(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メッシュネットワークを構成する複数の無線通信局のうちのいずれかの局である第1の局に対して、該第1の局を介して前記メッシュネットワークへ加入することの要求である第1のメッセージを送信する手段と、
前記第1のメッセージに応答して、前記第1の局から、前記第1のメッセージを送信した装置を含めた前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてきたときに、該情報を第1の新規構成情報として受け取る手段と、
前記第1の局に対して、前記第1のメッセージを送る前の過去の前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報を既成構成情報として提供するように第2のメッセージを送信する手段と、
前記第2のメッセージに応答して前記第1の局から前記既成構成情報が送られてきたときに該既成構成情報を受け取る手段と、
前記第1の新規構成情報と前記既成構成情報とを比較することにより、前記既成構成情報には存在し前記第1の新規構成情報では欠落している局を、疑故障局として特定する手段と、
前記既成構成情報の中の前記位置情報に示される、前記疑故障局のうちのいずれかの局である第2の局が存在する位置を目標に、該位置の付近まで移動制御する手段と、
前記第2の局に対して、該第2の局を介して前記メッシュネットワークへ加入することの要求である第3のメッセージを送信する手段と、
前記第3のメッセージに応答して、前記第2の局から、前記第3のメッセージを送信した装置を含めた前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてきたときに、該情報を第2の新規構成情報として受け取る手段と、
前記第1、第2の新規構成情報と前記既成構成情報とを比較することにより、前記既成構成情報には存在し前記第1、第2の新規構成情報のいずれからも欠落している局を、要調査局として特定する手段と
を具備する移動無線通信装置。
メッシュネットワークを構成する複数の無線通信局のうちのいずれかの局である第1の局に対して、該第1の局を介して前記メッシュネットワークへ加入することの要求である第1のメッセージを送信し、
前記第1のメッセージに応答して、前記第1の局から、前記第1のメッセージを送信した装置を含めた前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてきたときに、該情報を第1の新規構成情報として受け取り、
前記第1の局に対して、前記第1のメッセージを送る前の過去の前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報を既成構成情報として提供するように第2のメッセージを送信し、
前記第2のメッセージに応答して前記第1の局から前記既成構成情報が送られてきたときに該既成構成情報を受け取り、
前記第1の新規構成情報と前記既成構成情報とを比較することにより、前記既成構成情報には存在し前記第1の新規構成情報では欠落している局を、疑故障局として特定し、
前記既成構成情報の中の前記位置情報に示される、前記疑故障局のうちのいずれかの局である第2の局が存在する位置を目標に、該位置の付近まで移動する手段と、
前記第2の局に対して、該第2の局を介して前記メッシュネットワークへ加入することの要求である第3のメッセージを送信し、
前記第3のメッセージに応答して、前記第2の局から、前記第3のメッセージを送信した装置を含めた前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてきたときに、該情報を第2の新規構成情報として受け取り、
前記第1、第2の新規構成情報と前記既成構成情報とを比較することにより、前記既成構成情報には存在し前記第1、第2の新規構成情報のいずれからも欠落している局を、要調査局として特定する
移動無線通信装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、位置を移動可能な無線通信装置およびその制御方法において、ネットワークに重大な故障事象が生じている場合であっても、他の無線通信装置に関する状況を容易に収集することができる移動無線通信装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である移動無線通信装置は、メッシュネットワークを構成する複数の無線通信局のうちのいずれかの局である第1の局に対して、該第1の局を介して前記メッシュネットワークへ加入することの要求である第1のメッセージを送信する手段と、前記第1のメッセージに応答して、前記第1の局から、前記第1のメッセージを送信した装置を含めた前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてきたときに、該情報を第1の新規構成情報として受け取る手段と、前記第1の局に対して、前記第1のメッセージを送る前の過去の前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報を既成構成情報として提供するように第2のメッセージを送信する手段と、前記第2のメッセージに応答して前記第1の局から前記既成構成情報が送られてきたときに該既成構成情報を受け取る手段と、前記第1の新規構成情報と前記既成構成情報とを比較することにより、前記既成構成情報には存在し前記第1の新規構成情報では欠落している局を、疑故障局として特定する手段と、前記既成構成情報の中の前記位置情報に示される、前記疑故障局のうちのいずれかの局である第2の局が存在する位置を目標に、該位置の付近まで移動制御する手段と、前記第2の局に対して、該第2の局を介して前記メッシュネットワークへ加入することの要求である第3のメッセージを送信する手段と、前記第3のメッセージに応答して、前記第2の局から、前記第3のメッセージを送信した装置を含めた前記メッシュネットワークに関する情報である、前記複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてきたときに、該情報を第2の新規構成情報として受け取る手段と、前記第1、第2の新規構成情報と前記既成構成情報とを比較することにより、前記既成構成情報には存在し前記第1、第2の新規構成情報のいずれからも欠落している局を、要調査局として特定する手段とを具備する。
