【文献】
Hiroshi Harada, Fumihide Kojima, Alina Lu Liru, Ming-Tuo Zhou, Chin-Sean Sum,PHY and MAC Proposal for IEEE 802.15.4m,2012年 5月 7日,Slide 73-90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ワイヤレスパーソナルエリアネットワークは、個人の作業環境にあるデバイスと、その周辺にあるデバイスとの相互接続を可能にする近距離ネットワークである。ワイヤレスパーソナルエリアネットワークにおいては、主に小型で安価であり、かつ低出力のデジタル無線通信を行うことのできる通信デバイスが用いられている。
【0003】
こうしたデバイスには、ワイヤレスセンサーネットワーク、ホームオートメーション、家庭用電化製品等が含まれている。近年、こうしたネットワークの適用範囲として、Smart Utility Network(SUN)、Active Radio Frequency Identification(RFID)、Medial Body area Network (MBAN)、Low Energy Critical Infrastructure(LECIM)等も含まれるようになった。
【0004】
これらのデバイスの中には、地理的に離れたエリアを結ぶことのできる広域通信性や、比較的簡易な構成のノードを用いつつ、高い接続性が必要になるものがある。こうしたデバイス間の通信においては、高度に冗長化されたネットワークが重要なものとなっていて、デバイス間の直接的なデータの送受信を含む、様々なネットワーク接続の研究開発が行われている。
【0005】
IEEE std 802.15.4-2011[1]等のIEEE802.15.4の規格に準拠するネットワークは、スター型ネットワークおよびピアツーピアネットワークの2つのネットワークトポロジーに適用することができる。
【0006】
図1は、IEEE802.15.4ネットワークが適用される2つのネットワークトポロジーを示す図である。
【0007】
スター型ネットワークは、PANコーディネータおよび複数のデバイスにより構成される。全てのデバイスはPANコーディネータに接続され、PANコーディネータはこれら全てのデバイスの管理を行う。スター型ネットワークにおける通信は、デバイスとPANコーディネータ間でのみ行われる。
【0008】
ピアツーピアネットワークは、PANコーディネータ、コーディネータおよび前記2つのコーディネータと接続される多数のデバイスにより構成される。
【0009】
PANコーディネータは、ピアツーピアネットワークの同期行っている。IEEE std 802.15.4-2011等の規格によると、ピアツーピアネットワークに含まれる任意の2つのデバイス間で、直接情報の送受信を行うことができるようになっている。
【0010】
典型的なピアツーピアネットワークの例として、PANコーディネータ、下位のコーディネータおよびデバイスにより構成されるクラスターツリー型ネットワークがある。
図2は、IEEE802.15.4のクラスターツリー型ネットワークの例を示す図である。
【0011】
ところで、IEEE802.15.4ネットワークにおいては、3種類のデータ送受信トランザクションが行われる。
a.デバイスから送信されたデータのコーディネータによる受信
b.コーディネータから送信されたデータのデバイスによる受信
c.2つのピアデバイス間でのデータ送受信
【0012】
スター型ネットワークにおいては、コーディネータとデバイス間においてのみデータ送受信が行われるため、上記aとbの2つのトランザクションのみが行われる。ピアツーピアネットワークでは、上記a〜bの3つのトランザクションが全て行われる。
【0013】
デバイスからコーディネータへのデータ送信は以下のようにして行われる。
【0014】
<ビーコン可能PANの場合>
デバイスは、当該デバイスに割り当てられているコーディネータから定期的に送信されるネットワークビーコンの問い合わせを行う。デバイスは、コーディネータからビーコンを受信すると、スーパーフレームに同期する。そして、デバイスは、コーディネータに対して適切な時にデータを送信する。このとき、コーディネータはデバイスからの要求がある場合には、デバイスにデータパケットを受信したことを通知する。
【0015】
<ビーコン不能PANの場合>
