特許第6041256号(P6041256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041256
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/01 20060101AFI20161128BHJP
   G01G 3/04 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G01G23/01 A
   G01G3/04
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-126463(P2012-126463)
(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公開番号】特開2013-250216(P2013-250216A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501168814
【氏名又は名称】国立研究開発法人水産研究・教育機構
(74)【代理人】
【識別番号】100140143
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小河 道生
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 浩平
(72)【発明者】
【氏名】岡谷 喜良
(72)【発明者】
【氏名】高田 順司
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 重幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】淺野 和人
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−145521(JP,U)
【文献】 特開昭51−030770(JP,A)
【文献】 特公昭36−012397(JP,B1)
【文献】 実開昭51−142365(JP,U)
【文献】 実開昭58−097532(JP,U)
【文献】 米国特許第05811740(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 23/00−23/20
G01G 3/00 − 3/04
G01G 9/00
G01G 17/00
G01G 19/40,19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
計量対象物を載せる対象物載置皿と、
錘を載せる錘載置皿と、
前記筐体外に一部が露出した第1の針であって当該露出した部分が水平方向に延在する第1の針と、
前記筐体外に一部が露出した第2の針であって当該露出した部分が水平方向に延在する第2の針と、
前記筐体内に収められた第1の支持機構であって、前記対象物載置皿及び前記第1の針をそれらが上下方向に動き得るように支持する部材を含む第1の支持機構と、
前記筐体内に収められた第2の支持機構であって、前記錘載置皿及び前記第2の針をそれらが上下方向に動き得るように支持する部材を含む第2の支持機構と、
前記第1の支持機構における前記対象物載置皿を支持する部材に上方向の付勢力を与える第1の付勢手段と、
前記第2の支持機構における前記錘載置皿を支持する部材に上方向の付勢力を与える第2の付勢手段と
を具備し、
前記第1の針及び前記第2の針は、各先端が矢印状をなしており、一方が右方向、他方が左方向に、相対向するように延在しており、
揺れのある場所においても、前記錘載置皿に目標重量に相当する質量の錘を載せ、前記対象物載置皿に前記計量対象物を載せた場合、前記錘と前記計量対象物とに加わる加速度は等しくなることから、前記第1及び第2の針が相対向するように延在しているとの構成により、前記計量対象物が前記錘よりも重いのか軽いのかを、上下方向における前記第1の針及び前記第2の針の位置関係から計測可能とした
ことを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記第1の針及び前記第2の針の変位量を梃子の原理により増幅する変位量増幅機構を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記筐体の前面には、左右方向に離間した2つの長孔であって各々が上下方向に延在する2つの長孔が設けられ、前記第1の針及び前記第2の針は前記2つの長孔の各々を介して筐体外に露出していることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項4】
