特許第6041254号(P6041254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041254
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/08 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   E03D9/08 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-69476(P2013-69476)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-190146(P2014-190146A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】永石 昌之
(72)【発明者】
【氏名】辻田 正実
(72)【発明者】
【氏名】淡路 達人
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−284655(JP,A)
【文献】 特開2001−279780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/08
A47K 13/24
G01V 3/08、3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大便器の後方上部に設置された本体部と、前記本体部に対して回動自在に設けられた便座部とを備えた便座装置であって、
前記本体部内の幅方向中央部に設けられ、使用者の人体局部に向けて水を吐出させる吐水口が形成された前後方向に移動可能なノズルと、
前記本体部内に設けられ、前方側に電波を放射し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、被検知体の移動情報を検知信号として取得する電波センサと、
当該便座装置の作動を制御する制御部と、を備え、
前記電波センサは、放射される電波の少なくとも一部が前記ノズルと干渉するよう前記ノズルの側方に隣接配置されており、
前記制御部は、
人体の移動に関する検知信号と、前記ノズルの移動に関する検知信号とを判別する検知信号判別手段を有しており、
前記ノズルが移動している際には、前記検知信号判別手段によって判別された前記ノズルの移動に関する検知信号はキャンセルするとともに、前記検知信号判別手段によって判別された人体の移動に関する検知信号はキャンセルしないことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ノズルの移動が停止している際には、前記検知信号判別手段によって前記ノズルの移動に関する検知信号をキャンセルしないことを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ノズルが移動している際に人体の移動に関する検知信号を取得したら、前記ノズルを動作させるノズル動作モードを終了させることを特徴とする請求項2記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大便器の上部に設置される便座装置に係り、特に電波センサを用いた便座装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、赤外線センサを用いて、使用者のトイレルーム内への入室やトイレルーム外への退室を検知し、この検知信号に基づいて便座装置の作動を制御する便座装置が広く普及している。例えば、使用者がトイレルーム内に入室したことを検知したら、便蓋を自動的に開いたり、便座ヒーターを自動的に加熱させたりすることなどが行われている。また、使用者がトイレルーム内から退室したことを検知したら、便座や便蓋を自動的に閉じたり、便器内に洗浄水を自動的に流したりすることなどが行われている。
【0003】
しかしながら、この赤外線センサの場合、検知エリア内に使用者がいるかいないかを判別できるのみであり、使用者の細かな挙動に基づいて便座装置の作動を制御することができないという課題があった。
【0004】
このようなことから近年、使用者の細かな挙動を検知することが可能な電波センサを用いた便座装置が提案されている(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−140325号公報
