(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粘度指数向上剤(D)が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、ポリエステル、イソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステルおよびα−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項8に記載の時計用の潤滑油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0014】
[時計用の潤滑油組成物]
本発明に係る時計用の潤滑油組成物は、ポリオールエステル(A−1)、炭素原子数25以上のパラフィン系炭化水素油(A−2)およびエーテル油(A−3)から選ばれる少なくとも一種の基油(A1)を含む潤滑剤成分(A)と、中性リン酸エステルおよび中性亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも一種の耐摩耗剤(B)と、酸化防止剤(C)とを含む潤滑油組成物であって、該組成物の全酸価は0.8mgKOH/g以下であり、好ましくは0.2mgKOH/g以下である。
【0015】
全酸価がこの範囲にあると、一般に消費電流に変化はなく、粘度上昇や時計部材の腐食を防止でき、時計用の潤滑油組成物として好適である。含有成分およびその量について以下に説明する範囲で用いれば、潤滑油組成物の全酸価は通常0.8mgKOH/g以下、好ましくは0.2mgKOH/g以下となる。なお、全酸価はJIS K2501−5により測定した値である。
【0016】
<潤滑剤成分(A)>
本発明において「潤滑剤成分」とは、上述の基油と固体潤滑剤とを総称する意味で用いる。本発明では、潤滑剤成分(A)として、少なくとも基油(A1)を用い、また基油(A1)とともに固体潤滑剤(A2)を用いることができる。すなわち、本発明において「潤滑剤成分」とは、基油(A1)そのもの、または基油(A1)と固体潤滑剤(A2)との組合わせである。
【0017】
本発明において、潤滑剤成分(A)100質量%に対して、基油(A1)の含有量は通常30質量%以上であり、好ましくは40質量%以上である。ここで、基油(A1)と固体潤滑剤(A2)との合計が潤滑剤成分(A)100質量%である。
【0018】
潤滑油組成物として、以下の第1の態様および第2の態様が挙げられる。
【0019】
たとえば本発明の第1の態様では、潤滑剤成分(A)100質量%に対して、基油(A1)の含有量は70質量%を超え、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0020】
上記範囲で潤滑剤成分(A)として基油(A1)を用い、このような潤滑剤成分(A)とともに耐摩耗剤(B)および酸化防止剤(C)を用いることで、上記潤滑油組成物は優れた耐摩耗性および耐久性を示す。この第1の態様の潤滑油組成物は、特に時計が有する輪列部等の摺動部の潤滑用途に、好適に用いることができる。
【0021】
たとえば本発明の第2の態様では、潤滑剤成分(A)として基油(A1)とともに固体潤滑剤(A2)を用いる。潤滑剤成分(A)100質量%に対して、基油(A1)の含有量は30〜70質量%、固体潤滑剤(A2)の含有量は70〜30質量%であり、好ましくは基油(A1)の含有量は40〜60質量%、固体潤滑剤(A2)の含有量は60〜40質量%であり、より好ましくは基油(A1)の含有量は40〜52質量%、固体潤滑剤(A2)の含有量は60〜48質量%である。
【0022】
上記範囲で潤滑剤成分(A)として基油(A1)および固体潤滑剤(A2)を用い、このような潤滑剤成分(A)とともに耐摩耗剤(B)および酸化防止剤(C)を用いることで、上記潤滑油組成物は上述の優れた耐摩耗性および耐久性を有し、特に高圧がかかる箇所の潤滑剤として良好に機能する。この第2の態様の潤滑油組成物は、特に時計が有する香箱に収納されるぜんまい等の摺動部の潤滑用途に、好適に用いることができる。
【0023】
第2の態様の潤滑油組成物は、低温特性の観点から、増ちょう剤を含まないことが好ましい。前記増ちょう剤は、グリースの基本成分として知られている成分である。
【0024】
第2の態様の潤滑油組成物は、常温において、基油、増ちょう剤および添加剤を含む従来のグリースと同程度の流動性を有することができるが、従来のグリースと異なり、増ちょう剤を含む必要がない。このため第2の態様の潤滑油組成物は、低温環境下(例えば−30℃)においても固化することがない。すなわち、第2の態様の潤滑油組成物は、従来のグリースと同様の用途に使用することができ、かつ低温特性に優れている。
【0025】
《基油(A1)》
本発明に用いる基油(A1)は、ポリオールエステル(A−1)、炭素原子数25以上のパラフィン系炭化水素油(A−2)およびエーテル油(A−3)から選ばれる少なくとも一種である。
【0026】
ポリオールエステル(A−1)
ポリオールエステル(A−1)は、具体的には、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールに、1種ないし複数種の一塩基酸や酸塩化物を反応させて得られる構造のエステルである。
【0027】
ポリオールとしては、たとえばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0028】
一塩基酸としては、たとえば酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ピバル酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の飽和脂肪族カルボン酸;ステアリン酸、アクリル酸、プロピオル酸、クロトン酸、オレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸、ケイ皮酸、シクロヘキサンカルボン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、2−フル酸、1−ピオールカルボン酸、マロン酸モノエチル、フタル酸水素エチル等の環式カルボン酸などが挙げられる。
【0029】
酸塩化物としては、たとえば上記一塩基酸の塩化物などの塩が挙げられる。
【0030】
これらの生成物としては、たとえばネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル、トリメチロールプロパン・吉草酸ヘプタン酸混合エステル、トリメチロールプロパン・デカン酸オクタン酸混合エステル、ノナン酸トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール・ヘプタン酸カプリン酸混合エステルなどが挙げられる。
【0031】
ポリオールエステル(A−1)としては、水酸基数が3個以下のポリオールエステルが好ましく、分枝末端に水酸基を全く有しない完全エステルがより好ましい。
【0032】
また、ポリオールエステル(A−1)の動粘度は、−30℃で3000cSt以下であることが好ましく、−30℃で1500cSt以下であることがより好ましい。
【0033】
パラフィン系炭化水素油(A−2)
パラフィン系炭化水素油(A−2)は、炭素原子数が25以上、好ましくは30〜50のα−オレフィン重合体からなる。ここで、パラフィン系炭化水素油(A−2)の炭素原子数は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により数平均分子量を測定し、その測定値から計算して求めることができる。
【0034】
炭素原子数25以上のα−オレフィン重合体は、エチレンおよび炭素原子数3〜18のα−オレフィンから選ばれる1種以上の重合体ないし共重合体であって、炭素原子数が25以上となっているものであり、具体的には、1−デセンの3量体、1−ウンデセンの3単量体、1−ドデセンの3量体、1−トリデセンの3量体、1−テトラデセンの3量体、1−ヘキセンと1−ペンテンとの共重合体などが挙げられる。
【0035】
また、パラフィン系炭化水素油(A−2)の動粘度は、−30℃で3000cSt以下であることが好ましく、−30℃で1500cSt以下であることがより好ましい。
【0036】
このようなパラフィン系炭化水素油(A−2)としては、シェブロンフィリップス社製、エクソンモービルケミカル社製、イネオスオリゴーマーズ社製、ケムチュラ社製または出光興産(株)製の製品が挙げられる。
【0037】
エーテル油(A−3)
エーテル油(A−3)としては、下記一般式(a−3)で表わされるエーテル油が好ましい。このようなエーテル油は、分子末端に水酸基を有しないので、耐吸湿性に優れている。
【0038】
R
a31−(−O−R
a33−)
n−R
a32 (a−3)
式(a−3)中、R
a31およびR
a32は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18の1価の芳香族炭化水素基である。
【0039】
炭素原子数1〜18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0040】
炭素原子数6〜18の1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルエチル基、1−メチル−1−フェニルエチル基などが挙げられる。
【0041】
R
a33は、炭素原子数1〜18のアルキレン基または炭素原子数6〜18の2価の芳香族炭化水素基である。
【0042】
炭素原子数1〜18のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
【0043】
