合させることによってこれらを中和する手段を採用しているために、ドレン水を適切に中和させるには、混合される2種類のドレン水のそれぞれのpHを検出し、かつそれらの値に応じて、2種類のドレン水の混合比率を適切に制御する必要がある。混合対象となる2種類のドレン水のpHは一定ではなく、とくに中和器から排出されるドレン水については、pHが大きく変動する。したがって、中和処理を行なうための制御がやや煩雑であり、余り容易ではない。従来においては、このような点で未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−107771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、中和剤として塩基性中和剤を用いた場合に強アルカリ性のドレン水が排出される事態を、煩雑な制御を必要とすることなく、かつ簡易な構成によって適切に防止することが可能な中和器、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される中和器は、導入口から導入された酸性のドレン水を中和するための中和剤を収容する中和処理槽と、この中和処理槽内を進行してこの中和処理槽の終端部を通過したドレン水を外部に排出するための排出口と、を備えている、中和器であって、前記中和処理槽のうち、前記中和処理槽の終端部よりもドレン水流れ方向上流側に設けられ、かつ前記中和処理槽内のドレン水を前記排出口に流れさせることを可能とする複数のバイパス用連通部と、少なくとも一部分が前記中和処理槽内に位置して前記中和処理槽内のドレン水に接触するように、前記複数のバイパス用連通部に対応して設けられ、かつ接触するドレン水のpHに対応した開閉動作が可能とされたpH応答型の複数のバルブと、を備えており、前記複数のバイパス用連通部および前記複数のバルブは、前記ドレン水の流れ方向に沿って分散配置されており、前記複数のバルブのうち、所定のpHに達していないドレン水が存在する位置のバルブは、このバルブに対応するバイパス用連通部をドレン水が通過しない第1の状態とする一方、前記所定のpHに達したドレン水が存在する位置のバルブは、このバルブに対応するバイパス用連通部をドレン水が通過する第2の状態とするように構成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、中和剤として、マグネシシウム系などの塩基性中和剤を用いた場合に、次のような効果が得られる。
すなわち、中和処理槽に流入した強酸性のドレン水が十分に中和されておらず、このドレン水が所定のpHに達していない場合には、前記第1の状態が設定される。この際には、ドレン水がバイパス用連通部を通過せず、通常どおりの中和処理およびその後の排出がなされる。一方、ドレン水が中和された結果、所定のpHに達した場合には、前記第2の状態が設定される。この際には、前記ドレン水が中和処理槽の終端部に到達する前の過程において、バイパス用連通部を通過して排出口に流れるようにすることが可能である。したがって、所定のpHに達したドレン水がその後も中和処理槽内に長時間にわたって滞留することが抑制され、そのpHがさらに高くなることが防止される。したがって、強アルカリ性のドレン水が排出されないようにすることができる。
本発明においては、前記したような動作を実現するための手段として、pH応答型のバルブを用いているが、このバルブは、ドレン水のpHに対応して開閉動作を行なうものであればよい。本発明においては、特許文献1とは異なり、複雑な制御を行なう必要はなく、またそのための高価な機器を用いる必要もない。したがって、製造コストの低減化なども好適に図ることができる。
さらに、本発明によれば、所定のpHに達したドレン水を中和処理槽の外部に早期に排出することにより、中和剤の無駄な消耗を抑制し、その使用寿命を長くする効果も期待できる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記pH応答型の複数のバルブは、pHに対応して体積が変化する高分子ゲルを利用して弁開閉動作を行なうように構成されている。
高分子ゲルは、ポリアクリル酸やポリビニルアルコールなどに代表される3次元網目構造をもち、高分子に親水基が結合した親水性高分子ゲルであればよい。
また、高分子ゲルとしては、酸性・収縮−アルカリ性・膨潤の特性を有するものと、酸性・膨潤−アルカリ性・収縮の特性を有するものとがあるが、本発明では、いずれのタイプが採用されていてもよい。
【0011】