【0008】
この移動無線通信装置は、移動できる機動性を活かし、メッシュネットワークを構成する複数の無線通信局のうちのいずれかの局である第1の局に対して、この第1の局を介してメッシュネットワークへ加入することの要求と、第1の局とは異なる第2の局に対して、この第2の局を介してメッシュネットワークへ加入することの要求とを、位置を変えて行うことができる。
【0009】
第1の局を介してメッシュネットワークに加入することにより、第1の局から、この装置を含めたメッシュネットワークの無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が第1の新規構成情報として得られる。また、第1の局からは、この装置が加入する前の過去のメッシュネットワークの無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報も、既成構成情報として得られる。
【0010】
既成構成情報には、メッシュネットワークの各無線通信局がすべて正常であるときの構成情報が保存されていると考えることができる。そこで、第1の新規構成情報と既成構成情報とを比較し、既成構成情報には存在し第1の新規構成情報では欠落している局を、疑故障局として特定する。つまり、そのような局には、第1の局から現時点でつながることができず、故障が疑われるからである。
【0011】
次に、既成構成情報の中の位置情報に示される、疑故障局のうちのいずれかの局である第2の局が存在する位置を目標にこの位置の付近まで移動して、この第2の局を介してメッシュネットワークに加入する。これによれば、第2の局が正常である前提では、第2の局から、この装置を含めたメッシュネットワークの無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が第2の新規構成情報として得られる。疑故障局である第2の局が正常であることも、メッシュネットワークにこれが分断されるような故障事象が発生していて、第1の局と第2の局とが分断の境界を越境するように存在している場合にはあり得る。
【0012】
そこで、第1、第2の新規構成情報と既成構成情報とを比較し、既成構成情報には存在し第1、第2の新規構成情報のいずれからも欠落している局を、要調査局として特定する。つまり、そのような局には、第1の局から現時点でつながることができず、かつ、第2の局からも現時点でつながることができないため、さらに故障が疑われるからである。逆に言えば、疑故障局であっても第2の新規構成情報に存在する局は正常であり、その正常な局を疑故障局の集合から除いた集合が要調査局である。
【0013】
以上のような疑故障局から要調査局への絞り込みは、絞り込まれた要調査局を次の新たな疑故障局として扱い上記説明と同様なプロセスを踏むことにより、さらに絞り込むことができる。ネットワーク構成が単純であれば新たな絞り込みを行うには及ばないが、少なくとも何度かプロセスを繰り返せば、疑故障局ではなく実際に故障している局である故障局を特定することができる。この移動無線通信装置によれば、ネットワークに重大な故障事象が生じている場合であっても、ネットワークを構成する他の無線通信装置に関する状況を容易に収集することができる。
【0014】
また、別の態様である移動無線通信装置は、メッシュネットワークを構成する複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報を記憶保持する手段と、前記位置情報に基づいて、前記複数の無線通信局のうちの任意の局の付近まで移動制御する手段と、前記複数の無線通信局のうちのいずれかの局である第1の局に対して、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだ第1のメッセージを送信する手段と、前記複数の無線通信局のうちの前記第1の局とは異なるいずれかの局である第2の局に対して、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだ、前記第1のメッセージとは区別できる第2のメッセージを送信する手段と、前記複数の無線通信局のうちの前記第1、第2の局とは異なるいずれかの局である第3の局に対して、隣接局からのフラッディングで得ているメッセージである第3のメッセージを提供するように要求する手段と、前記複数の無線通信局のうちの前記第1、第2、第3の局とは異なるいずれかの局である第4の局に対して、隣接局からのフラッディングで得ているメッセージである第4のメッセージを提供するように要求する手段と、前記第3のメッセージが、前記第1のメッセージであるか、前記第2のメッセージであるか、あるいは前記第1、第2のメッセージの合成による符号化で得られた符号化メッセージであるかを判断する手段と、前記第4のメッセージが、前記第1のメッセージであるか、前記第2のメッセージであるか、あるいは前記第1、第2のメッセージの合成による符号化で得られた符号化メッセージであるかを判断する手段と、前記第3のメッセージが、前記第1のメッセージであるか、前記第2のメッセージであるか、あるいは前記符号化メッセージであるかの判断、前記第4のメッセージが、前記第1のメッセージであるか、前記第2のメッセージであるか、あるいは前記符号化メッセージであるかの判断、および前記リンク情報に基づいて、前記複数の無線通信局のうちから故障している無線通信局を特定する手段とを具備する。
【0015】
この移動無線通信装置は、メッシュネットワークを構成する複数の無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報を記憶保持することができ、かつ、この位置情報に基づいて、複数の無線通信局のうちの任意の局の付近まで移動制御することができることを前提に以下のような機能を有している。
【0016】
複数の無線通信局のうちのいずれかの局である第1の局に対して、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだ第1のメッセージを送信する。また、複数の無線通信局のうちの第1の局とは異なるいずれかの局である第2の局に対して、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだ、第1のメッセージとは区別できる第2のメッセージを送信する。これらは、つまり、入力局として第1の局、第2の局を指名、決定し、それらを起点にネットワーク内にメッセージを伝えるように、互いに区別できるメッセージをこの移動無線通信装置から送り出すことを意味する。
