(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ビスマレイミドが、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及び1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンから選択される、少なくとも一種である請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板製造用基材。
【発明を実施するための形態】
【0029】
フレキシブルプリント配線板製造用基材1は、平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する、少なくとも一つの粒子含有樹脂層を備える。粒子含有樹脂層は、例えば硬化状態(Cステージ状態)又は半硬化状態(Bステージ状態)にある樹脂と、前記シリカとを含有する層から、構成される。
【0030】
尚、シリカの平均粒径は、動的光散乱法により測定される。測定装置としては、例えば粒度分布・粒子径分布測定装置(大塚電子株式会社製、型番FPAR−1000)が用いられる。また、シリカの最大粒径は、動的光散乱法により測定される。この場合も、測定装置として、例えば粒度分布・粒子径分布測定装置(大塚電子株式会社製、型番FPAR−1000)が用いられる。シリカとしては、特に制限されないが、球状シリカが用いられることが好ましい。この場合、粒子含有樹脂層中のシリカの充填性が向上する。球状シリカの粒子の形状は、真球状であることが好ましいが、実質的に球状とみなされるのであれば、真球状でなくてもよい。
【0031】
このフレキシブルプリント配線板製造用基材1における粒子含有樹脂層は、フレキシブルプリント配線板又はフレックスプリント配線板における、絶縁層を形成するために利用される。粒子含有樹脂層から絶縁層が形成されると、絶縁層に孔あけのためにレーザ光が照射される場合、シリカの作用によって絶縁層の熱伝導性が向上することから、孔の内面に樹脂残渣が生じたり、孔の内面が荒れて凹凸が形成されたりすることが、抑制される。また、孔の内面にアルカリ過マンガン酸溶液等のデスミア液を使用するデスミア処理が施されても、孔の内面に凹凸が形成されることが抑制される。このため、レーザ加工により形成される孔の内面にめっき処理が施される場合、めっき層が均一に形成されやすくなり、このためビアホールの導通安定性が向上する。しかも、本発明者らは、上記のような粒径を有するシリカが、絶縁層の可撓性を阻害しにくいことを見出した。このため、本実施形態では、フレキシブルプリント配線板又はフレックスプリント配線板の良好なレーザ加工性と、その良好な易屈曲性とを、両立させることができる。
【0032】
粒子含有樹脂層は、上記作用が阻害されない限り、上記粒径を有するシリカ以外の無機フィラーを更に含有してもよい。但し、粒子含有樹脂層が、上記粒径を有するシリカ以外の無機フィラーを含有しないことが、特に好ましい。
【0033】
フレキシブルプリント配線板製造用基材1における粒子含有樹脂層以外の構成は、フレキシブルプリント配線板又はフレックス・リジッドプリント配線板を製造するために利用可能であれば、特に制限されない。
【0034】
例えば、フレキシブルプリント配線板製造用基材1は、一又は複数の粒子含有樹脂層のみから構成されていてもよいし、一又は複数の粒子含有樹脂層と、粒子含有樹脂層以外の樹脂層とから構成されていてもよい。また、フレキシブルプリント配線板製造用基材1は、金属箔2を備えてもよい。この場合、金属箔2は、粒子含有樹脂層に直接的に積層していても、間接的に積層していてもよい。尚、直接的とは、金属箔2が粒子含有樹脂層に直接接していることを意味し、間接的とは、金属箔2と粒子含有樹脂層との間に粒子含有樹脂層以外の層が介在していることを意味する。この場合、粒子含有樹脂層が、フレキシブルプリント配線板又はフレックス・リジッドプリント配線板に絶縁層を形成するために利用されうる。また、金属箔2が、フレキシブルプリント配線板又はフレックス・リジッドプリント配線板に導体配線を形成するために利用されうる。
【0035】
フレキシブルプリント配線板製造用基材1は、金属箔2と、この金属箔2に積層している第一の樹脂層3と、この第一の樹脂層3に積層している半硬化状態の第二の樹脂層4とを備えてもよい。すなわち、フレキシブルプリント配線板製造用基材1は、金属箔2、第一の樹脂層3、及び第二の樹脂層4が、この順番に積層している構造を有してもよい。この場合、第一の樹脂層3と、第二の樹脂層4とのうち、少なくとも一方が、粒子含有樹脂層である。この場合、第一の樹脂層3と第二の樹脂層4が、フレキシブルプリント配線板又はフレックス・リジッドプリント配線板に絶縁層を形成するために利用されうる。また、金属箔2が、フレキシブルプリント配線板又はフレックス・リジッドプリント配線板に導体配線を形成するために利用されうる。
【0036】
フレキシブルプリント配線板製造用基材1の例として、樹脂付き金属箔、金属張基材及びボンディングシートが、挙げられる。
【0037】
本発明の第一の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板製造用基材1を、
図1に示す。本形態におけるフレキシブルプリント配線板製造用基材1は、金属箔2と、第一の樹脂層3と、Bステージ状態の第二の樹脂層4とを備える、可撓性を有する樹脂付き金属箔11(多層用フレキシブル樹脂付き金属箔)である。
【0038】
本実施形態では、第一の樹脂層3と第二の樹脂層4とのうち、少なくとも一方が、粒子含有樹脂層である。すなわち、第一の樹脂層3と第二の樹脂層4とのうち、少なくとも一方が、平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する。第一の樹脂層3が粒子含有樹脂層である場合には、第一の樹脂層3及び第二の樹脂層4から形成される絶縁層にレーザ加工が施される場合、それにより形成される孔の内面に樹脂残渣が特に生じにくくなる。また、第二の樹脂層4が粒子含有樹脂層である場合には、第一の樹脂層3及び第二の樹脂層4から形成される絶縁層にレーザ加工が施される場合、それにより形成される孔の内面が特に荒れにくくなり、この内面に凹凸が生じにくくなる。これにより、絶縁層にレーザ加工を施す場合の、レーザ加工性が向上する。
【0039】
特に第一の樹脂層3と第二の樹脂層4とが、共に粒子含有樹脂層であることが好ましい。すなわち、第一の樹脂層3が平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有し、且つ第二の樹脂層4が平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有することが、好ましい。この場合、第一の樹脂層3及び第二の樹脂層4から形成される絶縁層にレーザ加工が施される場合、それにより形成される孔の内面に樹脂残渣が特に生じにくくなると共に、この内面に凹凸が特に生じにくくなる。これにより、絶縁層にレーザ加工を施す場合の、レーザ加工性が著しく向上する。
【0040】
金属箔2の材質に特に制限はない。この金属箔2の一例として、銅箔が挙げられる。金属箔2の厚みは、適宜設定されるが、1〜70μmの範囲であることが好ましい。
【0041】
第一の樹脂層3は、ポリアミドイミド樹脂を含有する第一の樹脂組成物から形成されることが好ましい。更に、第一の樹脂層3が粒子含有樹脂層である場合には、第一の樹脂組成物が、平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する。
【0042】
第一の樹脂組成物中のポリアミドイミド樹脂を構成する構成単位(繰り返し単位)は、下記構造式(1)に示される第一の構成単位と、下記構造式(2)に示される第二の構成単位とを含むことが、好ましい。
【0043】
第一の構成単位と第二の構成単位の合計に対する第二の構成単位の割合は、5〜35モル%の範囲であることが、好ましい。この第二の構成単位の割合が35モル%以下(すなわち第一の構成単位の割合が65モル%以上)であることで第一の樹脂層3から形成される絶縁層の耐熱性が向上する。またこの第二の構成単位の割合が5モル%以上(すなわち第一の構成単位の割合が95モル%以下)であることでポリアミドイミド樹脂の溶剤への溶解性が向上し、このため第一の樹脂層3が形成される際の成形不良が抑制される。この割合は更に10〜30モル%の範囲であることが好ましい。
【0045】
ポリアミドイミド樹脂中の構成単位は、第一の構成単位と第二の構成単位のみであることが好ましいが、第一の構成単位と第二の構成単位以外の構成単位(第三の構成単位)を更に有してもよい。ポリアミドイミド樹脂中の全ての構成単位に対する第三の構成単位の割合は、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であれば更に好ましい。
【0046】
第三の構成単位は、例えば次の構造式(3)で示される構造を有する。
【0048】
構造式(3)におけるAは芳香族残基である。Aの構造としては、特に限定されないが、下記[化4]に示す構造を例示列挙することができる。