炭素原子数6〜18の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、1,2−ナフチレン基などが挙げられる。
【0045】
本発明に用いる基油(A1)は、ポリオールエステル(A−1)を1種用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。炭素原子数25以上のパラフィン系炭化水素油(A−2)、エーテル油(A−3)についても同様である。また、ポリオールエステル(A−1)と炭素原子数25以上のパラフィン系炭化水素油(A−2)とを、それぞれ1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。炭素原子数25以上のパラフィン系炭化水素油(A−2)とエーテル油(A−3)とについて、ポリオールエステル(A−1)とエーテル油(A−3)とについても同様である。さらに、ポリオールエステル(A−1)と炭素原子数25以上のパラフィン系炭化水素油(A−2)とエーテル油(A−3)とを、それぞれ1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0046】
摺動部近くにプラスチック製部材が使用されているときなど、潤滑油組成物について高い安定性が求められる場合は、炭素原子数25以上のパラフィン系炭化水素油(A−2)がより好適に用いられる。相溶性は、パラフィン系炭化水素油(A−2)、エーテル油(A−3)、ポリオールエステル(A−1)の順で高くなるため、潤滑油組成物に用いる成分によっては、これら基油を適宜混合することにより、上記成分の溶解性や潤滑油組成物の低温動作性をコントロールしてもよい。
【0047】
《固体潤滑剤(A2)》
固体潤滑剤(A2)とは、固体状態にて摺動抵抗を低減することが可能な物質である。固体潤滑剤(A2)は例えば粉末状であるため、固体潤滑剤(A2)を含む潤滑油組成物が低温環境下(例えば−30℃)に置かれた場合でも該組成物は固化することが防止され、一定の流動性を有する。
【0048】
したがって、基油(A1)および固体潤滑剤(A2)を含む潤滑油組成物は、常温のみならず低温での使用においても、従来のグリースが適用されてきた用途に使用可能である。特に、前記潤滑油組成物は、時計内の摺動部(例:香箱内のぜんまい)に好ましく適用することができる。
【0049】
固体潤滑剤(A2)としては、たとえば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン等の遷移金属硫化物;有機モリブデン化合物;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等のフッ素系樹脂;グラファイト、六方晶ボロンナイトライド、合成マイカ、タルク等の無機固体潤滑剤が挙げられる。
【0050】
これらの中でも、フッ素系樹脂、遷移金属硫化物およびグラファイトが好ましく、PTFE、二硫化モリブデンおよびグラファイトがより好ましく、色調および潤滑特性のバランスの点でPTFEが特に好ましい。
【0051】
固体潤滑剤(A2)の平均粒子径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.1〜5μmである。平均粒子径が前記範囲にあると、固体潤滑剤(A2)の分散性、非沈降性および潤滑特性の点で好ましい。平均粒子径は、たとえばレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0052】
<酸化防止剤(C)>
本発明に用いる酸化防止剤(C)は、アミン系酸化防止剤であり、下記一般式(c−1)で表わされるジフェニルアミン誘導体(C−1)および下記一般式(c−2)で表わされるヒンダードアミン化合物(C−2)を含む。
【0053】
機械式時計の摺動部では、3800N/mm
2以上の高圧がかかる箇所があり、この摺動部に従来の潤滑油組成物を用いると、摩耗粉や錆のような析出物が生成して、摺動部は茶褐色に変色することがある。これは、従来の潤滑油組成物が、耐圧力が低いクォーツ式時計に合わせこんで製造されていることによると考えられる。また、材質がりん青銅などであるクォーツ式時計とは異なり、機械式時計では材質が鉄系材料であることにも起因すると考えられる。
【0054】
一方、本発明に係る時計用の潤滑油組成物では、特定の酸化防止剤(C)を用いているため、時計用の潤滑油組成物の耐久性が改善できる。すなわち、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部に上記潤滑油組成物を用いて時計を動作させた場合も、摩耗粉や錆のような析出物の生成が抑えられ、摺動部の変色も起こり難くなる。このように、上記潤滑油組成物によれば摺動部に高圧がかかる機械式時計であっても良好に潤滑できる。これは、酸化防止剤は、一般に摺動時に潤滑油組成物中に発生する活性種を無害化する働きを有するが、ジフェニルアミン誘導体(C−1)とヒンダードアミン化合物(C−2)とを組み合わせると、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部において発生する活性種があっても長期に渡って無害化できるようになるためと考えられる。
【0056】
式(c−1)中、R
c11およびR
c12は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0057】
炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基などが挙げられる。
【0058】
pおよびqは、それぞれ独立に、0〜5の整数、好ましくは0〜3の整数を表す。ただし、pおよびqは、同時に0を表さない。
【0059】
上記ジフェニルアミン誘導体は、たとえばジフェニルアミンと、炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を置換基として導入させるための化合物(エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、2−ブテン、2−メチルプロペン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,4,4−トリメチルペンテンなどの二重結合を有する化合物)との反応により得られる。
【0061】
式(c−2)中、R
c21およびR
c22は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
【0062】
炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0063】
炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基などの直鎖もしくは分枝状のアルキル基が好適に用いられる。これらのうちで、耐久性の向上の観点から炭素原子数5〜10の直鎖もしくは分枝状のアルキル基がより好ましい。
【0064】
R
c23は、炭素原子数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0065】
炭素原子数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−ヘプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9−ノニレン基、1,10−デシレン基、3−メチル−1,5−ペンチレン基などの2価の直鎖もしくは分枝状のアルキレン基が好適に用いられる。これらのうちで、耐久性の向上の観点から炭素原子数5〜10の2価の直鎖もしくは分枝状のアルキレン基がより好ましい。
【0066】
特に、高温における耐久性の向上の観点から、上記の内でR
c21、R
c22およびR
c23の炭素原子数の和が16〜30であることがより好ましい。
【0067】
本発明に用いる酸化防止剤(C)としては、ジフェニルアミン誘導体(C−1)とヒンダードアミン化合物(C−2)とを、それぞれ1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0068】
酸化防止剤(C)は潤滑剤成分(A)100質量部に対して合計で0.01〜3質量部の量で含まれる。ジフェニルアミン誘導体(C−1)とヒンダードアミン化合物(C−2)とを、潤滑剤成分(A)100質量部に対してそれぞれ0.01〜1.5質量部の量で含むことが好ましい。耐久性の向上の観点から上記の割合で含まれていることが好ましい。
【0069】
<その他の酸化防止剤(C')>
本発明に係る時計用の潤滑油組成物は、その他の酸化防止剤(C')をさらに含んでいてもよい。
【0070】
その他の酸化防止剤(C')としては、フェノール系酸化防止剤が挙げられ、該フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノールが挙げられる。
【0071】
その他の酸化防止剤(C')は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0072】
その他の酸化防止剤(C')は潤滑剤成分(A)100質量部に対して0.01〜3質量部の量で含まれることが好ましい。
【0073】
<耐摩耗剤(B)>
本発明に用いる耐摩耗剤(B)は、中性リン酸エステルおよび中性亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも一種である。
【0074】
