特許第6041247号(P6041247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6041247
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ゾル液製造システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   E02D3/12 101
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-208825(P2015-208825)
(22)【出願日】2015年10月23日
【審査請求日】2016年7月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592072920
【氏名又は名称】平成テクノス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有馬 重治
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−170359(JP,A)
【文献】 特開2013−221035(JP,A)
【文献】 特開2013−47424(JP,A)
【文献】 特開2010−59673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ガラス水溶液と強酸性液を反応させて瞬結するPH中性領域を瞬間的に強酸性に移行させて酸性シリカゾル液を製造するゾル液製造システムにおいて、
前記各液の合流混合部の直後に、流路内で筒状弾性体の流路断面積を拡縮できる手段を設け、その流路の開口量を調整することによって混合液の流速を速めて、発生乱流により液の攪拌混合を促進させるようにしたことを特徴とするゾル液製造システム。
【請求項2】
前記流路内で筒状弾性体の流路断面積を拡縮できる手段としては、閉鎖構造で中間部を筒状弾性体外周より大きくした加圧室を備える本体ケーシング内で軸方向両端を固定して、前記筒状弾性体の中間部を加圧室内で外部からの流体圧で押圧して拡縮できる構成である請求項1に記載のゾル液製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物性の異なる流体を定量的に取り扱い、その流体を効率よく混合して所望の挙動を示す流体を、主として土木工事で使用する薬液として円滑に供給できるゾル液製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、土木工事で採用される薬液注入工法で使用される注入薬液材には、主に腐食性を有して比較的粘性の高い二通りの液体を定量的に取り扱い、混合槽などで攪拌混合して調整し、得られた硬化材液(通常、A液と称される)と別途調製されたグラウト材(通常、B液と称される)とを、それぞれ注入管に送り込んで注入箇所で混合して地中に注入するようにされている。
【0003】
通常、前記硬化材液としては、例えば水ガラス系溶液材と硬化材(例えば硫酸)及び水を混合調整して作成されている。そのために、物性の異なる液体を反応させて、瞬結するPH中性領域から瞬間的に強酸性領域に移行させて酸性硬化材液とするのに、混合対象液材を如何に効果的な混合ができるかによって作業性の向上を図れるかにかかっている。
【0004】
前記硬化材液の調製を行うための手段としては、本発明者の先願発明に係るゾル製造装置が特許文献1によって知られている。このゾル製造装置にあっては、混合する水ガラス系薬液材と硬化材(硫酸)とを、それぞれポンプで所定量ずつ加圧供給してミキサーで攪拌混合し、ゾル液とするものである。このゾル製造装置においては、ミキサーとして本体ケーシングの内部で多数の翼を備える攪拌ホイールが回転する回転ポンプ構造であって、本体ケーシングに攪拌ホイールの外周に接する直線方向の吸込み部が設けられ、攪拌ホイールの回転軸心線に沿って外向きに送出口が設けられた、いわば一般の回転ポンプを逆にした構造となっており、前記吸込み部に被混合液の分別吸込み手段が直結された構成となっている。
【0005】
そして、前記分別吸込み手段は、二重管構造にして内管側に硬化材液が、外管側に水ガラス系薬液材が、さらに前記外管の中間部に水配管が接続されて、前記ミキサーの吸込み部に直結されてミキサーの攪拌ホイールの回転によって供給される各液体が同時にケーシング内に引き込まれて攪拌され混合する構成となっている。
【0006】
また、ミキシングポンプとしては、回転ポンプの回転中心に設けられた吸込み部に、多重管構造の分別吸込み手段の先端部に開閉弁構造が設けられ、中心流路に供給される流体の注入圧によって前記開閉弁を押し開くと回転中心箇所で分別して加圧供給される流体を合流して攪拌される構造のものが特許文献2によって知られている。
【0007】
しかしながら、前記特許文献1或いは特許文献2で知られる方式では、物性の異なる二液材(水ガラス系溶液と硫酸)を混合するに際して、回転ポンプ構造を採用して、被混合液材の混合室への受け入れに工夫をしてインペラーの回転力で攪拌混合するようにしても、一時的には混合状態が適正に確保できるが、継続するうちに不安定となり、目的とする強酸性に移行できず、混合後供給する管路途中で凝結して供給不能となる現状がしばしば発生し、注入作業ができなくなるという問題点がある。
