特許第6041211号(P6041211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041211自動変速機用保持プレート、およびこれを備えた配線ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041211
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】自動変速機用保持プレート、およびこれを備えた配線ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20161128BHJP
   B65D 63/12 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   F16H61/00
   !B65D63/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-73714(P2013-73714)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199071(P2014-199071A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河島 祐二
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 光裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悟
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−017828(JP,A)
【文献】 特開2009−065798(JP,A)
【文献】 特開2000−134763(JP,A)
【文献】 特開2007−166805(JP,A)
【文献】 特開2007−174821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
B60R 16/02
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の自動変速機に搭載され電線を保持するための保持プレートであって、
前記電線を保持する支持面が形成されるとともに、この支持面には一対の通し孔が形成され、これら両通し孔に結束バンドのバンド部の自由端側が順に通されて前記バンド部の反対側端部に形成されたロック部に係止されることによって結束状態が保持されるようにしてあり、
かつ前記対をなす通し孔は、相互に異なる形状に形成され
対をなす前記通し孔のうち前記バンド部の自由端側が先に通される側は、前記バンド部の自由端側を挿通可能な一般部と、この一般部に連通して形成された識別用拡張部が形成され、かつこの識別用拡張部は前記一般部に対し前記結束バンドによって前記電線が結束されることに伴って前記電線が寄せられる方向と反対方向に配置されていることを特徴とする自動変速機用保持プレート。
【請求項2】
前記識別用拡張部の孔縁は曲面形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機用保持プレート。
【請求項3】
自動車の自動変速機に搭載され、変速動作に関する制御を行うための配線ユニットであって、
請求項1又は請求項2に記載の自動変速機用保持プレートを備えたことを特徴とする自動変速機用配線ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用保持プレート及びこれを備えた配線ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、自動車の自動変速機には変速動作を制御するために、制御部品(ROM等)や各種センサ類などの電気部品、およびこれら電気部品同士の間、あるいは外部との信号伝達のための電気配線をユニット化した配線ユニットが組み付けられている。そのような構成を持つものとして、下記特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−106946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したものはバスバーによって電気配線網を構築しているが、バスバーに代えてワイヤハーネスを用いることもある。しかしながら、ワイヤハーネスによる場合には、配線にある程度の余長分を確保する必要から、途中部分において電線の浮き上がりを生じやすい。そのような浮き上がりを生じた部位は周辺部材との干渉が懸念されるため、一般には、結束バンドを用いて設置面へ固定する対策が講じられる。