前記筐体の上面に連結された第1及び第2の板と、前記第1及び第2の板の上下方向の位置を調整する調整手段とを具備することを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揺れのある場所での計量作業を効率化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
曳縄(ひきなわ)漁業などの漁獲作業では、魚を捕獲した漁師が秤による魚の計量とその仕分けを船上で行う場合がある。この場合、図9に示すように、計量対象である魚には、重力加速度X*g(Xは魚の質量)と船の揺れによる別方向からの加速度X*aの合成加速度が加わる。このため、秤などの計量器を船に持ち込んだとしてもそれを用いて魚の重さを正確に測ることは困難である。特許文献1には、船上での魚の計量を支援する技術の開示がある。同文献1に開示された計量器は、ばね秤における計量皿を支持する竿の動きを検出するエンコーダを有する。そして、この計測器は、エンコーダの検出値の変動幅が所定値を超えた時を波による振動が発生した時刻とみなしてタイマーを動作させ、衝撃による振動が無くなるまでの時間Tが経過した後のエンコーダの出力信号を基に魚の重量を計測するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−268418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術の場合、エンコーダや各種演算を行う信号処理装置を搭載せねばならないため、装置が大がかりなものとなり、製造コストも高くなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、揺れのある場所での正確な計量を実現できる仕組みを低コストで提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、筐体と、計量対象物を載せる対象物載置皿と、錘を載せる錘載置皿と、前記筐体外に一部が露出した第1の針であって当該露出した部分が水平方向に延在する第1の針と、前記筐体外に一部が露出した第2の針であって当該露出した部分が水平方向に延在する第2の針と、前記筐体内に収められた第1の支持機構であって、前記対象物載置皿及び前記第1の針をそれらが上下方向に動き得るように支持する部材を含む第1の支持機構と、前記筐体内に収められた第2の支持機構であって、前記錘載置皿及び前記第2の針をそれらが上下方向に動き得るように支持する部材を含む第2の支持機構と、前記第1の支持機構における前記対象物載置皿を支持する部材に上方向の付勢力を与える第1の付勢手段と、前記第2の支持機構における前記錘載置皿を支持する部材に上方向の付勢力を与える第2の付勢手段とを具備し、前記第1の針及び前記第2の針は、各先端が矢印状をなしており、一方が右方向、他方が左方向に、相対向するように延在しており、揺れのある場所においても、前記錘載置皿に目標重量に相当する質量の錘を載せ、前記対象物載置皿に前記計量対象物を載せた場合、前記錘と前記計量対象物とに加わる加速度は等しくなることから、前記第1及び第2の針が相対向するように延在しているとの構成により、前記計量対象物が前記錘よりも重いのか軽いのかを、上下方向における前記第1の針及び前記第2の針の位置関係から計測可能としたことを特徴とする計量装置を提供する。
また、前記第1の針及び前記第2の針の変位量を梃子の原理により増幅する変位量増幅機構を更に備えてもよい。
【0007】
本発明では、第1の支持機構が対象物載置皿及び針をそれらが上下方向に連動して動き得るように支持しており、第1の付勢手段が第1の支持機構における対象物載置皿を支持する部材に上方向の付勢力を与えている。また、第2の支持機構が錘載置皿及び針をそれらが上下方向に連動して動き得るように支持しており、第2の付勢手段が第2の支持機構における対象物載置皿を支持する部材に上方向の付勢力を与えている。このため、錘載置皿に目標重量に相当する質量の錘を載せ、対象物載置皿に計量対象物を載せた場合、錘と計量対象物に加わる加速度X*a(船の揺れによる鉛直方向と異なる方向からの加速度)は常に等しくなる。よって、本発明によると、揺れの如何に拘わらず対象物載置皿に載せた物が錘載置皿に載せた錘よりも重いのか軽いのかを正確に計測することができる。
【0008】
また、前記筐体の前面には、左右方向に離間した2つの長孔であって各々が上下方向に延在する2つの長孔が設けられ、前記第1の針及び前記第2の針は前記2つの長孔の各々を介して筐体外に露出していてもよい。
【0009】
また、前記筐体の上面に連結された第1及び第2の板と、前記第1及び第2の板の上下方向の位置を個別に調整する調整手段とを具備してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態である魚計量装置の正面図、右側面図、上面図である。
図2図1(C)のD−D’線断面図である。
図3図1(A)のE−E’線断面図である。