このような構成によれば、高価な電気機器類を用いる必要を無くし、または少なくし、全体構成の簡素化ならびに製造コストの低減化を図る上でより好ましい。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記複数のバイパス用連通部は、前記中和処理槽の底壁部または側壁部に設けられ、かつこの底壁部または側壁部に隣接する位置には、前記バイパス用連通部を通過したドレン水を前記排出口に向けて流れさせることが可能なドレン水排水路が設けられており、前記pH応答型の複数のバルブは、前記複数のバイパス用連通部を開閉するように設けられ、かつ前記中和処理槽内のドレン水が前記所定のpHに達していないときには閉状態となる一方、前記ドレン水が前記所定のpHに達したときには開状態となるように構成されている。
【0013】
このような構成によれば、中和処理槽内のドレン水が所定のpHに達すると、このドレン水を中和処理槽の底壁部または側壁部に設けられたバイパス用連通部からドレン水排水路に流出させ、かつその後は排出口から外部に適切に排出させることができる。したがって、本発明が意図する作用を簡易な流路構造により実現することができる。
【0014】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、燃焼ガスまたはその他の潜熱を含むガスから潜熱回収が可能な熱交換器と、前記潜熱回収に伴って発生するドレン水の中和処理を行なうための中和器と、を備えている、温水装置であって、前記中和器として、本発明の第1の側面により提供される中和器が用いられていることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される中和器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は、本発明に係る中和器の一例を示す概略断面図であり、(b)は、(a)に示す中和器で用いられているpH応答型のバルブの閉状態を示す要部断面図であり、(c)は、同バルブの開状態を示す要部断面図である。
図2】本発明に係る中和器の他の例を示す概略断面図である。
図3】本発明に係る中和器の他の例を示す概略断面図である。
図4】(a)は、図3の中和器で用いられているpH応答型のバルブの開状態を示す断面図であり、(b)は、(a)のIVb−IVb断面図であり、(c)は、同バルブの閉状態を示す断面図であり、(d)は、(c)のIVd−IVd断面図である。
図5図1に示す中和器を備えた温水装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1(a)に示す中和器A1は、中和器本体としての役割を果たす容器1、複数のバイパス用連通部11、およびpH応答型の複数のバルブV1を備えている。
【0020】
容器1は、樹脂製であり、その内部には、中和剤2を収容した中和処理槽10が設けられている。中和剤2は、酸化マグネシウムなどの塩基性中和剤であり、粒状またはペレット状である。容器1の幅方向一端の上部には、ドレン水用の導入口12が設けられ、かつ幅方向他端の下部には、ドレン水用の排出口13が設けられている。中和処理対象のドレン水は、導入口12から中和処理槽10内に流入する。その途中位置には、ドレン水を封水とするためのトラップ部14が設けられている。中和処理槽10の内部には、上下高さ方向に延びる複数の仕切壁15a,15bが、その下方または上方に隙間を形成するようにして設けられており、中和処理槽10内において、ドレン水が上下に蛇行して流れるように構成されている。中和処理槽10の終端部10e(ドレン水流れ方向の終端部であり、開口部である)は、中和処理槽10の横に隣接して設けられたドレン水排出路17aの上部に連通している。したがって、終端部10eに到達したドレン水は、その後ドレン水排出路17aを流れて排出口13に到達し、中和器A1の外部に排出される。
【0021】
複数のバイパス用連通部11は、中和処理槽10の底壁部18に設けられた開口部である(図1(b),(c)を参照)。複数のバイパス用連通部11は、中和処理槽10内のうち、底壁部18から上向きに起立する仕切壁15bによって仕切られている複数の領域
AR(AR1〜AR3)のそれぞれの下部に位置するように設けられている。中和処理槽10の底壁部18の下方には、一端が排出口13に連通した略水平状のドレン水排出路17bが設けられており、各バイパス用連通部11は、このドレン水排出路17bに連通している。
【0022】