デバイスは単にコーディネータにデータを送信し、コーディネータはデバイスからの要求がある場合には、デバイスにデータを受信したことを通知する。
【0016】
コーディネータからデバイスへのデータ送信は以下のようにして行われる。
【0017】
<ビーコン可能PANの場合>
コーディネータはデバイスに対し、ビーコンにより未処理のデータの存在の有無を通知する。デバイスは周期的にビーコンの問い合わせを行い、未処理のデータを検出すると、デバイスはコーディネータに対してデータをリクエストするコマンドを送信する。コーディネータはコマンドリクエストデータを受信すると、リクエストコマンドの受信をデバイスに通知するとともに、デバイスに対して速やかにデータを送信する。デバイスはコーディネータからの要求がある場合には、コーディネータに対してデータを受領したことを通知する。
【0018】
<ビーコン不能PANの場合>
コーディネータはペンディングデータがある場合、デバイスに送信するための当該データを保存する。そしてデバイスは、上位階層からの制御に基づき、コーディネータにデータリクエストコマンドを送信する。コーディネータはデバイスに送信すべきペンディングデータがある場合、デバイスに対して送信する通知コマンドにより未処理のデータが存在すると応答する。または、コーディネータはペンディングデータが存在しない場合には、デバイスに対するペンディングデータが存在しないことを、通知コマンドにより応答する。ペンディングデータが存在する場合、コーディネータはデバイスのデータリクエストに対する上記応答後に、当該データをデバイスに送信する。デバイスは、コーディネータからの要求がある場合には、コーディネータからデータを受信したことを通知する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態としてIEEE802.15.4ワイヤレスパーソナルエリアネットワークについて詳細に説明する。
【0028】
本願発明者は、デバイス間の直接的なデータ送受信を行うために、(a)プローブモード直接データ送信、(b)ポーリングモード直接データ送信、(c)ブロードキャストモード直接データ送信、および(d)マルチキャストモード直接データ送信の4つのオペレーションモードを発明した。
【0029】
プローブモード直接データ送信では、デバイスは近隣デバイスに対するユニキャストなデータ送信が行われる。近隣デバイスに対するデータ送信に先立ち、近隣デバイスのプローブが行われ、プローブに対する応答があった場合にのみ、データの送信が行われる。
【0030】
ポーリングモード直接データ送信では、デバイスは近隣デバイスに対してデータのポーリングを行う。ポーリングに対する応答がデータの存在を示すものである場合、ポーリングをしたデバイスは近隣デバイスからデータを受信する。
【0031】
ブロードキャストモード直接データ送信では、デバイスはデータを周囲に送信し、近隣のデバイスはいずれも当該データを受信することができる。
【0032】
マルチキャストモード直接データ送信では、デバイスから1ないし複数の特定の近隣デバイスに対してデータの送信が行われる。
【0033】
また、本発明には、IEEE 802.15.4方式による近隣デバイスの検出方法も含まれ、当該方法によりワンホップでデータ送受信可能な近隣デバイスを検出することができる。
【0034】
以下、IEEE 802.15.4ネットワークを介するデバイス間の直接的データ送受信および近隣デバイスの検出に関する本願発明について、手順を示すフローチャート、メッセージシーケンスチャートおよびコマンドフレームを用いて説明する。
【0035】
図3は、IEEE 802.15.4ネットワークを介するデバイス間の直接的データ送受信の手順を示すフローチャートである。
【0036】
本発明において「デバイス」とは、IEEE 802.15.4によるスター型ネットワークを構成するデバイスであるノード、クラスターツリー型ネットワークのリーフデバイス、クラスターツリー型ネットワークのPANコーディネータではないコーディネータ、またはピアツーピアメッシュネットワークのデバイスを示している。なお、デバイスは、全機能搭載型デバイス(FFD)に限らず、低減機能型デバイス(RFD)であってもよい。
【0037】
図3に示すように、デバイスの電源が投入されると、デバイスとコーディネータ(PANコーディネータも含む)との接続が確立される(ステップS1)。コーディネータとの接続に成功すると、デバイスは、近隣デバイスの検出動作を開始する(ステップS2)。この動作の目的は、電波の届く範囲にあるピアデバイスの検出である。近隣デバイスの検出動作の詳細については後述する。