【0050】
[化4]におけるR
1及びR
2は、水素、並びに炭素数1〜3のアルキル基及びアリル基から選択される。但し、第一の構成単位及び第二の構成単位と同じ構造は、第三の構成単位から除かれる。
【0051】
ポリアミドイミド樹脂の合成方法としては、イソシアネート法、アミン法(酸クロリド法、低温溶液重合法、室温溶液重合法等)などの適宜の手法が採用されてよく、このうちイソシアネート法が採用されることが好ましい。
【0052】
イソシアネート法では、例えばトリメリット酸又はその誘導体(無水物、ハロゲン化物等)と、芳香族残基を導入するための芳香族ジイソシアネートとが、有機溶剤中に加えられ、更に必要に応じて触媒が加えられる。この条件下、好ましくは10〜200℃の温度で、1〜24時間反応させることで、ポリアミドイミド樹脂が合成される。
【0053】
芳香族残基を導入するための芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル及び2,4―ジイソシアン酸トリレンが使用される。この場合、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニルと2,4―ジイソシアン酸トリレンとのモル比が調整されることで、ポリアミドイミド樹脂中の構成単位(1)と構成単位(2)の割合が調整される。また、必要に応じて更に適宜の芳香族ジイソシアネートが使用されることで、ポリアミドイミド樹脂に第三の構成単位が導入される。
【0054】
有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチルウレア、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。また、これらの溶媒と共に、トルエン、キシレンなどの炭化水素系有機溶剤、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤が併用されてもよい。
【0055】
触媒としては、三級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。
【0056】
また、アミン法では、例えばトリメリット酸又はその誘導体(無水物、ハロゲン化物等)と、芳香族残基を導入するための芳香族ジアミンとが、有機溶剤中に加えられ、更に必要に応じて触媒が加えられる。この条件下、好ましくは0〜200℃の温度で、1〜24時間反応させることで、ポリアミドイミド樹脂が合成される。
【0057】
ポリアミドイミド樹脂の分子量は、特に制限されないが、ポリアミドイミド樹脂の溶剤への溶解性をより向上する観点からは数平均分子量が1万〜4万の範囲であることが好ましい。この数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフにより測定される値である。
【0058】
ポリアミドイミド樹脂の具体例の一つとして、東洋紡株式会社製の品番HR−16NNが、挙げられる。
【0059】
第一の樹脂組成物は、更にビスマレイミドを含有することが好ましい。この場合、第一の樹脂層3から構成される絶縁層の耐熱性が更に向上する。ビスマレイミドとしては、特に制限されないが、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、及び1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンから選択される、少なくとも一種が用いられることが好ましい。
【0060】
第一の樹脂組成物中の、ポリアミドイミド樹脂とビスマレイミドとの合計量に対するビスマレイミドの割合は、3〜30質量%の範囲であることが好ましい。この割合が3質量%以上であることで第一の樹脂層3から構成される絶縁層の耐熱性が充分に向上し、またこの割合が30質量%以下であることで第一の樹脂層3から構成される絶縁層の良好な柔軟性が保たれる。この割合は更に3〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0061】
第一の樹脂組成物は、ビスマレイミドに代えて、或いはビスマレイミドと共に、エポキシ化合物を含有することも好ましい。この場合も、第一の樹脂層3から構成される絶縁層の耐熱性が更に向上する。エポキシ化合物としては、特に制限されないが、ナフタレン骨格を有する多官能エポキシ樹脂であることが好ましい。ナフタレン骨格を有する多官能エポキシ樹脂としては、例えばノボラック型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、及びクレゾール型共縮合型エポキシ樹脂が挙げられる。これら以外にも、多官能エポキシ化合物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノール骨格とビフェニル骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0062】
第一の樹脂組成物中の、ポリアミドイミド樹脂とエポキシ化合物との合計量に対するエポキシ化合物の割合は、3〜30質量%の範囲であることが好ましい。この割合が3質量%以上であることで第一の樹脂層3から構成される絶縁層の耐熱性が充分に向上し、またこの割合が30質量%以下であることで第一の樹脂層3から構成される絶縁層の良好な柔軟性が保たれる。この割合は更に3〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0063】
第一の樹脂組成物は、適宜の溶剤中にポリアミドイミド樹脂及びシリカを含有させ、好ましくは更にビスマレイミドを含有させることで、調製される。第一の樹脂組成物にシリカを配合する際には、例えば第一の樹脂組成物に、シリカを含有するコロイダルシリカを配合することができる。
【0064】
溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチルウレア、スルホラン、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。また、これらの溶媒と共に、トルエン、キシレンなどの炭化水素系有機溶剤、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤が併用されてもよい。また、ポリアミドイミド樹脂の合成に用いられた溶剤をそのまま第一の樹脂組成物に配合してもよい。
【0065】
第一の樹脂組成物中の溶剤の割合は、第一の樹脂組成物の塗布性、成膜性等を考慮して、適宜設定されるが、特に第一の樹脂組成物の粘度が200〜800cPの範囲となるように溶剤の含有量が調整されることが好ましい。
【0066】
また、第一の樹脂組成物は、上記成分のほか、適宜の添加剤を含有してもよい。
【0067】
この第一の樹脂組成物が金属箔2上に塗布成膜されることで、第一の樹脂層3が形成される。金属箔2上へ第一の樹脂組成物を塗布する方法としては、コンマコート、ダイコート、ロールコート、グラビアコート等の、適宜の方法が採用されてよい。
【0068】
金属箔2上に塗布された第一の樹脂組成物が加熱されることで第一の樹脂組成物から溶剤が揮発し、これにより、第一の樹脂層3が形成される。この場合の加熱温度は、溶剤が揮発し得る適宜の温度であればよい。特に加熱時の加熱温度の最高温度は230〜290℃の範囲であることが好ましく、この場合、第一の樹脂層3が冷却する過程での熱収縮が抑制され、このため樹脂付き金属箔11の反りが効果的に抑制される。
【0069】
このように形成される第一の樹脂層3は易屈曲性及び耐熱性が高く、このため第一の樹脂層3から形成される絶縁層の易屈曲性及び耐熱性が向上する。また、ハロゲン系難燃剤を要することなく高い耐熱性を発揮するため、燃焼時の有毒ガスの発生や発煙などが抑制される。また、この第一の樹脂層3とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との間の親和性が高くなる。
【0070】
第一の樹脂層3の厚みは、特に制限されないが、2〜15μmの範囲であることが好ましい。この場合、第一の樹脂層3から形成される絶縁層に充分に高い易屈曲性が付与される。プリント配線板の小型化・薄型化の観点からは、第一の樹脂層3の厚みは薄い方が好ましい。このため第一の樹脂層3の厚みは更に2〜10μmの範囲であることが好ましく、更に2〜8μmの範囲であることが好ましい。尚、第一の樹脂層3がポリイミド樹脂から形成される場合には、第二の樹脂層4との密着性を向上するためのコロナ放電処理等の表面処理が必要となり、このため表面処理による損傷を避けるためには第一の樹脂層3がある程度の厚みを有する必要がある。このためポリイミド樹脂から形成される第一の樹脂層3の薄型化は難しかった。しかし、本実施形態による第一の樹脂層3は、上述の通り、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との密着性が高く、このため密着性向上のための表面処理が不要になる。このため、本実施形態では表面処理による損傷を考慮する必要がなく、従って第一の樹脂層3の、薄型化が可能となる。