【0008】
しかも、前述の攪拌方式を採用すると、取扱う液材が腐食性の高いものであるために、ミキシングポンプを構成する部材に耐食性材料を必要とすることからコストアップが避けられない。また、作業途中で運転を止めることになるほか、配管(主にホース)内に残留する注入薬液が凝結することになるため、その始末には非常に多くの労力を要し、作業工費が増大するなど多くの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−159934号公報
【特許文献2】特許第4873764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、前述のような問題点を解決し、至極簡単な手段を採用して長期安定性を得て酸性シリカゾル液を製造することができる構成としたゾル製造システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を解決するために、本発明のゾル液製造システムは、
水ガラス水溶液と強酸性液を反応させて瞬結するPH中性領域を瞬間的に強酸性に移行させて酸性シリカゾル液を製造するゾル液製造システムにおいて、
前記各液の合流混合部の直後に、流路内で筒状弾性体の流路断面積を拡縮できる手段を設け、その流路の開口量を調整することによって混合液の流速を速めて、発生乱流により液の攪拌混合を促進させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
前記発明において、流路内で筒状弾性体の流路断面積を拡縮できる手段としては、閉鎖構造で中間部を筒状弾性体外周より大きくした加圧室を備える本体ケーシング内で軸方向両端を固定して、前記筒状弾性体の中間部を加圧室内で外部からの流体圧で押圧して拡縮できる構成であるのがよい。また、機械力で直接筒状弾性体を押圧絞縮する構成であるのもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一次混合部で合流混合された混合液を、その直後において絞り部を通過させて混合液に急激な流速を付加して攪拌混合を行うことにより、絞り部以後の圧力開放部において生じる渦流などを交えた発生乱流によって放出液が瞬間的に激しく攪拌混合させることにより瞬結するPH中性領域を瞬間的に強酸性に移行させて酸性シリカゾル液を連続して製造可能となった。
【0014】
また、製造過程での管路内でゲル化物が生成される不可的現象を最小限にとどめることができ、従来のように運転途中での作業停止を招くことなく継続運転が可能になる。しかも、運転中で混合液の生成過程においてごくわずかではあるが、生成されるゲル化物が管路壁に付着成長しても筒状弾性体を拡縮操作することで、流速を変化させ強制的に管路壁から剥離させる清掃効果が得られ、この清掃操作が外部から行えるので、管路を分解することなく自動的に清掃できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明によるゾル製造システムの一実施形態の概要図である。
図2図2は二次混合部の作動状態を表す一実施例断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明によるゾル液製造システムの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示される本発明のゾル製造システム1は、土木工事における薬液注入工法に使用される注入薬液材(酸性シリカゾル液)を製造する装置に適用したものである。このゾル製造システム1は、薬液注入に使用する薬液材(酸性シリカゾル液)を所要の凝結濃度となるように調整して供給するものであり、水ガラス水溶液と硬化材(例えば希硫酸)に清水を、ともに加圧して効率よく混合調整して供給できるように構成されている。
【0018】
前記ゾル製造システム1としては、調製するのに使用される水ガラス水溶液と希硫酸および清水をそれぞれの貯槽2,3,4から、それぞれ独立して送液するポンプ5,5a,5bによって合流混合部10(以下、「一次混合部10」という)に送液されるようにし、各配管中に流量調整弁6,6a,6bを設けて供給液の配合比に応じた液量で一次混合部に送られるようになっている。前記一次混合部10では各液を合流させて一次混合を行わせる。この一次混合部10の出口に側には二次混合部20が設けられ、一次混合部10で混合された混合液の流速を速めて、急速流動に伴う発生乱流によって液の攪拌混合を促進させ、所望のゾルを製造し、注入管へ供給するようにされている。
【0019】
前記二次混合部20は、流体の流れ方向(便宜上「軸線方向」という)に前後端で開口部を備えて所定内容積を有する本体ケーシング21と、この本体ケーシング21内で軸線方向の両端を固定されて軸線方向に交差する向きで外力により中間内径部分を拡縮できるようにされた筒状弾性体22と、前記本体ケーシング21の中間部に設けた制御流体の出入口24に配管32を介して繋がる制御流体供給手段30(コンプレッサー)とによって構成されている(本発明の「流路内で筒状弾性体の流路断面積を拡縮できる手段」に対応する。)。
【0020】