【0005】
ところで、結束バンドが用いられる箇所では、設置面に一対の通し孔が開口して設けられている。一方、結束バンドは良く知られるように、可撓性を有しかつ一面側に複数の係止歯が鋸歯状に形成されたバンド部と、バンド部の一端に形成されたロック部とを備えた構成である。また、ロック部にはバンド部を自由端側から挿通される挿通口が貫通し、ロック部内には係止歯に対し選択的に係止可能な係止爪が撓み可能に形成されている。このような結束バンドを用いてワイヤハーネスを結束する場合、バンド部の自由端を対をなす通し孔のうちの一方に通した後、設置面の裏側で反転させて他方の通し孔に挿通させ、しかる後に差し込み口を貫通させロック部から引き出された部分を強く引っ張る。こうしてワイヤハーネスに対する一定の締め付け状況が得られれば、引っ張り操作を停止する。すると、その位置で係止歯と係止爪が係止してワイヤハーネスが強く緊縛される。
【0006】
ところで、図11に示すように、バンド部が引っ張り操作されることに伴ってロック部は対をなす通し孔のうち後から通された側に寄せられる。すると、ロック部と共にワイヤハーネスもこれに伴って同方向へ寄せられることになる。図11(A)の場合であれば、ワイヤハーネスWHは図示左方へ寄せられるが、対をなす通し孔に対するバンド部の挿通順を誤った場合を示す同図(B)の場合であれば、図示右方へ寄せられてしまうことになる。このような事態が生じると、ロック部及びワイヤハーネスが本来の退避可能なスペースから外れて周辺部材に干渉してしまうことが懸念される。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、対をなす通し孔に対し結束バンドを正規の挿通順で挿通させることができる自動変速機用保持プレート及び配線ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動変速機用保持プレートは、電線を保持する支持面が形成されるとともに、この支持面には一対の通し孔が形成され、これら両通し孔に結束バンドのバンド部の自由端側が順に通されて前記バンド部の反対側端部に形成されたロック部に係止されることによって結束状態が保持されるようにしてあり、
かつ前記対をなす通し孔は、相互に異なる形状に形成され
対をなす前記通し孔のうち前記バンド部の自由端側が先に通される側は、前記バンド部の自由端側を挿通可能な一般部と、この一般部に連通して形成された識別用拡張部が形成され、かつこの識別用拡張部は前記一般部に対し前記結束バンドによって前記電線が結束されることに伴って前記電線が寄せられる方向と反対方向に配置されているところに特徴を有する。
また、本発明の配線ユニットは上記構成に係る保持プレートを備えたところに特徴を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動変速機用保持プレート及びこれを備えた配線ユニットにおいては、支持面上に配索された電線を結束バンドで固定する場合に、結束バンドのバンド部が先行して通されるべき通し孔(以下、先通し孔という)を選択する必要がある。そのような場合に、本発明では対をなす通し孔が異形状に設定されているため、作業者はバンド部が最初に通されるべき通し孔を誤りなく選択することができる。その結果、結束作業に伴ってロック部及び電線を正規の方向に寄せて配索することができるため、ロック部及び電線を周辺部材と干渉しない退避スペースに確実に導くことができる。
また、先通しされる側の通し孔は識別用拡張部によって開口領域が拡げられているため、結束バンドのバンド部を挿通させやすい。また、結束がなされる際には、バンド部は一般部側へ移動して識別用拡張部が大きな開口となって保持プレートを表側からあるいは裏側から見通すことができ、これによって作業者は正規状態で結束がなされたことを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】配線ユニットの平面図
図2】同じく正面図
図3】同じく側面図
図4】保持プレートの平面図
図5】同じく側面図
図6】同じく正面図
図7】ROMの取付け状態を示す断面図
図8】押さえ部によってワイヤハーネスが保持されている状態を示す断面図