【0071】
第一の樹脂層3上に、Bステージ状態の第二の樹脂層4が形成されることで、第一の実施形態における樹脂付き金属箔11が得られる。
【0072】
第二の樹脂層4は、例えばエポキシ樹脂を含有する第二の樹脂組成物から形成される。第二の樹脂層4が粒子含有樹脂層である場合には、第二の樹脂組成物は、更に平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する。第二の樹脂組成物にシリカを配合する際には、例えば第二の樹脂組成物に、シリカを含有するコロイダルシリカを配合することができる。
【0073】
例えば第二の樹脂組成物が第一の樹脂層3上に塗布され、この第一の樹脂層3上の第二の樹脂組成物が加熱乾燥されて半硬化(Bステージ化)することで、第二の樹脂層4が形成される。
【0074】
ここで、本実施形態による第一の樹脂層3は、エポキシ樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物との間で高い密着性を発揮する。このため、第一の樹脂層3上に第二の樹脂層4を形成するにあたり、予め第一の樹脂層3に密着性向上のための表面処理を施す必要がない。このため、樹脂付き金属箔11の生産性が高くなる。
【0075】
第二の樹脂組成物は、特にエポキシ樹脂、硬化剤、及びカルボジイミド変性可溶性ポリアミドを含有することが好ましい。
【0076】
第二の樹脂組成物中のエポキシ樹脂は、例えばグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及び酸化型エポキシ樹脂から選ばれる一種以上を含有することができる。グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、アルコール型エポキシ樹脂等が、挙げられる。グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、ヒドロフタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂等が、挙げられる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、芳香族アミン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。酸化型エポキシ樹脂としては、脂環型エポキシ樹脂が挙げられる。ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール骨格とビフェニル骨格を有するノボラック型エポキシ樹脂(ビフェニルノボラックエポキシ樹脂)、リン変性エポキシ樹脂(後述)等が挙げられる。尚、エポキシ樹脂はハロゲンを含有しないことが好ましい。
【0077】
特に第二の樹脂組成物中のエポキシ樹脂は、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、プリント配線板の耐熱性、耐マイグレーション性、耐薬品性が向上する。ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、下記構造式(11)〜(13)で示される化合物のうちの少なくとも一種であることが好ましく、この場合、プリント配線板の耐熱性、耐マイグレーション性、耐薬品性が更に向上する。
【0081】
第二の樹脂組成物中の硬化剤には、ポリアミン、変性ポリアミン、酸無水物、ヒドラジン誘導体、ポリフェノール等が含まれ得る。ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン等が挙げられる。このうち脂肪族ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。脂環式ポリアミンとしては、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ラロミン等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。酸無水物としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、脂肪族二塩基酸ポリ無水物等が挙げられる。ポリフェノール系の硬化剤としては、フェノールノボラック、キシレンノボラック、ビスAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック等が挙げられる。硬化剤はアミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等を含んでもよい。
【0082】
特に硬化剤は、下記構造式(14)で表されるアミノトリアジンノボラック樹脂とジシアンジアミドとのうち、少なくとも一種を含むことが好ましい。この場合、第二の樹脂層4が長期間に亘って安定してBステージ状態に保たれるようになる(保存安定性が向上する)と共に、プリント配線板の難燃性及び耐薬品性が向上する。
【0084】
第二の樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、第二の樹脂組成物中のエポキシ樹脂、硬化剤及びカルボジイミド変性可溶性ポリアミドの合計量に対して、10〜45質量%の範囲であることが好ましい。
【0085】
第二の樹脂組成物中に含有されるカルボジイミド変性可溶性ポリアミドは、例えば可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とが、溶媒の存在下又は不存在下で例えば50〜250℃の反応温度で反応することで生成する。
【0086】
可溶性ポリアミドは、アルコールと芳香族系の有機溶媒及びケトン系の有機溶媒のうちの少なくとも一方との混合物100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上が完全に溶解可能なポリアミドである。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。芳香族系の有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。ケトン系の有機溶媒としては、シクロヘキサノン、2−ブタノン、シクロペンタノン等が挙げられる。これらのアルコール、芳香族系溶媒及びケトン系溶媒の沸点は130℃以下であることが好ましい。
【0087】
可溶性ポリアミドは、例えば可溶性ポリアミド以外のポリアミド(可溶化前のポリアミド)に可溶化のための処理が施されることで得られる。この可溶化のための処理の方法としては、例えば、可溶化前のポリアミドのアミド基中の水素原子をメトキシメチル基で一部置換する方法が挙げられる。この方法によってポリアミドにメトキシ基が導入されるとアミド基から水素結合能力が失われることでポリアミドの結晶性が阻害され、これによりポリアミドの溶媒への溶解性が増大する。可溶化のための処理の方法として、可溶化される前のポリアミドの分子中にポリエーテルやポリエステルを導入して共重合体とする方法も挙げられる。可溶化前のポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46等が挙げられる。
【0088】
可溶性ポリアミドの具体例としては、デュポン株式会社製のZytel 61(商品名)、ゼネラルミルズ社製のVersalon(商品名)、東レ株式会社製のアミランCM4000(商品名)、東レ株式会社製のアミランCM8000(商品名)、富士化成工業株式会社製のPA−100(商品名)、ナガセケムテックス株式会社製のトレジン(商品名)等が挙げられる。
【0089】
カルボジイミド化合物は、1分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物である。カルボジイミド化合物としてはモノカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。カルボジイミド化合物は、例えば、触媒である有機リン系化合物又は有機金属化合物の存在下で、各種ポリイソシアネートが無溶媒又は不活性溶媒中で約70℃以上の温度で脱炭酸縮合反応することで合成される。
【0090】
モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等が挙げられる。これらの中では、工業的に入手が容易であるという観点からは、ジシクロヘキシルカルボジイミド、あるいはジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
【0091】
ポリカルボジイミド化合物は、種々の方法により製造される。例えばポリカルボジイミド化合物は、従来公知のポリカルボジイミドの製造方法(例えば、米国特許第2941956号明細書、J. Org. Chem. 28, 2069−2075 (1963)、Chemical Review 1981, Vol.81 No.4, p619-621を参照)により製造される。
【0092】
