特許第6041235号(P6041235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6041235
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】果梗切断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/26 20060101AFI20161128BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20161128BHJP
   A23N 15/02 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B26D3/26 602L
   B26D3/00 602A
   A23N15/02 B
   B26D3/26 602D
   B26D3/26 602E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-32804(P2016-32804)
(22)【出願日】2016年2月24日
【審査請求日】2016年3月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年10月31日 有限会社竜東スチールは本発明に係る果梗切断装置の販売を開始した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516055561
【氏名又は名称】有限会社竜東スチール
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正弘
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−098756(JP,A)
【文献】 実開昭57−001594(JP,U)
【文献】 実開昭59−083395(JP,U)
【文献】 実開平05−037095(JP,U)
【文献】 特開昭61−185231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/26
A23N 1/00 − 15/12
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実から果梗を切断する果梗切断装置であって、
開口形成された果梗取入口を上面に有する箱状のケースと、
前記ケース内に回転可能に配設されて前記果梗取入口に進入した前記果梗を切断する回転刃と、を備え、
前記果梗取入口は、前記ケースの前記上面を構成している部材の厚さよりも薄い厚さを有する別の板材に形成されており、該板材が該ケースの該上面に開口形成された板材取付用開口部を塞ぐように該ケースの内面側から固定された状態で、所定位置に設けられており、前記ケースにおける使用者に対向する前面と並行する長穴形状であること
を特徴とする果梗切断装置。
【請求項2】
前記ケースは、前記果梗取入口の周縁領域の厚さが、該周縁領域のさらに外側の領域の厚さよりも薄い形状を有すること
を特徴とする請求項1記載の果梗切断装置。
【請求項3】
前記回転刃は、盤面の上面が前記板材の下面と平行で、且つ、該盤面の該上面と該板材の該下面との隙間が1mm以下の寸法で近接する位置に配設されていること
を特徴とする請求項1または請求項2記載の果梗切断装置。
【請求項4】
果実から果梗を切断する果梗切断装置であって、
開口形成された果梗取入口を上面に有する箱状のケースと、
前記ケース内に回転可能に配設されて前記果梗取入口に進入した前記果梗を切断する回転刃と、を備え、
前記ケースは、前記上面と使用者に対向する前面との間に、所定角度の傾斜を有する傾斜面が設けられており、
前記果梗取入口は、前記ケースにおける前記前面と並行する長穴形状であること
を特徴とする果梗切断装置。
【請求項5】
前記所定角度は、前記上面と前記傾斜面との挟角αが、110°≦α≦160°となる角度であること
を特徴とする請求項記載の果梗切断装置。
【請求項6】
前記ケースは、一方の側面において前記回転刃よりも下方位置に開口形成された果梗取出口と、該ケース内で該果梗取出口に連続するように下降しながら傾斜する面である送出面と、を有すること
を特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の果梗切断装置。
【請求項7】
果実から果梗を切断する果梗切断装置であって、
開口形成された果梗取入口を上面に有する箱状のケースと、
前記ケース内に回転可能に配設されて前記果梗取入口に進入した前記果梗を切断する回転刃と、を備え、
前記ケースは、本体部と該本体部に嵌合される蓋部とを有し、