【特許文献2】特開2003−284655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電波センサを用いてトイレルーム内における使用者の挙動を満遍なく検知するにあたっては、電波センサの電波送信部を便座装置の幅方向中央部近傍に配置し、大便器および便座装置に対して左右略均等な検知エリアが形成されるようにすることが好ましい。
【0007】
しかしながら、便座装置の幅方向中央部には、使用者の人体局部に向けて水を吐出させる吐水口が形成されたノズルが設けられているため、電波送信部から放射される電波の少なくとも一部がノズルと干渉することになる。このノズルは、人体局部に向けて水を吐出させる人体洗浄モード時、人体洗浄時の前後にノズルの外面を洗浄するノズル洗浄モード時、本洗浄後にノズル内に残留した水を排出させる捨て水モード時などにおいて、前後方向に移動するため、ノズルの移動を使用者の動きと誤検知してしまい、誤った検知信号に基づいて便座装置を誤動作させてしまうという課題が生じてしまう。
【0008】
上記課題に対して、上記特許文献2では、ノズルの上方に電波送信部を配置し、電波送信部から放射される電波がノズルと干渉しないように、ノズルと電波送信部の間を金属部材で遮蔽する構成が開示されている。しかしながら、上記特許文献2の構成では、ノズルの上方に電波送信部と金属部材を配置するためのスペースが必要となり、便座装置の本体部高さが極めて大きくなるという課題がある。
【0009】
このような事情から、便座装置の本体部高さを大きくすることなく、大便器および便座装置に対して左右略均等な検知エリアを形成するためには、電波送信部をノズルの側方に隣接配置することが必要であり、この場合、放射される電波の少なくとも一部がノズルと干渉することとなってしまう。
【0010】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、放射される電波の少なくとも一部がノズルと干渉する位置に電波センサを配置した場合であっても、ノズルの移動を使用者の動きと誤検知してしまい、誤った検知信号に基づいて便座装置を誤動作させてしまうことを防止できる便座装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る便座装置は、大便器の後方上部に設置された本体部と、前記本体部に対して回動自在に設けられた便座部とを備えた便座装置であって、前記本体部内の幅方向中央部に設けられ、使用者の人体局部に向けて水を吐出させる吐水口が形成された前後方向に移動可能なノズルと、前記本体部内に設けられ、前方側に電波を放射し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、被検知体の移動情報を検知信号として取得する電波センサと、当該便座装置の作動を制御する制御部と、を備え、前記電波センサは、放射される電波の少なくとも一部が前記ノズルと干渉するよう前記ノズルの側方に隣接配置されており、前記制御部は、人体の移動に関する検知信号と、前記ノズルの移動に関する検知信号とを判別する検知信号判別手段を有しており、前記ノズルが移動している際には、前記検知信号判別手段によって判別された前記ノズルの移動に関する検知信号はキャンセルするとともに、前記検知信号判別手段によって判別された人体の移動に関する検知信号はキャンセルしないことを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、電波センサを当該便座装置の本体部の幅方向中央部に設けられたノズルの側方に隣接配置している。これにより、便座装置の本体部高さを大きくすることなく、大便器および便座装置に対して左右略均等な検知エリアを形成することができる。
また、人体の移動に関する検知信号とノズルの移動に関する検知信号とを判別する検知信号判別手段によって、ノズルが移動している際には当該ノズルの移動に関する検知信号をキャンセルするようにしているため、電波センサから放射される電波の少なくとも一部がノズルと干渉するよう電波センサを設置した場合であっても、ノズルの移動を使用者の動きと誤検知してしまうことを防止できる。 また、ノズルが移動している際に、人体の移動に関する検知信号はキャンセルしないようにしているため、ノズルが移動している間も人体の移動に関する検知信号に基づいて当該便座装置の作動を制御することができる。
【0013】
また、本発明に係る便座装置では、前記制御部は、前記ノズルの移動が停止している際には、前記検知信号判別手段によって前記ノズルの移動に関する検知信号をキャンセルしないことも好ましい。
【0014】