カルボジイミド化合物は、1分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するのであれば特に限定されないが、反応性や耐加水分解安定性の向上効果などの点から、4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド等の、分子中に2個以上のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。特に脂肪族系又は脂環族系ポリカルボジイミド化合物が好ましい。ポリカルボジイミド化合物の重合度は2〜30の範囲であることが好ましく、2〜20の範囲であればより好ましい。この重合度が2以上であるとプリント配線板の耐熱性が更に向上する点で好ましく、重合度が20以下であると第二の樹脂組成物中の成分間の相溶性が向上する点で好ましい。
【0093】
ポリカルボジイミド化合物の製造のために使用されるポリイソシアネートとしては、有機ジイソシアネートが挙げられる。有機ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物が挙げられる。具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、プリント配線板の可撓性や耐湿性を向上する観点からは、脂肪族系(脂環族を含む)有機ジイソシアネートが好ましく、特にイロホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートやこれらの混合物がより好ましい。
【0094】
ポリカルボジイミド化合物の製造時には、ポリイソシアネートの重合反応時に反応系が冷却されるなどして重合反応が途中で停止されることでポリカルボジイミド化合物の重合度が適切に制御され得る。この場合、ポリカルボジイミド化合物の分子の末端はイソシアネート基となる。ポリカルボジイミド化合物の重合度が更に適切に制御されるためには、イソシアネート基と反応し得るモノイソシアネート化合物等の化合物(以下、末端封止剤という)がポリカルボジイミド化合物の分子の末端にあるイソシアネート基の全部又は一部と反応することで、ポリカルボジイミド化合物のイソシアネート基の全部又は一部が封止されてもよい。ポリカルボジイミド化合物の重合度が適切に制御されると、可溶性ポリアミドとポリカルボジイミド化合物との相溶性が向上すると共に第二の樹脂層4を備える部材の保存安定性が向上する。
【0095】
末端封止剤として使用され得るモノイソシアネート化合物としては、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が挙げられる。
【0096】
モノイソシアネート化合物以外の末端封止剤が使用されてもよい。モノイソシアネート化合物以外の末端封止剤としては、イソシアネート基と反応し得る活性水素化合物が挙げられる。このような活性水素化合物としては、例えば、(i)脂肪族、芳香族又は脂環族の化合物であって、−OH基を有する、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N−メチルエタノールアミン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の化合物;(ii)=NH基を有するジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の化合物;(iii)−NH
2基を有するブチルアミン、シクロヘキシルアミン;(iv)−COOH基を有するコハク酸、安息香酸、シクロヘキサン酸等の化合物;(v)−SH基を有するエチルメルカプタン、アリルメルカプタン、チオフェノール等の化合物;(vi)エポキシ基を有する化合物;(vii)無水酢酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物等が挙げられる。
【0097】
有機ジイソシアネートの脱炭酸縮合反応は、適当なカルボジイミド化触媒の存在下で進行し得る。カルボジイミド化触媒としては、有機リン系化合物、有機金属化合物(一般式M−(OR)
nで表され、Mはチタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(ZR)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等の金属元素、Rは炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基、nはMの価数を示す。)が好適である。
【0098】
これらのカルボジイミド化触媒のうち、特に反応活性を向上する観点からは、有機リン系化合物のうちからフォスフォレンオキシド類が用いられること、並びに有機金属化合物のうちからチタン、ハフニウム、又はジルコニウムのアルコキシド類が用いられることが好ましい。フォスフォレンオキシド類の具体例としては、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、3−メチル−1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1,3−ジメチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−エチル−2−フォスフォレン−1−オキシド、1−メチル−2−フォスフォレン−1−オキシド又はこれらの二重結合異性体が挙げられる。これらのフォスフォレンオキシド類のうち、工業的に入手が容易である点では、3−メチル−1−フェニル−2−フォスフォレン−1−オキシドが用いられることが好ましい。
【0099】
カルボジイミド変性可溶性ポリアミドは、可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とが溶媒の存在下又は不存在下で反応することで生成する。この場合、可溶性ポリアミドが有するカルボキシル基やアミノ基等の反応性官能基と、これらと反応可能なカルボジイミド化合物のカルボジイミド基やイソシアネート基とが反応する。
【0100】
可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とを溶媒の存在下で反応させる方法としては、例えば、可溶性ポリアミド及びカルボジイミド化合物を溶媒中に加え、これにより得られる溶液を加熱しながら攪拌することで反応を進行させる方法が挙げられる。特にまず可溶性ポリアミドを溶媒に加え、これにより得られる溶液に更にカルボジイミド化合物を添加し、続いてこの溶液をリフラックス(還流)下で加熱攪拌することで反応を進行させることが好ましい。この反応後の溶液から溶媒を常圧下又は減圧下で除去すると、カルボジイミド変性可溶性ポリアミドが得られる。
【0101】
可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とを溶媒の不存在下で反応させる方法としては、例えば、融点以上の温度に加熱されることで溶融した可溶性ポリアミドにカルボジイミド化合物を混合することで反応を進行させる方法や、可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物を二軸押出機により溶融混練すること混合しながら反応を進行させる方法などが挙げられる。
【0102】
可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とが反応する際の、可溶性ポリアミド100質量部に対するカルボジイミド化合物の割合は0.5〜20質量部の範囲であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。この場合、プリント配線板の耐湿性及び耐熱性が十分に向上すると共に、プリント配線板の可塑性が高くなり過ぎたり耐衝撃性が損なわれたりしにくくなる。すなわち、カルボジイミド化合物の割合が0.5質量部以上であることでプリント配線板の耐湿性や耐熱性が十分に向上する。一方、この割合が20質量部以下であることでプリント配線板の可塑性が高くなり過ぎたり耐衝撃性が損なわれたりしにくくなる。
【0103】
可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物との反応時には、反応系に可溶性ポリアミドの変性を阻害する化合物が存在しないことが好ましく、特に反応系にはカルボジイミド化合物、可溶性ポリアミド及び必要に応じて用いられる溶媒のみが存在することが好ましい。可溶性ポリアミドの変性を阻害する化合物の具体例としては、エポキシ樹脂、アミン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0104】
可溶性ポリアミドをカルボジイミド化合物との反応時間は、可溶性ポリアミドやカルボジイミド化合物の種類、反応方法、反応温度等に応じて適宜設定されるが、1〜500分間の範囲であることが好ましく、5〜200分間の範囲であれば更に好ましい。
【0105】