前記本体部は、該本体部に前記蓋部が嵌合された状態で該蓋部に当接して前記回転刃の駆動機構への通電回路をオンにするリミットスイッチを有すると共に、前記回転刃もしくはこれと連動する回転部材に当接可能に設けられて回転を停止させるブレーキと、該ブレーキを該回転刃もしくは該回転部材に当接させる方向に付勢する付勢部材とを有し、
前記蓋部は、前記本体部に嵌合された状態で前記付勢部材の付勢方向と逆方向に前記ブレーキを押動して該ブレーキと前記回転刃もしくは前記回転部材との当接を解除させる押動部材を有し、
前記果梗取入口は、前記ケースにおける使用者に対向する前面と並行する長穴形状であること
を特徴とする果梗切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実から果梗を切断する果梗切断装置に関し、特に、干された果実から当該果梗を切断するのに好適に用いることができる果梗切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、果実を収穫する際に、枝から切り取った時点では果実に果梗(柄、ホゾ等のように称される場合がある)が付いた状態となっている。したがって、生鮮果実もしくは干された果実(ドライフルーツ)として出荷する前に、果梗を切断して果実から除去する作業が行わることがある。
【0003】
ここで、上記の作業を実施するに際して、特許文献1には、果実の果梗を切断するための切断装置が提案されている。また、特許文献2には、特に用途が干し柿に限定された果梗の切断装置が提案されている。これらの装置によれば、従来、作業者がニッパやハサミを用いて切断していた手作業と比較して、作業効率および安全性の向上が図れるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実全昭57−001594号公報
【特許文献2】特開平09−098756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に例示されるような従来の果梗切断装置は、エンドレスベルトに果実を載置して移動させ、回転刃で果梗を切断するような、いわゆる、自動搬送・自動切断による切断装置である。したがって、従来の手作業に比べて作業効率が向上する反面、特に干し柿等のように、干される工程を経て果肉・果梗・ガク片(ヘタ等のように称される場合がある)のそれぞれが多様に変形を生じている果実の場合には、全ての個体において果梗を一様に商品として適切な位置で切断することが困難であるという課題が生じ得る。
【0006】
この点、特許文献2に例示されるような従来の果梗切断装置は、人手によって果実(干し柿)の果梗を切断用の開口部に進入させる構成であるため、上記特許文献1の装置よりも、果梗を商品として適切な位置で切断し易くなると思われる。その一方で、切断用のカッターとして対向する二枚刃を備え、果梗を挟んで切断する構成であるため、回転刃を用いる構成と比較して一回の切断に要する作業時間が長くなり作業効率が低下してしまうことや、刃の切れ味がすぐに低下してしまうこと、さらに、刃の交換・位置調整に手間がかかってしまうこと、等の課題が生じ得る。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、特に、干された果実のように果肉・果梗・ガク片のそれぞれが多様に変形を生じている果実であっても、全ての個体において果梗を一様に商品として適切な位置で切断することが可能で、且つ、切断の作業効率が向上できる果梗切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
【0009】
本発明に係る果梗切断装置は、果実から果梗を切断する果梗切断装置であって、開口形成された果梗取入口を上面に有する箱状のケースと、前記ケース内に回転可能に配設されて前記果梗取入口に進入した前記果梗を切断する回転刃と、を備え、前記果梗取入口は、前記ケースの前記上面を構成している部材の厚さよりも薄い厚さを有する別の板材に形成されており、該板材が該ケースの該上面に開口形成された板材取付用開口部を塞ぐように該ケースの内面側から固定された状態で、所定位置に設けられており、前記ケースにおける使用者に対向する前面と並行する長穴形状であることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特に、干された果実のように果肉・果梗・ガク片のそれぞれが多様に変形を生じている果実であっても、全ての個体において果梗を一様に商品として適切な位置で切断することできる。また、切断の作業効率を向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る果梗切断装置の例を示す概略図である。
図2図1に示す果梗切断装置の本体部の例を示す概略図である。
図3図2におけるX部拡大図である。
図4図1に示す果梗切断装置の蓋部の例を示す概略図である。
図5図1の果梗切断装置の切断対象の果実(干し柿)の例を示す概略図である。