中性リン酸エステルとしては、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリメチロールプロパンフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリス(ノニルフェニル)フォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリス(トリデシル)フォスフェート、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスフェート、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスフェート、テトラ(トリデシル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルフォスフェート、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジフォスフェート、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスフェート、トリステアリルフォスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスフェート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスフェートポリマーなどが挙げられる。
【0075】
中性亜リン酸エステルとしては、トリオレイルフォスファイト、トリオクチルフォスファイト、トリメチロールプロパンフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルフォスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリステアリルフォスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマーなどが挙げられる。
【0076】
この他、中性リン酸エステルとして、下記一般式(b−1)で表わされる中性リン酸エステル(B−1)や、中性亜リン酸エステルとして、下記一般式(b−2)で表わされる中性亜リン酸エステル(B−2)も好適に用いられる。
【0077】
このような特定の中性リン酸エステル(B−1)や中性亜リン酸エステル(B−2)を用いた場合は、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部に上記潤滑油組成物を用いて時計を動作させた場合も、摩耗粉や錆のような析出物の生成がさらに抑えられ、摺動部の変色もさらに起こり難くなり、耐摩耗性および極圧性が改善できる。
【0079】
式(b−1)中、R
b11〜R
b14は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表す。
【0080】
炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)などの直鎖状のアルキル基が好適に用いられる。
【0081】
R
b15〜R
b18は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0082】
炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
【0083】
中性リン酸エステル(B−1)は、R
b15〜R
b18に特定の置換基を有しているため、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部に潤滑油組成物を用いた場合も、耐摩耗性および極圧性が改善できる。これは、R
b15〜R
b18に特定の置換基を有していると、摺動部に付着させた潤滑油組成物の膜が強固になるためであると考えられる。
【0084】
特に、R
b15およびR
b17が炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3の直鎖状のアルキル基であり、R
b16およびR
b18が炭素原子数3〜6、好ましくは3〜4の分枝状のアルキル基であると、上述した耐摩耗性および極圧性の改善の効果がより高まる。
【0085】
R
b191およびR
b192は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0086】
炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
【0087】
ただし、R
b191およびR
b192の炭素原子数の合計は、1〜5である。したがって、たとえばR
b191が水素原子のときは、R
b192は炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、R
b191がメチル基のときは、R
b192は炭素原子数1〜4の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、R
b191がエチル基のときは、R
b192は炭素原子数2〜3の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。
【0088】
特に、潤滑油組成物の膜がより強固になるため、R
b191が水素原子であり、R
b192が炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であることがより好ましい。
【0090】
式(b−2)中、R
b21〜R
b24は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表す。
【0091】
炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)などの直鎖状のアルキル基が好適に用いられる。
【0092】
R
b25〜R
b28は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0093】
炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
【0094】
中性亜リン酸エステル(B−2)は、R
b25〜R
b28に特定の置換基を有しているため、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部に潤滑油組成物を用いた場合も、耐摩耗性および極圧性が改善できる。これは、R
b25〜R
b28に特定の置換基を有していると、摺動部に付着させた潤滑油組成物の膜が強固になるためであると考えられる。
【0095】
特に、R
b25およびR
b27が炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3の直鎖状のアルキル基であり、R
b26およびR
b28が炭素原子数3〜6、好ましくは3〜4の分枝状のアルキル基であると、上述した耐摩耗性および極圧性の改善の効果がより高まる。
【0096】
R
b291およびR
b292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0097】
炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
【0098】
ただし、R
b291およびR
b292の炭素原子数の合計は、1〜5である。したがって、たとえばR
b291が水素原子のときは、R
b292は炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、R
b291がメチル基のときは、R
b292は炭素原子数1〜4の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、R
b291がエチル基のときは、R
b292は炭素原子数2〜3の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。
【0099】
特に、潤滑油組成物の膜がより強固になるため、R
b291が水素原子であり、R
b292が炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であることがより好ましい。
【0100】
潤滑油組成物に使用する場合に構造安定性がより高いと考えられるため、中性亜リン酸エステル(B−2)がさらに好適に用いられる。
【0101】
本発明に用いる耐摩耗剤(B)は、中性リン酸エステルを1種用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。中性亜リン酸エステルについても同様である。また、中性リン酸エステルと中性亜リン酸エステルとを、それぞれ1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0102】
耐摩耗剤(B)は潤滑剤成分(A)100質量部に対して0.1〜15質量部の量で含まれ、好ましくは0.1〜8質量部の量で含まれる。耐摩耗性および極圧性の向上の観点から上記の割合で含まれていることが好ましい。
【0103】
<粘度指数向上剤(D)>
本発明に係る時計用の潤滑油組成物は、粘度指数向上剤(D)をさらに含んでいてもよい。粘度指数向上剤(D)を含んでいると、時計をより正常に動作させることができる。
【0104】
粘度指数向上剤(D)としては、従来公知のものを用いることができ、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、ポリエステル、イソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステル、α−オレフィン共重合体、ポリブタジエン・スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート・ビニルピロリドン共重合体、エチレン・アルキルアクリレート共重合体が挙げられる。
【0105】
ポリアクリレート、ポリメタクリレートとしては、アクリル酸、メタクリル酸の重合物や、それぞれ炭素原子数1〜10のアルキルエステルのポリマーを使用することができる。中でも、メタクリル酸メチルを重合させたポリメタクリレートが好ましい。