pH応答型のバルブV1は、ドレン水のpHに対応してバイパス用連通部11の開閉を行なうものであり、中和処理槽10の底壁部18に取り付けられている。図1(b),(c)に示すように、このバルブV1は、バイパス用連通部11を開閉するための弁本体31、この弁本体31をドレン水のpHに応じて昇降させるための駆動部30、底壁部18に固定して取り付けられ、かつ駆動部30を支持する支持部32、およびバネ33を有している。駆動部30は、ドレン水のpHに対応して体積が変化する部位であり、pH応答型の高分子ゲルを利用して構成されている。この高分子ゲルは、接触する液体のpHに応じた収縮・膨潤を繰り返す特性をもつ。本実施形態で用いられている高分子ゲルは、pHが高くなるに連れてその体積が増大する特性をもつ。このような特性をもつ高分子ゲルの一例としては、NNDEA(N,N−ジエチルアクリルアミド)とアクリル酸との共重合体などのポリアクリル酸系ゲルが挙げられる。駆動部30は、たとえば伸縮性および透水性を有する材質の袋状または筒状部材内に、前記した高分子ゲルを充填した構成である。
【0023】
バルブV1は、ドレン水が酸性である場合には、図1(b)に示すように、弁本体31がバイパス用連通部11を閉鎖する弁閉状態となる。この際には、バネ33の弾発力をも利用し、弁座部分に対して弁本体31を適切に接触可能とされている。一方、ドレン水がたとえば中性(pH7)になった場合には、図1(c)に示す弁開状態となる。この状態では、駆動部30を構成するpH応答型の高分子ゲルが膨潤し、バネ33の弾発力に抗して駆動部30が伸びている結果、弁本体31が弁座部分から離反している。
【0024】
図5は、前記した中和器A1を備えた温水装置の一例を示している。
同図に示す温水装置Bは、缶体90内に設けられた燃焼器91、この燃焼器91に燃焼用空気を送るブロア92、熱交換器93、およびこれら全体を覆う外装ケース94を備えている。熱交換器93は、燃焼器91によって発生された燃焼ガスから顕熱を回収可能な1次熱交換部93Aと、潜熱を回収可能な2次熱交換部93Bとを有している。入水口930に供給された水は、2次熱交換部93Bおよび1次熱交換部93Aを通過して加熱された後に出湯口931から所定の給湯先に供給される。2次熱交換部93Bの下方には、潜熱回収に伴って発生する酸性のドレン水を受けるドレン水受け95が設けられている。
中和器A1は、外装ケース94内に配されおり、ドレン水受け95によって受けられたドレン水は、配管96aを介して中和器A1の導入口12に導かれる。中和器A1の排出口13には、中和処理を終えたドレン水を外装ケース94の外部に導くための管体7が接続されている。
【0025】
次に、中和器A1およびこれを備えた温水装置Bの作用について説明する。
【0026】
まず、中和器A1の各バルブV1は、通常時においては、図1(b)の閉状態にある。したがって、導入口12に導入されたドレン水は、中和処理槽10内を上下に蛇行してその終端部10eに到達する。この過程においてドレン水の中和処理が図られる。終端部10eに到達したドレン水は、ドレン水排出路17aを通過して排出口13に到達し、排出される。
【0027】
温水装置Bの運転が停止されている際には、中和器A1への新たなドレン水供給がなされないため、この期間中は、中和処理槽10内にドレン水が滞留することとなる。この滞留時間が比較的長くなると、ドレン水は、中性域のpHを超え、アルカリ性となる。一方、ドレン水が中性になると、バルブV1は、図1(c)に示す開状態となる。すると、前
記ドレン水は、バイパス用連通部11からドレン水排出路17bに流出した後に、排出口13に向かう。したがって、前記ドレン水が中和処理槽10内において長時間滞留して強アルカリ性になることは適切に回避され、ひいては強アルカリ性のドレン水が排出口13から排出されることも適切に回避される。バイパス用連通部11およびバルブV1は、中和処理槽10の複数の領域ARのそれぞれに対応して設けられているために、これら複数の領域ARごとに、前記した作用が得られ、より好ましいものとなる。
【0028】
本実施形態によれば、複雑な動作制御を実行する必要をなくしつつ、強アルカリ性のドレン水が排出されることを適切に防止することができる。バルブV1の開閉動作の駆動部30は、pH応答型の高分子ゲルを用いたものであるために、バルブV1の駆動用の電磁機器や、pHセンサなどは不要であり、そのコストを廉価にすることが可能である。
【0029】
図2図4は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0030】