【0038】
近隣デバイスを検出すると、デバイスは以下に示す複数の動作を行う。
a.デバイスが近隣デバイスから近隣デバイス検出リクエストを受信する(ステップS3)。
b.直上の階層にあるデバイスが、1ないし複数の近隣デバイスへのデータを保持する(ステップS4)。
c.デバイスが近隣デバイスからのプローブコマンドを受信する(ステップS5)。プローブコマンドは、デバイスが近隣デバイスに送信するデータを保持しているか否かを検出するために用いられる。
d.直上の階層にあるデバイスが、近隣デバイスへのデータのポーリングを行うよう要求する(ステップS6)。
e.デバイスが近隣デバイスからのデータポーリングコマンドを受信する(ステップS7)。データポーリングコマンドは、近隣デバイスへのデータのポーリングを行うために用いられる。
f.デバイスはスリープモードに移行する(ステップS8)。
g.デバイスの電源がオフになる。
【0039】
デバイスは近隣デバイスから近隣検出リクエストコマンドを受信した場合、近隣デバイスから要求があるときは、近隣デバイスに対して、近隣デバイス検出応答コマンドを送信する(ステップS9)。
【0040】
直上の階層のデバイスが近隣デバイスに対するデータとしてユニキャストデータを保持している場合(ステップS10:Yes)、近隣デバイスへのデータ送信には、本願発明のプローブモード直接データ送受信が用いられる。プローブモード直接データ送受信による近隣デバイスへのデータのユニキャスト手順(ステップS11)については後述する。
【0041】
一方、ユニキャストを行わない場合であって(ステップS10:No)、デバイスが全ての近隣デバイスに対して送信されるデータを保持している場合(ステップS12:Yes)、デバイスは当該データを、IEEE 802.15.4-2011[1]において用いられているCSMA−CAアルゴリズムにより規定される適切な時間にブロードキャストする(ステップS13)。
【0042】
デバイスが限られた数の近隣デバイスリストに送信するデータを保持している場合には(ステップS12:No)、デバイスは近隣デバイスに直接データを送信するため、マルチキャストモード直接データ送受信を用いる(ステップS14)。マルチキャストモード直接データ送受信によるデータのマルチキャスティングについては後述する。
【0043】
また、デバイスは近隣デバイスからプローブコマンドを受信すると(ステップS5)、デバイスは近隣デバイスが自らに送信するためのデータを保持していると判定する。そしてデバイスは、近隣デバイスに対して自らがアウェイクの状態にあることを通知する(ステップS15)。
【0044】
そして、デバイスはmacMaxFrameTotalWaitTime以内に、当該通知を受信するレシーバを、近隣デバイスからの対応するデータフレームを受信可能な状態にし、近隣デバイスからデータを受信する(ステップS16)。また、デバイスは、近隣デバイスからデータ受信後に応答するよう要求されている場合には、受信の応答を近隣デバイスに送信する(ステップS17)。
【0045】
直上の階層のデバイスが近隣デバイスにデータのポーリングを要求した場合(ステップS6)、後述する近隣デバイスデータのポーリング手順を実行する(ステップS18)。
【0046】
デバイスが近隣デバイスからデータのポーリングコマンドを受信すると(ステップS7)、自ら保持しているデータ中に当該近隣デバイスに送信するデータがあるか否かの確認を行う(ステップS19)。
【0047】
デバイスは自らの当該データ保持の有無を近隣デバイスに通知する。近隣デバイスに送信するデータを保持している場合は(ステップS19:Yes)、近隣デバイスに当該データがある旨を示すデータポーリングコマンドを送信し(ステップS20)、デバイスは近隣デバイスに対して直接データを送信する(ステップS21)。一方、近隣デバイスに送信するデータを保持していない場合は(ステップS19:No)、近隣デバイスに当該データのない旨を通知する(ステップS24)。
【0048】
デバイスがスリープモードに移行した場合(ステップS8)、デバイスは直上の階層のデバイスから指示を受けるまで「スリープ」ステータスを保ち、当該指示を受けると「アウェイク」ステータスになる(ステップS22)。「アウェイク」ステータスになると、デバイスは近隣デバイスの検出の要否を判断し(ステップS23)、必要な場合には(ステップS23:Yes)、詳細なアプリケーションに基づき、再度近隣デバイスの検出を行う(ステップS2)。