【0017】
なお、ネットワーク内では、フラッディングにより、隣接局を伝って第1または第2のメッセージが波紋のように伝搬していく。ある局に第1のメッセージと第2のメッセージとが伝えられた場合には、特別に、第1、第2のメッセージの合成による符号化を行って符号化メッセージを生成し、これをそこからフラッディングすることを前提とする。この符号化には、符号化メッセージを復号して第1のメッセージを得るのに第2のメッセージを要し、符号化メッセージを復号して第2のメッセージを得るのに第1のメッセージを要する、という関係の符号化を用いる。
【0018】
別のある局に符号化メッセージと第1のメッセージとが伝えられた場合は、符号化メッセージと第1のメッセージとの合成による上記と同様の符号化を行って新たな符号化メッセージを生成し、これをそこからフラッディングする。この新たな符号化メッセージは、上記の関係から第2のメッセージに同じになる(戻る)。また別のある局に符号化メッセージと第2のメッセージとが伝えられた場合は、符号化メッセージと第2のメッセージとの合成による同様の符号化を行って新たな符号化メッセージを生成し、これをそこからフラッディングする。この場合の新たな符号化メッセージは、上記の関係から第1のメッセージに同じになる(戻る)。
【0019】
以上のようなネットワーク内での動作を前提に、この移動無線通信装置は、複数の無線通信局のうちの第1、第2の局とは異なるいずれかの局である第3の局に対して、隣接局からのフラッディングで得ているメッセージである第3のメッセージを提供するように要求する。また、複数の無線通信局のうちの第1、第2、第3の局とは異なるいずれかの局である第4の局に対して、隣接局からのフラッディングで得ているメッセージである第4のメッセージを提供するように要求する。これらは、つまり、出力局として第3の局、第4の局を指名、決定し、それらを終点としてネットワーク内で伝えられてきたメッセージを回収することを意味する。
【0020】
そして、この移動無線通信装置は、第3のメッセージが、第1のメッセージであるか、第2のメッセージであるか、あるいは第1、第2のメッセージの合成による符号化で得られた符号化メッセージであるかの判断、第4のメッセージが、第1のメッセージであるか、第2のメッセージであるか、あるいは第1、第2のメッセージの合成による符号化で得られた符号化メッセージであるかの判断、およびリンク情報に基づいて、複数の無線通信局のうちから故障している無線通信局を特定する。
【0021】
これは、つまり、リンクが成立しているメッシュネットワークの中で特定の無線通信局が故障している場合、その故障局のメッシュ内の位置の違いによって、第3、第4のメッセージが上記のように3パターンに変化して回収されるからである。故障局のメッシュ位置によっては、第3、第4のメッセージ自体が得られない場合もあり得る。これも考慮に入れると、メッセージ回収にはそれぞれ4パターンがあり、第3、第4の局で回収され得る組み合わせとして4×4の16通りある。
【0022】
正常なときのリンク情報は既知であるので、このリンク情報と回収されたメッセージを突き合せることで故障局を絞るように突き止めることができる。すなわち、ネットワーク構成が単純であれば新たな絞り込みを行うには及ばないが、少なくとも何度かプロセスを繰り返せば故障局を特定することができる。以上のように、この移動無線通信装置によっても、ネットワークに重大な故障事象が生じている場合に、ネットワークを構成する他の無線通信装置に関する状況を容易に収集することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、位置を移動可能な無線通信装置およびその制御方法において、ネットワークに重大な故障事象が生じている場合であっても、他の無線通信装置に関する状況を容易に収集することができる移動無線通信装置およびその制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態である移動無線通信装置の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、この移動無線通信装置10は、メッセージ生成部11、メッセージ送受部12、新規構成情報記憶保持部13、既成構成情報記憶保持部14、疑故障局(要調査局)特定部15、移動先選択部16、移動制御部17を有する。以下の説明では、機能ブロック図である
図1を参照するほか、
図2以下
図5Dまでを適宜参照する。
【0026】
メッセージ生成部11は、他の無線通信装置に伝えるべきメッセージを例えばパケットの形で生成する処理部である。メッセージには無線通信装置として本来の通信内容が載せられ得るが、この実施形態の説明においては、特に、現に存在するメッシュネットワークに加入するためのメッセージの生成、およびメッシュネットワークに加入した後に他の各無線通信装置の位置情報を含んだリンク情報を得るためのメッセージの生成について説明する。メッセージに載せる情報には、この移動無線通信装置10の現在位置の情報が含まれるものとする。このような現在位置の特定は周知のように例えばGPS衛星を活用すれば容易である。
【0027】
メッシュネットワークとは、複数の無線通信装置がメッシュを構成する要領で相互に接続し、ある発信元から他の無線通信装置を中継しながらどの発信先とも相互に通信を行えるように構成されたネットワークである。メッシュネットワーク内の各無線通信装置は、各接続(リンク)の間で所定のメッセージを義務的に交換することにより、各無線通信装置の位置情報を含んだリンク情報の共有ができているものとする。位置情報は、各無線通信装置が例えばGPS衛星を利用して自装置について特定しているものとする。このようなメッシュネットワークのひとつの例が
図2に示すようなリンク構成である。
【0028】
図2において、符号1〜符号9は、それぞれ位置が固定された無線通信装置(以下では「無線通信局」または単に「局」ともいう)であり、それらの間の線は成立しているリンクを意味している。無線通信装置1〜9は、リンクを介して隣接する装置と所定のメッセージの交換を義務的に行い、リンクが現時点で不都合なく成立していることを確認し続けている。このようなメッセージは、HELLOメッセージやトポロジー制御メッセージとして知られており、隣接局に促されてそのさらに隣接局との間でその交換を行うことをフラッディングとも称する。上記で言及したリンク情報は、どの装置とどの装置とがつながっているかの情報である観点で、ネットワークトポロジー情報に同義である。