【0106】
ポリイソブチレンは、GPCで測定した数平均分子量(Mn)が3000〜80000であることが好ましく、潤滑性の観点から3000〜50000がより好ましい。
【0107】
ポリアルキルスチレンとしては、具体的には、ポリα−メチルスチレン、ポリβ−メチルスチレン、ポリα−エチルスチレン、ポリβ−エチルスチレン等の炭素原子数1〜18の置換基を有するモノアルキルスチレンのポリマーなどが挙げられる。
【0108】
ポリエステルとしては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジペンタエリスリトール等の炭素原子数1〜10の多価アルコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、フタル酸等の多塩基酸とから得られるポリエステルなどが挙げられる。
【0109】
α−オレフィン共重合体としては、具体的には、エチレンから誘導される繰り返し構成単位とイソプロピレンから誘導される繰り返し構成単位とからなるエチレン・プロピレン共重合体、同様に、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン等の炭素原子数2〜18のα−オレフィンを共重合して得られる反応生成物などが挙げられる。
【0110】
粘度指数向上剤(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0111】
粘度指数向上剤(D)は潤滑剤成分(A)100質量部に対して0.1〜8質量部の量で含まれることが好ましい。潤滑性の向上の観点から上記の割合で含まれていることが好ましい。
【0112】
<金属不活性剤(E)>
本発明に係る時計用の潤滑油組成物は、金属不活性剤(E)をさらに含んでいてもよい。金属不活性剤(E)を含んでいると、金属の腐食をより抑えることができる。
【0113】
金属不活性剤(E)としては、金属の腐食を抑える観点から、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体が好ましい。
【0114】
ベンゾトリアゾール誘導体としては、具体的には、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、下式に示される構造でR、R'、R"が炭素原子数1〜18のアルキル基である化合物たとえば1−(N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0116】
金属不活性剤(E)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0117】
金属不活性剤(E)は潤滑剤成分(A)100質量部に対して0.01〜3質量部の量で含まれることが好ましい。腐食防止の観点から上記の割合で含まれていることが好ましい。
【0118】
[時計]
本発明に係る時計は、上述した時計用の潤滑油組成物が、たとえば輪列部や、香箱に収納されるぜんまい等の摺動部に付着している。摺動時に大きな圧力がかかる摺動部を有している時計であることが好ましい。このような摺動部としては、機械式時計の摺動部の他、モーター数が多い等のデザインを有する電子式時計の摺動部がある。本発明に係る時計は、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部を有していても、上述した時計用の潤滑油組成物が付着しているため、動作時に摩耗粉や錆のような析出物の生成が抑えられ、摺動部の変色も起こり難く、長期に渡って安定して動作できる。
【0120】
[1] ポリオールエステル(A−1)、炭素原子数25以上のパラフィン系炭化水素油(A−2)およびエーテル油(A−3)から選ばれる少なくとも一種の基油(A1)を含む潤滑剤成分(A)と、中性リン酸エステルおよび中性亜リン酸エステルから選ばれる少なくとも一種の耐摩耗剤(B)と、酸化防止剤(C)とを含む潤滑油組成物であって、
該組成物の全酸価は0.8mgKOH/g以下であり、
耐摩耗剤(B)は潤滑剤成分(A)100質量部に対して0.1〜15質量部の量で含まれ、酸化防止剤(C)は潤滑剤成分(A)100質量部に対して0.01〜3質量部の量で含まれており、
酸化防止剤(C)として、下記一般式(c−1)で表わされるジフェニルアミン誘導体(C−1)および下記一般式(c−2)で表わされるヒンダードアミン化合物(C−2)を含むことを特徴とする時計用の潤滑油組成物。
【0122】
(式(c−1)中、R
c11およびR
c12は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、pおよびqは、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。ただし、pおよびqは、同時に0を表さない。)
【0124】
(式(c−2)中、R
c21およびR
c22は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基を表し、R
c23は、炭素原子数1〜10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
上記時計用の潤滑油組成物は、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部に用いて時計を動作させた場合も、摩耗粉や錆のような析出物の生成が抑えられ、摺動部の変色も起こり難い。すなわち、上記潤滑油組成物によれば摺動部に高圧がかかる機械式時計などであっても良好に潤滑できる。
【0125】
[2] ポリオールエステル(A−1)が、分子末端に水酸基を全く有しないポリオールエステルであることを特徴とする[1]に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0126】
[3] エーテル油(A−3)が、下記一般式(a−3)で表わされることを特徴とする[1]または[2]に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0127】
R
a31−(−O−R
a33−)
n−R
a32 (a−3)
(式(a−3)中、R
a31およびR
a32は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜18のアルキル基または炭素原子数6〜18の1価の芳香族炭化水素基であり、R
a33は、炭素原子数1〜18のアルキレン基または炭素原子数6〜18の2価の芳香族炭化水素基であり、nは、1〜5の整数である。)
[4] 中性リン酸エステルが下記一般式(b−1)で表わされる中性リン酸エステル(B−1)であり、中性亜リン酸エステルが下記一般式(b−2)で表わされる中性亜リン酸エステル(B−2)であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の時計用の潤滑油組成物。
【0129】
(式(b−1)中、R
b11〜R
b14は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表し、R
b15〜R
b18は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b191およびR
b192は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b191およびR
b192の炭素原子数の合計は、1〜5である。)
【0131】
(式(b−2)中、R
b21〜R
b24は、それぞれ独立に、炭素原子数10〜16の脂肪族炭化水素基を表し、R
b25〜R
b28は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b291およびR
b292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b291およびR
b292の炭素原子数の合計は、1〜5である。)
中性リン酸エステル(B−1)や中性亜リン酸エステル(B−2)を用いた場合は、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部に上記潤滑油組成物を用いて時計を動作させた場合も、摩耗粉や錆のような析出物の生成がさらに抑えられ、摺動部の変色もさらに起こり難くなり、耐摩耗性および極圧性が改善できる。
【0132】
[5] 潤滑剤成分(A)の30質量%以上が基油(A1)であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0133】
[6] 潤滑剤成分(A)が、基油(A1)のみからなることを特徴とする[5]に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0134】
[7] 潤滑剤成分(A)が、基油(A1)と固体潤滑剤(A2)とからなることを特徴とする[5]に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0135】
[8] 潤滑剤成分(A)100質量%に対して、基油(
A1)の含有量が30〜70質量%であり、固体潤滑剤(
A2)の含有量が70〜30質量%であることを特徴とする[7]に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0136】
[9] 粘度指数向上剤(D)をさらに含むことを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の時計用の潤滑油組成物。
【0137】