図6図1の果梗切断装置を用いて果実を切断する動作を説明する説明図である。
図7図1に示す果梗切断装置の傾斜面の例を示す概略図である。
図8図1におけるY−Y線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る果梗切断装置1の例を示す概略図(斜視図)である。また、図2は、果梗切断装置1の本体部12の例を示す概略図(斜視図)である。また、図3は、図2のX部拡大図である。また、図4は、果梗切断装置1の蓋部14(内面側)の例を示す概略図(斜視図)である。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0013】
本実施形態に係る果梗切断装置1は、枝から切り取られた果実に付随している果梗を切断して、当該果実から除去する装置である。なお、切断対象の果実Fとして干し柿を例に挙げて説明する(図5に概略図を示す)。ただし、本装置は、干し柿以外の果実であっても果梗の切断が可能である。
【0014】
ここで、特に干し柿に例示される干された果実Fは、果肉N・果梗K・ガク片Gのそれぞれが多様に変形を生じているため、全ての個体において果梗Kを一様に商品として適切な位置で切断することがきわめて難しいという課題がある。
【0015】
その課題を説明するために、干し柿の製造工程の概略を簡単に例示する。先ず、柿を枝から切り取る工程を実施する。この時点で、ある程度の長さを有する果梗Kが付随した状態となっている。次に、柿の皮を剥く工程を実施する。次に、柿が横向き(すなわち、果梗Kの長手方向が水平)となるようにして、順次、支持部材(一例として、紐に所定間隔で並設されている複数のクリップ)に柿の果梗Kを固定(挟持)させて、複数の柿をまとめて紐で吊るせる状態にする工程を実施する。次に、必要に応じて硫黄燻蒸等を行った後、紐を吊るして所定の期間、柿を干す工程を実施する。なお、その期間中において再度、硫黄燻蒸等を行う場合もある。次に、干された柿をクリップから取り外して、当該クリップで挟持されていた果梗Kを切断する工程を実施する。次に、果梗Kを切断した柿をトレイ等に並べて表面の粉出しを行う工程を実施する。最後に、計量、袋詰めを行って出荷する工程を実施する。
【0016】
ちなみに、果梗Kを切断する理由は、商品として不要な部分であり、ガク片Gに近い位置で綺麗に切り揃えることで商品価値が高まるからである。加えて、果梗Kが他の果実Fの果肉Nに接触して傷をつけてしまうとカビ発生の原因となってしまうために、次工程である粉出しを行う工程の前に切断しておく必要があるからである。
【0017】
上記の工程によって製造される干し柿Fは、特に、横向きでクリップにより果梗Kが挟持されて干される工程の実施後においては、図5に示すように、ガク片Gに対して果肉Nが捩れた状態となり、またガク片Gから突出する果梗Kが湾曲した状態となっている。しかも、柿の大きさに個体差があること、また、枝から切り取る際に作業者によって果梗Kを残す長さに差があること、干された時の環境条件に差があること等に起因して、多様な変形が生じることとなる。そのため、全ての個体において果梗Kを一様に適切な位置で切断することが難しいという課題が生じる。
【0018】
この課題に対し、特許文献1に例示される自動搬送・自動切断を行う装置を用いて果梗Kを切断する場合、上記の多様な変形に対応した切断ができないため、課題解決はきわめて困難となる。一方、特許文献2に例示される切断装置によれば、作業者が手動で果梗Kの切断を行うために、特許文献1記載の上記装置と比較すれば果梗Kの切断位置の調整はある程度可能になると思われるものの、変形した状態の干し柿から果梗Kを切断し易くする構成を備えているとはいい難い。特に、干し柿は、果梗Kをできる限りガク片Gに近い位置で、ガク片Gと平行に切断することで商品としての価値が高まるとされているが、そのような商品価値を高める果梗Kの切断を可能とする構成は何ら備えていない。
【0019】
これに対して、当該課題の解決を可能とする本実施形態に係る果梗切断装置1について以下に詳しく説明する。
【0020】
先ず、本実施形態に係る果梗切断装置1は、図1図4に示すように、本体部12と当該本体部12に上方から嵌合される蓋部14とを有する箱状のケース10と、当該ケース10の内部に回転可能に配設された回転刃42とを備えて構成されている。この回転刃42が回転駆動され、ケース10を構成する蓋部14の上面に開口形成された果梗取入口32に進入した果実Fの果梗Kを回転刃42で切断する作用をなす。
【0021】
上記のケース10を構成する本体部12は、上部が開口して内部に機器類の収容が可能な略直方体状に形成されている。一方、蓋部14は、本体部12の上部の開口部に外嵌可能なように下部が開口する本体部12よりも浅い略直方体状に形成されている(ただし、特徴的な傾斜面等の構成を備えており、その詳細については後述する)。一例として、本体部12および蓋部14は、ステンレス合金(SUS304)からなる平板状の金属材料を用いて、プレス加工による型抜き・折曲等の工程、溶接工程、および研磨工程等を経て形成される。