【0049】
図4は、IEEE 802.15.4ネットワークにおける近隣デバイス検出手順を示すフローチャートである(
図3のステップS2参照)。上述したように、IEEE 802.15.4に準拠するデバイスは、コーディネータとの接続後、直上の階層からの指示を受けると、適切なタイミングで近隣デバイスの検出を行う。
【0050】
ビーコン可能PANにおいて、コーディネータ(PANコーディネータを除く)は、受信したスーパーフレームのアクティブ時間において近隣デバイスの検出を行う。受信されるスーパーフレームは、コーディネータに対するコーディネータ(PANコーディネータを含む)がビーコンを送信するスーパーフレームである。
【0051】
近隣デバイスの検出手順に従い、デバイスは、近隣デバイス検出要求コマンドを周囲に送出するとともに(ステップS31)、タイマーT_1による計時を開始する(ステップS32)。タイマーT_1の計時継続時間は、macMaxFrameTotalWaitTimeであってもよい。
【0052】
タイマーT_1による計時の終了前に、デバイスは近隣デバイス検出応答コマンドを近隣デバイスから受信するとともに(ステップS34)、当該コマンドの送信元が近隣デバイスのリストに含まれているものであるか否かの確認を行い、当該送信元がリストに含まれて
いない場合、デバイスは送信元をリストに追加する(ステップS35)
。
【0053】
一方、デバイスは近隣デバイスから近隣デバイス検出リクエストコマンドを受信することもある。このとき、デバイスは、近隣デバイス検出応答コマンドを送信することで近隣デバイスに応答する。近隣デバイス検出リクエストメッセージには、複数の条件を付加することができる。
【0054】
このような限定条件の一つの例として、近隣デバイスが上位に共通するコーディネータを有することを要求するという条件がある。この場合、デバイスは、近隣デバイス検出リクエストコマンドを受信すると、近隣デバイス検出リクエストコマンドの送信元が、共通するコーディネータを上位に有しているか否かを確認する。そして、共通するコーディネータを上位に有している場合には、デバイスは送信元に対し、近隣デバイス検出応答コマンドを送信することで応答する。一方、共通するコーディネータを上位に有していない場合には、デバイスは近隣デバイス検出要求コマンドを無視する。
【0055】
図5は、近隣デバイス検出におけるメッセージシーケンスチャートである。直上の階層にあるデバイス10が近隣デバイスの検出を行う場合、デバイスは基本MLME-NBR.RequestをデバイスMLME(Mac Layer Management Entity)20に送信する(ステップS41)。
【0056】
次に、デバイスMLME20は、近隣デバイスMLME30に対して、近隣デバイス検出リクエストコマンドを送信する(ステップS42)。
【0057】
近隣デバイスMLME30は、近隣デバイス検出リクエストコマンドを受信すると、近隣デバイス検出応答コマンドを返送する(ステップS43)。
【0058】
次に、近隣デバイス検出応答コマンドを受信したデバイスMLME20は、直上の階層にMLME-NBR.Confirmを送信する(ステップS44)。
【0059】
図6は、IEEE 802.15.4ネットワークにおける近隣デバイスに直接データをユニキャストする手順を示すフローチャートである。デバイスが近隣デバイスに送信するためのユニキャストデータを保持している場合(
図2のステップS10に相当)、当該デバイスは
図6のフローチャートに示す手順を実行する(
図2のステップS11に相当)。
【0060】
まず、デバイスは近隣デバイスが「アウェイク」状態にあるか否かを検出するため、近隣デバイスに対してプローブコマンドを送信する(ステップS51)。
【0061】
また、デバイスはプローブコマンドの送信後速やかにタイマーT_2による計時を開始する(ステップS52)。タイマーT_2の計時継続時間は、macMaxFrameTotalWaitTimeであってもよい。
【0062】
次に、デバイスは、タイマーT_2による計時終了までにデバイスが近隣デバイスからのプローブコマンドへの応答を受信したか否かについて確認する(ステップS53)。計時終了までに受信しない場合(ステップS53:No)、デバイスは、コーディネータのリレーが必要であるか否かについて判断する(ステップS59)。ステップS59の結果に応じて、デバイスが取りうる動作のオプションとして2つのものがある。