図9】結束バンドの平面図
図10】結束バンドによってワイヤハーネスが結束されている状況を示す断面図
図11】(A)は対をなす通し孔に対しバンド部が正規の挿通順で挿通された場合を示す説明図、(B)は誤った挿通順で挿通された場合を示す説明図
図12】ワイヤハーネスが結束されている状態における先通し孔とバンド部との位置関係を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における好ましい実施の形態を説明すると、前記識別用拡張部の孔縁は曲面形状に形成されているとよい。
このような構成によれば、バンド部の挿通時にバンド部が識別用拡張部の孔縁に引っ掛かってしまう事態が生じにくく、締め付け作業を円滑に行うことができる。
【0012】
次に、本発明の自動変速機の配線ユニットを具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
<実施例1>
本実施例の自動変速機の配線ユニットUは、自動車の自動変速機内に取付けられ、変速動作に関連する制御の一部を担う。配線ユニットUは、図1乃至図3に示すように、ROM1やコネクタ等の各種電気部品、電気部品相互等を接続するための複数本の電線よりなるワイヤハーネスWH、及びこれら電気部品やワイヤハーネスWHを一括して保持するための金属製保持プレート2とを備えて構成されている。
【0013】
保持プレート2は、図4乃至図6に示すように、金属製の長尺の板材を曲げ加工して形成されている。保持プレート2はボルト等によって図示しない自動変速機のケーシングに取付けられるようにしてあり、図示のものでは長さ方向の両端部寄りの二カ所及び中間部の計3か所にボルト差し込み孔3が貫通して形成されている。
【0014】
図1に示すように、保持プレート2の図示右端部には端部コネクタ4が配されている。一方、保持プレート2の図示左端部は二方向に分岐し、一方の端部には制御装置等に接続される中継コネクタ5が配されており、他方には変速動作に関連するデータが記憶されたROM1が配されている。ROM1の取付け構造は後に詳述するが、ROM1には電線7の一端側がコネクタ6接続され、電線7の他端側は中継コネクタ5に接続されている。この電線7を含め中継コネクタ5からは複数本の電線よりなるワイヤハーネスWHが引き出され、その幹線は保持プレート2の上面に形成された支持面8に沿って配索されている。幹線の複数箇所からは分岐線が分岐し、そのうちの図示四カ所から引き出されたは分岐線には図示しないソレノイドに接続されるコネクタ9がそれぞれ接続されている。また、他の箇所から引き出された分岐線は前記した端部コネクタ4に接続されており、さらに他の箇所から引き出された分岐線にはアース端子10が取付けられ、前記したボルト差し込み孔3のうち中央に配置されたボルト差し込み孔3へボルトをねじ込むことによってアースがとられるようにしてある。
【0015】
図6に示すように、保持プレート2は、前記した端部コネクタ4の取付け部位から長手方向の中央部に至る範囲が略同一平面をもって水平に形成されている。そして、保持プレート2においてアースがとられるボルト差し込み孔3が形成された部位の図示左方に隣接した部位には段差11が形成され、これより図示左方は一段低くなっている。保持プレート2におけるこの一段低くなった部位は低位領域12とされ、この低位領域12にはワイヤハーネスWHの幹線部分の浮き上がりを規制する押さえ部13が設けられている。
【0016】
押さえ部13は保持プレート2から一体に形成されている。具体的には図8に示すように、支持面8の長手方向に関する一方の側縁から上面側へ起立する側片14と、その立ち上がり端縁から略直角に屈曲し支持面8と略平行に延出する押さえ片15とからなり、全体は逆L字形状をなしている。押さえ片15の内面はワイヤハーネスWHに対する押さえ面16が形成されている。押さえ面16はワイヤハーネスWHの配索方向に関して所定の長さ寸法をもって形成され、ワイヤハーネスWHを一定長さ範囲に亘って面当たり状態で押さえつけることができるようにしている。また、支持面8に対する押さえ面16の高さ位置は、段差11より図示右方に形成された高位領域17の上面の高さとほぼ同じとなるように設定されている。なお、保持プレート2の長手方向の両側縁のうち押さえ部13が形成されている側と反対側の側縁には湾曲した逃がし凹部18が切欠き形成されており、図4に示すように、押さえ片15の先端部は平面視で逃がし凹部18内に先端部が進入するようになっている。