【0022】
ここで、本体部12と蓋部14とは、ユリアネジ16を用いて所定位置で固定されている。ユリアネジ16を用いることにより、蓋部14の脱着がし易くなるため、本体部12内部の清掃や刃の交換等が容易となる効果が得られる。
【0023】
本体部12には、上記の回転刃42と共に、当該回転刃42を回転駆動する駆動機構(一例として電気モータ)およびその制御を行う制御機構等(いずれも不図示)が収容されている。また、本体部12の前面には駆動機構の起動・停止を行う電源スイッチ18が取り付けられている。一例として、回転刃42の回転数は1500[rpm]程度に設定されている。
【0024】
また、本体部12には、蓋部14が嵌合された状態のときに当接部22aが蓋部14に当接して回転刃42の駆動機構への通電回路をオンにするリミットスイッチ22が設けられている。これによれば、回転刃42が回転駆動された状態で、本体部12から蓋部14が外れた場合に、リミットスイッチ22の当接部22aが蓋部14に当接しない状態となって、回転刃42の駆動機構への通電回路がオフとなるため、回転刃42の回転を停止させて、安全を確保することができる。
【0025】
ただし、回転刃42の駆動機構への通電回路がオフとなっても、回転刃42は即時停止をせず、暫くの間、惰性で回転してしまうという問題が生じ得る。この問題に対して、本実施形態においては、本体部12の内部に、回転刃42に当接可能に設けられて回転を停止させるブレーキ24と、当該ブレーキ24を回転刃42に当接させる方向に付勢する付勢部材(不図示)とが設けられている。併せて、蓋部14の内面(ケース10の内側となる面)には、本体部12に嵌合された状態のときに付勢部材の付勢方向と逆方向にブレーキ24を押動して当該ブレーキ24と回転刃42との当接を解除させる押動部材26が設けられている。これによれば、回転刃42が回転駆動された状態で、本体部12から蓋部14が外れた場合に、押動部材26がブレーキ24を押動しない状態となって、付勢部材の付勢力によりブレーキ24が回転刃42に当接するため、回転刃42が惰性で回転していたとしても、これを停止させて安全を確保することができる。なお、変形例として、ブレーキ24を当接させる部材は、回転刃42に代えて回転部材(例えば、回転軸等)であってもよい(不図示)。
【0026】
ここで、本体部12に設けられる回転刃42には、一例として市販の建材切断用のチップソー等を用いることができる。これによれば、5万個程度の果梗切断が可能となるため、特許文献2に開示の切断刃(二枚刃)と比較して、刃の切れ味が長期に亘って低下せず、交換周期を大幅に長くすることができる。また、交換に際しても使用者自身がホームセンター等で同等品を手軽に入手できると共に、取り付け構造が簡単で調整箇所が少ない(ほぼ皆無である)ため、交換作業がきわめて容易となる。
【0027】
本願発明者は、特に干し柿Fの果梗Kを切断するに際しては、回転刃42として外径φ100[mm]、刃数30のチップソーが好適であることを究明した。仮に同径で刃数が多いものを用いた場合、刃と刃との間に果梗Kが詰まり、切断性能が低下する不具合が生じ得るためである。
【0028】
一方、ケース10の上面10dには、上記の果梗取入口32が開口形成されている。この果梗取入口32は、ケース10の前面10a(使用者に対向する面)と並行する方向(すなわち、ケース10の一方の側面10bから他方の側面10cへ向かう方向および逆方向)に長い長穴形状に形成されている。
【0029】
なお、ケース10の上面10dにおいて上方に突起するように形成されている突起部10fは、回転刃42を回転軸(不図示)に固定するボルト44が当接しないように逃げを設けるための構成である。この突起部10fを備えることによって、回転刃42の盤面と上面10dとの近接配置(詳細は後述)が可能となる。
【0030】
本実施形態においては、果梗取入口32は、蓋部14の上面に設けられており、一方の側面10b寄りの位置において平面視の開口幅が相対的に広く形成されて果梗Kを進入させる進入部32aを有すると共に、当該進入部32aから他方の側面10c方向に向かって平面視の開口幅が相対的に徐々に狭くなっていき果梗Kの切断が行われる切断部32bに至る長穴形状に形成されている。すなわち、平面視において、果梗取入口32の切断部32bの位置と、回転刃42の刃先の位置とが重なるように相互に配置されている。
【0031】
この構成によれば、開口幅が広い進入部32aを有することにより、果梗Kを果梗取入口32内へ進入させ易くすることができる。さらに、果梗Kを進入させた状態で開口幅が狭い切断部32bまで果実Fをスライド移動させ、その位置で切断することにより、切断時の果梗Kのブレが防止できるため切断面を綺麗に仕上げることができ、且つ、切断された果梗Kが外部へ飛散することも防止できる。