図2に示す中和器A2は、中和処理槽10が上下高さ方向に延びた形態とされており、導入口12に導入されたドレン水は、容器1内の一側部に設けられた流路12aを下向きに流れた後に、中和処理槽10の下部の始端部10sに到達する。その後、このドレン水は、中和処理槽10内を上向きに進行して終端部10eに達した後に、ドレン水排出路17cを通過して排出口13に到る。中和処理槽10の側壁部16cには、この中和処理槽10をドレン水排出路17cに連通させるための複数のバイパス用連通部11が設けられている。これら複数のバイパス用連通部11は、異なる高さに設けられており、好ましくは、矢印n1で示すように、中和処理槽10の始端部10sと略同等の高さの位置にも設けられている。この構成は、中和処理槽10内のドレン水の略全量を排出させることを実現する。各バイパス用連通部11は、図1(b),(c)で示したのと同様なpH応答型のバルブV1によって開閉可能である。
【0031】
本実施形態においては、中和処理槽10内のドレン水が中性になると、この中性のドレン水が存在する領域の傍に位置するバルブV1が開状態となる。すると、その部分のバイパス用連通部11から前記ドレン水がドレン水排出路17cに流出し、排出口13に到達する。したがって、本実施形態においても、複雑な制御を行なうことなく、強アルカリ性のドレン水が外部に排出される虞を好適に解消することができる。
【0032】
図3に示す中和器A3は、中和処理槽10内に、複数の仕切り壁15cが上下高さ方向に間隔を隔てて設けられ、中和処理槽10が複数の領域AR(AR1〜AR5)に区分されている。複数の仕切り壁15cには、通水用の孔部19が設けられ、かつこの孔部19を塞ぐようにして、複数のpH応答型のバルブV2が左右互い違いの配置で設けられている。
【0033】
バルブV2は、前述した実施形態のバルブV1とは異なり、ドレン水が酸性の際には開状態であり、中性になると閉状態となる。このバルブV2は、たとえば図4に示すように、硬質のケース40内に、pH応答型の高分子ゲル41、および弁本体42が収容された構造である。高分子ゲル41は、前記実施形態で述べたものと同様である。弁本体42は、たとえば比較的な軟質な部材からなり、拡縮変形可能なループ状またはリップ状である。この弁本体42の周縁領域は高分子ゲル41によって囲まれている。
【0034】
pHが低く、高分子ゲル41が膨潤していない場合には、弁本体42は高分子ゲル41によって押圧されず、図4(a),(b)に示すように、ループ状となり、その内方に開口部42’を形成する。ケース40の底壁部には、開口部42’に連通する通水用の孔部43が設けられている。したがって、前記した状態の際には、開口部42’および孔部4
3をドレン水が通過する。一方、pHが高くなり、高分子ゲル41が膨潤した場合には、弁本体42は高分子ゲル41により押圧され、同図(c),(d)に示すように、閉じた状態となる。この場合には、ドレン水の通過が阻止される。なお、ケース40の上面部には、多孔性部材44が設けられている。この多孔性部材44は、高分子ゲル41にドレン水が接触することを許容しつつ、高分子ゲル41がケース40の上方にはみ出した状態で膨潤することを防止するためのものである。
【0035】
図3において、導入口12に導入されたドレン水は、まず中和処理槽10の最上段の領域AR1に流入する。各バルブV2が開状態にある場合、ドレン水は複数の領域AR1〜AR5を左右に蛇行しながら下降していく。最下段の領域AR5を通過したドレン水は、その下方の排出口13から外部に排出される。
【0036】
中和処理槽10の両側壁部16c,16dには、複数のバイパス用連通部11aが設けられている。これらのバイパス用連通部11aは、各領域ARに対応して設けられており、その高さは、各領域ARの上部寄りの高さである。各領域ARをドレン水が正常に流れている場合には、そのドレン水の水位はバイパス用連通部11aの高さよりも低く、通常状態においてはドレン水がバイパス用連通部11aの高さには達しない、または殆ど達しないようになっている。中和処理槽10の両側には、バイパス用連通部11aを通過したドレン水を排出口13に導くためのドレン水排出路17d,17eが設けられている。
【0037】