図4図1(A)のF−F’線断面図である。
図5】本発明の第1実施形態である魚計量装置における第1の支持機構の動作を説明する図である。
図6】同装置における第2の支持機構の動作を説明する図である。
図7】本発明の第2実施形態である魚計量装置の側断面図である。
図8】本発明の第3実施形態である魚計量装置の側断面図である。
図9】従来技術の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1(A)は、本発明の第1実施形態である魚計量装置10の上面図である。図1(B)は、魚計量装置10の正面図である。図1(C)は、魚計量装置10の右側面図である。図2は、図1(C)のD−D’線断面図である。図3は、図1(B)のE−E’線断面図である。図4は、図1(B)のF−F’線断面図である。この魚計量装置10は、船上において当該装置10の魚載置皿20(対象物載置皿)に載せた計量対象物である鮮魚が目標重量(例えば、5kg重とする)と同じ重さであるかを計るためのものである。この魚計量装置10の筐体11は、台形状をなす左面12及び右面13と、矩形状をなす上面14、下面15、前面16、及び後面17とに囲まれた中空な台形柱状をなしている。左面12と右面13は左右方向に幅W1(例えば、W1=400mm)の間隔をあけて対向している。上面14と下面15は上下方向に幅W2(例えば、W2=250mm)の間隔をあけて対向している。後面17は、これら4つの面12,13,14,15と直交している。前面16は、右面13及び左面12と直交している。また、前面16は、下面15と鋭角に交差しており、上面14と鈍角に交差している。右面13における後面17及び下面15と交差する部分の近傍には右面13の内外を貫く排水口18が設けられている。下面15の肉厚は、排水口93のある側と反対側の面である左面12から排水口18のある側の面である右面13に近づくに従って薄くなっており、筐体11の底には左面12から右面13に向かう傾斜がつけられている。下面15の底には滑り止めゴムシート19が貼付されている。
【0012】
筐体11の前面16には2つの長孔21L及び21Rが穿設されている。2つの長孔21L及び21Rは左右方向に離間している。2つの長孔21L及び21Rの各々は上下方向に延在している。2つの長孔21L及び21Rのうち長孔21Lは、前面16における左端から距離W3(W3=W1/4)だけ右に離れた位置にある。長孔21Rは、前面16における長孔21Lから距離W4(W4<W3)だけ右に離れた位置にある。長孔21Lからは針22Lの一部が露出している。長孔21Rからは針22Rの一部が露出している。針22L及び22Rにおける筐体11外に露出した部分は相対向する方向(より具体的には、針22Lは右方向、針22Rは左方向)に水平に延在している。針22L及び22Rの各々の先端は矢印状をなしている。前面16における長孔21L及び21Rの各上端部の間には、0kgの目盛り線であることを示す「−0−」の文字が記されている。この文字から下方向に離れた位置には5kgの目盛り線であることを示す「−5−」の文字が記されている。筐体11の前面16における長孔21L及び21Rの周囲の部分はアクリル樹脂製のカバー23により覆われている。
【0013】
図2に示すように、筐体11の上面14には、2つのねじ穴24L及び24Rと2つの孔25LL及び25LCが穿設されている。ねじ穴24Lは上面14における左端から距離W3だけ右に離れた位置にある。ねじ穴24Rは上面14における右端から距離W3だけ左に離れた位置にある。孔25LLは、上面14におけるねじ穴24Lから距離W5(W5<W4)だけ左に離れた位置にある。孔25LCは、上面14におけるねじ穴24Lから距離W5だけ右に離れた位置にある。
【0014】
筐体11の上面14の2つのねじ穴24L及び24Rには摘み操作子26L及び26Rが各々装着されている。操作子26L及び26Rは、各々を介して筐体11の上面14内側の部分に連結された板29L及び29Rの上下方向の位置を個別に調節する調整手段としての役割を果たす。操作子26Lは、円柱状の摘み部27Lとこの摘み部27Lの下面の中心から下方向に延在するねじ部28Lとを有する。操作子26Lのねじ部28Lは筐体11のねじ穴24Lに嵌め込まれている。ねじ部28Lにおける筐体11内に突出した部分の先端は筐体11内における板29Lの上面に固定されている。操作子26Rは、円柱状の摘み部27Rとこの摘み部27Rの下面の中心から下方向に延在するねじ部28Rとを有する。操作子26Rのねじ部28Rは筐体11のねじ穴24Rに嵌め込まれている。ねじ部28Rにおける筐体11内に突出した部分の先端は筐体11内における板29Rの上面に固定されている。
【0015】