【0063】
1つ目のオプションは、コーディネータのリレーが必要である場合(ステップS59:Yes)、近隣デバイスへのデータ伝送にコーディネータを用いることであり、この場合、デバイスは旧来のデータ送受信方法を用いてコーディネータにデータを送信する(ステップS60)。
【0064】
他のオプションは、コーディネータのリレーが不要である場合(ステップS59:No)、デバイスは一旦データを保存し、後に再び送信を試みるか、またはアプリケーション要件においてデータをペンディングとする(ステップS61)。
【0065】
一方、上記ステップS53において近隣デバイスからのプローブコマンドへの応答を受信した場合(ステップS53:Yes)、デバイスは近隣デバイスに対してデータを直接送信する(ステップS54)。
【0066】
次に、デバイスはプローブコマンドへの要求の有無について確認する(ステップS55)。
【0067】
プローブコマンドへの応答が要求されていない場合は(ステップS55:No)、デバイスは一連の動作を終了する。
【0068】
一方、プローブコマンドへの応答が要求されている場合は(ステップS55:Yes)、デバイスはタイマーT_3による計時を開始する(ステップS56)。
【0069】
次に、デバイスは、タイマーT_3による計時終了までにデバイスが近隣デバイスからのデータ応答を受信したか否かの判断を行う(ステップS57)。
【0070】
データ応答を受信しない場合(ステップS57:No)、デバイスは、近隣デバイスによりデータが正しく受信されなかったと判断する。この場合、デバイスが一旦データを保存し、後に再び送信を試みるか、またはアプリケーション要件においてデータをペンディングとする(ステップS58)。タイマーT_3の計時継続時間は、macMaxFrameTotalWaitTimeであってもよい。
次に、デバイスによる近隣デバイスへのデータのユニキャスト手順(
図2のステップS11に相当)について説明する。
【0071】
図7は、IEEE 802.15.4ネットワークにおける近隣デバイスへのデータのユニキャスト手順を示すメッセージシーケンスチャートである。
【0072】
まず、直上階層のデータ生成元40は、MCPC-DATA.Requestを生成元MLME50に送信する(ステップS71)。
【0073】
そして、生成元MLME50はプローブコマンドを受信先MLME60に送信する(ステップS72)。
【0074】
受信先MLME60は、プローブコマンドを受信すると、プローブコマンドへの応答を生成元MLME50に送信する(ステップS73)。
【0075】
生成元MLME50は、受信先MLME60からの応答を受信すると、受信先MLME60にデータを送信する(ステップS74)。
【0076】
データの受信応答が要求されている場合、受信先MLMEは、データの受信応答を生成元MLME50に送信すると共に(ステップS75)、MCPS-DATA.Indicationを直上階層の受信先70に送信する(ステップS76)。生成元MLME50は、MCPS-DATA.Confirmを直上階層の生成下40に送信する(ステップS77)。
【0077】
次に、近隣デバイスへのマルチキャストモード直接データ送受信手順(
図3のステップS14に相当)について説明する。
図8は、近隣デバイスリスト中にあるデバイスへのマルチキャストによる直接データ送信手順を示すフローチャートである。
【0078】
データをマルチキャストする必要がある場合、デバイスは適切な時に、1または複数の近隣デバイスにデータを送信する(ステップS81)。
【0079】
次に、デバイスはデータについての応答要求の有無を確認する(ステップS82)。応答要求がない場合(ステップS82:No)、デバイスは動作を終了する。
【0080】
一方、応答要求がある場合(ステップS82:Yes)、デバイスは、タイマーT_4による計時を、データ送信後速やかに開始する(ステップS83)。タイマーT_4の計時継続時間は、macMaxFrameTotalWaitTimeであってもよい。
【0081】
次に、デバイスは、指定されている近隣デバイスの1または全てからデータの受領応答をタイマーT_4の経過前に(マルチキャストデータ受領通知要求に基づいて)受信したか否かの判断を行う(ステップS84)。