【0017】
ワイヤハーネスWHの幹線は複数個所に分かれて保護チューブ19(保護部材)が挿通されている。そのうち上記した押さえ部13によって浮き上りが規制されている部位にも用いられている。ここで用いられた保護チューブ19は押さえ部13より長尺であり、押さえ部13の端縁(破断面がエッジとなっていることがある)によって電線の被覆が傷付けられないようにしている。保護チューブ19は可撓性を有するゴム材にて形成されていて、ワイヤハーネスWHは保護チューブ19に挿通された状態で、押さえ面16と支持面8との間に圧入気味に押し込まれて保持がなされている。なお、図2図8に示すように、保持プレート2が自動変速機の図示しないケーシングに取付けられた状態では、押さえ片15の上方にはケーシング側の突起構造Tが近接して位置するようになっている。
【0018】
また、ワイヤハーネスWHは押さえ部13(保護チューブ19)を長手方向に挟んだ両側において結束バンド20により結束されて保持プレート2に固定されている(図1参照)。同図に示すように、ワイヤハーネスWHのうち結束バンド20で結束される部位は、共にワイヤハーネスWHが保護チューブ19より外側に露出した部位である。押さえ部13を挟んで位置する結束バンド20のうちの一方は、段差11に近接した高位領域17に配されており、他方は押さえ部13の図示左方で低位領域12に配されている。本実施例においては、ワイヤハーネスWHが結束バンド20で固定される部位は、上記した押さえ部13を挟んだ部位の他にも複数個所に設定されているが、いずれの箇所においても保持プレート2には対で構成される通し孔21A,21Bがそれぞれ貫通して設けられている。対をなす通し孔21A,21Bの全設置個所のうち二カ所(そのうちの一箇所は、図4において押さえ部13の左方に隣接して配置されたもの)を除き、一方の通し孔21Aは孔縁が閉じた形態であり、他方の通し孔21Bは保持プレート2の側縁を方形状に切り欠いて側方へ開放した形態となっている。このように、通し孔21Bは、孔縁が閉じた形態のみを意味するのでなく、開放した形態を含む概念であるが、対をなすもの同士が共に孔縁が閉じた形態であることを何ら排除するものではない。
【0019】
本実施例の通し孔21A,21Bのうち孔縁が閉じた形態のものは、図12に示すように、方形領域22A(一般部)と略半円状の半円領域22B(識別用拡張部)とを合体させた形態となっている。このような孔形状とする理由は後に詳述する。その前に、結束バンド20について説明する。結束バンド20自体は公知のものであるため、説明は簡単に留める(図9参照)。
【0020】
結束バンド20は合成樹脂製であり、可撓性を有するバンド部23とその一端側に形成されたロック部25とを備えた構成である。バンド部23の一面側には、同面にのみ所定の長さ範囲に亘って多数の係止歯24が鋸歯状に形成されている。ロック部25はバンド部23の一端部において係止歯24が形成されている面と反対側の面の端部に突設されるとともに、その中央部には突出方向に沿って挿通口26が貫通して形成され、バンド部23を自由端側から挿通可能である。また、ロック部25の内部には任意の係止歯24と選択的に係止可能な係止爪27が撓み可能に設けられている。
【0021】
ところで、対をなす通し孔21A,21Bにおいて孔縁が閉じた形態と開放した形態の二種類を設定する理由は、結束バンド20のバンド部23の自由端を挿通させる場合に、何れを先行して挿通させるべきかを区別するためである(図11(A)(B)参照)。対をなす通し孔21A,21Bに対する結束バンド20のバンド部23の自由端側の挿通順を誤ると、結束に伴ってロック部25が寄せられる方向、つまりはワイヤハーネスWHの寄せられる方向が正規方向(図11(A)に示す方向)とは逆になってしまい、周辺部材との干渉の虞が生じるが、正しい挿通順で挿通されれば、ワイヤハーネスWHは周辺部材との干渉の虞のない退避スペースへ寄せて保持することができる。本実施例の場合、孔縁が閉じた形態のものが先通し孔21Aであり、開放した形態が後通し孔21Bである。先通し孔21Aの半円領域22Bは、結束バンド20で締め付けられた際にワイヤハーネスWHが引き寄せられる方向(図12に示す矢印方向)とは反対方向に配されている。したがって、ワイヤハーネスWHが結束バンド20で正規に締め付け固定された状態では、バンド部23は先通し孔21Aの方形領域22A側に位置し、半円領域22B側が広く開放される。したがって、保持プレート2の平面視(或いは裏面視)でこの半円領域22Bを広く見通すことができることをもって、結束バンド20の結束作業が正規状態でなされたことを目視にて確認することができる。なお、結束バンド20による締め付け作業は、ロック部25を通過した後のバンド部23を工具を用いて上方へ引っ張り上げることによってなされるが、締め付け後にはロック部25を通過した後のバンド部23はカッター等によって切り落とされる。