筐体11内には、第1の支持機構31L及び第2の支持機構31Rが収められている。第1の支持機構31Lは、魚載置皿20及び針22Lをこれらが上下方向に連動して動き得るように支持する部材であるコの字状部材32Lを含んでいる。第2の支持機構31Rは、この機構31Rとともに筐体11内に収められている錘載置皿30(図2及び図4参照)及び針22Rをこれらが上下方向に連動して動き得るように支持する部材であるコの字状部材32Rを含んでいる。
【0016】
両機構31L及び31Rについて詳細に説明すると、第1の支持機構31Lのコの字状部材32Lは、左右方向に延在する基底部33Lとこの基底部33Lの左右の端部から上方向に延在する脚部34LL及び34LCとを有している。脚部34LL及び34LCは筐体11の孔25LL及び25LCを通って筐体11外に延在している。脚部34LL及び34LCの上端は魚載置皿20の底面に固定されている。コの字状部材32Lの基底部33L上における脚部34LL及び34LC間の真中には高さH1(例えば、H1=100mm)の寸法を持った支柱35Lがある。コの字状部材32Lにおける脚部34LLの内側には上下方向に離間した平行リンク部材40LL及び41LLの前端部が枢着(軸1LL及び2LLにより連結)されている。コの字状部材32Lにおける脚部34LCの内側には上下方向に離間した平行リンク部材40LC及び41LCの前端部が枢着(軸1LC及び2LCにより連結)されている。
【0017】
図3に示すように、平行リンク部材40LC及び41LCの後端部は筐体11の後面17内側の凸部46LC及び47LCに枢着(軸3LC及び4LCにより連結)されている。平行リンク部材40LL及び41LLの後端部は筐体11の後面17内側の凸部46LL(不図示)及び47LL(不図示)に枢着(軸3LL(不図示)及び4LL(不図示)により連結)されている。筐体11の後面17内側における凸部47LL(不図示)及び47LC間の真中よりもやや上方の位置には凸部48Lが設けられている。この凸部48Lには、長さL1(たとえば、L1=150mm)の寸法を持った棹体45Lの一端部が枢着(軸5Lにより連結)されている。この棹体45Lは凸部48Lとの連結部位から斜め前上方に向かって延在している。棹体45Lにおける凸部48Lとの連結部位から距離L2(L2<L1/2)だけ離れた部分は支柱35Lの上端に枢着(軸6Lにより連結)されている。棹体45Lの他端部には針22Lの基端部が固定されている。
【0018】
また、板29Lとコの字状部材32Lの基底部33L上における支柱35Lの左右両側の位置との間には第1の付勢手段としての役割を果たす2つのつる巻きばね50LL及び50LCが張設されている。この2つのつる巻きばね50LL及び50LCにより、コの字状部材32Lには上方向の付勢力が与えられる。図5に示すように、魚載置皿20に魚が載せられると、魚載置皿20とこれを支えるコの字状部材32Lがつる巻きばね50LL及び50LCの付勢力に抗って下方向(図5の矢印A方向)に動き、コの字状部材32Lにおける支柱35Lと棹体45Lとの連結部分が下方向に引っ張られる。これにより、棹体45Lが後面17における凸部48Lとの連結部位を支点として下方向に搖動し、針22Lにおける筐体11外に露出した部分が長孔21Lに沿って下方向(図5の矢印A’方向)に動く。
【0019】
図2に示すように、第2の支持機構31Rのコの字状部材32Rは、左右方向に延在する基底部33Rとこの基底部33Rの左右の端部から上方向に延在する脚部34RC及び34RRとを有している。脚部34RC及び34RRは筐体11の上面14よりも僅かに下の位置まで延在している。コの字状部材32Rの基底部33R上における脚部34RC及び34RR間の真中には高さH1の寸法を持った支柱35Rがある。コの字状部材32Rにおける脚部34RCの内側には上下方向に離間した平行リンク部材40RC及び41RCの前端部が枢着(軸1RC及び2RCにより連結)されている。コの字状部材32Rにおける脚部34RRの内側には上下方向に離間した平行リンク部材40RR及び41RRの前端部が枢着(軸1RR及び2RRにより連結)されている。図2及び図4に示すように、コの字状部材32Rの基底部33R上における支柱35Rの周囲には環状の錘載置皿30が固定されている。
【0020】
また、図4に示すように、平行リンク部材40RR及び41RRの後端部は筐体11の後面17内側の凸部46RR及び47RRに枢着(軸3RR及び3RRにより連結)されている。平行リンク部材40RC及び41RCの後端部は筐体11の後面17内側の凸部46RC(不図示)及び47RC(不図示)に枢着(軸3RC(不図示)及び4RC(不図示)により連結)されている。筐体11の後面17内側における凸部47RC及び47RR間の真中よりもやや上方の位置には凸部48Rが設けられている。この凸部48Rには、長さL1の寸法を持った棹体45Rの一端部が枢着(軸5Rにより連結)されている。この棹体45Rは凸部48Rとの連結部位から斜め前上方に向かって延在している。棹体45Rにおける凸部48Rとの連結部位から距離L2だけ離れた部分は支柱35Rの上端に枢着(軸6Rにより連結)されている。図2に示すように、棹体45Rの他端部には棹体39が固定されている。棹体39は、棹体45Rとの連結部位から左方向に向かって延在しており、その先端は前面16における長孔21Rのある位置に達している。棹体39の先端には針22Rの基端部が固定されている。