【0082】
受領応答を受信した場合(ステップS84:Yes)、デバイスは動作を終了する。
【0083】
一方、受領応答を受信しなかった場合(ステップS84:No)、デバイスは一旦データを保存し、後に再び送信を試みるか、またはアプリケーションの要件によってはデータをペンディングとする(ステップS85)。
【0084】
次に、ポーリングモード直接データ送受信による近隣デバイスへのデータポーリング手順(
図3のステップS18に相当)について説明する。
図9は、近隣デバイスへのデータのポーリング手順を示すフローチャートである。
【0085】
まず、デバイスは、近隣デバイスにデータのポーリングを行うよう直上の階層から指示を受けると、適切な時に1または複数の近隣デバイスに対してデータポーリングコマンドを送信するとともに(ステップS91)、タイマーT_5による計時を開始する(ステップS92)。タイマーT_5の計時継続時間は、macMaxFrameTotalWaitTimeであってもよい。
【0086】
次に、デバイスは、データポーリングコマンドに対する応答をタイマーT_5の経過までに受信したか否かの確認を行う(ステップS93)。
【0087】
応答を受信しない場合(ステップS93:No)、デバイスは手順を終了する。
【0088】
一方、デバイスが応答を受信した場合(ステップS93:Yes)、デバイスは、当該応答がペンディング中のデータの有無のうちどちらを示すものであるかの判断を行う(ステップS94)。
【0089】
応答がペンディング中のデータの無いことを示している場合(ステップS94:No)、デバイスは手順を終了する。
【0090】
一方、応答がペンディング中のデータがあることを示している場合(ステップS94:Yes)、デバイスは、macMaxFrameTotalWaitTime以内であれば、データポーリングコマンドを受信した後、近隣デバイスからデータを受信することができる(ステップS95)。
【0091】
データ受信後、デバイスは、データ受信に対する応答の有無について判断する(ステップS96)。
【0092】
データに対する応答が要求されていない場合(ステップS96:No)、デバイスは手順を終了する。また、当該応答が要求されている場合(ステップS96:Yes)、デバイスは応答を送信し(ステップS97)、手順を終了する。
【0093】
図10は、IEEE 802.15.4ネットワークにおける近隣デバイスへのデータのポーリングに用いられるメッセージシーケンスチャートである。
【0094】
近隣デバイスに対してデータのポーリングを行う必要がある場合、直上の階層にあるデバイス100は、MLME-POLL.RequestをデバイスMLME110に送信する(ステップS100)。
【0095】
次に、デバイスMLME110は、データポーリングコマンドを近隣デバイスMLME120に送信する(ステップS101)。
【0096】
近隣デバイスMLME120は、データを保持している場合、デバイスMLME110に対してデータポーリングコマンドに対する応答を送信するとともに(ステップS102)、当該データを送信する(ステップS103)。
【0097】
そして、デバイスMLME110は、データを受信すると共に、データに対する応答が要求されている場合には、当該応答を近隣デバイスMLME120に送信する(ステップS104)。
【0098】
そしてデバイスMLME110は、直上階層デバイス100にMLME-POLL.Confirmを送信するとともに(ステップS105)、MCPS-DATA.Indicationを送信する(ステップS106)。
【0099】
次に、デバイス間の直接的データ送受信のためのMACコマンドフレームについて説明する。
【0100】
まず、近隣デバイス検出リクエストコマンドについて説明する。近隣デバイス検出リクエストコマンドは、
図3のステップS2および
図4を用いて説明した、近隣デバイスの検出手順において用いられる。
【0101】
図11は、近隣デバイス検出リクエストコマンドのフォーマットを示す図である。このフォーマットは、IEEE 802.15.4-2011[1]のテーブル5に記載されているコマンドフレームに加えられた新たなMACコマンドフレームである。当該フォーマットは、MHR領域とMACペイロードから構成され、IEEE 802.15.4-2011の基準に準拠する。
・MHR領域:ソースアドレスを含むアドレス領域。