【0022】
図6に示すように、保持プレート2において低位領域12の図示左方には上記段差11より低い高低差が設定された部位を介してクランク部28(図4参照)が延出している。図6に示すように、クランク部28の延出端部には前記段差11より大きな高低差を有した段差壁29の上端が連続し、図4に示すように、段差壁29の下端からは側方へ張り出すようにして中継コネクタ用取付け部30が連続している。クランク部28の上面から中継コネクタ用取付け部30に至るまでの範囲には段差方向に沿って補強用の突条31が設けられ、同部位の曲げ剛性が高められている。また、中継コネクタ用取付け部30には支持片34が上方へ起立して形成され、中継コネクタ5を三方から取り囲んで支持することができる。
【0023】
上記した段差壁29の一方の側縁は図4の左方へ折り曲げられて連結片32が延出している。この連結片32の延出端部は折り曲げ部38を介して外側方へ略直角に折り曲げられて自由端部となっている。この自由端部にはROM1を取り付けるための保持部33が形成されている。図5に示すように、保持部33の折り曲げ部寄りの中央部には開口40が形成されており、ROM1に対するコネクタ6接続部と干渉しないようにしている。また、折り曲げ部38には連結片32から保持部33にかけての範囲に補強用のリブ35が形成され、保持部33の曲げ剛性が高められている。
【0024】
保持部33には、図4乃至図6に示すように、複数のかしめ片36が一体に起立して形成されている。本実施例において、かしめ片36は保持部33の一方の側縁に2つ、他方の側縁に一つが配されており、これらかしめ片36のうちの二つは保持部33の先端側の両コーナ部において対向して配されている。各かしめ片36は図4に示すように、先端部がやや幅狭のかしめ部36Aとなっており、ROM1をかしめ付ける前にはかしめ片36のかしめ部36Aは基部36B側に対し斜め内向きに傾斜した形態となっている(図6参照)。したがって、ROM1は折り曲げ部38側から保持部33の上面に沿って進入した後、かしめ部36Aをかしめることによって保持部33に対する固定がなされる。
【0025】
また、本実施例においては、ROM1の下面(保持部33との対向面)には位置決め用突部37が突設されている(図7参照)。一方、保持部33において一方の側縁(かしめ片36が一つだけ配されている側縁)寄りであって、このかしめ片36に近接した部位には受け孔39(受け部)が長方形状に開口して形成されており、位置決め用突部37が受け孔39に適合して嵌め合わされることによって、ROM1を保持部33に対してかしめ作業前に位置決めすることができる。
【0026】
上記のように構成された本実施例の配線ユニットUは、ROM1、コネクタ4,6,9等の電気部品及びワイヤハーネスWHが保持プレート2に組み付けられ、予めユニット化された状態で自動変速機に組み付けられる。本実施例の配線ユニットUの作用効果は次の通りである。
【0027】
(1)ROM1を保持プレート2に固定するにあたり、各かしめ片36が保持プレート2に対して一体に形成されて、ROM1を保持プレート2に直接固定することができるから、従来に比べて部品点数を削減することができる。また、ROM1は、位置決め用突部37を受け孔39に適合して嵌め込むことで、保持部33に対して位置決めされる。こうしてROM1に対するかしめ位置が正規位置に規定されるため、かしめ位置がばらつくことはない。さらに、ROM1に対するかしめ作業を行う際には、保持部33に折曲げ部を中心として曲げの力が作用する。しかし、折曲げ部は補強用のリブ35によって曲げ剛性が高められているため、かしめに伴って保持プレート2が変形してしまう事態は未然に回避されている。
【0028】