可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物との反応時の反応系の温度も、可溶性ポリアミドやカルボジイミド化合物の種類、反応方法、反応温度等に応じて適宜設定されるが、50〜250℃の範囲であることが好ましい。特に可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とが溶媒の存在下で反応する場合には、反応系の温度は50〜150℃の範囲であることが好ましく、70〜130℃の範囲であればより好ましい。一方、可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とが溶媒の不存在下で反応する場合、反応系の温度は130〜250℃の範囲であることが好ましく、150〜220℃であればより好ましい。この反応系の温度が50℃以上であると、可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物との反応が充分に速くなって可溶性ポリアミドの変性が速やかに生じるため、工業的な面からは好ましい。更に、この反応系の温度が250℃以下であると、樹脂の分解などによる生成物の劣化が生じにくくなる点で好ましい。
【0106】
このように可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物が反応すると、可溶性ポリアミドが変性してカルボジイミド変性可溶性ポリアミドとなる。この反応が進行すると、それに伴ってカルボジイミド化合物が有するカルボジイミド基が減少する。このため、原料と生成物をそれぞれ赤外分光法により測定すると、生成物について測定される赤外吸収スペクトル中ではカルボジイミド基に帰属されるピークが減少する。更に、原料と生成物の示差熱重量分析をおこなうと、原料ではアミド樹脂に起因する吸収ピークやカルボジイミド樹脂に起因する吸収ピークなどの複数の吸収ピークが観測されるが、生成物では吸熱ピークは1つに集約される。これらにより、可溶性ポリアミドが変性されたことが確認される。
【0107】
カルボジイミド変性可溶性ポリアミドを含有する組成物は、可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とを含む組成物と比較して、保存安定性に優れている。すなわち、可溶性ポリアミドとカルボジイミド化合物とを含む組成物は、溶液化すると増粘し、更にゲル化しやすくなるのに対し、カルボジイミド変性可溶性ポリアミドを含有する組成物は増粘などの変化が生じにくいため、長期間の保管が可能となる。
【0108】
第二の樹脂組成物中のカルボジイミド変性可溶性ポリアミドの含有量は、第二の樹脂組成物中のエポキシ樹脂、硬化剤、及びカルボジイミド変性可溶性ポリアミドの含有量の合計量に対して20〜70質量%の範囲であることが好ましい。このカルボジイミド変性可溶性ポリアミドの含有量が20質量%以上であるとプリント配線板の易屈曲性が向上し、この含有量が70質量%以下であるとプリント配線板の難燃性及び耐熱性が向上する。
【0109】
第二の樹脂組成物は、必要に応じ、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の硬化促進剤を含有してもよい。
【0110】
第二の樹脂組成物は更にフェノキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、プリント配線板の易屈曲性が更に向上する。フェノキシ樹脂には、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールA/ビスフェノールF型共重合型フェノキシ樹脂、リン変性フェノキシ樹脂(後述)等が含まれ得る。第二の樹脂組成物中のフェノキシ樹脂の含有量は第二の樹脂組成物全量に対して5〜30質量%の範囲であることが好ましい。
【0111】
第二の樹脂組成物は、リン変性エポキシ樹脂、リン変性フェノキシ樹脂、ホスファゼン等のリン系難燃剤のうちの少なくとも1種類を含有することも好ましい。この場合、プリント配線板の難燃性が更に向上する。第二の樹脂組成物全量に対するリン変性エポキシ樹脂、リン変性フェノキシ樹脂及びリン系難燃剤の含有量の合計の割合は、10〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0112】
リン変性エポキシ樹脂は、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイドと1,4−ナフトキノンとを反応させ、さらにクレゾールノボラック樹脂を反応させることで得られる。
【0113】
リン変性フェノキシ樹脂の分子骨格の主体はフェノキシ樹脂からなり、且つこのリン変性フェノキシ樹脂1モル中にリン元素を例えば数個(1〜5個程度)含有している。
【0114】
リン系難燃剤の例としては、ホスファゼン、モノマー型リン酸エステル、縮合型リン酸エステル、反応型リン系難燃剤、リン酸塩、ホスファゼン化合物等が挙げられる。モノマー型リン酸エステルの具体例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシニルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシリルジフェニルホスフェート、クレジルビス(ジ−2,6−キシレニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。縮合型リン酸エステルの具体例としては、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジ−2,6−キシレニル)ホスフェート等が挙げられる。反応型リン系難燃剤の具体例としては、ビスフェノールAビスフェニールホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホォスフェナンスレン−10−オキシド、2−(ジフェニルホスフィニル)ハイドロキノン等が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ジメラミン、ポリリン酸メラミン、エチレンジアミンリン酸塩等が挙げられる。ホスファゼン化合物の具体例としては、ホスホニトリル酸フェニルエステル、シアノフェノール・フェノール混合置換シクロホスファゼン、ホスホニトリルクロリド・ハイドロキノン・フェノール縮合物等が挙げられる。
【0115】
第二の樹脂組成物は、上記のような成分が配合されることで調製される。更に第二の樹脂組成物は、必要に応じて、粘度調整のために有機溶剤を含有してもよい。
【0116】
このようにして得られる第二の樹脂組成物がカルボジイミド変性可溶性ポリアミドを含有することで、この第二の樹脂組成物の保存安定性、密着性、易屈曲性、及び充填性が高くなる。すなわち、カルボジイミド変性可溶性ポリアミドは、可溶性ポリアミドが有するカルボキシル基やアミノ基等の反応性官能基と、これらと反応可能なカルボジイミド化合物のカルボジイミド基やイソシアネート基とが反応することで生成するため、低温下でエポキシ樹脂と反応しにくい。そのため、第二の樹脂組成物の保存安定性が高くなると共に、この第二の樹脂組成物から形成される第二の樹脂層4を備える樹脂付き金属箔11の保存安定性及びプレス成形性が高くなる。更に、第二の樹脂組成物及び第二の樹脂層4の取り扱い性及び加工性(保存安定性やプレス成形性)と、プリント配線板の各種特性(密着性、易屈曲性、充填性など)が両立し得るようになる。
【0117】
更に、第二の樹脂組成物がカルボジイミド変性可溶性ポリアミドを含有することで、第二の樹脂層4の絶縁性が向上すると共に、難燃性、耐熱性、耐薬品性が更に向上する。
【0118】
上記のような組成を有する第二の樹脂組成物からは、レジンフローの高い第二の樹脂層4が形成され得る。第二の樹脂層4のレジンフローは、第二の樹脂組成物の塗膜が加熱・乾燥されることで第二の樹脂層4が形成される場合の、加熱温度や加熱速度が調整されることにより、容易に調整され得る。
【0119】
第一の樹脂層3上に第二の樹脂組成物が塗布され、更にこの第二の樹脂組成物が加熱・乾燥されて半硬化することで、第二の樹脂層4が形成され得る。この場合、第二の樹脂組成物の半硬化物からなる第二の樹脂層4が形成される。第二の樹脂組成物の塗布方法としては、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、グラビアコーター等の適宜の手法が採用されてよい。第二の樹脂組成物の加熱・乾燥時の加熱条件は適宜設定されるが、加熱温度は130℃〜160℃の範囲、加熱時間は2〜10分間の範囲であることが好ましい。
【0120】
第二の樹脂層4の厚みは、特に制限されないが、充填性の更なる向上と、フレキシブルプリント配線板の更なる薄型化とを図る観点からは、10〜40μmの範囲であることが好ましい。
【0121】
このように構成される樹脂付き金属箔11は、プリント配線板を作製するために用いられ、特にフレキシブルプリント配線板又はフレックス・リジッドプリント配線板を製造するために好適に用いられる。すなわち、この樹脂付き金属箔11における金属箔2が、プリント配線板における導体配線を形成するために利用され、また樹脂付き金属箔11における第一の樹脂層3及び第二の樹脂層4が、プリント配線板における絶縁層を形成するために利用される。例えばこの樹脂付き金属箔11をコア材に積層することでプリント配線板を多層化することができる。