【0021】
また、図2に示すように、板29Rとコの字状部材32Rの基底部33R上における支柱35Rの左右両側の位置との間には第2の付勢手段としての役割を果たす2つのつる巻きばね50RC及び50RRが張設されている。この2つのつる巻きばね50RC及び50RRにより、コの字状部材32Rには上方向の付勢力が与えられる。図6に示すように、錘載置皿30に錘51が載せられると、錘載置皿30とこれを支えるコの字状部材32Rがつる巻きばね50RC及び50RRの付勢力に抗って下方向(図6の矢印A方向)に動き、コの字状部材32Rにおける支柱35Rと棹体39との連結部分が下方向に引っ張られる。これにより、棹体39が後面17における凸部48Rとの連結部位を支点として下方向に搖動し、針22Rにおける筐体11外に露出した部分が長孔21Rに沿って下方向(図6の矢印A’方向)に動く。
【0022】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によると、次の効果が得られる。
第1に、本実施形態では、第1の支持機構31Lが魚載置皿20及び針22Lをそれらが上下方向に連動して動き得るように支持しており、第1の付勢手段であるつる巻きばね50LL及び50LCがこの第1の支持機構31Lにおける魚載置皿20を支持する部材32Lに上方向の付勢力を与えている。また、第2の支持機構31Rが錘載置皿30及び針22Rをそれらが上下方向に連動して動き得るように支持しており、第2の付勢手段であるつる巻きばね50RC及び50RRがこの第2の支持機構31Rにおける錘載置皿30を支持する部材32Rに上方向の付勢力を与えている。このため、錘載置皿30に目標重量に相当する質量(5kg)の錘51を載せ、魚載置皿20に計量対象である魚を載せた場合、錘51と魚に加わる加速度X*a(船の揺れによる鉛直方向と異なる方向からの加速度)は常に等しくなる。従って、本実施形態によると、船の揺れの如何に拘わらず魚載置皿20に載せた魚が錘載置皿30に載せた錘51よりも重いのか軽いのかを正確に計測ことができる。
【0023】
第2に、本実施形態では、筐体11の前面16には、左右方向に離間した2つの長孔21L及び21Rが設けられ、針22L及び22Rは2つの長孔21L及び21Rの各々を介して筐体11外に露出し、露出した部分が相対向する方向に向かって延在している。よって、本実施形態によると、上下方向における針22L及び22Rの位置関係が分かり易くなる。
【0024】
第3に、本実施形態では、筐体11の上面14に連結された板29Lと魚載置皿20を支持する部材32Lとの間につる巻きばね50LL及び50LCが張設されており、筐体11の上面14に連結された板29Rと錘載置皿30を支持する部材32Rとの間につる巻きばね50RC及び50RRが張設されている。そして、本実施形態では、調整手段たる操作子26L及び26Rの操作により板29L及び29Rの上下方向の位置を調整できるようになっている。よって、本実施形態によると、つる巻きばね50LL,50LC,50RC,及び50RRが劣化し、魚載置皿20及び錘載置皿30に何も載せていない状態における針22L及び22Rの位置が「−0−」の文字からずれた場合でも、これらの位置を「−0−」の文字に合わせて使用することができる。従って、魚計量装置10の耐用年数を長くすることができる。
【0025】
第4に、本実施形態では、筐体11の後面17の凸部48Lに長さL1の寸法を持った棹体45Lの一端部が枢着されており、この棹体45Lにおける凸部48Lとの連結部位から距離L2だけ離れた部分はコの字状部材32Lにおける支柱35Lの上端に枢着されている。また、筐体11の後面17の凸部48Rに長さL1の寸法を持った棹体45Rの一端部が枢着されており、この棹体45Rにおける凸部48Rとの連結部位から距離L2だけ離れた部分はコの字状部材32Rにおける支柱35Rの上端に枢着されている。本実施形態では、長さL1と距離L2との関係がL1/2>L2となっているため、これらの部材32L、32R、45L、45Rは、梃子の原理により針22L及び22Rの変位量を増幅する変位量増幅機構として動作する。この作用について詳述すると、本実施形態では、たとえば、魚載置皿20に置かれた鮮魚の重さにより棹体45Lと支柱35Lの連結点がLだけ下方向に変位した場合、針22Lはこの変位量Lに(L1−L2)/L2を乗じた距離L(L1−L2)/L2だけ変位する。よって、本実施形態によると、つる巻きばね50LL及び50LCの伸縮量よりも針22L及び22Rの変位量が大きくなる。従って、本実施形態によると、針22L及び22Rのビビリが抑えられるような固めのつる巻きばね50LL,50LC,50RC,及び50RRが装着されている場合でも、魚の重さと目標重量との差を確認し易くすることができる。