【0029】
図1に戻り、メッセージ生成部11は、まず、メッシュネットワークを構成する無線通信装置1〜9のうちのいずれかの局に対する、その局を介してメッシュネットワークへ加入することの要求を意味するメッセージを生成する。生成されたメッセージは、メッセージ送受部12に渡される。ここでは「いずれかの局」が、
図2中の無線通信装置1であるとして以下説明する。どの局を対象に要求するかは、例えば、ごく自然に、移動無線通信装置10が現在存在する位置と現時点で最も近い位置にある局とすることができるがこれに限られない。また、メッセージには、要求先である無線通信装置1と識別できる情報(例えばそのIPアドレスを流用)を付与しておく。
【0030】
メッセージ生成部11から渡されたメッセージを、メッセージ送受部12は、局1に対して送信する。すると、局1は、移動無線通信装置10の存在を認識し、これを新たに加入した局として、他のリンクがなされている局2、3との間で、更新したメッセージの交換を行う。
図3Aは、
図1に示した移動無線通信装置10が
図2に示したメッシュネットワーク内のひとつの無線通信装置1にリンクしてネットワークに加入した状態を示す装置間リンク表示図である。
【0031】
移動無線通信装置10と局1とのメッセージ交換により、局1から、本装置10が加入したメッシュネットワークの各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてくる。この情報を、以下、本装置10が加入した後の情報であることから新規構成情報と称する。局1からの新規構成情報は、メッセージ送受部12が受け取り、受け取ってからこれを新規構成情報記憶保持部13に渡す。新規構成情報記憶保持部13は、渡された新規構成情報を記憶保持する。
【0032】
メッセージ生成部11は、次に、局1に対する、上記のメッセージを送る前の過去のメッシュネットワークの各局1〜9の位置情報を含んだリンク情報の提供の要求を意味するメッセージを生成する。そこでは、上記の「過去」として具体的にその日時を指定するようにしてもよい。生成されたメッセージは、メッセージ送受部12に渡される。メッセージ生成部11から渡されたメッセージを、メッセージ送受部12は局1に対して送信する。
【0033】
すると、局1から、本装置10が加入する前の過去のメッシュネットワークの各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてくる。この情報を、本装置10が加入する前の情報であることから、以下、既成構成情報と称する。局1からの既成構成情報は、メッセージ送受部12が受け取り、受け取ってからこれを既成構成情報記憶保持部14に渡す。既成構成情報記憶保持部14は、渡された既成構成情報を記憶保持する。なお、局1(に限らずほかの局2〜9)は前提としてこのような既成構成情報を任意のある期間保持しているものとする。
【0034】
図3Cは、
図1に示した移動無線通信装置10が無線通信装置1を介してネットワークに加入した後の、
図2に示したメッシュネットワーク内の各無線通信装置が共有するリンク情報および位置情報(=新規構成情報)を示す表である。前後するが、
図3Bは、
図1に示した移動無線通信装置10がネットワークに加入する前の、
図2に示したメッシュネットワーク内の各無線通信装置が共有するリンク情報および位置情報(=既成構成情報)を示す表である。
【0035】
図3Cと
図3Bとの違いは、上記の説明から明らかなように、
図3Cでは、表の中に、「#1(@位置#1)−#10(@位置#10)」(斜体で示す)という新たなリンク情報が加わっていることである。ここで「#」は局を意味している。「@位置#N」は、局Nの位置を示している。
【0036】
図1に戻り、新規構成情報記憶保持部13に保持された新規構成情報と、既成構成情報記憶保持部14に保持された既成構成情報とは、次に、それぞれ記憶保持部13、14から疑故障局特定部15に渡される。疑故障局特定部15は、新規構成情報と既成構成情報とを比較することにより、既成構成情報には存在し新規構成情報では欠落している局を、疑故障局として特定する。
図3Bと
図3Cとに示されたこれらの構成情報の場合、
図3Bには存在し
図3Cでは欠落している局はない。
図3Bに示された局1〜9は、いずれも
図3Cにも登場し、したがって、この場合、疑故障局として特定される局はない。
図2に示される状態から見て当然ではある。
【0037】
一例として、以上説明した移動無線通信装置10の動作を、
図4Aに示されるような状態のメッシュネットワークを対象とした場合の動作として説明すると、以下のようになる。
図4Aでは、
図2に示した各局1〜9のうち局5が故障している。これにより局5が一方の側となるリンクも機能していない。
【0038】
この場合、新規構成情報記憶保持部13に保持される情報は、
図4Bに示すようになる。また、既成構成情報記憶保持部14に保持される情報は、ネットワーク加入以前であって局5も正常に機能していた過去の情報が局1から得られたという前提ならば、前後するが
図3Bに示すようになる。そうすると、疑故障局特定部15での動作結果としては、
図3Bには存在し
図4Bでは欠落している局として、局5が疑故障局として特定されることになる。疑故障局は、故障が疑われる局を意味しているが、この場合は、特定された局がひとつしかなくかつ局5以外のすべての局が
図4Bに登場するので、局5を故障局として特定して誤りはない。
【0039】
なお、
図4Bにおいて、取り消し線で消された表示部分は、説明の便宜上示したものであり、実際には、そのような部分自体表示される必要はない。取り消し線で消された表示部分については以下の説明でも同様である。
【0040】
また、上記とは別の例として、以上説明した移動無線通信装置10の動作を、
図5Aに示されるような状態のメッシュネットワークを対象とした場合の動作として説明すると、以下のようになる。
図5Aでは、
図2に示した各局1〜9のうち局4、5、6が故障している。これにより局4、5、6が一方の側となるリンクも機能していない。
【0041】
この場合、新規構成情報記憶保持部13に保持される情報は、