(2)ワイヤハーネスWHは保持プレート2に一体に形成された押さえ部13という簡易な構造により、浮き上がりが規制されている。したがって、ワイヤハーネスWHの上方に何らかの構造物があるような場所においては、押さえ部13を配置しておくことで、ワイヤハーネスWHと構造物との干渉を未然に回避することができる。また、押さえ部13は押さえ面16によって、電線をその配索方向に沿った所定範囲を押さえ付けるため、結束バンド20のような局所的な押さえに比較して干渉回避領域を広範囲に確保することができる。また、ワイヤハーネスWHを保護チューブ19に挿通して押さえ部13を通すようにしておけば、押さえ部13の端縁がエッジとなっていたとしても、電線被覆が傷付けられてしまう事態を確実に回避することができる。さらに、本実施例では押さえ部13は側方に開放するような形状であるため、ワイヤハーネスWHを通す作業を簡単に行うことができる。さらにまた、本実施例では、浮きを生じやすい高低差のついた二つの領域を通過するワイヤハーネスWHに対し、低位領域12に押さえ部13を配置することで、効果的に浮き上がり規制を行うことができる。また、ワイヤハーネスWHは押さえ部13で強制的に束ねられているため、逆に、押さえ部13の両側では拡散しやすい傾向にあるが、本実施例では押さえ部13を挟んでその両側部位を結束バンド20にて締め付け固定しているため、押さえ部13との協働作用によって、より広範囲にワイヤハーネスWHの浮き上がりを規制することができる。
【0029】
(3)結束バンド20のバンド部23を通す通し孔21A,21Bにおいて、先通し孔21Aと後通し孔21Bとを孔縁が異なる形態として外観上容易に区別できるようにしたため、通し孔21A,21Bに対するバンド部23の挿通順を正しく選択することができる。したがって、ロック部25及びワイヤハーネスWHを周辺部材との干渉を回避できるスペースへ向けて確実に寄せることができる。加えて、通し孔21Aの半円領域22Bと方形領域22Aとの位置関係に関し、ワイヤハーネスWHが寄せられる方向と反対側に半円領域22Bを形成するようにしたため、バンド部23は方形領域22A内に位置し、半円領域22Bを大きく開放させることができる。したがって、作業者は先通し孔21Aにおけるこのような開放状況を目視することによって、結束作業が正規になされたことを検知することができる。また、先通し孔21Aの拡張部分の形状をR形状(半円形状)としたため、バンド部23の挿通時に引っ掛かりを生じにくく、締め付け作業を円滑に行うことができる。
【0030】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)かしめ片36の数及び配置は、本実施例に限定されるものではなく、保持部33の両側縁に同数配置してもよい。
(2)上記実施例ではかしめ片36による固定の対象物がROM1であったが、その他の電気部品であってもよく、例えばセンサ、コネクタ等であってもよい。
(3)上記実施例では、ROM1側に位置決め用突部37を形成し、保持プレート2側に受け孔39を形成したが、逆の関係であってもよい。また、位置決め用突部37に対する受け部は受け孔39のような貫通孔でなくてもよく、非貫通形態の凹部であってもよい。
(4)上記実施例では、保持部33を保持プレート2の自由端部に設定したが、保持プレート2の途中の部位に設けてもよく、このような構成であれば、保持部33が段差を介して配置されるような場合にも、補強用のリブ35を省略することも可能である。
(5)上記実施例では、押さえ部13を一箇所のみ配置したが、複数個所に配置しても良く、その場合には、押さえ部13を保持プレート2の一方の側縁に、他の押さえ部13を他方の側縁に配置してもよく、さらに長手方向に関する位置をずらした配置としても良い。
(6)上記実施例では、対をなす通し孔21A,21Bのうち先通し孔21Aを後通し孔21Bより大きく形成したが、逆に小さくしてもよい。また、対をなす通し孔21A,21B同士で外観上の識別ができればよく、個々の孔形状は問わない。
(7)上記実施例では、ワイヤハーネスを保護チューブ19へ挿通させたが、可撓性を有するシート材を用いてワイヤハーネスに巻き付けて保護するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
2…保持プレート
8…支持面
20…結束バンド
21A,21B…通し孔
22A…方形領域(一般部)
22B…半円領域(識別用拡張部)
23…バンド部
24…係止歯
25…ロック部
26…挿通口
27…係止爪
U…配線ユニット
WH…ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12