[10] 粘度指数向上剤(D)が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、ポリエステル、イソブチレンフマレート、スチレンマレエートエステル、酢酸ビニルフマレートエステルおよびα−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[9]に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0138】
粘度指数向上剤(D)を含んでいると、時計をより正常に動作させることができる。
【0139】
[11] 金属不活性剤(E)をさらに含むことを特徴とする[1]〜[10]のいずれか1項に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0140】
金属不活性剤(E)を含んでいると、金属の腐食をより抑えることができる。
【0141】
[12] 金属不活性剤(E)が、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体であることを特徴とする[11]に記載の時計用の潤滑油組成物。
【0142】
ベンゾトリアゾールまたはその誘導体を用いると、金属の腐食をさらに抑えられる。
【0143】
[13] [1]〜[12]のいずれかに記載の時計用の潤滑油組成物が摺動部に付着している時計。
【0144】
上記時計は、摺動時に大きな圧力がかかる摺動部を有していても、上述した時計用の潤滑油組成物が付着しているため、動作時に摩耗粉や錆のような析出物の生成が抑えられ、摺動部の変色も起こり難く、長期に渡って安定して動作できる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り「部」は「質量部」を表す。
【0146】
<時計用の潤滑油組成物の作製1>
以下の具体例では、潤滑剤成分(A)として基油(A1)を用いた。
【0147】
[実施例1−1−1]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリクレジルフォスフェート5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0148】
なお、上記基油は−30℃での動粘度が2000cSt未満であり、炭素原子数は30であった。
【0149】
[実施例1−1−2]
耐摩耗剤(B)の量を0.1部としたほかは、実施例1−1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0150】
[実施例1−1−3]
耐摩耗剤(B)の量を8部としたほかは、実施例1−1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0151】
[実施例1−1−4]
ジフェニルアミン誘導体(C−1)の量を0.01部とし、ヒンダードアミン化合物(C−2)の量を0.01部としたほかは、実施例1−1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0152】
[実施例1−1−5]
ジフェニルアミン誘導体(C−1)の量を1.5部とし、ヒンダードアミン化合物(C−2)の量を1.5部としたほかは、実施例1−1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0153】
[実施例1−2−1〜1−2−6]
ヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)(R
c21、R
c22=n−オクチル基、R
c23=1,8−オクチレン基)の代わりに、表1の化合物を用いたほかは、実施例1−1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0154】
【表1】
【0155】
[実施例1−3−1〜1−3−4]
ジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物の代わりに、表2の化合物を用いたほかは、実施例1−1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0156】
【表2】
【0157】
[実施例1−4−1]
耐摩耗剤(B)としてトリクレジルファオスフェートの代わりに、中性リン酸エステル(B−1)の4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル ジトリデシルフォスフェート)を用いたほかは、実施例1−1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0158】
[実施例1−4−2]
中性リン酸エステル(B−1)の量を0.1部としたほかは、実施例1−4−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0159】
[実施例1−4−3]
中性リン酸エステル(B−1)の量を8部としたほかは、実施例1−4−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0160】
[実施例1−5−1〜1−5−6]
中性リン酸エステル(B−1)として4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル ジトリデシルフォスフェート)(R
b11〜R
b14=トリデシル基、R
b15、R
b17=メチル基、R
b16、R
b18=t−ブチル基、R
b191=水素原子、R
b192=n−プロピル基)の代わりに、表3の化合物を用いたほかは、実施例1−4−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0161】
【表3】
【0162】
[実施例1−6−1]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリオレイルフォスファイト5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0163】
なお、上記基油は−30℃での動粘度が2000cSt未満であり、炭素原子数は30であった。
【0164】
[実施例1−6−2]
耐摩耗剤(B)の量を0.1部としたほかは、実施例1−6−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0165】
[実施例1−6−3]
耐摩耗剤(B)の量を8部としたほかは、実施例1−6−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0166】
[実施例1−6−4]
ジフェニルアミン誘導体(C−1)の量を0.01部とし、ヒンダードアミン化合物(C−2)の量を0.01部としたほかは、実施例1−6−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0167】
[実施例1−6−5]
ジフェニルアミン誘導体(C−1)の量を1.5部とし、ヒンダードアミン化合物(C−2)の量を1.5部としたほかは、実施例1−6−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0168】
[実施例1−7−1〜1−7−6]
ヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)(R
c21、R
c22=n−オクチル基、R
c23=1,8−オクチレン基)の代わりに、表4の化合物を用いたほかは、実施例1−6−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0169】
【表4】
【0170】
[実施例1−8−1〜1−8−4]
ジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物の代わりに、表5の化合物を用いたほかは、実施例1−6−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0171】
【表5】
【0172】
[実施例1−9−1]
耐摩耗剤(B)としてトリオレイルフォスファイトの代わりに、中性亜リン酸エステル(B−2)の4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)を用いたほかは、実施例1−6−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0173】
[実施例1−9−2]
中性亜リン酸エステル(B−2)の量を0.1部としたほかは、実施例1−9−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0174】
[実施例1−9−3]
中性亜リン酸エステル(B−2)の量を8部としたほかは、実施例1−9−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0175】
[実施例1−10−1〜1−10−6]
中性亜リン酸エステル(B−2)として4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)(R
b21〜R
b24=トリデシル基、R
b25、R
b27=メチル基、R
b26、R
b28=t−ブチル基、R
b291=水素原子、R
b292=n−プロピル基)の代わりに、表6の化合物を用いたほかは、実施例1−9−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0176】
【表6】
【0177】
[実施例1−11]
実施例1−1−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに粘度指数向上剤(D)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0178】