【0026】
第5に、本実施形態では、筐体11の一面である右面13に排水口18が設けられており、筐体11の底には左面12から右面13に向かう傾斜がつけられている。よって、筐体11の孔25LL,25LCから筐体11内に入った水が筐体11内に滞留して筐体11を錆びつかせる、といった事態の発生を防ぐことができる。
【0027】
第6に、本実施形態では、筐体11の下面15の底に滑り止めゴムシート19が貼付されている。よって、本実施形態によると、船の甲板上に置いた魚計量装置10が甲板上に入った塩水や船の揺れなどにより動いてしまい計量作業が行えなくなる、という事態の発生を防ぐことができる。
【0028】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図7は、本発明の第2実施形態である魚計量装置10Aを左面12及び右面13の真ん中を切断面として右側から視た側断面図である。図7において、魚計量装置10のものと同じ構成要素には同じ符号を付し、これらに関する再度の説明を割愛する。この魚計量装置10Aは、第1実施形態における棹体45Lと針22Lとの間に、ラック(直線歯車)70L、歯車71L、72L、及びラック(直線歯車)73Lを介挿したものである。本実施形態では、これらの部材70L、71L、72L、及び73Lと、棹体45Lと、コの字状部材32Lとにより変位量増幅機構が構成される。より詳細に説明すると、この魚計量装置10Aにおける歯車71L及び72Lは棹体45Lの先端の下に左右に並べて固定されている。2つの歯車71L及び72Lは回転軸を共有している。歯車71Lの直径D1と歯車72Lの直径D2の大小関係はD1<D2となっている。ラック70Lの上端は棹体45Lの先端に固定されている。ラック70Lの歯は歯車71Lの歯と噛合している。また、この魚計量装置10の長孔21Lにおける左右に対向する周壁にはレール(不図示)が設けられている。そして、ラック73Lは長孔21Lのレール上を摺動し得るようにレールに嵌め込まれている。ラック73Lの歯は筐体11の内側を向いている。このラック73Lの歯は歯車72Lと噛合している。また、ラック73Lにおける歯のある側と反対側の面には針22Lの基端部が固定されている。
【0029】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態では、魚載置皿20に魚が載せられると、魚載置皿20とこれを支えるコの字状部材32Lがつる巻きばね50LL及び50LCの付勢力に抗って下方向(図7の矢印A方向)に動き、棹体45Lが後面17における凸部48Lとの連結部位を支点として下方向に搖動し、その先端に固定されたラック(直線歯車)70Lが下方向に動く。ラック(直線歯車)70Lが下方向に動くと、歯車71L及び72Lが反時計まわり方向(図7の矢印B方向)に回動し、ラック73Lとこれに固定された針22Lが下方向(図7の矢印A’方向)に移動する。そして、本実施形態では、歯車71Lの直径D1と歯車72Lの直径D2の差の分だけ針22Lの変位量がより一層増幅される。従って、本実施形態によると、魚の重さと目標重量との差を確認し易くすることができる。
【0030】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図8は、本発明の第3実施形態である魚計量装置10Bを左面12及び右面13の真ん中を切断面として右側から視た側断面図である。図8において、魚計量装置10のものと同じ構成要素には同じ符号を付し、これらに関する再度の説明を割愛する。この魚計量装置10Bは、第1実施形態におけるつる巻きばね50LL,50LC,50RC,50RRを筐体11’への着脱が可能な弾性体ユニット80により置き換えたものである。この魚計量装置10Bにおける弾性体ユニット80のケース81は円筒状をなしている。ケース8の周側面82には上下方向に延在する開口83が穿設されている。この開口83の左右の周壁にはレール(不図示)が設けられている。この開口83のレールには、ケース81の外側に向かって三角形状に凸んだ凸部84を有する受けピン85が嵌め込まれている。また、このケース81の上面の中央にはねじ穴86が設けられている。このねじ穴86には、摘み操作子88のねじ89が嵌め込まれている。このケース81内におけるねじ89の下端91にはつる巻きばね92の上端が固定されている。また、つる巻きばね92の下端は受けピン85におけるケース81内に突き出た部分の上端に固定されている。また、魚計量装置10Bの筐体11’の上面14’には上面14’の後端から前方に向かって直線状に伸びる溝93が穿設されている。また、筐体11’の後面17’には矩形状の開口94が設けられており、この開口94は開閉自在な扉95により覆われている。