前記本体ケーシング21と内蔵される筒状弾性体22とは、その筒状弾性体22が軸線方向両端部に形成された鍔部22aで本体ケーシング21と接続用蓋体25とで固定され、筒状弾性体22の中間部22bが本体ケーシング21内に形成された所定空間の加圧室23に位置するようにされている。なお、前記筒状弾性体22は中間部22bの肉厚を前後部分よりやや薄く形成されているのが好ましい。また、この筒状弾性体22は耐食性の高いゴム質材料で形成されている。図中符号8,8a,8bは流量計であり、25aは配管接続口、25bは取付ボルト、40は制御手段(制御盤)。
【0021】
前記二次混合部20における筒状弾性体22を拡縮操作する流体としは、加圧エア(以下、単に「エア」という)を使用するのが取扱い上好ましい。そして、このエアは本体ケーシング21の中間外周部に設けられたエア挿入口24にエア配管32されて制御手段40によって操作されるレギュレーター33にて前記筒状弾性体22の絞縮部26の開口状態が調整され、前記筒状弾性体22による流路断面積の拡縮が行われるようにされている。
【0022】
このように構成されるゾル製造システム1は、予め原料液の供給配合量を定めてそれぞれ送液ポンプ5,5a,5bにより供給すると、一次混合部10にて中央部に配管7にて希硫酸が送り込まれ、その外側に配管7aにて水ガラス水溶液が送り込まれ、最外周部には配管7bで清水が送り込まれるようにしなっている。この一次混合部10では、まず水ガラス水溶液と清水が混じり合って水ガラス水溶液が希釈され、この希釈された水ガラス水溶液に対し希硫酸が混入されて内部出口部10aですべての液が合流して混合される。
【0023】
一方、二次混合部20では、本体ケーシング21内の加圧室23にエアを供給して筒状弾性体22を周囲から押圧することにより流通路の中間部22bを絞縮する。こうすることにより、一次混合部10で合流混合された液は、その出口に直結されて設けられた二次混合部20において流路を絞縮された筒状弾性体22内の絞縮部26を通過して圧力開放部27に送り出されることにより、一次混合部10の出口(二次混合部の入口)で所持する圧力状態で絞縮部26から圧力開放部27を通過する際、急激に流速が高められる。
【0024】
前記二次混合部20における筒状弾性体22は、両端固定で中間部22bが加圧室23に臨んでいるので外部からのエアによる押圧力で二点鎖線にて表す筒状(図2参照)から中間が絞縮されて、この絞縮部26内を混合液が通過することにより、絞縮部26以後の圧力開放部27において生じる渦流などを交えた発生乱流によって放出液が瞬間的に激しく攪拌混合され、反応速度を高めて瞬結するPH中性領域を瞬間的に強酸性に移行させて目的とする酸性シリカゾル液が得られる。なお、攪拌混合状態は、筒状弾性体22を加圧するエアによる加圧状態を制御手段40によって調整することで絞り量を加減することができる。また、ここで用いられている筒状弾性体22は、外部からの加圧力によって全閉させるのではなく、流通路を絞縮して通過断面積を任意に調整することにより、流通する混合液を選択的に超速流に加速させ、攪拌混合操作を促進させるものである。
【0025】
また、一次混合部10で三種の液体を合流混合させてから、二次混合部20で混合液に急激な流速を付加して攪拌混合を行うことにより、製造過程での管路内でゲル化物が生成される不可現象を最小限に留めることができ、従来のように運転途中での作業停止を招くことなく安定的に作業を遂行することができる。
【0026】
さらに、上述のようにして運転を継続する過程において、混合液の生成過程では、ごくわずかずつではあるが、生成されるゲル化物が、管路壁に付着成長することによって管路が閉塞される最悪の現象も、二次混合部の筒状弾性体を拡縮操作することにより、混合液の流速を激しく変化させて強制的に管路壁から剥離させることが可能になる。
【0027】
このように、本発明においては、二次混合部における筒状弾性体を外部から拡縮操作するだけで、混合液の攪拌混合部近傍での構成管路を分解することなく自動的に清掃することも可能になった。
【0028】
以上に説明した筒状弾性体を閉鎖した本体ケーシング内の加圧室でエアにより外部から押圧して流路を絞縮する形式の構造について記載したが、このような形式以外に、直圧式ピンチバルブを利用することも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ゾル製造システム
10 一次混合部(合流混合部)
20 二次混合部
21 本体ケーシング
22 筒状弾性体
23 加圧室
24 エア挿入口
26 絞縮部
27 圧力開放部
30 制御流体供給手段(コンプレッサー)
33 レギュレーター
40 制御手段
【要約】
【課題】 至極簡単な手段を採用して長期安定性を得て酸性シリカゾル液を製造することができる構成としたゾル製造システムを提供する。
【解決手段】 水ガラス水溶液と強酸性液を反応させて瞬結するPH中性領域を瞬間的に強酸性に移行させて酸性シリカゾル液を製造するゾル液製造システム1において、前記各液の合流混合部(一次混合部10)の直後に、流路内で筒状弾性体22の流路断面積を拡縮できる手段(二次混合部20)を設け、その流路の開口量を調整することによって混合液の流速を速めて、発生乱流により液の攪拌混合を促進させるようにした。
【選択図】 図1
図1
図2