【0122】
本発明の第二の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板製造用基材1を、
図2に示す。このフレキシブルプリント配線板製造用基材1は、可撓性を有する金属張基材12(片面フレキシブル金属張基材)である。金属張基材12は、金属箔2と、この金属箔2の厚み方向の片面上に積層している第一の樹脂層3とを備える。第一の樹脂層3の厚みは、2〜15μmであることが好ましい。この第一の樹脂層3が、粒子含有樹脂層からなる。すなわち、第一の樹脂層3が、平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する。
【0123】
本実施形態における金属箔2は、第一の実施形態における金属箔2と同じ構成を有することができる。
【0124】
本実施形態における第一の樹脂層3は、第一の実施形態における、平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する第一の樹脂層3と同じ構成を有し、この第一の実施形態における第一の樹脂層3と同じ方法で形成することができる。すなわち、本実施形態における第一の樹脂層3を形成するための樹脂組成物として、第一の実施形態における、平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する第一の樹脂組成物を用いることができる。
【0125】
このように形成される第一の樹脂層3は易屈曲性及び耐熱性が高く、このため第一の樹脂層3から形成される絶縁層の易屈曲性及び耐熱性が向上する。また、ハロゲン系難燃剤を要することなく高い耐熱性を発揮するため、燃焼時の有毒ガスの発生や発煙などが抑制される。また、この第一の樹脂層3とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂との間の親和性が高い。このため、金属張基材12を適宜のコア材に積層することで多層のプリント配線板を作製するにあたり、エポキシ樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を介して金属張基材12とコア材とを接合する場合には、第一の樹脂層3に予め密着性向上のための表面処理を施すことが不要となり、このためプリント配線板の生産性が向上する。また、表面処理による損傷を考慮する必要がないため、第一の樹脂層3の薄型化が可能となる。
【0126】
このように構成される可撓性の高い金属張基材12を、エポキシ樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を介してコア材に積層することで、プリント配線板を多層化することができる。熱硬化性樹脂組成物としてボンディングシートを用いることもできる。
【0127】
本発明の第三の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板製造用基材1を、
図3に示す。このフレキシブルプリント配線板製造用基材1は、ボンディングシート13である。ボンディングシート13は、半硬化状態(Bステージ状態)にある粒子含有樹脂層からなる。この粒子含有樹脂層は、例えば第一の実施形態における、平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する第二の樹脂層4と同じ構成を有する。また、この粒子含有樹脂層を形成するために用いられる樹脂組成物として、例えば第一の実施形態における、平均粒径5〜200nm、最大粒径500nm以下のシリカを2〜20phrの範囲で含有する第二の樹脂組成物を用いることができる。
【0128】
ボンディングシート13は、
図3に示すように、離型フィルム26上に積層された状態で使用されてもよい。離型フィルム26としては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等の適宜の樹脂フィルムが使用される。
【0129】
ボンディングシート13は、例えば離型フィルム26上に第二の樹脂組成物が塗布され、更にこの第二の樹脂組成物が加熱・乾燥されて半硬化することで形成され得る。この場合、第二の樹脂組成物の半硬化物からなるボンディングシート13が形成される。第二の樹脂組成物の塗布方法としては、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、グラビアコーター等の適宜の手法が採用されてよい。第二の樹脂組成物の加熱・乾燥時の加熱条件は適宜設定されるが、加熱温度は130℃〜160℃の範囲、加熱時間は2〜10分間の範囲であることが好ましい。
【0130】
ボンディングシート13の厚みは、特に制限されないが、充填性の更なる向上と、フレキシブルプリント配線板の更なる薄型化とを図る観点からは、10〜40μmの範囲であることが好ましい。
【0131】
本発明の第四の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板15の製造工程を、
図4に示す。本実施形態では、フレキシブルプリント配線板15の多層化のために、第一の実施形態に係る樹脂付き金属箔11が用いられる。
【0132】
本実施形態では、まず、
図4(a)に示すように、第一の絶縁層6と、第一の絶縁層6の片面又は両面に積層されている金属箔7とを備えるフレキシブル積層板5が用意される。第一の絶縁層6は易屈曲性を有する。この第一の絶縁層6はポリイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等の種々の可撓性の高い絶縁性材料から形成される。第一の絶縁層6の厚みは適宜設定されるが、12〜50μmの範囲であることが好ましい。金属箔7の材質は特に制限されないが、その一例として銅箔が挙げられる。このフレキシブル積層板5は、例えば第一の絶縁層6に金属箔7が接着或いは熱融着されることで形成される。
【0133】
図4(b)に示すように、フレキシブル積層板5の金属箔7にエッチング処理等の処理が施されることで、第一の導体配線8が形成される。更に第一の絶縁層6に開口が形成されると共にこの開口内にホールめっきが施されることでビアホールが形成されてもよい。これにより、第一の絶縁層6と、この第一の絶縁層6上に積層している第一の導体配線8とから構成される、コア材9が得られる。第一の導体配線8は、第一の絶縁層6の厚み方向の片面上のみに形成されていてもよく、第一の絶縁層8の厚み方向の両面上の各々に形成されていてもよい。
【0134】
図4(c)及び
図4(d)に示すように、コア材9に、第一の実施形態に係る樹脂付き金属箔11を積層する。この場合、樹脂付き金属箔11が、コア材9の両面の各々に、第二の樹脂層4によって第一の導体配線8が覆われるように重ねられる。尚、樹脂付き金属箔11が、コア材9の片面のみに重ねられてもよい。続いて、樹脂付き金属箔11とコア材9とがこれらの積層する方向に加圧されると共に加熱される。これにより、まず第二の樹脂層4が軟化して第一の導体配線8のライン間に充填され、更に第一の絶縁層6にビアホールが形成されている場合にはビアホール内にも充填される。続いて第二の樹脂層4が熱硬化する。これにより、第一の樹脂層3と第二の樹脂層4の硬化物とからなる絶縁層(第二の絶縁層10)が形成される。
【0135】
コア材9と樹脂付き金属箔11とが上記手法により積層一体化すると、
図4(d)に示されるような、第一の絶縁層6の厚み方向の両面上の各々に第一の導体配線8、第二の絶縁層10、金属箔2が順次積層している構造を有する、積層物14が得られる。尚、積層物14が、第一の絶縁層6の厚み方向の片面上のみに、第一の導体配線8、第二の絶縁層10、金属箔2が順次積層している構造を有してもよい。
【0136】
この積層物14における樹脂付き金属箔11に由来する最外層の金属箔2に対して、エッチング処理等の処理が施されることで、
図4(e)に示されるように導体配線(第二の導体配線25)が形成される。
【0137】
また、この積層物14にレーザ加工が施されることで、第二の絶縁層10に孔が形成される。この孔の内面に、アルカリ過マンガン酸溶液等のデスミア液によってデスミア処理が施される。更に、この孔の内面にめっき処理(ホールめっき)が施される。これにより、第二の絶縁層10にビアホール27が形成される。本実施形態では、このようにレーザ加工が施される場合、上述の通りレーザ加工性が向上し、このためめっき処理が施される場合にめっき層が均一に形成されやすくなる。このためビアホール27の導通安定性が向上する。
【0138】
本発明の第五の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板15の製造工程を、
図5に示す。本実施形態では、第四の実施形態において、フレキシブルプリント配線板15の多層化のために、樹脂付き金属箔11に代えて、第二の実施形態に係る金属張基材12及び第三の実施形態に係るボンディングシート13が、用いられる。
【0139】
本実施形態では、まず、第四の実施形態と同様に、