この好ましい態様では、ノズルの移動が停止している際には、ノズルの移動速度に近い人体の移動情報(例えば、ゆっくりな人体の動き)も取得することができるため、人体の移動に関する情報をより幅広く検知することができる。
【0015】
また、本発明に係る便座装置では、前記制御部は、前記ノズルが移動している際に人体の移動に関する検知信号を取得したら、前記ノズルを動作させるノズル動作モードを終了させることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、人体を検知したらノズル動作モードを終了させることにより、いち早く人体の移動に関する情報をより幅広く検知できる状態に戻すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射される電波の少なくとも一部がノズルと干渉する位置に電波センサの電波送信部を配置した場合であっても、ノズルの移動を使用者の動きと誤検知してしまい、誤った検知信号に基づいて便座装置を誤動作させてしまうことを防止できる便座装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の便座装置の斜視図
図2】本発明の便座装置の内部構造における上面視概略構成図
図3】本発明の便座装置の側面視における電波の放射パターン概略構成図
図4】本発明の便座装置に搭載された電波センサ及び制御部の概略構成図
図5】本発明の便座装置における動作フローチャート図
図6】本発明の便座装置におけるノズル駆動時の人体検知フローチャート図
図7】本発明の便座装置の内部構造を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1に本発明の便座装置の斜視図を示す。
図1に記載のように、本発明の便座装置10は、便器14に載せて使用されるものである。この便座装置10は、本体部12と、便座13と、便蓋11と、便座装置10の各機能を遠隔操作するリモコン18とを備えている。本体部12は、洗浄水17を供給するノズル16を有しており、ノズル16を進退自在に保持しているものである。また、本体部12は便座13及び便蓋11を回動自在に保持している。
【0020】
使用者は、便座装置10使用時に便蓋11を図1のように上方に回動させ、便座13を露出させる。使用者は便座13に着座して用便をした後リモコン18を操作してノズル16に形成された吐水口15から洗浄水17を吐水させ、使用者の局部を洗浄するものである。使用者は局部洗浄後、リモコン18を操作して吐水口15からの洗浄水17の供給を停止させ、その後使用者はリモコン18を操作して便器14に洗浄水18を流す。
【0021】
次に、本発明の便座装置10における上面視図を図2に示す。便座装置10の中央には前記ノズル16が配置されており、使用者が着座した状態において適切に局部へ洗浄水17を供給することが可能となる。本体部12の内部にはノズル16に洗浄水17を供給すための給水路22を設けており、この給水路22の上流側から給水の開始/停止を制御する電磁弁21Aと、電磁弁21Aを介して給水された洗浄水17を局部洗浄に適した温度まで加熱するヒーター部21Bとを備えている。
【0022】
更に、便器14内部の臭気を回収するために、便器14内部の空気を脱臭素材を介して外部に放出するための脱臭用空気ダクト25Bと、脱臭用空気ダクト25Bを介して外部に空気を送風する脱臭用送風ファン25Aとを備えている。また、使用者が局部洗浄を行った後に温風にて局部を乾燥させるために、外部から本体部12の内部に設けられたヒーター21Bを介して使用者の局部に送風するための乾燥用空気ダクト24Bと、乾燥用送風ファン24Aとを備えている。
【0023】
便座装置10には、回動可能な便座13、便蓋11が備えられているため、便座13、便蓋11が回動するための便座回動部と便蓋回動部とを設けている。本発明の便座装置10は、便座13、便蓋11が制御部20からの駆動信号にて自動で開閉動作をするものであり、便座回動部と便蓋回動部にはモーターを備えている。このモーターの駆動によるノイズ(例えば電磁ノイズ)を遮断するために、便座回動部と便蓋回動部は金属筐体にて覆われている。
【0024】