具体的には、基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリクレジルフォスフェート5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、粘度指数向上剤(D)としてポリイソブチレン5部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0179】
なお、上記基油は−30℃での動粘度が2000cSt未満であり、炭素原子数は30であった。また、ポリイソブチレンはGPCで測定した数平均分子量が3700であった。
【0180】
[実施例1−12]
実施例1−6−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに粘度指数向上剤(D)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0181】
具体的には、基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリオレイルフォスファイト5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、粘度指数向上剤(D)としてポリイソブチレン5部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0182】
なお、上記基油は−30℃での動粘度が2000cSt未満であり、炭素原子数は30であった。また、ポリイソブチレンはGPCで測定した数平均分子量が3700であった。
【0183】
[実施例1−13]
実施例1−1−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに金属不活性剤(E)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0184】
具体的には、基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリクレジルフォスフェート5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、金属不活性剤(E)としてベンゾトリアゾール0.05部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0185】
なお、上記基油は−30℃での動粘度が2000cSt未満であり、炭素原子数は30であった。
【0186】
[実施例1−14]
実施例1−6−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに金属不活性剤(E)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0187】
具体的には、基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリオレイルフォスファイト5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、金属不活性剤(E)としてベンゾトリアゾール0.05部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0188】
なお、上記基油は−30℃での動粘度が2000cSt未満であり、炭素原子数は30であった。
【0189】
[実施例2−1−1〜2−1−5]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−1−1〜1−1−5と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0190】
[実施例2−2−1〜2−2−6]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−2−1〜1−2−6と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0191】
[実施例2−3−1〜2−3−4]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−3−1〜1−3−4と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0192】
[実施例2−4−1〜2−4−3]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−4−1〜1−4−3と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0193】
[実施例2−5−1〜2−5−6]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−5−1〜1−5−6と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0194】
[実施例2−6−1〜2−6−5]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−6−1〜1−6−5と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0195】
[実施例2−7−1〜2−7−6]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−7−1〜1−7−6と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0196】
[実施例2−8−1〜2−8−4]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−8−1〜1−8−4と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0197】
[実施例2−9−1〜2−9−3]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−9−1〜1−9−3と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0198】
[実施例2−10−1〜2−10−6]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、それぞれ実施例1−10−1〜1−10−6と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0199】
[実施例2−11]
実施例2−1−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに粘度指数向上剤(D)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0200】
具体的には、基油(A1)のポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリクレジルフォスフェート5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、粘度指数向上剤(D)としてポリイソブチレン5部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0201】
なお、ポリイソブチレンはGPCで測定した数平均分子量が3700であった。
【0202】
[実施例2−12]
実施例2−6−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに粘度指数向上剤(D)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0203】
具体的には、基油(A1)のポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリオレイルフォスファイト5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、粘度指数向上剤(D)としてポリイソブチレン5部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0204】
なお、ポリイソブチレンはGPCで測定した数平均分子量が3700であった。
【0205】
[実施例2−13]
実施例2−1−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに金属不活性剤(E)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0206】
具体的には、基油(A1)のポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリクレジルフォスフェート5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、金属不活性剤(E)としてベンゾトリアゾール0.05部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0207】
[実施例2−14]
実施例2−6−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに金属不活性剤(E)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0208】
具体的には、基油(A1)のポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリオレイルフォスファイト5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、金属不活性剤(E)としてベンゾトリアゾール0.05部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0209】