図5Bに示すようになる。また、既成構成情報記憶保持部14に保持される情報は、ネットワーク加入以前であって局4〜6も正常に機能していた過去の情報が局1から得られたという前提ならば、前後するが
図3Bに示すようになる。そうすると、疑故障局特定部15での動作結果としては、
図3Bには存在し
図5Bでは欠落している局として、局4〜9が故障が疑われる疑故障局として特定されることになる。この場合、実際、局4〜6は故障しているが、局7〜9は正常で生き残っている。このようにネットワークが完全に分断されるような重大な故障事象が生じている場合は、故障局の特定は
図4A、
図4Bを参照して説明した場合のように簡単にはできない。
【0042】
図1に戻り、疑故障局特定部15で特定された疑故障局の情報(その識別情報と位置情報)は、移動先選択部16に渡される。移動先選択部16は、疑故障局のうちから次にネットワークに加入する相手先となる局を選択する。より具体的な選択基準としては、例えば、疑故障局のうちからもとの加入相手先である局1と位置的に十分に離れた局を選択する。十分に離れていればその局は正常で生き残っている可能性が一応高いと考えられるからである。選択された局の情報は、移動制御部17に渡される。
【0043】
移動制御部17は、移動先選択部16で選択された局が存在する位置を目標に、その極の位置の付近まで本装置10を移動制御する。本装置10は、移動無線通信装置であり、より具体的には、小型飛行機、気球、ヘリコプターなどの飛翔体や、車両、移動ロボットなどの地上移動具に搭載された形態を想定することができる。これらの機器の動力源を制御する制御部に移動目標位置を与えるのが移動制御部17の機能であるということができる。
【0044】
移動制御部17のはたらきにより、本装置10は、移動先選択部16で選択された局が存在する位置の付近まで移動する。以後の動作は、最初に戻り、
図1を参照したメッセージ生成部11の動作以下の説明とほぼ同様である。違いは、ネットワーク加入の相手先となる局が異なっていることである。ここでは新たな相手先が、
図5Cに示すように局9であるとして以下説明する。
【0045】
移動無線通信装置10と局9とのメッセージ交換により、局9から、本装置10が局9を介して加入したメッシュネットワークの各局の位置情報を含んだリンク情報が送られてくる。この情報を、以下、局1から得られていた新規構成情報と区別のため、以下、第2の新規構成情報と称する。局9からの第2の新規構成情報は、メッセージ送受部12が受け取り、受け取ってからこれを新規構成情報記憶保持部13に渡す。新規構成情報記憶保持部13は、渡された第2の新規構成情報を記憶保持する。この場合、第2の新規構成情報は、
図5Dに示すようになっている。
【0046】
次に、疑故障局特定部15は、もとの新規構成情報および第2の新規構成情報と既成構成情報とを比較することにより、既成構成情報(
図3B)には存在しもとの新規構成情報(
図5B)および第2の新規構成情報(
図5D)のいずれからも欠落している局を、要調査局として特定する。よって、要調査局としては、局4、5、6が特定されることになる。実際この場合、局4〜6は故障している。このようにネットワークが完全に分断されるような重大な故障事象が生じている場合であっても、故障局の特定に至る。
【0047】
以上説明のように、この移動無線通信装置10は、移動できる機動性を活かし、メッシュネットワークを構成する複数の無線通信局1〜9のうちのいずれかの局である局1に対して、この局1を介してメッシュネットワークへ加入することの要求と、局1とは異なる局9に対して、この局9を介してメッシュネットワークへ加入することの要求とを、位置を変えて行うことができる。
【0048】
局1を介してメッシュネットワークに加入することにより、局1から、この装置10を含めたメッシュネットワークの各1〜9の位置情報を含んだリンク情報が新規構成情報として得られる。また、局1からは、この装置10が加入する前の過去のメッシュネットワークの各局1〜9の位置情報を含んだリンク情報も、既成構成情報として得られる。
【0049】
既成構成情報には、メッシュネットワークの各局1〜9がすべて正常であるときの構成情報が保存されていると考えることができる。そこで、新規構成情報と既成構成情報とを比較し、既成構成情報には存在し新規構成情報では欠落している局を、疑故障局として特定する。つまり、そのような局には、局1から現時点でつながることができず、故障が疑われるからである。
【0050】
次に、既成構成情報の中の位置情報に示される、疑故障局のうちのいずれかの局である局9が存在する位置を目標にこの位置の付近まで移動して、この局9を介してメッシュネットワークに加入する。これによれば、局9が正常である前提では、局9から、この装置10を含めたメッシュネットワークの無線通信局の各局の位置情報を含んだリンク情報が第2の新規構成情報として得られる。疑故障局である局9が正常であることも、メッシュネットワークにこれが分断されるような故障事象が発生していて、局1と局9とが分断の境界を越境するように存在している場合にはあり得る。
【0051】
そこで、もとの新規構成情報および第2の新規構成情報と既成構成情報とを比較し、既成構成情報(
図3B)には存在しもとの新規構成情報(
図5B)および第2の新規構成情報(
図5D)のいずれからも欠落している局を、要調査局として特定する。つまり、そのような局には、局1から現時点でつながることができず、かつ、局9からも現時点でつながることができないため、さらに故障が疑われるからである。逆に言えば、疑故障局であっても第2の新規構成情報に存在する局は正常であり、その正常な局を疑故障局の集合から除いた集合が要調査局である。
【0052】
一般に、以上のような疑故障局から要調査局への絞り込みは、絞り込まれた要調査局を次の新たな疑故障局として扱い上記説明と同様なプロセスを踏むことにより、さらに絞り込むことができる。ネットワーク構成が単純であれば新たな絞り込みを行うには及ばないが、少なくとも何度かプロセスを繰り返せば、疑故障局ではなく実際に故障している局である故障局を特定することができる。この移動無線通信装置10によれば、ネットワークに重大な故障事象が生じている場合であっても、ネットワークを構成する他の無線通信装置(局1〜9)に関する状況を容易に収集することができる。
【0053】
次に別の実施形態について
図6を参照して説明する。
図6は、別の実施形態である移動無線通信装置の構成を示す機能ブロック図である。