・MACペイロード:近隣デバイス検出リクエストコマンドを識別するため、新しいMACコマンドフレームとして、新しいコマンドフレーム識別子を用いる必要がある。
【0102】
次に、近隣デバイス検出応答コマンドについて説明する。近隣デバイス検出応答コマンドは、
図3のステップS2および
図4を用いて説明した、近隣デバイス検出手順において用いられている。
【0103】
図12は、近隣デバイス検出応答コマンドのフォーマットを示す図である。このフォーマットは、IEEE 802.15.4-2011[1]のテーブル5に記載されているコマンドフレームに加えられた新たなMACコマンドフレームである。当該フォーマットは、MHR領域とMACペイロードから構成され、IEEE 802.15.4-2011の基準に準拠する。
・MHR領域:ソースアドレスおよび宛先アドレスを含むアドレス領域。
・MACペイロード:近隣デバイス検出リクエストコマンドを識別するため、新しいMACコマンドフレームとして、新しいコマンドフレーム識別子を用いる必要があり、この領域は近隣デバイスのケーパビリティ情報を含んでいる。
【0104】
次に、プローブコマンドについて説明する。デバイスは近隣デバイスにユニキャストするデータを保持している場合、近隣デバイスに対してプローブコマンドを送信する(
図2のステップS5および
図6のステップS51参照)。
【0105】
図13は、プローブコマンドフレームのフォーマットを示す図である。このフォーマットは、IEEE 802.15.4-2011[1]のテーブル5に記載されているコマンドフレームに加えられた新たなMACコマンドフレームである。当該フォーマットは、MHR領域とMACペイロードから構成されている。
・MHR領域:ソースアドレスおよび宛先アドレスを含むアドレス領域。
・MACペイロード:近隣デバイス検出リクエストコマンドを識別するため、新しいMACコマンドフレームとして、新しいコマンドフレーム識別子を用いる必要がある。
【0106】
次に、データポーリングコマンドについて説明する。デバイスが1または複数の近隣デバイスにデータのポーリングを行う場合(
図3のステップS18に相当)、上述したように、デバイスは近隣デバイスに対してデータポーリングコマンドを送信する(
図9のステップS91参照)。
【0107】
図14は、データポーリングコマンドのフォーマットを示す図である。このフォーマットは、IEEE 802.15.4-2011[1]のテーブル5に記載されているコマンドフレームに加えられた新たなMACコマンドフレームである。当該フォーマットは、MHR領域とMACペイロードから構成され、IEEE 802.15.4-2011の基準に準拠する。
・MHR領域:1つの近隣デバイスのみについてポーリングを行う場合、アドレス領域はソースアドレスおよび宛先アドレスを含む。複数の近隣デバイスに対してデータのポーリングを行う場合、アドレス領域はソースアドレスを含む。
・MACペイロード:コマンドフレーム識別子とアドレス領域から構成される。
・コマンドフレーム識別子:データポーリングコマンドを識別するため、新しいMACコマンドフレームとして、新しいコマンドフレーム識別子を用いる必要がある。
・宛先アドレス領域:
図15は、宛先アドレス領域のフォーマットを示す図である。複数の近隣デバイスがポーリングされる場合、このフィールドに、データポーリングコマンドの宛先アドレスが表示される。この場合、MHR領域のアドレス領域には宛先アドレスは含まれない。MACペイロードの宛先アドレス領域は、IEEE802.15.4-2011に基づくビーコンフレームの「ペンディングアドレス領域」と同じ基準に準拠している。宛先アドレス領域は、
図15に示すように、宛先アドレス仕様と、宛先アドレスリストとにより構成されている。宛先アドレス仕様は、宛先となる隣接デバイスの数を示し、IEEE802.15.4-2011の5.2.2.1.6と同じ基準に準拠している。宛先アドレスリストは、宛先となるデバイスの宛先を示し、IEEE802.15.4-2011の5.1.2.2.7と同じ基準に準拠している。
【0108】
本発明に係るデバイス間の直接的データ送受信によると、近隣デバイス間で直接データの送受信をすることが可能となる。そのため、IEEE802.15.4-2011の旧来のデータ送受信方法と比較し、データの送受信に際してコーディネータを仲介する必要がないためデータの送受信に要する時間を短縮することができるとともに、エネルギーの浪費を防止し、使用される周波数帯を少なくすることができる。