本発明においては、使用者の検知に電波の送受信で人体の動き等を検知する電波センサ23を備えている。この電波センサ23は、ノズル16の一側に設けられている。ノズル16は使用者の局部を洗浄するための便座装置10の中央に配置されており、この一側に電波センサ23を設けることで、便座装置10の水平方向に対する電波の放射範囲を左右均等に分布させることが可能となる。また、便座装置10の水平方向に対しては、電波センサ23の電波の放射領域29を広くすることが望ましい。便座装置10が設置されるトイレ空間においては、出入口となるドアがどの方向に設置されるかは一意で決定されない。そのため、どのようなトイレ空間に設置した場合においても確実に使用者を検知するために、水平方向に広く電波の放射領域29を形成することで、様々な方向から便座装置10に接近する使用者を確実に検知することが可能となる。
【0025】
また、ノズル16の他側にはノズル16に洗浄水17を供給するための給水路22を配置する。このような構成により、ノズル16が駆動した際に給水路22の屈曲部が稼動した場合においても、電波センサ23から放射された電波がノズル16を介して給水路22に放射されるため給水路22の動きを検知することを抑制することが可能となり、給水路22の動きに対する誤検知を抑制することが可能となる。
【0026】
制御部20の配置について示す。本発明の制御部20は、便座装置10の電源部をも含むようにユニット化されている。この制御部20はノズル16に対して給水路22が配置された側に配置している。電源部は、ヒーター21Bや電磁弁21Aへの電流供給に伴い電磁ノイズを発生する可能性が高い。この電磁ノイズが電波センサ23に入力されてしまうと使用者を検知した検知信号として誤検知される可能性が高くなる。そこで、制御部20をノズル16に対して給水路22側、すなわちノズル16の他側に配置することで電源部で発生する電磁ノイズはノズル16を介して電波センサ23に到達するため、電波センサ23に入力される電磁ノイズを抑制することが可能となり、使用者の検知精度を保持することが可能となる。
【0027】
次に脱臭用送風ファン25Aと乾燥用送風ファン24Aの設置場所について記載する。本発明の便座装置10において、設置されるトイレルーム内の使用者を検知するために水平方向の電波の放射領域29を広くすることが望ましい。また、その広い検知領域において、便座装置10内部の各機構の動きを検知しないように電波を放射することで広い検知範囲で確実に使用者の動きを検知することが可能となる。そのために、脱臭用送風ファン25Aや乾燥用送風ファン24Aといった回転系の駆動部を電波センサ23の検知領域外に配置することが必要となる。また、電波センサ23から放射された電波は、金属等によって反射するため、電波センサ23の近傍には金属物体ではなく樹脂等の低誘電率の素材を用いて周辺を構成することが望ましい。
【0028】
そこで、本発明においては電波センサ23の検知領域に金属物体を配置しないために、ノズル16の一側、すなわち電波センサ23の配置されている側に樹脂で形成された乾燥用空気ダクト24Bや脱臭用空気ダクト25Bを配置し、電波センサ23の電波の放射領域29を阻害しない構成としている。また、回転体である乾燥用送風ファン24Aや脱臭用送風ファン25Aは電波センサ23の電波の放射領域29と重複しないように電波センサ23の下方に配置することでファンの回転に伴う誤検知を抑制する構成としている。
【0029】
さらに、便座回動体27、便蓋回動体26の設置場所について示す。前述したように便座回動体27、及び便蓋回動体26は金属筐体に覆われているため、電波センサ23の電波の放射領域29内に設置すると電波センサ23の検知範囲に影響を及ぼす。そこで本発明においては、便座回動体27、及び便蓋回動体26を電波センサ23の電波の放射領域29外となるように配置している。また、便座回動体27、及び便蓋回動体26が金属筐体によって覆われていることを利用して、電波センサ23によって動きを誤検知する可能性のある脱臭用送風ファン25A、又は乾燥用送風ファン24Aの上方に配置(図2においては脱臭用送風ファン25Aの上方に便座回動体27を配置することで、電波センサ23から放射された電波が周囲に伝播したものを金属筐体で反射させて各ファンの動きを検知しないようにしている。これにより電波センサ23の電波の放射領域20を阻害することなく、周囲の回転体の動きによる誤検知を抑制することが可能となる。
【0030】
次に本発明の便座装置10の側面視図を図3に示す。