図6に示すように、この移動無線通信装置10Aは、メッセージ生成部11A、メッセージ送受部12A、メッセージ種別判断部18、故障局特定部19、リンク情報および位置情報記憶保持部20、移動先選択部16、移動制御部17を有する。
図6において、
図1中に示したものと同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については、加えるべき点がない限り説明を省略する。以下の説明では、機能ブロック図である
図6を参照するほか、
図7以下
図11までを適宜参照する。
【0054】
メッセージ生成部11Aは、他の無線通信装置に伝えるべきメッセージを例えばパケットの形で生成する処理部である。メッセージには無線通信装置として本来の通信内容が載せられ得るが、この実施形態においては、特に、現に存在するメッシュネットワークの無線通信局のうちのいずれかの局に対する、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだメッセージを生成することについて説明する。また、別の局に対する、隣接局からのフラッディングで得ているメッセージを提供することを要求するメッセージを生成することについても説明する。対象のメッシュネットワークとしては、
図7(符号を含め
図2と同じもの)に示したリンク構成を例に挙げて以下説明する。
【0055】
なお、この移動無線通信装置10Aは、リンク情報および位置情報記憶保持部20を有していて、これにあらかじめ記憶保持されている情報は、上記のメッシュネットワークに関するリンク情報およびその構成である各無線通信装置の位置情報である。この記憶保持部20にこのような情報をあらかじめ記憶保持しておくには、例えば、
図1ないし
図5Dを参照した先の実施形態での説明を参考にすることができる。そのための構成については
図6では図示省略する。
図7に示したメッシュネットワークの場合、この記憶保持部20に記憶保持された情報は、
図8に示すようになっている(
図8は、その内容として
図3Bに示したものと同じ)。
【0056】
図6に戻り、メッセージ生成部11Aは、まず、メッシュネットワークを構成する無線通信装置1〜9のうちのいずれかの局に対する、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだメッセージ(以下、第1のメッセージという)を生成する。生成された第1のメッセージは、メッセージ送受部12Aおよびメッセージ種別判断部18に渡される。ここでは「いずれかの局」として
図7中の局2が指名、決定されるとして以下説明する。局2は、少なくとも、移動無線通信装置10Aの現在位置からメッセージを送信可能な位置にある局として選ばれる。このように最初にメッセージが伝えられる局2を、以下では入力局ともいう。
【0057】
また、メッセージ生成部11Aは、局2とは異なるいずれかの局に対する、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだ、第1のメッセージとは区別できるメッセージ(以下、第2のメッセージという)も生成する。生成された第2のメッセージは、メッセージ送受部12Aおよびメッセージ種別判断部18に渡される。ここでは「局2とは異なるいずれかの局」として
図7中の局7が指名、決定されるとして以下説明する。局7も、移動無線通信装置10Aの現在位置からメッセージを送信可能な位置にある局として選ばれる。局7は、もうひとつの入力局である。
【0058】
第1、第2のメッセージには、それぞれの送信先である局2、局7と識別できる情報(例えばそのIPアドレスを流用)を付与しておく。
【0059】
メッセージ生成部11Aから渡された第1、第2のメッセージを、メッセージ送受部12Aは、それぞれ、局2、局7に対して送信する。すると、局2は、第1のメッセージに従い、リンクがなされている隣接局である局1、4、5に対してフラッディングを行う。また、局7は、第2のメッセージに従い、リンクがなされている隣接局である局4、5、9に対してフラッディングを行う。フラッディングは、そのメッセージを送信先のさらに隣接局に対して行う旨のメッセージのフラッディングになるため、リンクで接続された隣接局に次々にフラッディングの旨のメッセージが伝わる。
【0060】
今、一例として、
図7に示したメッシュネットワークにおいて、局4、5、6が故障している場合を考えてみる。
図9Aは、かかる場合において、移動無線通信装置10Aが上記説明の動作により、局2に対してメッセージM1(第1のメッセージ)を送信し、局7に対してメッセージM2(第2のメッセージ)を送信している段階を示している。
【0061】
このメッシュネットワークにおいて、
図9Aに示した段階の次に生じる段階は、上記の説明からわかるように、局2、7が隣接局に対してフラッディングを行う
図9Bに示す段階になる。そして
図9Bに示した段階の次に生じる段階は、局1、9が隣接局に対してフラッディングを行う
図9Cに示す段階になる。
図9Cにおいて、局4、5は故障しているため、これらの局4、5を発信局とするフラッディングは生じない。
【0062】
さらに
図9Cに示した段階の次に生じる段階は、局3、8が隣接局に対してフラッディングを行う
図9Dに示す段階になる。
図9Dにおいては、上記説明の動作によれば局2、7も再びフラッディングを行うことになるが、このメッシュネットワークでは、このような再びのフラッディングを回避するように、フラッディングを抑制する仕組みが利用されている。このような仕組みは、端的には、例えば、同一局がメッセージを複数回受信してもこれを破棄するなどの仕組みであり、フラッディングを効率化する技術として公知のものである。
【0063】
図9Dに示した段階を経ると、メッシュネットワーク内でさらなるフラッディングは生じない。これは、局5、6が故障していることと、フラッディングを抑制する仕組みが利用されていることによって局1、9が再びフラッディングしないこととによる。
【0064】
図6に戻り、メッセージ送受部12Aによるメッセージの送信が行われた後は、この移動無線通信装置10Aの次の段階として、メッセージの回収を行うための動作に移行する。メッセージの回収を行うために、この移動無線通信装置10Aはその位置を移動する。それには、移動先選択部16、移動制御部17が機能する。移動先選択部16には、リンク情報および位置情報記憶保持部20から、メッシュネットワークを構成する各局の位置情報が伝えられている。