図5(a)に示すように第一の絶縁層6と金属箔7とを備えるフレキシブル積層板5が用意され、このフレキシブル積層板5から、
図5(b)に示すように第一の絶縁層6と第一の導体配線8とを備えるコア材9が形成される。
【0140】
図5(c)及び
図5(d)に示すように、コア材9に、第三の実施形態に係るボンディングシート13及び第二の実施形態に係る金属張基材12を、順次積層する。この場合、ボンディングシート13が、コア材9の両面の各々に、第一の導体配線8を覆うように重ねられ、このボンディングシート13に、金属張基材12の第一の樹脂層3が重ねられる。尚、ボンディングシート13及び金属張基材12が、コア材9の片面のみに重ねられてもよい。続いて、金属張基材12、ボンディングシート13、及びコア材9が、これらの積層する方向に加圧されると共に加熱される。これにより、まずボンディングシート13が軟化して第一の導体配線8のライン間に充填され、更に第一の絶縁層6にビアホールが形成されている場合にはビアホール内にも充填される。続いてボンディングシート13が熱硬化する。これにより、第一の樹脂層3とボンディングシート13の硬化物とからなる絶縁層(第二の絶縁層10)が形成される。
【0141】
これにより、
図5(d)に示されるような、第一の絶縁層6の厚み方向の両面上の各々に第一の導体配線8、第二の絶縁層10、金属箔2が順次積層している構造を有する、積層物14が得られる。尚、積層物14が、第一の絶縁層6の厚み方向の片面上のみに、第一の導体配線8、第二の絶縁層10、金属箔2が順次積層している構造を有してもよい。
【0142】
この積層物14における金属張基材12に由来する最外層の金属箔2に対して、エッチング処理等の処理が施されることで、
図5(e)に示されるように導体配線(第二の導体配線25)が形成される。
【0143】
また、この積層物14にレーザ加工が施されることで、積層物14に孔が形成される。更に、この孔の内面にめっき処理(ホールめっき)が施されることで、ビアホール27が形成される。本実施形態では、このようにレーザ加工が施される場合、上述の通りレーザ加工性が向上し、このためめっき処理が施される場合にめっき層が均一に形成されやすくなる。このためビアホール27の導通安定性が向上する。
【0144】
本発明の第六の実施形態に係るフレックス・リジッドプリント配線板24の製造工程を、
図6に示す。
【0145】
フレックス・リジッドプリント配線板24は、複数のリジッド部23と、リジッド部23の間を接続するフレックス部22とを備える。リジッド部23は、搭載される部品の重さに耐え、筐体に固定できる硬さと強度を持ったリジッドな部分である。またフレックス部22はコア材16における多層化されていない部分から構成され、折り曲げができる可撓性を持つフレキシブルな部分である。リジッド部23には、ビアホール27が形成されている。フレックス・リジッドプリント配線板24は、フレックス部22で折り曲げて筐体などに収容することによって、例えば携帯用電子機器など小型・軽量の機器に使用される。
【0146】
このフレックス・リジッドプリント配線板24は、第四又は第五の実施形態に係るビアホール27が形成されているフレキシブルプリント配線板15を、コア材16として用いることで、製造される。
【0147】
このコア材16を、フレックス部22となる部分を除いて多層化することで、リジッド部23を形成することができる。多層化のための手法は特に制限されず、公知の手法が用いられるが、本実施形態では多層化用の樹脂付き金属箔17を用いるビルドアップ法が採用される。
【0148】
樹脂付き金属箔17は、
図6(a)に示すように、金属箔18と、この金属箔18の片面上に積層している樹脂層19とを備える。樹脂付き金属箔17は、例えば銅箔等の金属箔18のマット面にエポキシ樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を塗布し、この熱硬化性樹脂組成物を半硬化状態(Bステージ状態)となるまで加熱乾燥することで樹脂層19を形成することによって、作製される。金属箔18の厚みは6〜18μmの範囲であることが好ましく、樹脂層19の厚みは10〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0149】
図6(b)に示すように、コア材16におけるリジッド部23が形成される複数の領域の各々において、コア材16の両面の各々に樹脂付き金属箔17の樹脂層19を重ね、この状態で加熱加圧成形すると、樹脂層19がコア材16に接着すると共にこの樹脂層19が硬化して絶縁層(第三の絶縁層20)が形成される。この場合の成形条件は適宜設定されるが、例えば成形圧力は1〜3MPa範囲、成形温度は160〜200℃の範囲で設定される。
【0150】
続いて、
図6(c)に示すように、樹脂付き金属箔17に由来する金属箔18にエッチング処理等を施すことで、導体配線(第三の導体配線21)を形成する。これにより、リジッド部23が形成されると共に、隣合うリジッド部23の間にフレックス部22が形成される。このリジッド部23には、必要に応じて、スルーホール、ビアホール等が形成されてもよい。また、このリジッド部23がビルドアップ法等により更に多層化されてもよい。
【実施例】
【0151】
[カルボジイミド化合物の合成]
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート590g、シクロヘキシルイソシアネート62.6g及びカルボジイミド化触媒(3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド)6.12gを配合して、混合物を得た。この混合物を180℃で48時間加熱することで反応を進行させた。これにより4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド樹脂(重合度=10)を合成した。
【0152】
[カルボジイミド変性可溶性ポリアミドの合成]
容量1リットルのセパラブルフラスコに、エステル共重合アミド樹脂(東レ株式会社製、商品名CM8000)50.0g、及びイソプロピルアルコールとトルエンとの混合溶媒(質量混合比4:6)450.0gを加え、これらを撹拌することにより溶解させた。こうして得られたセパラブルフラスコ内の溶液に、カルボジイミド化合物(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド樹脂)5.0gを加えた。続いて、このセパラブルフラスコを120℃のオイルバスに浸漬させ、セパラブルフラスコ内の溶液をリフラックス下、3時間加熱撹拌し、続いてこの溶液を減圧乾燥することで溶媒を除去した。これにより、カルボジイミド変性可溶性ポリアミドを含有する溶液を得た。
【0153】
このカルボジイミド変性可溶性ポリアミドに対して赤外分光光度測定を行ったところ、2120cm
-1にカルボジイミド基の存在を示す吸収ピークが認められた。さらにカルボジイミド変性可溶性ポリアミドに対して示差走査熱量測定を行ったところ、1つの吸熱ピークが観測された。また、カルボジイミド変性可溶性ポリアミドのガラス転移温度(Tg)は120℃、5%重量減温度は320℃であり、溶液の粘度は860mPa・sであった。
【0154】
[実施例1]
(第一の樹脂組成物の調製)
無水トリメリット酸(ナカライテスク株式会社製)192g(50モル%)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル211g(40モル%)、2,4―ジイソシアン酸トリレン35g(10モル%)、ジアザビシクロウンデセン(サンアプロ株式会社製)1g、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC、ナカライテスク株式会社製)2482gを配合することで、ポリマー濃度15質量%の混合物を得た。この混合物を加熱することで1時間かけて100℃まで昇温させ、続いて混合物を100℃のまま6時間維持することで、反応を進行させた。
【0155】
次いで、混合物に更にDMAC1460gを加えることで、ポリマー濃度を10質量%に調整し、続いて混合物を室温まで冷却した。これにより、ポリアミドイミド樹脂を含有する樹脂溶液を得た。
【0156】
続いて樹脂溶液に、後掲の表に示す粒径を有する球状シリカを含有するコロイダルシリカ(分散媒メチルエチルケトン、固形分濃度50質量%)を、液中の樹脂固形分100質量部に対するシリカの割合(phr)が表に示す割合となるように加えた。
【0157】
これにより、ポリアミドイミドが溶解している樹脂溶液(第一の樹脂組成物)を得た。この樹脂溶液は黄褐色透明の液体であり、このためポリアミドイミドが充分に溶解していることが確認される。
【0158】
(第二の樹脂組成物の調製)
後掲の表に示すエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、カルボジイミド変性可溶性ポリアミド、ホスファゼン、及び硬化促進剤を、樹脂固形分中の割合が表に示されるものとなるように容器に入れて配合した。これにより、固形分30質量%の第二の樹脂組成物を調製した。