【0032】
また、果梗取入口32は、進入部32a側の端部が、ケース10の上面10dから側面10bに至る領域まで連続して開口する形状に形成されている。これによれば、果実Fを横方向に移動させるだけでその果梗Kを果梗取入口32内へ進入させることができ、上下方向の移動が不要となるため、切断作業がより一層、容易となる。なお、変形例として、進入部32a側の端部がケース10の側面10bまで至らずに上面10dの領域内に収まるように果梗取入口32を形成する構成も考えられる(不図示)。
【0033】
なお、本実施形態においては、果梗取入口32の形成位置を、進入部32aが側面10b寄りの位置となるように構成しているが、これに限定されるものではなく、使用者の利き手等の条件に応じて、進入部32aが側面10c寄りの位置となるように、いわば左右反転した構成としてもよい(不図示)。
【0034】
ここで、図1に示すように、ケース10は、上面10dと前面10aとの間に、所定角度の傾斜を有する傾斜面10eが設けられている。つまり、上面10dと傾斜面10eとが連続し、傾斜面10eと前面10aとが連続する構成となっている。なお、本実施形態においては、傾斜面10eはケース10を構成する蓋部14に設けられているが、変形例として、蓋部14および本体部12の形状を変更することにより、傾斜面10eを本体部12に設ける構成とすることもできる(不図示)。
【0035】
上記構成に加えて、回転刃42の盤面(上面)がケース10の上面10dの下面(ケース10の内側となる面)と平行となるように配設された構成を備えている。
【0036】
これらの構成を備えることによって、果梗取入口32に果梗Kを進入させる際に、図6に示すように、捩れた果肉Nの部分を傾斜面10eの面上に回避させることができるため、全て(柿の場合は四枚)のガク片Gが果梗取入口32の周縁面(ケース10の上面10d)と平行なるようにして当該周縁面に当接させて載置することでき、その状態で果梗Kを果梗取入口32に進入させることが可能となる。したがって、多様な変形が生じている場合であっても、全ての個体に対応して果梗Kを一様に商品として適切な位置、すなわち、果梗Kをガク片Gと平行となる位置で切断することが可能となる。
【0037】
また、切断の際には、果梗Kを進入部32aから切断部32bへ移動させる動作が行われる。このとき、使用者の干し柿を把持する手がちょうど傾斜面10eに沿うように載置可能となる。したがって、傾斜面10eによって手が支持された状態でスライド移動を行うことが可能となるため、作業負担が軽減され、疲労防止を図ることも可能となる。
【0038】
なお、傾斜面10eの傾斜角度については、図7に示すように、上面10dと傾斜面10eとの挟角αが、110[°]≦α≦160[°]となる角度が好適である。さらに、α=130[°]程度の角度が最も好適である。この構成によれば、上記の作用効果がより一層顕著に得られるためである。
【0039】
次に、図8図1のY−Y線断面図)に示すようにケース10は、果梗取入口32の周縁領域Aの板厚D1が、当該周縁領域Aのさらに外側の領域Bの板厚D2よりも薄い形状を有している(ただし、固定のために平面視でオーバーラップ部分を有する)。一例として、本実施形態においては、ケース10の上面10dを構成している部材とは別に、その部材の厚さD2よりも薄い厚さD1を有する別の部材(平板状の板材20)が用意され、当該板材20に果梗取入口32が形成されている。一方、ケース10の上面10dには、果梗取入口32を設ける予定位置において当該果梗取入口32の大きさよりも大きく開口された板材取付用開口部10gが形成されている。ここで、上面10dの板材取付用開口部10gを塞ぐように、果梗取入口32が形成された板材20が上面10dにおけるケース内面側から固定(ここでは、溶接)された構成となっている。このようにして、図8に示す構成を有する果梗取入口32が、ケース10の上面10dの所定位置に設けられる。
【0040】
なお、一例として、板材20はケース10と同様にステンレス合金(SUS304)を用いて形成されており、D1=0.3[mm]、D2=1.0[mm]に設定されている。
【0041】
上記の構成によれば、果梗取入口32の周縁領域Aが相対的に薄く形成されているため、果実Fのガク片Gを果梗取入口32の周縁面(すなわち領域Aの面)に当接させたときに、当該ガク片Gを回転刃42により近づけることができる。そのため、果梗Kを果梗取入口32により深く(ガク片Gに近い位置まで)進入させることが可能となる。したがって、全ての個体に対応して果梗Kを商品として適切な位置、すなわち、果梗Kをできる限りガク片Gに近い位置で切断することが可能となる。また、このように周縁領域Aのみを薄く形成する構成によって、ケース10全体の強度確保も両立することができる。