【0065】
移動先選択部16は、メッシュネットワークに属する局1〜9のうちからメッセージを回収すべき相手先となる局を選択する。より具体的な選択基準としては、例えば、メッセージを最初に伝えた局2、7と位置的に十分に離れた局を選択する。十分に離れていればその局はメッセージが伝わったより下流の局である可能性が高く、上流と下流との間でのネットワークの状況がより把握しやすいと一応考えられるからである。
【0066】
選択された局の情報は、移動制御部17に渡される。移動制御部17の動作については、既出の
図1を参照してすでに説明したとおりである。以下では、メッセージを回収すべき相手先となる局として
図7中の局3、8が選択されたとして説明する。ふたつの局が選択されたのは、最初に送信したメッセージが第1のメッセージM1、第2のメッセージM2のふたつであったことと一応対応しているが、一般には、最初のメッセージの数によらずこれよりも少ないことも多いこともあり得る。
【0067】
移動制御部17のはたらきにより、本装置10Aは、移動先選択部16で選択された局3、8が存在する位置の付近まで移動する。移動後、メッセージ生成部11Aは、今度はメッセージを回収すべく再び動作を開始する。すなわち、局3、8のそれぞれに対して、隣接局からのフラッディングで得ているメッセージを提供するように要求するメッセージを生成する。生成されたメッセージは、メッセージ送受部12Aに渡される。
【0068】
メッセージ生成部11Aから渡された要求メッセージを、メッセージ送受部12Aは、それぞれ、局3、局8に対して送信する。すると、局3、8は、要求に従い、それらの隣接局からのフラッディングで得ているメッセージを送信してくるので、これらのメッセージをメッセージ送受部12Aは受け取る。メッセージ送受部12Aが受け取ったメッセージはメッセージ種別判断部18に渡される。
【0069】
メッセージ種別判断部18は、メッセージ送受部12Aから渡されたメッセージが第1のメッセージであるか、第2のメッセージであるか、あるいは第1、第2のメッセージの合成による符号化で得られた符号化メッセージであるかを判断する。「符号化メッセージ」については後述する。
【0070】
上述の
図9Dの段階に至っているメッシュネットワークを例に挙げれば、上記説明のメッセージの回収動作は、
図9Eに示すような状態でなされることになる。この場合には、
図9Dまでを参照した説明からわかるように、局3を出力局として回収されるメッセージはメッセージM1であり、局8を出力局として回収されるメッセージはメッセージM2になる。
【0071】
今、別の例として、
図7に示したメッシュネットワークにおいて、局1が故障していて他は健全である場合を考えてみる。
図10Aは、かかる場合において、移動無線通信装置10Aが上記説明の動作により、局2に対してメッセージM1(第1のメッセージ)を送信し、局7に対してメッセージM2(第2のメッセージ)を送信している段階を示している。
【0072】
このメッシュネットワークにおいて、
図10Aに示した段階の次に生じる段階は、上記の説明からわかるように、局2、7が隣接局に対してフラッディングを行う
図10Bに示す段階になる。そして
図10Bに示した段階の次に生じる段階は、局4、5、9が隣接局に対してフラッディングを行う
図10Cに示す段階になる。
図10Cにおいては、局1は故障しているため、局1を発信局とするフラッディングは生じない。加えて、
図10Cにおいては、局4、5が行うフラッディングのメッセージが、メッセージM1とメッセージM2との合成による符号化で得られた符号化メッセージEO(M1,M2)になっている。
【0073】
これは、このメッシュネットワークの機能として、このような動作を行うようにあらかじめ仕組みが備えられていることによる。すなわち、このメッシュネットワークは、ある局にあるメッセージとこれとは別のメッセージとが伝えられた場合には、特別に、これらのメッセージの合成による符号化を行って符号化メッセージを生成し、これをそこからフラッディングするようなネットワークである。この符号化には、符号化メッセージを復号して「あるメッセージ」を得るのに「別のメッセージ」を要し、符号化メッセージを復号して「別のメッセージ」を得るのに「あるメッセージ」を要する、という関係の符号化が用いられている。このような符号化として、端的には排他的論理和を使用することができる。
【0074】
そこで、さらに
図10Cに示した段階の次に生じる段階は、局3、8が隣接局に対してフラッディングを行う
図10Dに示す段階になる。
図10Dにおいては、
図9Dを参照してすでに説明したように、局2、7の再びフラッディングは回避されている。また、局8においては、EO(EO(M1,M2),M2)=M1の関係により、メッセージM1がフラッディングされる。
【0075】
さらに
図10Dに示した段階の次に生じる段階は、局6が隣接局に対してフラッディングを行う
図10Eに示す段階になる。
図10Eにおいては、
図9Dを参照してすでに説明したように、局5、9の再びのフラッディングは回避されている。また、
図10Eにおいて、局1は故障しているため、局1を発信局とするフラッディングは生じない。さらに、局6においては、EO(EO(M1,M2),M1)=M2の関係により、メッセージM2がフラッディングされる。
【0076】
図10Eに示した段階を経ると、メッシュネットワーク内でさらなるフラッディングは生じない。これは、フラッディングを抑制する仕組みが利用されていることによって局3、8が再びフラッディングしない(局6からのメッセージを破棄している)ことによる。
【0077】
上述の
図10Eの段階に至っているメッシュネットワークを例に挙げれば、上記説明のメッセージの回収動作は、
図10Fに示すような状態でなされることになる。この場合には、
図10Eまでを参照した説明からわかるように、局3を出力局として回収されるメッセージはメッセージEO(M1,M2)であり、局8を出力局として回収されるメッセージはメッセージM1になる。
【0078】
図6に戻り、メッセージ種別判断部18が、メッセージ送受部12Aから渡されたメッセージが第1のメッセージであるか、第2のメッセージであるか、あるいは第1、第2のメッセージの合成による符号化で得られた符号化メッセージであるかを判断することについてはすでに述べた。その判断結果は故障局特定部19に渡される。故障局特定部19には、リンク情報および位置情報記憶保持部20から、メッシュネットワークのリンク情報があらかじめ渡されている。