【0159】
(樹脂付き金属箔の作製)
コンマコータ及びこれに接続された乾燥機を用いて、第一の樹脂組成物を厚み12μmの銅箔の片面上に塗布した。続いてこの第一の樹脂組成物を200℃で4分間加熱し、続いて乾燥機を用いて、250℃で10分間加熱、乾燥した。これにより、銅箔上に厚み7μmの第一の樹脂層を形成した。これにより、金属箔、及びこの金属箔の片面上に積層する第一の樹脂層を備える金属張基材を得た。
【0160】
この金属張基材における第一の樹脂層に何らの表面処理を施すことなく、コンマコーター及びこれに接続された乾燥機を用いて、第一の樹脂層上に第二の樹脂組成物を塗布し、続いてこの第二の樹脂組成物を150℃で3分間加熱乾燥した。これにより、厚み30μmのBステージ状態の第二の樹脂層を形成した。
【0161】
これにより、金属箔、第一の樹脂層、及び第二の樹脂層を備える、樹脂付き金属箔を得た。
【0162】
[実施例2〜16、比較例1〜3]
実施例1において、第一の樹脂組成物の組成、及び第二の樹脂組成物の組成を、後掲の表に示すように変更した。第一の樹脂組成物にビスマレイミドを配合する場合には、ポリアミドイミド樹脂及びビスマレイミドの、樹脂固形分中の割合が、後掲の表に示すものとなるようにした。第二の樹脂組成物に球状シリカを配合する場合には、後掲の表に示す粒径を有する球状シリカを含有するコロイダルシリカ(分散媒メチルエチルケトン、固形分濃度50質量%)を、液中の樹脂固形分100質量部に対するシリカの割合(phr)が表に示す割合となるように加えた。それ以外は実施例1と同じ方法及び同じ条件により、金属箔、第一の樹脂層、及び第二の樹脂層を備える、樹脂付き金属箔を得た。
【0163】
[評価試験]
各実施例及び比較例で得られた樹脂付き金属箔について、下記の通り、耐薬品性、銅箔引き剥がし強度、半田耐熱性、屈曲性、回路充填性、難燃性、耐マイグレーション性、及びレーザー加工性を、評価した。評価結果を後掲の表に示す。
【0164】
(耐折性)
厚み25μmのポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルムの片面に積層されている厚み18μmの銅箔とを備える片面フレキシブル基板を用意した。この片面フレキシブル基板における銅箔をパターニングすることで導体配線を形成した。この片面フレキシブル基板の両両面の各々に、樹脂付き金属箔の第二の樹脂層を重ね、これらを180℃で1時間加熱加圧成形することで、積層体を得た。この積層体の両面の各々に配置されている金属箔をエッチングにより除去し、これによりサンプルを得た。
【0165】
このサンプルに対してMIT法による試験を実施した。測定条件は、R=0.38mm、荷重500g、時間当たりの折り曲げ回数を毎分175回とした。その結果、導体配線の導通がとれなくなるまでに要した折り曲げ回数により、耐折性(易屈曲性)を評価した。
【0166】
(レーザ加工性)
厚み25μmのポリイミドフィルムと、このポリイミドフィルムの両面の各々に積層されている厚み18μmの銅箔とを備える両面フレキシブル基板を用意した。この両面フレキシブル基板の両面の各々に、樹脂付き金属箔の第二の樹脂層を重ね、これらを180℃で1時間加熱加圧成形することによって、4層板を作製した。この4層板の最外層の銅箔にエッチング処理を施すことで、直径100μmのコンフォーマルマスクを形成した。このコンフォーマルマスクを利用して、炭酸ガスレーザー(日立ビアメカニクス株式会社製)を用いて、レーザ加工を施すことで、絶縁層に孔を形成した。続いて、この孔の内面に、アルカリ過マンガン酸溶液を用いてデスミア処理を施した。
【0167】
続いて、孔の内面を目視で観察することで、樹脂残渣の有無を確認した。また、孔の内面をSEMにより観察して、孔の内面の粗さの程度を確認した。
【0168】
(銅箔引き剥がし強度)
厚み25μmのポリイミドフィルムの両面の各々に、樹脂付き金属箔の第二の樹脂層を重ね、これらを180℃で1時間加熱加圧成形することによって、サンプルを作製した。
【0169】
このサンプルの最外層の銅箔を90°方向に引き剥がしたときの引き剥がし強度を測定し、これを第一の樹脂層と第二の樹脂層との間の密着性の指標とした。
【0170】
(耐薬品性)
二枚の樹脂付き金属箔を、その第二の樹脂層同士が対向する状態で重ね、これらを180℃で1時間加熱加圧成形することで、サンプルを得た。このサンプルにおける銅箔をエッチングによって全て除去した。次に、サンプルを水酸化ナトリウム水溶液(濃度3質量%、温度40℃)に3分間浸漬させた後、取り出してから、水洗し、更に乾燥した清浄な布で水分を十分に拭き取った。続いて、直ちにサンプルの変色、膨れ、はがれ等の外観の変化を目視にて観察した。その結果、外観変化が認められない場合を「合格」、外観変化が認められたものを「不合格」と、評価した。
【0171】
(半田耐熱性)
厚み25μmのポリイミドフィルムの両面の各々に、樹脂付き金属箔の第二の樹脂層4を重ね、これらを180℃で1時間加熱加圧成形することによって、サンプルを作製した。このサンプルを260℃に加熱した半田浴と288℃に加熱した半田浴にそれぞれ60秒間浸漬してから、サンプルの外観を観察した。その結果、サンプルに膨れやはがれ等の外観異常が認められない場合を「合格」、外観異常が認められた場合を「不合格」と評価した。
【0172】
(回路充填性)
ポリイミドフィルムからなる絶縁層と、この絶縁層の片面上に形成されている櫛形電極とを備える片面フレキシブルプリント配線板を用意した。櫛形電極は、厚み35μmの圧延銅箔をエッチング処理することで形成した。この片面フレキシブルプリント配線板における櫛形電極が形成されている面に、樹脂付き金属箔の第二の樹脂層を重ね、これらを180℃で1時間加熱加圧成形することによって、サンプルを作製した。このサンプルにおける櫛形電極での導体配線間における樹脂の充填性を目視で観察し、未充填が認められない場合を「合格」、未充填が認められる場合を「不合格」と、評価した。
【0173】
(難燃性)
厚み25μmのポリイミドフィルムの両面の各々に、樹脂付き金属箔の第二の樹脂層を重ね、これらを180℃で1時間加熱加圧成形することで、積層体を得た。この積層体の両面の各々に配置されている金属箔をエッチングにより除去し、これによりサンプルを得た。このサンプルの難燃性を、UL94に準じて、94VTMの難燃性の判定基準で評価した。その結果、94VTM−0に適合する場合を「合格」、そうでない場合を「不合格」と、評価した。
【0174】
(耐マイグレーション性)
ポリイミドフィルムからなる絶縁層と、この絶縁層の片面上に形成されている櫛形電極とを備える片面フレキシブルプリント配線板を用意した。この片面フレキシブルプリント配線板における櫛形電極が形成されている面に、樹脂付き金属箔の第二の樹脂層を重ね、これらを180℃で1時間加熱加圧成形することによって、サンプルを作製した。このサンプルを85℃/85%RHの環境下に曝露しながら、櫛形電極に10Vの電圧を250時間印加した。続いて、サンプルを目視で観察することで、マイグレーションの有無を評価した。この結果、マイグレーションが認められない場合を「合格」、マイグレーションが認められた場合を「不合格」と評価した。
【0175】
【表1】
【0176】
【表2】
【0177】
【表3】
【0178】
尚、表中の原料の詳細は、次の通りである。
・ビスマレイミド1:4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(大和化成工業株式会社製、品番BMI−1000)。
・ビスマレイミド2:ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド(大和化成工業株式会社製、品番BMI−4000)。
・ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(1):日本化薬株式会社製、品番NC−7000L。
・ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(2):DIC株式会社製、品番HP−4700。
・ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(3):DIC株式会社製、品番HP−4770。
・フェノキシ樹脂:新日鐵化学株式会社製、品番YP−50、樹脂固形分65質量%のメチルエチルケトン溶液。
・リン変性エポキシ樹脂:新日鐵化学株式会社製、品番FX−305EK70、樹脂固形分70質量%のメチルエチルケトン溶液。
・カルボジイミド変性可溶性ポリアミド:本実施例による合成品、イソプロピルアルコールとトルエン(質量比4:6)の混合溶媒溶液、固形分濃度11質量%。
・ホスファゼン:大塚化学株式会社製、品番SPB−100。
・硬化促進剤:2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製、品番2E4MZ。
【0179】
上記表にみられるように、各実施例では、易屈曲性が高く、レーザー加工性も良好であり、半田耐熱性及び耐マイグレーション性にも優れていることが確認された。