【0031】
魚計量装置10Bの筐体11’内におけるコの字状部材32Lは、左右のガイドレール96LL(不図示)及び96LCの間にはめ込まれている。コの字状部材32Lとこれに固定された魚載置皿20は、このガイドレール96LL(不図示)及び96LCに沿って上下方向に移動し得る。また、コの字状部材32Lの下端には前後方向に延在する棹体97Lが固定されており、この棹体97Lの前端には針21Lの基端部が固定されている。
【0032】
また、本実施形態では、弾性体ユニット80を次のようにして魚計量装置10Bの筐体11’に装着する。まず、筐体11’の扉95を開いて筐体11’の後面17’の開口94を外部に露出させる。次に、弾性体ユニット80の受けピン85を十分に押し下げる。そして、その状態のまま弾性体ユニット80を同ユニット80のねじ89を筐体11の溝93に嵌めるようにして筐体11内に収め、受けピン85の凸部84に棹体97Lの後端を引っかけてからピン85を押し下げている力を緩める。これにより、弾性体ユニット80のばね92の弾力が、棹体97Lとこれに連結されたコの字状部材32Lおよび魚載置皿20を上方に持ち上げる力に変換される。
【0033】
以上が、本実施形態の構成の詳細である。本実施形態によると、魚計量装置10Bにおける継時劣化する部材であるばねを交換することができる。よって、魚計量装置10Bを半永久的に使用することができる。
【0034】
以上、本発明の第1乃至第3実施形態について説明したが、かかる実施形態に以下の変形を加えてもよい。
(1)上記第1乃至第3実施形態において、つる巻きばね50LL,50LC,50RC,50RRをばね以外の弾性体(たとえば、ゴム)により置き換えてもよい。
【0035】
(2)上記第1乃至第3実施形態では、針22L,22Rにおける筐体11外に露出した部分が相対向する方向に延在していた。しかし、針22L,22Rにおける筐体11外に露出した部分が同じ方向(たとえば、左方向)に延在していてもよい。
【0036】
(3)上記第1及び第2実施形態では、板29L及び29Rの高さを2つの摘み操作子26L及び26Rにより個別に調整できるようになっていた。しかし、板29L及び29Rのうち一方の高さだけを調整できるようにしてもよい。
【0037】
(4)上記第1及び第2実施形態では、魚計量装置10の筐体11は、中空な台形柱状をなしていた。しかし、筐体11は中空である必要はなく、内部機構が露出していてもよい。また、筐体11における左面12及び右面13を台形と異なる形状にしてもよいし、上面14、下面15、前面16、及び後面17を矩形と異なる形状にしてもよい。また、左面12、右面13、上面14、下面15、前面16、及び後面17の交差角度を上記第1及び第2実施形態のものと異ならせてもよい。
【0038】
(5)上記第1乃至第3実施形態では、目標重量が5kg重となっており、前面16には「−0−」の文字と「−5−」の文字が記されていた。しかし、目標重量を5kg重と異なる値とし、この値を前面16における「−5−」の文字の代わりに記してもよい。
【0039】
(6)上記第3実施形態では、弾性体ユニット80のケース81は円筒状をなしていた。しかし、ケース81を円筒と異なる形状にしてもよい。例えば、ケース81を装着時における棹体97Lに臨む面を平らにした所謂蒲鉾状にしてもよい。このようにすると、魚計量装置10Bの筐体11’に弾性体ユニット80を装着した際における棹体97Lと受けピン85の噛合いを良好にすることができる。
【0040】
(7)上記第3実施形態において、棹体97Lと針21Lの間に魚計量装置10Bのものと同様の変位量増幅機構(図7)を介挿してもよい。
【0041】
(8)上記第1乃至第3実施形態において、魚以外の物(たとえば、貝)を計量対象物とする計量装置を構成してもよい。また、船上以外の揺れのある場所での物の重さを測定に本発明である計量装置を利用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…魚計量装置、11…筐体、12…左面、13…右面、14…上面、15…下面、16…前面、17…後面、18…排水口、19…滑り止めゴムシート、20…魚載置皿、21…長孔、22…針、23…カバー、24…孔、25…ねじ穴、26…摘み操作子、27…操作部、28…ねじ部、29…板、30…錘載置皿、31…支持機構、32…コの字状部材、33…基底部、34…脚部、35…支柱、40,41…平行リンク部材、45…棹体、46、47…凸部、50…つる巻きばね。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9