【0079】
故障局特定部19は、メッセージ種別判断部18から渡された判断結果、およびメッシュネットワークのリンク情報に基づいて、メッシュネットワークに属する無線通信局のうちから故障しているものを特定する。つまり、正常なときのリンク情報は既知なので、入力局、出力局を複数決めて、メッセージの伝達(符号化を含むフラッディング)およびその回収を行ったときの回収メッセージは、故障局が存在する場合のときのものと、すべてが正常な場合のときのものとは異なるはずである。そして、故障局のメッシュ位置の違いによっても異なるはずであり、これは、例えば
図9Eと
図10Fとを比較してもわかる。そこで、その違いに基づき故障局を特定する。
【0080】
ただし、特定するまでには至らず、疑わしいとしていくつかの局が候補に挙がるだけに終わる場合もある。その場合には、入力局、出力局を選択し直して複数指名、決定し、以上説明したプロセスを再度最初から行うようにして特定の精度を上げることができる。
【0081】
以上説明したように、この移動無線通信装置10Aは、メッシュネットワークを構成する各局1〜9の位置情報を含んだリンク情報を記憶保持することができ、かつ、この位置情報に基づいて、任意の局の付近まで移動制御することができることを前提に以下のような機能を有している。
【0082】
すなわち、いずれかの局(例えば局2)に対して、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだ第1のメッセージを送信できる。また、これとは異なるいずれかの局(例えば局7)に対して、隣接局に対してフラッディングするべき旨の要求を含んだ、第1のメッセージとは区別できる第2のメッセージを送信できる。これらは、つまり、入力局として第1の局、第2の局を指名、決定し、それらを起点にネットワーク内にメッセージを伝えるように、互いに区別できるメッセージをこの移動無線通信装置10Aから送り出すことを意味する。
【0083】
ネットワーク内では、フラッディングにより、隣接局を伝って第1または第2のメッセージが波紋のように伝搬していく。ある局に第1のメッセージと第2のメッセージとが伝えられた場合には、特別に、第1、第2のメッセージの合成による符号化を行って符号化メッセージを生成し、これをそこからフラッディングすることを前提とする。この符号化には、符号化メッセージを復号して第1のメッセージを得るのに第2のメッセージを要し、符号化メッセージを復号して第2のメッセージを得るのに第1のメッセージを要する、という関係の符号化を用いる。
【0084】
別のある局に符号化メッセージと第1のメッセージとが伝えられた場合は、符号化メッセージと第1のメッセージとの合成による上記と同様の符号化を行って新たな符号化メッセージを生成し、これをそこからフラッディングする。この新たな符号化メッセージは、上記の関係から第2のメッセージに同じになる(戻る)。また別のある局に符号化メッセージと第2のメッセージとが伝えられた場合は、符号化メッセージと第2のメッセージとの合成による同様の符号化を行って新たな符号化メッセージを生成し、これをそこからフラッディングする。この場合の新たな符号化メッセージは、上記の関係から第1のメッセージに同じになる(戻る)。
【0085】
以上のようなネットワーク内での動作を前提に、この移動無線通信装置10Aは、局2、7とは異なるいずれかの局(例えば局3)に対して、隣接局からのフラッディングで得ているメッセージを提供するように要求する。また、局2、7、3とは異なるいずれかの局(例えば局8)に対して、隣接局からのフラッディングで得ているメッセージであるメッセージを提供するように要求する。これらは、つまり、出力局として局3、8を指名、決定し、それらを終点としてネットワーク内で伝えられてきたメッセージを回収することを意味する。
【0086】
そして、この移動無線通信装置10Aは、局3からのメッセージが、第1のメッセージであるか、第2のメッセージであるか、あるいは第1、第2のメッセージの合成による符号化で得られた符号化メッセージであるかの判断と、局8からのメッセージが、第1のメッセージであるか、第2のメッセージであるか、あるいは第1、第2のメッセージの合成による符号化で得られた符号化メッセージであるかの判断と、メッシュネットワークのリンク情報とに基づいて、複数の無線通信局のうちから故障している無線通信局を特定する。
【0087】
これは、つまり、リンクが成立しているメッシュネットワークの中で特定の無線通信局が故障している場合、その故障局のメッシュ内の位置の違いによって、局3、8から回収されたメッセージが上記のように3パターンに変化して回収されるからである。故障局のメッシュ位置によっては、メッセージ自体が回収できない場合もあり得る。これも考慮に入れると、メッセージ回収にはそれぞれ4パターンがあり、局3、8で回収され得る組み合わせとして4×4の16通りある。
【0088】
正常なときのリンク情報は既知であるので、このリンク情報と回収されたメッセージを突き合せることで故障局を絞るように突き止めることができる。すなわち、ネットワーク構成が単純であれば新たな絞り込みを行うには及ばないが、少なくとも何度かプロセスを繰り返せば故障局を特定することができる。以上のように、この移動無線通信装置10Aによっても、ネットワークに重大な故障事象が生じている場合に、ネットワークを構成する他の無線通信装置に関する状況を容易に収集することができる。
【0089】
図11は、
図7に示したメッシュネットワークで局2、7を入力局とした場合に、移動無線通信装置10Aが局3、8から提供を受けたメッセージと、メッシュネットワーク内の無線通信装置の各故障パターンとの対応を示す表である。このような表は、
図8に示すリンク情報が与えられ、その入力局、出力局が決定されればあらかじめ作成しておくことができる。
図7に示すネットワークは、局が9台あるので、可能性のある故障パターンは、2の9乗(=512)あり、これらの故障パターンは、
図11に示した各行のうちのいずれかに分類される。各行は、必ずしもひとつの故障パターンに対応しない。
【0090】
しかしながら、
図11に示すような表は、入力局、出力局を変更した場合にはまた別の表として得ることができる。したがって、入力局、出力局を変更して複数回メッセージを回収すれば、それらに共通する故障パターンとして故障局を絞り込むことができる。