図1において、便座装置10の水平方向に対する電波の放射領域29を広く形成することが望ましいとしたが、鉛直方向に対しては電波の放射領域29を便座13に干渉することなく、且つ鉛直方向上方に対して大きく広がらないように放射領域を形成することが望ましい。鉛直方向の下方側の電波の放射領域29が便座13に干渉するようになると、便座13に設置された便座13を温めるためのヒーター21B等の金属により電波が反射してしまい、そのために電波センサ23で検知したくない物体、例えばトイレルームに配置された照明や換気扇、の動きやその物体から発生するノイズを検知するために誤検知する恐れがある。また、便座13に干渉するように放射すると便器14内部の物体の動き、例えば便座装置10のノズル16の動きや便器14内部の洗浄水17の動きを検知するために誤検知が発生する可能性がある。以上のことより、鉛直方向の下方側の電波の放射領域29を便座13に干渉しないようにすることが望ましい。
【0031】
また、鉛直方向の電波の放射領域29の上方側を広くすると、天井等に配置される照明や換気扇の動作等により誤検知する恐れもある。そのため電波の放射領域29を形成するにあたり、電波の最大放射方向30を水平方向よりやや上方に設定することが望ましい。これにより、電波の放射領域29が便座13に干渉することなく、且つ上方に電波の放射領域29を形成することなく電波をトイレ空間の所定の方向に伝播することが可能となる。また、電波の最大放射方向30を水平方向よりやや上方に設定することで、使用者が子供の場合には電波の最大放射方向に送信された電波が胸部に反射することになり、また大人の場合には大腿部から腰部で電波が反射させるため、使用者からの反射波を確実に受信することが可能となるために使用者の動きに伴う検知信号を確実に生成することが可能となる。
【0032】
次に本発明の便座装置10に搭載されている電波センサ23と制御部20の概略構成図を図4に示す。
電波センサ23は、空間に放射するための電波を生成する発振回路44と、生成された電波を送信信号41として空間に放射する電波送信部40と、電波送信部40から送信された送信信号41が被検知物体に反射した受信信号43を受信する電波受信部42と、を備え、送信信号41と受信信号43とを基に被検知物体の状態に応じた検知信号を生成するミキサ回路45とを有する構成になっている。
【0033】
本実施の形態で示す電波の放射領域29は、電波送信部40の構成に応じて変化させることが可能である。また、電波の最大放射方向に関してもこの電波送信部40の構成にて変化させることも可能である。本実施の形態においては、電波送信部40と電波受信部42とを別体で構成する送受信別体構造を示しているが、本実施の形態における効果は、電波送信部40と電波受信部42とを一体に構成した送受信一体構造においても同様の効果を有することが可能となる。
【0034】
また、本実施の形態では、ミキサ回路45を送信信号41と受信信号43が直接ミキサ回路45に入力される構造を示しているが、例えば送信信号41を空間伝播にてミキサ回路45に伝播させるミキサ回路45においても、本実施の形態における効果を有するものである。
【0035】
前記電波センサ23で生成された検知信号は制御部20へ入力される。制御部20では、まず検知信号に付与されているノイズを除去するためのノイズカットフィルタ46Aを備えている。電波センサ23で生成された検知信号には、トイレ空間内で発生するノイズ、例えば照明に供給されている商用電源によって発生する周期ノイズ、が含まれた状態となっている。このノイズを除去し、比検知物体である使用者の状態のみを確実に抽出するために検知信号をノイズカットフィルタ46Aに通すことで使用者の検知精度を向上させることが可能となる。
【0036】
ノイズカットフィルタ46Aを通過させた検知信号は、各被検知物体の動きに応じた検知信号に分別するために、第一のフィルタ46Bや第二のフィルタ46Cのような通過させる周波数が異なるフィルタ、すなわち被検知物体の動く速度を分離するフィルタ、を介して検知信号に混在している様々な被検知物体の動きを分別する。
【0037】
上記のノイズカットフィルタ46Aや第一、第二のフィルタ46Cは、例えばマイクロコンピューター等によって信号処理でフィルタリングを行う方法や、電気回路等で回路としてフィルタを構成することにより形成することが可能となる。特に被検知物体の動きの速度を細かく分別するためには、信号処理によるフィルタリングで周波数を細かく分別することが可能となる。また回路としてフィルタを構成する場合には、簡易で安価にフィルタを構成することが可能となる。上記のどの方式でフィルタを構成した場合においても、トイレルームのノイズを除去することや、被検知物体の動きを選別することは可能である。
【0038】