[実施例3−1−1〜3−1−5]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−1−1〜1−1−5と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0210】
[実施例3−2−1〜3−2−6]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−2−1〜1−2−6と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0211】
[実施例3−3−1〜3−3−4]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−3−1〜1−3−4と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0212】
[実施例3−4−1〜3−4−3]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−4−1〜1−4−3と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0213】
[実施例3−5−1〜3−5−6]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−5−1〜1−5−6と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0214】
[実施例3−6−1〜3−6−5]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−6−1〜1−6−5と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0215】
[実施例3−7−1〜3−7−6]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−7−1〜1−7−6と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0216】
[実施例3−8−1〜3−8−4]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−8−1〜1−8−4と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0217】
[実施例3−9−1〜3−9−3]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−9−1〜1−9−3と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0218】
[実施例3−10−1〜3−10−6]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、それぞれ実施例1−10−1〜1−10−6と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0219】
[実施例3−11]
実施例3−1−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに粘度指数向上剤(D)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0220】
具体的には、基油(A1)のエーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリクレジルフォスフェート5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、粘度指数向上剤(D)としてポリイソブチレン5部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0221】
なお、ポリイソブチレンはGPCで測定した数平均分子量が3700であった。
【0222】
[実施例3−12]
実施例3−6−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに粘度指数向上剤(D)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0223】
具体的には、基油(A1)のエーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリオレイルフォスファイト5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、粘度指数向上剤(D)としてポリイソブチレン5部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0224】
なお、ポリイソブチレンはGPCで測定した数平均分子量が3700であった。
【0225】
[実施例3−13]
実施例3−1−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに金属不活性剤(E)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0226】
具体的には、基油(A1)のエーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリクレジルフォスフェート5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、金属不活性剤(E)としてベンゾトリアゾール0.05部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0227】
[実施例3−14]
実施例3−6−1の時計用の潤滑油組成物に対して、さらに金属不活性剤(E)を用いた時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0228】
具体的には、基油(A1)のエーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用い、この基油100部に、耐摩耗剤(B)としてトリオレイルフォスファイト5部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、金属不活性剤(E)としてベンゾトリアゾール0.05部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0229】
[比較例1−1]
酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部の代わりに、ジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)1部のみを用いたほかは、実施例1−1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0230】
[比較例1−2]
酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)0.5部およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部の代わりに、ジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)1部のみを用いたほかは、実施例1−6−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0231】
[比較例2−1]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、比較例1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0232】
[比較例2−2]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、ポリオールエステル(A−1)としてネオペンチルグリコール・カプリル酸カプリン酸混合エステル(−30℃での動粘度=2000cSt未満)を用いたほかは、比較例1−2と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0233】
[比較例3−1]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、比較例1−1と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0234】
[比較例3−2]
基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体の代わりに、エーテル油(A−3)としてアルキル置換ジフェニルエーテル(商品名 モレスコハイルーブLB32、(株)松村石油研究所製)を用いたほかは、比較例1−2と同様にして時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0235】
<時計動作試験1の方法>
[時計動作試験(1)]
機械式時計であるシチズン時計(株)製の時計ムーブメント
TM(No.9015)について、摺動部である輪列部(Fe系合金製)に調製した時計用の潤滑油組成物を付着させた。−30℃、−10℃、常温(25℃)、80℃、45℃湿度95%の条件でそれぞれ1000時間連続動作をさせ、試験前後の摺動部を観察した。具体的には、摺動部として、動作中に8700N/m
2、7960N/m