【0042】
さらに、回転刃42の盤面(上面42a)と板材20の下面20aとの隙間L1が、L1≦1[mm]となる寸法で近接する位置に配設されている。この構成によれば、果梗取入口32の周縁面と回転刃42とをより一層近づけること可能となる。したがって、果梗取入口32に進入させた果梗Kを、より一層、ガク片Gに近い位置で切断することが可能となる。なお、一例として、L1=0.2[mm]に設定されている。
【0043】
なお、切断された果梗Kは、果梗取出口34からケース10の外部に排出される。本実施形態においては、ケース10の一方の側面10bにおける回転刃42の盤面よりも上下方向で下方となる位置に果梗取出口34が開口形成されている。さらに、ケース10の本体部12の内部において、回転刃42の下から果梗取出口34に連続するように下降しながら傾斜する面である送出面36が設けられている。当該送出面36は、下端部36aが果梗取出口34よりもケース10の外方へ突出した位置となるように配設されている。
【0044】
これによれば、果梗取入口32に進入させ、回転刃42により切断された果梗Kは、送出面36を滑り落ちていき、果梗取出口34からケース10の外部に排出される。したがって、従来装置のように、頻繁に刃の駆動を停止させて、本体部の内部から切断された果梗を取り出す作業が必要ないため、作業効率を向上させることができる。
【0045】
最後に、上記構成を備える果梗切断装置1を用いて果実Fの果梗Kを切断する動作について、概略を説明すると以下のようになる。
【0046】
先ず、電源スイッチ18をオンにして、回転刃42を回転状態とする。次いで、果梗Kが下を向くようにして果実Fを手で把持する。次いで、果梗Kを果梗取入口32の進入部32aに進入させる。このとき、全てのガク片Gが果梗取入口32の周縁面に接触するように配置する。次いで、把持した手を傾斜面に沿って横方向に移動させて、果梗Kを果梗取入口32の進入部32aから切断部32bへ移動させる。このとき、切断部32bへ移動して回転刃42の刃先と当接した果梗Kが切断される。次いで、切断された果梗Kが送出面36を滑り落ちて、果梗取出口34からケース10の外部に排出される。
【0047】
以上説明した通り、本発明によれば、果実の果梗を切断する果梗切断装置、特に、枝から切り取られた後に果梗が支持部材に固定されて干された果実から当該果梗を切断するのに好適な果梗切断装置が実現できる。すなわち、干された果実のように果肉・果梗・ガク片のそれぞれが多様に変形を生じている果実であっても、全ての個体において果梗を一様に商品として適切な位置で切断することが可能となる。より具体的には、果梗をできる限りガク片に近い位置で、ガク片と平行に切断することが可能となるため、商品価値を高めることが可能となる。
【0048】
また、回転刃を用いて連続的に果梗を切断する構成によって、一回の切断に要する作業時間が短くでき、作業効率を向上させることが可能となる。また、対向する二枚刃で挟み込んで切断する構成と比較して、長期に亘って刃の切れ味の低下を防止することが可能となる。また、刃の交換や、内部の清掃も容易に行うことが可能となる。
【0049】
なお、本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更可能である。特に、切断対象の果実として干し柿を例に挙げて説明したが、本装置は、干し柿以外の果実であっても果梗の切断が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 果梗切断装置
10 ケース
10a 前面
10b 一方の側面
10c 他方の側面
10d 上面
10e 傾斜面
10f 突起部
10g 板材取付用開口部
12 本体部
14 蓋部
16 ユリアネジ
18 電源スイッチ
20 板材
22 リミットスイッチ
24 ブレーキ
26 押動部材
32 果梗取入口
32a 進入部
32b 切断部
34 果梗取出口
36 送出面
42 回転刃
44 ボルト
F 果実
G ガク片
K 果梗
N 果肉
【要約】
【課題】干された果実のように果肉・果梗・ガク片のそれぞれが多様に変形を生じている果実であっても、全ての個体において果梗を一様に商品として適切な位置で切断することが可能で、且つ、切断の作業効率が向上できる果梗切断装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る果梗切断装置1は、果実Fから果梗Kを切断する果梗切断装置であって、開口形成された果梗取入口32を上面10dに有する箱状のケース10と、ケース10内に回転可能に配設されて果梗取入口32に進入した果梗Kを切断する回転刃42と、を備え、果梗取入口32は、ケース10における使用者に対向する前面10aと並行する長穴形状である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8