本実施形態によれば、ドレン水が未だ十分に中和されてない場合には、各バルブV2が開状態にあり、ドレン水は複数の領域AR1〜AR5を順次流れて排出口13に到る。これに対し、ドレン水がたとえば中性になると、このドレン水が存在する領域ARのバルブV2が閉状態となる。すると、この領域ARにおけるドレン水の水位が上昇する結果、このドレン水はバイパス用連通部11aからドレン水排出路17d,17eに流出して排出口13に到達する。したがって、1つの領域ARにドレン水が滞留したままとなって強アルカリ性となることを適切に防止することができる。本実施形態では、上述した実施形態とは異なる構造のバルブV2を用いているものの、やはり複雑な動作制御は不要である。バルブV2の駆動用の電磁機器やpHセンサなども不要である。
【0038】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る中和器および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0039】
上述した実施形態のバルブV1,V2は、いずれも高分子ゲルとして、酸性の場合に収縮する特性をもつ高分子を用いているが、これとは異なり、アルカリ性の場合に収縮する特性のものを用いてpH応答型のバルブを構成することもできる。アルカリ性の場合に収縮する特性をもつ高分子ゲルとしては、たとえばNNDEA(N,N−ジエチルアクリルアミド)とVTPMLH(ビス−4ジメチルアミノフェニル−4ビニルフェニル−メチルロイコヒドロオキサイド)との共重合体が挙げられる。
図4に示したバルブV2において、高分子ゲル41を、アルカリ性で収縮するものに置き換えた場合、このバルブは、アルカリ性のときには開状態となり、酸性のときには閉状態となる。したがって、このバルブは、図1および図2の中和器A1,A2において、バルブV1の代わりに用いることが可能である。一方、図1に示したバルブV1において、その高分子をアルカリ性で収縮するものに置き換えた場合、このバルブは、酸性のときには開状態となるため、図3の中和器A3において、バルブV2の代わりに用いることが可能となる。
【0040】
中和器の小型、軽量化、および低コスト化をより促進する観点からすると、pH応答型のバルブとして、上述したバルブV1,V2のように、pH応答型の高分子ゲルを利用し
たものを用いることが好ましいものの、これに限定されない。たとえば、中和処理槽内のドレン水のpHを検出するためのpHセンサと、電磁方式などの開閉弁とを組み合わせて、ドレン水が所定のpHになった時点で開動作または閉動作を行なうようにしたものも、本発明でいうpH応答型のバルブの概念に含まれる。このような構成であっても、pHセンサを用いて検出される値に応じて開閉弁を開閉させるだけであるから、その制御は容易である。
なお、pH応答型のバルブは、ドレン水が中性になったタイミングで開閉させることに代えて、たとえば弱アルカリ性となったタイミング、あるいは弱酸性(環境面で悪影響のない範囲での弱酸性)となったタイミングで開閉させるようにしてもよく、このような場合であっても、ドレン水が強アルカリとなることを抑制する効果が得られる。
【0041】
本発明でいう塩基性中和剤とは、既述したとおり、酸と反応した場合の平衡pHが強アルカリ性となる中和剤の意であり、酸化マグネシウム(MgO)以外として、たとえば、金属Mg、Mg(OH)2 、MgCO)3などのMg・Mg系化合物が代表例として挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明に係る中和器は、中和剤として塩基性中和剤が用いられる場合に好ましい効果が得られるものの、これ以外の中和剤を用いて酸性ドレン水の中和処理を図ることも可能であり、中和剤の具体的な種類は限定されない。
【0042】
上述した実施形態では、中和処理槽が複数の仕切壁によって仕切られた複数の領域に区分されているが、中和処理槽は、そのような複数の領域に区分されていない構成であってもよい。
本発明に係る中和器は、燃焼ガスやその他の潜熱を含んだガス(コージェネレーションシステムの発電部から排出される高温の排ガスなど)からの潜熱回収に伴って発生するドレン水を中和する用途であれば種々の用途に用いることが可能であり、たとえば温水装置とは異なる装置に組み込んで使用することもできる。
本発明に係る温水装置とは、給湯装置のみならず、温水を生成する機能を備えた装置全般を広く指す概念である。
【符号の説明】
【0043】
A1〜A3 中和器
V1,V2 pH応答型のバルブ
1 容器(中和器本体)
2 中和剤
10 中和処理槽
10e 終端部(中和処理槽の)
11,11a バイパス用連通部
12 導入口
13 排出口
17a〜17e ドレン水排出路
16c,16d 側壁部
18 底壁部(中和処理槽の)
図1
図2
図3
図4
図5