2および7465N/m
2の圧力がかかっていた箇所についてそれぞれ観察した。いずれの条件での試験もサンプル数20個で実施した。
【0236】
観察結果は後述の基準で評価した。
【0237】
[時計動作試験(2)]
機械式時計であるシチズン時計(株)製の時計ムーブメント
TM(No.9015)について、摺動部である輪列部(Fe系合金製)に調製した時計用の潤滑油組成物を付着させた。常温にて64倍の速度で20年分の針回し耐久試験を行い、試験前後の摺動部を観察した。具体的には、摺動部として、動作中に8700N/m
2、7960N/m
2および7465N/m
2の圧力がかかっていた箇所についてそれぞれ観察した。サンプル数20個で実施した。
【0238】
観察結果は後述の基準で評価した。
【0239】
[時計動作試験(3)]
機械式時計であるシチズン時計(株)製の時計ムーブメント
TM(No.9015)について、摺動部である輪列部(Cu系合金製)に調製した時計用の潤滑油組成物を付着させた。常温にて1000時間連続動作をさせ、動作前後の摺動部を観察した。具体的には、摺動部として、動作中に8700N/m
2、7960N/m
2および7465N/m
2の圧力がかかっていた箇所についてそれぞれ観察した。サンプル数20個で実施した。
【0240】
観察結果は後述の基準で評価した。
【0241】
[評価の基準]
4A:8700N/m
2、7960N/m
2および7465N/m
2の圧力がかかった箇所すべてにおいて、試験後の色の変化はなく削れた跡もみられなかった。
【0242】
3A:8700N/m
2の圧力がかかった箇所では、色の変化はないが、削れた跡が見られた。7960N/m
2および7465N/m
2の圧力がかかった箇所では、試験後の色の変化はなく削れた跡もみられなかった。
【0243】
2A:8700N/m
2および7960N/m
2の圧力がかかった箇所では、色の変化はないが、削れた跡が見られた。7465N/m
2の圧力がかかった箇所において、試験後の色の変化はなく削れた跡もみられなかった。
【0244】
A:8700N/m
2の圧力がかかった箇所では、薄い茶色に変化し、表面が削れており摩耗粉が見られた。7960N/m
2の圧力がかかった箇所では、色の変化はないが、削れた跡が見られた。7465N/m
2の圧力がかかった箇所において、試験後の色の変化はなく削れた跡もみられなかった。
【0245】
B:8700N/m
2の圧力がかかった箇所では、茶褐色に変化し、表面の削れが目立ち摩耗粉も多かった。7960N/m
2の圧力がかかった箇所では、薄い茶色に変化し、表面が削れており摩耗粉が見られた。7465N/m
2の圧力がかかった箇所では、色の変化はないが、削れた跡が見られた。
【0246】
C:8700N/m
2、7960N/m
2および7465N/m
2の圧力がかかった箇所すべてにおいて、茶褐色に変化し、表面の削れが目立ち摩耗粉も多かった。
【0247】
<時計動作試験1の結果>
上述のようにして作製した潤滑油組成物について時計動作試験1の評価結果を以下の表に示す。
【0248】
【表7】
【0249】
【表8】
【0250】
【表9】
【0251】
【表10】
【0252】
【表11】
【0253】
【表12】
【0254】
【表13】
【0255】
【表14】
【0256】
【表15】
【0257】
【表16】
【0258】
なお、上記実施例、比較例で製造した潤滑油組成物の全酸価は、いずれも0.2mgKOH/g以下であった。上記実施例、比較例での評価結果について、サンプル間での差は見られなかった。
【0259】
また、実施例1−1−1、1−6−1、1−11〜1−14において用いた耐摩耗剤(B)を、上記<耐摩耗剤(B)>にて例示した他の耐摩耗剤(B)(中性リン酸エステル(B−1)および中性亜リン酸エステル(B−2)以外の中性リン酸エステルおよび中性亜リン酸エステル)に変更した場合も、実施例1−1−1、1−6−1、1−11〜1−14と同様の評価結果が得られた。また、実施例1−1−1、1−6−1、1−11〜1−14において用いた基油(A−2)を、上記《基油(A1)》の基油(A−2)の説明中にて例示した他の基油(A−2)に変更した場合も、実施例1−1−1、1−6−1、1−11〜1−14と同様の評価結果が得られ、実施例2−1−1、2−6−1、2−11〜2−14において用いた基油(A−1)を、上記《基油(A1)》の基油(A−1)の説明中にて例示した他の基油(A−1)に変更した場合も、実施例2−1−1、2−6−1、2−11〜2−14と同様の評価結果が得られ、実施例3−1−1、3−6−1、3−11〜3−14において用いた基油(A−3)を、上記《基油(A1)》の基油(A−3)の説明中にて例示した他の基油(A−3)に変更した場合も、実施例3−1−1、3−6−1、3−11〜3−14と同様の評価結果が得られた。
【0260】
さらに、実施例1−6−1および比較例1−2については、それぞれ
図1および2に時計動作試験(1)(常温で1000時間連続動作、動作中7465N/m
2の圧力がかかっていた箇所)後の摺動部の様子を示す。実施例1−6−1では、試験後の色の変化はなく削れた跡もみられなかった。一方、比較例1−2では、摺動部に摩耗粉や錆のような析出物が生成しており、茶褐色に変色している。
【0261】
<時計用の潤滑油組成物の作製2>
以下の具体例では、潤滑剤成分(A)として基油(A1)とともに固体潤滑剤(A2)を用いた。
【0262】
[実施例4−1−1]
潤滑剤成分(A)として、基油(A1)のパラフィン系炭化水素油(A−2)として1−デセンの3量体を70質量%と、ポリテトラフルオロエチレン(シャムロック社製、平均粒子径1μm以下)を30質量%とからなる潤滑剤成分を用いた。この潤滑剤成分100部に、耐摩耗剤(B)としてトリクレジルフォスフェート5.4部と、酸化防止剤(C)のジフェニルアミン誘導体(C−1)としてジフェニルアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物(商品名 イルガノックスL57、チバスペシャリティケミカルズ(株)製)1.1部、およびヒンダードアミン化合物(C−2)としてデカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル)0.5部と、金属不活性剤(E)としてベンゾトリアゾール1.1部とを加え、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0263】
なお、上記基油は−30℃での動粘度が2000cSt未満であり、炭素原子数は30であった。このため、上記基油に各成分を添加してなる潤滑油組成物は、−30℃においても流動性を有していた。
【0264】
[実施例4−1−2〜4−1−18、5−1−1〜5−1−4、6−1−1〜6−1−6、7−1−1〜7−1−2]
実施例4−1−1において、配合組成を表17〜表19のとおりに変更したこと以外は実施例4−1−1と同様にして、時計用の潤滑油組成物を調製した。
【0265】
<時計動作試験2の方法>
[時計動作試験(4)]
機械式時計であるシチズン時計(株)製の時計ムーブメント
TM(No.82)について、摺動部である香箱内のぜんまいに、上記調製した時計用の潤滑油組成物または万能機械用グリース「オアルーブG−1/3」(日本オアルーブ社製)を付着させた。−30℃、常温(25℃)の条件でそれぞれ1000時間連続動作をさせ、試験中の出力をトルク測定器を用いて測定し、また試験前後の摺動部を観察した。いずれの条件での試験もサンプル数20個で実施した。
【0266】
観察結果は後述の基準で評価した。
【0267】
[時計動作試験(5)]
機械式時計であるシチズン時計(株)製の時計ムーブメント
TM(No.82)について、摺動部である香箱内のぜんまいに、上記調製した時計用の潤滑油組成物を付着させた。常温にて64倍の速度で20年分の針回し耐久試験を行い、試験前後の摺動部を観察した。サンプル数20個で実施した。
【0268】
観察結果は後述の基準で評価した。
【0269】
[評価の基準]
時計動作試験(4)において、常温(25℃)で、上記ぜんまいの潤滑剤として万能機械用グリース「オアルーブG−1/3」(日本オアルーブ社製)を使用した場合に比べて、出力が30%以上向上した場合を「4A」、20%以上30%未満向上した場合を「3A」、10%以上20%未満向上した場合を「2A」、0%を超えて10%未満向上した場合を「A」と評価した。ここで、「オアルーブG−1/3」を使用した場合にぜんまい巻き上げ時の力に対する発生したトルクの損失割合を基準として、実施例の潤滑油組成物を使用した場合にこの損失割合が低減された割合を出力向上割合とした。
【0270】
時計動作試験(4)において、−30℃で、上記ぜんまいの潤滑剤として万能機械用グリース「オアルーブG−1/3」(日本オアルーブ社製)を使用した場合、グリースが固化して時計ムーブメントを動作させることは出来なかった。これに対して、上記実施例の潤滑油組成物を用いた場合に時計ムーブメントを動作させることが出来た場合を「A」と評価した。
【0271】
時計動作試験(5)において、ぜんまい部において、試験後の色の変化はなく削れた跡もみられなかった場合を「2A」、色の変化はないが、削れた跡が見られた場合を「A」、薄い茶色に変化し、表面が削れており摩耗粉が見られた場合を「B」、茶褐色に変化し、表面の削れが目立ち摩耗粉も多かった場合を「C」と評価した。
【0272】
<時計動作試験(4)、(5)の結果>
上述のようにして作製した潤滑油組成物について、配合組成および時計動作試験(4)、(5)の評価結果を以下の表に示す。
【0273】
【表17】
【0274】
【表18】
【0275】
【表19】
【0276】
なお、上記実施例で製造した潤滑油組成物の全酸価は、いずれも0.2mgKOH/g以下であった。上記実施例での評価結果について、サンプル間での差は見られなかった。