第一のフィルタ46B、及び第二のフィルタ46Cで分離された検知信号は、非検知物体がどのような状況であるのかを判断する判定部47に入力される。判定部47においては、被検知物体の状態を判断するための基準値を記憶部48から取り出し、この基準値と各検知信号との比較によって被検知物体の状態を判定するものである。判定部47によって被検知物体の状態を判断すると、その判断結果に基づき動作指示部49から便座装置10の各機構に対して機器の動作を指示するものである。
【0039】
判定部47で使用する、記憶部48に保存された基準値は、予め設定された値を使用する方法や、便座装置10が設置されるトイレルームの環境に応じて基準値を変化させることも可能である。被検知物体である使用者の動きは、トイレルームの広さや形状によって動く速度や方向が異なるため一意に定めた基準値では対応できない可能性もある。そのため便座装置10の設置されている環境での検知信号に基づき基準値を学習にて補正することで、設置されたトイレルームに適した基準値を生成することが可能となり、使用者の検知精度を向上させることが可能となる。
【0040】
ここで、本実施の形態の電波センサ23は、送信信号41として送信する電波をマイクロ波やミリ波といった電波を用いている。マイクロ波やミリ波は樹脂等の比誘電率が低い物質を透過する性能を有するため、便座装置10のように外装を樹脂で形成している装置では電波の反射等が発生しないため、所定の方向に所定の電波量を送信することが可能となるため、トイレルームにおける使用者の動きを確実に検知することが可能となる。
【0041】
また、本実施の形態においては、電波センサ23はドップラーセンサを用いている。便座装置10で検知する被検知物体は使用者であり、特に使用者の接近/離遠といった行動や、行動の速度を検知することで使用者の状態を判断することが可能となるため、ドップラーセンサのような人の動きに応じた検知信号を生成する電波センサ23を用いることが望ましい。電波センサ23においては、検知信号に位相差を設けて複数の検知信号を出力し、電波センサ23から被検知物体までの概略の距離と被検知物体の動きを検知する位相差センサ等もあるが、被検知物体の動きを検出できる電波センサ23であれば同様の効果を得ることが可能である。
【0042】
次に、本発明の便座装置10の動作フローを図5に示す。
本発明の便座装置10は、便座装置10が設置されているトイレルームに被検知物体である使用者が入室したか否かを検知する。このセンシングにて使用者がトイレルームに入室したことを検知すると便座装置10の便蓋11の開動作や便座13に配置された便座を所定の温度にするためのヒーター21Bへ通電を行う。次に使用者が便座13に着座したか否かを検知する。このセンシングで着座を検知すると、便座装置10は使用者が便座装置10を操作するためのリモコン18からの信号を受信可能とすることや、便器14内部の臭気を外部に放出するための脱臭用送風ファン25Aの駆動を開始することや、便座装置10のノズル16を使用可能とするための動作準備を行う。
【0043】
ノズル16の動作準備が完了すると、リモコン18や便座装置本体部12に設置されている操作部によって人体の局部洗浄や温風の吹出を行う。そこで使用者の離座を検出するセンシングを行い、使用者の離座を検知するとノズル16の外層を洗浄するノズル洗浄や、ノズル16内部の洗浄水17を排出する水抜きや、便器14内部やトイレルームの臭気を除去するための脱臭動作が開始される。更に、便座装置10から使用者が離遠することを検知すると、便座13や便蓋11の閉動作、便座13のヒーター21Bへの通電の停止、及び便器14への洗浄水17の供給を実施する。
【0044】
ここで、本発明の便座装置10は、大便器14の後方上部に設置された本体部12と、前記本体部12に対して回動自在に設けられた便座部13とを備えた便座装置10であって、前記本体部12内の幅方向中央部に設けられ、使用者の人体局部に向けて水を吐出させる吐水口15が形成された前後方向に移動可能なノズル16と、前記本体部12内に設けられ、前方側に電波を放射し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信して、被検知体の移動情報を検知信号として取得する電波センサ23と、当該便座装置10の作動を制御する制御部20と、を備え、前記電波センサ23は、放射される電波の少なくとも一部が前記ノズル16と干渉するよう前記ノズル16の側方に隣接配置されており、前記制御部20は、前記ノズル16が移動している際には、前記電波センサ23からの検知信号に基づいて当該便座装置10の作動を行うことを禁止する構成となっている。
【0045】
上記の内容を図6の動作フローチャートを用いて説明する。本発明の便座装置10においては、便座装置10のノズル16内に洗浄水17を残さないために洗浄水17を排出する作業や、ノズル16の外周の洗浄を行うためにノズル16を一旦伸長させた状態で上記のような水抜きや洗浄を行う。そのため、電波センサ23がノズル16を誤検知しないように配置していた場合に置いてもノズル16の伸長動作等によりノズル16を人体と誤検知してしまう恐れがあった。そのために、図6のような動作フローチャートにて、ノズル16の動きを人体の動きと誤検知しないようにしている。
【0046】
まず、電波センサ23からの検知信号を制御部20が抽出する。この際に、ノズル16が駆動しているか否かを判断する。制御部20では便座装置10の機器の駆動制御を行っているため、便座装置10のノズル16の駆動が把握できるためである。ここで、ノズル16が駆動していることが判明した場合には、ノズル16の動作を除外して人体のみの動きを抽出する必要がある。そこで、図4に記載の第一のフィルタ46Bと第二のフィルタ46Cを用いて人体やノズル16の動きを分別している。本発明においては、第一のフィルタ46Bで人体の動きを検出し、第二のフィルタ46Cでノズルの動きを検知するものである。
【0047】
便座装置のノズル16の動きは、人体の接近/離遠の動きよりも遅い動きのため、ノズル16の動作によっては発生する検知信号の周波数は低い周波数となる。そのため、第一のフィルタ46Bよりも低い周波数帯が通過するフィルタを第二のフィルタ46Cにすることで、人体の動きよりも遅い動きであるノズル16の動きを識別することが可能となる。逆に、第一のフィルタ46Bでは第二のフィルタ46Cよりも高い周波数帯で、且つ人体の移動に伴う検知信号の周波数帯のみが通過するような周波数帯の設定を行うものである。
【0048】
上記のように、使用者の動きよりも遅い動きであるノズル16の動きを、第二のフィルタ46Cで分別することが可能となるため、ノズル16が駆動している場合には第二のフィルタ46Cの検知信号を無視して第一のフィルタ46Bから得られる検知信号を基に使用者の動きを判断するものである。これにより、ノズル16の駆動によって発生した検知信号による人体の誤検知を抑制することが可能となるため、便座装置10における使用者の検知精度を高めることが可能となる。
【0049】
また、ノズル16が駆動していない場合には、第一のフィルタ46B、第二のフィルタ46Cから得られる検知信号を用いて使用者の検知を行うものである。ここで、第一のフィルタ46Bからの検知信号でも使用者の動作を判断することができるが、ノズル16が駆動していない場合には、通常の使用者の動きよりも低い動きも検知することで使用者の動きをより詳細に判断することが可能となるため、ノズル16が駆動していない場合には2つのフィルタから出力される検知信号に基づいて制御を行う。これにより、使用者の動きをより詳細に判断することが可能となる。
【0050】
以上より、便座装置10のノズル16の動きに対して電波センサ23で誤検知を起こす恐れがあったが、ノズル駆動時のみ制御部20に設けられた第二のフィルタ46Cの信号による判断をキャンセルすることで、ノズル16の動きに対する電波センサ23での誤検知を抑制しつつ使用者の動きを確実に検出することが可能となる。これにより、ノズル16の動きによって使用者の接近/離遠に基づき便座装置10が誤動作することなく、確実な使用者の検知が可能な便座装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
10・・・便座装置、11・・・便蓋、12・・・本体部、13・・・便座、14・・・便器、15・・・吐水口、16・・・ノズル、17・・・洗浄水、18・・・リモコン、20・・・制御部、21A・・・電磁弁、21B・・・ヒーター、21C・・・水抜き部、22・・・給水路、23・・・電波センサ、24A・・・乾燥用送風ファン、24B・・・乾燥用空気ダクト、25A・・・脱臭用送風ファン、25B・・・脱臭用空気ダクト、26・・・便蓋回動体、27・・・便座回動体、28・・・ノズル外面洗浄部、29・・・電波の放射領域、30・・・電波の最大放射方向、31・・・電波の放射領域(鉛直上側)、32・・・電波の放射領域(鉛直下側)、40・・・電波送信部、41・・・送信信号、42・・・電波受信部、43・・・受信信号、44・・・発振回路、45・・・ミキサ回路、46A・・・ノイズカットフィルタ、46B・・・第一のフィルタ、46C・・・第二のフィルタ、47・・・判定部、48・・・記憶部、49・・・動作指示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7